特許第5787493号(P5787493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5787493-バックライト装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787493
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】バックライト装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20060101AFI20150910BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20150910BHJP
   F21V 3/04 20060101ALI20150910BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150910BHJP
【FI】
   F21S2/00 441
   F21V3/00 320
   F21V3/00 530
   F21V3/04 110
   F21Y101:02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-142269(P2010-142269)
(22)【出願日】2010年6月23日
(65)【公開番号】特開2012-9187(P2012-9187A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年3月8日
【審判番号】不服2014-10990(P2014-10990/J1)
【審判請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】久世 勝朗
(72)【発明者】
【氏名】河井 兼次
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−86671(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129946(WO,A1)
【文献】 特開2008−21527(JP,A)
【文献】 特開2004−101641(JP,A)
【文献】 特開2008−34234(JP,A)
【文献】 特開2004−45922(JP,A)
【文献】 特開2004−101641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光面、前記入光面に略垂直な出光面、及び前記出光面に対面する反射面を有する導光板と、前記導光板の入光面の長手方向に略直線状に配列された複数個のLED光源を有するLED光源ユニットとを備えたサイドエッジタイプのバックライト装置において、前記導光板の入光面と前記LED光源ユニットの間に下記(1)〜(4)の特性を有する光拡散フィルムが設置されていることを特徴とするバックライト装置:
(1)主拡散方向の拡散度(A)が50〜95度である;
(2)主拡散方向の拡散度(B)が155〜180度である;
(3)全光線透過率が80%以上である;
(4)拡散度比が2.7〜20である。
【請求項2】
前記光拡散フィルムが、その主拡散方向が前記LED光源ユニットのLED光源の配列方向と略平行になるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載のバックライト装置。
【請求項3】
前記光拡散フィルムが、少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のバックライト装置。
【請求項4】
前記少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂のうちの少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載のバックライト装置。
【請求項5】
前記少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂が共にポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3に記載のバックライト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の拡散特性を有する光拡散フィルムを導光板とLED光源ユニットの間に設置することにより、エッジ部の出光斑を少なくし、輝度の均質性を高めたバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。
【0003】
液晶表示装置には、光源からパネルに至る光伝達路でのロスを抑え、パネル上の輝度を向上させるために、液晶層の下面側にバックライトユニットが装備されている。中でも、液晶層を背面から照らして発光させるものが広く普及しているが、光源の配置の仕方により、大別してサイド型と直下型がある。
【0004】
近年、バックライトの光源として、消費エネルギーが少なく、かつ寿命が長い等の特徴を有するLED(発光ダイオード)が省エネルギーの観点より注目されており、室内照明、車内照明、外灯、広告灯及び表示装置等の照明用の光源として広く使用されてきている。
【0005】
LED光源より発せられる光は、直進性(指向性)が高いためにスポット状の狭い範囲の照明には効率的な照明ができるが、光の拡散性が不足している。そのため、多数の光源を用いて広い面積の照明をするために個々の光源がスポット状に並んだ形での照明になり均一な明るさを得るには、光源数を増やして密な状態で設置する必要がある。例えば、ディスプレイの照明において、エッジライト方式で照明する場合において、均一な輝度を得るためにはLED光源数を増やす必要があるので、省エネルギーであるという特長を有効に活用できない。
