(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787480
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】維持のための長期経腸栄養供給
(51)【国際特許分類】
A61K 31/07 20060101AFI20150910BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/205 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20150910BHJP
A61K 31/733 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/14 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/16 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/18 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20150910BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20150910BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20150910BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20150910BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20150910BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
A61K31/07
A61K31/01
A61K31/05
A61K31/185
A61K31/201
A61K31/202
A61K31/205
A61K31/353
A61K31/355
A61K31/375
A61K31/4415
A61K31/455
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/70
A61K31/714
A61K31/715
A61K31/733
A61K33/06
A61K33/14
A61K33/16
A61K33/18
A61K33/24
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/34
A61K33/42
A61K35/20
A61K37/02
A61K37/16
A61P3/02
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-532794(P2009-532794)
(86)(22)【出願日】2007年10月17日
(65)【公表番号】特表2010-506882(P2010-506882A)
(43)【公表日】2010年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2007061086
(87)【国際公開番号】WO2008046857
(87)【国際公開日】20080424
【審査請求日】2009年6月16日
【審判番号】不服2013-1830(P2013-1830/J1)
【審判請求日】2013年1月31日
(31)【優先権主張番号】60/862,168
(32)【優先日】2006年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】ル−ヘナンド, エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ムアバッハ, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】デュアブ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ローエッセル, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】シノバー, リュク
(72)【発明者】
【氏名】ブルデ, アラン
(72)【発明者】
【氏名】ロックス, ハーバート
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
安藤 倫世
【審判官】
前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/033349号
【文献】
特開平8−231411号公報
【文献】
特表2004−527501号公報
【文献】
特表2002−532399号公報
【文献】
米国特許第5792754号明細書
【文献】
特表2006−515832号公報
【文献】
特表2005−513077号公報
【文献】
米国特許第5472952号明細書
【文献】
米国特許第5985339号明細書
