(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787203
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】より自然な木目を木材表面に形成する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B27K 5/00 20060101AFI20150910BHJP
B27M 1/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B27K5/00 H
B27M1/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-542390(P2009-542390)
(86)(22)【出願日】2006年12月20日
(65)【公表番号】特表2010-513083(P2010-513083A)
(43)【公表日】2010年4月30日
(86)【国際出願番号】ID2006000007
(87)【国際公開番号】WO2008075323
(87)【国際公開日】20080626
【審査請求日】2009年12月3日
【審判番号】不服2013-9389(P2013-9389/J1)
【審判請求日】2013年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】509149127
【氏名又は名称】クルニアワン,スリャ
(73)【特許権者】
【識別番号】509149138
【氏名又は名称】クルニアワン,スラメット
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】クルニアワン,スリャ
(72)【発明者】
【氏名】クルニアワン,スラメット
【合議体】
【審判長】
赤木 啓二
【審判官】
門 良成
【審判官】
住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−72011(JP,A)
【文献】
実開昭63−94565(JP,U)
【文献】
特許第4299824(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00-9/00
B05C 1/00-3/20
B05C 5/00-5/04
B05C 7/00-21/00
B41M 1/00-3/18
B41M 7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材表面に自然な木目を印刷する方法であって、
前処理工程と、印刷工程と、最終処理工程とを備え、
前記前処理工程は、
部材を任意の大きさに切断する工程と、
切断した前記部材を細孔被覆層により塗装する工程と、
塗装した前記部材を研磨する工程と、
エナメル塗料をスプレー塗装する工程と、
切断された部材の断面である複数の側面を球形、矩形、湾曲形状等の任意の形状に形成し、研磨する工程と、
前記側面に対して、細孔被覆層により塗装する工程および研磨する工程を繰り返し実行する工程と、
前記側面にエナメル塗料をスプレー塗装し、印刷不要部位を保護する工程とからなり、
前記印刷工程は、
印刷不要部位が印刷されないように保護し、主平面に任意の木目模様を印刷する工程と、
印刷処理した前記主平面をサンディングシーラーで塗装加工し、次処理から保護する工程と、
一つの側面を角部まで印刷する工程、およびこの時に、前記角部のうち一方を、任意の接続形態に合わせて接着剤テープにより保護する工程と、
一つの側面を角部まで印刷する印刷工程による不要な印刷を除去する工程と、
一つの側面を角部まで印刷する工程と同様に、他の側面に接着剤テープにより保護された角部まで印刷する工程と、
前記角部の前記接着剤テープを剥離する工程とからなり、
前記最終処理工程は、
細孔に細孔被覆層をスプレー塗装する工程と、
主平面および側面を研磨する工程と、
主平面および側面を任意の彩色塗料により塗装および/もしくは透明色に塗装する工程とからなる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面印刷方法であって、2層目の塗装層はエナメル塗料からなり被印刷部材表面を硬化および強化することを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の表面印刷方法であって、前記側面に印刷すると同時に、次工程である前記断面の前記角部における一部位を所定の接続形態に形成された接着剤テープにより保護する工程、更に接着剤テープにより保護された前記角部に任意の木目模様を印刷する工程を実行することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具工業において広く用いられる、より自然な木目を有する表面を製造する方法に関し、特に、印刷により表面に木目を形成する方法に関する。また、上記方法を実行するための装置に関する。本明細書において、「印刷する」という用語は「印刷」方法を説明するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、家具の製造においては森林から木材を得ることが非常に難しくなっている。従って最近では、家具の大半が加工処理した幼木材もしくは軽木材により製造されている。
【0003】
加工木材は加工後木板に成形されるが、通常、表面に木目を有さない。従って、木目模様の外観を実現するため、「化粧板」材を木材表面に貼付することにより、もしくは別途所定の材料に木目を印刷し、それを木材表面に貼付することにより木目を形成する。このような貼付による方法は、使用される接着剤、および接着力を減少させるような湿度が高い・乾燥している等の家具の保存条件に非常に依存するため、効果が長期間続かない可能性がある。また、このような製品の他の欠点は、使用されている木材表面が天然木材の外観および印象に欠ける点である。
【0004】
また、本明細書においては、いわゆる木板表面へ「印刷」する方法がある。シーラーを塗装した表面に印刷する方法においては、希望の木質デザイン/質感に合わせた様々な彩色塗料を使用することができる。印刷は木板の主平面にのみ行われ、断面には行われない。木板断面への印刷は可能ではあるが非常に難しく、また非常に高価な装置が必要であり、そのため製造コストが高くなる。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を解決するため、加工木材からなる木板の断面に印刷するための方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、加工木材からなる木板の主平面に木目を形成する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、木材の断面表面に木目を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は更に、木材の主平面および断面に自然な木目を印刷する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、木板の主平面および断面表面に自然な木目を印刷する装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