【0006】
そこで、広い面で均一光量分布を得るためには、エッジライト方式のバックライト装置においても種々の工夫が必要とされている。
【0007】
例えば、少なくとも一つの一次光源と、この一次光源から発せられる光を導光し且つ前記一次光源から発せられた光が入射する光入射端面及び導光される光が出射する光出射面を有する板状の導光体とを備えており、前期導光体が、前記光出射面及びその反対側の裏面の双方又は一方に光出射機構を備え、且つ前記光出射面及び前記裏面の双方又は一方に少なくとも一つの局所的レンズ列形成部を備え、この局所的レンズ列形成部のそれぞれは少なくとも一つの局所的レンズ列を含み、この局所的レンズ列が前記一次光源から発せられ前記光入射端面に入射した光のうちの最大強度光の入射位置での輝度分布におけるピーク光の方向と異なる方向に形成されているもので、これによって輝度不均一を解消する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、一端に開口部が形成され、その内側壁が光の反射面である光源収容部を有するランプハウジングと、光源収容部に設けられた発光ダイオードと、開口部の前面に設けられた表示板とを備え、発光ダイオードからの光を拡散反射して均一にする技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0009】
さらに、光を放射する光源と、該光源からの光を伝搬してその放射方向の所定位置に放射面を有する光学的に透明な導光体と、該導光体の前記放射面以外の面を閉鎖する無蓋のケーシングと、該ケーシングと前記導光体の間の全体に設けられた内側反射手段と、前記放射面に設けられ、前記光源からの光を所定の割合で反射させる放射側反射手段と、を具備する面照明光源が開示されている(特許文献3参照)。
【0010】
上記特許文献1〜3に開示されている方法は、光源の構造が複雑であり、経済性に劣るという問題を有する。
【0011】
一方、例えば、ディスプレイの輝度の均一性を高めるために、エッジライト方式のバックライト装置の導光板の出射光側に各種の異方性光拡散フィルムを設けたものが開示されている(特許文献4及び5等参照)。そして、異方性光拡散フィルムとしては、例えば、環状ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂、結晶性ポリプロピレンとポリプロピレン樹脂などの2種の非相溶の熱可塑性樹脂からなるフィルムを使用する。
【0012】
しかしながら、上記バックライト装置も照明装置全体の光量(全光量とも称する)が低下するうえに、スポット消失性が劣るという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−343124号公報
【特許文献2】特開2003−186427号公報
【特許文献3】特開2008−027886号公報
【特許文献4】特開2004−101641号公報
【特許文献5】特開2008−21527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み創案されたものであり、その目的は、特定の特性の光拡散フィルムをLED光源ユニットと導光板の間に介在させることにより、導光板のエッジ部の出光斑を低下させ、輝度の均質性を高めた、液晶表示装置に好適なバックライト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、主拡散方向の拡散度(A)及び拡散度(B)を特定の範囲に制御した光拡散フィルムをLED光源ユニットの前に設置することにより、導光板のエッジ部出光斑を低減できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
即ち、本発明は、以下の(i)〜(v)を構成とするものである。
(i)入光面、前記入光面に略垂直な出光面、及び前記出光面に対面する反射面を有する導光板と、前記導光板の入光面の長手方向に略直線状に配列された複数個のLED光源を有するLED光源ユニットとを備えたサイドエッジタイプのバックライト装置において、前記導光板の入光面と前記LED光源ユニットの間に下記(1)〜(4)の特性を有する光拡散フィルムが設置されていることを特徴とするバックライト装置:
(1)主拡散方向の拡散度(A)が50〜95度である;
(2)主拡散方向の拡散度(B)が155〜180度である;
(3)全光線透過率が80%以上である;
(4)拡散度比が2.7〜20である。
(ii)前記光拡散フィルムが、その主拡散方向が前記LED光源ユニットのLED光源の配列方向と略平行になるように設置されていることを特徴とする(i)に記載のバックライト装置。
(iii)前記光拡散フィルムが、少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型して得られるものであることを特徴とする(i)又は(ii)に記載のバックライト装置。
(iv)前記少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂のうちの少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする(iii)に記載のバックライト装置。
