【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0027】
実 施 例 1
(1)二酸化窒素の濃度低減性試験:
内径が5mmΦのガラス管内に、紙製のウエス約0.1gを充填し、この紙製ウエスに下記表1に示す量の本発明の除去剤を含浸させた。このガラス管の一方の端を8.5ppmの二酸化窒素を入れたテドラーバックと連結し、他方の端を二酸化窒素用ガス検知管(ガステック社製)に連結した。ガス検知管の他方には、吸引用シリンジに接続した。
【0028】
この状態で、吸引用シリンジによりテドラーバック内の二酸化窒素を吸引し、ガラス管内で除去されなかった二酸化窒素濃度をガス検知管で測定した。なお、ブランクとしては、紙製のウエスに除去剤を含浸させないものを用い、以下の式により二酸化窒素除去効果を確認した。この結果を下記の表1に示す。
【0029】
除去率(%)= (B−A)/ B × 100
A:除去剤を通過させた後の二酸化窒素濃度
B:ブランクを通過させた後の二酸化窒素濃度
【0030】
(2)二酸化硫黄の濃度低減性試験:
8.5ppmの二酸化窒素を4.2ppmの二酸化硫黄にかえ、検知管として二酸化硫黄用ガス検知管(ガステック社製)を利用する以外は、上記(1)と同様にして試験を行った。二酸化窒素濃度を二酸化硫黄濃度に代えた上記式を用い、二酸化硫黄の除去効果を確認した。この結果も表1に示す。
【0031】
結 果:
【表1】
【0032】
実 施 例 2
本発明の除去剤を用いて、気体状態における二酸化窒素の除去効果を、下記手順により確認した。
【0033】
まず、1Lのテドラーバック内にボンベ空気1Lと本発明の除去剤50μLを注入し、40℃の恒温装置内に10分以上放置し、精油のヘッドスペース(本発明ガス)を作成した。
【0034】
次いで、上記本発明ガスの全量を、20Lのテドラーバッグ内に注入し、清浄空気にて20Lになるまで満たした。これに二酸化窒素(6.2ppm)を注入し、注入3分後、および30分後の二酸化窒素濃度を検知管で測定し、二酸化窒素除去率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
実 施 例 3
下記表3の処方で擬似ヒノキ精油を作成した。作成した擬似ヒノキ精油について、実施例1と同様に二酸化窒素、二酸化硫黄の除去効果を試験した。この結果を表4に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
実 施 例 4
実施例3で作成した擬似ヒノキ精油を用いて、気体状態における二酸化窒素、二酸化硫黄の除去効果を、下記方法により確認した。
【0040】
まず、擬似ヒノキ精油1mlを1Lのテドラーバックに注入し、40℃の恒温装置内に5分以上放置し、精油のヘッドスペース(本発明ガス)を作成した。
【0041】
一方、8ppmの二酸化窒素ガスをガスタイトシリンジにて100ml採取し、10Lのテドラーバックに入れ、清浄空気9.9Lを加えて0.08ppm前後の二酸化窒素ガスを調製した。また、同様にして0.1ppm前後の二酸化硫黄ガスを調製した(以下、これらのガスを「テストガス」と総称する)。
【0042】
上記の本発明ガス400mlと各テストガス100mlを1Lのテドラーバックに注入し、経時的に残存しているテストガスの濃度を大気汚染測定装置(堀場製作所製)で測定(測定ガス濃度)した。コントロールとして、サンプルガスの代わりに清浄空気を同量入れて残存テストガスの濃度を測定し、下記の式により除去率を測定した。この結果を表5に示す。
【0043】
除去率(%)= (B−A)/ B × 100
A:測定ガス濃度
B:コントロールガス濃度
【0044】
【表5】
【0045】
実 施 例 5
二酸化窒素とγ−テルピネンの反応による粒子の生成:
1Lのテドラーバッグ内にボンベ空気1Lとγ−テルピネン50μLを注入し、40℃にて10分間放置した。その後、20Lのテドラーバッグ内に揮発したγ−テルピネンのヘッドスペースを全量注入し、清浄空気にて20Lになるまで満たした。これに二酸化窒素(6.2ppm)を注入し、注入3分後の粒子径をパーティクルカウンター(Wide−Range Particle Spectrometer)MODEL1000XP:米国MSP社製)を用いて測定した。なおブランクとして、二酸化窒素単独およびγ−テルピネン単独を注入したもの(二酸化窒素混合前のもの)を同様の方法により測定した。結果を
図3及び
図4に示す。
【0046】
以上の結果より、二酸化窒素単独および本発明の除去剤であるγ−テルピネン単独を注入したものについては3分経過後も大きな粒子の生成は確認できなかった。それと比較して、本発明の除去剤であるγ−テルピネンに二酸化窒素を注入したものは、3分経過後には大きな径の粒子の生成が確認できた。すなわち、本発明の除去剤であるγ−テルピネンは、気体状態で二酸化窒素と混合することにより速やかに径の大きな粒子を生成することで二酸化窒素の反応性を抑制しているものと考えられた。
【0047】
実 施 例 6
二酸化窒素の酸化反応抑制確認試(1):
リノール酸の過酸化物の生成の阻害率により、本発明の除去剤による二酸化窒素の酸化能抑制効果を以下の手順にて確認した。
【0048】
リノール酸10%を含有するクロロホルム溶液を、直径約9cmのシャーレに0.1mL滴下し、緩やかに回転させながら溶媒を揮散させて、シャーレ底面にリノール酸を均一に塗布した。10Lのテドラーバッグの一角を切断して開口し、このシャーレを入れた後に開口部を熱シールした。このバッグを同様の操作にて4個用意した。
【0049】
一方、1Lのテドラーバッグに本発明の除去剤であるγ−テルピネンを50μL注入し、ボンベ空気で満杯にして40℃恒温槽に10分放置して、γ−テルピネンのヘッドスペーステドラーバッグを作成した。γ−テルピネンヘッドスペース1Lを、上記で調製したリノール酸塗布シャーレの入ったバッグに注入し、ついで100ppmの二酸化窒素をそれぞれ、1350mL、150mL、0mL加えた後、ボンベ空気で満杯に膨らませ40℃の恒温槽内に放置した。
