特許第5787293号(P5787293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787293有害酸化物の除去剤および当該除去剤を利用する有害酸化物の除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787293
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】有害酸化物の除去剤および当該除去剤を利用する有害酸化物の除去方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20150910BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C09K3/00 S
   B01D53/50
   B01D53/34ZAB
   B01D53/56
   B01D53/77
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-501665(P2011-501665)
(86)(22)【出願日】2010年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2010053066
(87)【国際公開番号】WO2010098438
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-43707(P2009-43707)
(32)【優先日】2009年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大平 辰朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 直之
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−246056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B01D 53/34
B01D 53/50
B01D 53/56
B01D 53/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルピネン−4−オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、カジネン、δ−3−カレン、テルピノレン、1,4−シネオールおよび1,8−シネオールよりなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の化合物を有効成分として含有する有害酸化物除去剤。
【請求項2】
ボルニルアセテート、カジネン、δ−3−カレン、テルピノレン、1,4−シネオールおよび1,8−シネオールよりなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の化合物を有効成分として含有する有害酸化物除去剤。
【請求項3】
δ−3−カレン、テルピノレンおよび1,4−シネオールよりなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の化合物を有効成分として含有する有害酸化物除去剤。
【請求項4】
有害酸化物が窒素酸化物または硫黄酸化物である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の有害酸化物除去剤。
【請求項5】
請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させることを特徴とする大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項6】
有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触を、有害酸化物除去剤を含浸させたフィルター中に有害酸化物を含有する大気を通過させることにより行う請求項第5項記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項7】
有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触を、有害酸化物除去剤中で有害酸化物を含有する大気をバブリングすることにより行う請求項第5項記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項8】
有害酸化物除去剤と、有害酸化物を含有する大気との接触を、有害酸化物を含有する大気中に有害酸化物除去剤を揮散させることにより行う請求項第5項記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項9】
有害酸化物除去剤を、霧化させた状態で揮散させる請求項第8項記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【請求項10】
