(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のコネクタは、ストッパの軸方向への移動の有無によって検知部材の押し込みの可否が決定される構造であるため、ハウジングの内部にはストッパの軸方向への移動を許容するスペースを確保しなければならない。このため、従来のものではハウジングが軸方向に関して大型化してしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングの小型化を達成することができる配管用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、配管が正規位置まで挿入されたことを検知可能な配管用コネクタであって、前記配管を接続可能なハウジングと、前記ハウジングの内部に配置され、前記ハウジングに対し定位置に取り付けられる基部を有し、かつ前記配管の挿入途上では前記配管の端部寄りに張出し形成されたフランジに当接することに伴い前記基部を前記定位置に保持したまま弾性変形して前記配管の挿入経路の外方へ退避して前記フランジの通過を許容し、前記配管が前記ハウジングの正規位置まで挿入されたときには復帰変形して前記フランジに係止可能となる抜け止め片と、前記ハウジングに対し変位可能に装着されて前記配管が前記ハウジングに正規位置まで挿入されたか否かを検知するチェッカーと、前記ハウジングの内部に配置され前記配管の挿入途上では前記チェッカーと干渉して同チェッカーの変位を規制する規制状態にあり、前記配管が正規位置まで挿入されたときには前記フランジにより検知状態に弾性変位させられることにより前記チェッカーとの干渉を解除して前記チェッカーの変位を許容する検知片と、
前記ハウジング内に組込まれ、前記抜け止め片と前記検知片とが一体に形成されたリテーナとを備え
、前記検知片は前記基部から前記配管の挿入方向後方へ向けて延出するベース部とこのベース部の先端から内側へ向けて折り返されて前記フランジによって前記ベース部に接近する方向への撓みが可能となる検知部とからなる一方、前記検知部の前記側縁で前記チェッカーと干渉する部位にはチェッカーが前記側縁に干渉している状態において、前記チェッカーが同側縁から外れるのを規制するずれ止め凹部が形成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載のものにおいて、前記チェッカーは検知脚を有しかつこの検知脚は前記ハウジングを貫通するとともに、前記配管が正規位置に至っていないときには先端が前記検知片の前記側縁に干渉可能であり、前記配管が正規位置に至ったときには前記検知脚と前記側縁との干渉が解除されて前記チェッカーの変位が可能となっており、かつ前記チェッカーが検知位置へ変位した状態では前記検知脚が前記フランジの後方に位置して前記配管が抜け止めされるところに特徴を有する。
【0011】
請求項
3の発明は、請求項
1又は請求項
2に記載のものにおいて、前記リテーナは、配管を挿通可能なリング状に形成された前記基部の周縁から前記抜け止め片が中心を挟んだ対称位置に一対設けられ、これと略直交する対称位置には前記検知片が一対設けられるとともに、前記検知片のうち少なくとも前記チェッカーと干渉する部分は前記抜け止め片よりも幅広に形成されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項
4の発明は、請求項
1乃至請求項
3のいずれかに記載のものにおいて、前記ハウジング内にはシールリングが挿入されるとともに、このシールリングを抜け止めするブッシュが前記ハウジングに対して位置決めされた状態で組み込まれ、前記基部は前記ブッシュに係止しているところに特徴を有する。
【0013】
請求項
5の発明は、請求項
1乃至請求項
4のいずれかに記載のものにおいて、
前記抜け止め片は前記基部から前記配管の挿入方向後方へ向けて撓み可能に延出する延出部とこの延出部の先端から内側へ向けて折り返されて前記フランジに係止可能な係止部とからなり、前記延出部には肉抜き孔が開口しているところに特徴を有する。
