【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体微細加工・評価基盤技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照明光学系に含まれる凹面鏡の近傍に配置され、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材が照明光のスポットの途中まで挿入されている請求項4〜6のいずれか1項に記載の検査装置。
前記照明光学系に含まれる凹面鏡の近傍に配置され、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材が照明光のスポットの途中まで挿入されている請求項14〜16のいずれか1項に記載の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シュバルツシルト光学系を用いた検査装置の構成を
図11に示す。シュバルツシルト光学系10は、穴付き凹面鏡13と凸面鏡12とを備えている。さらに、シュバルツシルト光学系10には、照明光L1をマスク21に導くための落とし込みミラー11が設けられている。落とし込みミラー11で反射された照明光L1がマスク21に入射する。マスク21に欠陥があると、照明光L1が散乱する。マスク21の欠陥で散乱された散乱光は、穴付き凹面鏡13、及び凸面鏡12で反射して、検出器14で検出される。このように、凸面鏡12の直下に、落とし込みミラー11が配置されている。
【0007】
なお、明視野照明を行うことで、位相欠陥などを感度よく検出することができる。しかしながら、シュバルツシルト光学系10には、中心遮光領域が存在するため、明視野照明を実現することが困難である。すなわち、マスク21で正反射した反射光は穴付き凹面鏡13等で遮られてしまうため、明視野観察を実現することが困難である。明視野観察を行うことでできないため、詳細な検査が困難になってしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、より詳細に検査することができる検査装置、及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る検査装置は、EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査装置であって、凸面鏡と凹面鏡とを有するシュバルツシルト光学系と、前記検査対象で反射した反射光を、前記シュバルツシルト光学系を介して検出する検出器と、前記凸面鏡の前記検査対象側に配置され、暗視野照明を行うため、照明光を前記検査対象の方向に反射する落とし込みミラーと、を備え、前記照明光の少なくとも一部が明視野照明光となるように、前記検査対象に対する前記照明光の入射角度を変える手段と、を備えたものである。この構成では、明視野照明光で照明することができるため、より詳細に検査することができる。
【0010】
上記の検査装置において、前記手段が前記落とし込みミラーの反射面の角度を変える駆動機構を有していてもよい。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。
【0011】
上記の検査装置において、前記手段が前記落とし込みミラーの前段に挿脱可能に設けられた振込ミラーであってもよい。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。
【0012】
上記の検査装置において、前記照明光を前記落とし込みミラーの方向に導く照明光学系をさらに備え、前記照明光学系には、前記照明光の通過を空間的に制限する遮光部材が配置されていてもよい。これにより、検査対象に対して照明光を適切に入射させることができる。
【0013】
上記の検査装置において、前記照明光学系の光軸上において前記照明光を通過させる開口部が前記遮光部材に形成され、前記遮光部材が、前記照明光学系の光軸に沿って移動可能に配置されていてもよい。これにより、照明光の立体角を制御することができるため、暗視野照明の成分を効果的に除去することができる。
【0014】
上記の検査装置において、前記遮光部材が前記凸面鏡と共役な位置に配置され、前記照明光学系の光軸上の照明光を通過させていてもよい。これにより、暗視野照明の成分を効果的に除去することができる。
【0015】
上記の検査装置において、前記照明光学系に含まれる凹面鏡の近傍に配置され、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材が照明光のスポットの途中まで挿入されていてもよい。これにより、照明光を所望の方向から検査対象に入射させることができる。
