特許第5787467号(P5787467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787467新規なビスフェナントロリン誘導体、それよりなる電子輸送材料およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787467
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】新規なビスフェナントロリン誘導体、それよりなる電子輸送材料およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20150910BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150910BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C07D471/04 112T
   C07D471/04CSP
   C09K11/06 650
   C09K11/06 690
   H05B33/14 A
   H05B33/22 B
【請求項の数】4
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2009-34648(P2009-34648)
(22)【出願日】2009年2月17日
(65)【公開番号】特開2010-189305(P2010-189305A)
(43)【公開日】2010年9月2日
【審査請求日】2012年1月12日
【審判番号】不服2014-2182(P2014-2182/J1)
【審判請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】394013644
【氏名又は名称】ケミプロ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116481
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 利郎
(72)【発明者】
【氏名】城戸 淳二
(72)【発明者】
【氏名】夫 勇進
(72)【発明者】
【氏名】大前 吉則
【合議体】
【審判長】 井上 雅博
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−222624(JP,A)
【文献】 特開2008−120688(JP,A)
【文献】 特開2003−338377(JP,A)
【文献】 特開2008−243932(JP,A)
【文献】 特開2004−281390(JP,A)
【文献】 特開2003−123983(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D471/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化28】
(式中、R〜Rは水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。またQは下記式
【化29】
で示されたターフェニレン基であり、R20〜R31は水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示されることを特徴とするビスフェナントロリン誘導体。
【請求項2】
請求項1のビスフェナントロリン誘導体よりなる電子輸送材料。
【請求項3】
請求項1のビスフェナントロリン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1のビスフェナントロリン誘導体を電子輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子を高効率化かつ安定的な素子作成に必要な新規なビスフェナントロリン誘導体、それよりなる電子輸送材料およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な有機化合物が、種々の機能を有することが見いだされ、これを表示素子材料、記憶材料等に利用する研究が盛んに行われている。中でも、有機電界発光素子(有機EL素子;有機エレクトロルミネッセンス素子)は比較的低電圧で高輝度の発光が可能であることから特に注目を集めている。代表的な例として、有機化合物の蒸着で形成した有機薄膜からなる発光素子が良く知られている(非特許文献1)。この発光素子は、電子輸送兼発光材料であるトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)と正孔輸送材料である(トリアリールアミン化合物)を積層した構造からなり、これまでの単層型素子に比較して発光特性が大幅に向上している。
【0003】
しかしながら、有機電界発光素子を実用化する上で、素子の安定性、耐久性、発光輝度、発光効率、低電圧化等の解決すべき問題が数多く残されている。発光輝度、発光効率を向上させる手法として、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)層にクマリン誘導体等の蛍光性色素をドープする方法が知られている。この方法によって、ドープする色素を選択することにより所望の色の光を出すことができる。しかし、高輝度を得るために駆動電圧を高くしてしまうとAlqからの発光が混入してしまい色純度が低下する問題が出てきてしまう。また、1,10−フェナントロリン誘導体の一種であるバソフェナントロリン、バソクプロイン(BCP)等のホールブロック性を有する電子輸送材料を使用することにより発光効率を高める手法が知られているが、この種の材料を用いた発光素子は、高温保存時および連続発光時に素子の劣化が著しいことが問題となっている。この劣化原因は、おそらく材料の結晶性が非常に良く、ガラス転移点(Tg)が低いためであると推定される。
【0004】
一方、有機電界発光素子の駆動電圧の低電圧化については、陰極と電子輸送層の間にフッ化リチウムなどの陰極界面層を設けることによって、電子注入を容易にして低電圧化を図る方法が知られている。また、1,10−フェナントロリン誘導体の一つであるバソフェナントロリンからなる電子輸送層にナトリウムをドープすることによって低電圧化する方法が、最近、報告されている(非特許文献2)。しかし、有機電界発光素子の実用化の観点からすると、さらに駆動電圧を低電圧化する必要がある。
【0005】
1,10−フェナントロリン誘導体については、下記のようないろいろの合成法が、既に報告されている。
【化1】
また、1,10−フェナントロリン誘導体を発光素子等に使用した例としては、1,10−フェナントロリン骨格の特定の位置に置換基を有する化合物を電子輸送層に用いた有機電界発光素子(特許文献1〜8)および1,10−フェナントロリン骨格を2〜3有する化合物を電子輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(特許文献9)が開示されているが、その電子輸送性能は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−331459号公報
【特許文献2】特開平7−82551号公報
【特許文献3】特開平10−79297号公報
【特許文献4】特開2001−267080号公報
【特許文献5】特開2001−131174号公報
【特許文献6】特開2004−107263号公報
【特許文献7】特開2004−175691号公報
