(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記案内壁が円錐状であり、前記塗料ノズルの前記先端部の外周から内側に、正面視において、0.5mmを超えない範囲に位置する外周縁を有することを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
前記空気溝は、その前記底部が、前記先端部に向かって、30°から100°の範囲で収束角度を有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
前記空気溝は、前記塗料ノズルの長手方向に後端側の所定の位置から前記塗料ノズルの最先端面までの長さが1mmから3.5mmの間の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
前記塗料ノズルの近傍における前記空気キャップの前方面に対し、前記塗料ノズルの前記案内壁の面内における前記空気溝の底部は、塗料ノズルの先端部の長手方向に沿って前方0.5mmから後方0.5mmの間の範囲に位置することを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、塗料ノズルの先端部の各空気溝は、切削工具によって形成するのが一般的となっている。この場合、該切削工具が新品でない限り、その刃先は、両側面が交差する断面形状で形成される場合が少なく、いわゆるノーズRが形成されるのが一般的である。
【0007】
このため、該切削工具によって形成される空気溝の底部は、その両側面が交差する断面形状で形成されることはなく、Rが形成されてしまう。そして、該切削工具による加工を続けるに従い該切削工具の刃先が摩耗し、空気溝の底部のRはさらに大きくなってしまうことが免れ得なくなる。
【0008】
この場合、空気溝の底部のRが大きくなると、空気溝の案内壁と交差する輪郭で画される三角形状の面積(この明細書では通過面積と定義する)が小さくなるとともに、この三角形状の面積の高さに相当する長さが小さくなり、塗料流と空気流との衝突時間が短くなり、塗料流への空気流の混合効率を低下させる不都合が生じる。
【0009】
また、この場合において、塗料流への空気流の混合は瞬時になされ、塗料の拡散も瞬時なされるため、塗料ノズルからの塗料流が該塗料ノズルの近傍に配置された空気キャップに付着してしまうという不都合を生じる。
【0010】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、塗料流への空気流の混合効率を向上させ、塗料ノズルからの塗料流が空気キャップへ付着してしまうのを回避したスプレーガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明は、塗料ノズルの先端部に形成される空気溝の底部に形成されるRを0.15mm以下の値にし、0.15mmを超える値とならないように設定するようにしたものである。
【0012】
このようにした場合、空気溝の案内壁と交差する輪郭で画される通過面積が大きくなるとともに、この通過面積の高さに相当する長さが大きくなる。このため、塗料流と空気流との衝突時間が長くなり、塗料流への空気流の混合効率を向上させることができる。また、この場合において、塗料流への空気流の混合は徐々になされ、塗料の拡散も徐々になされるため、塗料ノズルからの塗料流が該塗料ノズルの近傍に配置された空気キャップに付着してしまう不都合を回避することができる。
【0013】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のスプレーガンは、塗料流と空気流を大気中で混合させて霧化するスプレーガンであって、銃身を有する本体と、前記銃身の先端側に配置され、その先端面に形成された塗料噴出口から前記塗料流を噴出する塗料ノズルと、前記銃身の先端側に前記塗料ノズルの先端部を囲むように配置され、その内周面と前記先端部の外周面との間に前記空気流を噴射させる環状のスリットを規定する空気キャップとを備え、前記塗料ノズルの前記先端部が、その先端面において前記塗料噴出口の内周から先端側に向かって拡開され噴出した前記塗料流を規制する案内壁を有するとともに、その外周において長手方向に後端側の所定の位置から前記案内壁まで穿設され前記空気流の一部を前記塗料噴出口の前方に誘導する複数のV字状の空気溝を有し、前記空気溝の各々が前記長手方向に沿って徐々に深くなる底部を有し、前記底部に形成されるRが0.15mm以下の値になっていることを特徴とする。
【0014】
(2)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記案内壁が円錐状であり、前記塗料ノズルの前記先端部の外周から内側に、正面視において、0.5mmを超えない範囲に位置する外周縁を有することを特徴とする。
