【実施例1】
【0028】
図5(a)及び
図5(b)は、実施例1に係る半導体装置を例示する断面図である。
図1に示した平面図は実施例1にも共通である。
図5(a)は
図1のA−Aに沿った断面、
図5(b)は
図1のB−Bに沿った断面を図示する。
図1から
図2(b)において既述した構成については、説明を省略する。
【0029】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、実施例1に係る半導体装置100は、窒化シリコン膜32を備える。具体的には、窒化シリコン膜20の上に窒化シリコン膜32(第1窒化シリコン膜)が設けられ、窒化シリコン膜32の上に窒化シリコン膜22(第2窒化シリコン膜)が設けられている。窒化シリコン膜32は、窒化シリコン膜22と重なるように設けられている。すなわち、窒化シリコン膜32は、配線30a及び配線30bの側面及び上面に接触し、窒化シリコン膜22は窒化シリコン膜32に接触するが、配線30a及び配線30bには接触しない。
図5(b)に示すように、
図1のB−B断面において、窒化シリコン膜22及び窒化シリコン膜32は、配線30bの表面が露出するような開口部31を有する。
【0030】
基板10は例えばSiC(炭化シリコン)、Si又はサファイア等からなる。バリア層12は、例えば厚さ300nmの窒化アルミニウム(AlN)からなる。チャネル層14は例えば厚さ1000nmの窒化ガリウム(i−GaN)からなる。電子供給層16は、例えば厚さ300nmの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる。キャップ層18は、例えば厚さ5nmの、ノンドープの窒化ガリウムからなる。半導体装置100は、窒化物半導体を用いたFETである。また配線30a及び配線30bの各々は、FETのソース電極層25およびドレイン電極層27の各々に接続された配線である。
【0031】
ソース電極層25及びドレイン電極層27は、キャップ層18に近い方から順に、例えばチタン(Ti)及びアルミニウム(Al)等の金属を積層してなる。配線30a及び配線30bは、例えば厚さ3μmのAuからなる。ゲート電極28は、キャップ層18に近い方から順に、例えばニッケル(Ni)及びAu等の金属を積層してなる。窒化シリコン膜20の厚さは例えば50〜80nmである。
【0032】
窒化シリコン膜32は、窒化シリコン膜22よりもSiの組成比が高い。例えば、窒化シリコン膜22におけるNに対するSiの組成比Si/Nは0.75以下である。窒化シリコン膜32におけるSi/Nは0.8以上である。窒化シリコン膜22と窒化シリコン膜32とを合わせた膜厚T1は、例えば600nmで、比較例の膜厚T0と同じである。窒化シリコン膜22の膜厚T2は例えば550nmである。窒化シリコン膜32の膜厚T3は例えば50nmである。窒化シリコン膜22の膜厚T2と窒化シリコン膜32の膜厚T3は変更可能であるが、窒化シリコン膜22の膜厚T2は窒化シリコン膜32の膜厚T3よりも大きい。
【0033】
次に、実施例1に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図6(a)から
図7(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を例示する断面図であり、
図1のA−A断面に対応する。
図8(a)から
図9(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を例示する断面図であり、
図1のB−B断面に対応する。
【0034】
まず、例えばMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長法)を用い、基板10に近い方から順に、バリア層12、チャネル層14、電子供給層16、及びキャップ層18をエピタキシャル成長させる。さらに、例えば蒸着法及びリフトオフ法により、キャップ層18の上にソース電極層25、ドレイン電極層27、及びゲート電極28を設ける。
【0035】
図6(a)及び
図8(a)に示すように、キャップ層18の上に、ソース電極層25、ドレイン電極層27、及びゲート電極28を覆うように、窒化シリコン膜20を設ける。
図6(b)及び
図8(b)に示すように、窒化シリコン膜20上にレジスト23を設け、例えばエッチング法により、窒化シリコン膜20に開口部21a及び開口部21bを形成する。開口部21aからはソース電極層25が露出し、開口部21bからはドレイン電極層27が露出する。
【0036】
図7(a)及び
図8(c)に示すように、例えば電解メッキ法又は無電解メッキ法により、ソース電極層25上面に配線30aを、ドレイン電極層27の上面に配線30bをそれぞれ設ける。
【0037】
図7(b)及び
図9(a)に示すように、CVD法により、窒化シリコン膜20、配線30a及び配線30bを覆うように、窒化シリコン膜32を設ける。さらに、窒化シリコン膜32上に窒化シリコン膜22を設ける。
