特許第5787336号(P5787336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787336
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】解剖台換気システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 16/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   A61B16/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-32440(P2010-32440)
(22)【出願日】2010年2月17日
(65)【公開番号】特開2011-167292(P2011-167292A)
(43)【公開日】2011年9月1日
【審査請求日】2013年1月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236160
【氏名又は名称】株式会社テクノ菱和
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政典
(72)【発明者】
【氏名】滝口 陽介
(72)【発明者】
【氏名】安井 文男
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−061909(JP,A)
【文献】 特開平10−272138(JP,A)
【文献】 特開2000−230746(JP,A)
【文献】 特開2007−252453(JP,A)
【文献】 特開2009−226222(JP,A)
【文献】 特開2010−227442(JP,A)
【文献】 特開2010−051495(JP,A)
【文献】 特開2006−288730(JP,A)
【文献】 特開2003−319943(JP,A)
【文献】 特開2001−178785(JP,A)
【文献】 特開平11−206772(JP,A)
【文献】 特開平06−315485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖台の検体載置台の上方長手方向に、小孔からの空気の浸み出しにより微風流を発するソックスダクトを設置し、
前記解剖台の前記検体載置台の周囲に、検体周囲の空気を吸引する排気口を設け、
前記検体載置台の下方に、前記排気口と通じる排気部を設け、
前記排気部には、板状体が前記排気部の開口において当該開口の開口量を変化させ、前記排気部からの排気量を調整するようにスライド移動可能に設けられ、
前記ソックスダクトの短手方向の幅は、前記検体載置台の周囲に設けられた排気口のうち、短手方向で対向する排気口の幅より狭く、
前記ソックスダクトの小孔から前記解剖台に向けて垂直落下方向に対して擬似層流を形成し、この層流を前記排気口を介して前記排気部より排気することを特徴とする解剖台換気システム。
【請求項2】
前記解剖台の前記検体載置台周囲には、前記検体載置台の上方に向かって柔軟性を有するガス拡散防止板が設けられたことを特徴とする請求項1記載の解剖台換気システム。
【請求項3】
前記ソックスダクトは、その断面が半円形状で、円弧部分を前記解剖台側に向けて設置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の解剖台換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖実習室における解剖台において、ホルマリンから発生するホルムアルデヒドガス等の有害なガスの換気を行なう解剖台換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
解剖実習において、一般に、検体の腐敗を防止するため、ホルマリンを検体に注入したり検体をホルマリンに浸したりしている。検体を解剖する際、そのホルマリンからホルムアルデヒドが発生するため、解剖作業者に大変有害であることが問題になっていた。
【0003】
そこで、従来、図9に示すように解剖実習室の全体換気を行ったり、解剖台の局所排気(図10及び特許文献1〜3参照)を行ったりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−252453号公報
【特許文献2】特開2006−288730号公報
【特許文献3】特開2006−141848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、解剖実習室を全体換気するだけでは、ホルムアルデヒドが解剖台上の検体から気化するため、解剖台端で作業する解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値である0.1ppm未満まで下げられない。
【0006】
また、図10に示すようなプシュプル換気方式では、解剖作業者が作業する際、検体を覆っている水平層流を遮るため、検体から気化しているホルムアルデヒドが、解剖台の外へ拡散する。そのため、解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値(0.1ppm未満)まで下げられない。
【0007】
このように、解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度が規定値(0.1ppm未満)まで下げられ、かつ作業性の良い解剖台換気システムが求められている。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、解剖実習室内及び解剖台端の解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値である0.1ppm未満まで下げることができ、かつ作業性が良い解剖台換気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、解剖台の検体載置台の上方長手方向に、小孔からの空気の浸み出しにより微風流を発するソックスダクトを設置し、前記解剖台の前記検体載置台の周囲に、検体周囲の空気を吸引する排気口を設け、前記検体載置台の下方に、前記排気口と通じる排気部を設け、前記排気部には、板状体が前記排気部の開口において当該開口の開口量を変化させ、前記排気部からの排気量を調整するようにスライド移動可能に設けられ、前記ソックスダクトの短手方向の幅は、前記検体載置台の周囲に設けられた排気口のうち、短手方向で対向する排気口の幅より狭く、前記ソックスダクトの小孔から前記解剖台に向けて垂直落下方向に対して擬似層流を形成し、この層流を前記排気口を介して前記排気部より排気する。