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝の正常な患者に経管供給される経腸栄養製品であって、
製品100kcal当たり、
ナトリウムを100から200mg、
カリウムを25から250mg、
カルシウムを50mg超、
リンを150mg未満、
マグネシウムを少なくとも15mg、
塩化物を少なくとも100mg、
鉄を0.4から1.5mg、
亜鉛を0.4から2.0mg、
銅を0.08から0.4mg、
フッ化物を0から0.15mg、
クロムを2.0から10.0マイクログラム、
モリブデンを2.0から14.0マイクログラム、
セレンを3.0から9.0マイクログラム、
マンガンを0.1から0.4mg、
ヨウ素を7.0から15.0マイクログラム、
ビタミンAを100から500IU、
ビタミンDを0.5から2.5マイクログラム、
ビタミンEを1.5から4.0mg、
ビタミンKを4.0マイクログラム超、
ビタミンCを4.0mg超、
ビタミンB1を0.06mg超、
ビタミンB2を0.07mg超、
ビタミンB3を0.7から3.5mg、
ビタミンB5を0.2から2.0mg、
ビタミンB6を0.1から0.7mg、
ビオチンを少なくとも1.0マイクログラム、
ビタミンB9を少なくとも12.0マイクログラム、
ビタミンB12を0.1から1.0マイクログラム、
トマト由来のリコペンを少なくとも0.2mg、
β−カロテンを少なくとも0.1mg、
カロリー含量ベースで前記製品の10から18%を供給するタンパク質源、
カロリー含量ベースで前記製品の40から65%を供給する炭水化物源、
カロリー含量ベースで前記製品の25から40%を供給する脂質源、並びに
可溶性繊維及び不溶性繊維の両方を供給する少なくとも10g/lの量の食物繊維源を含む、製品。
【請求項2】
製品100kcal当たり少なくとも30mgのコリンを含む、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項3】
製品100kcal当たり少なくとも4.0mgのタウリンを含む、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項4】
製品100kcal当たり少なくとも3.0mgのカルニチンを含む、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項5】
1.1g以下/100kcalの飽和脂肪酸を含み、
前記組成物が、100kcal当たり0.3から1.1gの間のリノール酸を含有し、
前記組成物が、100kcal当たり少なくとも0.06gのリノレン酸を含有し、
n6:n3比が2から7の間である、
請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項6】
前記不溶性繊維が、前記繊維源の少なくとも25%を構成する、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項7】
プレバイオティックを含む、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項8】
カゼイン、乳清及び大豆からなる群から選択されるタンパク質源を含む、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項9】
前記タンパク質が、完全な状態でも部分的に加水分解されていてもよい、請求項1に記載の経腸栄養製品。
【請求項10】
前記経腸栄養製品が、長期経管栄養を必要とする代謝の正常な患者に、少なくとも1日1回、1か月を超える期間にわたり経管供給される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項11】
前記プレバイオティックが、イヌリン及び/又はアカシアゴムを含む、請求項10に記載の経腸栄養製品。
【請求項12】
前記ビタミンAが、少なくとも一部はβ−カロテンにより供給される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項13】
前記繊維が、大豆多糖類、及びエンドウの外皮繊維を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項14】
可溶性繊維、不溶性繊維及びプレバイオティック繊維を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項15】
前記製品の密度が0.8から1.4kcal/mlである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項16】
前記経腸栄養製品が、
ホウレンソウ由来のルテイン、
β−クリプトキサンチン、
ポリフェノール
のうち1つ又は複数をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経腸栄養製品。
【請求項17】
前記ポリフェノールが、カテキン、イソフラボン及びケルセチンからなる群から選択される、請求項16に記載の経腸栄養製品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本出願は栄養に関する。より詳細には、本発明は臨床栄養に関する。