【0038】
窒化シリコン膜32を形成するための製膜条件の例を以下に示す。Si/Nの高い窒化シリコン膜を形成するためには、製膜レートを低下させる必要があり、製膜条件の一例としては以下の範囲が考えられる。
原料流量:SiH
4:NH
3:キャリアガス=2〜10未満:0〜1:1000sccm(3.38×10
−3〜1.69×10
−2未満:0〜1.69×10
−3:1.69Pa・m
3/s)
また具体的には、下記の2通りの方法が挙げられる。
方法1:
シリコン原料としてSiH
4、窒素原料及びキャリアガスとして窒素(N
2)、キャリアガスとしてヘリウム(He)を使用する。また流量比は、例えばSiH
4:キャリアガス=5:1000sccm(8.45×10
−3:1.69Pa・m
3/s)とする。なお、窒素(N
2)とヘリウム(He)との流量比は例えば1:4である。
方法2:
シリコン原料としてSiH
4、窒素原料としてNH
3、キャリアガスとして窒素(N
2)及びヘリウム(He)とを使用する。また流量比は、例えばSiH
4:NH
3:キャリアガス=5:0.5:1000sccm(8.45×10
−3:8.45×10
−4:1.69Pa・m
3/s)とする。なお、窒素(N
2)とヘリウム(He)との流量比は例えば1:4である。
なお、方法1及びのいずれにおいても以下は共通とする。
装置:平行平板プラズマCVD装置
パワー密度:0.07W/cm
2
周波数:13.56MHz
気圧:1Torr(133.3Pa)
炉内温度:300℃
製膜レート:10nm/min以下
【0039】
窒化シリコン膜22は、効率的に所定の厚みをもった窒化シリコン膜を得るための条件が与えられる。前記したように、Si組成比の高い窒化シリコン膜を高い成長レートで製膜することは困難である。そこで、窒化シリコン膜22は、窒化シリコン膜32よりもSi組成比の低い条件を採用する。窒化シリコン膜22を形成するための製膜条件の例を以下に示す。窒化シリコン膜32の製膜条件と共通する部分は省略する。一例としては以下の範囲が考えられる。
流量:
SiH
4:NH
3:キャリアガス=10〜20:2〜10:1000sccm
(1.69×10
−2〜3.38×10
−2:3.38×10
−3〜1.69×10
−2:1.69Pa・m
3/s)
具体的には下記の条件が挙げられる。
SiH
4:NH
3:キャリアガス=15:10:1000sccm(2.535×10
−2:1.69×10
−2:1.69Pa・m
3/s)
パワー密度:0.21W/cm
2
製膜レート:40nm/min以上
【0040】
図9(b)に示すように、配線30b上の窒化シリコン膜22及び窒化シリコン膜32を除去することにより、開口部31を形成する。開口部31からは、ドレインパッド26cとして機能する配線30bの表面が露出する。開口部31からは、配線30bの表面の少なくとも一部が露出していればよい。その後、例えばジェットスクラバー工程等の高圧洗浄工程を行う。高圧洗浄工程の後に、ウェハを個片化するダイシング工程を行う。以上の工程により、実施例1に係る半導体装置100が形成される。
【0041】
実施例1によれば、Auからなる配線30a及び配線30bと接触する窒化シリコン膜32は、窒化シリコン膜22よりもSiの組成比が高い。このため、
図4に示したように、窒化シリコン膜32と配線30a及び配線30bとの密着性が高まる。
【0042】
上記のような窒化シリコン膜22及び窒化シリコン膜32を得るため、窒化シリコン膜32を成長する工程及び窒化シリコン膜22を成長する工程は、SiH
4及びNH
3を原料とし、CVD法を用いる。また、窒化シリコン膜32を成長する工程におけるSiH
4の流量及びNH
3の流量の各々は、窒化シリコン膜22を成長する工程におけるSiH
4の流量及びNH
3の流量の各々よりも小さい。つまり、窒化シリコン膜22を成長する工程は、窒化シリコン膜32を成長する工程よりも、大きなシリコン原料(SiH
4)流量のもと、シリコン原料に対する窒素原料(NH
3)比が大なる条件で実行される。具体的には、既述したように、窒化シリコン膜32を形成する工程において、キャリアガス(He及びN
2)に対するSiH
4の流量比R1は、0.002以上、かつ0.01以下とする。キャリアガスに対するNH
3の流量比R2は、0以上、かつ0.001以下とする。窒化シリコン膜22を形成する工程において、キャリアガス(He及びN
2)に対するSiH
4の流量比R3は、0.01以上、かつ0.02以下とする。キャリアガスに対するNH
3の流量比R4は、0.002以上、かつ0.01以下とする。流量比R1は、例えば0.003以上、かつ0.009以下としてもよい。流量比R2は、例えば0.0001以上、かつ0.0009以下としてもよい。流量比R3は、例えば0.012以上、かつ0.018以下としてもよい。流量比R4は、例えば0.003以上、かつ0.009以下としてもよい。このように、窒化シリコン膜32の組成比Si/Nは高くなる。また、窒化シリコン膜22の原料(SiH