有害酸化物除去剤の霧化を、ポンプスプレー、エアゾール、超音波振動子、加圧液噴霧スプレーまたは加圧空気霧化噴霧装置を用いて行う請求項第9項記載の大気中の有害酸化物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害酸化物の除去剤に関し、更に詳細には、各種の排煙、排気ガス中に含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物を除去することのできる有害酸化物の除去剤およびこれを利用する有害酸化物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や工場のボイラー、あるいはごみの焼却場の稼動に伴い、窒素酸化物(NOx)や、硫黄酸化物(SOx)を含む種々の化学物質を含む排煙が排出されていることが知られている。また、自動車排気ガスにも、特にNOx、SOxなどの各種の人体に有害な化学物質が含まれていることが知られている。
【0003】
これらのNOxおよびSOxは、単に人体に有害であるだけでなく、酸性雨の原因ともなっている。更に、NOxと非メタン系炭化水素とが存在する状態で、太陽光による光化学反応が発生すると、光化学スモッグが発生する。この光化学スモッグは、大気中の炭化水素やNOxが紫外線を吸収して光化学反応を起こし、有害物質である光化学オキシダントなどを生成する現象とされている。しかしながらNOx、特に自動車等の移動発生源に起因するNOxについては対策が遅れており、深刻な問題となっている。
【0004】
現在、NOxの除去方法としては、カルボン酸やアルカリ液といった吸収液の中を通したり、特殊な機械の中を通すことにより、NOxを処理するという方法が知られている。しかしながら、それらの方法はいずれも手間や費用がかかるという問題があった。
【0005】
これに対し、NOxと結合しうる物質により、NOxを除去する方法も知られている。例えば、特許文献1には、α−テルピネン、ミルセン、アロオシメンなどの共役二重結合を有するテルペン化合物を、ガス状にして、空気中に散布することにより、空気中のNOxをテルペン化合物中に包含させて、NOxを除去することを特徴とするNOxの除去方法が報告されている。
【0006】
また、非特許文献1には、α−ピネン、d−リモネン等のテルペン系化合物をガス状にして硫黄酸化物や窒素酸化物を吸収除去することも報告されている。
【0007】
しかし、上記特許文献1や非特許文献1に記載の化合物の、NOxやSOxの除去効果は十分でなく、より高い除去能力を持った安全性の高い化合物を見出し、これを利用する除去剤の提供が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−327934
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「臭気の研究」、Vol.22,No.5,p22−29(1992);西田耕之助、小橋俊文、大迫政浩、宍戸健一、樋口能士、樋口隆哉、植物層を利用したガス状汚染物質の除去に関する研究 第3報.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の課題は、容易にかつ効率よくNOxおよびSOxを除去できる天然成分を見出し、これを利用する有害酸化物の除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、各種天然化合物の有するNOxおよびSOx除去効果について鋭意研究を行ったところ、ある特定の化合物が、非常に効率よく上記有害酸化物を除去しうることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、テルピネン−4−オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、カジネン、サビネン、α−テルピネオール、δ−3−カレン、テルピノレン、γ−テルピネン、1,4−シネオール及び1,8−シネオールから選ばれる化合物の1種若しくは2種以上の化合物を有効成分として含有する有害酸化物除去剤を提供するものである。
【0013】
また本発明は、上記有害酸化物除去剤を、有害酸化物を含有する大気と接触させることを特徴とする有害酸化物の除去方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窒素酸化物、硫黄酸化物などの人体に有害な酸化物を効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例9で用いた揮散装置を示す図面である。
図2】実施例10で用いた加圧空気霧化噴霧装置を示す図面である。
図3】二酸化窒素の粒子径の分布
図4】γーテルピネンヘッドスペース及びγーテルピネンヘッドスペースに二酸化窒素を混合した後の粒子径の分布
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有害酸化物除去剤(以下、「除去剤」という)は、テルピネン−4−オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、カジネン、サビネン、α−テルピネオール、δ−3−カレン、テルピノレン、γ−テルピネン、1,4−シネオールおよび1,8−シネオールから選ばれる1種若しくは2種以上の化合物(以下、「有効成分」ということがある)を含有するものであり、NOxやSOxを有効に除去しうるものである。
【0017】
上記有効成分は、それぞれ下記の化学構造式で示されるものである。
【化1】
(1)テルピネン−4−オール
(2)シトロネラール
(3)ボルニルアセテート