【0002】
[0002]さまざまな疾患、傷害及び合併症のため、患者は、食物を経口摂取すること、例えば食物を食べることにより必要な栄養を得ることができないことがある。したがって、経腸又は非経口のいずれかにより臨床栄養を供給することは公知となっている。そのような臨床栄養を供給するために、さまざまな異なる調合品が開発されてきた。
【0003】
[0003]典型的な経腸栄養製品を見ても、このような製品は、短期使用、典型的には10から24日間用に設計されている。この点で、経腸栄養製品は、急性の病状を有する患者に対してその入院期間中、必要な栄養をもたらす必須栄養成分を供給するのが普通である。こうした製品はそのような短期使用には適しているものの、これまでは必ずしも患者の長期栄養供給用に設計されてはいなかった。平均余命の長期化をもたらす医薬の進歩及び疾患治療法の改良に伴い、長期経腸栄養を供給するように設計された製品からは、多くの個体が利益を得ることができると考えられる。
【0004】
[0004]本発明は、長期経管栄養を供給するための方法及び組成物を提供する。より具体的には、本発明は、普通の食事をとることはできないが代謝の正常な患者に長期経管栄養を供給するための方法及び組成物を提供する。
【0005】
[0005]この目的のため、一実施形態では、長期経管栄養を患者に供給する方法であって、製品100kcal当たり、タンパク質源、炭水化物源、脂質源、ナトリウムを100から200mg、カリウムを25から250mg、カルシウムを50mg超、リンを150mg未満、マグネシウムを少なくとも15mg、塩化物を少なくとも100mg、鉄を0.4から1.5mg、亜鉛を0.4から2.0mg、銅を0.08から0.4mg、フッ化物を0から0.15mg、クロムを2.0から10.0マイクログラム、モリブデンを2.0から14.0マイクログラム、セレンを3.0から9.0マイクログラム、マンガンを0.1から0.4mg、ヨウ素を7.0から15.0マイクログラム、ビタミンAを100から500IU、ビタミンDを0.5から2.5マイクログラム、ビタミンEを1.5から4.0mg、ビタミンKを4.0マイクログラム超、ビタミンCを4.0mg超、ビタミンB1を0.06mg超、ビタミンB2を0.07mg超、ビタミンB3を0.7から3.5mg、ビタミンB5を0.2から2.0mg、ビタミンB6を0.1から0.7mg、ビタミンB8を少なくとも1.0マイクログラム、ビタミンB9を少なくとも12.0マイクログラム及びビタミンB12を0.1から1.0マイクログラム含む経腸栄養製品を、長期経管栄養を必要とする患者に、少なくとも1日1回、経管供給するステップを含む方法が提供される。
【0006】
[0006]この方法の経腸栄養製品は、一実施形態では、さらなる成分を含むことができる。例えば、製品100kcal当たり少なくとも30mgのコリン、製品100kcal当たり少なくとも4.0mgのタウリン、及び/又は、製品100kcal当たり少なくとも3.0mgのカルニチン。
【0007】
[0007]この方法の一実施形態では、タンパク質源は、カロリー含量ベースで製品の10から18%を供給する。タンパク質源は、カゼイン、乳清及び大豆からなる群から選択できる。さらに、このタンパク質は、完全な状態でも部分的に加水分解されていてもよい。炭水化物源については、カロリー含量ベースで製品の40から65%を供給できる。脂質源は、カロリー含量ベースで製品の25から40%を供給でき(1.1g以下/100kcalの飽和脂肪酸を含む)、この組成物は100kcal当たり0.3から1.1gの間のリノール酸を含有し、この組成物は100kcal当たり少なくとも0.06gのリノレン酸を含有し、n6:n3比は2から7の間である。この製品は、少なくとも10g/lを供給する食物繊維源を含有することもできる。この繊維は、不溶性繊維及び可溶性繊維を含むことができる。例えば、不溶性繊維は、繊維源の少なくとも25%を構成できる。この繊維は、大豆多糖類及びエンドウの外皮繊維を含むことができる。
【0008】
[0008]必要に応じ、この組成物は、プレバイオティックを含むことができる。一実施形態では、このプレバイオティックはイヌリンであってよい。別の実施形態では、この製品の密度は、0.8から1.4kcal/mlである。
【0009】