(3)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記案内壁が円錐状であり、側面視において、60°から150°の範囲で開き角度を有することを特徴とする。
(4)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記空気溝は、その前記底部が、前記先端部に向かって、30°から100°の範囲で収束角度を有するように形成されていることを特徴とする。
(5)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記空気溝は、前記塗料ノズルの長手方向に後端側の所定の位置から前記塗料ノズルの最先端面までの長さが1mmから3.5mmの間の範囲にあることを特徴とする。
(6)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、断面の形状がV字状の形状をなす前記空気溝は、その開き角度が20°から100°の範囲にあることを特徴とする。
(7)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記塗料ノズルの近傍における前記空気キャップの前方面に対し、前記塗料ノズルの前記案内壁の面内における前記空気溝の底部は、塗料ノズルの先端部の長手方向に沿って前方0.5mmから後方0.5mmの間の範囲に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように構成したスプレーガンによれば、塗料流への空気流の混合効率を向上させ、塗料ノズルからの塗料流が空気キャップへ付着してしまうのを回避できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1は、本発明のスプレーガンの実施形態1を示す全体構成図である。
【0018】
図1に示すスプレーガン(本体)1は、銃身部2、引金3、および握り部4を備えて構成されている。
図1に示すスプレーガン1は、引金3の操作にともなって、銃身部2の先端から塗料流と空気流が噴出され、これら塗料流と空気流は大気中で混合され霧化されるようになっている。
なお、
図1に示す各部材の以下の説明において、その便宜上、銃身部2側を先端部(前方部)と、銃身部2と反対側を後端部(後方部)と称する場合がある。
【0019】
図1において、スプレーガン1の握り部4からは圧縮空気が空気ニップル5、空気通路6を介して空気弁部7に送り込まれ、該圧縮空気は空気通路6’を介して銃身部2の先端部に送られるようになっている。引金3は支点3Aを中心にして握り部4側へ引くことができ、該引金3により弁棒8を介して空気弁部7の空気弁9を開き、圧縮空気を銃身部2の先端部に送るようになっている。また、引金3には、該引金3を引くことによってガイド室10内で後退するニードル弁ガイド11が取り付けられ、このニードル弁ガイド11には銃身部2の中心軸上に配置されるニードル弁12が取り付けられている。ニードル弁12は、引金3が引かれていない場合に、ガイド室10内に配置されるコイルばね13によって銃身部2の先端側に取り付けられた塗料ノズル30の塗料噴出口30Aのシート内面に押圧されてシールされるようになっている。
【0020】
なお、引金3を引いた場合、ニードル弁12が塗料ノズル30の塗料噴出口30Aから引かれるより僅かに早く前記空気弁9が開かれるように構成されている。
【0021】
塗料ノズル30は、塗料噴出口30Aを有する先端部(以下、ノズル先端部31と称す)において径が小さく後端部において径の大きな円筒状部材から構成されている。塗料ノズル30の後端部には塗料ジョイント14が形成され、この塗料ジョイント14に付設されるたとえば塗料容器(図示せず)から塗料ノズル30に塗料が供給されるようになっている。塗料ノズル30に供給された塗料は、塗料ノズル30のニードル弁12によるシールが解除された際に、該塗料ノズル30の塗料噴出口30Aから塗料流として噴出するようになっている。
【0022】
また、塗料ノズル30のノズル先端部31を囲むようにして空気キャップ16が配置されている。この空気キャップ16は空気キャップカバー18を介して銃身部2に取り付けられている。空気キャップ16の内周面と塗料ノズル30のノズル先端部31の外周面との間には環状のスリット19が形成されるようなっている。前記空気通路6’からの圧縮空気は、前記空気弁部7の空気弁9が開かれた際に、該スリット19から塗料ノズル30のノズル先端部31の周囲に沿って空気流を噴出するようになっている。
【0023】
