特許第5787450号(P5787450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787450
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/12 20060101AFI20150910BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H01Q19/12
   H01Q21/08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-97417(P2013-97417)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-220608(P2014-220608A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年5月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成25年3月5日に、電子情報通信学会2013年総合大会講演論文集,B分冊(第B−101頁,一般社団法人電子情報通信学会)にて発表 (2)平成25年3月20日に、電子情報通信学会2013年総合大会(岐阜大学,岐阜県岐阜市)にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】山口 良
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
(72)【発明者】
【氏名】表 英毅
(72)【発明者】
【氏名】杉田 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−055526(JP,A)
【文献】 特開昭56−024803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00− 3/46
H01Q 19/00− 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子が所定の間隔で配設されたアレイアンテナと、前記アレイアンテナに対向するように設けられた反射部材と、を備えたアンテナ装置であって、
前記アレイアンテナの全体の指向性パターンにおけるフロントローブの方向が該アレイアンテナの長手方向に直交する仮想水平面から所定の角度だけ下方に傾くように前記複数のアンテナ素子間で位相を調整する位相調整手段を備え、
前記反射部材は、前記アレイアンテナに所定の間隔で対向し該アレイアンテナの長手方向に沿って延在する主反射部と、前記アレイアンテナの長手方向及び前記フロントローブの方向それぞれに直交する側方から該アレイアンテナに対向する副反射部と、を有し、
前記副反射部における前記フロントローブ側の端縁の少なくとも一部は、前記フロントローブとは逆側のバックローブが前記フロントローブよりも大きいチルト角で前記仮想水平面から下方に傾くように、前記アレイアンテナの長手方向における下端側を基準にして前記フロントローブ側とは反対側に傾いていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1のアンテナ装置において、
前記副反射部の端縁の全体が、前記アレイアンテナの長手方向に沿った方向における下端側を基準にして前記フロントローブ側とは反対側に傾いていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2のアンテナ装置において、
前記副反射部を前記側方からみたときの形状は、台形又は三角形であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1又は3のアンテナ装置において、
前記副反射部の前記アレイアンテナの長手方向に沿った方向における長さLに対する前記側方からみたときの該アレイアンテナの長手方向と直交する方向における幅Wの比(W/L)は、1/30以上1/20以下であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのアンテナ装置において、
前記反射部材の主反射部及び副反射部はそれぞれ平板で形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5のアンテナ装置において、
前記副反射部の下端部は、前記アレイアンテナ側の内側に曲げられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかのアンテナ装置において、
