(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787463
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートおよびハードディスクドライブ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/02 20060101AFI20150910BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20150910BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20150910BHJP
G11B 5/60 20060101ALI20150910BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
C09J7/02 Z
B32B27/00 M
C09J133/04
G11B5/60 P
G11B33/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2008-210638(P2008-210638)
(22)【出願日】2008年8月19日
(65)【公開番号】特開2009-74060(P2009-74060A)
(43)【公開日】2009年4月9日
【審査請求日】2010年11月22日
【審判番号】不服2014-9502(P2014-9502/J1)
【審判請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2007-218430(P2007-218430)
(32)【優先日】2007年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】大學 紀二
(72)【発明者】
【氏名】大浦 正裕
【合議体】
【審判長】
須藤 康洋
【審判官】
小野寺 務
【審判官】
大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−147301(JP,A)
【文献】
特開平7−202384(JP,A)
【文献】
特開2006−10931(JP,A)
【文献】
特開2006−13452(JP,A)
【文献】
特開2004−155853(JP,A)
【文献】
特開2005−154531(JP,A)
【文献】
特開2006−291027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
G11B 5/60
G11B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み20μm以下のプラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層が設けられた粘着体部分、及び、粘着体部分の両側の表面に設けられた非シリコーン系の剥離ライナーから構成された両面粘着シートであって、粘着体部分の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際のアウトガス量が0.2μg/cm2以下であるハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートであって、
粘着剤層が、アクリル系ポリマーと架橋剤から構成されたアクリル系粘着剤から形成され、
アクリル系粘着剤中に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を0.15〜1重量部含有するハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項2】
前記プラスチックフィルム基材の厚みが13μm以下である請求項1に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層のゲル分率が10〜60%である請求項1または2に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項4】
粘着剤層が、実質的に粘着付与樹脂を含まないアクリル系粘着剤から形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項5】
アクリル系粘着剤中に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、エポキシ系架橋剤を0〜0.05重量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項6】
非シリコーン系の剥離ライナーが、ポリオレフィン系剥離ライナーである請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項7】
ハードディスクドライブ部品がフレキシブル印刷回路基板である請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを用いて、部品が固定されていることを特徴とするハードディスクドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブの部品の固定用途に用いる両面粘着シートに関する。また、該両面粘着シートを用いたハードディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハードディスクドライブ(磁気記録装置:HDD)の製造工程において、フレキシブル印刷回路基板(「FPC」と称する場合がある)などの部品固定用に、両面粘着シート(両面感圧性接着シート)が一般的に用いられている。
【0003】
かかる両面粘着シートとしては、例えば、剥離ライナーの加工性、低汚染性の改良やアウトガス発生抑止を行ったもの(特許文献1参照)や、両面粘着シートの耐熱性、加工適性を改良したもの(特許文献2参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特許第3901490号明細書
【特許文献2】特開2006−89564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の両面粘着シートにおいても、例えば、支持体を用いない、いわゆる基材レスタイプの両面粘着シートの場合には加工性が低下する問題が生じることがわかった。また、加工性を改良するために、プラスチックフィルムの支持体に粘着剤層を設けた、基材つきの両面粘着シートの場合には、FPC固定後、封止工程などにおける熱により、配線の「段差」の部分などでFPCが基板から「浮き」を生じるなどの問題が生じる場合があることがわかった。さらに、微細なパターン(例えば、回路パターンなど)が施され、表面に微細な段差を有する被着体に対しては、特に両面粘着シートを貼付する際に押圧をかけにくい場合には、パターン間の狭い間隔に粘着剤層が十分に追従して入り込まず、被着体と粘着剤層間に隙間が生じる段差追従性不良の問題が生じる場合があることがわかった。即ち、加工性、低汚染性、低アウトガスの要求特性を満足する両面粘着シートは得られていないのが現状である。さらには、貼付時の段差追従性や貼付後の「浮き」の防止など要求特性をも満足する両面粘着シートは得られていないのが現状である。
【0006】