図2に示すように、塗料ノズル30のノズル先端部31は、先端面32を有し、この先端面32の中心軸上に塗料噴出口30Aが形成されている。塗料噴出口30Aの内径は塗料ノズル30のノズル先端部31の外径に対して比較的小さく形成され、塗料ノズル30の該先端面32には、塗料噴出口30Aから噴出する塗料流を規制する案内壁32Aを有するようになっている。案内壁32Aは、塗料噴出口30Aの内周から塗料ノズル30の先端側に向かって拡開された円錐状として形成されている。そして、案内壁32Aの外周縁は、塗料ノズル30のノズル先端部31の外周から内側に、正面視において、0.5mmを超えない範囲に位置するように構成されている。換言すれば、案内壁32Aの外周縁が塗料ノズル30のノズル先端部31の外周側面からの距離pを0.5mm以下に形成するように構成されている。さらに換言すれば、塗料ノズル30の先端面32には、該案内壁32Aの他に該案内壁32Aの外周縁から塗料ノズル30のノズル先端部31の外周までの部分において、塗料ノズル30の中心軸Oに垂直な面であって、0.5mm以下の幅を有する環状の平面部32Bが形成されている。このように、案内壁32Aの外周縁を塗料ノズル30のノズル先端部31の外周から内側に0.5mmを超えない範囲に位置するように構成することによって、後に詳述するように、塗料噴出口30Aからの塗料噴出量の増加と微粒化の向上が図れる効果を奏するようになる。
【0024】
また、塗料ノズル30のノズル先端部31を拡大した断面図である
図3に示すように、円錐状からなる該案内壁32Aは、側面視において、60°から150°の範囲で開き角度αを有して構成されている。このように、案内壁32Aの開き角度を60°から150°の範囲で構成することにより、後に詳述するように、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aであるストレートな通過路から該案内壁32Aへの角度変化を小さくでき、塗料の該案内壁32Aへ沿っての流れをスムーズに行うようにできるようになっている。なお、
図3では、塗料ノズル30の他にニードル弁12および空気キャップ16も併せて描いている。
【0025】
また、
図2に戻り、塗料ノズル30のノズル先端部31は、その外周において周方向に等間隔にたとえば4個の空気溝15が形成されている。これら空気溝15はその断面の形状がたとえばV字状となっている。これら空気溝15は、塗料ノズル30のノズル先端部31において長手方向に後端側(図中左側)の所定の位置(以下、空気溝15の始点rと称する場合がある)から先端面32まで穿設されて形成され、塗料ノズル30の先端面32に向かうに従い深くなる底部を有する。これら空気溝15は、空気通路6’から前記スリット19を通して噴出される空気流の一部を塗料噴出口30Aの前方に誘導するように構成されている。すなわち、
図3に対応する図であり前記空気溝15が形成されている部分で断面をとった
図4に示すように、空気通路6’からの圧縮空気がスリット19から噴出される際に、同図の矢印に示すように、該圧縮空気は塗料ノズル30の各空気溝15内に導かれ、各空気溝15内の空気流は、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aからの塗料流に気液接触面積を増大させながら衝突混合できるようになっている。これにより、圧縮空気がたとえ低圧の空気流であっても噴出塗料の中心にまで微粒化させる働きをもたせるようになっている。
【0026】
ここで、前記各空気溝15は、
図2に示すように、その底部(図中符号bで示す)が塗料ノズル30の先端面32において前記案内壁32Aの範囲内に位置するように構成されている。換言すれば、各空気溝15の底部bは、塗料ノズル30の先端面32において、塗料噴出口30Aの内径よりもたとえばt(>0)だけ大きな径の円周上に位置するように形成されている。すなわち、各空気溝15の底部bが、塗料ノズル30の先端面32において、塗料噴出口30Aの内径上に位置して形成される場合、あるいは塗料噴出口30Aの内周面にまで侵入して形成される場合を回避させた構成となっている。このように、各空気溝15の底部bを塗料ノズルの先端面32において案内壁32Aの範囲内に位置するように構成することにより、後に詳述するように、各空気溝15内に流入される圧縮空気が塗料ノズル30の塗料噴出口30Aからの塗料流に侵入する際に、該塗料流に生じる抵抗を大幅に減少できるようになっている。
【0027】
そして、
図1に戻り、該空気キャップ16は、その先端側の面において、塗料ノズル30を間にして一対の角部16Aが形成されている。
図5は、空気キャップ16を銃身部2の近傍とともに示した斜視図であり、一対の各角部16Aは、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aを間にして互いに対向するようにして形成されている。空気キャップ16の角部16Aには、