(4)カジネン
(5)サビネン
(6)α−テルピネオール
(7)δ−3−カレン
(8)テルピノレン
(9)γ−テルピネン
(10)1,4−シネオール
(11)1,8−シネオール
【0018】
これら有効成分のうち、より好ましいものとしては、ボルニルアセテート、カジネン、サビネン、α−テルピネオール、δ−3−カレン、テルピノレン、γ−テルピネン、1,4−シネオールおよび1,8−シネオールが挙げられ、特に好ましいものとしては、δ−3−カレン、テルピノレン、γ−テルピネンおよび1,4−シネオールが挙げられる。
【0019】
上記の本発明の除去剤の有効成分である化合物は、何れも公知の化合物であり、合成で、あるいは天然の植物等の精油から単離することにより入手することができるものである。また、上記化合物に代え、これを含有する精油を用いることも可能である。
【0020】
本発明の除去剤は、上記有効成分をそのまま、あるいはこれを適当な担体と組み合わせることにより調製することができる。例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンアルコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等の溶剤中に、上記有効成分を、0.01質量%ないし99質量%程度の濃度で溶解させることにより、本発明の除去剤を製造することができる。
【0021】
また、本発明の除去剤の製造に当たって、水または水溶性溶剤に可溶化させて使用する場合は、必要により、界面活性剤、ハイドロトロープ剤等を使用することができる。
【0022】
更に、本発明の除去剤には、本発明品の2種以上を混合して使用することもでき、またそれらに他の香料成分を配合することにより、調合香料ともなる除去剤を製造することも可能である。他の香料成分としては、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。
【0023】
このようにして得られる本発明の除去剤は、従来のNOx、SOxの除去に用いられる方法により使用することが可能である。例えば、本発明の除去剤を紙(パルプ)、不織布、樹脂シート、木材シート、木粉、樹脂ビーズ等で構成されたフィルターに含浸させ、このフィルター中に、NOx、SOxを含む空気を通過させ、有効成分と接触させる方法や、NOx、SOxを含む空気を、本発明の除去剤中でバブリングさせることにより有効成分と接触させる方法等により、大気中のNOx、SOxを除去することが可能である。
【0024】
また、本発明の除去剤を大気と接触させ、大気中の有害酸化物を除去する方法の別の例としては、本発明の除去剤をそのままあるいは適当な揮散装置を用いて揮散させる方法や、ポンプスプレー、エアゾール、超音波振動子、加圧液噴霧スプレーまたは加圧空気霧化噴霧装置等の霧化装置を用い、霧化させた状態で揮散させる方法等が挙げられ、これらの方法により、通常の生活空間中から有害酸化物を除去させることが可能である。
【0025】
本発明の除去剤の有効成分は、何れも香料の成分でもあり、人体への危険性もないものである。従って、これを生活空間の大気中に接触や噴霧した場合であっても、人間やその他の動植物に不快感や悪影響を及ぼすことがない。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0027】
実 施 例 1
(1)二酸化窒素の濃度低減性試験:
内径が5mmΦのガラス管内に、紙製のウエス約0.1gを充填し、この紙製ウエスに下記表1に示す量の本発明の除去剤を含浸させた。このガラス管の一方の端を8.5ppmの二酸化窒素を入れたテドラーバックと連結し、他方の端を二酸化窒素用ガス検知管(ガステック社製)に連結した。ガス検知管の他方には、吸引用シリンジに接続した。
【0028】
この状態で、吸引用シリンジによりテドラーバック内の二酸化窒素を吸引し、ガラス管内で除去されなかった二酸化窒素濃度をガス検知管で測定した。なお、ブランクとしては、紙製のウエスに除去剤を含浸させないものを用い、以下の式により二酸化窒素除去効果を確認した。この結果を下記の表1に示す。
【0029】
除去率(%)= (B−A)/ B × 100
A:除去剤を通過させた後の二酸化窒素濃度
B:ブランクを通過させた後の二酸化窒素濃度
【0030】
(2)二酸化硫黄の濃度低減性試験:
8.5ppmの二酸化窒素を4.2ppmの二酸化硫黄にかえ、検知管として二酸化硫黄用ガス検知管(ガステック社製)を利用する以外は、上記(1)と同様にして試験を行った。二酸化窒素濃度を二酸化硫黄濃度に代えた上記式を用い、二酸化硫黄の除去効果を確認した。この結果も表1に示す。
【0031】
結 果:
【表1】
【0032】
実 施 例 2
本発明の除去剤を用いて、気体状態における二酸化窒素の除去効果を、下記手順により確認した。
【0033】
まず、1Lのテドラーバック内にボンベ空気1Lと本発明の除去剤50μLを注入し、40℃の恒温装置内に10分以上放置し、精油のヘッドスペース(本発明ガス)を作成した。
【0034】
次いで、上記本発明ガスの全量を、20Lのテドラーバッグ内に注入し、清浄空気にて20Lになるまで満たした。これに二酸化窒素(6.2ppm)を注入し、注入3分後、および30分後の二酸化窒素濃度を検知管で測定し、二酸化窒素除去率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