(v)前記少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂が共にポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする(iii)に記載のバックライト装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバックライト装置は、主拡散方向の拡散度(A)及び拡散度(B)を特定の範囲に制御した光拡散フィルムをLED光源ユニットと導光板の間に設置しているので、エッジ部の出光斑がほとんどなく、輝度の均質性が極めて高い。さらに、光拡散フィルムの主拡散方向がLED光源ユニットのLED光源の配列方向と略平行になるように設置すると、点状の光がエッジライトの長手に拡散できるので、LED光源の数を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のバックライト装置の構成の概略図を示す。
図2】本発明の光拡散フィルムの好ましい配光分布パターンの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のバックライト装置は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの液晶表示装置を背面から照射するためのものであり、LED光源から入光面に入射された光を、入光面に略垂直な出光面から出射する導光板を備えたサイドエッジタイプのものを採用する。
【0020】
図1は、本発明のバックライト装置の構成の一例を概略的に示したものである。図1中、10は導光板であり、例えばポリメチルメタアクリレート又はポリカーボネートのような透明な材料から構成される。導光板10の一つの側面には光を入射するための入光面11があり、入光面11に対して略垂直な上面には出光面12があり、出光面12に対面する下面には反射面13がある。反射面13には、入光面11から入射された光を出光面12に向けて反射する偏向パターンが形成されている。
【0021】
導光板10の入光面11の近傍には、LED光源ユニット20が配置され、複数個のLED光源が入光面11の長手方向に平行に略直線状に配列されている。また、導光板10の入光面11とLED光源ユニット20の間には光拡散フィルム30が設置されている。光拡散フィルム30は、その主拡散方向がLED光源ユニット20のLED光源21の配列方向と略平行になるように設置されることが好ましい。
【0022】
本発明のバックライト装置では、LED光源21から光が発されると、その光は光拡散フィルム30を通って導光板10の入光面11に入射し、次いで反射面13の様々な場所で反射し、出光面12から出射して液晶表示装置を観察者側とは逆の側から照射する。
【0023】
本発明のバックライト装置で使用する光拡散フィルムは、下記(1)〜(4)の特性を有することを特徴とする。
(1)主拡散方向の拡散度(A)が50〜95度である;
(2)主拡散方向の拡散度(B)が155〜180度である;
(3)全光線透過率が80%以上である;
(4)拡散度比が2.7〜20である。
【0024】
上記の主拡散方向の拡散度(A)は、受光角度を変えて光量の変化を測定することにより得られる光量の変化プロファイルにおいて、最大光量の半分の光量における角度範囲であり、半値幅法拡散度と称される指標であり、50〜95度である。拡散度(A)は、一般に広く採用されている評価値であり、後述の実施例に記載の方法で測定して得られる。拡散度(A)が50度未満になると、出光斑の低減が難しくなるため、好ましくない。逆に、95度を超えた場合は、出射光量が低下する場合があるので好ましくない。
【0025】
上記の主拡散方向の拡散度(B)は、155〜180度であり、160〜180度が好ましい。拡散度(B)は、どれだけ端部まで光を拡散できるかの指標であり、一般には使用されていない評価値であり、後述の実施例に記載の方法で測定して得られる。拡散度(B)が155度未満になると、出光斑の低減が難しくなるため、好ましくない。180度を超えることはありえないので180度が上限である。
【0026】
本発明においては、上記拡散度がフィルムの方向により拡散度が異なる、いわゆる異方性光拡散フィルムであることが好ましい。この異方性の度合いは、実施例に記載した方法で求められる。フィルムの拡散度比は2.7以上である。これらの特性を満たすことにより、特定方向に集光する度合いが制御できるので、等方性拡散フィルムでは達成できない光の拡散効果を付与することができる。例えば、LED光源を線状に並べた照明装置に、異方性光拡散フィルムの主拡散方向がLED光源の配列方向と略平行になるように配置して用いた場合には、点状であったLED光源の光をLED光源の配列方向に直線状の均一な光の帯になるように変換することができる。これらの対応により出光光量の低下を少なくしてエッジ部の出光斑を下げることができる。拡散度比が1.5未満では、上記効果が小さくなる。上限は限定されないが、技術的な可能性の点から20以下が好ましいと言える。
【0027】
光拡散フィルムの全光線透過率は、80%以上である。なお、100%超であることは原理上ないので100%が上限である。全光線透過率は高い方が好ましいため、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは100%であるが、界面での反射などでロスが生じることもあり、現実的には上限としては98%、さらには95%、ロスの多い場合には93%程度となることがある。光線透過率が80%未満では、例えば、LED光源より発せられる光線の透過率が低下し、光量が低下し、輝度が低くなるので好ましくない。
【0028】
光拡散フィルムの平行光線透過率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。なお、0%未満であることは原理上ないので0%が下限である。平行光線透過率が10%を超える場合は、例えば、LED光源のスポット消失性が向上し、光源の強い光によるスポットの方の光量が強くなり、出光斑が大きくなりやすいので好ましくない。