【0015】
請求項
6の発明は、請求項
1乃至請求項
5のいずれかに記載のものにおいて、
前記チェッカーは、前記ハウジングに対し仮保持位置と検知位置との間を前記配管の径方向に沿って押込み可能に取り付けられ、かつ前記仮保持位置では前記ハウジングへの前記配管の挿入を許容した状態で前記検知脚の先端が前記検知片の前記側縁部と干渉することで前記検知位置への変位が規制され、前記検知位置では前記検知片の前記側縁部との干渉が解除された状態で、前記ハウジングに対し進入するところに特徴を有する。
【0016】
請求項
7の発明は、請求項
2に記載のものにおいて、前記チェッカーは、前記仮保持位置と前記検知位置において前記ハウジングに係止する一対のロック脚を備えるとともに、両ロック脚は前記チェッカーを前記仮保持位置から前記検知位置へ変位操作するための操作部によって一体に連結され、かつ、前記検知脚は金属材料によって形成される一方、前記操作部及び前記ロック脚は合成樹脂材にて形成され、さらに前記検知脚はインサート成形によって検知脚の基端部が前記操作部に埋設されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、配管をハウジングに挿入する過程では、抜け止め片は定位置に保持されたまま弾性変形してフランジの通過を許容する。フランジが抜け止め片を通過して正規位置に至ると、抜け止め片は弾性復帰してフランジに係止するため、配管はハウジング内に抜け止めされる。一方、配管の挿入途上では検知片は規制状態にあってチェッカーと干渉するようになっているため、チェッカーを変位させることができない。しかし、配管が正規位置に至ると、検知片はフランジによって検知状態へと変位しチェッカーとの干渉が回避されるため、チェッカーが変位可能となる。作業者はこのことをもって配管が正規位置に至ったことを知ることができる。
【0018】
ところで、本発明によれば、抜け止め片は配管の挿入の際、チェッカーによる検知の際にもハウジング内の定位置に保持され移動を伴わない。したがって、ハウジング内に抜け止め片の移動スペースを確保する必要がないから、その分の省スペース化を達成することができる。
また、抜け止め片と検知片とはリテーナとして一体化されているため、構成部品の削減による構成の簡素化を達成することができる。さらに、チェッカーの検知脚はリテーナのずれ止め凹部に係止して容易には検知部との干渉位置がずれてしまうことがないため、検知機能の維持に有効である。
【0020】
請求項
2の発明によれば、チェッカーは配管が正規位置に至ったか否かの検知の機能を有するとともに、配管が正規位置に至り、チェッカーが検知位置に変位した状態では、検知脚がフランジの後方に位置することで、配管の抜け止めの機能をも発揮することができる。
【0021】
請求項
3の発明によれば、相対的に検知片を抜け止め片よりも幅広に形成することで検知片の剛性が高められている。したがって、チェッカーとの干渉に起因した変形を規制して検知機能の維持に寄与することができる。逆に、抜け止め片は検知片よりも相対的に剛性が低められているため、フランジの通過の際の抵抗が低められ、配管の挿入作業の円滑化が図られる。
【0022】
請求項
4の発明によれば、リテーナをシールリングの抜け止めをするブッシュを利用して係止するようにしたため、ハウジング内にリテーナに対する専用の係止構造を設けずに済むため、この点によっても構成の簡素化が図られる。
【0023】
請求項
5の発明によれば、抜け止め片の延出部には肉抜き孔が開口しているため、抜け止め片の剛性低下によりフランジの通過抵抗を減らして配管の挿入作業の円滑化に寄与する。
【0025】
請求項
6および請求項
7の発明によれば、チェッカーは配管の挿入前において予めハウジングに対して仮保持させておくことができるため、コネクタの取扱い性に優れる。また、配管の挿入完了した後もチェッカーはハウジングに装着されたままであるため、廃棄物となることもない。
