特許第5787455号(P5787455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787455
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/10 20060101AFI20150910BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20150910BHJP
【FI】
   H04B7/10 A
   H04W16/14
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-551024(P2014-551024)
(86)(22)【出願日】2013年11月19日
(86)【国際出願番号】JP2013081107
(87)【国際公開番号】WO2014087835
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-266117(P2012-266117)
(32)【優先日】2012年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】トウキャートベン
(72)【発明者】
【氏名】竹川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 圭吾
【審査官】 石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−199804(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068765(WO,A1)
【文献】 特開2007−166488(JP,A)
【文献】 特開2005−269013(JP,A)
【文献】 特開2005−311740(JP,A)
【文献】 特開2009−278503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/10
H04W 16/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトスペースの周波数を用いて基地局と通信を行う無線通信端末において、
アレーアンテナと、
1次システムを検知する目的で設けられ前記基地局から事前に通知される静寂期間の情報を解釈し、静寂期間信号を生成するMAC処理部と、
前記アレーアンテナの各アンテナの受信信号を、重み係数により重み付き合成する合成部と、
前記静寂期間信号がある間、アレーアンテナで受信される干渉信号を抑圧するように重み係数を最適化するアレーアンテナ制御部と、を備える無線通信システム。
【請求項2】
前記アレーアンテナ制御部は、信号対干渉比を最大化するように前記最適化を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記アレーアンテナの各アンテナは、互いに動作周波数が異なり、送信周波数に最も対応する1つを送信に用い、
前記合成部で合成された信号を、1つのアンテナで受信された受信信号として扱うことを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトスペースを利用する無線通信システム及び無線通信装置に関し、特に、無線通信装置が利用する干渉抑圧技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の進展は実に目覚しく、多くの情報通信機器やサービスにおける通信方法として、有線通信のほかに、無線通信が利用されることも多くなっている。これに伴い、有限な資源である無線周波数の需要も増加の一途をたどっており、割当て可能な周波数の枯渇が世界各国で大きな問題となってきている。一般に、周波数は国がライセンス管理を行い、ライセンスを割当てられた者だけが、特定の場所および時間において、厳格な管理の下、その周波数を利用することができる。しかし、今後も増え続けるであろう周波数需要に対応するためには、これまでの利用方法にとらわれない、新しい周波数の利用方法が求められている。
【0003】
そこで近年、周波数の枯渇問題を解決するための新たな周波数の利用方法として、既に割当てられているにも関わらず、空間的、時間的に使用されない周波数帯(ホワイトスペース)を利用する方法が研究されている。例えば、ライセンスを受けている利用者(以下、「一次利用者」という)の既存システムの周波数使用への影響を十分回避しつつ、ライセンスを受けていない利用者(以下、「二次利用者」という)が柔軟にホワイトスペースを利用するコグニティブ無線通信システムなどの研究開発が行われている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.22で標準化が行われている、ホワイトスペースを利用する無線通信システム(WRAN:Wireless Regional Area Network)では、各無線局は、IPネットワーク上のデータベース(DB:Data Base)にアクセスすることで、自局の位置情報に基づく送信可能チャネルリスト(周波数リスト)と最大送信可能電力とを取得する。送信可能チャネルリストは、基地局(BS:Base Station)内のスペクトルマネージャ(SM:Spectrum Manager)によって、随時更新をしながら一括管理されている。そして、BSはこの送信可能チャネルリストに基づき通信に利用可能なチャネルを、運用チャネルとして決定し、BSのサービス範囲(セル)内の、戸別に設置される子局や携帯電話等の端末(CPE:Customer Premises Equipment)と通信を行う。
