特許第5787348号(P5787348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787348
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】アーク溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20150910BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B23K9/10 A
   B23K9/095 501A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-83446(P2011-83446)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2012-218005(P2012-218005A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】水取 裕康
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 一郎
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/111722(WO,A2)
【文献】 特開2007−038290(JP,A)
【文献】 特開2010−152914(JP,A)
【文献】 特開2003−111171(JP,A)
【文献】 特開2005−305543(JP,A)
【文献】 特開2004−223555(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00461639(GB,A)
【文献】 米国特許第02484421(US,A)
【文献】 米国特許第03968341(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/10
B23K 9/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチスイッチをオンすると溶接開始信号を溶接電源に送信する溶接トーチを備えたアーク溶接装置において、前記溶接トーチが所定の1軸方向に移動する加速度を検知し加速度センサ信号として前記溶接電源に送信する加速度センサを前記トーチスイッチの上側の前記溶接トーチ内部に具備し、前記溶接電源は、前記トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作に応じて溶接電流設定値又は溶接電圧設定値を調整する調整モードを設定し、前記調整モードを設定したのち、前記トーチスイッチを再度オンした時間が予め定めた基準時間より短いとき、溶接電流調整モード及び溶接電圧調整モードから成る前記調整モードのうち前記溶接電流調整モードを選択し、前記溶接電流調整モードのとき、前記溶接トーチを前記1軸方向に往復移動したときの前記加速度センサ信号の初速値零から終速値零の間で最大加速値が予め定めた第1の加速基準値より大きく正の値のとき、前記溶接電流設定値を増加させ、前記最大加速値が第2の加速基準値より小さく負の値のとき、前記溶接電流設定値を減少させ、前記トーチスイッチを再度オンした時間が予め定めた基準時間より長いとき、前記溶接電圧調整モードを選択し、前記溶接電圧調整モードのとき、前記溶接トーチを前記1軸方向に往復移動したときの前記加速度センサ信号の初速値零から終速値零の間で最大加速値が予め定めた第1の加速基準値より大きく正の値のとき、前記溶接電圧設定値を増加させ、前記最大加速値が第2の加速基準値より小さく負の値のとき、前記溶接電圧設定値を減少させる、ことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
前記溶接電源は、前記溶接電流設定値及び前記溶接電圧設定値の増加又は減少する値を、前記溶接トーチの往復移動回数に応じて決定する、ことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアーク溶接装置を構成すること、を特徴とする溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接装置に使用される溶接トーチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者は溶接ワーク毎に溶接条件(例えば、溶接電流又は溶接電圧)を調整して作業するが、作業現場において出力ケーブルを延長して作業を行うときがある。このときリモコン調整器の制御ケーブルが短いため、作業者がリモコン調整器まで移動して溶接条件の調整うことになり、移動が作業者に大きな負担をかけていた。この対策として、溶接トーチに溶接条件調整器を設けて、作業者の手元で溶接条件の調整を行って作業者の負担を軽減していた。
【0003】
図8は、従来技術のアーク溶接装置の電気接続図である。同図において、アーク溶接装置は、溶接電源WGと、シールドガスが充填されたガスボンベGBと、ガスボンベGBに取り付けられたガス流量調整器GCと、溶接ワイヤを巻回したワイヤリールWLと、溶接電力、溶接ワイヤ及びシールドガスの中継及び供給を行うワイヤ送給機WFと、トーチスイッチTSを設けたアーク溶接トーチTHとにより構成されている。
【0004】
図8に示す、被加工物Mと溶接電源WGとの距離が近いとき、リモコン調整器RECを作業者の手元に置いて溶接条件調整ツマミで溶接条件の調整が行えるので、作業者が溶接条件調整のため、そのつど溶接電源WGの設置位置まで移動する必要がない。
【0005】