【特許文献8】特開2004−311184号公報
【特許文献9】特開2003−115387号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,73,2866(1998)
【非特許文献3】J.Org.Chem.,61,3017(1996)
【非特許文献4】Tetrahedron,36,10685(1994)
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.,68,1320(1946)
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.,66,396(1944)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高効率化かつ安定的な素子作成に必要な新規なビスフェナントロリン誘導体、それよりなる電子輸送材料およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、下記一般式(1)
【化2】
(式中、R〜Rは水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。またQは下記式
【化3】
で示されたターフェニレン基であり、R20〜R31は水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示されることを特徴とするビスフェナントロリン誘導体に関する。
本発明の第2は、請求項1のビスフェナントロリン誘導体よりなる電子輸送材料に関する。
本発明の第3は、請求項1のビスフェナントロリン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
本発明の第4は、請求項1のビスフェナントロリン誘導体を電子輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0010】
本発明におけるR20〜R31で示す炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチルなどが挙げられる。
また20〜R31で示す置換アルコキシ基のアルキル基についても、上記の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基が例示される。更に、これらの基が置換されたアリール基も含まれる。
【0011】
本発明の化合物は、下記の反応により製造することができる。
【化4】
なお前記式中、Qは、下記式
【化5】
で示されたターフェニレン基であり、R20〜R31は水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアリール基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。Xは、ハロゲン原子を表す。
【0012】
第1反応は、ハロゲン化物をピナコラートジボランを用いホウ酸化合物に変換する反応である。ここで用いる溶媒は、ピナコラートジボランを溶かすことのできる溶媒を選択することで、例示としてはテトラヒドロフランや1,4−ジオキサンのような環状エーテル、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドのような高極性溶媒が挙げられる。好ましくは環状エーテルであり、より好ましくは1,4−ジオキサンである。
反応で使用する塩基については、アルカリあるいはアルカリ土類金属を含有するものであれば、特に限定されるものではない。例示すれば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのような水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムのような炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素ベリリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムのような重炭酸塩、あるいはこれらの金属を含むアルコラートや酢酸塩等の有機塩基である。ここで好ましいものとしては、酢酸塩でありより好ましくは反応時間の関係より酢酸カリウムである。
この反応で使用するパラジウム触媒としては、Pd(0)をしめすものが使用できる。具体的には、有機配位子とパラジウムとの錯体が例示できる。好ましくはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム〔Pd(PPh〕やトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕であり、より好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムである。
またパラジウムを活性化するために添加するリン触媒としては、第3アルキルホスフィンを使用することができる。例示できるものとして、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ〔n−(iso−)プロピル〕ホスフィン、トリ〔n−(iso−,tert−)ブチル〕ホスフィンのような脂肪族のものやトリシクロヘキシルホスフィン(PCy)のような脂環式のものである。用いるパラジウム化合物との相性から、ここでは脂環式のトリシクロヘキシルホスフィン(PCy)が好ましい。
【0013】
第1反応で使用するハロゲン化物については、クロロ体、ブロモ体、ヨード体のいずれのものでも使用することができる。
ハロゲン化物と反応するホウ酸化合物については、2,2′−ビス〔4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン〕、ピナコラートジボランを使用するのが好ましい。
【0014】
第二反応は、通常鈴木カップリング反応と称される反応を利用したものであり詳細は、Miyaura,N.;Suzuki,A.Chem.Rev.1995,95,2457などに記述されている。
用いる有機溶媒としては、反応基質のハロゲン化物とホウ酸化合物を溶かす溶媒なら特に問題ないが、例示すれば芳香族炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒もしくはエーテル系溶媒が使用できる。混合溶媒は任意の混合比で使用することができるが、一般には芳香族炭化水素系溶媒3部に対してアルコール系溶媒1部を混ぜたものを使用する。芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどが例示できる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを例示することができる。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどの脂肪族エーテルなどが例示できる。本反応では、エーテル系溶媒が好ましく、特に好ましい溶媒は1,4−ジオキサンである。