前記反射部材の主反射部及び副反射部のうち少なくとも副反射部は、前記アレイアンテナを囲むように曲げられた曲板で形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に設置されるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセクタで構成されたセルであるサービスエリアの中心に基地局に設けられ、そのサービスエリア内に在圏する移動局と基地局との間で無線通信可能に構成されたセルラー方式の移動通信システムが知られている。このセルラー方式の移動通信システムで用いられる基地局では、隣接する基地局との間の干渉を抑圧するため、基地局のアンテナ装置の各セクタに対する指向性パターンにおけるフロントローブ(主ビーム)の方向を水平方向から下側に傾けるビームチルトによる電波の閉じ込め技術が利用されている。この技術は、ダイバーシチ技術などとともに、移動通信技術の根幹となる基礎技術であり、第1世代から現在の第4世代の移動通信システムにわたり適用されてきた。
【0003】
ビームチルトの方式としては、アンテナ装置を機械的に傾ける機械チルト方式(例えば特許文献1参照)と、アンテナ装置の鉛直方向に並んだ複数のアンテナ素子に供給される信号の位相を電気的に調整する電気チルト方式(例えば特許文献2参照)とが知られている。また、両方式を併用してより深いチルト角(水平方向からの下向きの傾き角度)を実現する加算型複合チルト方式もある(例えば特許文献3参照)。
【0004】
機械チルト方式では、アンテナ装置900を構成する複数のアンテナ素子がライン状に配列されたアレイアンテナの長手方向が鉛直方向Vに対して傾くように、アンテナ装置900を図11(a)に示すように所定の角度θmだけ機械的に傾けて設置する。このようにアンテナ装置自体を機械的に傾けることにより、所望セクタ側のフロントローブ901fの方向を水平面Hから所望セクタに向けて所定のチルト角θf(=θm)だけ下側に傾けるビームチルトを実現できる。一方、所望セクタ側のフロントローブ901の方向とは反対側の背面方向では、バックローブ901bの方向が水平面Hからチルト角θb(=θm)だけ上側に向いた逆方向のチルトとなるため、背面方向及び側面方向における電波の閉じ込め効果は期待できない。
【0005】
電気チルト方式では、アレイアンテナの長手方向が鉛直方向Vになるように、アンテナ装置900を図11(b)のように傾けずに設置し、アレイアンテナの各アンテナ素子に供給する信号の位相を調整することにより、所定のチルト角θeの各ビームチルトを実現する。この電気チルト方式は、機械チルト方式とは異なり、チルト角θeが方位角に依存しない特徴を有するため、所望セクタに対するフロントローブ901f、バックローブ901b及びサイドローブのいずれの方向においても同じチルト角θeのビームチルトとなる。
【0006】
加算型複合チルト方式は、図11(c)のように、機械チルト方式と電気チルト方式とを併用した複合チルト方式である。この加算型複合チルト方式では、フロントローブ901fの方向では機械的なビームチルト(チルト角:θm)と電気的なビームチルト(チルト角:θe)とが加算され、より深いチルト角θf(=θm+θe)のビームチルトを実現することができる。しかし、機械チルト方式と同様に、バックローブ901bの方向における下向きのチルト角θb(=θe−θm)及びサイドローブの方向における下向きのチルト角を深くすることが難しい。そのため、背面方向及び側面方向において所望の電波の閉じ込め効果は期待できない。
【0007】
以上示した特徴を有する複数のチルト方式のうち、電気チルト方式は、前述のようにビームチルト角θeの方位角依存性がないため、垂直面内の指向性と水平面内の指向性の掛け算により、所望の立体的な指向性を実現することができ、サービスエリアの設計が容易である。そのため、基地局のアンテナ装置としては、特殊な用途を除けば、電気チルト方式のアンテナ装置が多用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記基地局で通常用いられる電気チルト方式のアンテナ装置は、指向性パターンにおけるフロントバック比(以下「F/B」という。)が15〜20dB程度であり、所望セクタ外の方向である背面方向や側面方向において存在する無視できない干渉波の影響を受ける。この干渉波の影響を低減するためにアンテナ装置のF/Bをさらに改善することはセクタの設計上重要である。