しかし、溶接作業現場において、被加工物用ケーブル2及び溶接用ケーブル3を、例えば、10mに延長して作業を行うこともある。このときリモコン調整器RECを手元に置いて溶接条件の調整を行うことができなくなる。
この対策として、溶接トーチTHに溶接条件の変更できる調整器を設けて、作業者が溶接条件の調整を手元で行えるようにしていた。
【0006】
図9は、溶接条件の調整を作業者の手元に行う溶接トーチTHの操作部の概略図である。同図において、トーチスイッチTSをオンすることにより、トーチ先端部からシールドガスが放流され、ワイヤが送給され、被加工物Mとワイヤ先端との間に出力電圧が印加され、アーク溶接が開始される。
【0007】
図9に示す溶接トーチTHは、上面にモード選択ボタンMS及び調整器CBから成る溶接条件調整器が設けられている。モード選択ボタンMSを押すことによって、溶接電源WGは溶接条件を調整するための溶接電流調整モード又は溶接電圧調整モードのどちらかが設定され、図示省略の第1調整ボタンCBaを押すことによって調整値が増加し、第2調整ボタンCBbを押すことによって調整値が減少する。
【0008】
しかし、溶接トーチTHにモード選択ボタンMS、調整器CB等を設けると溶接トーチ自体が大きく、重くなって溶接作業を長時間行うことが困難になり作業性が落ちる。
【0009】
特許文献1には、モード選択ボタンMS、調整器CB等を設けた溶接トーチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−21542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶接作業現場において、被加工物用ケーブル2及び溶接用ケーブル3を延長して溶接ワーク毎に溶接条件の調整を必要とする溶接作業では、標準仕様のリモコン調整器では、リモコン調整器に接続されたリモコン用ケーブルが短く、作業者が手元にリモコン調整器を置いて溶接条件を調整できないので、調整の度にリモコン調整器の傍まで移動して溶接条件を調整する必要があり、作業者に大きな負担となっていた。この対策として、従来の溶接トーチに溶接条件調整器を設けて、作業者の手元で溶接条件の調整を行っていた。
【0012】
しかし、この溶接条件調整器を設けた溶接トーチでは、溶接トーチ自体が大きくなり、且つ、重量が増えるので溶接作業を長時間継続することが困難になり作業性が落ちてしまう。更に、溶接条件調整器の設定部が小さく、皮手袋を付けて溶接条件の調整を行うとき、調整がしにくいので作業者が皮手袋を脱いで溶接条件の調整を行う必要があり作業性が落ちる、という課題が生じる。
【0013】
そこで、本発明では、溶接機の出力ケーブルが長くなっても、作業者が容易に溶接条件の調整を行うことができる、アーク溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、トーチスイッチをオンすると溶接開始信号を溶接電源に送信する溶接トーチを備えたアーク溶接装置において、前記溶接トーチが所定の1軸方向に移動する加速度を検知し加速度センサ信号として前記溶接電源に送信する加速度センサを前記トーチスイッチの上側の前記溶接トーチ内部に具備し、前記溶接電源は、前記トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作に応じて溶接電流設定値又は溶接電圧設定値を調整する調整モードを設定し、前記調整モードを設定したのち、前記トーチスイッチを再度オンした時間が予め定めた基準時間より短いとき、溶接電流調整モード及び溶接電圧調整モードから成る前記調整モードのうち前記溶接電流調整モードを選択し、前記溶接電流調整モードのとき、前記溶接トーチを前記1軸方向に往復移動したときの前記加速度センサ信号の初速値零から終速値零の間で最大加速値が予め定めた第1の加速基準値より大きく正の値のとき、前記溶接電流設定値を増加させ、前記最大加速値が第2の加速基準値より小さく負の値のとき、前記溶接電流設定値を減少させ、前記トーチスイッチを再度オンした時間が予め定めた基準時間より長いとき、前記溶接電圧調整モードを選択し、前記溶接電圧調整モードのとき、前記溶接トーチを前記1軸方向に往復移動したときの前記加速度センサ信号の初速値零から終速値零の間で最大加速値が予め定めた第1の加速基準値より大きく正の値のとき、前記溶接電圧設定値を増加させ、前記最大加速値が第2の加速基準値より小さく負の値のとき、前記溶接電圧設定値を減少させる、ことを特徴とするアーク溶接装置である。
【0015】
請求項2の発明は、前記溶接電源は、前記溶接電流設定値及び前記溶接電圧設定値の増加又は減少する値を、前記溶接トーチの往復移動回数に応じて決定する、ことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接装置である。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1に記載のアーク溶接装置を構成すること、を特徴とする溶接トーチである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によれば、作業者が手元の溶接トーチのトーチスイッチをダブルクリック操作を行うことで調整モードが設定でき、調整モードを設定したのちに、溶接トーチを1軸(X軸)に沿って所定の速度で往復移動(左右移動)させるだけで、溶接電流設定値及び溶接電圧設定値を増加又は減少できるので、作業者が設定値の調整のために離れたリモコン調整器まで移動する必要が無くなり、作業の負担が大きく軽減できる。更に、皮手袋を付けた状態で溶接電流設定値及び溶接電圧設定値の調整が容易できるので作業効率が大きく向上する。
【0019】