【0010】
以上の態様では、解剖台換気システムでは、ソックスダクトの小孔から浸み出す微風速の空気により、解剖台に向けて垂直落下方向に擬似層流を形成する。そして、このソックスダクトからの擬似層流で解剖台を包み、同時に解剖台の検体載置台において、検体を包み込みながら検体に染み込んだホルマリンから発生するホルムアルデヒドを含んだ空気を、検体載置台の周囲に設けられた排気口から排出する。
【0011】
このように、解剖作業者が作業中に部分的に擬似層流を遮っても、解剖台の検体載置台周囲の排気孔からの排気があるため、検体から発生するホルムアルデヒドが解剖台の外に拡散することがない。これにより、解剖実習室内及び解剖台端の解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値である0.1ppm未満まで下げることができ、かつ作業性が良い解剖台換気システムを提供することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、前記解剖台の前記検体載置台周囲には、前記検体載置台の上方に向かってガス拡散防止板が設けられたことを特徴とする。
以上の態様では、検体からのホルムアルデヒドが解剖台の外に拡散することを効果的に防止することができるとともに、ガス拡散防止板は柔らかく簡単に変形可能に構成することで、解剖作業者の作業性を妨げることがない。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ソックスダクトは、その断面が半円形状で、円弧部分を前記解剖台側に向けて設置されたことを特徴とする。
以上の態様では、設置する解剖室のハード的制約に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、解剖実習室内及び解剖台端の解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値である0.1ppm未満まで下げることができ、かつ作業性が良い解剖台換気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における解剖台換気システムの構成を示す模式図。
図2】本発明の実施形態における解剖台換気システムの気流シミュレーション図。
図3】本発明の実施形態における解剖台換気システムのフォグによる実験結果を示す図。
図4】本発明の実施形態における解剖台換気システムの実施例を示す模式図。
図5】本発明の実施形態における解剖台換気システムの実施例を示す模式図。
図6】本発明の実施形態におけるホルムアルデヒドの濃度検査測定結果を示す図。
図7】本発明の他の実施形態における解剖台換気システム構成の一部を示す模式図。
図8】本発明の他の実施形態における解剖台換気システム構成を示す模式図。
図9】従来の解剖実習室の換気手法を示す模式図。
図10】従来の解剖台換気システムの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、本発明の解剖台換気システムを用いた例を説明する。
[1.本実施形態]
[1−1.構成及び作用効果]
図1は、本実施形態の解剖台換気システム1の全体構成を示す側面模式図(a)と、正面模式図(b)と、解剖台の平面図(c)である。この図に示すように、本実施形態の解剖台換気システム1は、解剖台2と、この解剖台2の検体載置台4の上方に、長手方向に向かって設置されたソックスダクト5とを備える。
【0017】
解剖台2は、全体形状が、従来と同じく上部の開口した方形箱型の筐体3を備え、この筐体3内部に検体を載置する検体載置台4が設置されている。この筐体3は、例えば、四方に設けられた4本の脚LとキャスターCとによって、移動可能に支持されている。
【0018】
また、解剖台2における筐体3の底面には、後述する排気チャンバ6に繋がる排気部7が設けられ、この排気部7は、排気チャンバ6への空気の通過量を調整する排気量調整シャッター7aを備える。この排気量調整シャッター7aは、例えば、方形に開口した排気口7bに対して、それと同大の板状体7cをスライド移動させ、排気口7bの開口量を変化させることで、排気量の調整を行なうものである。
【0019】
解剖台2において、検体載置台4と排気部7とは、2層構造となっており、図1に具体例を示すように、検体載置台4全体を盆状に形成し、検体載置部分41と、この検体載置部分41の四方に、解剖台2における筐体3の底面に隙間を設けるようにして、筐体3に対して検体載置部分41を固定する載置台支持部42とから構成する。また、図1(c)に示すように、この載置台支持部42には、筐体3底部の排気部7に通気するよう、排気孔43が複数設けられている。
【0020】
解剖台2の底部には、排気チャンバ6が取り付けられ、この排気チャンバ6は図示しない排ガス処理装置へ接続されている。すなわち、この排ガス処理装置により、吸気されることで、排気部7を通って排気チャンバ6内の空気が引かれ、さらに、排気孔43を通して解剖台2の検体載置台4周囲の空気が引かれるように構成される。
【0021】
一方、図1(a)及び(b)に示すように、解剖台2の上方には、断面が円形で、解剖台の長手方向に向かってソックスダクト5が設けられている。このソックスダクト5は、円筒形状を形成する布や孔開きシートから形成されるダクトで、布の網目やシートの細孔から空気が浸み出して微風速を形成するものである。
【0022】