一般に、基地局を介して送受信される信号のQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)などを用いた固定変調方式においては、一定の信号対雑音干渉電力比(以下「SINR」という。)が得られれば、それ以上にSINRを改善してもスループットのさらなる向上には寄与しない。しかしながら、近年適用されている16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64QAMなどの多値変調方式も利用する可変変調方式においては、SINRは高ければ高いほどさらなるスループット改善に貢献できる可能性がある。そのため、特に可変変調方式を用いた通信においてアンテナ装置のF/Bをさらに改善することはきわめて有効である。
【0009】
しかしながら、アンテナ装置の設定作業を容易にするとともに、限られた大きさの中でのアンテナ装置の物理設計において、上記15〜20dBのF/Bからの更なる改善は容易ではない。
【0010】
アンテナ装置の大型化を回避して上記F/Bを改善するために、所望セクタに対しては所定のチルト角を維持したまま所望セクタ外に対してはより深いチルト角とするように複合チルト方式を改良した方式(以下「相殺型複合チルト方式」という。)が考えられる。この相殺型複合チルト方式は、前述の加算型複合チルト方式と同様に、機械チルト方式と電気チルト方式とを併用する。前述の加算型複合チルト方式では、フロントローブ側で機械的なチルト角と電気的なチルト角とを互いに大きくして総合的なチルト角をより深く設定することができた。これに対し、相殺型複合チルト方式では、フロントローブ側で機械的なチルト角と電気的なチルト角を互いに相殺するように設定する。具体的には、機械的なチルト角θmは、図12(a)に示すように、水平面Hに対してフロントローブ901fが上向きのチルト角(マイナスのチルト角)になるように設定する。一方、電気的なチルト角θeは、図12(b)に示すように、水平面Hに対してフロントローブ901f及びバックローブ901bそれぞれが下向きの深いチルト角が大きくなるように設定する。これにより、図12(c)に示すように、所望セクタ側のフロントローブ901fで所定の総合チルト角θf(=θe−θm)を実現している。一方、所望セクタ外の側面方向のチルト角は、機械チルトが効かないため電気チルトの効果のみが現れ、電気的なチルト角θeと同じになる。さらに、所望セクタ外の背面方向では、機械的なチルト角θに電気的なチルト角θeが加算されるため、上記フロントローブ901fのチルト角θf(=θe−θm)より深いチルト角θb(=θm+θe>θf)が実現できる。このように、相殺型複合チルト方式では所望セクタ方向以外でより深いチルト角を実現することができる。そのため、島嶼や山頂など背面方向に不要電波を放射させたくない場所などの限られた条件において適用されている。
しかしながら、上記相殺型複合チルト方式では、前述の機械チルト方式や加算型複合チルト方式と同様に機械チルトを伴うため、アンテナ装置の設置時における角度設定の多様化により、設置作業が容易でない。
【0011】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、設置作業を容易にしつつ、小型化の構成で指向性パターンにおける所望方向におけるフロントローブのチルト角を所定の角度に維持するとともに所望方向とは逆側におけるバックローブのチルト角を深くすることができるアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るアンテナ装置は、複数のアンテナ素子が所定の間隔で配設されたアレイアンテナと、前記アレイアンテナに対向するように設けられた反射部材と、を備えたアンテナ装置であって、前記アレイアンテナの全体の指向性パターンにおけるフロントローブの方向が該アレイアンテナの長手方向に直交する仮想水平面から所定の角度だけ下方に傾くように前記複数のアンテナ素子間で位相を調整する位相調整手段を備え、前記反射部材は、前記アレイアンテナに所定の間隔で対向し該アレイアンテナの長手方向に沿って延在する主反射部と、前記アレイアンテナの長手方向及び前記フロントローブの方向それぞれに直交する側方から該アレイアンテナに対向する副反射部と、を有し、前記副反射部における前記フロントローブ側の端縁の少なくとも一部は、前記アレイアンテナの長手方向における下端側を基準にして前記フロントローブ側とは反対側に傾いている。
このアンテナ装置によれば、アレイアンテナの長手方向が鉛直方向になるように傾けずに設置したとき、アレイアンテナの複数のアンテナ素子間の位相を調整することにより、所望方向におけるフロントローブを所定のチルト角で下向きにチルトさせることができる。また、このアンテナ素子間の位相の調整により、所望方向とは逆方向におけるバックローブのチルト角についても、フロントローブと同様なチルト角にすることができる。また、アレイアンテナに対向するように設けられた反射部材の副反射部におけるフロントローブ側の端縁の少なくとも一部が、アレイアンテナの長手方向における下端側を基準にしてフロントローブ側とは反対側に傾いている。この副反射部の端縁の少なくとも一部の傾きにより、アレイアンテナの所望方向とは逆側における電波の回折方向を下向きにすることができ、バックローブのチルト角を深くすることができる。
