(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787395
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】木質複合板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27D 1/04 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
B27D1/04 K
B27D1/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-75213(P2011-75213)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-206452(P2012-206452A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】511082300
【氏名又は名称】株式会社パルウッドマテリアル
(73)【特許権者】
【識別番号】398051497
【氏名又は名称】株式会社パル
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰則
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−011102(JP,A)
【文献】
特開昭58−025901(JP,A)
【文献】
特開平10−151603(JP,A)
【文献】
特開2007−196517(JP,A)
【文献】
特開2010−228141(JP,A)
【文献】
特開2007−098704(JP,A)
【文献】
米国特許第06007659(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/00 − 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板からなる一方の木質板と合板或いはLVLからなる他方の木質板を水性接着剤を用いて接着し一体化する木質複合板の製造方法であって、
前記木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側を乾燥させ、並行して前記合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着面に前記水性接着剤を塗布し、前記木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側の乾燥後、直ちに前記木質繊維板からなる一方の木質板と前記合板或いはLVLからなる他方の木質板を接着し一体化することを特徴とする木質複合板の製造方法。
【請求項2】
前記木質繊維板からなる一方の木質板と前記合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着は、常温で加圧接着することを特徴とする請求項1に記載の木質複合板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の木質板と他方の木質板とを水性接着剤で接着して木質複合板を得る木質複合板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質複合フローリングなどの基材として使用される木質複合板は、合板やLVLとMDFなどの木質繊維板とを接着剤で接着して製造されるが、接着後に反りが発生することがある。特に、接着に水性の接着剤を使用すると反りの発生が顕著になる。これは、接着の際に被着材が接着剤の水分を吸収したあと乾燥するため伸縮が起こり、上下層の被着材の伸縮の差によって反ってしまうと考えられる。
この現象を防ぐ方法として、接着剤に溶剤系やホットメルト系などの非水性接着剤を用いる方法があるが、設備が大掛かりになる上、作業性、環境面、コストなどの問題があり、水性の接着剤で接着することが望まれる。
【0003】
このような問題点を解決するために、接着剤として水性接着剤を用いながら、反りの発生を防止する木質複合板の製造方法として、合板とMDFとを水性接着剤で接着する際に、予めMDFを加熱、加圧下で前処理を行い、その後、合板とMDFとを水性接着剤で接着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−98704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された製造方法では、接着する前に、予めMDFを加熱、加圧下で前処理を行うので、特殊且つ高価な設備を必要とし、前処理に時間がかかり、製造コストも高くなるといった問題点があった。
【0006】
本発明者は、かかる問題を解決すべく試験研究を重ねた結果、水性接着剤の水分を木質板が吸収する際、板全体への影響を極小化する必要があること、接着剤の水分を吸収するのは接着する面のごく表面であり、その部分が吸収した水分により伸縮することで、歪みが板全体に影響し、反りとなって現れること、従って、この接着剤の水分を吸収するごく表面を接着する直前に乾燥し、収縮状態にしてから接着剤に接触させることにより、接着剤の水分を吸収することで収縮が通常状態に戻り、歪みを発生させずに接着できること、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、反りが問題とならず建材などに好適な水性接着剤を使用した木質複合板を、簡単な設備で且つ低コストで得ることができる木質複合板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
木質繊維板からなる一方の木質板と
合板或いはLVLからなる他方の木質板を水性接着剤を用いて接着し一体化する木質複合板の製造方法であって、
前記木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側を乾燥させ、並行して前記合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着面に前記水性接着剤を塗布し、前記木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側の乾燥後、直ちに前記木質繊維板からなる一方の木質板と前記合板或いはLVLからなる他方の木質板を接着し一体化することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の、前記木質繊維板からなる一方の木質板と前記合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着は、常温で加圧接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、
木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側を乾燥させることにより、その接着面側が収縮状態となり、一方の木質板の接着面側の乾燥後、並行して接着面に水性接着剤を塗布してある
合板或いはLVLからなる他方の木質板と接着するので、
木質繊維板からなる一方の木質板の乾燥した接着面側が
合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着面に塗布した接着剤の水分を吸収することで収縮状態が通常状態に戻り、歪みの発生が防止され、反りが問題とならず建材などに好適な木質複合板を製造することができる。
また、この方法では、前記木質板の全体を加圧乾燥する必要がなくなり、簡単な設備で且つ低コストで木質複合板を製造することができる。しかも、
