【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、不活性ガスを含むガス流により、乾燥モードまたは(超)凝縮モードで流動層式反応装置内において1種類以上のオレフィン系モノマーを気相重合するプロセスであって、不活性ガスが不活性成分の混合物:
(1) 窒素、
(2) 露点を調節すると同時に、蒸気流熱容量を改善する、ガス熱容量増加剤、
(3) エチレンおよびアルファオレフィンの、そのような成分のポリエチレンへの収着により、触媒活性部位の周囲の微視的条件に関するエチレンおよび/またはアルファオレフィンの局所濃度が増加する、成長するポリマーの微粒子レベルでの局所濃度の促進剤として働く、収着促進剤、および
(4) 成長中に形成されるポリマーを膨潤させ、可塑化させることによって、ポリマーの成長中に瞬時に発生する、ポリマーの物理的性質および粘弾性改質剤として働き、結晶相の特徴に影響を与える、ポリマー膨潤剤、
を含むことを特徴とするプロセスによって達成される。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態によれば、このプロセスは、ガス分配板により下面で、仮想端面により上面で制限された反応区域を含む反応装置内で行われ、その装置において、流動層が下面と上面との間に維持され、反応装置の上部から引き出されたガス流の少なくとも一部が冷却され、その結果生じた二相流の少なくとも一部が反応装置に再循環され、ここで、ガス流は、不活性成分の混合物:
(1) 窒素、
(2) ガス熱容量増加剤、
(3) 収着促進剤、および
(4) ポリマー膨潤剤、
を含む、不活性ガスを含んでいる。
【0020】
この再循環流には追加の供給流が補われ、成長するポリマーの層に戻される。再循環流中の供給流は、オレフィン系モノマーおよび不活性成分の混合物を含む。
【0021】
好ましい実施の形態によれば、オレフィンはエチレンである。オレフィンがエチレンである場合、供給流中のエチレンの量は、オレフィン系モノマーの総量の50質量%と95質量%との間に及ぶ。適切なコモノマーの例としては、1−ブテン、1−ヘキセンおよびプロピレンが挙げられる。
【0022】
本発明のプロセスにより、特に、空間/時間/収率に関して改善されたプロセスがもたらされると同時に、流動層式反応装置の重合プロセスの幅広い範囲の動作条件が可能になる。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態によれば、気相重合は、(超)凝縮モードのプロセスにより行われる。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態によれば、不活性ガスは、
(1) 5〜60モル%の窒素、
(2) 10〜90モル%のガス熱容量増加剤、
(3) 1〜50モル%の収着促進剤、および
(4) 0.1〜10モル%のポリマー促進剤、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%である。
【0025】
不活性成分が飽和化合物であることが好ましい。
【0026】
気相反応装置への供給流中のガス熱容量増加剤は、露点を調節すると同時に、蒸気流の熱容量を改善する。
【0027】
ガス熱容量増加剤が、飽和(C
2〜C
4)炭化水素または少なくとも2種類の異なる飽和(C
2〜C
4)炭化水素の混合物であることが好ましい。
【0028】
ガス熱容量増加剤が、飽和(C
2〜C
3)炭化水素またはこれらの炭化水素の混合物であることがより好ましい。
【0029】
ガス熱容量増加剤がエタンであることが最も好ましい。
【0030】
収着促進剤は、エチレンおよびアルファオレフィンの、そのような成分のポリエチレンへの収着により、触媒活性部位の周囲の微視的条件に関するエチレンおよび/またはアルファオレフィンの局所濃度が増加する、成長するポリマーの微粒子レベルでの局所濃度の促進剤として働く。この物理的現象は共溶解性として知られている。
【0031】
収着促進剤が、飽和(C
4〜C
7)炭化水素または少なくとも2種類の異なる飽和(C
4〜C
7)炭化水素の混合物であることが好ましい。
【0032】
収着促進剤が、飽和(C
4)炭化水素のn−ブタンであることがより好ましい。
【0033】
本発明の利点は、成長しているポリマーへの炭化水素の収着により、触媒の活性を促進させられることである。
【0034】
ポリマー膨潤剤は、成長中に形成されるポリマーを膨潤させ、可塑化させることによって、ポリマーの成長中に瞬時に発生する、ポリマーの物理的性質および粘弾性改質剤として働く。さらにポリマー膨潤剤は、結晶化度、層厚および晶子の界面構造などの結晶相の特徴に影響を与える。さらに、ポリマー膨潤剤は、ポリマーの成長中の結晶化反応速度に関する遅延剤として機能する。したがって、この膨潤剤は、重合中の微粒子の生成を減少させ、その上、この膨潤剤は、触媒の分解を調節することによって、粒子密度を増加させる。一般に、適用される膨潤剤は、40℃超の標準沸点を有する。
【0035】
ポリマー膨潤剤が、飽和(C
5〜C