本発明の請求項2によれば、トーチスイッチのダブルクリック操で調整モードを設定したのち、トーチスイッチを再度オンする時間によって溶接電流調整モード及び溶接電圧調整モードから成る調整モードのうち、作業者が選択したい溶接電流調整モード又は溶接電圧調整モードのどちらか一方が選択できるので、溶接電流設定値又は溶接電圧設定値を個別に増減できるので、溶接ワークに応じた最適な溶接電流値又は溶接電圧値の調整が可能になる。
【0020】
本発明の請求項4によれば、上述の効果に加えて、溶接トーチの往復移動の回数に応じて溶接電流設定値の増減値又は溶接電圧設定値の増減値を作業者が所望する値に容易に調整できるので、溶接の品質向上に繋がる。
【0021】
本発明の請求項5の溶接トーチによれば、溶接条件調整器を設けた従来の溶接トーチと比較すると形状が小さく、重量も軽いので操作性が良く、且つ、溶接作業を長時間継続できるので作業性の向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るアーク溶接装置の電気接続図である。
図2】実施形態の溶接トーチの詳細図である。
図3】実施形態1の調整モードのとき、溶接トーチをX軸に沿って右方向に往復移動したときの動作を説明する波形図である。
図4】実施形態1の調整モードのとき、溶接トーチをX軸に沿って左方向に往復移動したときの動作を説明する波形図である。
図5】実施形態2の溶接電流調整モードのとき、溶接トーチをX軸に沿って右方向に往復移動したときの動作を説明する波形図である。
図6】実施形態2の溶接電圧調整モードのとき、溶接トーチをX軸に沿って左方向に往復移動したときの動作を説明する波形図である。
図7】溶接トーチとX軸との相関図である
図8】従来技術のアーク溶接装置の電気接続図である。
図9】従来技術の溶接トーチの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図7を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアーク溶接装置の電気接続図である。同図において、図8示す従来技術のアーク溶接装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0024】
近年、物体の移動加速度を検知できる加速度センサが、ゲーム機のWiiリモコン等に多く使用されている。図2は、一般に多く使用されている1軸加速度センサASをトーチスイッチTSの上側の溶接トーチTHの内部に設けた詳細図である。
【0025】
図3及び図4は、本発明の実施形態1の動作を説明する波形図である。
図3において、図3(A)は、トーチスイッチ信号Tsを示し、同図(B)は、溶接トーチTHを1軸(以後、X軸とする)に沿って右方向に往復移動したときの加速度センサ信号Asを示し、同図(C)は、溶接電流設定値Isを示し、同図(D)は、溶接電圧設定値Vsを示す。
【0026】
図1図4を参照して本発明の実施形態1の動作について説明する。
図1に示す溶接電源WGの前面のフロントパネルに設けられた図示省略の溶接電流設定器又は溶接電圧設定器で、作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が若干の溶接電流設定値又は溶接電圧設定値の調整を必要と判断し、例えば、溶接電流設定値を100Aから101A、溶接電圧設定値を20Vから21Vに増加したいと判断したとき、図3(A)に示す時刻t=t1において、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、時刻t=t2において、ダブルクリック操作が終了すると溶接電源WGは調整モードを設定する。
【0027】
溶接電源WGが調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7の1軸(以後、X軸という)に沿って右方向に往復移動したとき、図2に示す溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、X軸に沿って右方向に往復移動したときの加速度を検出して図3(B)に示す加速度センサ信号Asを出力し、トーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル5を介して溶接電源WGに送信する。
【0028】
溶接電源WGは、図3(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が正で、予め定めた正の第1の加速基準値Arsより大きいと判別したとき、溶接電流設定値100Aに、予め定めた加算電流値1Aを加算し溶接電流設定値を図3(C)に示すように100Aから101Aに増加すると共に、溶接電圧設定値20Vに、予め定めた加算電圧値1Vを加算し溶接電圧設定値を図3(D)に示すように20Vから21Vに増加する。
【0029】
溶接電流設定値及び溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、調整モードを解除して通常の溶接モードにする。
【0030】
次に、作業者が、溶接電流設定値の増加を101Aから102A、溶接電圧設定値の増加を21Vから22Vに変更したいと判断したとき、溶接電源WGが調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動を2回繰り返すと、溶接電源WGは、1回目の往復運動で図3(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が正で、正の第1の加速基準値Arsよりより大きいと判別したとき、溶接電流設定値100Aに、加算電流値1Aを加算し溶接電流設定値を図3(C)に示すように100Aから101Aに増加すると共に、溶接電圧設定値20Vに、加算電圧値1Vを加算して溶接電圧設定値を図3(D)に示すように20Vから21Vに増加する。