図1に示すように、前記空気通路6’に連結される側面空気孔20が形成され、これら側面空気孔20からの空気流は、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aからの塗料流に交差するように噴射できるようになっている。これにより、塗料ノズル30から噴出される塗料は空気キャップ16の側面空気孔20から噴出される圧縮空気によって楕円形のスプレーパターンとして形成できるようになっている。空気キャップ16の側面空気孔20へ送られる圧縮空気は、パターン開き調節装置23によって流量調整され、該側面空気孔20から噴出されるようになっている。パターン開き調節装置23はパターン調整つまみ24を回転することによって流量調整がなされるようになっている。これにより、塗料ノズル30から噴出される塗料スプレーパターンの扇状の広がりが調節できるようになる。
【0028】
なお、
図1、
図3、
図4では省略して示していたが、
図6(a)、(b)に示すように、塗料ノズル30のノズル先端部31の近傍の空気キャップ16には、該塗料ノズル30のノズル先端部31を間にして一対の補助空気孔21が形成されている。
図6(a)は、空気キャップ16を塗料ノズル30とともに示した側面図(空気キャップ16は断面で示している)で、
図6(b)は、正面図である。補助空気孔21は空気通路6’に連通されて形成され、該補助空気孔21からの空気流は塗料ノズル30の塗料噴出口30Aからの塗料流に交差するようになっている。補助空気孔21は、スプレーパターンの形成上、前記の側面空気孔20からの噴射力に対応してバランスを採るために設けられている。
【0029】
このような構成からなるスプレーガン1は、上述した構成によって次に示す効果を奏するようになる。
(1)スプレーガン1は、まず、塗料ノズル30の各空気溝15が、その底部bにおいて、案内壁32Aの範囲内に位置するように構成されている。これにより、空気溝15に流れる空気流が塗料噴出口30Aから噴出される塗料流に直接に流れ込むことを回避できるようになる。このため、各空気溝15内に流入される空気流が塗料噴出口30Aからの塗料流に侵入する際に、該塗料流に生じる抵抗を大幅に減少させることができるようになる。このため、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aから噴出される塗料流の量を確保できるとともに、該塗料噴出口30Aの内径の拡大に合わせてさらに増加させることができるようになる。
【0030】
(2)スプレーガン1は、案内壁32Aの外周縁が塗料ノズル30のノズル先端部31の外周側面からの距離pを0.5mm以下に形成するように構成されている。これにより、塗料流の塗料噴出量の増加と微粒化の向上が図れる効果を奏する。仮に、案内壁32Aの外周縁を塗料ノズル30のノズル先端部31の外周側面から距離pを0.5mmより大きくした場合、塗料ノズル30のノズル先端部31の外周面を流れる空気流と、空気溝15の内部を流れる空気流によって、塗料ノズル30の先端面32に乱流が発生してしまうことが確かめられる。この乱流は、案内壁32Aの外周縁と塗料ノズル30のノズル先端部31の外周側面との距離pを上述の範囲で短くすることによって少なくなり、これにより、案内壁32Aに沿った空気流の流れがスムーズになることから、塗料噴出量が増加するとともに、塗料の微粒化も向上するようになる。
【0031】
(3)スプレーガン1は、塗料ノズル30の先端面32の案内壁32Aが、その拡開の開き角度αが60°から150°の範囲になるように構成されている。これにより、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aのストレートな通過路から該案内壁32Aへの角度変化を小さくでき、
図7(a)の右図に示すように、塗料の該案内壁32Aへ沿っての流れが図中矢印のようになり、スムーズな流れを形成することができる。このため、
図7(a)の左図に示すように、塗料の該案内壁32Aへの流れが均一化され、塗料噴出口30Aからの塗料は均一に噴出されるようになる。そして、これにともない該塗料の塗料噴出量も増大できる効果を奏する。なお、
図7(a)の左図は、縦軸を塗料ノズル30の先端面32の径方向に対応させ、横軸に塗料の流量をとっている。
【0032】
ちなみに、
図7(b)は、案内壁32Aの拡開の開き角度α’を150°よりも大きく形成した場合の塗料噴出口からの塗料の噴出分布を示した図である。
図7(b)の右図から明らかとなるように、塗料噴出口30Aから噴出される塗料は、案内壁32Aに沿って流れ難くなり、
図7(b)の左図に示すように、塗料噴出口30Aの中心軸の近傍において塗料が密集し該中心軸から離れるに従い塗料密度が疎になる分布となって流れの均一化が図れなくなる。