【0050】
90分経過後にシャーレを取り出し、シャーレ底面のリノール酸を、エタノール2.5mLを用いてバイアル内に洗い込んだ。このエタノール溶液16μLを計り取って、75%エタノール4mL、30%チオシアン酸アンモニウム水溶液41μL、さらに0.02M塩化鉄(II)の3.5%塩酸溶液41μLを加えて充分に混合した。塩化鉄溶液を加えてから正確に3分後に、吸光度計にて赤色(500nm)の吸光度を測定した。なお、コントロールとして、二酸化窒素のみを添加したものの吸光度及びブランクとして、二酸化窒素および本発明の除去剤を添加しないもの(空気のみ)で測定した吸光度を求め、以下の式により過酸化物量増減を評価した。結果を表6に示す。
【0051】
(A
2−A
0)
過酸化物生成阻害率(%)=(1− ―――――― )×100
(A
1−A
0))
A
0:ブランクの吸光度
A
1:二酸化窒素のみ(コントロール)の吸光度
A
2:本発明の除去剤を添加した場合の吸光度
【0052】
【表6】
【0053】
γ-テルピネンヘッドスペースを二酸化窒素に添加することでリノール酸の過酸化生成は阻害された。すなわち本発明の除去剤であるγ-テルピネンは二酸化窒素の酸化能を抑制していることが確認できた。
【0054】
実 施 例 7
二酸化窒素の酸化反応抑制確認試(2):
本発明の除去剤と二酸化窒素を24時間接触した場合の酸化能抑制効果を以下の手順にて確認した。
【0055】
1Lのテドラーバッグにγ−テルピネン50μLを注入した。このテドラーバッグを、ボンベ空気で満杯にして40℃恒温槽に10分放置し、γ−テルピネンのヘッドスペーステドラーバッグを作成した。次いで、γ−テルピネンのヘッドスペース1Lをそれぞれ10Lのテドラーバッグに注入し、ついで100ppmの二酸化窒素を1350mL加えた後、ボンベ空気で満杯に膨らませ40℃の恒温槽内に24時間放置した。
【0056】
一方、実施例6と同様の操作を行ってリノール酸を均一に塗布したシャーレを用意し、10Lのテドラーバッグ内に入れ、開口部を熱シールしたものを用意した。このテドラーバッグに、24時間前に調製したそれぞれの気体を注入し40℃の恒温槽に放置した。90分経過後にシャーレを取り出し、前試験の方法と同様の操作を行って、吸光度計にて赤色(500nm)の吸光度を測定し、実施例6の式を用いて同様に過酸化物量増減を評価した。
【0057】
この結果、本発明の除去剤と二酸化窒素を混合後、24時間経過した気体では、リノール酸の過酸化物生成は100%阻害された。つまり、本発明の除去剤と二酸化窒素を24時間混合した後においては、二酸化窒素の酸化能を完全に抑制していることがわかった。
【0058】
実 施 例 8
ジプロピレングリコール90質量%にサビネン10質量%を配合し、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。得られた空間噴霧用有害酸化物除去剤を超音波霧化装置((株)ミクニ製)を用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0059】
実 施 例 9
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール50質量%にサビネン50質量%を配合し、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を加熱蒸散装置(エステー(株)社製消臭プラグ)を用いて空間に噴霧し、窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0060】
実 施 例 10
サビネン2質量%を界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5質量%で水に可溶化させて、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を市販のポンプスプレーを用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0061】
実 施 例 11
サビネン0.1質量%を水99.9質量%に分散させて、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を超音波霧化装置(エコーテック(株)製)を用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0062】
実 施 例 12
サビネン3.0g、プロピレングリコール10gおよび水84gの混合物中に、ゲル化剤としてκ−カラギーナン3gを分散させ、約60℃に加熱分散後、上面開放のカップ型容器に充填し、冷却固化してゲル状の空間揮散用有害酸化物除去剤を製造した。
【0063】
このものを、石油ストーブを使用する室内空間に設置し、揮散させたところ、約1ヶ月間、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0064】
実 施 例 13
サビネン2質量%を、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5質量%で水に可溶化させて空間揮散有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を
図1のような揮散装置中に充填し、石油ストーブを使用する室内空間に設置し、揮散させたところ、約3ヶ月間、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0065】
実 施 例 14
サビネン(精油)を、
図2のような加圧空気霧化噴霧装置を用い、石油ストーブを使用している室内に5ml/分で8時間噴霧した。使用前に比べ8時間後のホルムアルデヒドや窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物の濃度は低下した。