【0026】
請求項
7の発明は、チェッカーは検知脚部分をインサート成形によって形成するようにしている。特に、チェッカーの操作部には検知脚の基端部が埋設されているため、チェッカーに操作力を作用させた場合にも操作部が変形しにくく、また配管の抜け止めを果たす検知脚が金属製であるため、配管の抜け止め力を向上させることに寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施形態1>
本実施形態のコネクタの主たる構成要素は、配管を接続可能なハウジング1,2、ハウジング2内に組み込まれるリテーナ3および配管Pが正規位置に挿入されたか否かを検知するためのチェッカー4である。なお、以下の説明で前後および上下に関する称呼は
図1に基づいて行い、同図において左側を前側、右側を後側と呼ぶ。また、左右に関する称呼は
図3に基づいて行うものとする。
【0029】
<ハウジング1,2および配管P>
ハウジング1,2は、合成樹脂製の主ハウジング1とこの主ハウジング1に接続される金属製の副ハウジング2とから構成されている。
図1乃至
図3に示すように、主ハウジング1は全体として短い角筒型形状をなしており、前後両端には前面フランジ5および後面フランジ6を有している。主ハウジング1において前面フランジ5および後面フランジ6の間の外面は方形状に形成されているが、主ハウジング1の内部には
図3,
図10,
図11に示すように、円筒型に周壁7が形成されている。
【0030】
主ハウジング1の上面壁1Aおよび底面壁1Bにはそれぞれ左右一対の開口8が貫通している。上面壁1Aの両開口8はチェッカー4の両検知脚9を貫通可能に形成されている。底面壁1Bの開口8は上面壁1Aの開口8と同軸上に配され、チェッカー4が検知位置(
図11に示すチェッカー4の位置)に至ったときに、両検知脚9の先端を進入させて干渉を回避することができる。
【0031】
主ハウジング1の前面フランジ5および後面フランジ6は主ハウジング1の左右両側壁1Cおよび上面壁1Aからそれぞれ外方へ張り出すようにして形成されており、底面壁1Bとはほぼ面一をなすように形成されている。上記したように、前面フランジ5および後面フランジ6が共に主ハウジング1の左右両側壁1Cから外方へ張り出すようにして形成されることで、前面フランジ5と後面フランジ6との間には後述するチェッカー4の移動動作を案内するガイド溝10が形成されている。両ガイド溝10の底面、つまり主ハウジング1の左右両側壁1Cには、
図10、
図11に示すように、チェッカー4を仮保持位置(
図1、
図3等に示される位置)および検知位置(
図6,
図11等に示される位置)に保持するための仮保持用受け部11と本係止用受け部12とがそれぞれ上下に間隔をおいて設けられている。
【0032】
各受け部11,12は前面フランジ5と後面フランジ6との間のほぼ全幅に亘って凹み形成され、
図3、
図10等に示すように、係止面11A,12Aは逆テーパ(奥側へ向けて上り勾配をなすテーパ)をなして形成されている。また、仮保持用受け部11および本係止用受け部12において係止面11A,12Aに連続して鉛直面が形成され、そこから下方は下り勾配となった傾斜面11B,12Bが形成されている。
【0033】
図4等に示すように、主ハウジング1の前面フランジ5には副ハウジング2の後端部を挿入させるための前面側挿入口13が開口している。前面側挿入口13は周壁7へと誘導斜面13Aを介して連続している。
【0034】
ここで、副ハウジング2について説明すると、副ハウジング2は金属製であり、パイプ状をなして一体に形成されている。
図1に示すように、副ハウジング2の前部は、図示しない他の配管が接続されるジョイント部14となっている。副ハウジング2の後部寄りには
図4乃至