実 施 例 3
下記表3の処方で擬似ヒノキ精油を作成した。作成した擬似ヒノキ精油について、実施例1と同様に二酸化窒素、二酸化硫黄の除去効果を試験した。この結果を表4に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
実 施 例 4
実施例3で作成した擬似ヒノキ精油を用いて、気体状態における二酸化窒素、二酸化硫黄の除去効果を、下記方法により確認した。
【0040】
まず、擬似ヒノキ精油1mlを1Lのテドラーバックに注入し、40℃の恒温装置内に5分以上放置し、精油のヘッドスペース(本発明ガス)を作成した。
【0041】
一方、8ppmの二酸化窒素ガスをガスタイトシリンジにて100ml採取し、10Lのテドラーバックに入れ、清浄空気9.9Lを加えて0.08ppm前後の二酸化窒素ガスを調製した。また、同様にして0.1ppm前後の二酸化硫黄ガスを調製した(以下、これらのガスを「テストガス」と総称する)。
【0042】
上記の本発明ガス400mlと各テストガス100mlを1Lのテドラーバックに注入し、経時的に残存しているテストガスの濃度を大気汚染測定装置(堀場製作所製)で測定(測定ガス濃度)した。コントロールとして、サンプルガスの代わりに清浄空気を同量入れて残存テストガスの濃度を測定し、下記の式により除去率を測定した。この結果を表5に示す。
【0043】
除去率(%)= (B−A)/ B × 100
A:測定ガス濃度
B:コントロールガス濃度
【0044】
【表5】
【0045】
実 施 例 5
二酸化窒素とγ−テルピネンの反応による粒子の生成:
1Lのテドラーバッグ内にボンベ空気1Lとγ−テルピネン50μLを注入し、40℃にて10分間放置した。その後、20Lのテドラーバッグ内に揮発したγ−テルピネンのヘッドスペースを全量注入し、清浄空気にて20Lになるまで満たした。これに二酸化窒素(6.2ppm)を注入し、注入3分後の粒子径をパーティクルカウンター(Wide−Range Particle Spectrometer)MODEL1000XP:米国MSP社製)を用いて測定した。なおブランクとして、二酸化窒素単独およびγ−テルピネン単独を注入したもの(二酸化窒素混合前のもの)を同様の方法により測定した。結果を図3及び図4に示す。
【0046】
以上の結果より、二酸化窒素単独および本発明の除去剤であるγ−テルピネン単独を注入したものについては3分経過後も大きな粒子の生成は確認できなかった。それと比較して、本発明の除去剤であるγ−テルピネンに二酸化窒素を注入したものは、3分経過後には大きな径の粒子の生成が確認できた。すなわち、本発明の除去剤であるγ−テルピネンは、気体状態で二酸化窒素と混合することにより速やかに径の大きな粒子を生成することで二酸化窒素の反応性を抑制しているものと考えられた。
【0047】
実 施 例 6
二酸化窒素の酸化反応抑制確認試(1):
リノール酸の過酸化物の生成の阻害率により、本発明の除去剤による二酸化窒素の酸化能抑制効果を以下の手順にて確認した。
【0048】
リノール酸10%を含有するクロロホルム溶液を、直径約9cmのシャーレに0.1mL滴下し、緩やかに回転させながら溶媒を揮散させて、シャーレ底面にリノール酸を均一に塗布した。10Lのテドラーバッグの一角を切断して開口し、このシャーレを入れた後に開口部を熱シールした。このバッグを同様の操作にて4個用意した。
【0049】
一方、1Lのテドラーバッグに本発明の除去剤であるγ−テルピネンを50μL注入し、ボンベ空気で満杯にして40℃恒温槽に10分放置して、γ−テルピネンのヘッドスペーステドラーバッグを作成した。γ−テルピネンヘッドスペース1Lを、上記で調製したリノール酸塗布シャーレの入ったバッグに注入し、ついで100ppmの二酸化窒素をそれぞれ、1350mL、150mL、0mL加えた後、ボンベ空気で満杯に膨らませ40℃の恒温槽内に放置した。
【0050】
90分経過後にシャーレを取り出し、シャーレ底面のリノール酸を、エタノール2.5mLを用いてバイアル内に洗い込んだ。このエタノール溶液16μLを計り取って、75%エタノール4mL、30%チオシアン酸アンモニウム水溶液41μL、さらに0.02M塩化鉄(II)の3.5%塩酸溶液41μLを加えて充分に混合した。塩化鉄溶液を加えてから正確に3分後に、吸光度計にて赤色(500nm)の吸光度を測定した。なお、コントロールとして、二酸化窒素のみを添加したものの吸光度及びブランクとして、二酸化窒素および本発明の除去剤を添加しないもの(空気のみ)で測定した吸光度を求め、以下の式により過酸化物量増減を評価した。結果を表6に示す。
【0051】
(A−A
過酸化物生成阻害率(%)=(1− ―――――― )×100
(A−A))

:ブランクの吸光度
:二酸化窒素のみ(コントロール)の吸光度
:本発明の除去剤を添加した場合の吸光度
【0052】
【表6】
【0053】
γ-テルピネンヘッドスペースを二酸化窒素に添加することでリノール酸の過酸化生成は阻害された。すなわち本発明の除去剤であるγ-テルピネンは二酸化窒素の酸化能を抑制していることが確認できた。
【0054】
実 施 例 7
二酸化窒素の酸化反応抑制確認試(2):
本発明の除去剤と二酸化窒素を24時間接触した場合の酸化能抑制効果を以下の手順にて確認した。
【0055】