2Mの塩基性溶液で使用できる塩基としては第一反応で使用するアルカリあるいはアルカリ土類金属を含有するものであれば、特に限定されるものではない。ここで好ましいものとしては酢酸塩であり、より好ましくは反応時間の関係より酢酸カリウムである。パラジウム触媒は、ハロゲン化合物とホウ酸化合物とのカップリング反応であるためPd(0)のものが使用できる。例示化合物としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムやトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムやパラジウムジベンジリデンアセトンなどが挙げられる。好ましくは、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムである。
またパラジウムを活性化するために添加するリン触媒も第一反応と同様、脂環式のトリシクロヘキシルホスフィンが好ましい。
【0015】
本発明の化合物の具体例を例示する。なお、例示化合物においてメチル基は他のアルキル基例えばエチル基やプロピル基などと置き換えることができる。また、炭素数3以上のアルキル基には直鎖および分岐のものも含まれる。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
【化9】
【0020】
【化10】
【0021】
【化11】
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
【化14】
【0025】
【化15】
【0026】
【化16】
【0027】
【化17】
【0028】
本発明の新規なビスフェナントロリン誘導体は高い電子輸送能を有する。従って電子輸送材料として使用することができる。
【0029】
本発明の新規なビスフェナントロリン誘導体を電子輸送層に用いる場合、本発明の化合物は電子輸送材料として使用できる。また他の電子輸送材料と組み合わせて使用することもできる。
【0030】
次に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極間に複数層の有機化合物を積層した素子であり、電子輸送材料として本発明の新規なビスフェナントロリン誘導体を含有する。発光層は、発光材料とホスト材料から構成される。多層型の有機EL素子の構成例としては、例えば陽極(例えばITO:インジウム−スズオキサイド)/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール注入層(正孔注入層)/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層したものが挙げられる。また、必要に応じて陰極上に封止層を有していても良い。
【0031】
ホール輸送層、電子輸送層、および発光層のそれぞれの層は、各機能を分離した多層構造であることが望ましい。またホール輸送層、電子輸送層はそれぞれの層で注入機能を受け持つ層(ホール注入層および電子注入層)と輸送機能を受け持つ層(ホール輸送層および電子輸送層)を別々に設けることもできる。
【0032】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記構成に限らず、種々の構成とすることができる。必要に応じて、正孔輸送層成分と発光層成分、あるいは電子輸送層成分と発光層成分を混合した層を設けても良い。
【0033】
以下本発明の有機EL素子の構成要素に関して、陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる素子構成を例として取り上げて説明する。本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。
【0034】
基板の素材については特に制限はなく、例えば、従来の有機EL素子に慣用されているものが使用でき、例えば、ガラス、石英ガラス、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。
【0035】
本発明の有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きな金属単体(4eV以上)、仕事関数の大きな金属同士の合金(4eV以上)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。なお、仕事関数は、物質表面において表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことを言う。このような電極材料の具体例としては、金、銀、銅等の金属、ITO(インジウム−スズオキサイド)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性透明材料、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料が挙げられる。陽極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリング、塗布などの方法により形成することができる。陽極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。
【0036】
陰極としては、仕事関数の小さな金属単体(4eV以下)、仕事関数の小さい金属同士の合金(4eV以下)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金などが挙げられる。陰極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより作成することができる。陰極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陰極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。本発明の有機EL素子の発光を効率よく取り出すために、陽極または陰極の少なくとも一方の電極は透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0037】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のホール輸送層は、ホール伝達化合物からなるもので、陽極より注入されたホールを発光層に伝達する機能を有している。電界が与えた2つの電極の間に正孔伝達化合物が配置されて陽極からホールが注入された場合、少なくとも10−6cm/V・秒以上のホール移動度を有するホール伝達物質が好ましい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のホール輸送層に使用するホール伝達物質は、前記の好ましい性能を有するものであれば特に制限はない。従来から光導電材料においてホールの電荷注入材料として慣用されているものや有機エレクトロルミネッセンス素子のホール輸送層に使用されている公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0038】
前記のホール伝達物質としては、たとえば銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジ(m−トリル)−N,N′−ジフェニル−4,4−ジアミノフェニル(TPD)、N,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−4,4−ジアミノフェニル(α−NPD)等のトリアリールアミン誘導体、ポリフェニレンジアミン誘導体、ポリチオフェン誘導体、および水溶性のPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキサチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)などが挙げられる。ホール輸送層は、これらの他のホール伝達化合物一種または二種以上からなる一層で構成されたものでよく、前記のホール伝達物質とは別の化合物からなるホール輸送層を積層したものでも良い。