図9に示すように、シール収容部15が所定長さ範囲をもって形成されている。このシール収容部15の後端には後方へ上り勾配となるテーパ部16が連続し、テーパ部16に続いて拡張筒部17が形成されている。拡張筒部17の後端開口縁は全周に亘って内方へ屈曲して屈曲縁17Aが形成されている。
【0035】
副ハウジング2は主ハウジング1に対し拡張筒部17側を向けて前面側挿入口13から挿入され、拡張筒部17の外周面が主ハウジング1内の周壁7に密着した状態で取り付けられている。拡張筒部17の後部開口縁は全周に亘って径方向内方へ折り曲げられ、主ハウジング1の後面側挿入口18周りの壁面に当接している。また、拡張筒部17の周面には左右で対をなす開口19が計4か所に貫通している。各開口19は主ハウジング1の各開口8と対応した位置にこれら開口8と連通可能でかつ各開口8より開口幅(左右方向の開口幅)の広い方形状をなして形成されている。
【0036】
主ハウジング1の後面側挿入口18は後面フランジ6において前面側挿入口13と同軸で開口している。後面側挿入口18は前面側挿入口13及び周壁7の穴径より小径に形成されている。
【0037】
上記した副ハウジング2におけるシール収容部15にはスペーサ20とシールリング21とが交互に二個ずつ挿入され、配管Pが正規位置に挿入されると、シールリング21によって副ハウジング2と配管Pとの間がシールされる。各シールリング21とスペーサ20はシール収容部15に圧入されたブッシュ22によって位置決めがされている。ブッシュ22は合成樹脂製であり、配管Pを挿通可能に形成されている。このブッシュ22はシール収容部15の内壁に沿って密着する円筒部22Aとその後部に連続しリテーナ3の基部3Aと当接するリテーナ受け部22Bとから構成されている。リテーナ受け部22Bの内周部にはリング状の段差面をなす係止段部22Cが形成されている。
【0038】
配管Pは金属製のパイプによって形成され、先端部寄りの位置にはフランジFが張出し形成されている。このフランジFの外径は主ハウジング1の後面側挿入口18の穴径より僅かに小さい寸法設定となっている。
【0039】
<リテーナ3>
リテーナ3は金属製であり、
図12に示すように、その基部3Aはリング状に形成されている。基部3Aは配管Pの先端部を挿通可能な穴径をもって形成されている。
図4乃至
図9に示すように、基部3Aはブッシュ22の係止段部22Cに嵌め入れられている。また、基部3Aの周縁部は全周に亘って外方へ張出して当て縁23が形成されている。この当て縁23はブッシュ22におけるリテーナ受け部22Bの後端面に対向して同面へ突き当て可能となっている。
【0040】
当て縁23の周縁には抜け止め片24および検知片25がそれぞれ一対ずつ配され、各対はほぼ直交するようにして配されている(
図12参照)。リテーナ3が主ハウジング1内に組み込まれた状態では、
図10および
図11に示すように、抜け止め片24が上下で対をなし、検知片25が左右で対をなすような配置となる。
【0041】
図4等に示すように、抜け止め片24は延出部24Aと係止部24Bとからなっており、これら両部24A,24Bは共にほぼ同幅をもって形成されている。延出部24Aは基部3Aの当て縁23から後方へ向けて斜め上方へ延出し、外方(拡開方向)への撓み変形が可能に形成されている。両延出部24Aには肉抜き孔26が長さ方向に沿って開口し、延出部24A自体の剛性が低められている。両肉抜き孔26は、
図12に示すように、基部3A側が幅狭で先端側に向けて徐々に幅広となるように形成されている。
【0042】
図4等に示すように、延出部24Aの先端側は副ハウジング2の屈曲縁17Aに当接した後、内方へ略U字状に折り返され上記した係止部24Bとなる。係止部24Bは延出部24Aの折り返し部分から前方へ向けて斜め下方へ延出し、さらにその先端部は外方へ向けて略U字状に折り返されている。係止部24Bは延出部24Aへ接近する方向への弾性変形が可能である。自然状態では、両係止部24Bの先端同士の高さ間隔は配管Pにおける一般部の外径寸法とほぼ等しい寸法に設定されている。したがって、配管Pが挿入される過程では、最大径を有するフランジFが係止部24Bに摺接し、係止部24Bおよび延出部24Aを共に外方へ撓み変形させることによってフランジFの通過を許容する。係止部24BはフランジFが通過すると、つまり配管Pが正規位置に至ると、弾性復帰してフランジFに係止可能である。