【0005】
SMはスペクトルセンシング情報の管理を行う。BSおよびCPE等の各無線局はスペクトルセンシング機能を具備していることもある。各無線局は、スペクトルセンシングによって、決定された運用チャネルが既存システム(一次利用者のシステム)によって使用されていることを検知すると、その情報をSMに通知する。すると、SMはDBに検知情報を通知した上で、送信可能チャネルリストからこのチャネルを除外する。ホワイトスペースを利用する無線通信システムは、このようにして時々刻々と更新される情報に基づきダイナミックなスペクトルアクセスを行うことで、一次利用者のチャネル使用への影響を回避すると同時に、二次利用者の通信も実現する。
【0006】
ところで、IEEE802.22では、ホワイトスペースを利用する無線通信システムは一次利用者のシステム(例えばデジタルテレビ(DTV:Digital TeleVision))と同じ周波数帯を使用している。また、ホワイトスペースを利用する無線通信システムは一次利用者のシステムへの影響を回避することが利用前提である。一次利用者のシステムへの影響を回避する方法としては例えば、IEEE802.22では、ホワイトスペースを利用する無線通信システムが固定無線局の場合、最大利用できる送信電力が4W、携帯無線局の場合、最大利用できる送信電力が100mWという送信電力制限がある。ホワイトスペース利用無線局は送信電力制限によって、相対的に強い干渉をDTVシステムから受けることが運用課題となっている。
【0007】
従来、複数の無線基地局間での通信で発生する干渉を容易に防止するため、互いに無線通信を行う無線基地局を複数有し、各無線基地局は複数のアンテナ素子で構成されるアダプティブアレイアンテナを備え、通信対象の無線基地局との通信の直線伝搬経路に特有のリンク識別用データと、通信対象の無線基地局との通信時に干渉源となる無線基地局とを関連付けて記憶し、通信対象の無線基地局からリンク識別用データを受信すると、当該リンク識別用データを受信した無線基地局は、リンク識別用データに基づいて、当該無線基地局との無線通信で干渉源となる無線基地局の方向にヌル点を向けるヌル制御を行う無線システムがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−147079号公報
【特許文献2】特開2008−306662号公報
【特許文献3】特許第4806660号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】藤井宏治、“コグニティブ無線:電波利用のムダなくす、ホワイトスペース活用のコア技術”、[online]、リックテレコム、[平成23年6月9日検索]、インターネット<URL:http://businessnetwork.jp/tabid/65/artid/110/page/1/Default.aspx>
【非特許文献2】菊間 信良、“アレーアンテナの基礎”、インターネット<URL:http://apmc-mwe.org/MicrowaveExhibition2010/program/tutorial2009/TL03-01.pdf>
【非特許文献3】米国電気電子学会(IEEE)ComputerSociety編、「IEEE Std 802.22-2011 Part 22: CognitiveWireless RAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer(PHY)Specifications: Policies and Procedures for Operation in the TV Bands」、(米国)、IEEE標準化協会、2011年7月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
無線通信システムにおいて、これまで一次利用者のシステムへの影響に関する議論と対策は多く行われてきたが、一次利用者のシステムへの影響を回避しても、一次利用者のシステムから影響を受ける可能性がある。一次利用者のシステムからの干渉によって、ホワイトスペースを利用する無線通信システムのサービスエリアが減少する。