【0016】
上記の検査装置において、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材の挿入位置を変えるようにしてもよい。これにより、検査対象に対する照明光の入射方向を制御することができる。
【0017】
上記の検査装置において、検出された欠陥のサイズに応じて、前記検査対象に形成された多層反射膜における位相欠陥の成長方向を判定するようにしてもよい。これにより、位相欠陥の成長方向を容易に判別することができる。
【0018】
上記の検査装置において、前記検出器で取得された画像の非対称性の向きに応じて、欠陥の凹凸判定を行うようにしてもよい。これにより、欠陥の凹凸を容易に判別することができる。
【0019】
本実施形態に係る検査方法は、凸面鏡と凹面鏡とを有するシュバルツシルト光学系を用いて、EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査方法であって、暗視野照明を行うため、前記凸面鏡の前記検査対象側に配置された落とし込みミラーによって、照明光を前記検査対象の方向に反射するステップと、前記検査対象で散乱した散乱光を、前記シュバルツシルト光学系を介して検出するステップと、前記照明光の少なくとも一部が明視野照明光となるように、前記検査対象に対する前記照明光の入射角度を変えるステップと、を備えたものである。この方法によれば、明視野照明光で照明することができるため、より詳細に検査することができる。
【0020】
上記の検査方法において、前記落とし込みミラーの反射面の角度を変えることで、前記入射角度を変えるようにしてもよい。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。
【0021】
上記の検査方法において、前記落とし込みミラーの前段に振り込みミラーを挿入することで、前記入射角度を変えるようにしてもよい。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。
【0022】
上記の検査方法において、前記照明光を前記落とし込みミラーの方向に導く照明光学系には、遮光部材が配置され、前記遮光部材は、前記照明光の通過を空間的に制限するようにしてもよい。これにより、検査対象に対して照明光を適切に入射させることができる。
【0023】
上記の検査方法において、前記照明光学系の光軸上において前記照明光を通過させる開口部が前記遮光部材に形成され、前記遮光部材が、前記照明光学系の光軸に沿って移動させるようにしてもよい。これにより、照明光の立体角を制御することができるため、暗視野照明の成分を効果的に除去することができる。
【0024】
上記の検査方法において、前記遮光部材が前記凸面鏡と共役な位置に配置され、前記照明光学系の光軸上の照明光を通過させるようにしてもよい。これにより、暗視野照明の成分を効果的に除去することができる。
【0025】
上記の検査方法において、前記照明光学系に含まれる凹面鏡の近傍に配置され、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材が照明光のスポットの途中まで挿入されていてもよい。これにより、照明光を所望の方向から検査対象に入射させることができる。
【0026】
上記の検査方法において、前記照明光学系の光軸と垂直な面において、前記遮光部材の挿入位置を変えるようにしてもよい。これにより、検査対象に対する照明光の入射方向を制御することができる。
【0027】
上記の検査方法において、検出された欠陥のサイズに応じて、前記検査対象に形成された多層反射膜における位相欠陥の成長方向を判定するようにしてもよい。これにより、位相欠陥の成長方向を容易に判別することができる。
【0028】
上記の検査方法において、前記検出器で取得された画像の非対称性の向きに応じて、欠陥の凹凸判定を行うようにしてもよい。欠陥の凹凸を容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、より詳細に検査することができる検査装置、及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る検査装置、及び検査方法について図面を参照しながら説明する。なお、検査対象としては、EUVマスクに用いられる基板(サブストレートと呼ばれる。)、この基板に上に多層膜やレジストが付けられたブランク、あるいはパターン形成されたEUVマスクのいずれであってもよい。本明細書では、マスク基板、ブランク、及びパターン付きEUVマスクの全ての検査装置を対象としたものであるため、これらを特に区別しない場合は、単にEUVマスク又はマスクと呼ぶものとする。