従って、本発明の目的は、シリコーンフリーであるため低汚染性、アウトガス抑止性に優れ、さらに加工性にも優れたハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供することにある。また、上記特性に加えて、貼付後の加工時に被着体からの「浮き」を生じない特性を有するハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供することにある。さらには、段差追従性にも優れたハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供することにある。また、該両面粘着シートを用いたハードディスクドライブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の剥離ライナーを用い、さらに用いるプラスチックフィルム基材の厚みを規定した、特定厚みの粘着シートとすることにより、加工性、低汚染性、低アウトガスなどの全ての観点で優れた両面粘着シートが得られることを見出した。また、プラスチックフィルム基材の厚みの範囲をさらに限定することにより、段差追従性にも優れた両面粘着シートが得られることを見出した。さらに、粘着剤層のゲル分率を特定の範囲とすることにより、貼付後の「浮き」の防止にも優れた両面粘着シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、厚み20μm以下のプラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層が設けられた粘着体部分、及び、粘着体部分の両側の表面に設けられた非シリコーン系の剥離ライナーから構成された両面粘着シートであって、粘着体部分の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際のアウトガス量が
0.2μg/cm2以下であ
るハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートであって、
粘着剤層が、アクリル系ポリマーと架橋剤から構成されたアクリル系粘着剤から形成され、
アクリル系粘着剤中に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を0.15〜1重量部含有するハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、前記プラスチックフィルム基材の厚みが13μm以下である前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記粘着剤層のゲル分率が10〜60%である前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、粘着剤層が
、実質的に粘着付与樹脂を含まないアクリル系粘着剤から形成される前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、アクリル系粘着剤中に、アクリル系ポリマー100重量部に対して
、エポキシ系架橋剤を0〜0.05重量部含有する前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、非シリコーン系の剥離ライナーが、ポリオレフィン系剥離ライナーである前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、ハードディスクドライブ部品がフレキシブル印刷回路基板である前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートを用いて、部品が固定されていることを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
なお、本明細書では、上記発明のほか、
厚み20μm以下のプラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層が設けられた粘着体部分、及び、粘着体部分の両側の表面に設けられた非シリコーン系の剥離ライナーから構成された両面粘着シートであって、粘着体部分の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際のアウトガス量が1μg/cm2以下であることを特徴とするハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートについても説明する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シートは、前記構成を有しているので、良好な加工性を有しており、しかも、低汚染性、アウトガス抑止性にも優れている。また、プラスチックフィルム基材の厚みをさらに限定することにより、段差追従性が向上する。さらに、粘着剤層のゲル分率を特定の範囲とすることにより、貼付後に加熱工程を経ても、被着体からの「浮き」が生じにくくなる。これらの効果により、ハードディスクドライブの生産性、品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のハードディスクドライブ部品固定用両面粘着シート(以下、単に「本発明の両面粘着シート」と称する場合がある)の一例を示す概略断面図である。本発明の両面粘着シート1は、プラスチックフィルム基材21の両面側に粘着剤層22を有する粘着体部分(剥離ライナー以外の部分)2、および、粘着体部分2の両面側の剥離ライナー3から構成される。なお、本発明の「両面粘着シート」は、テープ状のもの、即ち、「両面粘着テープ」も含むものとする。
【0019】
[粘着体部分]
本発明の両面粘着シートに用いられる粘着体部分は、前述のように、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層が設けられている。なお、本発明の粘着体部分は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。また、プラスチックフィルム基材と粘着剤層は、直接積層されていてもよいし、中間層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0020】
上記粘着体部分の厚さは、60μm以下であり、好ましくは10〜60μm、より好ましくは25〜60μmであり、さらに好ましくは40〜60μmである。粘着体部分の厚さが60μmを超えると、ハードディスクドライブの薄膜化、小型化に不利となり、また「浮き」が生じやすくなる。厚さが10μm未満で薄すぎる場合には、加工性や取り扱い性、接着性が低下する場合がある。なお、上記「粘着体部分の厚さ」とは、一方の粘着面(粘着剤層表面)から他方の粘着面までの厚さを意味する。
【0021】
(プラスチックフィルム基材)
本発明の両面粘着シートの粘着体部分に用いられるプラスチックフィルム基材は、粘着剤層の支持基材であり、両面粘着シートの加工性、取り扱い性(ハンドリング性)を向上させる役割を担う。プラスチックフィルムとしては、粘着シートの支持体として一般的に使用されるものを用いることが可能で、例えば、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなどからなる樹脂フィルムが挙げられる。中でも、価格、剛性の観点から、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが好ましく、さらに好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。なお、プラスチックフィルム基材は単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。
