(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787268
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】浴室用洗い場床および表面材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20150910BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20150910BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20150910BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20150910BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
E03C1/20 A
A47K4/00
E04F15/00 F
B32B33/00
B32B3/14
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-54712(P2010-54712)
(22)【出願日】2010年3月11日
(65)【公開番号】特開2011-185022(P2011-185022A)
(43)【公開日】2011年9月22日
【審査請求日】2013年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北角 俊実
(72)【発明者】
【氏名】北村 直紀
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−328131(JP,A)
【文献】
特開昭60−171126(JP,A)
【文献】
特開2009−066918(JP,A)
【文献】
特開2008−025122(JP,A)
【文献】
特開2009−013628(JP,A)
【文献】
特開2006−063554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
A47K 4/00
B32B 1/00−35/00
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室用洗い場床の上面に積層される表面材の製造方法であって、
複数のシートが積層一体化されたシート材に対して、ローラーに形成された刃でシートの一部を異なる色のシートが可視されるように切削して凹凸形状を形成したことを特徴とする表面材の製造方法。
【請求項2】
浴室用洗い場床の上面に積層される表面材の製造方法であって、
複数のシートをローラーで加圧して圧着させる際に、前記ローラーに形成された刃でシートの一部を異なる色のシートが可視されるように切削して凹凸形状を形成したことを特徴とする表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用洗い場床および表面材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗い場の床面上に表面に凹凸パターンが形成されたシートを貼り付けた洗い場の床用シートが開示されている。さらに、該シートを透明とし、その裏面に色柄が印刷される点についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−63554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような色柄が印刷されたシートを用いた場合、安価で作業負荷の小さい格子模様の洗い場床を提供することができるが、シートを成形した後に色柄を印刷する製法であるため、表面に形成された凹凸パターンと、印刷された格子模様とを一致させることが困難であり、結果、
図7に示すように、それらが一致していないことによりデザイン性が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、洗い場床表面に格子模様を施すにあたって、表面に形成された凹凸パターンと、格子模様とを容易に一致させることが可能なデザイン性に優れる表面材を有する浴室用洗い場床、およびその表面材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る
表面材の製造方法は、浴室用洗い場床の上面に積層される表面材の製造方法であって、複数のシートが積層一体化されたシート材に対して、ローラーに形成された刃でシートの一部を異なる色のシートが可視されるように切削して凹凸形状を形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、
複数のシートが積層一体化されたシート材に対して凹凸形状を形成する際に、凸部に位置する部分の上部シートはそのまま残し、凹部に位置する部分の上部シートが切削されることで下部シートが表面に可視されるようにしている。予め、上部シートと下部シートとをそれぞれ色の異なるシートで構成しておくことにより、凹凸パターンと格子模様とが一致したデザイン性に優れた表面材を形成することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明に係る表面材の製造方法は、
浴室用洗い場床の上面に積層される表面材の製造方法であって、複数のシートをローラーで加圧して圧着させる際に、前記ローラーに形成された刃でシートの一部を異なる色のシートが可視されるように切削して凹凸形状を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、
複数のシートを圧着させて一体化する際に、ローラーに刃が形成されていることで、圧着と同時に表面に凹凸形状を形成することができる。さらに、凹凸形状を形成する際に、凸部に位置する部分の上部シートはそのまま残し、凹部に位置する部分の上部シートが切削されることで下部シートが表面に可視されるようにしている。予め、上部シートと下部シートとをそれぞれ色の異なるシートで構成しておくことにより、凹凸パターンと格子模様とが一致したデザイン性に優れた表面材を形成することができる。
【0010】
尚、上記した「色の異なるシート」とは、それらが色相の異なるもの(異系色)であることのみを規定したものではなく、同系色であっても、明度や彩度を異ならせ、上部シートと下部シートとが区別して識別できるものであれば、含まれるものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価で作業負荷の小さい格子模様の洗い場床であって、表面に形成された凹凸パターンと、格子模様とを容易に一致させることが可能なデザイン性に優れる表面材を有する浴室用洗い場床、およびその表面材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床の摸式斜視図である。