(4)これにより、本発明のスプレーガン1によれば、塗料ノズル30の塗料噴出口30Aの周辺に形成された複数の空気溝15を通して該塗料噴出口30Aからの噴射塗料に入り込む空気流が、該塗料の噴出量の増大の妨げにならないようにすることができる。そして、塗料流の微粒化、フラット化を達成することができる。
(実施形態2)
図8(a)、(b)は、スプレーガン1の実施形態2の要部を示す構成図である。
図8(a)は、塗料ノズル30のノズル先端部31を示した正面図、
図8(b)は断面図を示している。
【0033】
図8(a)、(b)に示す塗料ノズル30のノズル先端部31は、実施態様1で示したと同様に、先端面32において、塗料噴出口30Aの内周から塗料ノズル30の先端側に向かって拡開された案内壁32Aを有し、外周において、塗料ノズル30の長手方向に後端側の所定の位置から前記案内壁32Aまで穿設された複数の空気溝15を有している。そして、これら空気溝15が前記長手方向に沿って徐々に深くなる底部bを有し、該底部bが塗料ノズル30の先端面32の案内壁32Aの範囲内に位置する構成となっている。
【0034】
そして、このような構成において、前記空気溝15は、20°から100°の範囲内で開き角度gを有するとともに、前記塗料ノズル30の最先端面から前記空気溝15の始点rまでの長さd(以下、単に空気溝の長さdと称す)が1mmから3.5mmの範囲内で前記塗料ノズル30の中心軸に沿う直線距離を有し、前記各空気溝15の底部bが、側面視で前記空気溝15の始点r側(あるいは本体1側)から観た場合において、30°から100°の範囲で収束角度eを有するように構成されていることにある。
【0035】
このように構成した理由は次の通りである。空気溝15を流れる空気流は塗料流内に入り込む際に該塗料流の抵抗となり、塗料噴出量を低減させることになる。塗料流の抵抗が大きくなれば塗料噴出量の低減が大きくなり、少なくなれば塗料噴出量の低減が少なくなる。すなわち、空気溝15があることで塗料噴出量は基本的に下がる傾向となる。
【0036】
一方、空気溝15を流れる空気流は塗料流と混合する。空気流と塗料流との気液接触の機会が増え混合効率が上がり微粒化が向上する。すなわち、空気溝15があることで微粒化は向上する。
【0037】
このことから、塗料流れの抵抗と、圧縮空気と塗料の混合効率は、案内壁32Aと交差される空気溝15の通過面積(空気溝15の案内壁32Aと交差する輪郭で画される面積:図中の散点で示す面積)の大小によって調整でき、塗料流への抵抗が大きくなると、空気と液体との混合効率が高くなる。
【0038】
したがって、上記の抵抗と混合効率は、空気溝15の始点rの位置と、先端への空気溝15の収束角度e、空気溝15の角度gとでコントロールでき、これらの値をコントロールすることで空気溝15の前記通過面積が決まるので、混合効率は通過面積によって決まるといえる。
【0039】
ここで、空気溝15の長さdが1mm以下になると該空気溝15の通過面積が小さすぎて空気溝15の効果が得られず、3.5mm以上になると該空気溝15が塗料噴出口30Aの内径に入り込んでしまうようになる。また、空気溝15の開き角度gが20°以下になると該空気溝15の通過面積が小さすぎて空気溝15の効果が得られず、100°以上になると該空気溝15の通過面積が大きすぎ塗料が出なくなる等の不都合が生じるようになる。さらに、空気溝15の収束角度eが30°以下になると該空気溝15の通過面積が小さすぎて空気溝15の効果が得られず、100°以上になると該空気溝15が塗料噴出口30Aの内径に入り込んでしまうようになる。
【0040】
なお、実施形態2に示した構成は、上述した実施形態1、および後述する実施形態3ないし5のうちいずれの形態に組み合わせて用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
(実施形態3)
図9は、スプレーガン1の実施形態3の要部を示す構成図である。
図9は、
図8(a)に対応した図であり、塗料ノズル30のノズル先端部31の正面図を示している。
【0041】
この場合においても、塗料ノズル30は、実施態様1で示したと同様に、ノズル先端部31の先端面32において、塗料噴出口30Aの内周から塗料ノズル30の先端側に向かって拡開された案内壁32Aを有し、外周において、塗料ノズル30の長手方向に後端側の所定の位置から前記案内壁32Aまで穿設された複数の空気溝15を有している。そして、これら空気溝15が前記長手方向に沿って徐々に深くなる底部bを有し、該底部bが塗料ノズル30の先端面32の案内壁32Aの範囲内に位置する構成となっている。
【0042】
そして、このような構成において、空気溝15の底部bに形成されるR(湾曲部の半径)が0.15mm以下の値になって構成されていることにある。
【0043】