【0022】
また、プラスチックフィルム基材の表面には、必要に応じて、粘着剤層との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0023】
上記プラスチックフィルム基材の厚みは、20μm以下であり、好ましくは16μm以下(例えば、2〜16μm)、より好ましくは13μm以下(例えば、2〜13μm)、さらに好ましくは4〜12μmである。基材厚みが20μmを超えると、フィルムの剛性が高くなり、貼付後の「浮き」が生じやすくなったり、ハードディスクドライブの小型、薄膜化に不利となる。基材厚みが薄すぎる場合には、直写法による粘着剤層の塗工が困難となったり、両面粘着シートのハンドリング性が低下する場合がある。上記の中でも、プラスチックフィルム基材の厚みが13μm以下の場合には、「段差追従性」が向上するため好ましい。「段差追従性」(「段差吸収性」ともいう)とは、粘着シートを貼付する際に、被着体の有する段差形状に追従しやすい性質をいう。段差追従性が良好であると、例えば、微細なパターンが設けられた被着体に対して、両面粘着シートを貼付する際に、弱い押圧(押し圧)で貼り付けた場合でも、パターン間の狭い間隔にまで粘着剤層が追従して入り込みやすく、被着体との接着性が向上する。基材厚みが13μmを超えると、微細パターンを有する被着体に対して、弱い押圧で貼付すると、被着体と粘着剤層間に隙間が生じる場合がある。なお、上記効果は、プラスチックフィルム基材の厚みに対して粘着剤層厚みが相対的に厚くなることにより得られる。
【0024】
(粘着剤層)
本発明の両面粘着シートの粘着体部分に用いられる粘着剤層は、アクリル系ポリマー(アクリル系重合体)を主成分とするアクリル系粘着剤から形成される。このような粘着剤は、例えば、上記アクリル系ポリマー、架橋剤に、必要に応じて各種の添加剤を添加することにより作製できる。主成分であるアクリル系ポリマーの含有量は、粘着剤(固形分)の総重量に対して、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。
【0025】
上記アクリル系ポリマーは、粘着剤層のベースポリマーとして粘着性を発現する役割を担う。アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル)をモノマー主成分(主モノマー)とし、必要に応じて、他のエチレン性不飽和単量体を共重合成分(共重合性モノマー)とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いることができる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびエチレン性不飽和単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記アクリル系ポリマーのモノマー主成分として用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが例示される。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー主成分として用いられているので、モノマー成分全量に対して、50重量%以上(50〜100重量%)であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー成分全量に対する割合の上限としては、特に制限されないが、99重量%以下が好ましく、さらに好ましくは97重量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、モノマー成分全量に対して50重量%未満であると、アクリル系ポリマーとしての特性(粘着性など)が発現しにくくなる場合がある。
【0028】
アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対して共重合が可能なモノマー成分(共重合性モノマー)が用いられていてもよい。共重合性モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入させるためや、アクリル系ポリマーの凝集力をコントロールするために用いることができる。共重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸など);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの他、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどの窒素原子含有環を有するモノマーなどが挙げられる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマーの他、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマー等を用いることもできる。中でも、共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどを好適に用いることができる。
【0030】
上記共重合性モノマーの配合割合は、モノマー成分全量に対して50重量%未満の範囲で、モノマー成分の種類応じて適宜選択することができる。例えば、共重合性モノマーがカルボキシル基含有モノマー(特に、アクリル酸)である場合、カルボキシル基含有モノマー(特に、アクリル酸)の配合割合は、全モノマー成分100重量%に対して3〜10重量%(好ましくは5〜10重量%、さらに好ましくは7〜10重量%)であることが好適である。
【0031】
上記アクリル系ポリマーは、公知乃至慣用の重合方法により上記モノマー成分を重合させることによって調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法などが挙げられるが、中でも、コスト、量産性の観点から、溶液重合方法が好ましい。なお、アクリル系ポリマーの重合に際しては、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤や溶剤など、それぞれの重合方法に応じた適宜な成分を、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。
【0032】
アクリル系ポリマーを溶液重合により重合させる際に用いられる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。かかるアゾ系開始剤は開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる成分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくいため好ましい。上記アゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNという)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが例示される。上記アゾ系開始剤は、モノマー成分全量(100重量部)に対して、0.05〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部の割合で用いられる。