【0031】
続いて、2回目の往復運動で図3(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t6の初速値零から時刻t=t7の終速値零の間の時刻t=7の最大加速値を検出し、検出したが最大加速値が正で、正の第1の加速基準値Arsより大きいと判別したとき、溶接電流設定値101Aに、加算電流値1Aを再度加算して溶接電流設定値を102Aに増加すると共に、溶接電圧設定値21Vに、再度加算電圧値1Vを加算して溶接電圧設定値を22Vに増加する。
【0032】
上記より、図3に示す調整モード時間T1の間に、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動する移動回数に応じて加算回数が決定し、作業者の所望する値に調整ができる。
【0033】
作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が、例えば、溶接電流設定値を100Aから99A、溶接電圧設定値を20Vから19Vに減少したいと判断したとき、図4(A)に示す時刻t=t1において、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、時刻t=t2において、ダブルクリック操作が終了すると溶接電源WGは調整モードを設定する。
【0034】
溶接電源WGが調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って左方向に往復移動したとき、溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、X軸に沿って左方向に往復移動したときの加速度を検出して図4(B)に示す加速度センサ信号Asを出力し、トーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル5を介して溶接電源WGに送信する。
【0035】
溶接電源WGは、図4(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が負で、予め定めた負の第2の加速基準値Arsより小さいと判別したとき、溶接電流設定値100Aに、予め定めた減算電流値1Aを減算して溶接電流設定値を図4(C)に示すように100Aから99Aに減少すると共に、溶接電圧設定値20Vに、予め定めた減算電圧値1Vを減算して溶接電圧設定値を図4(D)に示すように20Vから19Vに減少する。
【0036】
溶接電流設定値及び溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、調整モードを解除して通常の溶接モードにする。
【0037】
次に、作業者が、溶接電流設定値の減少を99Aから98A、溶接電圧設定値の減少を19Vから18Vに変更したいと判断したとき、溶接電源WGが調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って左方向に往復移動を2回繰り返すと、溶接電源WGは、1回目の往復運動で図4(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が負で、負の加速基準値Arsより小さいと判別したとき、溶接電流設定値100Aに、減算電流値1Aを減算して溶接電流設定値を図4(C)に示すように100Aから99Aに増加すると共に、溶接電圧設定値20Vに、減算電圧値1Vを減算して溶接電圧設定値を図4(D)に示すように20Vから19Vに減算する。
【0038】
続いて、2回目の往復運動で図4(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t6の初速値零から時刻t=t7の終速値零の間の時刻t=7の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が負で、負の加速基準値Arsより小さいと判別したとき、溶接電流設定値99Aに、減算電流値1Aを再度減算して溶接電流設定値を98Aに減少すると共に、溶接電圧設定値19Vに、減算電圧値1Vを再度減算して溶接電圧設定値を18Vに減算する。
【0039】
上記より、図4に示す調整モード時間T1の間に、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って左方向に往復移動する移動回数に応じて減算値の減算回数が決定し、作業者の所望する値に調整ができる。
また、上述において、溶接電源WGは、加算電流値、減算電流値、加算電圧値及び減算電圧値を個別に予め定めた値に設定でき、例えば、加算電圧値及び減算電圧値を0Vにしておけば、溶接電流設定値のみ個別に加算、減算の調整ができ、逆に、加算電流値及び減算電流値を0Vにしておけば、溶接電圧設定値のみ個別に加算、減算の調整ができる。
【0040】
「実施形態2」
図5及び図6は、本発明の実施形態2の動作を説明する波形図である。
図5において、図5(A)は、トーチスイッチ信号Tsを示し、同図(B)は、溶接トーチTHをX軸に沿って右方向に往復移動したときの加速度センサ信号Asを示し、同図(C)は、溶接電流設定値Isを示し、同図(D)は、溶接電圧設定値Vsを示す。
【0041】
図1図2及び図5図6を参照して本発明の実施形態2の動作について説明する。