【0033】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1にかかる検査装置について、
図1を用いて説明する。
図1は、ブランクの欠陥を検出することを主目的としたEUVマスクの検査装置100の全体構成を示した図である。検査装置100は、シュバルツシルト光学系10と、落とし込みミラー11と、検出器14とを備えている。シュバルツシルト光学系10は、凸面鏡12と穴付き凹面鏡13とを備えている。
【0034】
なお、
図1では、説明の明確化のため、マスク21の検査面と垂直な方向をZ方向として、マスク21の検査面と平行な面において、紙面と平行な方向をY方向として示している。Z方向は、シュバルツシルト光学系10の光軸A1と平行になっている。また、マスク21の面と平行な面のうち、Y方向と垂直な方向と平行な方向をX方向とする。以下の説明では、マスク21の検査面が上方を向いており、マスク21に斜め上方から照明光を照射するものとして説明するが、照明方向はマスク21の検査面の向きに応じて、相対的に変化する。
【0035】
本実施の形態の検査装置は、暗視野照明光による検査と、暗視野照明光及び明視野照明光の同時照明を切り替えることができる。そのため、落とし込みミラー11を可動ミラーとしている。なお、暗視野照明光による検査では、
図11で示した構成と同様になる。
【0036】
まず、暗視野照明による検査について説明する。落とし込みミラー11は、マスク21の検査箇所の真上に配置されている。EUV光源(不図示)からの照明光L1は、側方から落とし込みミラー11に入射する。照明光L1は、落とし込みミラー11に当たって下方に反射する。落とし込みミラー11は、暗視野照明を行うため、照明光L1をマスク21の方向に反射する。なお、落とし込みミラー11で反射した照明光L1の光軸は、マスク21の検査面と実質的に垂直になっている。すなわち、落とし込みミラー11で反射した照明光L1は、Z軸に沿って伝播する。照明光L1は図示しない凹面鏡などによって絞られながら伝播しているため、マスク21の検査箇所に集光している。なお、照明光L1として露光波長と同じ13.5nmのEUV光を用いることで、アクティニック(Actinic)検査を行うことができる。
【0037】
マスク21の欠陥箇所に照明光L1が入射すると、照明光L1が散乱する。散乱光は、斜め上方に散乱する。マスク21で散乱した散乱光の一部は、落とし込みミラー11の外側を通過して、穴付き凹面鏡13に入射する。すなわち、落とし込みミラー11の外側であって、穴付き凹面鏡13の外径の内側に散乱した散乱光L2は、穴付き凹面鏡13に入射する。穴付き凹面鏡13は、散乱光L2を斜め下方に反射する。すなわち、穴付き凹面鏡13は、散乱光L2を凸面鏡12の方向に反射する。凸面鏡12は、落とし込みミラー11の真上に配置されている。換言すると、落とし込みミラー11は、凸面鏡12のマスク21側、すなわち、凸面鏡12の直下に配置されている。
【0038】
凸面鏡12は、穴付き凹面鏡13からの散乱光を検出器14の方向に反射する。凸面鏡12で反射した散乱光L2は、穴付き凹面鏡13の穴を通過して、検出器14に入射する。凸面鏡12、及び穴付き凹面鏡13は、散乱光L2を検出器14は、CCD(Charged Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの2次元アレイ光検出器である。例えば、検出器として、TDI(Time Delay Integration)センサを用いることができる。シュバルツシルト光学系10は、マスク21の照明箇所の像を検出器14の受光面上に拡大投射する。したがって、検出器14がマスク21の拡大像を撮像する。
【0039】
検出器14で検出された散乱光L2の強度と閾値を比較することで欠陥を検出する。また、マスク21は、図示しないステージ等の上に載置されている。そして、シュバルツシルト光学系10に対して、ステージを移動させることで、マスク21の任意の箇所を検査することができる。上記のように、検査装置100は、暗視野照明検査を行うモードとなっている。すなわち、マスク21の正常箇所で正反射した正反射光は、落とし込みミラー11等で遮られ、検出器14に入射しない構成となる。これにより、マスク21の欠陥箇所から散乱光のS/Nを高くすることができる。暗視野照明のみで検査を行う場合、照明光は光軸に対して対称な照明光となる。
【0040】