ホール注入材料としては、下記化学式に示されるPEDOT−PSS(ポリマー混合物)やDNTPDを挙げることができる。
【化18】
ホール輸送材料としては、下記化学式に示すTPD、DTASi、α−NPDなどを挙げることができる。
【化19】
【0039】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いられる発光材料については、特に制限はなく、任意のものを選択して用いることができる。
【0040】
発光材料としては、ペリレン誘導体、ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体(例えばクマリン1、クマリン540、クマリン545など)、ピラン誘導体(例えばDCM−1、DCM−2、DCJTBなど)、有機金属錯体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Almq)等の蛍光材料や〔2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′〕イリジウム(III)ピコリレート(FIrpic)、トリス{1−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−1H−ピラゾラート−N,C2′}イリジウム(III)(Irtfmppz)、ビス〔2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2′〕イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(FIr6)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)〔Ir(ppy)〕などのリン光材料などを挙げることができる。
【0041】
発光層は、ホスト材料と発光材料(ドーパント)から形成される〔Appl.Phys.Lett.,65 3610(1989)〕。特にリン光材料を発光層に使用する場合、ホスト材料の使用が必要であり、この時使用されるホスト材料としては、4,4′−ジ(N−カルバゾリル)−1,1′−ビフェニル(CBP)、1,4−ジ(N−カルバゾリル)ベンゼン−2,2′−ジ〔4″−(N−カルバゾリル)フェニル〕−1,1′−ビフェニル(4CzPBP)、2−メチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)等が挙げられる。
【化20】
【0042】
発光材料は、ホスト材料に対して好ましくは0.01〜40重量%であり、より好ましくは0.1〜20重量%である。発光材料としては、下記に示す従来公知のFIrpic、Ir(ppy)、Fir6等を挙げることができる。
【化21】
【0043】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送層の材料としては、本発明の新規なビスフェナントロリン誘導体が好ましい。このものは単独で使用できるが、例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリノラト)(4−フェニルフェノキシ)アルミニウム錯体(BAlq)等の他の電子輸送材料と併用しても構わない。
【0044】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、電子注入性をさらに向上させる目的で陰極と有機層(電子輸送層)の間に導電体から構成される電子注入層を設けても良い。ここで使用される導電体としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属有機錯体から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用することが好ましい。アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウムなどが挙げられる。アルカリ金属有機錯体としては、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム、8−ヒドロキシキノリノラトセシウムなどが挙げられる。また本出願人の特開2008−106015号公報にかかげるフェナントロリン誘導体のリチウム錯体(LiPB)や特開2008−195623号公報に掲げるフェノキシピリジンのリチウム錯体(LiPP)を用いることもできる。
【化22】
【0045】
本発明の新規なビスフェナントロリン誘導体を含む素子のホール注入層、ホール輸送層および発光層の形成方法については特に限定されるものではない。例えば乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)、湿式製膜法〔溶媒塗布法(例えばスピンコート法、キャスト法、インクジェット法など)〕を使用することができる。電子輸送層の製膜については、湿式製膜法で行うと下層が溶出する恐れがあるため乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)に限定される。素子の作成については上記の製膜法を併用しても構わない。
【0046】
真空蒸着法により正孔輸送層、発光層、電子輸送層などの各層を形成する場合、真空蒸着条件は特に限定されるものではない。通常10−5Torr程度以下の真空下で50〜500℃程度のボート温度(蒸着原温度)、−50〜300℃程度の基板温度で、0.01〜50nm/sec.程度蒸着することが好ましい。正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各層を複数の化合物を使用して形成する場合、化合物を入れたボートをそれぞれ温度制御しながら共蒸着することが好ましい。
【0047】
ホール注入層、ホール輸送層および発光層を溶媒塗布法で形成する場合、各層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて塗布液とする。溶媒としては、炭化水素系溶媒(例えばヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エーテル系溶媒(例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、非プロトン性溶媒(例えばN,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)、水等が挙げられる。溶媒は単独で使用しても良く、複数の溶媒を併用しても良い。
【0048】
ホール輸送層、発光層、電子輸送層等の各層の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常5〜5,000nmになるようにする。
【0049】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、酸素や水分等の接触を遮断する目的で保護層(封止層)を設けること、不活性物質中に素子を封入して保護することができる。不活性物質としては、パラフィン、シリコンオイル、フルオロカーボン等が挙げられる。保護層に使用する材料としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、光硬化性樹脂等がある。