作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が溶接電流設定値のみ調整を必要と判断し、例えば、溶接電流設定値を100Aから101Aに増加したいと判断したとき、図5(A)に示す時刻t=t1において、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、続いて、トーチスイッチを再度オンし予め定めた基準時間より短くオンすると、溶接電源WGは溶接電流調整モード及び溶接電圧調整モードから成る調整モードのうち溶接電流調整モードを選択する。
【0042】
溶接電源WGが溶接電流調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動したとき、溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、X軸に沿って右方向に往復移動したときの加速度を検出して図5(B)に示す加速度センサ信号Asを出力し、トーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル5を介して溶接電源WGに送信する。
【0043】
溶接電源WGは、図5(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が正で、予め定めた正の第1の加速基準値Arsより大きいと判別したとき、溶接電流設定値100Aに、予め定めた加算電流値1Aを加算して溶接電流設定値のみ、図5(C)に示すように100Aから101Aに増加する。
【0044】
溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、溶接電流調整モードを解除して通常の溶接モードにする。
【0045】
次に、作業者が、溶接電流設定値の増加を101Aから102Aに変更したいと判断したとき、溶接電源WGが溶接電流調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動を2回繰り返すと102Aに増加する。そして、動作については実施形態1と同一動作を行うので詳細な説明は省略する。
【0046】
逆に、作業者が、溶接電流設定値100Aから99A又は98Aに減少したいと判断したとき、溶接電源WGが溶接電流調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って左方向に1回往復移動すると99Aに減少し、2回往復移動すると98Aに減少する。そして、動作について上記と同一動作を行うので詳細な説明は省略する。
【0047】
作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が溶接電圧設定値のみ調整を必要と判断し、例えば、溶接電圧設定値を20Vから21Vに増加したいと判断したとき、図6(A)に示す時刻t=t1において、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、続いて、トーチスイッチを再度オンし基準時間より長くオンすると、溶接電源WGは溶接電流調整モード及び溶接電圧調整モードから成る調整モードのうち溶接電圧調整モードを選択する。
【0048】
溶接電源WGが溶接電圧調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動したとき、溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、X軸に沿って右方向に往復移動したときの加速度を検出して図5(B)に示す加速度センサ信号Asを出力し、トーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル5を介して溶接電源WGに送信する。
【0049】
溶接電源WGは、図6(B)に示す加速度センサ信号Asの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の時刻t=4の最大加速値を検出し、検出した最大加速値が正で、正の第1の加速基準値Arsより大きいと判別したとき、溶接電圧設定値20Vに、予め定めた加算電圧値1Vを加算して溶接電圧設定値をのみ、図6(D)に示すように20Vから21Vに増加する。
【0050】
溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、溶接電圧調整モードを解除して通常の溶接モードにする。
【0051】
次に、作業者が、溶接電圧設定値の増加を20Vから22Vに変更したいと判断したとき、溶接電源WGが溶接電圧調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って右方向に往復移動を2回繰り返すと22Vに増加する。そして、動作については実施形態1と同一動作を行うので詳細な説明は省略する。
【0052】
次に、作業者が、溶接電圧設定値20Vから19V又は18Vに減少したいと判断したとき、溶接電源WGが溶接電圧調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図7のX軸に沿って左方向に1回往復移動すると19Vに減少し、2回往復移動すると18Vに減少する。そして、動作について上記と同一動作を行うので詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0053】
1 トーチケーブル
2 被加工物用ケーブル
3 溶接用ケーブル
4 ガスホース
5 リモコン用ケーブル
6 制御用ケーブル
AS 加速度センサ
CB 調整器
GB ガスボンベ
GC ガス流量調整器
M 被加工物
MS モード選択ボタン
REC リモコン調整器
TH 溶接トーチ
TS トーチスイッチ
WF ワイヤ送給機
WG 溶接電源
WL ワイヤリール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9