さらに、検査装置100は、暗視野照明検査に加えて、暗視野照明光と明視野照明光を同時に照明する同時照明検査を行うことができる。すなわち、検出器14が、暗視野照明検査による散乱光と明視野照明検査による正反射光を同時に検出する構成を取ることが可能になる。例えば、暗視野照明検査によって、欠陥検出を行った後、落とし込みミラー11を変えて、マスク21に対する照明光L1の入射角度を変える。そして、暗視野照明光と明視野照明光を同時に照明する同時照明検査を行う。そのため、落とし込みミラー11を移動させている。すなわち、落とし込みミラー11を可動ミラーとして、落とし込みミラー11の反射面の角度を変える。こうすることで、マスク21に対する照明光L1の入射角度を変えることができる。
【0041】
図1の点Oの位置を中心に落とし込みミラー11が回転移動する。すなわち、点Oを通り、紙面と垂直なX軸を回転軸として、落とし込みミラー11が回転する。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。例えば、落とし込みミラー11は、
図1の二点鎖線に沿って回転する。落とし込みミラー11はYZ平面内を移動するよう可動機構を駆動する。そして、可動機構の回転角度に応じて、落とし込みミラー11が変位するとともに、落とし込みミラー11の反射面の角度が変化する。例えば、点Oを通るX軸を回転軸として1°回転すると、落とし込みミラー11の反射面も1°回転する。すると、マスク21に対する照明光L1の入射方向が2度変化する。
【0042】
ここで、落とし込みミラー11を回転させても、マスク21に対する照明光L1の入射位置が変化しないようにする。すなわち、マスク21に対する照明光L1の入射位置が変化しないような条件で、回転軸となる点Oの位置を決定する。落とし込みミラー11から点Oまでの距離は、マスク21と落とし込みミラー11までの距離に2倍程度となる。
【0043】
このようにすることで、照明光L1の少なくとも一部が明視野照明光となる。すなわち、マスク21の正常箇所(非欠陥箇所)から正反射された正反射光の一部が、落とし込みミラー11の外側を通過して、穴付き凹面鏡13に入射する。照明光L1の一部は、暗視野照明用の照明光となり、残りが明視野照明用の照明光となる。
【0044】
欠陥の検査を実行するときには、スループットの優れる暗視野光学系を用いることができる。そして、検査の後に欠陥を観察する際には、落とし込みミラー11を移動させる。こうすることで、暗視野照明に明視野の成分を追加する光学系を用いることができる。暗視野照明光と明視野照明光とによって同時照明を行っている。これにより、暗視野照明検査に加えて、同時照明による検査を行うことができる。より詳細な検査が可能となる。
【0045】
なお、EUV光の平面鏡では、有効な反射率を得ることができる反射面の角度が限られる。基準となる入射角度の場合、最も反射率(通常、65%程度)が高く、基準となる入射角度からずれるにつれて、反射率が低下していく。例えば、入射角度が基準となる角度から±2度以上ずれてしまうと、落とし込みミラー11の反射率が低下してしまう。この場合、落とし込みミラー11の反射面の向きを変えても、十分な反射率を得ることができる角度範囲は+2度から−2度までの4度となる。そして、落とし込みミラー11の傾きを3度変更すると入射角度は6°ずらすことができる。照明光L1の中心光軸がZ軸に対して6度傾く。Z軸に対して2〜10度(6度±4度)の範囲で傾斜した照明光L1がマスク21に入射する。のこのため、暗視野照明と6度の明視野照明を共存させることができる。
【0046】
具体的には、光の入射方向に対して落とし込みミラー11の反射面が44度傾いた状態を基準となる入射角度とする。すなわち、入射角度が44度のときに、反射率が最大となるような落とし込みミラー11を用意する。この場合、44度±2度、すなわち、42〜46度の範囲で落とし込みミラー11の反射率が高くなる。そして、反射面が45度傾いた状態で、暗視野照明による検査を行う。暗視野照明光と明視野照明光とで同時照明を行う場合、光の入射方向に対して落とし込みミラー11の反射面を42度傾いた状態とする。これにより、マスク21に対する照明光L1の入射角度を6度とすることができる。さらに、42度と45度は落とし込みミラー11の反射率が十分に高い44度±2度の範囲に含まれる。よって、落とし込みミラー11の反射率が十分に高い状態で、落とし込みミラー11を配置することができる。あるいは、落とし込みミラー11の基準となる入射角度を46度としてもよい。この場合、暗視野照明光を用いるときは、落とし込みミラー11を45度とし、同時照明を行うときは落とし込みミラー11を48度とする。
【0047】