20)炭化水素または少なくとも2種類の異なる飽和(C
5〜C
20)炭化水素の混合物であることが好ましい。
【0036】
ポリマー膨潤剤がn−ペンタンまたはイソペンタンであることがより好ましい。
【0037】
収着促進剤として、また膨潤促進剤として、例えば、イソペンタンを適用することが可能である。この場合、イソペンタンは、例えば、1.1モル%と60モル%の間の量で存在してよい。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、前記混合物は、
(1) 10〜50モル%の窒素、
(2) 25〜80モル%の(C
2〜C
4)炭化水素、
(3) 1〜45モル%の(C
4〜C
7)炭化水素、および
(4) 0.2〜7モル%の(C
5〜C
20)炭化水素、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%である。
【0039】
本発明の別の好ましい実施の形態によれば、前記混合物は、
(1) 10〜50モル%の窒素、
(2) 25〜80モル%の(C
2〜C
3)炭化水素、
(3) 1〜45モル%の(C
4)炭化水素、および
(4) 0.2〜7モル%の(C
5〜C
20)炭化水素、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%である。
【0040】
本発明のさらに好ましい実施の形態によれば、前記混合物は、
(1) 窒素、
(2) エタン、
(3) n−ブタン、および
(4) n−ペンタンまたはイソペンタン、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%である。
【0041】
前記混合物が、
(1) 5〜60モル%の窒素、
(2) 10〜90モル%のエタン、
(3) 1〜50モル%のn−ブタン、および
(4) 0.1〜10モル%のn−ペンタンまたはイソペンタン、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%であることが好ましい。
【0042】
前記混合物が、
(1) 10〜50モル%の窒素、
(2) 25〜80モル%のエタン、
(3) 5〜45モル%のn−ブタン、および
(4) 0.1〜45モル%のn−ペンタンまたはイソペンタン、
を含み、不活性成分(1)、(2)、(3)および(4)の総量は100%であることがより好ましい。
【0043】
本発明による重合プロセスは、流動層式反応装置の運転を、空間/時間/収率に関して生産速度が改善されると同時に、使用する触媒の種類にかかわらず、流動層式反応装置の重合方法の幅広い範囲の動作条件が可能になり、生産速度を改善するのに十分な冷却容量、および高いポリマー粒子密度、高いポリマー嵩密度、促進された触媒生産性およ流動層ポリエチレンプロセスにおいて粉末微粒子を減少させるための改善されたポリマー形態プロセスと組み合わせる。
【0044】
本発明のプロセスは、成長しているポリマーの微粒子レベルでエチレンおよびアルファオレフィンの局所濃度の促進剤の導入により、また同時に、瞬間の粘弾性の局所特性改善剤の導入により、流動層式反応装置の例えば、ポリエチレンの生産プロセスにおいて微粒子の低レベルへの減少をもたらすと同時に、反応装置の層の安定性問題なくして動作の維持またはポリマー粒子の同伴の維持が確保されることが別の利点である。
【0045】
本発明によるプロセスは、縮合または非縮合モードで、気相反応装置において、重合条件下でガス状オレフィン系モノマーの供給物を(共)重合させる工程を有してなり、再循環流の特定のモル分率が、特定の量で混合された不活性成分から構成され、その組成により、微視的(粒子レベルで)および巨視的(反応装置レベルで)の両方で、熱輸送特性が最大になる。巨視的は、反応装置の総容積を意味するのに対し、微視的は、重合が行われる触媒部位の周りの直ぐ近傍を称する。冷却が改善されると、触媒の生産性およびポリマーの性質が改善される。それと同時に、ホットスポットの生成、シーティング、および塊形成が減少するので、反応装置の運転性能がより堅牢になる。
【0046】
膨潤剤を使用すると、全ての成分を通じて熱除去がより良好になることに加えて、粘弾性が改善され、その結果、本発明のプロセスにより、微粒子の量が減少する。
【0047】
本発明のプロセスは、1種類以上のオレフィン系モノマーの重合による、気相でのポリオレフィンの製造に適している。そのポリマーは、エチレンおよび/またはプロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、もしくはエチレンまたはプロピレンの、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、およびオクテン−1などの1種類以上のC
2〜C
8アルファオレフィンとのコポリマーであってよい。高級オレフィン、例えば、デセン−1またはジエン、例えば、1,4−ブタジエン、1,6−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンを適用してもよい。