しかも、バックローブのチルト角を深くするための構成が、副反射部の端縁の少なくとも一部を傾けるという簡易な構成であるため、アンテナ装置の大型化を回避することができる。
更に、アンテナ装置の全体は、アレイアンテナの長手方向が鉛直方向になるように傾けずに設置することができるため、アンテナ装置の設置作業が容易である。
【0013】
前記アンテナ装置において、前記副反射部の端縁の全体を、前記アレイアンテナの長手方向に沿った方向における下端側を基準にして前記フロントローブ側とは反対側に傾けてもよい。このアンテナ装置によれば、アレイアンテナの所望方向とは逆側における電波の回折方向を下向きにする効果が高まるため、バックローブのチルト角をより深くすることができる。
また、前記アンテナ装置において、前記副反射部を前記側方からみたときの形状は、台形又は三角形であってもよい。このアンテナ装置によれば、副反射部の加工が容易になる。
また、前記アンテナ装置において、前記副反射部の前記アレイアンテナの長手方向に沿った方向における長さLに対する前記側方からみたときの該アレイアンテナの長手方向と直交する方向における幅Wの比(W/L)は、1/30以上1/20以下であってもよい。このアンテナ装置によれば、前記比(W/L)が1/20以下であることにより前記副反射部の水平方向におけるサイズを抑制しつつ、前記比(W/L)が1/30以上であることによりバックローブのチルト角を確実に深くすることができる。
また、前記アンテナ装置において、前記反射部材の主反射部及び副反射部はそれぞれ平板で形成してもよい。このアンテナ装置によれば、反射部材の加工が容易になる。また、アレイアンテナ及び反射部材を円筒状の収容部材で囲む場合に、収容部材の内壁面と反射部材の外壁面との間に、位相調整手段やケーブルなどを設置するためのスペースを確保できる。
また、前記アンテナ装置において、前記副反射部の下端部は、前記アレイアンテナ側の内側に曲げられていてもよい。このアンテナ装置によれば、前記副反射部を側方からみたときのアレイアンテナの長手方向と直交する方向における副反射部の幅を狭くすることができるので、水平方向における反射部材のサイズを小さくすることができる。
また、前記アンテナ装置において、前記反射部材の主反射部及び副反射部のうち少なくとも副反射部は、前記アレイアンテナを囲むように曲げられた曲板で形成してもよい。このアンテナ装置によれば、アレイアンテナ及び反射部材を円筒状の収容部材で囲む場合に、その収容部材の直径を小さくすることができ、アンテナ装置の小型化を図ることができる。
【0014】
なお、本明細書において、「指向性パターン」とは、アンテナ装置を中心とした外向きの方向と電波の放射や受信感度の強さとの関係を2次元的又は3次元的に表したパターンである。その指向性パターンにおける最大の指向特性を示すビーム状の最大指向特性部を「フロントローブ」又は「主ビーム」という。また、その指向性パターンにおける極大の指向特性を示す複数の極大指向特性部のうちフロントローブ(主ビーム)とは反対側の背面側に位置する極大指向特性部を「バックローブ」という。また、前記複数の極大指向特性部のうち側面側に位置する極大指向特性部を「サイドローブ」という。また、フロントローブ、バックローブ及びサイドローブそれぞれの「チルト角」は、そのフロントローブなどの方向の水平面からの傾き角度であり、水平面から下向きの角度がプラス方向であり、水平面から下向きの角度がマイナスの角度である。また、このチルト角がマイナス方向に大きくなることを、「チルト角が深くなる」という。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設置作業が容易であり、大型化を回避しつつ指向性パターンにおける所望方向におけるフロントローブのチルト角を所定の角度に維持するとともに所望方向とは逆側におけるバックローブのチルト角を深くすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示す斜視図。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ本実施形態に係るアンテナ装置の反射部材を形成する副反射板の側面図及び上面図。
図3】本実施形態に係るアンテナ装置で送受信される電波の波面の様子を模式的に示す説明図。
