(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の真空度センサは、上記検査空間の圧力を導入する圧力導入部材と、ダイヤフラムと、ダイヤフラムの変異を検出するための変異検出機構の3部材が必須である。
また、圧力導入部材の開口を塞ぐ際には、ダイヤフラムと上記開口外周との間に隙間ができないように取り付ける細かい作業が必要である。このような作業は、特に、真空度センサが小さくなればなるほど難しいものとなる。
このような細かい作業が必要になるため、上記既存の真空度センサは、その製造コストが高く、高価なものになっていた。
なお、上記したダイヤフラムを用いたもの以外の真空度センサも、構造が複雑で高価なものばかりである。
【0005】
一方、真空度センサを必要とするものとして、真空ポンプを利用した高所作業用の吸着装置がある。
この吸着装置は、高層ビルの窓ガラスや壁面の清掃作業などのために、屋上から吊るしたロープで体やゴンドラを支持して作業する高所作業時に、壁面などに吸着して作業者やゴンドラの揺れを止め、作業箇所に一時的にとどまることができるようにするための装置である。
【0006】
上記吸着装置は、例えば、作業者が壁面に吸着パッドを押し付けた状態で、本体に搭載した小型の真空ポンプを駆動して上記吸着パッド内を吸引し、内部の真空度に依存した吸着力を得るものである。
このような吸着装置は、作業者を所定の作業箇所に留めることができる程度の吸着力を発揮するまでには、ある程度の真空度が必要である。
【0007】
そこで、吸着装置に真空度センサを設けて、壁面に密着させた吸着パッド内の真空度を検出して、吸着装置の吸着力が必要な大きさに達したかどうかを確認できる吸着装置もある(特許文献2参照)。
しかし、上記したように、従来の真空度センサは構造が複雑で高価なものばかりで、このような真空度センサを用いたのでは、吸着装置の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】
この発明の目的は
、コストの上昇を抑えながら、吸着力の確認ができる吸着装置
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、基板の周囲に吸着パッドを備えた吸着装置において、上記基板には、吸着パッド及び被吸着面で囲まれ吸着エリアのエアを排出する真空ポンプと、この真空ポンプに電源を供給する電源回路と、樹脂製のベローズスポイト及び上記ベローズスポイトの変形に追随する接点を有するスイッチからなる真空度センサと、この真空度センサの上記スイッチのスイッチング動作に応じて切り替わる表示部とを備えた。
そして、上記ベローズスポイトは内部の圧力と外部の圧力とが等しい通常状態で所定の形状保持能力を有する一方、内部が真空になったときその真空度に応じて変形するとともに、真空状態から通常状態になったとき上記所定の形状に復帰する復帰能力を備えた蛇腹状の本体と筒状部とを備え、上記スイッチは押圧か解放かによって接点を切り換えるレバーを備え、上記ベローズスポイトの筒状部を上記吸着エリアに連通させるとともに、上記通常状態のときに、上記ベローズスポイトの本体が上記レバーを押圧し、上記吸着エリア内の真空度が所定の真空度に達したとき、上記レバーが上記ベローズスポイトの変形に応じて解放され、上記表示部を切り替える構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明
では、ベローズスポイトとスイッチという安価な部品のみで
真空度センサを構成しているため、
これを用いた吸着装置は、低コストであり、小型化、軽量化も可能である。
そして、
ベローズスポイトの変形に追随する接点を有するスイッチからの信号を取り出すことによって、
吸着エリア内の真空度を検出することができるため、上記スイッチが、オンオフするタイミングを、目的の真空度に合わせれば、
吸着エリア内が目的の真空度に達したか否かを
表示部に表示させることができる。
このような真空度センサは小型化も容易なので
、吸着装置の重量を、ほとんど増加させることがない
。
【0013】
また、表示部によって、吸着エリア内が所定の真空度に達したことを、一目で確認
することができる。
そのため、吸着装置の使用現場において、必要な吸着力に達したことを確認しながら安全に作業をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図3を用いてこの発明の真空度センサを用いた、この発明の吸着装置の一実施形態を説明する。
この実施形態の吸着装置は、金属製または樹脂製の円盤状の基板1の外周に沿ってシリコン樹脂製の吸着パッド2で囲まれる吸着エリアEを構成している。
上記吸着パッド2は、スカート状にした先端部2aと、先端部2aに連続し、基端側に設けた円盤状の平坦部2bとを備え、この平坦部2bを基板1の吸着エリアE側となる内側面1aに接触させている。さらに、上記平坦部2bと先端部2aとの間には、吸着エリアE内にドーナツ状の支持凸部2cを突出させている。そして、この支持凸部2cと上記平坦面2bとの間には、例えば塩化ビニルや金属など、上記吸着パッド2より剛性の高い材質で形成した円盤状の押さえ板3を設けている。