【0050】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常直流駆動の素子として使用できる。直流電圧を印加する場合、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として通常1.5〜20V程度印加すると発光が観察される。また本発明の有機EL素子は交流駆動の素子としても使用できる。交流電圧を印加する場合には、陽極がプラス、陰極がマイナスの状態になった時に発光する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば電子写真感光体、フラットパネルディスプレイなどの平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト、計器等の光源、各種発光素子、各種表示装置、各種標識、各種センサー、各種アクセサリーなどに使用することができる。
【0051】
図38〜47に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい例を示す。
【0052】
図38は、本発明の有機EL素子における一例を示す断面図である。図38は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、発光層は電子輸送性の機能を有している場合に有用である。
【0053】
図39は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図39は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。これはキャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、材料選択の自由度が増すために、発光の高効率化や発光色の自由度が増すことになる。
【0054】
図40は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図40は、基板1上に陽極2、ホール注入層7、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、ホール注入層7を設けることにより、陽極2とホール輸送層5の密着性を高め、陽極からのホールの注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0055】
図41は本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図41は基板1上に陽極2、ホール輸送層5、発光層3、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、電子注入層8を設けたことにより陰極4からの電子の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0056】
図42は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図42は、基板1上に陽極2、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合も、陰極4から電子の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0057】
図43は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図43は、基板1上に陽極2、ホール注入層7、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、陽極2からホールの注入を良くし、陰極4から電子注入を良くし、最も低電圧駆動に効果がある構成である。
【0058】
図44〜47は素子の中にホールブロック層を挿入したものの断面図である。ホールブロック層は、陽極から注入されたホール、あるいは発光層3で再結合により生成した励起子が、陰極4に抜けることを防止する効果があり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率の向上に効果がある。ホールブロック層9については、発光層3と陰極4の間もしくは発光層3と電子輸送層6の間あるいは発光層3と電子注入層8の間に挿入することができる。より好ましいものは発光層3と電子輸送層6の間である。
【0059】
図38〜47で、ホール輸送層5、ホール注入層7、電子輸送層6、電子注入層8、発光層3、ホールブロック層9のそれぞれの層は、一層構造であっても多層構造であっても良い。
【0060】
図38〜47は、あくまでも基本的な素子構成であり、本発明の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の構成はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0061】
本発明のビスフェナントロリン誘導体は、ガラス転移温度が150℃以上と非常に高く熱安定性が高い材料である。また素子に応用した場合、エネルギーギャップが3.4eV以上と大きく、さらにHOMOの値が6.0eVを超えるためホールブロック性が高い。その結果図31に示される通り、本発明化合物DPTは青色発光材料との組み合わせでは際立った性能を示す。これは発光層中でのキャリアの再結合確率が増え結合ロスが低減されると考えられる。なお、HOMOは電子によって占有されている分子軌道のうち最もエネルギーの高い軌道のことを言う。
よって本発明の化合物は、素子を高効率化させるために必要なものであり工業的に極めて重要なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1参考例1のDPTのH−NMRスペクトルの図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図2参考例1のDPTのH−NMRスペクトルの拡大図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図3参考例1のDPTのMassスペクトルの図を示す。横軸は分子量、縦軸はイオン量を表わす。
図4参考例1のDPTの真空TGD測定結果の図を示す。横軸は温度、縦軸は重量減少率を表わす。
図5参考例1のDPTのTGAの測定結果の図を示す。横軸は温度、左縦軸は熱天秤にかかる電圧(μV)、右横軸は熱減少率を表わす。
図6参考例1のDPTのDSCによるガラス転移温度の図を示す。横軸は温度、縦軸は熱の向きとその時に発生する電力を表わす。
図7参考例1のDPTの溶液状態、膜状態でのUV−vis吸収スペクトルを示す。横軸は波長、縦軸は吸収極大を示す。Filmは薄膜状、Solutionは溶液状で測定した結果である。
図8参考例1のDPTのPLスペクトルの測定の図を示す。横軸は波長、縦軸は励起極大と発光極大を表わす。Film−Exは薄膜状での励起スペクトル、Solution−Exは、溶液状での励起スペクトルを表わす。Film−Emは薄膜状での発光スペクトル、Solution−Emは溶液状での発光スペクトルを示す。
図9参考例1のDPTのイオン化ポテンシャル(Ip)の測定の図を示す。横軸は電場(eV)、縦軸は光量子の量を表わす。