[0009]加えて、一実施形態では、本発明は、栄養を必要とする患者に、少なくとも1日1回、長期的に経腸栄養製品を供給するステップを含む、患者に栄養を供給する方法であって、この製品が、カロリー含量ベースで製品の10から18%を供給するタンパク質源、カロリー含量ベースで製品の40から65%を供給する炭水化物源、カロリー含量ベースで製品の25から40%を供給する脂質源、可溶性繊維及び不溶性繊維を含む少なくとも10g/lの量の食物繊維源、ナトリウムを100から200mg、カリウムを25から250mg、カルシウムを50mg超、リンを150mg未満、マグネシウムを少なくとも15mg、塩化物を少なくとも100mg、鉄を0.4から1.5mg、亜鉛を0.4から2.0mg、銅を0.08から0.4mg、フッ化物を0から0.15mg、クロムを2.0から10.0マイクログラム、モリブデンを2.0から14.0マイクログラム、セレンを3.0から9.0マイクログラム、マンガンを0.1から0.4mg、ヨウ素を7.0から15.0マイクログラム、リコペンを少なくとも0.2mg、β−カロテンを少なくとも0.1mg、ビタミンAを100から500IU、ビタミンDを0.5から2.5マイクログラム、ビタミンEを1.5から4.0mg、ビタミンKを6.0マイクログラム超、ビタミンCを4.0mg超、ビタミンB1を0.06mg超、ビタミンB2を0.07mg超、ビタミンB3を0.7から3.5mg、ビタミンB5を0.2から2.0mg、ビタミンB6を0.1から0.7mg、ビタミンB8を少なくとも1.0マイクログラム、ビタミンB9を少なくとも12.0マイクログラム及びビタミンB12を0.1から1.0マイクログラム含む方法を提供する。
【0010】
[0010]さらにまた、一実施形態では、本発明は、ナトリウムを100から200mg、カリウムを25から250mg、カルシウムを50mg超、リンを150mg未満、マグネシウムを少なくとも15mg、塩化物を少なくとも100mg、鉄を0.4から1.5mg、亜鉛を0.4から2.0mg、銅を0.08から0.4mg、フッ化物を0から0.15mg、クロムを2.0から10.0マイクログラム、モリブデンを2.0から14.0マイクログラム、セレンを3.0から9.0マイクログラム、マンガンを0.1から0.4mg、ヨウ素を7.0から15.0マイクログラム、ビタミンAを100から500IU、ビタミンDを0.5から2.5マイクログラム、ビタミンEを1.5から4.0mg、ビタミンKを6.0マイクログラム超、ビタミンCを4.0mg超、ビタミンB1を0.06mg超、ビタミンB2を0.07mg超、ビタミンB3を0.7から3.5mg、ビタミンB5を0.2から2.0mg、ビタミンB6を0.1から0.7mg、ビタミンB8を少なくとも1.0マイクログラム、ビタミンB9を少なくとも12.0マイクログラム、ビタミンB12を0.1から1.0マイクログラム、リコペンを少なくとも0.2mg、β−カロテンを少なくとも0.1mg、カロリー含量ベースで製品の10から18%を供給するタンパク質源、カロリー含量ベースで製品の40から65%を供給する炭水化物源、カロリー含量ベースで製品の25から40%を供給する脂質源、並びに可溶性繊維及び不溶性繊維の両方を供給する少なくとも10g/lの量の食物繊維源を含む経腸栄養製品を提供する。
【0011】
[0011]上述のように、この経腸栄養製品は、少なくとも30mgのコリン、少なくとも5.0mgのタウリン及び少なくとも3.0mgのカルニチン(全て、製品100kcal当たり)を含むこともできる。
【0012】
[0012]さらにまた、一実施形態では、本発明は、患者に栄養を供給する方法であって、リコペン、ルテイン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、ポリフェノール、タンパク質源、炭水化物源、繊維源及び脂質源のうち少なくとも1つを含む製品を、維持を必要とする患者に少なくとも1日1回、長期に経管投与するステップを含む方法を提供する。
【0013】
[0013]一実施形態では、ポリフェノールは、カテキン、イソフラボン及びケルセチンからなる群から選択される。
【0014】
[0014]本発明の利点は、改良された経腸栄養製品を提供することである。
【0015】
[0015]本発明の別の利点は、長期使用を対象とした経腸栄養製品を提供することである。
【0016】
[0016]さらに、本発明の利点は、長期栄養を必要とする患者にそれを供給するための組成物を提供することである。
【0017】
[0017]加えて、本発明の利点は、長期栄養を必要とする患者にそれを供給する方法を提供することである。
【0018】
[0018]さらなる特徴及び利点は本明細書に記載してあり、以下の詳細な説明から自明であろう。
【0019】
[0019]本発明は臨床栄養に関する。より具体的には、本発明は、長期経管栄養を、それを必要とする患者に供給することに関する。本明細書で使用する場合、「長期」という用語は、1カ月(30日)を超えることを意味する。本明細書で使用する場合、「経管」という用語は、患者の消化管の一部内に入れられた栄養管、例えば、胃瘻管又は経鼻胃管を通して患者に製品を供給することを意味する。本出願人らは、多様な長期経腸栄養の製品及び方法並びにそれに基づくビジネスの方法を開示する、「長期栄養を供給する方法(METHODS OF PROVIDING LONG−TERM NUTRITION)」と題した特許出願を本発明と共に出願しており、この開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