【0043】
図10に示すように、リテーナ3が副ハウジング2内に組み込まれた状態では、延出部24Aおよび係止部24Bは上方および下方の開口19の各ペアの間に位置するようにしてあり、チェッカー4の両検知脚9と干渉することはない。
【0044】
図7等に示すように、検知片25はベース部25Aと検知部25Bとからなっている。ベース部25Aは抜け止め片24の延出部24Aとほぼ同幅をもって形成されているが、
図10乃至
図12に示すように、検知部25Bはベース部25Aよりもかなり幅広に形成されている。ベース部25Aは基部3Aの当て縁23から一旦後方へほぼ直角に屈曲して延びた後、斜め上方へ延出している。ベース部25Aの先端部は副ハウジング2の屈曲縁17Aに当接した後、内方へ略U字状に折り返されて検知部25Bを形成している。検知部25Bは抜け止め片24の係止部24Bとは異なり、先端に折り返し部分を持たないが、僅かに外方へ向けて屈曲しフランジFによって押圧される被押圧部25Cとなっている。被押圧部25Cは配管Pが挿入されるときに、検知部25Bの先端が配管の外周面に突き立てられるような干渉を回避する役割も果たす。
【0045】
検知部25Bはチェッカー4と干渉してチェッカー4の変位を規制する規制状態(
図7,8状態:配管Pが正規位置に至るまで継続される)とチェッカー4との干渉を解除してチェッカー4の変位を許容する検知状態(
図9状態)との間で弾性撓み可能に形成されている。
図12に示すように、自然状態における両検知部25Bの先端間同士の間隔は、両係止部24B同士の間隔より若干狭く設定されている。検知部25Bは外方へ撓み可能に形成され、
図8に示すように、配管Pの挿入に伴うフランジFとの摺接に起因して外方への撓み変形を開始し、配管Pが正規位置に至ると、
図9に示すように、フランジFが検知部25Bの被押圧部25Cを押圧する。このとき、検知部25Bの被押圧部25Cはベース部25Aにほぼ密着した撓み状態に保持される。
【0046】
検知部25Bはベース部25Aより折り返された後に上下両方向に等幅をもって張り出している。また、検知部25Bの上下両側縁にはチェッカー4の検知脚9に係止可能な規制縁27が形成されている。リテーナ3が副ハウジング2中に組み込まれた状態では、
図7あるいは
図8に示すように、両検知部25Bの規制縁27はそれぞれ対応する開口19の内側に臨み、開口19を斜めに横切るように位置している。そして、チェッカー4が仮保持位置にある状態で配管Pが正規位置に至っていない状態では、
図10(
図7、
図8も併せて参照)に示すように、チェッカー4の検知脚9は規制縁27上に当接する状態が維持される。しかし、配管Pが正規位置に至り、フランジFによって両検知部25Bが拡開変形すれば、規制縁27はチェッカー4の検知脚9との係止が解除されるようになっている。
【0047】
さらに、規制縁27の後端部寄りの部位から前端にかけての長さ範囲には検知脚9が規制縁27から外れてしまうのを規制するずれ止め凹部28が形成されている。ずれ止め凹部28は検知部25Bの自由端側へ向けて徐々に上り勾配となるように形成されている。
【0048】
<チェッカー4>
チェッカー4は金属製の一対の検知脚9をインサート成形によって一体化した状態で備えている。チェッカー4は両検知脚9を挟むようにして一対のロック脚29を有している。両ロック脚29は主ハウジング1を左右方向で跨ぐ間隔をもって配され、かつガイド溝10へ差し込み可能な幅寸法を持って形成されている。両ロック脚29は開脚方向への撓み変形が可能である。また、ロック脚29の下端にはロック爪30が内向きに突出形成され、主ハウジング1の仮保持用受け部11および本係止用受け部12にそれぞれ係止可能である。