【0033】
アクリル系ポリマーを溶液重合により重合させる際に用いられる溶剤としては、公知慣用の有機溶剤などを用いることが可能であり、例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが使用できる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0034】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、30万〜200万が好ましく、より好ましくは60万〜150万、さらに好ましくは70万〜150万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が30万より小さいと、良好な粘着特性を発揮することができない場合があり、一方、200万より大きいと、塗工性に問題が生じる場合があり、いずれも好ましくない。上記重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0035】
上記アクリル系粘着剤に用いられる架橋剤は、粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)をコントロールするなどの役割を担う。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤を必須の架橋剤として用いることが好ましく、さらにエポキシ系架橋剤を併用することがより好ましい。これら架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−ト、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0037】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0038】
上記粘着剤中の架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.15〜1.05重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1.05重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。
【0039】
中でも、イソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.15〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。イソシアネート系架橋剤の含有量が0.15重量部未満の場合には、粘着剤層の被着体に対する投錨性が低下して「浮き」が生じる場合があり、1重量部を超えると粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、曲げに対する反発力が高くなり「浮き」が生じやすくなる場合がある。
【0040】
なお、上記イソシアネート系架橋剤は単独で架橋することが多いため、比較的低含有量に抑える場合には、ゲル分率を制御しにくくなる場合があり、その場合にはエポキシ系架橋剤を添加することが好ましい。エポキシ系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜0.05重量部が好ましく、より好ましくは0〜0.02重量部である。エポキシ系架橋剤の含有量が0.05重量部を超えると粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、曲げに対する反発力が高くなり「浮き」が生じやすくなる場合がある。
【0041】
上記アクリル系粘着剤には、前記成分の他、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0042】
上記アクリル系粘着剤は、粘着付与樹脂を実質的に含まないことが好ましい。なお、「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合は除いて能動的に配合はしないことをさし、具体的には、アクリル系粘着剤(固形分)の総重量に対して、粘着付与樹脂の含有量は1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.1重量%未満である。アクリル系粘着剤に粘着付与樹脂が含まれる場合には、粘着剤層が加熱された際に、アウトガスが発生する場合がある。上記粘着付与樹脂としては、具体的には、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などが例示される。
【0043】
本発明の両面粘着シートにおける粘着剤層の形成方法(粘着体部分の製造方法)は、特に制限されず、公知の粘着剤層の形成方法の中から適宜選択することができる。具体的には、例えば、上記粘着剤(又は粘着剤溶液)を、所定の面上(基材面上など)に、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し、必要に応じて乾燥乃至硬化させる方法(直写法)、適当な剥離ライナー上に粘着剤(又は粘着剤溶液)を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し、必要に応じて乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を所定の面上(基材面上など)に転写(移着)させる方法(転写法)などが挙げられる。なお、粘着剤(又は粘着剤溶液)の塗布に際しては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0044】
上記粘着剤層の厚さ(片面側)としては、特に制限されないが、4〜29μmが好ましく、より好ましくは10〜25μm、さらに好ましくは15〜20μmである。粘着剤層の厚さが4μm未満であると、良好な接着性が得られ難くなる傾向になり、一方、29μmを超えると、両面粘着シートの厚みが厚くなりハードディスクドライブの薄膜、小型化に不利となる場合がある。なお、粘着剤層は単層、複層の何れの形態を有していてもよい。
【0045】
上記粘着剤層は、ゲル分率が10〜60%(重量%)であることが好ましく、より好ましくは10〜50%、さらに好ましくは15〜50%である。粘着剤層を上記ゲル分率に制御することにより、両面粘着シートを被着体に貼付した後、加熱工程を経た場合であっても被着体からの「浮き」が生じにくくなる。ゲル分率が10%未満では粘着剤層の凝集力が低下して、粘着剤層が凝集破壊を起こしやすくなる場合があり、接着性、リワーク性(剥離時の糊残り抑止性など)が低下する場合があるため好ましくない。また、60%を超えると、粘着剤層の曲げに対する反発力が大きくなる場合があり、加熱工程を経た場合、段差部分などで「浮き」が生じやすくなる場合があるため好ましくない。上記ゲル分率は、アクリル系ポリマーのモノマー組成、架橋剤の種類や含有量などにより制御することができる。
【0046】
また、上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