4及びNH
3)の流量は、窒化シリコン膜32の原料の流量より大きいため、製造工程を効率化することができる。従って、実施例1によれば、パッシベーション膜である窒化シリコン膜32の剥離が抑制され、かつ製造工程を効率化することが可能である。キャリアガスは、例えばHe、アルゴン(Ar)等の希ガスとN
2との混合ガス、又は希ガスとすることができる。
【0043】
図4に示したように、窒化シリコン膜の膜厚が5nm又は50nm、組成比Si/Nが0.8以上である場合、窒化シリコン膜の剥離は効果的に抑制される。このため、窒化シリコン膜32の膜厚T3は5nm以上、組成比Si/Nは0.8以上とすることが好ましい。窒化シリコン膜22の組成比Si/Nは例えば0.85以上、又は0.9以上としてもよい。
【0044】
Siの組成比を高めるために、SiH
4及びNH
3の流量を減少させ、CVD法におけるパワー密度を低下させる。この場合、窒化シリコン膜の製膜レートが低下する。例えば、窒化シリコン膜32の製膜レートは、10nm/min以下である。その一方、窒化シリコン膜22の製膜レートは、例えば40nm/min以上である。このように、窒化シリコン膜22は、窒化シリコン膜32より大きな製膜レートのもと成長する。剥離を抑制し、かつ製造工程を効率化するために、配線30a及び配線30bに接触する側にSiの組成比が高い窒化シリコン膜32を設け、窒化シリコン膜32の上にはSiの組成比が低い窒化シリコン膜22を設ける。窒化シリコン膜22の製膜レートを高め、製造工程の効率化するためには、窒化シリコン膜22の組成比Si/Nを0.75以下とすることが好ましい。窒化シリコン膜22の組成比Si/Nは、例えば0.7以下、0.6以下、又は0.5以下としてもよい。
【0045】
製造工程の効率化のためには、製膜レートの高い窒化シリコン膜22を、窒化シリコン膜32より厚くすることが好ましい。また、窒化シリコン膜32の膜厚T3は剥離抑制の効果が十分得られる程度の大きさとすることが好ましい。例えば、窒化シリコン膜22の膜厚T2を100nm以上、窒化シリコン膜32の膜厚T3を5nm以上かつ100nm以下とすることできる。また、窒化シリコン膜22の膜厚T2は、例えば窒化シリコン膜32の膜厚T3の2倍以上、5倍以上、又は10倍以上等とすることができる。耐湿性向上のためには、窒化シリコン膜22と窒化シリコン膜32とを合わせた膜厚T1を大きくすることが好ましい。これにより、製造工程の効率を高め、かつ耐湿性を高めることができる。
【0046】
配線30aはFETのソース電極24に接続される。配線30bはFETのドレイン電極26に接続される。従って、実施例1によれば、FETの信頼性を高めることができる。特に、開口部31においても、窒化シリコン膜32は剥がれにくい。従って、より効果的に半導体装置の信頼性を高めることができる。また、例えばジェットスクラバー工程のような、半導体装置に機械的な力が加わり、かつ水を使用する工程を行った場合でも、窒化シリコン膜32の剥離を抑制することができる。さらに、
図4に示したように、Si/Nの高い窒化シリコン膜は熱衝撃試験においても剥がれにくい。従って、完成した半導体装置を使用する場合でも、窒化シリコン膜32の剥離を抑制することができる。
【0047】
CVD法として、平行平板プラズマCVD法以外に、例えばECR(Electronic Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)プラズマCVD法、又はICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)CVD法を用いることができる。
【0048】
本発明は、表面が金(Au)からなる金属層上における窒化シリコン膜の剥離を効果的に防止できる効果がある。すなわち、実施例で説明した配線30a及び配線30bのほか、電極パッド、その他の電極においても、その表面が金(Au)である場合には、同様の効果を得ることができる。半導体層には、GaN、AlN及びAlGaN以外の窒化物半導体を用いてもよい。窒化物半導体は、窒素を含む半導体であり、例えば窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、及び窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等である。また、その他半導体としては、例えば砒素(As)を含む半導体を用いてもよい。例として、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウム砒素(AlAs)、インジウム砒素(InAs)、インジウムガリウム砒素(InGaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、アルミニウムインジウムガリウム砒素(AlInGaAs)等がある。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。