このように構成した理由は次の通りである。塗料ノズル30のノズル先端部31の空気溝15はたとえば切削工具によって形成されるが、該切削工具の先端にはいわゆるノーズRが形成され、これにともない空気溝15の底部bにもRが形成される。この場合、空気溝15の通過面積(図中散点で示す面積)は、空気溝15の底部bのRの値によって変化し、Rの値が小さいほど、前記通過面積の面内において底部bから開口部の中央に延在させた線上の長さhが大きくなるので、塗料流と空気流との衝突時間が長くなり、塗料流への空気流の混合効率を向上させるようになる。また、この場合において、塗料流への空気流の混合は徐々になされ、塗料の拡散も徐々になされるため、塗料ノズルからの塗料流が該塗料ノズルの近傍に配置された空気キャップに付着し難くなる。
【0044】
したがって、実施形態3に示したスプレーガン1によれば、塗料流への空気流の混合効率を向上させ、塗料ノズルからの塗料流が空気キャップへ付着してしまうのを回避できるようになる。
【0045】
なお、実施形態3に示した構成は、上述した実施形態1ないし2、および後述する実施形態4および5のうちいずれの形態に組み合わせて用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
(実施形態4)
図10は、スプレーガン1の実施形態4の要部を示す構成図である。
図10は、塗料ノズル30のノズル先端部31と該ノズル先端部31の周囲に配置される空気キャップ16を示す断面図である。
【0046】
この場合においても、塗料ノズル30は、実施態様1で示したと同様に、そのノズル先端部31の先端面32において、塗料噴出口30Aの内周から塗料ノズル30の先端側に向かって拡開された案内壁32Aを有し、外周において、塗料ノズル30の長手方向に後端側の所定の位置から前記案内壁32Aまで穿設された複数の空気溝15を有している。そして、これら空気溝15が前記長手方向に沿って徐々に深くなる底部bを有し、該底部bが塗料ノズル30の先端面32において案内壁32Aの範囲内に位置する構成となっている。
【0047】
そして、空気キャップ16は、その内周面が塗料ノズル30のノズル先端部31の外周面に平行して対向する平行面25を有するとともに、その後端に円錐状に拡開するテーパ面26を有し、該平行面25が、側面視において、0.3mmから1.0mmの範囲で空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離kを有し、該テーパ面26が、側面視において、0.1mmから0.5mmの範囲で空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離mを、10°から90°の範囲で開き角度γを有するように構成されていることにある。
【0048】
このように構成した理由は次の通りである。空気溝15への空気流の入り込みが強い場合、空気溝15内の空気流の流れが円滑になり、空気流と塗料流との衝突混合の効率が向上するようになる。この際、塗料流の分散が良好となって、均一化される。
【0049】
空気溝15の始点rの位置が、空気キャップ16の塗料ノズル30のノズル先端部31との間に形成される環状のスリット19の後端qより本体側にあり、塗料ノズル30のノズル先端部31の長手方向における前記空気溝15の始点rとスリット19の後端qとの距離が大きいほど空気溝15への空気流の入り込みが強くなる。この理由は、空気キャップ16内への空気流の流れの向きが直接に空気溝15へ入り込むことで、空気溝15内の空気流の流れが強くなるからである。
【0050】
すなわち、空気溝15の始点rが、スリット19の後端qより前方に設定した場合、空気溝15へ直接に空気流が入り込まなくなるので、空気溝15内の空気流の流れが弱くなり、塗料流との混合効率が低下するようになる。
【0051】
そして、上述のように、空気キャップ16の内周面は、塗料ノズル30のノズル先端部31の外周面に平行して対向する平行面25を有するとともに、その後端に円錐状に拡開するテーパ面26を有して形成されている。そして、平行面25は、塗料ノズル30との間で空気流れの直進性を保つことで塗料噴出量を確保できるようになっている。また、テーパ面26は、前記平行面25への空気流れを円滑にでき、該テーパ面26の長さを調整し得るようにすることによって空気溝15への空気流の入り込み強さを調整できるようになっている。
【0052】