粘着剤層から粘着剤:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(粘着剤)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤層(粘着剤)をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、室温にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100 (1)
(式(1)において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0047】
[剥離ライナー]
本発明の両面粘着シートでは、粘着体部分の両側の表面(粘着面)は、剥離ライナー(セパレータ)により保護されている。本発明の剥離ライナーは、シリコーン系剥離処理剤を用いない、非シリコーン系の剥離ライナーである。シリコーン系の剥離ライナーを用いる場合には、粘着面に付着したり粘着剤層に吸収されたシリコーン化合物がシロキサンガスの発生源や被着体の汚染原因となり、ハードディスクドライブに用いられている電子部品の腐食や接点不良などを引き起こす。本発明においては、非シリコーン系の剥離ライナーにより当該問題を生じないため好ましい。
【0048】
上記非シリコーン系の剥離ライナーとしては、シリコーン系剥離処理剤が用いられていなければ特に限定されず、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。中でも好ましくは、剥離処理面側のフィルム層がオレフィン系樹脂からなる剥離ライナー(ポリオレフィン系剥離ライナー)であり、特に剥離処理面側のフィルム層がポリエチレンからなる剥離ライナー(ポリエチレン系剥離ライナー)が好ましい。なお、上記ポリオレフィン系剥離ライナーは、粘着面と接する面側を形成する層がポリオレフィン系樹脂から構成されておればよく、例えば、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂の積層フィルムであってもよい。
【0049】
なお、本発明の両面粘着シートにおいては、一方の面に設けられている剥離ライナーと粘着体部分の剥離力と、もう一方の面に設けられている剥離ライナーと粘着体部分の剥離力は異なっていることが好ましい。これによって、作業性が向上するため好ましい。剥離力が小さい側(軽剥離側)の剥離ライナーと粘着体部分の剥離力(「軽剥離側の剥離力」という)は0.01〜0.3N/50mmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3N/50mm、さらに好ましくは0.1〜0.3N/50mmである。一方、剥離力が大きい側(重剥離側)の剥離ライナーと粘着体部分の剥離力(「重剥離側の剥離力」という)は0.1〜2N/50mmが好ましく、より好ましくは0.5〜1N/50mmである。軽剥離側の剥離力と重剥離側の剥離力の差(剥離力差)[(重剥離側の剥離力)−(軽剥離側の剥離力)]は、0.05N/50mm以上が好ましく、より好ましくは0.1〜1N/50mmである。
【0050】
上記剥離力を制御するための因子としては、表面粗さ、剥離処理剤の種類、加熱工程条件などが挙げられる。
【0051】
本発明の軽剥離側の剥離ライナーとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる凹凸形状の剥離層(剥離処理層)を有するポリオレフィン系剥離ライナーなどが好ましく、具体的には、特開2005−350650号公報に挙げられた剥離ライナーなどが好ましく例示される。
【0052】
一方、重剥離側の剥離ライナーとしては、上記凹凸形状を設けていない剥離層を有するポリオレフィン系剥離ライナーなどが好ましく、具体的には、特許第3901490号明細書に挙げられた剥離ライナーなどが好ましく例示される。
【0053】
[両面粘着シート、ハードディスクドライブ]
本発明の両面粘着シートは、上記粘着体部分の両面側(両粘着面上)に上記剥離ライナーが設けられてなる。
【0054】
本発明の両面粘着シートの後述した測定方法により測定される、120℃において、10分間加熱した際に発生するアウトガス量(トータルアウトガス量:アウトガスの全発生量)は、1μg/cm
2以下であり、好ましくは0.8μg/cm
2以下、より好ましくは0.4μg/cm
2以下である。上記両面粘着シートのアウトガス量は、両面粘着シートから両面側の剥離ライナーを剥離して、いずれか一方の粘着面に裏打ち材としてPETフィルムを貼付して、裏打ち材を設けていない粘着面側からのアウトガス量を測定する。上記アウトガス量が1μg/cm
2以下であると、ハードディスクドライブ用途に用いた場合でも、アウトガス成分に起因して腐食や誤作動を起こすおそれがなく、長期信頼性に優れる。一般的にこれらのアウトガスは、剥離ライナーのシリコーン系剥離処理剤や粘着剤中の未反応モノマー成分などに由来するため、本発明においては、非シリコーン系の剥離ライナーを用いることによりアウトガスを低減している。また、粘着剤に用いるアクリル系ポリマーの重合開始剤の種類、分子量等を上記好ましい範囲に制御することによっても低減させることができる。
【0055】
本発明の両面粘着シートは、ハードディスクドライブの製造の際に、部品を固定する用途(ハードディスクドライブ部品固定用)に用いられる。これらの部品としては、フレキシブル印刷回路基板、金属板、樹脂フィルム、金属箔、金属と樹脂フィルムとの積層フィルム、ラベル、モーターなどが挙げられる。中でも、樹脂硬化のためのベーキング(例えば、加熱温度90℃程度)などの工程を経た後でも導線部分の段差などによる「浮き」を抑制する効果の観点から、フレキシブル印刷回路基板固定用途に特に好ましく用いられる。
【0056】
上記フレキシブル回路基板は、特に限定されないが、電気絶縁体層(「ベース絶縁層」と称する場合がある)と、前記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成された導電体層(「導体層」と称する場合がある)、および、必要に応じて、前記導体層上に設けられた被覆用電気絶縁体層(「カバー絶縁層」と称する場合がある)から構成される。なお、複数の回路基板が積層された構造の多層構造を有していてもよい。
【0057】
上記ベース絶縁層は、電気絶縁材により形成された電気絶縁体層である。ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に制限されず、公知のフレキシブル回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、電気絶縁材としては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆる「アラミド樹脂」など)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等のプラスチック材などが好ましく挙げられる。なお、電気絶縁材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリイミド系樹脂が好適である。ベース絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。ベース絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。ベース絶縁層の厚みとしては、特に制限されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0058】