本発明の目的は、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、一次利用者のシステムからの干渉を抑圧することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信システムは、基地局と無線通信端末とで通信を行う無線通信システムであって、無線通信端末はアレーアンテナと、干渉波信号検出手段と、干渉波到来方向推定手段を有し、干渉波信号検出手段は基地局との無通信状態時に干渉波を受信し、干渉波到来方向推定手段は干渉波信号検出手段で受信した干渉波信号からステアリングベクトルを検出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、無線通信端末は干渉波抑圧手段を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、干渉波抑圧手段はアレーアンテナにステアリングベクトルを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、二次利用者のシステム(例えばホワイトスペースを利用する無線通信システム)のサービスエリアが一次利用者のシステム(例えばDTV)から受ける干渉によって減少しても、本発明による一次利用者システムから受ける干渉を抑圧し、ホワイトスペースを利用する無線通信システムのサービスエリアの縮小を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成図。
図2】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける干渉波信号の抑圧を説明する波形図。
図3】本発明の実施例1に係る無線通信端末21の機能ブロック図。
図4】実施例1の無線通信端末21のアダプティブアレー受信部のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細について図を用いてに説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システム1は、ホワイトスペースを利用する無線通信システムである。
図1に示すように、無線通信システム1は、戸別に設置される無線通信端末であるCPE21およびCPE22と、これらの無線通信端末が接続する基地局であるBS10と、BS10のバックホール回線30と、ネットワーク40と、ホワイトスペースデータベース(以下、「データベース」という)50を含んで構成される。
BS10は、バックホール回線30を通してネットワーク40に接続され、ネットワーク上に存在するデータベース50へのアクセスを行う。
【0017】
また、国から周波数使用のライセンスを受けている一次利用者の通信システム(以下、「既存システム」という)2は、送信局70と受信局80とを含んで構成されており、既存システム2の一次利用者は、国から周波数f1のライセンスを受けているものとする。以下の説明においては、国から周波数f1の使用ライセンスを受けていない二次利用者が、周波数f1をホワイトスペースとして利用するものとする。
【0018】
ここで、図1に示されるように、既存システム2が周波数f1を使用して通信を行っている時でも、既存システム2のサービスエリアから十分な離隔距離3を取って無線通信システム1のサービスエリアを配置し、かつ無線通信システム1を構成する無線局の送信電力を十分小さくすれば、無線通信システム1が周波数f1を用いて送信を行っても、既存システム2に干渉を与えることなく通信を行うことが可能である。離隔距離3は無線通信システム1からの放射電波が既存システム2のサービスエリア内の受信電界強度に影響を与えないための保護基準とする。離隔距離3の保護基準については各規制機関によって規定されるものとする。このように、ホワイトスペース無線システムは、地理的に使用可能な周波数資源を有効利用できる。
【0019】
ところで、例えばIEEE802.22で想定される既存システム2としてDTV放送を考えた場合に、DTV放送では高次の変調方式を使用していることから所要電界強度が高くなっていることや、無線通信システム1のサービスエリア半径よりも既存システム2の放送エリアの半径が長いケースが多いことから、既存システム2の放送エリア外であっても、無線通信システム1の信号対干渉電力比(Signal to Interference power Ratio:SIR)を劣化させるに十分な強度のDTV放送信号が無線通信システム1のサービスエリア内に存在している可能性が高い。よって、無線通信システム1は十分な離隔距離3を取って既存システム2への影響を回避しても、既存システム2からの干渉を受けることによって、無線通信システム1のサービスエリアが減少する課題がある。従って、無線通信システム1の無線通信端末において、既存システム2から受ける干渉を抑圧する技術が必要となる。
【0020】
ここで、干渉抑圧技術の方式として、例えば、非特許文献2の最大SNR法(MSN)アレーアンテナを適用して、既存システム2から受ける干渉を抑圧することが可能となる。MSNアルゴリズムに基づいて、アダプティブアレーの最適ウェイトの導出は下記に示す。
【0021】
MSNアルゴリズムは、文字通り、出力SNRを最大にするように、重み係数を調整するアルゴリズムである。したがって、まずは評価関数である出力SNRを求める。