マスク21を用いた露光機と同様の明視野照明(代表的には6度)を行う利点について説明する。従来の暗視野検査装置で欠陥を観察する場合、暗視野照明なので、露光機の照明角度6度と異なる。このため観察する欠陥の転写特性が大きく異なってしまう。本実施の形態の検査装置100のように、明視野成分を加えることでより現実の転写特性に近づく。従来、転写性の変化は、露光機と同等の光学系を有した装置で評価することが一般的である。これに対して、上記の光学系を適用することにより、検査と同時に転写特性を評価することができる。
【0048】
暗視野検査のシュバルツシルト光学系10は実用的なEUV光量を得るため凸面鏡12による5度程度の中心遮光領域が必要である。EUV露光で用いられる6度の入射角度を持った明視野光学系をシュバルツシルト光学系10に追加すると、暗視野照明において凸面鏡12によってEUV光が遮られる領域が現れ、明視野と暗視野が共存した照明となる。明視野と暗視野の照明強度の割合を適切に混ぜることで、明視野の観察でありながら、暗視野によるエッジからの散乱光を強調することができる。
【0049】
露光イメージである明視野像に欠陥からの暗視野散乱光成分を本構造によって任意に加えることができるため、欠陥の転写性の強弱を明視野と暗視野の成分比によって変化させられるため、転写性の評価に有効な手段となる。これにより、より詳細に検査することができる。
【0050】
(駆動機構について)
落とし込みミラー11を駆動する駆動機構は、照明光L1の一部が明視野照明光となるように、マスク21に対する前記照明光の入射角度を変える手段となる。ここで、
図2に落とし込みミラー11を移動させる駆動機構の構成例を示す。
図2は、駆動機構50の構成を模式的に示す斜視図である。ここでは、駆動機構50が3軸+1軸並進アクチュエータを備えている。3本の伸縮するアクチュエータ52で落とし込みミラー11の角度を調整して、位置はアクチュエータ57によって1自由度のみ持たせている。
【0051】
落とし込みミラー11は、アーム55を介して、円環状のフレーム56に連結されている。さらに、アーム55には、落とし込みミラー11を並進移動させるためのアクチュエータ57が設けられている。アクチュエータ57はXY平面内において、伸縮する。アクチュエータ57を駆動することで、落とし込みミラー11がXY面内を並進移動する。
【0052】
フレーム56は、3つのアクチュエータ52によって取り付けられている。アクチュエータ52はZ方向に延びている。すなわち、アクチュエータ52が支柱となって、フレーム56を支持している。アクチュエータ52は、Z方向に伸縮する。アクチュエータ52は、フレーム56とベースプレート51とを連結している。したがって、3つのアクチュエータ52を独立に駆動すれば、フレーム56がXY平面から傾く。これにより、3軸の動作が可能になり、反射面の角度を変えることができる。
【0053】
このような構成とすることで、落とし込みミラー11を適切な位置、及び反射角度にすることができる。例えば、落とし込みミラー11を円弧に近い軌道で移動させることができる。なお、アクチュエータ52やアクチュエータ57はシリンダや圧電素子などを用いることができる。アクチュエータ52やアクチュエータ57の伸縮長が制御される。
【0054】
また、
図3に駆動機構50の別の構成例を示す。
図3は、6軸のアクチュエータ52を用いた駆動機構50を示す斜視図である。6本の伸縮するアクチュエータ52で落とし込みミラー11の位置と角度の6自由度を制御する。落とし込みミラー11は、アーム55を介して、円環状のフレーム56に連結されている。フレーム56は、6つのアクチュエータ52によって取り付けられている。アクチュエータ52が支柱となって、フレーム56を支持している。アクチュエータ52はZ方向から傾斜した斜め方向に延びている。アクチュエータ52は、Zから傾斜した斜め方向に伸縮する。アクチュエータ52は、フレーム56とベースプレート51とを連結している。したがって、6つのアクチュエータ52を独立に駆動すれば、フレーム56をXY平面から傾けることができるとともに、並進運動させることも可能となる。これにより、6軸の動作が可能になる。
【0055】
このような構成とすることで、落とし込みミラー11を任意の位置、及び反射角度にすることができる。例えば、落とし込みミラー11を円弧に沿った軌道で移動させることができる。なお、アクチュエータ52をシリンダとする6軸アクチュエータを駆動機構50に用いることができる。
【0056】
図2、
図3のような構造の場合、細いアーム55を介して、落とし込みミラー11を移動可能な構造体であるフレーム56に保持している。よって、シュバルツシルト光学系10の光軸から外した位置にアクチュエータ52やアクチュエータ57を配置することができる。これにより、結像光学系の有効NA範囲を遮らない構造が可能である。また、落とし込みミラー11も暗視野のみの場合と、明視野と暗視野の場合とで共通で使える利点がある。他にも、