図10】実施例2のClPhBenのH−NMRスペクトルの図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図11】実施例2のClPhBenのH−NMRスペクトルの拡大図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図12】実施例2のClPhBenのMassスペクトルの図を示す。横軸は分子量、縦軸はイオン量を表わす。
図13】実施例2のDOBPhBenのH−NMRスペクトルの図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図14】実施例2のDOBPhBenのH−NMRスペクトルの拡大図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図15】実施例2のDOBPhBenのMassスペクトルの図を示す。横軸は分子量、縦軸はイオン量を表わす。
図16】実施例2のBPPBのH−NMRスペクトルの図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図17】実施例2のBPPBのH−NMRスペクトルの拡大図を示す。横軸はケミカルシフトσppmを表わす。
図18】実施例2のBPPBのMassスペクトルの図を示す。横軸は分子量、縦軸はイオン量を表わす。
図19】実施例2のBPPBの真空TGD測定結果の図を示す。横軸は温度、縦軸は重量減少率を表わす。
図20】実施例2のBPPBのTGAの測定結果の図を示す。横軸は温度、左縦軸は熱天秤にかかる電圧(μV)、右横軸は熱減少率を表わす。
図21】実施例2のBPPBのDSCによるガラス転移温度の図を示す。横軸は温度、縦軸は熱の向きとその時に発生する電力を表わす。
図22】実施例2のBPPBの溶液状態、膜状態でのUV−vis吸収スペクトルを示す。横軸は波長、縦軸は吸収極大を示す。Filmは薄膜状、Solutionは溶液状で測定した結果である。
図23】実施例2のBPPBのPLスペクトルの測定の図を示す。横軸は波長、縦軸は励起極大と発光極大を表わす。Film−Exは薄膜状での励起スペクトル、Solution−Exは、溶液状での励起スペクトルを表わす。Film−Emは薄膜状での発光スペクトル、Solution−Emは溶液状での発光スペクトルを示す。
図24】実施例2のBPPBのイオン化ポテンシャル(Ip)の測定の図を示す。横軸は電場(eV)、縦軸は光量子の量を表わす。
図25参考例3、実施例4および比較例1の電流密度−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は電流密度(mA/cm)を表わす。
図26参考例3、実施例4および比較例1の輝度−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表わす。
図27参考例3、実施例4および比較例1の電力効率−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は電力効率(lm/W)を表わす。
図28参考例3、実施例4および比較例1の電流効率−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は電流効率(cd/A)を表わす。
図29参考例3、実施例4および比較例1の輝度−電流密度特性を示す。横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表わす。
図30参考例3、実施例4および比較例1のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。横軸は波長、縦軸は発光強度を表わす。
図31参考例5、実施例6および比較例2の電流密度−電圧特性を示す。横軸は電場(eV)、縦軸は光量子の量を表わす。
図32参考例5、実施例6および比較例2の輝度−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表わす。
図33参考例5、実施例6および比較例2の電流効率−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は電流効率(cd/A)を表わす。
図34参考例5、実施例6および比較例2の電力効率−電圧特性を示す。横軸は電圧(V)、縦軸は電力効率(lm/W)を表わす。
図35参考例5、実施例6および比較例2の輝度−電流密度特性を示す。横軸は電流密度(mA/cm)、縦軸は輝度(cd/m)を表わす。
図36参考例5、実施例6および比較例2の外部量子効率−輝度特性を示す。横軸は輝度(cd/m)、縦軸は外部量子効率(%)を表わす。
図37参考例5、実施例6および比較例2のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。横軸は波長、縦軸は発光強度を表わす。
図38】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図39】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図40】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図41】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図42】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図43】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図44】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図45】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図46】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
図47】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【実施例】
【0063】
以下に実施例及び参考例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0064】
参考例1
3,5−ジ(フェナントロリン−5−イル)−トルエン(DPT)の合成
【化23】
窒素気流下で三口フラスコに5−クロロ−1,10−フェナントロリン(5ClPhen)18.0mmol、3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン(35DOBTol)6.0mmolを入れ、ジオキサン(Dioxane)30.0mlに溶解させた。次に、2.0Mリン酸カリウム水溶液(KPO水溶液)15.0mlを調製し、反応溶液に加え、撹拌しながら窒素バブリングを1時間行った。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕6.0mol%、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)14.4mmol%を加え、還流させながら72時間撹拌した。72時間後、TLC(薄層クロマトグラフ)上(展開溶媒;クロロホルム:メタノール)にて35DOBTolのスポットが消失し、TLC上のスポットに変化が見られなくなったので反応終了とした。反応溶液をクロロホルム溶液にしてイオン交換水と飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後溶液をろ過し、溶媒を留去した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒;クロロホルム:エタノール=100:1)にて目的物の単離を行った。減圧乾燥後、白色の固体を得た(収率61%)。構造確認はH−NMRスペクトルとMassスペクトルにて行った。