数式1の示すように、入力ベクトルx(t)は所望波成分s(t)、干渉波成分u(t)および雑音成分n(t)から構成されているとする。
【数1】
【0022】
このとき、アダプティブアレーの出力における所望波成分ys(t)、干渉波成分yu(t)および雑音成分yn(t)は、数式2、数式3、数式4となる。
【数2】
【数3】
【数4】
と表される。ここで、上添字H、T、*はそれぞれ共役転置、転置、複素共役を表す。
それぞれの出力電力は数式5、数式6、数式7となる。
【数5】
【数6】
【数7】
ただし、E[ ]は期待値であり、RssおよびRuuはそれぞれ所望波、干渉波の相関行列であり、Pnは素子あたりの雑音電力である。
【0023】
一方、所望波の帯域幅が十分狭いと仮定すると、所望波成分s(t)は次の数式8で表される。
【数8】
第二項のs(t)は位相基準点における所望波の複素振幅(ベクトルではない)、νsは所望波方向のアレー応答ベクトル、θsは所望波の到来角を表す。このとき、Rssは、数式9となる。
【数9】
ただし、Psは所望波の素子あたりの入力電力である。こうして出力SNRは数式10で表される。
【数10】
ここで、Rnnは不要波成分(干渉波および雑音)の相関行列であり、数式11で定義される。
【数11】
ただし、Iは単位行列である。
出力SNRを最大にするウェイトベクトルWの値(最適ウェイト)は数式10のウェイトベクトルに関する勾配を零とおくこと、すなわち、数式12によって求めることができる。
【数12】
最終的に数式9および数式13の関係を用いると、最適ウェイトWoptは、数式14から得られる。
【数13】
【数14】
数式14がMSNアダプティブアレーの最適ウェイトである。
【0024】
最適ウェイトWoptは、数式15のVs(MSNではステアリングベクトルと呼ばれる)を用いるため、所望波の到来方向情報を必要とする。無線通信システム1のCPEの所望波は基地局方向に対して0度方向から到来することが既知であるが、干渉波の到来方向を推定する必要がある。干渉波の推定方法については、既存システム2をセンシングするために設けた無通信区間である(QP:Quiet Period)QP期間中に干渉波成分を受信して解析することにより、干渉波のステアリングベクトルを検知することが可能となる。
【数15】
【0025】
図2は本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける干渉波信号の抑圧を説明するための波形図である。
図2に示すように、QP期間中において、無線通信システム1の基地局であるBS10、無線通信端末であるCPE21およびCPE22は無通信の状態である。このQP期間において、干渉波のみ受信することによって、干渉波のステアリングベクトルを検知することが可能となる。
【0026】
MSNアレーアンテナを適用することによってDTVから受ける干渉を抑圧し、ホワイトスペース無線通信システムのサービスエリアを改善することができ、システム全体のサービス効率向上を実現可能である。
【実施例1】
【0027】
本実施例1では、図1に示した無線通信端末(CPE21,22)の構成の一例を説明する。本例においても、CPE21等は、IEEE802.22に依拠しているものとする。
図3は、本実施例1のCPE21,22等の機能ブロック図である。CPE21は、アレーアンテナ101と、ベースバンド(BB)から無線周波数(RF)帯への周波数変換や無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や信号増幅などを行うRF部102と、誤り訂正符号化/復号処理や変復調処理を行う送受信信号処理部103と、使用するチャネルや送受信のタイミング制御やパケットに無線機を識別するためのIDの付加や送信元無線機の認識などを行うMAC(Medium Access Control;メディアアクセス制御)処理部104と、パソコンやWiFiルーターなどとのインターフェースとなるI/F部105と、チャネルを利用する無線システムが存在するかどうかを判断すべくスペクトラムセンシングの信号処理を行うセンシング部106と、ホワイトスペースとして利用可能なチャネルを記憶・管理する周波数管理部(SM)107と、無線機全体を管理制御する主制御部108と、を備えている。
【0028】
アレーアンテナ101と、別個に受信可能な複数のアンテナからなる。各アンテナは、組込み用の逆Fアンテナ、水平無指向のダイポールアンテナ、高利得の八木アンテナ等、各種のものが使用でき、それらは向きを手で変えられるようなものでもよい。なお、ホワイトスペースで電波を放射するアンテナの利得(指向性)は、十分な管理下にあるべきである。この要求を満たす簡単な方法は、送信には、複数のアンテナのうちの1つのみを使用して利得を固定することである。各アンテナの動作周波数(定在波比が所定値以下となる周波数)を、例えばUHF-Low,Mid,Highという風に互いに異ならせ、使用周波数に応じて最適な1つを選択するようにしてもよい。
【0029】