1Lのテドラーバッグにγ−テルピネン50μLを注入した。このテドラーバッグを、ボンベ空気で満杯にして40℃恒温槽に10分放置し、γ−テルピネンのヘッドスペーステドラーバッグを作成した。次いで、γ−テルピネンのヘッドスペース1Lをそれぞれ10Lのテドラーバッグに注入し、ついで100ppmの二酸化窒素を1350mL加えた後、ボンベ空気で満杯に膨らませ40℃の恒温槽内に24時間放置した。
【0056】
一方、実施例6と同様の操作を行ってリノール酸を均一に塗布したシャーレを用意し、10Lのテドラーバッグ内に入れ、開口部を熱シールしたものを用意した。このテドラーバッグに、24時間前に調製したそれぞれの気体を注入し40℃の恒温槽に放置した。90分経過後にシャーレを取り出し、前試験の方法と同様の操作を行って、吸光度計にて赤色(500nm)の吸光度を測定し、実施例6の式を用いて同様に過酸化物量増減を評価した。
【0057】
この結果、本発明の除去剤と二酸化窒素を混合後、24時間経過した気体では、リノール酸の過酸化物生成は100%阻害された。つまり、本発明の除去剤と二酸化窒素を24時間混合した後においては、二酸化窒素の酸化能を完全に抑制していることがわかった。
【0058】
実 施 例 8
ジプロピレングリコール90質量%にサビネン10質量%を配合し、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。得られた空間噴霧用有害酸化物除去剤を超音波霧化装置((株)ミクニ製)を用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0059】
実 施 例 9
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール50質量%にサビネン50質量%を配合し、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を加熱蒸散装置(エステー(株)社製消臭プラグ)を用いて空間に噴霧し、窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0060】
実 施 例 10
サビネン2質量%を界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5質量%で水に可溶化させて、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を市販のポンプスプレーを用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0061】
実 施 例 11
サビネン0.1質量%を水99.9質量%に分散させて、空間噴霧用有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を超音波霧化装置(エコーテック(株)製)を用いて空間に噴霧し窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0062】
実 施 例 12
サビネン3.0g、プロピレングリコール10gおよび水84gの混合物中に、ゲル化剤としてκ−カラギーナン3gを分散させ、約60℃に加熱分散後、上面開放のカップ型容器に充填し、冷却固化してゲル状の空間揮散用有害酸化物除去剤を製造した。
【0063】
このものを、石油ストーブを使用する室内空間に設置し、揮散させたところ、約1ヶ月間、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0064】
実 施 例 13
サビネン2質量%を、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5質量%で水に可溶化させて空間揮散有害酸化物除去剤を製造した。この有害酸化物除去剤を図1のような揮散装置中に充填し、石油ストーブを使用する室内空間に設置し、揮散させたところ、約3ヶ月間、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物を除去した。
【0065】
実 施 例 14
サビネン(精油)を、図2のような加圧空気霧化噴霧装置を用い、石油ストーブを使用している室内に5ml/分で8時間噴霧した。使用前に比べ8時間後のホルムアルデヒドや窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害酸化物の濃度は低下した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の有害酸化物除去剤は、有害酸化物除去作用が高いと共に、その有効成分が天然由来のものであり、かつ、香料成分としても利用されているものであるため、安全性が高く、また使用感も良好なものである。
【0067】
従って、窒素酸化物や硫黄酸化物などの有害酸化物が存在する環境において、これらを除去するために有利に利用しうるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 … … 揮散装置
2 … … 揮散体
3 … … 吸上芯
4 … … 容器
5 … … 除去剤
10 … … 加圧空気霧化噴霧装置
11 … … 気液混合噴霧ノズル
12 … … 2液流量調整供給装置
13 … … コンプレッサ
14 … … 精油
15 … … 水
16 … … 空気
図1
図2
図3
図4