【0016】
この押さえ板3と上記基板1との間に上記パッド2の平坦部2bを挟みこんで、ビス4によって三者を一体化している。
また、上記基板1には、押さえ板3及び平坦部2bを貫通し、吸着エリアEに連通する真空引き孔5を形成し、この真空引き孔5にはチューブ6を挿入している。このチューブ6は、上記基板1であって上記内側面1aと反対側の外側面1b上において、後で説明する真空ポンプPに接続した継手14に連結している。
【0017】
また、上記基板1の外側面1b上には筒部材7を固定し、この筒部材7における上記基板1とは反対側の端部を円盤状のカバー8で閉鎖している。
このカバー8上には、真空ポンプPを動作させる電源スイッチ9と、真空破壊スイッチ10aと、この発明の表示部でありLEDからなる表示ランプ11と、この吸着装置を使用する作業者が手でつかむ取っ手12とを設けている。
【0018】
上記筒部材7内である上記基板1の外側面1b上には、
図2に示すように、真空ポンプPと、これを駆動する電動モーターmと、真空度センサSと、真空破壊弁10とを設けている。
上記真空度センサSは、その詳細は後で説明するが、樹脂製の
ベローズスポイト19とこの
ベローズスポイト19の変形に追随するセンサ用スイッチ20とで構成される。
そして、上記真空ポンプP及び電動モーターmと、上記
ベローズスポイト19は、それぞれ帯状の固定部材23、24によって基板1に固定されている。
【0019】
さらに、基板1の外側面1b上には、三方に接続口を有するT型の継手13,14を設けている。
そして、上記T型の継手13は、上記真空ポンプPの吸引口21との間をチューブ15で、上記真空度センサSの
ベローズスポイト19との間をチューブ16で、もう一方のT型の継手14との間をチューブ17で接続している。なお、図中の符号22は、真空ポンプPの排気口である。
【0020】
また、上記継手14は、上記継手13と反対側の接続口にチューブ18の一端を接続し、このチューブ18の他端を真空破壊弁10に接続するとともに、もう一つの接続口には、基板1を貫通する真空引き孔5に挿入したチューブ6(
図1参照)を接続している。
これにより、上記すべてのチューブ15,16、17,18、6内、上記吸着パッド2で囲まれた上記吸着エリアE内、及び
ベローズスポイト19内が連通することになる。
【0021】
さらに、上記電動モーターmには図示しない電源回路を接続し、上記カバー8上に露出している電源スイッチ9により、電源回路と電動モーターmとの接続をオンオフする構成にしている(
図1参照)。この電源スイッチ9は、手の指で操作することによってオンオフするものである。
なお、
図2において、上記電動モーターmに電源を供給するための電気配線及び電源回路は省略しているが、この実施形態では上記電源回路を乾電池で構成する。そして、乾電池を収容する乾電池ケースを上記カバー8に設け、この乾電池ケースの上面をカバー8面に開口させて電池交換が容易にできるようにしている。但し、上記乾電池ケースの開口には開閉自在な蓋部材を取り付けてもよい。
【0022】
また、上記真空破壊弁10は、スイッチ10aを押すことによって、内部を大気に開放し、これに接続しているチューブ18を介して上記吸着エリアE内に大気圧を導くためのものである。真空によって壁面などに吸着した吸着パッド2は、真空ポンプPを停止させただけでは、しばらく吸着力を保持しているので簡単に取り外すことができない。この真空破壊弁10のスイッチ10aを押せば、吸着エリアE内を短時間で大気圧にでき、吸着パッド2を速やか取り外すことができる。
【0023】
さらに、上記外側面1b上には、一対の支柱25を固定し、この支柱25には、上記カバー8を挟んで取っ手12を取り付けるようにしている。
さらにまた、基板1の外側面1b上には、図示しない棒状のスペーサを複数起立固定させ、上記筒部材7、及び上記支柱25とともに上記カバー8を支持するようにしている。
なお、図中部号26はブザーであり、符号27は基板1にねじ止めたビスである。
上記ブザー26を、電源回路を構成する乾電池の電圧を確認するための図示しない回路に接続し、乾電池の電圧が所定の電圧以下になったとき、警報音を発するように構成している。
【0024】
次に、上記真空度センサSについて
図3を用いて説明する。
上記したように、この真空度センサSは
ベローズスポイト19とセンサ用スイッチ20とからなるが、上記
ベローズスポイト19は、内部が真空になったとき、その真空度に応じて変形する
。この実施形態の
ベローズスポイト19は、蛇腹状になった本体19aとこれに連続する筒状部19bとを備え
ている。
また、センサ用スイッチ20は、レバー20aを押圧するか解放するかによって内部接点が切り替わる構成にしたスイッチである。そして、
ベローズスポイト19の内外圧力が等しい