[0020]この長期経管栄養製品は、維持患者用に設計される。本明細書で使用する場合、「維持患者(maintenance patient)」は、普通の食事を通して栄養を摂取することはできないが代謝の正常な(すなわち、代謝障害を患っていない)65歳未満の成人患者を指す。そのような患者は、以前に頭部若しくは頚部の癌の手術を受けたことにより消化管機能障害若しくは嚥下不能になっていることもあれば、頚部に外傷を負ったことにより患者が嚥下できなくなっている場合もあり、又は、例えば脳卒中により生じた神経損傷の結果、嚥下できないこともある。本明細書で使用する場合、「普通の食事」という用語は、少なくとも実質的に全ての栄養を、食事により、すなわち、栄養管又は非経口による栄養供給を一切用いず本人の口を使って摂取することを意味する。
【0021】
[0021]本発明は、標準的な経腸栄養製品と比較して、長期使用向けに、特に、維持患者に完全な栄養を供給するように最適化及び/又は改良されている方法並びに製品を提供する。本明細書で使用する場合、「標準的な経腸栄養製品」という用語は、長期使用向けとしては特に宣伝又は販売促進されていない製品を指す。そうしたさまざまな製品は、例えば、Nestle Clinical Nutrition、Abbott、Novartis、Numico及びFreseniusから市販されている。一実施形態では、このような製品は、病院環境外で患者に供給される。例えば、この製品は、療養所、院外看護患者センターで、又は患者の家庭でも供給できる。好ましくは、この栄養製品はプラスチック袋入りである。そうしたさまざまな袋は公知であり、例えば、500ml、1000ml及び1500mlの袋が当技術分野で公知である。とはいえ、この栄養製品を入れるためには適当な任意の容器を使用できることに留意されたい。典型的には、この製品は、患者が1日当たり1500mlを摂取するように投与されるが、投与する製品の量を変化させることが可能であることは当業者には理解されるであろう。
【0022】
[0022]本発明の長期経腸栄養調合品は維持のために供給されるので、この調合品は、何らかの特定の質的又は量的な補足を目的としていない。患者は、必要な栄養所要量を摂取するために経腸栄養を必要としているという事実以外は、典型的には安定で、代謝の正常な、健康な患者である。したがって、このような患者は、さまざまな病因(中でも耳/鼻/咽喉の癌の手術の結果)による嚥下障害を含むさまざまな障害を患っていることがあり、また、患者は脳血管障害を患っていることもある。
【0023】
[0023]この調合品の目的の1つは、長期経腸栄養摂取患者の代謝状態及び安定性を最適化することである。必要な多量栄養素だけでなく、例えば抗酸化状態に寄与する微量栄養素も供給することにより、この調合品は、身体の代謝状態を、バランスのよい食事をとっている同年齢の完全に健康な個体に匹敵する状態に維持できる。したがって、本発明は、長期経腸栄養摂取患者の代謝安定性を向上させる方法を提供する。
【0024】
[0024]この調合品は、好ましい一実施形態では、政府要件(下で定義)を満たす、必要な栄養ミネラル及びビタミンを供給するように設計されるが、このような勧告に関しての例外がいくつかある。これに関するものとしては、好ましくは、過剰なカルシウムを利用する。これに関しては、一実施形態では、好ましくは少なくとも33パーセント多いカルシウムを利用する。このように増加させる理由の1つは、このような患者は身体活動が低下していることである。さらに、過剰なビタミンDを好ましくは供給する。好ましい一実施形態では、少なくとも特定の政府要件による必要量より少なくとも150パーセント多いビタミンDを供給する。自身の可動性が低下していることから、こうした患者は日光を浴びることが減り、その結果、このビタミンの体内合成が減っている。このようにしてカルシウム及びビタミンDの摂取量を増加させることにより、十分な骨の蓄積量の維持が期待される。さらに、一実施形態でのこの調合品においては、鉄摂取量は、政府が定める女性にとっての典型的な必要量に匹敵する。この量は、通常、男性に必要とされる量より相当高い。この考えは、女性に生じがちな鉄不足が繰り返し起きることを避けるためのものである。
【0025】
[0025]タンパク質源は、カロリー含量ベースで製品の10から18パーセントを好ましくは供給する。高品質な任意のタンパク質源又はその混合物を利用できる。例としては、カゼイン、乳清及び大豆のタンパク質が挙げられる。タンパク質は、完全な状態でも部分的に加水分解されていてもよい。必要に応じ、遊離アミノ酸を加えてもよい。一実施形態では、カゼイン塩50パーセントと大豆50パーセントとの混合物を利用する。好ましくは、タンパク質源は、バランスのよいアミノ酸摂取が可能になる、カゼイン及び大豆のタンパク質の混合物によって得る。
【0026】
[0026]炭水化物源は、カロリー含量ベースで製品の40から65パーセントを好ましくは構成する。任意の炭水化物、又は炭水化物の混合物を利用できる。例としては、デンプン、マルトデキストリン、ショ糖、及びその混合物が挙げられる。一実施形態では、100パーセントマルトデキストリンを使用する。
【0027】