【0029】
光拡散フィルムのヘーズは80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、100%超であることは原理上ないので100%が上限である。ヘーズを80%以上とすることで、光の拡散性を向上させ、出光斑を低下させることが可能になり、その結果LED光源の数を減らすことができ、経済的にも有利である。また、光源と光拡散フィルムの距離を短くでき、照明装置の小型化や消費電力の節約ができる。
【0030】
上記の光拡散フィルムの全光線透過率、平行光線透過率、ヘーズ値は、本発明では、フィルムの巻き方向を垂直方向及び水平方向にそれぞれヘーズ測定器の試料台に固定して測定して得られる測定値の平均値で表示する。フィルムの巻き方向を垂直方向及び水平方向で測定したのは、該方向で光学特性が大きく変化するためである。
【0031】
次に、本発明のバックライト装置の製造方法について説明する。バックライト装置を構成する導光板やLED光源ユニットは従来公知のものが多数存在し、本発明では特に限定されないので、ここではそれらの説明を割愛し、光拡散フィルムの製造方法についてのみ以下詳述する。
【0032】
本発明の光拡散フィルムは、少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型することによって得られることができる。少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物の存在形態は、上述の光学特性を満たせば特に限定されず、連続相及び分散相としてそれぞれの樹脂が独立して存在するいわゆる海/島構造であってもよいし、両樹脂が共連続相を形成した構造であってもよい。両樹脂の界面における光の屈折や散乱により上述の特性を制御することができる。
【0033】
使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂は、それぞれの樹脂を製膜工程で配合してもよいし、予め混練法等で事前に配合した形で用いてもよい。
【0034】
本発明においては、三種以上の熱可塑性樹脂を配合してもよいし、それぞれの樹脂の馴染み性向上のための相溶化剤や分散径調整剤等の添加剤を併用しても構わない。また、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤や帯電防止剤等の添加剤を配合してもよい。また、上記の光学特性を阻害しない範囲であれば、無機粒子やポリマービーズ等の微粒子を添加してもよい。
【0035】
これらの熱可塑性樹脂より非相溶性(互いに溶け合わない)の樹脂の少なくとも二種類を選択すればよい。上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の配合割合は、それぞれ質量比で10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30の割合が更に好ましいと言えるが、樹脂成分の種類及び後述の層構成、光拡散層の厚み及び製造方法等により大きく変化する。概していえば、質量比が50/50から離れるほど二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の界面数が減少するためか、全光線透過率の低下、ヘーズ低下、平行光線透過率上昇の傾向にある。
【0036】
また、島成分のメルトフローレートが低い場合には、ダイ内でのシェアやドラフトにより島成分が細くなる力がかかりにくくなり、異方性が低下することがあるが、質量比が50/50から離れるほどこの傾向は強くなる。これらの傾向を考慮して、各特性の調整を行うことができる。なお、二種の非相溶性の熱可塑性樹脂のうち、配合割合が多い方が連続相となる傾向がある。特にメルトフローレートが近い場合、比率により海島構造の成分が逆転することも考慮に入れる必要がある。
【0037】
上記樹脂は、一般に市販されている汎用性の高い樹脂より選択すれば良いが、より安定した生産ができる等の対応のために特注品を使用しても良い。ポリエステル系樹脂は、上記光学特性が達成し易く、かつ光学特性以外の機械的特性や熱的特性に優れている点より、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートの単一重合体及び/または共重合体の使用が好ましい。また、経済的にも優位である。ポリエステルと組み合わせる樹脂としては、後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0038】
また、フッ素系樹脂も、上記特性を満たせば限定されないが、上記光学特性が達成し易く、かつ経済的にも優位である点より、フッ化ビニリデン系樹脂及びパーフルオロエチレン等のフッ素含有モノマーとエチレンやプロピレン等のオレフィン系モノマーとの共重合体の使用が好ましい。フッ素系樹脂は、耐光性に優れており、例えば、ポリオレフィン系樹脂と組み合わせることにより、耐光性の優れた異方性光拡散フィルムを得ることができる。フッ素系樹脂と組み合わせる樹脂としては、後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0039】
上記特性を安定して発現させることができる点から、使用する熱可塑性樹脂は、少なくとも1種がポリオレフィン系樹脂よりなることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポチペンテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン等やこれらの共重合体、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0040】