図4】本実施形態に係るアンテナ装置におけるフロントローブ及びバックローブの様子を示す説明図。
図5】(a)は本実施形態に係るアンテナ装置のシミュレーションにおけるセル・セクタ構成の説明図。(b)はセル中央の基地局に設置したアンテナ装置の説明図。
図6】実施例及び比較例それぞれのアンテナ装置における垂直面内の指向性パターンのシミュレーション結果を示すグラフ。
図7】実施例及び比較例それぞれのアンテナ装置を7セル3セクタ構成に用いた場合の自セル周辺のSINR分布を濃淡で示した説明図。
図8】実施例及び比較例それぞれにおける自セルの所望セクタにおける通信容量の累積確率を示すグラフ。
図9】(a)及び(b)はそれぞれ変形例に係る副反射板の側面図及び上面図。
図10】(a)〜(d)はそれぞれ他の変形例に係る副反射板の側面図及び上面図。
図11】(a)は機械チルト方式の原理の説明図。(b)は電気チルト方式の原理の説明図。(c)は加算型複合チルト方式の原理の説明図。
図12】(a)〜(c)は相殺型複合チルト方式の原理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はそれぞれ本発明の一例を示したものであり、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示す斜視図である。なお、図1には、説明の便宜上、直交座標系の座標軸x,y,zと、アンテナ装置100の指向性パターンにおけるフロントローブの方向F及びバックローブの方向Bとを表示している。
【0019】
図1において、アンテナ装置100は、アレイアンテナ200と、アレイアンテナ200に対向するように設けられた反射部材300と、円筒状の収容部材としてのレドーム400とを備えている。アレイアンテナ200は、複数のアンテナ素子(例えばダイポール型のアンテナ素子)210が所定の間隔でライン状に配設されている。
【0020】
反射部材300は、金属などの導電性の平板で一体的に形成され、主反射部としての主反射板310と副反射部としての副反射板320、330とを有する。主反射板310は、長方形の導電性平板で形成され、アレイアンテナ200に所定の間隔で対向しアレイアンテナ200の長手方向に沿って延在している。主反射板310とアレイアンテナ200との距離はλ/4(λ:送受信信号の波長)程度に設定されている。
【0021】
副反射板320、330は、台形の導電性平板で形成され、アレイアンテナ200の長手方向及びフロントローブの方向それぞれに直交する側方からアレイアンテナ200に対向している。また、副反射板320、330におけるフロントローブ側(主反射板側とは逆側)の端縁321、331は、アレイアンテナ200の長手方向における下端側を基準にしてフロントローブ側とは反対側(主反射板側、バックローブ側)に傾いている。なお、図示の例では、副反射板320、330の端縁321、331の全体が傾いているが、その端縁321、331の一部を傾けるようにしてもよい。この副反射板320、330の端縁321、331の傾きについては後述する。
【0022】
また、アンテナ装置100は、位相調整手段としての可変分配移相器500を備えている。可変分配移相器500は、アレイアンテナ200の全体の指向性パターンにおけるフロントローブの方向がアレイアンテナ200の長手方向に直交する仮想水平面から所定の角度(フロントチルト角θf)だけ下方に傾くように複数のアンテナ素子間で位相を調整する。可変分配移相器500は、例えば、各アンテナ素子210から放射される電波の位相すなわち各アンテナ素子210に供給する送信信号の位相を、一番上のアンテナ素子に対して進み位相とし、下へ行くほど位相を順次遅らせるように、アンテナ素子210ごとに位相を変化させて調整する。また、可変分配移相器500は、各アンテナ素子210で受信された受信信号の位相を、一番上のアンテナ素子に対して進み位相とし、下へ行くほど位相を順次遅らせるように、アンテナ素子210ごとに位相を変化させて調整する。この調整により、アレイアンテナ200を中心とした全方位に対して、アレイアンテナ200の全体で送信される電波及び受信される電波に対する指向性パターンの垂直面におけるフロントローブが仮想水平面から所定のフロントチルト角θf(例えば7度)だけ下方に傾けることができる。なお、可変分配移相器500は、図1に示すようにレドーム400内の空きスペースに内蔵してもよいし、アンテナ装置100とは別体の外付け装置として備えてもよい。
【0023】