図3(a)に示す通常状態において上記レバー20aが押された状態を保持し、
ベローズスポイト19内の真空度が高くなって本体19aが収縮する
図3(b)に示す真空状態でレバー20aが解放されるようにしている。
【0025】
このように、レバー20aの位置、すなわち上記
ベローズスポイト19の変形に応じて切り換わる内部接点を有するセンサ用スイッチ20を電源回路に接続すれば、接点の状態を電気信号として取り出すことができる。
その結果、上記
ベローズスポイト19の変形度が検出でき、結果として
ベローズスポイト19内の真空度を検出できる。厳密には、この真空度センサSは、
ベローズスポイト19内の真空度の連続な値を検出するものではなく、内部が所定の真空度に達したことを検出するものである。従って、検出したい真空度に相当する
ベローズスポイト19の変形度に合わせて、上記センサ用スイッチ20の接点が切り替わるように、上記レバー20aの位置を設定している。
【0026】
なお、この
ベローズスポイト19の本体19aから突出した筒状部19bは、
吸着エリアEに連通す
る連通口を構成している。
この真空度センサSは、上記したようにセンサ用スイッチ20と
ベローズスポイト19とからなり、その構成は単純で、従来のダイヤフラム取り付け作業のような細かい作業が必要ない。そのため、この真空度センサSは低コストで製造できる。しかも、
ベローズスポイト19は、射出成型によって形成できるため、さらに、その製造コストを低く抑えることができる。
【0027】
そして、この実施形態の吸着装置では、上記真空度センサSの
ベローズスポイト19の筒状部19bにチューブ16を接続し、このチューブ16を介して
ベローズスポイト19の内部を、上記真空ポンプP、吸着エリアE、及び真空破壊弁10に接続している。
また、上記センサ用スイッチ20の入力端子を上記電源回路と接続するとともに出力端子を表示ランプ11に接続している。そして、この実施形態では、センサ用スイッチ20の内部接点は、
図3(a)に示す通常状態で、図示しない電源回路と上記表示ランプ11との連通を遮断し、
図3(b)に示すレバー20aが解放された真空状態で、図示しない電源回路と上記表示ランプ11とを電気的に接続するようにしている。
【0028】
この実施形態の吸着装置の作用を以下に説明する。
作業者が、この吸着装置の取っ手12を持って吸着パッド2を被吸着面である壁面などに押し付けながら電源スイッチ9をオンにすると、電動モーターmが真空ポンプPを駆動する。真空ポンプPが駆動されると、上記チューブ15,16,17,及びチューブ6を介して上記吸着パッド2で囲まれた吸着エリアE内が吸引され、吸着エリアE内の真空度が上がる。この時、上記真空度センサSの
ベローズスポイト19は、チューブ16、17及びチューブ6を介して上記吸着エリアEと連通しているため、内部の真空度は上記吸着エリアEとほぼ等しくなる
。
【0029】
そして、上記吸着エリアE内の真空度が上がって吸着パッド2の吸着力が強くなると、
ベローズスポイト19内の真空度も上がり、本体19aが収縮する。
ベローズスポイト19の本体19aが収縮して、
図3(b)に示すようにレバー20aが解放されると、センサ用スイッチ20の内部接点が切り替わり、上記表示ランプ11に電源が供給されて表示ランプ11が点灯する。この表示ランプ11の点灯によって、作業者は、吸着エリアE内の真空度が所定の真空度に達したことを知ることができる。すなわち、作業者は、吸着装置の吸着力が十分な強さに達したことを知り、安全に作業をすることができる。
言い換えれば、作業者は、表示ランプ11が点灯するまでは、吸着力が不十分であると判断し、待機することができる。
【0030】
このように、この実施形態の吸着装置なら、吸着力を確認することができるので、例えば高所作業の安全性を確保できる。
そして、この吸着装置に設けた上記真空度センサSは、上記したように特に低コストで製造可能な
ベローズスポイト19とセンサ用スイッチ20だけで構成されるもので、これを備えることによる吸着装置の製造コストの上昇はほとんどない。
【0031】
なお、上記真空度センサSは、上記実施形態のハンディタイプの吸着装置だけでなく、例えばクローラ機構を備え、複数の吸着パッドを有する吸着装置に用いることもできる。その場合には、吸着パッドごとに真空度センサを設けることが好ましいが、この発明の真空度センサSならば、設置数が多くなってもそれほどコストが上がることはない。
また、この
実施形態の真空度センサは、上記した高所作業用の吸着装置以外にも、所定の真空度を検出するために利用できることは当然である。
但し、上記真空度センサSは、単純でしかも軽量化が可能な構成であるため、それを設けることによって装置全体の重量がほとんど増加することがない
。したがって、上記実施形態のようなハンディタイプの吸着装置に特に適している。
【0032】
なお
、吸着パッド2の材質としては、上記実施形態で用いたシリコン樹脂に限らず、高分子ゲルや発泡樹脂など、適度な弾性及び柔軟性を有する材質が使用可能である。