耐光性や経済性の点より熱可塑性樹脂の二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、その組み合わせは特に限定されないが、二種類のポリオレフィン系樹脂の屈折率差を0.003〜0.07の範囲にするのが好ましい。0.005〜0.05の範囲がより好ましく、0.01〜0.02がさらに好ましい。屈折率差をこの範囲にすることで、前記した光学特性の光拡散フィルムをより安定して得ることができる。例えば、屈折率差が0.07を超えた場合は、ヘーズや平行光線透過率を前記範囲とするのには有利であるが、全光線透過率のバランスが取りにくくなる。一方、0.003未満になると全光線透過率は達成し易くなるが、ヘーズや平行光線透過率とのバランスが取りにくくなる。屈折率差が大きいほど、二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の界面での角度変化が大きくなり、拡散には有利に働くが、一方界面での反射は指数関数的に増加するためと考えられる。従って、上記範囲において、前述した種々の光学特性を同時に満足することができ易くなる。
【0041】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン等の環状のポリオレフィン構造を有したものが挙げられる。例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などを挙げることができる。重合方法及び水素添加方法は、常法により行なうことができる。
【0042】
これらのものはガラス転移温度を高くすることができ、ダイ内でのシェアやドラフトにより細くなった島成分が冷却中に速やかに固化され、安定した特性を出しやすくなると考えられる。ガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。上限はモノマー種により自ずと決まるが(環状モノマー100%のTg)、好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは190℃以下である。上限を超えると、溶融押し出し時に高温が必要となり、着色することがあったり、未溶解物が発生することがある。なお、値はISO11357−1,−2,−3に準拠して10℃/minの昇温速度で測定した値である。
【0043】
環状ポリオレフィン系樹脂の環状成分の含有量としては、好ましくは70〜90質量%、さらに好ましくは73〜85質量%である。特にノルボルネン系の場合はこの範囲が好ましい。特にエチレンを共重合させている環状ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂との親和性が高く、特性を達成するためには好ましい。エチレンの含有量としては、好ましくは30〜10質量%、さらに好ましくは27〜15質量%である。
【0044】
ポリエチレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、50モル%以上がエチレン成分であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂の密度や重合方法等は限定されないが、密度が0.909以下の共重合体の使用が好ましい。例えば、オクテンとの共重合体が挙げられる。重合方法はメタロセン触媒法及び非メタロセン触媒法のいずれでも構わない。特に、高拡散性が安定に付与できる点で、エチレンとオクテンのブロック共重合体の使用が好ましい。かかる共重合体としては、例えば、ダウ・ケミカル社製のINFUSE(商標)が挙げられる。この樹脂は、ブロック構造のために、結晶性の部分を有するので、低密度でありながら高融点であるという特徴があり、得られる異方性光拡散フィルムの耐熱性等を向上させることができる利点がある。
【0045】
ポリプロピレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、50モル%以上がプロピレン成分であることが好ましい。該樹脂の製造方法、分子量等は、特に限定されないが、耐熱性等の点から結晶性の高いものが好ましい。具体的には、結晶性は、示差走査熱量計(DSC)による融解熱で判断され、融解熱が65J/g以上のものが好ましい。
【0046】
エチレン及び/又はブテンが含まれたポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリエチレン樹脂、ホモポリブテン樹脂、及びこれらの樹脂と他のオレフィン系モノマーとの共重合体、アクリル酸やメタクリル酸及びこれらのエステル誘導体との共重合体等が挙げられる。他のオレフィン系モノマーとの共重合体の場合は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、EPラバー等の分散体でも構わない。該樹脂の製造方法や分子量等も特に限定されない。例えば、上記したポリエチレン系樹脂やエチレンとブテンの共重合体の使用が好ましい。
【0047】
ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、ポリマーの結晶/非晶構造がナノオーダーで制御され、該結晶がナノオーダーで網目構造を有する熱可塑性のポリオレフィン系エラストマーであり、例えば、三井化学社製のノティオ(登録商標)が挙げられる。従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂は結晶サイズがミクロンオーダーであるのに対して、ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、結晶サイズがナノオーダーで制御されているという特徴を有する。このため、従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂に比べて、透明性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性などに優れている場合が多い。従って、該ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂を配合することによって、得られるフィルムの外観を向上できる場合がある。
【0048】
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、上記の光学特性を満たせば特に限定されない。それぞれの熱可塑性樹脂は、230℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100、好ましくは0.2〜50の範囲で適宜選択される。
【0049】
本発明においては、前述のごとく拡散度に異方性を付与するのが好ましい。該特性を付与するには島構造に異方性を持たせるのが好ましい。このような形状の島構造を形成するためには、海成分樹脂と島成分樹脂の溶融粘度に差を付けるのが好ましい。特に、海成分よりも島成分の溶融粘度を低くするのが好ましい。このためには、例えば、メルトフローレートに差を付けるのが好ましく、海成分より、島成分の方のメルトフローレートを低くするのが好ましい。また、海成分樹脂と島成分樹脂の剛性に差を付けるのも好ましい。特に、海成分よりも島成分の剛性を低くするのが好ましい。
【0050】
上記樹脂のメルトフローレートは、樹脂の組成、組成比、どちらの樹脂を海相にするか、及び所望する光学特性等を考慮して適宜選択される。その指針は組成割合が多くて、かつメルトフローレートが高い方が海相になる。同量の場合は、メルトフローレートが高い方が海相になり易い。組成割合の少ない方が、メルトフローレートが高い場合は、単純な海/島構造ではなく、例えば共連続相といった形成される場合もある。
【0051】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組み合わせの場合は、ポリエチレン系樹脂を海相として、かつ該海相のポリエチレン系樹脂のメルトフローレートを島相の環状ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも高くするが好ましい。
【0052】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組み合わせの場合は、全樹脂量中に環状ポリオレフィン系樹脂が10〜60質量%配合されているのが好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。上記範囲が、後述のポリエチレン系樹脂を海相とする好ましい実施態様の実現に対して好ましい。上記構成と逆の構成である環状ポリオレフィン系樹脂を海相とした場合は、ダイス内でのシェア、海相の柔軟性や流動性が関係して、所望した光学特性、特に、拡散度比の高い異方性光拡散フィルムが得にくい。
【0053】
上記実施態様により、製膜装置を変えた場合においても、所望した光学特性を有する光拡散フィルムを安定して得ることができる。この理由は定かでないが、製膜装置を変えた場合に発生する押し出し条件の差異やダイス形状の相違によりシェア等の変化があっても、海相の樹脂を島相樹脂より柔らかくして、かつその流動性を高めることにより、その影響が緩和されるためと推察している。
【0054】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、上記の光学特性を満たせば特に限定されないが、経済性の点で溶融押し出し成型により製膜する方法が好ましい。本発明においては、光拡散性を付与するために、非溶融性微粒子を含有させる必要がないので、溶融押し出し成型法で実施しても、製膜工程における溶融樹脂の濾過フィルターの目詰まりが低減でき、生産性が優れるとともに得られるフィルムの清澄度も高いという特長を有する。
【0055】
上記溶融押し出し成型法による製膜方法としては、特に制限されず、例えば、Tダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。また、未延伸のままのフィルムでもよく、延伸処理を行ってもよい。
【0056】
上記溶融押し出し成型法は、一般に、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出して、該シートを冷却ロールに密着させ冷却固化させて製膜される。冷却ロールへの密着は、一般に広く用いられている押し圧ロールで押さえ付けて行っても良いが、異方性を付与するという点においては、上記の冷却ロールへの密着時に、該密着部の入り口部分に液溜りゾーン(バンクと称されることもある)が形成されないことが好ましい。該液溜りゾーンは、冷却ロールへの密着時に圧接された場合、即ち、強い圧力で押さえられた時に形成されるので、該密着時の密着圧力を低くするのが好ましい。例えば、一般に広く用いられている押し圧ロールで圧接して密着させるという方法は避けた方がよい。弱い圧力で密着させる方法であれば限定されないが、例えば、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出して、シートをガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させて製膜されてなることが好ましい。この方法により、異方性を有した光拡散フィルムを安定して得ることができる。