図2(a)及び(b)はそれぞれ本実施形態に係るアンテナ装置100の反射部材300を形成する副反射板320、330の側面図及び上面図である。副反射板320、330は側方からみたとき台形の形状を有し、そのフロントローブ側(図2(a)中の右側)の端縁321、331は、前述のとおり、アレイアンテナ200の長手方向における下端側を基準にしてフロントローブ側とは反対側(主反射板側、バックローブ側)に傾いている。
【0024】
ここで、副反射板320、330のアレイアンテナ200の長手方向に沿った方向(鉛直方向、図中のz軸方向)における長さLに対するアレイアンテナ200の長手方向と直交する方向(水平方向、図中のx軸方向)における幅Wの比(W/L)は、1/30以上1/20以下が好ましい。上記比(W/L)を1/20以下にすることにより、副反射板320、330の水平方向におけるサイズである幅を抑制しつつ、上記比(W/L)を1/30以上にすることにより、バックローブのチルト角を確実に深くすることができる。また、反射板320、330の端縁321、331の鉛直方向からの傾き角度θsは、1.8度以上3.0度以下が好ましい。なお、これらの比(W/L)及び傾き角度θsは、上記範囲に限定されるものではなく、アンテナ装置100が用いられる移動通信システムにおけるセル・セクタ構成やアンテナ装置100の設置位置の高さなどに基づいて設定してもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係るアンテナ装置100で送受信される電波の波面の様子を模式的に示す説明図である。また、図4は、本実施形態に係るアンテナ装置100におけるフロントローブ101f及びバックローブ101bの様子を示す説明図である。
【0026】
アンテナ装置100の前方F側では、アレイアンテナ200からの直接波と反射板310,320,330からの反射波が支配的であり、図3中の波面Wfに示すように水平面Hから所定のフロントチルト角θf(=電気的なチルト角θe)だけ下方にチルトしたフロントローブチルトが発生する。すなわち、図4に示すようにフロントローブ101fは、アレイアンテナ200や主反射板310からの電波が支配的であるため、予め設定した電気チルト角θeで電波が放射される。フロントローブ101fの方向は、図中のチルト角θfがθeであるフロントチルト方向Ftiltとなる。
【0027】
一方、アンテナ装置100の後方B側では、アレイアンテナ200からの直接波よりも、副反射板320、330の2次的な再放射原として機能する端縁321、331から放射される再放射波が支配的になる。本実施形態のアンテナ装置100では、副反射板320、330の端縁321、331が所定の傾き角度θsで傾斜しているため、前述の相殺型複合チルト方式の機械的なチルト(図12(a)参照)と等価になる。これにより、図3中の波面Wbに示すように水平面Hから所定のバックチルト角θb(=θe+θs)だけ下方にチルトした、深いバックローブチルトが発生する。すなわち、図4に示すようにバックローブ101bは前述の通り深いチルト角となり、サイドローブは両者の中間的なチルト角となる。バックローブ101bの方向は、図中のチルト角θbがθeとθsとが加算された角度であるバックチルト方向Btiltになる。
【0028】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置100におけるより具体的な実施例の効果を確認するために指向性、SINR及びスループットの評価を行ったコンピュータシミュレーションについて説明する。
【0029】
表1は、本シミュレーションの諸元の一覧表である。
【表1】
【0030】
本実施例のアンテナ装置100を構成する台形の副反射板320、330の端縁321、331の傾き角度θsは3度である。また、本実施例のアンテナ装置100が設置される基地局を中心としてセル及びセクタの構成は、図5(a)に示すように7セル(#0〜#6)及び3セクタ(#a〜#c)の構成とした。本実施形態のアンテナ装置100は、中央のセル#0の中央に位置する基地局に設置される3つのアンテナ装置100a〜100c(図5(b)参照)のうち、図5(a)中の上方に位置するセクタ#aを所望セクタとするアンテナ100aとした。セクタ#aにおける所望波に対する干渉波としては、自セルの他の2セクタ#b,#cにおける干渉波及び隣接セル(#1〜#6)の各セルの3セクタ(#a〜#c)における干渉波の合計20セクタ分の干渉波を考慮した。
なお、比較例として挙げたアンテナ装置の副反射板は長方形であり、その端縁の傾き角度は0度である。
【0031】
図6は、実施例(A)及び比較例(B)それぞれのアンテナ装置における垂直面内の指向性パターンのシミュレーション結果を示すグラフである。図6により、実施例及び比較例におけるフロント方向でのチルト角はいずれも7度で一致しており、指向性パターンの形状もほぼ一致している。一方、バック方向では、実施例(台形の副反射板)の場合のチルト角が10度となっており、長方形の副反射板を用いる比較例の場合のチルト角(7度)より深くなっていることが分かる。