上記導体層は、導電材により形成された導電体層である。導体層は、前記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成されている。このような導体層を形成するための導電材としては、特に制限されず、公知のフレキシブル回路基板で用いられている導電材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、導電材としては、例えば、銅、ニッケル、金、クロムの他、各種の合金(例えば、はんだ)や、白金等の金属材や、導電性プラスチック材などが挙げられる。なお、導電材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、金属材(特に、銅)が好適である。導体層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。導体層の表面には、各種の表面処理が施されていてもよい。導体層の厚みとしては、特に制限されないが、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは3〜20μmである
【0059】
導体層の形成方法としては、特に制限されず、公知の形成方法(例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法などの公知のパターニング法)から適宜選択することができる。例えば、導体層がベース絶縁層の表面に直接的に形成されている場合、導体層は、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法などを利用して、所定の回路パターンとなるように、導電材をベース絶縁層上にメッキや蒸着等させることにより、形成することができる。
【0060】
上記カバー絶縁層は、電気絶縁材により形成され且つ導体層を被覆する被覆用電気絶縁体層(保護用電気絶縁体層)である。カバー絶縁層は、必要に応じて設けられており、必ずしも設けられている必要はない。カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に制限されず、ベース絶縁層の場合と同様に、公知のフレキシブル回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、例えば、前記ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材として例示の電気絶縁材などが挙げられ、ベース絶縁層の場合と同様に、プラスチック材(特に、ポリイミド系樹脂)が好適である。なお、カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カバー絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。カバー絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。カバー絶縁層の厚みとしては、特に制限されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0061】
カバー絶縁層の形成方法としては、特に制限されず、公知の形成方法(例えば、電気絶縁材を含む液状物又は溶融物を塗布し乾燥させる方法、導体層の形状に対応し且つ電気絶縁材により形成されたフィルム又はシートを積層させる方法など)から適宜選択することができる。
【0062】
本発明の両面粘着シートを用いて、上記フレキシブル回路基板などの部品を、モーター、ベース、基板、カバー等に貼付することにより、ハードディスクドライブを製造することができる。本発明の両面粘着シートを用いて部品を貼付し、ハードディスクドライブを製造することにより、粘着シート由来の汚染やフレキシブル印刷回路基板の浮きなどがないため、信頼性に優れた高品質のハードディスクドライブを得ることができる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例4
、5
、7及び8は参考例として記載するものである。
【0064】
実施例1
アクリル酸ブチル:93重量部、アクリル酸:7重量部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル0.05重量部を、酢酸エチルを溶媒として、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を開始剤として、常法により溶液重合させて、重量平均分子量が150万のアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマー1」と称する)の溶液(固形分濃度:25重量%)を得た。この溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネート L」;トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、固形分濃度75重量%)0.4重量部(固形分換算)を配合して、粘着剤溶液(アクリル系粘着剤溶液)を得た。
【0065】
上記で得られた粘着剤溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、「ルミラー S−10」、厚み:12μm)の両側の表面上に塗布し、120℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成し、一方の粘着剤層表面から他方の粘着剤層表面までの厚みが50μmの粘着体部分を得た。なお、両側の粘着剤層の厚みはともに19μmである。また、粘着剤層のゲル分率(両側の粘着剤層のゲル分率は等しい)は表1に示したとおりである。
【0066】
エステルウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、商品名「AD−527」)100重量部に、硬化促進剤(東洋モートン(株)製、商品名「CAT HY−91」)7重量部を配合し、その後、固形分濃度が5重量%となるように酢酸エチルを加えて、アンカーコート剤(下塗り剤)溶液を調製した。このアンカーコート剤溶液を、ロールコーターにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、「ルミラーS−105−50」、厚み50μm)上に、厚さが1μm程度で塗布し(乾燥後の塗布厚さは0.1μmとなる)、80℃で乾燥させた。このアンカーコート層上に、タンデム方式にて、低密度ポリエチレン(旭化成(株)製、商品名「L−1850A」)を、ダイ下温度:325℃にて、厚さが10μmとなるように、押出積層して、下引き層を形成した。続いて、この下引き層上に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする混合樹脂(出光石油化学(株)製、商品名「モアテック0628D」)100重量部に対して、エチレン−プロピレン共重合体(三井化学(株)製、商品名「タフマーP0180」)150重量部を混合した樹脂組成物(剥離層の構成成分)を、ダイ下温度:273℃にて、厚さが10μmとなるように、押出積層して、剥離層を形成し、さらに、冷却ロールとしてエンボス加工を施した冷却マットロールにより剥離層の表面に微細凹凸加工を施すことにより、表面が凹凸形状の剥離層(表面凹凸剥離層)を形成して、剥離ライナー(剥離ライナーa:総厚み約70μm)を作製した。なお、前記表面凹凸剥離層の凹凸形状は、不規則的に異なっている形状の各凹凸部が不規則的な位置関係で配置された形状となっている。この表面凹凸剥離層において、その表面の算術平均粗さ(Ra)は、1.5μmであり、また、最大粗さは4μmであった。