【0049】
両ロック脚29同士は操作部31によって連結されており、操作部31の上面はチェッカー4を仮保持位置から検知位置へ押し込み操作するための操作面となっている。この操作部31には両検知脚9の端部同士を連結している基端部32が埋設されている。操作部31は
図13等に示すように、前縁側であって幅方向の中央部に切欠き溝33が形成されて検知脚9の基端部32の一部を露出させている。
【0050】
両検知脚9はロック脚29よりも幅狭に形成されかつその下端位置はロック脚29の下端位置よりも若干上位となるように長さをもって形成されている。また、検知脚9は主ハウジング1の開口8および副ハウジング2の各開口19へ挿通可能に形成されている。両検知脚9は、チェッカー4が仮保持位置にあるときには両検知脚9の先端が検知片25の検知部25Bの側縁(ずれ止め凹部28)に当接する。検知脚9とずれ止め凹部28との当接状態は配管Pが正規位置に達する直前の状態まで維持され、配管Pが正規位置に至ったときに初めて当接状態が解除されるようになっている。なお、チェッカー4が検知位置にあるときには副ハウジング2における下側の開口19を通過して主ハウジング1の下側の開口8内に進入する脚長をもって形成されている。
【0051】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明する。本実施形態に係るコネクタの組み立て作業について説明する。まず、副ハウジング2内にスペーサ20、シールリング21を交互に組み込み、続いてブッシュ22を圧入してスペーサ20、シールリング21を抜け止めする。その後、副ハウジング2の後方からリテーナ3が組込まれる。その場合、リテーナ3は各抜け止め片24および検知片25が窄み変形しながら副ハウジング2の後面側の開口を通過して内部に進入する。そして、リテーナ3は基部3Aがブッシュ22の係止段部22C内に嵌め入れられ、リテーナ受け部22Bの後端面に当て縁23がほぼ当接した状態で保持される。
【0052】
上記のようにして副ハウジング2内にシールリング21、リテーナ3等が組み入れられたら、副ハウジング2を拡張筒部17側から主ハウジング1の前面側挿入口13へ圧入する。その場合に、副ハウジング2は開口19の各対と主ハウジング1の開口8の各対とが整合するようにして主ハウジング1への組み込みを行う。組み込み後には拡張筒部17の外周面が主ハウジング1の周壁7に密着する。こうして、副ハウジング2が主ハウジング1に接続されれば、続いてチェッカー4の取り付けがなされる。チェッカー4は主ハウジング1の上方から両ロック脚29の先端をそれぞれガイド溝10の上端に適合させ、同時に検知脚9の先端を対応する開口8に適合させる。そのままチェッカー4押し込むと、両ロック脚29は開脚変形をしつつ仮保持用受け部11へ係止する。こうすることで、チェッカー4は
図10に示すような仮保持位置に保持される。このときには、両検知脚9は同図に示すように、上部側の抜け止め片24を外側から挟むように位置しているとともに、両検知脚9の先端は両検知片25における検知部25Bの規制縁27上であってずれ止め凹部28内の領域に当接している。また、仮保持位置では検知脚9は、配管PのフランジFが通過する領域の外側で待機している。
【0053】
配管Pが主ハウジング1の後面側挿入口18から副ハウジング2内に挿入されると、
図4に示すように、配管Pの先端が両抜け止め片24の係止部24Bの自由端部に当接し、また
図7に示すように、両検知片25の検知部25Bの自由端部に当接する。そして、
図5に示すように、配管Pの挿入が進行しフランジFが抜け止め片24の係止部24Bの途中位置に当接した以降は、フランジFの前進に伴って抜け止め片24の係止部24Bおよび延出部24Aは共に外方へ弾性変形する。この間の挿入抵抗は、抜け止め片24の延出部24Aに肉抜き孔26が開口していることから、効果的に減じられている。そして、配管Pが正規位置まで挿入されれば、