【
図2】同洗い場床における凹凸形状が形成される前の表面材の斜視図である。
【
図3】同洗い場床における凹凸形状が形成された後の表面材の斜視図である。
【
図4】同洗い場床における凹凸形状が形成された後の表面材の断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る表面材の製造方法を例示する模式図である。
【
図6】第2の実施形態に係る表面材の製造方法を例示する模式図である。
【
図7】従来技術を用いて、洗い場床を製造した場合の摸式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る洗い場床1は、基材2と表面材3とを備え、表面材3は基材2よりも浴室内側に積層されている。
【0017】
基材2は、浴室外に水を漏出させない防水性、および壁パネル、天井パネル、風呂椅子などの静荷重や、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない十分な強度を有し、例えば、FRP等の熱硬化性樹脂から形成されている。
【0018】
基材2は、全体としては浅底のパン形状に形成されている。また、基材2には、排水口部21と、排水口部21に向って下り傾斜面となっている表面部22と、表面部22の最外縁部で上方に立ちあがり形成された水返し壁部23とを有する。
【0019】
図2に示すように表面材3は、複数枚のシートを貼り合わせて積層一体化したものであり、上部シート31と、上部シート31よりも下に積層され、上部シート31とは色の異なる下部シート32と、下部シート32よりも下に積層される最下部シート33と、を有する。また、表面材3は、基材2の表面部22の上に接着剤などによって貼り付けられている。
【0020】
尚、上記した「色の異なるシート」とは、それらが色相の異なるもの(異系色)であることのみを規定したものではなく、同系色であっても、明度や彩度を異ならせ、上部シートと下部シートとが区別して識別できるものであれば、含まれるものとする。
【0021】
図3および
図4に示すように、上部シート31には、下部シート32の一部を露出させる切り目35が形成されている。すなわち、この切り目35によって、色の異なる下部シート32が、上部シート31から露出する。そして、この切り目35から露出した下部シート32の部分が凹部36となり、切り目35が露出していない上部シート31の部分が凸部37となる。このようにして、洗い場床表面に凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、使用者が洗い場床上面を足で踏んで移動する際の滑り止めとして効果を発揮する他、凹部36が排水口部21に水を導く排水溝としての役割も果たす。
【0022】
上記した表面材3は、
図5に例示した方法で製造される。
【0023】
本製造装置は、複数枚のシートをそれぞれ別系統で移動させるための材料ロール部4と、材料ロール部4側から移動してきた複数枚のシートに対して熱を加えながら圧着させるラミネートロール部5と、ラミネートロール部5によって積層一体化された材料表面に凹凸形状を形成させる型押しロール部6と、から構成されている。
【0024】
材料ロール部4は、上部シート31をラミネートロール部5側に向って移動させるための上部シート用ロール41と、下部シート32をラミネートロール部5側に向って移動させるための下部シート用ロール42と、最下部シート33をラミネートロール部5側に向って移動させるための最下部シート用ロール43とから構成されている。
【0025】
ラミネートロール部5は、材料ロール部4を経て送られてきた、上部シート31、下部シート32、および最下部シート33を、2つのラミネートロール51、52の間に通すことで、積層一体化させている。
【0026】
型押しロール部6は、ラミネートロール部5を経て送られてきた積層されたシートを、パターンロール61と、受圧ロール62との間に通す。パターンロール61の表面には、上部シート31に切り目35を形成するための刃(突出部)65が設けられている。これにより、パターンロール61と受圧ロール62との間を積層されたシートが通過する際に、上部シート31に切れ目35が形成され、切れ目35から下部シート32の一部が露出する。このようにして、表面に凹凸が形成されたパターン付きの表面材3が形成できる。
【0027】
上記のように形成された表面材3は、所定のサイズに切断され、基材2の表面部22の上に貼り付けられる。
【0028】
尚、パターンロール61の刃65は、表面材3に形成される切れ目35に適合するパターン形状と高さとを有するように設計される。すなわち、
図3のように表面材3に縦方向と横方向の凹部36が延在形成されるようにするため、刃65は縦横に二次元的に配列されている。
【0029】
また、刃65の高さは、型押しロール部6における積層シートへの加圧の際に、刃65が上部シート31を貫通し、下部シート32に到達する高さに設定される。これにより、刃65によって形成された切れ目35によって、下部シート32の一部を露出させることができる。
【0030】
こうすることで、表面材3の凸部37は平面視で方形状に形成され、凹部36は凸部37の周りを囲むように平面視で縦方向と横方向に延在された線状に形成され、格子模様が施されることになる。
【0031】
尚、
図5に例示した製造工程は、連続的に実施しても良く、不連続的に実施しても良い。
【0032】
尚、上述した
図5の実施例では、ラミネートロール部5で複数枚のシートを積層一体化させた後に、型押しロール部6で積層一体化されたシート材の表面に凹凸形状を形成させていたが、
図6に示すように、複数のシートをローラーで加圧して圧着させる際に、同時に表面に凹凸形状を形成させるラミネート兼型押しロール7を設けても良い。
【0033】
以上の通り、本発明によれば、洗い場床表面に格子模様を施すにあたって、表面に形成された凹凸パターンと、格子模様とを容易に一致させることが可能なデザイン性に優れる表面材を有する浴室用洗い場床、およびその表面材の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…洗い場床、2…基材、3表面材、4…材料ロール部、5…ラミネートロール部、6…型押しロール部、7…ラミネート兼型押しロール、21…排水口部、22…表面部、23…水返し壁部、31…上部シート、32…下部シート、33…最下部シート、41…上部シート用ロール、42…下部シート用ロール、43…最下部シート用ロール、51…ラミネートロール、52…ラミネートロール、61…パターンロール、62…受圧ロール