図1に示した回転に対して円周方向に移動する構造をガイドとリンク構造で実現する方式も考えられる。あるいは、リンク機構などを用いて、落とし込みミラー11を移動させてもよい。
【0057】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる検査装置100について、
図4を用いて説明する。本実施の形態では、実施の形態1の駆動機構に変えて、振込ミラー15が設けられている。なお、シュバルツシルト光学系10などの基本的な構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0058】
振込ミラー15は、照明光L1の光路中に挿脱可能に設けられている。振込ミラー15は、落とし込みミラー11の前段に挿脱可能に設けられている。例えば、振込ミラー15をX方向に沿って移動させることで、振込ミラー15を光路中に挿入することができる。これにより、簡便に明視野照明光での照明が可能になる。
【0059】
暗視野照明を行う場合、振込ミラー15を光路中から取り除く。したがって、照明光L1が落とし込みミラー11で反射して、マスク21を照明する。一方、同時照明を行う場合、振込ミラー15を光路中に挿入する。したがって、照明光L1が振込ミラー15で反射して、マスク21を照明する。すなわち、振込ミラー15を落とし込みミラー11の前段に挿入することで、照明光L1が落とし込みミラー11に入射することなく、振込ミラー15で反射する。
【0060】
このように、マスク21に対する照明光L1の入射角度を変える手段が、挿脱可能に設けられた振込ミラー15となっている。そして、振込ミラー15と落とし込みミラー11の位置が異なっている。さらに、振込ミラー15の反射面と、落とし込みミラー11の反射面の角度が異なっている。よって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
実施の形態3.
本実施の形態に係る検査装置100について、
図5を用いて説明する。
図5は、検査装置100の全体構成を示す図である。本実施の形態では、
図1の構成に加えて、照明光学系30の構成が設けられている。なお、照明光学系30以外の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。実施の形態3では、照明光学系30にピンホール32を設けることで、照明立体角を制御している。
【0062】
照明光学系30は、光源35と凹面鏡31とピンホール32と凹面鏡33とを備えている。凹面鏡31と凹面鏡33は、例えば楕円面鏡である。光源35は、EUV光を照明光L1として出射する。なお、光源35に照明光L1を均一化するホモジナイザーを設けてもよい。光源35からの照明光L1は、凹面鏡31で反射する。凹面鏡31で反射した照明光L1は、ピンホール32に入射する。ピンホール32は、照明光L1を空間的に遮光する遮光部材である。
【0063】
ピンホール32の開口部は、照明光学系30の光軸を中心に配置されている。ピンホール32は、凹面鏡31で反射した照明光L1の一部を遮光する。ピンホール32を通過した照明光L1は、凹面鏡33に入射する。凹面鏡33は、照明光L1を落とし込みミラー11に向けて反射する。そして、ピンホール32を照明光学系30の光軸方向(矢印方向に沿って移動可能に配置する。こうすることで、照明立体角を制御することができる。
【0064】
さらに、ピンホール32を凸面鏡12の位置と共役な位置に配置するようにしてもよい。こうすると、コントラストは焦点位置ほど得られないが、ピンホール32の像が凸面鏡12の近傍に形成される。なお、凸面鏡12の位置は、散乱光L2がマスク21で反射して穴付き凹面鏡13に向かう間における凸面鏡12の位置である。
【0065】
明視野照明のみを行いたい場合に、穴付き凹面鏡13により遮られる光を効率よく除去することができる。すなわち、ピンホール32の開口径を十分小さくすることで、照明光の通過が空間的に制限され、ビーム径が小さくなる。これにより、マスク21からの正反射光が凸面鏡12の外側を通過するようになる。マスク21で散乱した暗視野成分を効率よく除去することができる。正反射光の成分と散乱光の成分比を容易に調整することができる。さらに、ピンホール32を開口径の大きなアパーチャとすることもできる。あるいは、ピンホール32を開口部分が可変な絞りとすることも可能である。こうすることで、正反射光の成分と散乱光の成分比を容易に調整することができる。
【0066】
実施の形態4.