木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側の乾燥と
合板或いはLVLからなる他方の木質板の接着面への水性接着剤の塗布を並行して行うので、
木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側の乾燥後、時間を空けず直ちに
木質繊維板からなる一方の木質板と
合板或いはLVLからなる他方の木質板を接着することができ、したがって、
木質繊維板からなる一方の木質板の乾燥状態にある接着面側の接着前の大気中吸湿を配慮する前に接着するので、その分
木質繊維板からなる一方の木質板の接着面側の乾燥度を低くすることが可能となり、製造時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る木質複合板の製造方法の第1
参考例を示す工程説明図である。
【
図2】本発明に係る木質複合板の製造方法の第2
参考例を示す工程説明図である。
【
図3】本発明に係る木質複合板の製造方法の
実施の形態の一例を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る木質複合板の製造方法を実施するための形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る木質複合板の製造方法の第1
参考例を示す工程説明図である。
本
参考例では、先ず、一方の木質板1の接着面1aと他方の木質板2との接着面2aを加熱装置3で加熱し、接着面1a、2a側を乾燥させる。一方の木質板1の接着面1a側と他方の木質板2との接着面2a側の乾燥は、表面からの僅かな層の乾燥で足り、ここでの加熱温度、加熱時間は、接着面1a、2a側の僅かな層を乾燥させる温度、時間に設定されている。これにより、一方の木質板1の接着面1aの層と他方の木質板2との接着面2a側の層が乾燥して収縮状態となる。
【0013】
次に、一方の木質板1の接着面1a側と他方の木質板2との接着面2a側を乾燥させたら、直ちに、一方の木質板1の接着面1aと他方の木質板2との接着面2aのいずれかに塗布装置4で水性接着剤5を塗布し、一方の木質板1の接着面1aと他方の木質板2との接着面2aを接着し一体化する。本
参考例では他方の木質板2との接着面2aに水性接着剤5を塗布している。
ここにいう「直ちに」とは、乾燥させた一方の木質板1の接着面1a側と他方の木質板2の接着面2a側の乾燥層部分が大気中の水分の影響を受ける前に、という意である。
【0014】
このようにして接着した一方の木質板1と他方の木質板2の乾燥した接着面1a、2a側の収縮状態にある乾燥層部分が水性接着剤5の水分を吸収することにより収縮状態が通常状態に戻り、歪みの発生が防止され、反りが問題とならない木質複合板6が製造される。
【0015】
図2は本発明に係る木質複合板の製造方法の第2
参考例を示す工程説明図である。
本
参考例では、一方の木質板1の接着面1aと他方の木質板2との接着面2aのうち、一方の木質板1の接着面1aを加熱装置3で加熱し乾燥させる。その他は、前記した第1
参考例と同様の工程となっている。本例も、第1
参考例と同様の木質複合板6が製造される。
【0016】
図3は本発明に係る木質複合板の製造方法の
一例を示す工程説明図である。
本例では、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側を加熱装置3で加熱して乾燥させ、並行して
合板或いはLVLからなる他方の木質板2の接着面2aに塗布装置4で水性接着剤5を塗布する。
次に、一方の木質板1の接着面1a側の乾燥したら、直ちに
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1aと
合板或いはLVLからなる他方の木質板2との接着面2aを接着し一体化する。
【0017】
このようにして、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側を乾燥させることにより、その接着面1a側が収縮状態となり、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側の乾燥後、並行して接着面2aに水性接着剤5を塗布してある
合板或いはLVLからなる他方の木質板2と接着するので、
木質繊維板からなる一方の木質板1の乾燥した接着面1a側の収縮状態にある乾燥層部分が水性接着剤5の水分を吸収することにより収縮状態が通常状態に戻り、歪みの発生が防止され、反りが問題とならない木質複合板6が製造される。
【0018】
本例における、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側の加熱乾燥にあっては、第1
参考例と同様、表面からの僅かな層の乾燥で足りるが、本例では、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側の乾燥と
合板或いはLVLからなる他方の木質板2の接着面2aへの水性接着剤5の塗布を並行して行うので、
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側の乾燥後、時間を空けず直ちに
木質繊維板からなる一方の木質板1と
合板或いはLVLからなる他方の木質板2を接着することができ、したがって、
木質繊維板からなる一方の木質板1の乾燥状態にある接着面1a側の接着前の大気中吸湿を配慮する前に接着するので、その分
木質繊維板からなる一方の木質板1の接着面1a側の乾燥度を低くすることが可能となり、第1
参考例よりも製造時間の短縮化を図ることができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の特徴について例証する。ただし、本発明は実施例によって何等制限されるものではない。
木質繊維板からなる一方の木質板1として厚さ2.7mmのMDFを、
合板或いはLVLからなる他方の木質板2として尿素メラミン共縮合樹脂接着剤を用いて熱圧接着した厚さ9mmの5層の合板を用い、水性接着剤5として固形分49%の酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用いた。
【0020】
まずMDFを温度105℃に調整した加熱装置3である面状ヒータ上の加熱平面に置き、MDFの接着面側を乾燥させる時間の計測を開始する。次に、合板の上面に水性接着剤を塗布量20g/平方尺で塗布する。
前述した計測時間が30秒となったところで接着面側を乾燥させたMDFを面状ヒータ上から、水性接着剤を塗布した合板の上に移し接着し、5kgf/cm
2で30分間常温圧縮して水性接着剤を硬化させることにより木質複合板を製造した。
【0021】
加工前のMDFの含水率は8.3%、合板の含水率は11.2%であった。また、加熱後のMDFの含水率は8.1%であった。このMDFおよび合板の含水率は重量変化による推定含水率である。従って、加熱後のMDFにおける加熱した接着面の含水率は8.1%より低くなっていると推測できる。
【0022】
このようにして製造した木質複合板を300mm×300mmに小割りし、20kgf/平方尺で24時間冷圧して養生した後無負荷で静置し、養生開放後1日目、標準(湿度50%、温度20℃)中2日後、高湿(湿度65%、温度22℃)中2日後、低湿(湿度45%、温度20℃)中2日後の環境状態で、木質複合板の反りを測定した。
結果は、低湿中2日後にのみ0.1mm程度の凹となる反りが見られたが、反りの変位がゼロに近い状態であり、問題となるような反りが生じない木質複合板が製造できることが確認できた。
【符号の説明】
【0023】
1
木質繊維板からなる一方の木質板
1a 接着面
2
合板或いはLVLからなる他方の木質板
2a 接着面
3 加熱装置
4 塗布装置
5 水性接着剤
6 木質複合板