H−NMRスペクトルを図1図2(拡大図)、Massスペクトルを図3に示す。
合成したDPTは、アルバック社製、真空TGD(熱天秤)測定装置を用いて昇華性を確認した。DPT測定時はロータリーポンプ(R.P.)を使用し、試料重量6.2mg、真空度、2.0×10−2torr、昇温速度1℃/min.、最高加熱温度400℃という条件で測定した。真空TGD測定結果を図4に示す。
DPTはトレインサブリメーション法により、高温部:280℃、低温部:150℃、Nフロー:80ml/min.という条件にて昇華精製を行った。昇華精製後のDPTについて元素分析を行った。元素分析の結果を表1に示す。
【表1】
昇華後のDPTは、Perkin Elmer社製TGA(熱天秤)ダイヤモンドを用いて分解温度を見積もった。昇温速度10℃/min.、最高加熱温度570℃という条件にて測定を行った。また、Perkin Elmer社製DSC(示差熱量計)およびDTA(熱分析計)を用いてDPTのガラス転移温度、融点を見積もった。昇温速度10℃/min、冷却速度100℃/min、最高加熱温度370℃という条件にて測定を行った。TGAの測定結果を図5に、DSCによるガラス転移温度を図6に示す。結果を表2に示す。
【表2】
Td : 分解温度、
Tg : ガラス転移温度、
Tm : 融点
Tg(ガラス転移温度)については、DSC(Differential Scanning Calorimeter示差熱量計)中にサンプルを加え、溶融されたものを急冷し、2〜3回繰返すとガラス点を示すカーブがチャート上に現れるので、そのカーブを接線で結び、その交点の温度をTgとして採用する。
Tm(融点)は、同じくDSCにサンプルを加え、昇温させていくと急熱カーブが現れるのでその極大のところの温度を読んで、その温度をTmとする。
Td(分解温度)は、DTA(Differential Thermal Analyzer示差熱分析装置)にサンプルを加え、加熱していくとサンプルが熱によって分解し、重量が減少しだす。その減少が開始し5%重量減少したところの温度を読んでその点をTdとする。
またSHIMAZU社製 UV−3150を使用して、DPTの溶液状態、膜状態でのUV−vis吸収スペクトルの測定を行った。溶液試料はDPTの1×10−5mol/L特級クロロホルム溶液をそれぞれ調製し、石英セルを使用して測定した。膜試料はDPTを真空蒸着にて石英基板上に成膜して測定した。両者の測定結果を図7に示す。
また、作製した試料をそのまま用いてDPTのPLスペクトルの測定を行った。測定にはInstruments S.A.社製 Fluoro MAX−2を使用した。測定結果を図8に示す。
次に理研計器社製 大気中光電子分光装置 AC−3を使用して、DPTのイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。測定光量は30nWとした。得られた測定結果を図9に示す。また、得られたIpとEgからDPTの電子親和力(Ea)をそれぞれ見積もった。それぞれの結果を表3に示す。
【表3】
エネルギーギャップ(Eg)については、蒸着機で作成した薄膜を紫外−可視吸光度計で薄膜の吸収曲線を測定する。その薄膜の短波長側の立ち上がりのところに接線を引き、求まった交点の波長W(nm)を次の式に代入し目的の値を求める。それによって得た値がEgになる。
Eg=1240÷W
例えば接線を引いて求めた値W(nm)が470nmだったとしたらこの時のEgの値は、
Eg=1240÷470=2.63(eV)
と言うことになる。
Ip(イオン化ポテンシャル)はイオン化ポテンシャル測定装置(例えば理研計器AC−3)を使用して測定し、測定するサンプルがイオン化を開始したところの電圧(eV)の値を読む。
Ea(電子親和力)は、IpからEgを引いた値である。
【0065】
実施例2
1,3−ビス〔3−(フェナントロリン−5−イル)−フェニル〕−ベンゼン(BPPB)の合成
1)1,3−ビス(3−クロロフェニル)−ベンゼン(ClPhBen)の合成
【化24】
窒素気流下で三口フラスコに1,3−ジブロモベンゼン(DiBrBen)30mmol、3−クロロフェニルボロン酸(ClPhDOB)72mmolを入れ、トルエン150mlとエタノール80mlの混合溶媒に溶解させた。次に、2.0M炭酸カリウム水溶液(KCO水溶液)80mlを調製し、反応溶液に加え、撹拌しながら窒素バブリングを1時間行った。その後、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム〔Pd(PPh〕5.0mol%を加え、還流させながら48時間撹拌した。48時間後、TLC上(展開溶媒;n−ヘキサン)のスポットに変化が見られなくなったので反応終了とした。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、イオン交換水と飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、溶液をろ過し、有機溶媒を留去した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒;n−ヘキサン)にて目的物の単離を行った。減圧乾燥後、無色の粘体7.1gを得た(収率79%)。構造確認はH−NMRスペクトルとMassスペクトルにて行った。H−NMRスペクトルを図10図11(拡大図)、Massスペクトルを図12に示す。

2)1,3−ビス〔3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル〕−ベンゼン(DOBPhBen)の合成
【化25】
窒素気流下で三口フラスコにビスピナコールジボロン(Bpin)61.5mmol、酢酸カリウム(KOAc)98.4mmol、1,3−ビス(3−クロロフェニル)ベンゼン(ClPhBen)24.6mmolの脱水ジオキサン溶液120mlを入れ、撹拌しながら窒素バブリングを1時間行った。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕6.0mmol、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)30.0mmolを加え、80℃に加熱しながら16時間撹拌し、反応終了とした。反応終了後、反応溶液をクロロホルムに注ぎ、しばらく撹拌した後に、シリカゲルを敷き詰めたガラスフィルターにてろ過した。ろ液の有機溶媒を留去し、得られた固体をn−ヘキサンに分散させ、還流させながら一晩洗浄した。洗浄後、固体と溶液をろ別し、固体中に残った目的物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒;n−ヘキサン:クロロホルム=2:1)にて単離し、減圧乾燥後、白色固体7.1gを得た(収率79%)。構造確認はH−NMRスペクトルとMassスペクトルにて行った。H−NMRスペクトルを図13図14(拡大図)、Massスペクトルを図15に示す。