図6に示すように、抜け止め片24の係止部24Bは共に弾性復帰してフランジFの後面側に係止して配管Pの抜け止めがなされる。
【0054】
上記した抜け止め片24の撓み変形がなされている間、フランジFは検知片25の検知部25Bの途中部位にも当接する。それ以後、フランジFの前進に伴って検知片25およびベース部25Aは外方へ撓み変形する。この間、検知脚9の先端は検知部25Bの側縁に形成されたずれ止め凹部28との当接位置が検知部25Bの自由端側へと徐々に変位してゆく。そして、配管Pが正規位置まで挿入されると、
図9に示すように、フランジFは係止部24Bの自由端に当接する位置に至る結果、検知部25Bは最も拡開した状態となる。その結果、検知部25Bはチェッカー4の検知脚9との係止から解除され、これによって検知脚9の通過が許容される。
【0055】
前記したように、配管Pが正規位置まで挿入されると、フランジFが弾性変形していた抜け止め片24の係止部24Bを通過することによって挿入抵抗が急激に減じられるため、作業者はこのことをもって配管Pが正規位置に至ったことを知ることができる。続いて、作業者がチェッカー4の操作部31を押圧すると、上記したように検知脚9と検知片25との干渉が解消されているため、ロック脚29のロック爪30は仮保持用受け部11の傾斜面に沿って移動し、仮保持用受け部11との係止状態を脱する。チェッカー4の押し下げがそのまま進行すると両ロック脚29は開脚し、ロック爪30は主ハウジング1のガイド溝10の底面に沿って下方へ摺接する。そして、ロック爪30が本係止用受け部12に至った時点で両ロック脚29は弾性復帰し本係止用受け部12に係止する。また、このとき同時に操作部31の下面は主ハウジング1の上面壁1Aに当接するため、チェッカー4はこれ以上の押込みが規制される。
【0056】
一方、チェッカー4が検知位置に至った状態では、
図11に示すように、両係止脚が配管Pの一般部を挟みつつフランジFの後方に位置する。このことによって、配管Pは抜け止め片24による係止と併せて検知脚9との係止によって二重に抜け止めされることになる。しかも、本実施形態の場合、検知脚9は金属製であるため、高い抜け止め力が得られる、という効果も発揮することができる。
【0057】
ところで、本実施形態では、配管Pが正規位置に至っていないときにはフランジFと検知片25の検知部25Bとの干渉状態が維持されるため、チェッカー4の押込み操作が不能となっている。また、このときには検知脚9の先端は検知部25Bの端縁、つまり検知部25Bの撓み方向とは直交する方向から当接しているため、かつ検知部25Bはベース部25Aに比較して広幅に形成されて剛性がアップされているため、チェッカー4の操作部31に比較的強い力が作用しても検知部25Bがねじれ等の変形が生じにくく、干渉状況の維持が有効に確保される。
【0058】
検知脚9と検知部25Bとの干渉は、配管Pが正規位置に至ったときに初めて解除されるため、チェッカー4の押し下げ操作が可能になることをもって、配管Pが正規位置に至っていることが保証される。また、チェッカー4が仮保持位置にあるときには、チェッカー4がハウジングから上方へ大きく突出しているから、このことをもってチェッカー4の操作忘れ、あるいは配管Pが正規位置に至っていないことが外観上からも検知することができる。また、検知位置に至っていれば、チェッカー4の操作部31は主ハウジング1の上面壁1Aに当接するとともに、前面フランジ5と後面フランジ6との間においてこれら壁面から突出しない状態で嵌まり込むため、操作部31が不用意に解除操作されてしまうこともない。
【0059】