【0057】
上記のガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させる方法は限定されない。例えば、ガス圧による押さえ方法としては、例えば、空気等のガス圧で押さえ付ける、いわゆるエアーナイフ法等の方法、減圧ノズルで吸引して密着させるバキュームチャンバー法、静電気力で密着させる静電気密着法等が挙げられる。この方法は単独で用いてもよいし、複数の方法を併用しても良い。得られるフィルムの厚み精度を高めることができる点で、後者で実施することが好ましい。
【0058】
本発明の光拡散フィルムは、無延伸法及び延伸法のいずれで製造しても良い。例えば、光拡散層にポリエステル系樹脂を用いた場合は、一軸延伸をするのが好ましい。延伸倍率は2倍以上が好ましい。上限は特に限定されないが、10倍未満が好ましい。これにより、島相が延伸方向に引き伸ばされ細長い構造になり、島相の配向方向と直交した方向の光拡散性が著しく向上し、異方性で、かつ高拡散性が確保できる。
【0059】
無延伸法で製造する場合に、溶融押し出しされたシートを冷却個化する前に伸長する方法、即ち、ドラフト率を高める方法で製造しても良い。
【0060】
また、本発明の光拡散フィルムは単層であってもよいし、二層以上の多層構成であっても構わない。多層構成の場合は、少なくとも一層が上記の構成よりなる光拡散フィルムからなる層であれば、他の層は、光拡散性を有しない単なる透明層であってもよい。また、全層が光拡散層の構成であってもよい。上記多層構成の場合は、多層共押出し法で製造してもよいし、押出しラミネート法やドライラミネート法で実施してもよい。
【0061】
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物は、それぞれの熱可塑性樹脂を製膜工程の押出し機などで配合してもよいし、予め混練法等で事前に混合物とした形で用いてもよい。
【0062】
本発明の光拡散フィルムの厚みは、特に限定されないが、一般的には、10〜1000μmが好ましく、30〜500μmがより好ましく、50〜500μmがさらに好ましい。概していえば、膜厚が厚いほど、拡散度の増大、全光線透過率の低下、ヘーズ低下、平行光線透過率低下の傾向にあり、これらの傾向を考慮して、各特性の調整を行うことができる。従来の技術では、上記厚み範囲では本願の光学特性を満すことは困難である。なお、厚みを調整する場合、ドラフト比、押し出し流量、リップ幅等の変更により行なうことができる。
【0063】
上記光拡散フィルムをバックライト装置の導光板に粘着剤や接着剤などを用いて貼り合わせることができる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ビニル系粘着剤等が挙げられる。本発明の光拡散フィルムは高温で使用する可能性があるため、常温〜120℃でも安定な粘着剤が好ましい。中でもアクリル系粘着剤は、安価であるために広く用いられる。どの粘着剤を使用した場合でもその厚みは、0.5〜50μmが好ましい。
【0064】
接着剤としては、熱又は触媒の助けにより接着される接着剤が挙げられる。具体的には、シリコン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤などを用いることができる。これらの接着剤は、接着方法によって熱硬化型、ホットメルト型、2液混合型に大別されるが、好ましくは熱硬化型あるいはホットメルト型が使用される。どの接着剤を使用した場合でもその厚みは、0.5〜50μmが好ましい。
【0065】
粘着剤で貼り合わせる場合は、両面粘着シートを用いてもよい。この方法の場合は、光学の高透明タイプの粘着剤を用いるのが好ましいが、特に限定されない。例えば、光拡散性を有した粘着シートを用いてもよい。粘着シートには、粘着層に光拡散性を付与してもよい。また、接着剤や粘着剤を使用せずに単に重ね合わせて使用しても良い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能である。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは断りのない限り「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
【0067】
<全光線透過率、平行光線透過率、及びヘーズ>
日本電色工業株式会社製ヘーズ測定器「NDH−2000」を用いて、JIS K 7136に準拠して測定した。この測定は、光拡散フィルムの巻き方向が垂直方向になるように試料固定部に固定して測定することにより得た測定値を用いた。また、光拡散フィルムの表面粗さに差がある場合は、表面粗さの粗い方の面を受光側に固定して測定した。例えば、片面のみに粗面化処理した光拡散フィルムの場合は、実際に使用する場合に光が通過する方向で固定して測定を行った。
【0068】
<拡散度B>
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。
透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角になる角度)、受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルター:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)、SENSITIVITY:950、HIGH VOLTON:600及び変角間隔0.1度の条件で、−90度から+90度まで受光器を移動させて測定することにより得た、透過光の変角光度曲線のピーク立ち上がり角度とピークの終了の角度との間の角度の度数を求めた(図2参照)。該ピークの立ち上がり及び終了の角度は、該部分を10倍のルーペで観察して、該ピークの線が消えた最先端の角度をそれぞれの角度とした。該対応をすれば明確な判定ができる。