更に、本明細書においては、本発明の範囲を説明するため図面にて実施例を提示するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0011】
【
図1】
図1は、本発明による木目の形成方法における工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
更に、本明細書に添付の
図1を参照して本発明を説明する。
【0013】
本発明において使用される工程および装置を説明する前に、発明者と同等の理解を提供するため、使用する用語の説明が必要である。
【0014】
本発明において部材とは、木板、加工木材からなる木板、MDF、および組立式家具工業において部材として通常使用される類似の材料からなっていてもよい。導管を塗装する塗膜には公知のUVサンディングシーラーを使用する。印刷の前に、エナメル塗料により部材表面を硬化および強化する。いわゆる側面とは、部材の断面表面である。側面の角部を保護するための接着剤はセルローステープ、マスキングテープもしくはその他同様のテープからなり、特定の部位に印刷されないよう保護するために使用し、処理が完了したら剥離する。これらの種類の接着剤は繰り返し使用できるため好ましい。「印刷する」、「印刷された」および「印刷」という用語も使用する。
【0015】
部材表面に印刷する工程は以下の工程を備える。
【0016】
1.以下からなる前処理工程。
a.部材を任意の大きさに切断する工程。
b.切断した前記部材を導管塗装層により塗装する工程。
c.塗装した前記部材表面を研磨する工程。
d.エナメル塗料をスプレー塗装する工程。
e.側面、すなわち断面を球形、矩形、湾曲形状等の任意の形状に形成し、研磨する工程。
f.側面に対して工程1.bおよび工程1.cを繰り返し実行する工程。
g.側面にエナメル塗料をスプレー塗装し、必要に応じて、印刷不要部位を保護する工程。
【0017】
2.以下からなる印刷工程。
a.前記主平面に任意の木目模様を印刷し、また印刷不要部位が印刷されないように保護する工程。
b.印刷処理した前記主平面をサンディングシーラーで塗装加工し、次処理から保護する工程。
c.側面に角部まで印刷する工程。
d.前記角部のうち一方を、任意の接続形態に合わせて接着剤テープにより保護する工程。
e.上記工程cにおける印刷による残留物を除去する工程。
f.他の側面に接着剤テープにより保護された角部まで印刷する工程。
g.前記角部の前記接着剤テープを剥離する工程。
【0018】
3.以下からなる最終処理工程。
a.導管に導管塗装層をスプレー塗装する工程。
b.全表面を研磨する工程。
c.表面を任意の彩色塗料により塗装および/もしくは透明色に塗装する工程。
【0019】
上記の彩色工程は必要に応じて、導管に塗装する際、もしくはエナメル塗料をスプレー塗装する際に任意の彩色材を使用材料に混合することにより行ってもよい。
【0020】
更に、本発明による方法は詳細には以下の工程を含む。
【0021】
1.以下からなる前処理工程。
a.材料を任意の大きさに切断する工程。
b.平滑な表面を確保するため、上部主平面上および下部主平面上の導管に塗装する工程。
c.前記導管塗装層を完全に乾燥させた後、木目印刷する表面を研磨する工程。
d.前記表面にエナメル塗料をスプレー塗装する工程。
e.前記表面を完全に乾燥させた後、研磨する工程。
f.側面、すなわち、断面表面を任意の形状に再形成する工程。
g.前記側面を研磨する工程。
h.部材の前記側面上の導管に塗装する工程。
i.必要に応じて、部材の前記側面を研磨する工程。この処理は、導管が十分に塗装されていない場合、もしくは表面が平滑になってない場合は繰り返し行ってもよい。
j.印刷不要の表面を(好ましくは)紙により保護する工程。次処理において前記表面が処理されないようにするためである。
k.部材の前記側面にエナメル塗料をスプレー塗装する工程。
l.エナメル塗料が塗装された前記側面を研磨する工程。
m.上記工程において発生した塵埃を前記側面から除去する工程。
【0022】
2.以下からなる印刷工程。
a.前記主平面に任意の木目模様を印刷する工程。
b.印刷処理した前記主平面をサンディングシーラーで塗装加工し、次処理から保護する工程。
c.前記側面に前記主平面上のものとは異なる木目模様を印刷する工程。本実施の形態において、前記側面の2個の両端は2個の角部を有する。
d.前記断面における前記角部のうち一方を、所定の接続形態(例えば、突起状、V字溝状、もしくはその他の形状)に形成した接着剤により保護する工程。不要な印刷はシンナーにより除去する。
e.前記(接着剤テープにより)保護された角部に任意の木目模様を印刷する工程。
【0023】
3.以下からなる最終処理工程。
a.前記角部を完全に乾燥させた後、印刷した前記任意の木目模様が露出するよう前記角部上の前記接着剤テープを剥離する工程。
b.スプレー塗装により塗膜する工程。
c.前記塗膜を完全に乾燥させた後、全表面を研磨する工程。
d.任意の彩色塗料によりトップコート加工および/もしくは透明色に塗装する工程。
e.表面に自然な木目を有する部材が完成。
【0024】
上記に記載の工程を実行するため、従来の発明とは異なる、本発明に適合する装置が必要である。前記装置とは印刷装置であるが、前記印刷装置は2個の近接するローラを備える。前記2個のローラのうち第1のローラは金属製ローラからなり、印刷する木目模様の図柄を構成するV字溝を有する。また、前記2個のローラのうち第2のローラはゴム製ローラからなり、印刷処理する部材表面に前記木目模様を印刷する。前記第1のローラ上の前記V字溝には印刷インクが充填され、前記2個のローラは相互に近接しているため、前記第1のローラの前記インクが前記第2のローラ表面に移動する。そして、前記第2のローラが印刷処理する部材表面に接触する。
【0025】
部材の側面についても前記2個のローラを上記のように使用して印刷するが、その際、前記2個のローラが角部を含む全表面に到達できるような角度に設定する。前記角度は手動もしくは自動で設定可能である。側面への印刷は各表面の角部まで1面ずつ行う。上記接着剤テープは任意の接続形態に合わせて形成する。他の側面への印刷は所定の接続模様を形成するように行う。
【0026】
より明確には、本発明における部材表面への印刷は、主平面および側面が整合するように行われる。
【0027】
以上を証するため、本発明を添付の図面により開示した。しかしながら、番号を付した当該図面は本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の理解を更に容易にすることを意図しており、上記開示内容に対する変更、改良もしくは変形は当業者により本発明の範囲から逸脱することなく容易になされると想起されるため、保護請求の範囲は以下に記載の特許請求の範囲において開示するものとする。