3)1,3−ビス〔3−(フェナントロリン−5−イル)−フェニル〕−ベンゼン(BPPB)の合成
【化26】
窒素気流下で三口フラスコに5−クロロ−1,10−フェナントロリン(5ClPhen)21.0mmol、DOBPhBen7.0mmolを入れ、ジオキサン(Dioxane)35mlに溶解させた。次に、2.0Mリン酸カリウム水溶液(KPO水溶液)17mlを調製し、反応溶液に加え、撹拌しながら窒素バブリングを1時間行った。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕6.0mmol、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)14.4mmolを加え、還流させながら48時間撹拌した。48時間後、TLC上(展開溶媒;クロロホルム:メタノール)にてDOBPhBenのスポットが消失し、TLC上のスポットに変化が見られなくなったので反応終了とした。反応終了後、反応溶液を10当量のメタノールに注ぎ、撹拌して固体を析出させた。1時間撹拌後、固体と溶液をろ別し、固体中に残った目的物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒;クロロホルム)にて単離し、減圧乾燥後、白色泡状固体2.5gを得た(収率61%)。構造確認はH−NMRスペクトルとMassスペクトルにて行った。H−NMRスペクトルを図16図17(拡大図)、Massスペクトルを図18に示す。
合成したBPPBは、アルバック社製、真空TGD測定装置を用いてBPPBの昇華性を確認した。BPPB測定時はターボ分子ポンプ(T.M.P.)を使用し、試料重量8.3mg、真空度、2.0×10−4torr、昇温速度1℃/min.、最高加熱温度400℃という条件で測定した。真空TGD測定結果を図19に示す。
BPPBは高真空昇華精製機を使用し、真空度:4.0×10−4Pa、高温部:345℃、低温部:280℃という条件にて昇華精製を行った。昇華精製後BPPBの元素分析を行った。元素分析の結果を表4に示す。
【表4】
昇華後のBPPBは、Perkin Elmer社製TGA(熱天秤)ダイヤモンドを用いて分解温度を見積もった。昇温速度10℃/min.、最高加熱温度570℃という条件にて測定を行った。また、Perkin Elmer社製DSC(示差熱量計)およびDTA(熱分析計)を用いてBPPBのガラス転移温度、融点を見積もった。昇温速度10℃/min、冷却速度100℃/min、最高加熱温度370℃という条件にて測定を行った。TGAの測定結果を図20に、DSCによるガラス転移温度を図21に示す。結果を表5に示す。
【表5】
Td: 分解温度、
Tg: ガラス転移温度、
Tm: 融点
またSHIMAZU社製 UV−3150を使用して、BPPBの溶液状態、膜状態でのUV−vis吸収スペクトルの測定を行った。溶液試料はBPPBの1×10−5mol/L特級クロロホルム溶液をそれぞれ調製し、石英セルを使用して測定した。膜試料はBPPBを真空蒸着にて石英基板上に成膜して測定した。両者の測定結果を図22に示す。
また、作製した試料をそのまま用いてBPPBのPLスペクトルの測定を行った。測定にはInstruments S.A.社製 Fluoro MAX−2を使用した。測定結果を図23に示す。
次に理研計器社製 大気中光電子分光装置AC−3を使用して、BPPBのイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。測定光量は30nWとした。得られた測定結果を図24に示す。また、得られたIpとEgからBPPBの電子親和力(Ea)をそれぞれ見積もった。それぞれの結果を表6に示す。
【表6】
【0066】
参考例3、実施例4および比較例1
参考例1で合成したDPT、実施例2で合成したBPPBをそれぞれ使用し電子注入・輸送材料としての素子評価を行った。比較例としてα−NPD/Alqだけで作成した有機EL素子を作製した。素子構造は以下の通りである。
比較例1.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層兼電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
参考例3.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/Alq(30nm)(発光層)/DPT(30nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
実施例4.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/Alq(30nm)(発光層)/BPPB(30nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
これらの素子の
電流密度−電圧特性は図25に、
輝度−電圧特性は図26に、
電力効率−電圧特性は図27に、
電流効率−電圧特性は図28に、
輝度−電流密度特性は図29に、
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図30に、
それぞれ示す。
【0067】
参考例5、実施例6および比較例2
参考例1で合成したDPT、実施例2で合成したBPPBをそれぞれ使用し青色蛍光有機EL素子に応用した。素子構造は以下の通りである。
参考例5.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/MADN:1.0wt%TPB(30nm)(発光層)/DPT(30nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
実施例6.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/MADN:1.0wt%TPB(30nm)(発光層)/BPPB(30nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
比較例2.[ITO/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/MADN:1.0wt%TPB(30nm)(発光層)/BAlq(30nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)]
【化27】
これらの素子の
電流密度−電圧特性は図31に、
輝度−電圧特性は図32に、
電流効率−電圧特性は図33に、
電力効率−電圧特性は図34に、
輝度−電流密度特性は図35に、
外部量子効率−輝度特性は図36に、
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図37に、
それぞれ示す。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 陽極(ITO)
3 発光層
4 陰極
5 正孔(ホール)輸送層
6 電子輸送層
7 正孔(ホール)注入層
8 電子注入層
9 正孔(ホール)ブロック層
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図12
図15
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