ここで、平行面25は、その空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離kを0.3mm以下にした場合、空気流れの直進性が確保できず、塗料噴出量が低減するようになる。これに対し、平行面25の空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離kが1.0mmより大きくなると、支点rに空気キャップ16の平行面25が接近し通過面積が狭くなるので、空気溝15に流れ込む空気量が制限され微粒化の低下、塗料噴出量の低下を招く。よって、該平行面25の空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離kは0.3mmから1.0mmの範囲が適当となる。
【0053】
また、テーパ面26は、空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離mが短い方が空気溝15内への空気流れ入り込みが強くなるので塗料流の分散が良くなり塗料流が均一になり、スプレーパターンはフラット傾向に変化していく。しかし、0.1mmより小さくなると、空気溝15内への空気流れの入り込みが強くなり過ぎてしまい、塗料噴出量が低下してしまう。これに対し、テーパ面26の空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離mが0.5mmより大きくなると空気流れの入り込みが弱くなるので塗料流が中心部に密集する。いわゆる中高傾向になる。これにより、該テーパ面26の空気キャップ16の中心軸に沿う直線距離mは0.1mmから0.5mmの範囲が適当となる。
【0054】
ここで、
図10において、テーパ面26は1段としているが、これに限定されることはなく多段にするようにしてもよい。テーパ面26を多段とすることで空気流を円滑にでき、塗料流のフラットからなるスプレーパターン形状の安定化を図ることができる。また、テーパ面26は、空気キャップ16の中心軸に沿う方向に曲面を有するように構成しても、空気流れを円滑にすることができる。
【0055】
なお、実施形態4に示した構成は、上述した実施形態1ないし3、および後述する実施形態5のうちいずれの形態に組み合わせて用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
(実施形態5)
図11は、スプレーガン1の実施形態5の要部を示す構成図である。
図11は、塗料ノズル30のノズル先端部31を空気キャップ16とともに示した断面図を示している。
【0056】
塗料ノズル30および空気キャップ16はたとえば実施形態1に示したものと同様の構成となっている。
【0057】
この場合、空気キャップ16の塗料ノズル30に近接する前端面16Sに対し、塗料ノズル30の案内壁32Aの面内における空気溝15の底部(図中符号Bで示す)までの距離をWとすると、塗料ノズル30のノズル先端部31の長手方向に沿って前方0.5mmから後方0.5mmの間に位置するように構成されている。
なお、
図11では、塗料ノズル30の案内壁32Aの面内における空気溝15の底部Bを空気キャップ16の前端面16Sに対し前方0.5mmとなるように位置づけて示している。
【0058】
このように構成したスプレーガン1によれば、空気キャップ16への塗料の付着を回避させるともに、塗料の分散を良好にでき微粒化を向上させることできるようになる。すなわち、空気キャップ16の塗料ノズル30に近接する前端面16Sに対し、塗料ノズル30を、その案内壁32Aの面内における空気溝15の底部Bの位置を塗料ノズル30のノズル先端部31の長手方向に沿って後方へ設定することにより、塗料流へ流入する空気流の量を多くでき、塗料の分散を良好にでき微粒化を向上させることができる。
【0059】
しかし、空気キャップ16内で塗料流と空気流との混合がなされるため、塗料ノズル30から拡散された塗料の空気キャップ16への付着が免れないようになってしまう。このため、空気キャップ16の前端面16Sに対し、塗料ノズル30を、その案内壁32Aの面内における空気溝15の底部Bの位置を塗料ノズル30のノズル先端部31の長手方向に沿って前方へ設定することにより、塗料ノズル30から拡散された塗料の空気キャップ16への付着を回避させることができる。
【0060】
このようなことから、本実施形態では、前記空気キャップ16の前端面16Sに対し、前記塗料ノズル30の前記案内壁32Aの面内における前記空気溝15の底部Bは、塗料ノズル30のノズル先端部31の長手方向に沿って前方0.5mmから後方0.5mmの間に位置するように構成することにより、空気キャップ16への塗料の付着を回避させるともに、塗料の分散を良好にでき微粒化を向上させるようにできるようになっている。
【0061】
なお、実施形態5に示した構成は、上述した実施形態1ないし4のうちいずれの形態に組み合わせて用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0062】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。