【0032】
図7(a)及び(b)はそれぞれ実施例(A)及び比較例(B)それぞれのアンテナ装置を7セル3セクタ構成に用いた場合の自セル周辺のSINR分布を濃淡で示した説明図である。図中の破線は自セルのセクタの境界線である。図7により、長方形の副反射板を用いる比較例の場合に比して、実施例(台形の副反射板)の場合に自セクタ内において高いSINRが得られることが分かる。また、実施例(台形の副反射板)の場合では、特に隣接セクタでのSINR値が大幅に抑圧されていることが分かる。
【0033】
図8は、実施例(A)及び比較例(B)それぞれにおける自セル#0の所望セクタ#aにおける通信容量の累積確率を示すグラフである。図8により、長方形の副反射板を用いる比較例の場合に比して、実施例(台形の副反射板)の場合は高いスループットを得られることがわかる。
【0034】
図9(a)及び(b)はそれぞれ変形例に係る副反射板320、330の側面図及び上面図である。なお、前述の図2と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
前述の図2の構成例では副反射板320、330が側方からみたとき台形の形状を有しているが、図9(a)及び(b)に示すように側方からみたとき三角形の形状を有するように副反射板320、330を形成してもよい。
【0035】
図10(a)〜(d)はそれぞれ他の変形例に係る副反射板320、330の上面図である。なお、前述の図2と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
前述の図2の構成例では副反射板320、330がそれぞれ全体が平板状に形成されているが、図10(a)に示すように副反射板320、330の下端部をアレイアンテナ側の内側に屈曲させるように副反射板320、330を形成してもよい。この構成によれば、アレイアンテナ200及び反射部材300を囲む円筒状のレドーム400の直径を小さくすることができ、アンテナ装置100の小型化を図ることができる。
また、前述の図2の構成例では主反射板310と副反射板320、330とがなす角度が90度になるように反射部材300が形成されているが、図10(b)に示すように主反射板310と副反射板320、330とがなす角度φが90度よりも大きくなるように反射部材300を形成してもよい。上記角度φは、例えば90度よりも大きく且つ120度以下の範囲内に設定する。
また、前述の図2の構成例では副反射板320、330がそれぞれ全体が平板状に形成されているが、図10(c)に示すように、アレイアンテナを囲むように曲げられた曲板で副反射板320、330を形成してもよい。この構成によれば、アレイアンテナ200及び反射部材300を囲む円筒状のレドーム400の直径を小さくすることができ、アンテナ装置100の小型化を図ることができる。
また、図10(d)に示すように、鉛直方向に直交する断面の形状がL字形状に反射部材300を形成し、その屈曲部310’を主反射部としてもよい。
【0036】
以上、本実施形態によれば、副反射板320、330の端縁321、331の傾きにより、アレイアンテナ200の所望方向とは逆側(バックローブ側)における電波の回折方向を下向きにすることができ、バックローブ101bのチルト角θbを深くすることができる。しかも、バックローブ101bのチルト角θbを深くするための構成が、副反射部の端縁を傾けるという簡易な構成であるため、アンテナ装置100の大型化を回避することができる。更に、アンテナ装置100の全体は、アレイアンテナ200の長手方向が鉛直方向になるように傾けずに設置することができるため、アンテナ装置100の設置作業が容易である。
【0037】
なお、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0038】
100 アンテナ装置
101f フロントローブ
101b バックローブ
200 アレイアンテナ
210 アンテナ素子
300 反射部材
310 主反射板
320、330 副反射板
321、331 副反射板の端縁
400 レドーム
500 可変分配移相器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2005−051409号公報
【特許文献2】特開平02−174302号公報
【特許文献3】特開2008−011104号公報
図1
図2
図3
図4
図9
図10
図11
図12
図5
図6
図7
図8