本実施の形態に係る検査装置100について、
図6を用いて説明する。
図6は、検査装置100の全体構成をした図である。実施の形態4では、実施の形態3のピンホール32に代えて、遮光板34を用いている。なお、実施の形態1、3と同様の構成については、説明を省略する。
【0067】
本実施の形態にかかる検査装置100では、遮光板34を凹面鏡33の近傍に配置している。遮光板34は、空間的に照明光L1を遮光する遮光部材である。遮光板34は、例えば、照明光L1の断面において、光路の片側半分に挿入されている。こうすることで、マスク21に照射する照明光L1の角度成分の分布を変えることができる。照明光学系30の光軸と垂直な面において、遮光板34が照明光L1のスポットの途中まで配置されている。照明光学系30の光軸と垂直な面において、片側半分の照明光L1は遮光され、もう片側半分の照明光L1は、マスク21を照明する。遮光板34は、散乱光L2の角度分布を制御している。
【0068】
暗視野照明からの散乱光角度分布を調整できる構造を実現でき、明視野と暗視野の比率を変更する構造も可能である。光軸と垂直な方向において、遮光板34の挿入位置を変えることで、明視野と暗視野の比率を変更することができる。このようにすることで、簡便な構成で、照明光の比率を変えることが可能になる。このように、遮光板34は、正反射光、及び散乱光の角度成分を制限する絞りとなる。このため、遮光板34を凹面鏡33のより近傍、すなわち、瞳面に近い位置に配置することが好ましい。
【0069】
例えば、Z軸から6度傾いた方向を照明光L1の光軸とする場合、遮光板34を照明光学系30の光路の半分まで挿入すると、6度〜10度の照明角度範囲で照明することができる。よって、照明角度範囲を容易に制御することができる。このように、実施の形態3、4によって、照明光を所望の角度でマスク21に入射させることができる。また、遮光板34の代わりにピンホールやアパーチャなどを配置してもよい。ピンホールやアパーチャの開口部を照明光学系30の光軸からずれた位置に配置する。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【0070】
さらに、6度照明の付随した効果として、明視野と暗視野照明を組み合わせる際に、照明光の中心軸がシュバルツシルト光学系10の中心軸(Z軸)からずれて非対称な照明となる。このため、画像の輝度分布の非対称性の向きを調べることにより、欠陥の凹凸判定が可能となる。以下、凹凸欠陥を判定する方法を説明する。
図7は、マスク21の表面から突起した凸欠陥22を検出する様子を示す図であり、
図8はマスク21の表面から窪んだ凹欠陥23を検出する様子を示す図である。
図7(a)、及び
図8(a)は、欠陥箇所を示すYZ断面図を示している。
図7(b)、及び
図8(b)は、欠陥箇所を示すXY平面図を示している。
図7(c)、及び
図8(c)は、検出器14で検出される検出光強度のY方向プロファイルを示している。
【0071】
照明光L1がZ軸に対して非対称になっている。したがって、凸欠陥22と凹欠陥23とで、Y方向における検出光強度のプロファイルが変化する。例えば、
図7、
図8では、斜め左上方から照明光L1がマスク21に入射している。よって、非対称に照明しているため、凸欠陥22か凹欠陥23かによって、正反射光の強度が変化する。
【0072】