【0048】
前記プロセスが、エチレン単独重合プロセスまたはエチレン−アルファオレフィン共重合プロセスであることが好ましい。
【0049】
この重合プロセスの圧力は0.5と10MPaの間に及び、温度は30℃と130℃の間に及ぶことが好ましい。
【0050】
触媒も前記層に加えられる。そのプロセス中、存在する触媒の影響下で、新たなポリマーが継続的に形成されると同時に、形成されたポリマーが層から引き出され、その層の容積と質量は、実質的に一定に維持される。
【0051】
適用される触媒の種類にかかわらずに、目的が達成されることが本発明の別の利点である。
【0052】
重合反応は、気相重合に関する任意の公知の適切な触媒系、例えば、チーグラー・ナッタタイプの触媒系、クロムに基づく触媒系、およびメタロセンに基づく触媒系の存在下で行ってよい。
【0053】
触媒は、上述した触媒系を用いて、予備重合段階で調製されたプレポリマー粉末の形態にあってもよい。予備重合は、どのような公知のプロセスによって、例えば、バッチプロセス、半連続プロセスまたは連続プロセスを使用した気相または液体炭化水素希釈物中の重合によって行ってもよい。
【0054】
米国特許出願公開第2005/182207号明細書には、モノマーからポリマーを製造するための連続ガス流動層重合プロセスであって、モノマーを含むガス流を、反応性条件下で触媒の存在下において流動層式反応装置に通過させ;重合生成物および未反応モノマーガスを含む流れを引き出し;未反応モノマーガスを含む流れを冷却して、気相と液相とを含む混合物を形成し;その混合物を、十分な追加のモノマーと共に反応装置に再導入して、重合し、生成物として引き出されたモノマーを置き換える各工程を有してなり、液相が気化され、前記流れが、アルカンおよびシクロアルカンからなる群より選択される少なくとも2種類の不活性凝縮剤を含むものであるプロセスが開示されている。米国特許出願公開第2005/182207号明細書は、40℃未満の標準沸点の少なくとも2種類の不活性凝縮剤を適用する。技術的に、これは、不活性成分が、分配板より下の入口条件で凝縮することを意味する。したがって、エタンは、他の誘導凝縮剤の不在下ではそれ自体は凝縮しないので、使用されない。エタンは誘導凝縮剤ではない。その上、低濃度(0モル%〜4モル%)のエタンは、エチレン供給原料に関する不純物としてどの気相エチレン重合プロセスにも存在する、またはエチレンの水素化のために、またはさらには反応装置中の微量の水との金属アルキル反応の副生成物として、生成される。さらに、米国特許出願公開第2005/182207号明細書とは反対に、本出願においては、40℃超の標準沸点を一般に有する膨潤剤が適用される。
【0055】
米国特許第6759489号明細書には、再循環流において凝縮剤を特徴とする、ポリマーを製造するための連続ガス流動層方法が開示され、再循環流において凝縮剤を特徴とする、ポリマーを製造するための連続ガス流動層方法における連続性をモニタし、提供するための方法も開示されている。
【0056】
特許文献4は、これまで認識されたよりも著しく高い生産速度で、気相反応装置においてアルファオレフィンを重合するプロセスに関する。この発明は、流動層および流動化媒質を有する気相反応装置においてアルファオレフィンを重合するプロセスであって、流動化媒質中の液体のレベルが、流動化媒質の総質量に基づいて15質量パーセント超であるプロセスに向けられている。さらに、特許文献4は、流動層の安定性を決定するために有用な性質を特定し、流動化媒質または再循環流の組成を調節して、安定な動作条件を維持するためのその性質の値の範囲を確立することによって、気相流動層重合反応装置の安定な動作条件を決定する方法に関する。
【0057】
特許文献3には、流動層および流動化媒質を有する気相反応装置においてアルファオレフィンを重合するプロセスであって、流動化媒質が反応装置の冷却容量を制御するように働き、その改善が、流動化媒質の総質量に基づいて17.4から50質量パーセントの範囲にある、反応装置に入る流動化媒質中の液体のレベルを使用すること、および流動化嵩密度の沈降嵩密度に対する比を0.59超に維持することを含むプロセスが開示されている。
【0058】
米国特許出願第2005/182207明細書、米国特許第6759489号明細書、特許文献4および特許文献3には、窒素、ガス熱容量増加剤、収着促進剤およびポリマー膨潤剤を含む不活性成分の混合物の使用は記載されていない。
【0059】
米国特許出願第2005/182207明細書、米国特許第6759489号明細書、特許文献4および特許文献3には、5〜60モル%の窒素;10〜90モル%のガス熱容量増加剤;1〜50モル%の収着促進剤;および0.1〜10モル%のポリマー膨潤剤を含む特定の混合物は記載されていない。
【0060】
米国特許出願第2005/182207明細書、米国特許第6759489号明細書、特許文献4および特許文献3には、5〜60モル%の窒素;10〜90モル%のエタン;1〜50モル%のn−ブタン;および0.1〜10モル%のn−ペンタンまたはイソペンタンを含む特定の混合物は記載されていない。