一方、メンテナンス等のために、配管Pを抜き取る必要が生じた場合には、ロック爪30と本係止用受け部12との係止を強制的に解除して、チェッカー4を仮保持位置に至らせる。この状態で、適当な解除治具を主ハウジング1の後面側挿入口18および副ハウジング2における拡張筒部17の後部開口を通して両係止部24Bを拡張方向へ強制的に弾性変形させる。この拡張変形状態のまま配管Pを抜き方向に引っ張ると、フランジFは両検知部25Bを復帰方向に戻し変形させつつ後方へ変位し、かくして配管Pを抜き取ることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態の配管用コネクタによれば次のような効果を発揮することができる。すなわち、リテーナ3は配管Pの挿入からチェッカー4の押込み完了に至るまでの間、終始、定位置に保持され、ハウジングの軸方向への移動を一切伴わない。したがって、従来のように、ハウジング内に移動スペースを確保する必要がないため、その分ハウジングを軸方向にコンパクト化することができる。
【0061】
また、抜け止め片24と検知片25とがリテーナ3によって一体化されているため、部品点数の削減が達成される。さらに、リテーナ3の係止相手をシールリング21等に対する抜け止めを行うブッシュ22としている。つまり、既存構造を利用してリテーナ3の係止を行うようにしたため、専用構造を設ける場合に比較してハウジング構造の簡素化を図ることができる。
【0062】
さらに、チェッカー4が仮保持位置にある状態でチェッカー4に押込み力が付加されると、配管Pが正規位置に至っていないにも拘らず、検知脚9の先端が検知部25Bの側縁から外れてチェッカー4の押込みが可能になってしまうことが懸念される。このようなことが生じる理由は、検知脚9は検知部25Bの自由端側へずれて外れてしまうものと予想されるが、本実施形態の場合、検知部25Bの側縁(規制縁27)には自由端側へ向けて上り勾配となるずれ止め凹部28が形成されているため、検知脚9が規制縁27の自由端部側へ移動するには抵抗が大きくなることをもって、外れを有効に規制することができる。したがって、チェッカー4の嵌合検知機能を維持することができる。
【0063】
さらにまた、チェッカー4は仮保持位置でアッシーされるようにしたため、チェッカー4を含めて一体化した状態で配管の接続現場に搬入することができる。したがって、取扱い性に優れたものとすることができる。
【0064】
<実施形態2>
図14は実施形態2に係るリテーナ50を示している。実施形態2のリテーナ50が実施形態1のリテーナ3と相違する点は、両抜け止め片51の係止部51Aに補強用のリブ52を形成した点である。係止部を補強する理由は、チェッカー4と協同しなくともリテーナ50単独で配管Pに対する必要な抜け止め強度を得るためである。
具体的には、リブ52は係止部51の幅方向の中央部において長さ方向に沿いつつ所定長さ範囲に亘って形成されている。このリブ52は、係止部の外面において延出部53側へ突出するように叩き出されて形成されている。
なお、延出部53に肉抜き孔26が開口している点等、その他の構成は実施形態1のリテーナと同様であるため、同一符号を付して説明は省略する。
【0065】
図15に示すように、配管が正規位置まで挿入されると弾性復帰した抜け止め片の係止部がフランジFの後面に係止することによって、配管の抜け止めがなされる。この場合、上記したように、係止部はリブによって曲げ剛性が強化されているため、チェッカーが仮保持位置にあるときにおいても配管に対する必要な抜け止め力が確保されている。
【0066】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、抜け止め片24と検知片25とをリテーナ3によって一体化したが、検知片25は抜け止め片24とは別部品とするようにしてもよい。
(2)上記実施形態では副ハウジング2を飛び石等からも保護されるように金属製としたが、コネクタの使用部位によっては、樹脂部品としてもよい。また、そのような場合には副ハウジング2と主ハウジング1とは一体に形成してもよい。さらに、両ハウジングが樹脂材によって一体化されるのであれば、抜け止め片24をインサート成形によって一体に組み込むことも可能である。
(3)実施形態2では係止部の曲げ剛性アップのために、補強用のリブを形成したが、これに代えてリテーナ全体の肉厚を増加させる方式を採用してもよい。