[0027]好ましくは、脂質は、カロリー含量ベースで製品の25から40パーセントを構成する。飽和脂肪酸(SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)及び中鎖トリグリセリド(MCT)など、食物脂質の適当な任意の混合物を供給してよい。好ましくは、飽和脂肪酸は、1.1g未満/100kcalの量で存在する。好ましくは、この組成物は、100kcal当たり0.3から1.1gの間のリノール酸(又はその高次誘導体)を含有する。この組成物は、100kcal当たり少なくとも0.06gのリノレン酸又はその高次誘導体を含有してよい。n6:n3比は、好ましくは2から7である。
【0028】
[0028]好ましくは、この組成物のエネルギー密度は0.80から1.4kcal/mlである。
【0029】
[0029]繊維の摂取量は、本発明の調合品においては高いことが好ましい。便秘症は、この患者集団で頻繁に生じる。好ましくは、この繊維組成物は、少なくとも10g/lを構成する。適当な任意の繊維、又は繊維の混合物を使用できる。不溶性繊維の例は、大豆多糖類、エンドウの外皮繊維である。可溶性繊維の例は、アカシアゴム、ペクチン、イヌリン及びグアーゴムである。一般には、可溶性繊維と不溶性繊維との混合物が好ましい。加えて、プレバイオティック繊維を含んでもよい。プレバイオティックは、大腸中の1種又は限られた数種の細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することにより、宿主に有益な影響を与え、ひいては宿主の健康を増進させる、難消化性の食物成分と定義される。プレバイオティック繊維の例としては、アカシアゴム、並びに、イヌリン及び加水分解イヌリンなどのフラクトオリゴ糖が挙げられる。一実施形態では、エンドウの外皮繊維50パーセント、エンドウの内繊維37パーセント及びプレバイオティック繊維(イヌリン及び加水分解イヌリン)13パーセントの混合物を、16.7g/lの量で使用する。これは、不溶性繊維66%及び可溶性繊維(プレバイオティック繊維を含む)34%の混合物に相当する。
【0030】
[0030]この栄養製品は、一実施形態では、完全な長期栄養を供給できるように、また、バランスのよい食事をとっている健康な人が摂取すると考えられるのと同じ多量栄養素及び微量栄養素を供給すべく、特別に設計される。したがって、この調合品は、一実施形態では、本明細書で1日5/8と呼ぶものに準拠する。本明細書で使用する場合、「1日5/8」という用語は、1日当たり5から8皿分の果物及び野菜を食べるようにという消費者に向けた政府のガイドラインを指す。したがって、一実施形態では、この製品は、果物及び野菜に見られる微量栄養素及び植物性栄養素を供給することにより、経管製品を必要としない個体が好ましくは摂取する普通の食事にできる限り準拠すべく設計される。一実施形態では、本発明は、1日5/8への準拠を試みることに基づく、長期経腸栄養製品を設計する方法を提供する。このような栄養製品を供給することにより、患者の代謝状態だけでなく抗酸化状態も維持できる。目的は、このような患者を、バランスのよい食事をとっている同年齢の完全に健康な個体の状態にできる限り匹敵する状態にすることである。
【0031】
[0031]植物性栄養素は、以下の特徴を示すことが見出されている:抗酸化、抗炎症、解毒、癌予防、アテローム性動脈硬化症の防止、メタボリックシンドロームの緩和及び骨量減少の防止。必要な植物性栄養素を確保するために、本発明の組成物は、リコペン(トマト)、Β−カロテン(ニンジン、ホウレンソウ、トマト)、ルテイン(ホウレンソウ)、Β−クリプトキサンチンなどのカロテノイド、混合トコフェロール(油及びナッツ)及びビタミンC(オレンジ)などのビタミン、並びにカテキン(緑茶)などのポリフェノールのうち、1つ又は複数を含むことができる。
【0032】
[0032]好ましくは、この製品は、完全な栄養を患者に長期的に供給するための必要な栄養成分を含む。この点において、この製品は、他の可能な成分の中でもとりわけ、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン及びミネラルを含む。一実施形態では、この製品は、少なくとも特定の政府要件を、完全ではないにしても実質的に満たす。本明細書で使用する場合、「政府要件」は、以下の政府の任意の1つから発布される任意の勧告を意味する:米国(典型的には米国RDA)、ドイツ(典型的にはドイツRDA)、及びフランス(典型的にはフランスRDA)。一実施形態では、この栄養製品は、こうした政府要件の少なくとも1つを満たすか、又は上回る。
【0033】
[0033]限定ではなく例として、本発明の実施例をこれから記載する。
【0036】
[0034]特許請求対象の本発明の方法に従い、例として、実施例1及び2の調合品のいずれかを、普通の食事をとることができず栄養を必要とする患者に、少なくとも1日1回、必要な限り長期的に投与できる。
【0037】
[0035]本明細書に記載の、現時点での好ましい実施形態に対する多様な変形及び改変が当業者には自明であろうということは理解されるべきである。そのような変形及び改変は、本発明の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、また、その意図する利点を損なうことなく成され得る。したがって、そのような変形及び改変を、添付の特許請求の範囲により包含することを意図するものである。