なお、「モアテック0628D」は、現在(株)プライムポリマーより商品名「モアテック0628D」として入手可能である。
【0067】
エステルウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、商品名「AD−527」)100重量部に、硬化促進剤(東洋モートン(株)製、商品名「CAT HY−91」)7重量部を配合し、その後、固形分濃度が5重量%となるように酢酸エチルを加えて、アンカーコート剤(下塗り剤)溶液を調製した。このアンカーコート剤溶液を、ロールコーターにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、「ルミラーS−105−50」、厚み50μm)上に、厚さが1μm程度で塗布し(乾燥後の塗布厚さは0.1μmとなる)、80℃で乾燥させた。このアンカーコート層上に、タンデム方式にて、低密度ポリエチレン(旭化成(株)製、商品名「L−1850A」)を、ダイ下温度:325℃にて、厚さが10μmとなるように、押出積層して、下引き層を形成した。続いて、この下引き層上に、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする混合樹脂(出光石油化学(株)製、商品名「モアテック0628D」)100重量部に対して、エチレン−プロピレン共重合体(三井化学(株)製、商品名「タフマーP0180」)10重量部を混合した樹脂組成物(剥離層の構成成分)を、ダイ下温度:273℃にて、厚さが10μmとなるように、押出積層して、剥離層を形成して、剥離ライナー(剥離ライナーb:総厚み約70μm)を作製した。
【0068】
さらに、粘着体部分の一方の粘着面側に上記剥離ライナーa(軽剥離側)を、もう一方の粘着面側に上記剥離ライナーb(重剥離側)を剥離処理層(剥離層)が接するように貼り合わせて、両面粘着シートを作製した。
【0069】
実施例2
表1に示すように、イソシアネート系架橋剤の配合量を変更し、架橋剤として、さらに多官能エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
なお、表1中のイソシアネート系架橋剤(コロネートL)の「配合量(重量部)」は、「アクリル系ポリマー100重量部に対するコロネートLの固形分換算の重量部」で表す。エポキシ系架橋剤(テトラッドC)の「配合量(重量部)」は、「アクリル系ポリマー100重量部に対するテトラッドCそのもの(商品自体)の配合量(重量部)」で表す。
【0070】
実施例3
表1に示すように、架橋剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0071】
実施例4
表1に示すように、架橋剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0072】
実施例5
表1に示すように、架橋剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0073】
実施例6〜8
表1に示すように、プラスチックフィルム基材として用いるポリエチレンテレフタレートフィルムの厚み、粘着剤層の厚みを変更した以外は、実施例2と全く同様にして、両面粘着シートを作製した。
【0074】
比較例1
アクリル酸2−エチルヘキシル:90重量部、アクリル酸:10重量部を、酢酸エチルを溶媒として、過酸化ベンゾイル0.5重量部を開始剤として、常法により溶液重合させて、重量平均分子量が100万のアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマー2」と称する)の溶液(固形分濃度:20重量%)を得た。
【0075】
表1に示すように、アクリル系ポリマーを上記アクリル系ポリマー2に変更し、架橋剤の配合量等を変更した以外は、実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0076】
比較例2
比較例1と同様にして、アクリル酸2−エチルヘキシル:90重量部、アクリル酸:10重量部を、酢酸エチルを溶媒として、過酸化ベンゾイル0.5重量部を開始剤として、常法により溶液重合させて、重量平均分子量が100万のアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマー2)の溶液(固形分濃度:20重量%)を得た。この溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネート L」)2重量部(固形分換算)を配合して、粘着剤溶液(アクリル系粘着剤溶液)を得た。
【0077】
剥離ライナーは、グラシン紙の表面にシリコーン系剥離処理剤からなる剥離処理層を設けた剥離ライナー(剥離ライナーc)を用いた。
【0078】
表1に示すように、プラスチックフィルム基材を用いずに、基材レスタイプの粘着シート(粘着剤層の両側に上記剥離ライナーcが設けられたもの)を作製した。上記で得られた粘着剤溶液を、上記剥離ライナーcの剥離処理面上に塗布し、120℃で3分間乾燥して、厚みが50μmの粘着剤層を形成した(なお、上記剥離ライナーが重剥離側である)。その後、上記剥離ライナーcと反対側の粘着面上にも別の剥離ライナーc(軽剥離側)を剥離処理層が接するように貼り合わせて、両面粘着シートを得た。
【0079】
(評価)
実施例および比較例により得られた両面粘着シートについて、下記の測定方法又は評価方法により測定又は評価した。測定又は評価結果は、表1に示した。
【0080】
(1)アウトガス量
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから軽剥離側の剥離ライナーを剥離して粘着面上にPETフィルムを貼付した。その後、上記片面にPETフィルムを貼付した両面粘着シートを、1cm×7cmのサイズに切断した後、重剥離側の剥離ライナーを剥離して、測定サンプルとした。
パージ&トラップヘッドスペースサンプラーにより、120℃で10分間加熱し、発生したガスをトラップし、このトラップされた成分について、ガスクロマトグラフ/質量分析計による測定を行った。発生ガス量はn−デカン標準により換算し、単位面積当たりの発生ガス量(単位:μg/cm
2)として算出した。
【0081】
(2)粘着力(180°ピール、対SUS304BA)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから、幅20mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを作製した。
引張試験機を用いて、JIS Z0237に準拠して180°剥離試験を行い、試験板(SUS304BA鋼板)に対する180°ピール引き剥がし強度(N/20mm)を測定し、「粘着力」とした。
試験板とサンプルの貼付は、得られた両面粘着シートから軽剥離側の剥離ライナーを剥離して厚さ25μmのPETフィルムを貼付(裏打ち)し、その後に重剥離側の剥離ライナーを剥離して試験板と重ね合わせ、2kgのゴムローラー(幅:約45mm)を1往復させることにより行った。