MAC処理部104は、BS11から送信されたMAC層の管理メッセージを解釈し、管理メッセージの内容を実行すべき各部にその信号を伝達する。管理メッセージでは、TDDタイミング(上りサブフレームの開始位置)、QP期間のスケジュール等がCPE21に通知される。なおIEEE802.22のようなTDDシステムでは、TDDタイミングはRF部102等の動作に必須である。MAC処理部104は、TDDタイミングの他、通知されたQP期間のスケジュールに基づいて生成したQP期間信号をRF部102や送受信信号処理部103に提供する。
【0030】
周波数管理部107は、基本的にはBS11から受信した管理メッセージにより、利用可能なチャネルを知る。周波数管理部107には、同じ無線方式の近隣セルから受信した共存ビーコン等に基づき、干渉のリスクを検知し、BSに通報する動作を行う自己共存機能の一部が含まれうる。
主制御部108は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することが可能であり、送受信信号処理部103、MAC処理部104、センシング部106、周波数管理部107は、主制御部108が実行するプログラムに置き換えることも可能である。
【0031】
図4は、本実施例1のCPE21のアダプティブアレー受信部300のブロック図である。図4に示すアダプティブアレー受信部300は、図3のRF部102や送受信信号処理部103の構成の一部が抜粋されたものである。
アレーアンテナ101の各アンテナ301−1〜301−3の給電線から、適宜TDDスイッチやサーキュレータ、デュプレクサ等を通じて取り出された受信信号が、重み付け部302−1〜302−3へそれぞれ導かれる。
重み付け部302−1〜302−3は、数式14で得られた最適ウェイトを、それぞれの受信信号に適用する。最適ウェイトは何らかの規則で正規化されており、例えば各最適ウェイトの絶対和(自乗和)は常に1である。
【0032】
加算部303は、重み付け部302−1〜302−3でそれぞれ重み付けされた受信信号を、1つの信号に加算的に合成して出力する。この合成受信信号は、送受信信号処理部103において1つのアンテナで受信した信号として、扱うことができる。なお、センシング部106に与えてもよいが、1次システムの検知が目的のときは、アレーアンテナ101が無指向性アンテナに見えるようなウェイトによる合成信号を与えたほうが安全である。
【0033】
制御部304は、入力されたQP期間信号(QP標識)がQP期間内であることを示す間、合成受信信号と現在の最適ウェイトに基づき、最適ウェイトを更新し、更新した最適ウェイトを重み付け部302に与える。期間外においては更新はせず、現在の最適ウェイトを与え続ける。相互相関行列を直接的に求める場合、加算部303で合成される前の個別の受信信号を入力するようにしてもよい。
【0034】
以上のとおり、本実施例によれば、自己のシステムによる送信も受信も行っていない静寂期間、つまり受信信号全てが干渉波のときに、MSNのアルゴリズムを動作させるので干渉波の知識がなくても(つまりブラインドで)最適ステアリングが達成でき、干渉源が複数あっても問題ない。なおQPは、基地局側において、隣接する基地局同士で同期させる制御を行っており、QP期間になると同種のシステムは一斉に送信をやめセンシングを行うことできるようになっている。
【0035】
本発明によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、二次利用者のシステム(例えばホワイトスペースを利用する無線通信システム)のサービスエリアが一次利用者のシステム(例えばDTV)から受ける干渉によって減少しても、本発明による一次利用者システムから受ける干渉を抑圧し、ホワイトスペースを利用する無線通信システムのサービスエリアの縮小を最小限に抑えることができる。
また、本実施形態に係る無線通信システムは、IEEE802.22で規定されている無線通信システムに対して特に好適であるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、他のシステムと共用の周波数帯から周波数を選んで使用する無線通信装置や方法に適用でき、IEEE802.22、IEEE802.11af、IEEE802.15.4m、IEEE1900.7(Dyspan)やECMA-392等のテレビホワイトスペースを用いる各種の無線アクセスシステムに好適である。
【符号の説明】
【0037】
1:無線通信システム、 10:BS、 21,22:CPE、 3:隔離距離、 70:送信局、2 :既存システム、 80:受信局、 30:バックホール回線、 40:ネットワーク、 50:DB、
101:アレーアンテナ101、 102:RF部、 103:送受信信号処理部、 104:MAC(Medium Access Control;メディアアクセス制御)処理部、 105:I/F部、 106:センシング部、 107:周波数管理部(SM)、 108:主制御部、
300:MSNアダプティブアレー、301−1〜301−N:アンテナ、302−1〜302−N:重み付け部、303:加算部、304:制御部。
図1
図2
図3
図4