このような解剖台換気システム1では、ソックスダクト5の小孔から浸み出す微風速の空気により、解剖台2に向けて垂直落下方向に擬似層流Sを形成する。そして、このソックスダクト5からの擬似層流Sで解剖台2を包み、同時に解剖台2の検体載置台4において、検体を包み込みながらホルムアルデヒドを含んだ空気を、検体載置台4の周囲に設けられた排気孔43に向けて排出する。排気孔43に対しては、図示しない排ガス処理装置によって吸気されることで、排気部7を通って排気チャンバ6内の空気が引かれ、さらに、排気孔43を通して解剖台2の検体載置台4周囲の空気が引かれ、上記のホルムアルデヒドを含んだ空気が、排気部7から排出される。
【0023】
以上のような本実施形態の解剖台換気システム1では、解剖作業者が作業中に部分的に擬似層流Sを遮っても、解剖台の検体載置台周囲の排気孔43からの排気があるため、検体から発生するホルムアルデヒドが解剖台2の外に拡散することがない。
【0024】
これにより、解剖実習室内及び解剖台端の解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値である0.1ppm未満まで下げることができ、かつ作業性が良い解剖台換気システムを提供することが可能となる。
【0025】
[1−2.実施例]
[1−2−1.気流シミュレーションとフォグによる実験結果]
上記のような構成及び作用効果を奏する本実施形態の解剖台換気システム1について、気流シミュレーションを行った結果を以下に示す。まず、本気流シミュレーションは、図2(a)に示すように、長手方向に11300mm、短手方向に2200mm、高さ方向に3000mmの長方形状の箱型の室Rを想定する。この仮想の室Rの上部に、長手方向に渡って、ソックスダクト5を設けるとともに、そのソックスダクト5に沿って、室R内の長手方向に渡って、本実施形態の解剖台換気システム1を3台縦列に並べたとする。
【0026】
このような領域モデルにおける気流シミュレーションの結果を図2(c)〜(g)として示す。なお、図2(c)〜(g)は、図2(b)における断面(c)〜(g)を表したものであり、図中の矢印は、空気の流れを示すものである。
【0027】
上記の気流シミュレーションによれば、図2(c)〜(g)に示すとおり、いずれの断面においても、ソックスダクト5からの擬似層流は渦を巻くことなく、また解剖台2から逆流することなく、解剖台2へ吸込まれ、解剖台2の排気口よりスムースに排気されていることが分かった。
【0028】
また、本実施形態の解剖台2に対して、その周辺における気流を、フォグ(微細ミスト)で可視化した結果を図3に示す。この図3によれば、検体頭部直上における気流(図3(a))、解剖台2の外枠を構成する筐体3周辺の気流(図3(b))、検体足下直上の気流(図3(c))、解剖作業者の周辺の気流(図3(d))のいずれの箇所においても、気流が解剖台2からその外へ逆流していないことを確認した。
【0029】
[1−2−2.解剖台換気システムの実施例の概要と解剖実習室の実施例]
次に、本実施形態の解剖台換気システム1の実施例の概要と、解剖実習室PRの平面図をそれぞれ図4及び図5に示す。空気調和機AHU−1により外気OAを温調して解剖実習室PRヘソックスダクト5(図5の上から下に伸びた5本のソックスダクト5a〜5e)から供給し、その分を床下取付吸込口V1(図5では図示せず)と吸気ガラリV2から排気用送風機EF−1により排気することで解剖実習室PR内を換気する。
【0030】
同時に、給気用送風機SF−1により外気を解剖台2上方のソックスダクト5(図5の下から上に伸びた10本のソックスダクト5f〜5o)から擬似層流として供給する。擬似層流として供給された空気は解剖台2の排気口からホルムアルデヒドと共に排気され、解剖台2から解剖実習室PR内へのホルムアルデヒドの拡散を防止する。ホルムアルデヒドを含んだ空気は、排ガス処理装置TRS−F300とTRS−F400で処理された後、大気中に放出される。
【0031】
この実施例において、実際にホルムアルデヒド濃度を測定した測定点と結果をそれぞれ図5図6に示す。図6のA測定点の値は、床上1200mm(作業者の頭部を想定)におけるホルムアルデヒドの値を示している。B測定点の値は、解剖台2端上400mm(作業者の頭部を想定)におけるホルムアルデヒドの濃度を示している。A、B何れの値も規定値の0.1ppm未満であることが分かる。なお、ホルムアルデヒド濃度の測定は、2,4−DNPH含浸シリカゲルで捕集して高速液体クロマトグラフ(島津製作所製 LC−10AD)で行った。
【0032】
このように、本実施形態の解剖台換気システム1を用いた実施例により、解剖実習室PR内及び解剖台端の解剖作業者の頭部近傍でのホルムアルデヒド濃度を規定値(0.1ppm未満)まで下げることができることを確認した。
【0033】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様も包含するものである。例えば、図7に示すように、解剖台の検体載置台周囲に、検体載置台の上方に向かってガス拡散防止板が設けることが可能である。より具体的には、このガス拡散防止板は、解剖台の周囲に、例えば、ビニール製の高さ20cmのガス拡散防止板を設けることにより実現する。これにより、検体からのホルムアルデヒドが解剖台の外に拡散することを効果的に防止することができるとともに、ガス拡散防止板は柔らかく簡単に変形可能に構成することで、解剖作業者の作業性を妨げることがない。
【0034】
また、上記実施形態において、ソックスダクト5として断面円形のものを用いたが、本発明はこのような態様に限らず、解剖台上方で擬似層流が形成できるものであれば、例えば、図8に示すように断面が半円状のものを用いることも可能である。このような態様では、設置する解剖室のハード的制約に対応して、その解剖室にあった解剖台換気システムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1…解剖台換気システム
2…解剖台
3…筐体
4…検体載置台
5,5a〜5o…ソックスダクト
6…排気チャンバ
7…排気部
7a…排気量調整シャッター
7b…排気口
7c…板状体
41…検体載置部分
42…載置台支持部
43…排気孔
AHU−1…空気調和機
C…キャスター
EF−1…排気用送風機
OA…外気
PR…解剖実習室
R…室
S…擬似層流
SF−1…給気用送風機
V1…床下取付吸込口
V2…吸気ガラリ
図1
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図2
図3