例えば、凸欠陥22の左半分において検出光強度が低くなり、右半分において、検出光強度が高くなる。反対に、凹欠陥23の左半分において、検出光強度が低くなり、右半分において、検出光強度が高くなる。凸欠陥22と凹欠陥23とでは、表面の傾斜角が異なるため、Y方向のプロファイルに変化が生じる。プロファイルの凹凸の順番によって、凹欠陥か凸欠陥かを判別することができる。したがって、検出器14で取得された画像の非対称性の向きに応じて、欠陥の凹凸判定を容易に行うことができる。
【0073】
さらに、位相欠陥の内部構造に非対称性がある場合、欠陥内部の成長方向を判定することができる。欠陥の成長方向を判定する方法について、
図9、及び
図10を用いて説明する。
図9は、照明光L1の入射方向に沿って欠陥が成長している構成を示し、
図9は、照明光L1の入射方向から傾いて位相欠陥26が成長している構成を示している。
図9(a)、
図10(a)は、マスク21の位相欠陥箇所を示す断面図である。なお、
図9(a)、
図10(a)では、同じサイズの位相欠陥26が存在している。
図9(b)、
図10(b)は、同じサイズの位相欠陥26によって検出される欠陥サイズを示す図である。
【0074】
マスクサブストレートとなる石英上に欠陥がある場合、その上に、EUV光を反射する多層反射膜24を形成する際に位相欠陥が成長してしまう。マスク21の検査面と垂直方向に対して、位相欠陥が非対称に成長する。異方性の位相欠陥26の成長方向を欠陥サイズに基づいて、判定することができる。
【0075】
マスク21での正反射する正反射光の方向が、位相欠陥26の成長方向によって変化することになる。例えば、位相欠陥26の成長方向が照明光L1の入射方向に近い場合、欠陥サイズが小さくなる。位相欠陥26の成長方向が照明光L1の入射方向から大きくずれている場合、欠陥サイズが大きくなる。したがって、落とし込みミラー11の傾きや、マスク21を回転させることで、照明方向を変えることができる。照明方向を変えることで、位相欠陥26の欠陥サイズが変わることになる。そして、欠陥サイズが最も小さくなる方向を位相欠陥26の成長方向とすることができる。照明の向きの変更により欠陥の形状が異なるため、欠陥内部の成長方向を判定することができる。このように、位相欠陥26の検出や凹凸判定に敏感な光学系を実現することができる。暗視野の非対称照明も欠陥の深さや内部構造などの特性を分類する上で有効な情報となる。このような、凹凸欠陥や位相欠陥26の検出処理は、検出器14からの検出データを取り込む処理装置で行うことができる。
【0076】
また、実施の形態1〜4を適宜組み合わせても良い。例えば、実施の形態2の構成に、実施の形態3、4の構成を適用してもよい。さらに、実施の形態3、4の構成を同時に適用してもよい。
【0077】
検査対象は、EUVマスクに用いられるものとすることが可能である。例えば、EUVマスクに用いられるマスクサブストレート、マスクサブストレートに多層膜やレジストが設けられたブランク(マスクブランク)、又はパターン形成されたパターン付きEUVマスクを検査対象とすることができる。上記の検査装置での検査で良品と判定されたマスクサブスレートやブランクを用いることで、パターン付きEUVマスクを生産性よく製造することができる。さらに、このEUVマスクや検査で良品と判定されたパターン付きEUVマスクを用いて、ウェハ上のレジストを露光する。そして、レジストを現像し、エッチング工程を経ることで、ウェハ上にパターンを形成することができる。このようにすることで、高い生産性で、パターン付きウェハを製造することができる。もちろん、検査対象は、EUV露光用のEUVマスク、マスクサブストレート、マスクブランク、パターン付きマスク等に限定されるものではない。