測定は、23℃、50%の雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行い、粘着力を算出した。試験回数は、各試料につき3回(平均値)とした。
【0082】
(3)剥離ライナーの剥離力
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから、幅50mm、長さ150mmの短冊状のシート片を切り出し、軽剥離側の剥離力測定用の測定サンプルとした。重剥離側の剥離力を測定する場合には、軽剥離側の剥離ライナーを剥離して厚さ25μmのPETフィルムを貼付(裏打ち)したものを測定サンプルとした。
引張試験機を用いて、JIS Z0237に準拠して180°剥離試験を行い、剥離ライナーの180°ピール引き剥がし強度(N/50mm)を測定し、「剥離ライナーの剥離力」とした。
測定は、23℃、50%の雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行い、剥離力を算出した。試験回数は、各試料につき3回(平均値)とした。
なお、重剥離側の剥離ライナーと軽剥離側の剥離ライナーの両方について試験を行った。重剥離側の剥離ライナーの剥離力を測定する場合には、上記の通り、軽剥離側の剥離ライナーの設けられた側の粘着面をPETフィルムで裏打ちした。
【0083】
(4)浮き量(70℃×2時間)
実施例および比較例で得られた両面粘着シート(サイズ:10mm×90mm)の片側(軽剥離側)の粘着面を、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせて試験片を作製した。その試験片の長手方向をφ50mmの丸棒に沿わせて、粘着シート側が外側となるように弧状に曲げた後、該試験片から重剥離側の剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、ラミネータを用いて、被着体(厚さ2mmのポリプロピレン(PP)板に粘着テープでポリイミドフィルム「カプトン 100H」を貼り合わせたシート)のポリイミド側に圧着した。これを23℃の環境下に24時間放置し、次いで70℃で2時間加温した後に被着体表面から浮き上がった試験片端部の高さ(mm)を測定し、浮き量(mm)とした。なお、該浮き量は試験片の両端部の浮き上がった高さの平均である。
なお、両面粘着シートが貼付後加熱されるような部品に用いられる場合には、上記浮き量は1.5mm未満が好ましい。
【0084】
(5)加工適性試験
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの剥離ライナーb側から、プレス機にてハーフカット(剥離ライナーbと粘着体部分にのみ切れ込みを入れる)して、加工性評価用サンプルを作製した。該加工性評価用サンプルを、温度:60℃、相対湿度:90%の雰囲気中に1週間放置した後、切断面の自着の有無を観察し、下記の評価基準により、加工性(加工適性)を評価した。
なお、比較例2においては、重剥離側の剥離ライナー側からハーフカットを行い同様に評価を行った。
加工適性の評価基準
○(良好):切断面に自着が見られなかった。
×(不良):切断面に自着が見られた。
【0085】
(6)段差追従性
下記FPCのベースフィルム層側の表面に、軽剥離側の剥離ライナーを剥離した両面粘着シート(実施例および比較例で得られたもの、サイズ:40mm×40mm)を圧着した(圧着条件:60℃、2MPa、10秒)。圧着後、両面粘着シート側から50倍マイクロスコープで観察した。段差部等に、両面粘着シートとベースフィルム層の「密着不良(浮き)」が少ない場合には段差追従性良好(○)、「密着不良」が多い場合には段差追従性不良(×)と判断した。
【0086】
[FPC(被着体)]
図2は上記で被着体として用いたFPCの積層構成を示す説明図(概略断面図)である。
図3は上記FPC及び両面粘着シート(評価サンプル)の貼り付け位置を示す説明図(ベースフィルム層側からみた平面図)である。
上記FPCは、ベース絶縁層(ポリイミドからなるベースフィルム層4とエポキシ系接着剤層5の積層構造)上に銅箔層(導体層)6が設けられ、さらにその上にカバー絶縁層(ポリイミドからなるカバーレイフィルム層8とエポキシ系接着剤層7の積層構造)が設けられた構造である。なお、ベースフィルム層4の厚みは0.025mm、接着剤層5の厚みは0.015mm、銅箔層6の厚みは0.035mm、カバーレイ接着剤層7の厚みは0.025mm、カバーレイフィルム層8の厚みは0.025mmである。
銅箔層は、直線状(4本)の回路パターン(銅箔部分の幅:800μm、銅箔−銅箔間の幅:400μm)となるように形成されている。上記銅箔層の銅箔部分と銅箔のない部分に起因して、FPCのベースフィルム層側の表面には段差が形成されている。
両面粘着シート(評価サンプル)10は、上記FPC(被着体)9のベースフィルム層側の表面に、
図3に示すように貼り付けられる。なお、
図3において、9aは銅箔が設けられている部分を表し、9bは銅箔が設けられていない部分を表す。
【0087】
【表1】
【0088】
評価結果(表1)より、本発明の両面粘着シート(実施例1〜8)は、アウトガスが少なく、加工適性も良好で、ハードディスクドライブ部品の固定に用いられる両面粘着シートとして好適に用いることができることが確認された。
また、粘着剤層のゲル分率が10〜60%の範囲にある両面粘着シート(実施例1〜3、6〜8)は、加温下で長時間保存した後も「浮き」が生じにくく、貼付後に加温、加熱工程を経る用途に対しても好適に用いられることがわかった。これに対して、ゲル分率が60%を超える場合(実施例4)には粘着シートの反発力が高くなり、反対にゲル分率が10%未満の場合(実施例5)には粘着剤層の凝集破壊が生じやすくなるため、加温下で長時間保存した場合には粘着シートの「浮き」が生じやすく、加温又は加熱工程を経る用途としての特性は劣ることがわかった。
さらに、プラスチックフィルム基材の厚みが13μm以下である両面粘着シート(実施例1〜5、7、8)は優れた段差追従性を示しており、微細なパターンの施された被着体に対して、低い押圧で貼付する際にも好適に用いられることがわかった。これに対して、プラスチックフィルム基材の厚みが13μmを超える両面粘着シート(実施例6)は段差追従性に劣り、微細なパターンの被着体に対して低い押圧で貼付する用途に対する特性としては劣ることがわかった。
一方、プラスチックフィルム基材を用いない、基材レスの粘着シートの場合(比較例2)には、加工適性を満足できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1は、本発明の両面粘着シートを表す概略断面図である。
【
図2】
図2は、段差追従性評価に用いたFPCの積層構成を表す説明図(概略断面図)である。
【
図3】
図3は、段差追従性評価に用いたFPC及び両面粘着シート(評価サンプル)の貼り付け位置を表す説明図(ベースフィルム層側からみた平面図)である。
【0090】
1 ハードディスク部品固定用両面粘着シート
2 粘着体部分
21 プラスチックフィルム基材
22 粘着剤層
3 剥離ライナー
4 ベースフィルム層(ポリイミドフィルム)
5 接着剤層(エポキシ系接着剤)
6 銅箔層
7 カバーレイ接着剤層(エポキシ系接着剤)
8 カバーレイフィルム層(ポリイミドフィルム)
9 FPC(被着体)
9a 銅箔が設けられている部分
9b 銅箔が設けられていない部分
10 両面粘着シート(評価サンプル)