なお、受光器を移動させる面を赤道面と定義した。
上記測定をフィルムの巻き方向が試料固定台の上下方向と平行方向及び水平方向になるように固定して測定し、該角度の大きい方の値を拡散度Bとした。
なお、フィルムの両面の表面粗さに差がある場合は、実際に視野角向上性能を評価する時と同じ方向に光が通過するような方向で固定して測定した。
該拡散度(B)の大きい方を主拡散方向とした。
該測定に際しては、試料の測定の前に、きもと株式会社製の光拡散フィルムであるライトアップフィルム(商品登録)100DX2フィルムをフィルムの巻き方向が試料固定台の上下方向と平行方向になり、かつ拡散層側が出光側になるように試料固定台に固定して、上記と同じ条件で変角光度測定を実施した。該測定において、変角光度曲線のピークトップの高さがフルスケールに対して、80%を超えるか、あるいは70%未満であった場合は、該値がフルスケールに対して70〜80%になるようにSENSITIVITYあるいはHIGH VOLTONダイヤルの数値の微調整を行った。
【0069】
<拡散度A>
拡散度Bと同様に、自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。
上記の拡散度Bの測定で求めた主拡散方向に試料を固定し、SENSITIVITY及びHIGH VOLTON以外は、拡散度Bと同じ条件において測定をした。
透過光の変角光度曲線のピークトップの値がフルスケールに対して20〜80%の範囲になるようにSENSITIVITY及びHIGH VOLTONの設定を調整し、拡散度Bと同様にして透過光の変角光度曲線を求めた。
得られた透過光の変角光度曲線のピークの高さの半分の高さにおける角度の幅(半値幅)の角度を拡散度Aとした(図2参照)。
平行光線透過率の高い試料の場合は、測定感度を低下させても変角光度曲線のピークトップがトレードオフとなり頭頂のピークが出ないことがある。この場合は、SENSITIVITY:150及びHIGH VOLTON:500において測定してフルスケールに対して50%の高さのピーク幅を拡散度Aとした。
なお、拡散度Aの値が小さい場合は、10倍のルーペを用いて半値幅を求めた。
【0070】
<拡散度比>
上記拡散度Aの測定を光拡散フィルムの巻き方向を垂直方向及び水平方向に固定して行い求め、半値幅の大きい方の値を小さい方の値で除すことにより求めた。
【0071】
<熱可塑性樹脂のメルトフローレート>
JIS K 7210 A法に準拠して、230℃、2.16kgfの条件で測定した。一部の樹脂は、実施例に記載の条件で測定した。
【0072】
<エッジ部出光斑>
厚みが7mmの5インチアクリル板の下部に白色の反射フィルムを配置し、光拡散フィルムを上記アクリル板の上部に重ね合わせて、アクリル板の長手方向のエッジ部に、2mmの間隔を開けて、Top Viewタイプの白色LED光源を10mm間隔で配置した線状のLED光源ユニットをアクリル板のエッジ部と平行に固定されてなる図1に記載のサイドエッジタイプのバックライト装置のLED光源ユニットと対面するアクリル板のエッジ部表面に光拡散フィルムを光学用粘着剤で貼り付けた。
上記アクリル板の下面側には、アクリル板全体に光が均一に出光されるようにスクリーン印刷でグラデーションパターン印刷をした。
暗室で、該バックライト装置を点灯して、アクリル板表面より約50cmの高さより、エッジ部のLED光源より発せられる光の出光斑を観察して以下の基準で、エッジ部出光斑の判定を行った。
なお、光拡散フィルムは主拡散方向がLED光源基板のLED光源の配列方向と平行になるような方向で貼り付けた。上記アクリル板の上部に重ね合わせた光拡散フィルムもエッジ部に貼り付けた光拡散フィルムと同方向で重ね合わせた。
○:LED光源のスポットが見えず、エッジ部全域に渡って均質に出光される。
×:LED光源のスポットが観察でき、エッジ部全域においてLED光源のスポットに起因した出光斑が観察される。
【0073】
〔実施例1〕
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(商標)6013 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(商標)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部を池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み400μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
得られた光拡散フィルムを、上記のエッジ部出光斑評価に用いたバックライト装置のLED光源基板と対面するアクリル板のエッジ部表面に、ポリエステルフィルムの両面に粘着剤層が積層された光学用両面粘着剤フィルム(クレハエラストマー社試作品)を用いて貼り付けて本実施例のバックライト装置を作製した。
本実施例で得られたバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0074】
〔実施例2〕
実施例1の方法において、樹脂の配合を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(商標)6015 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:0.41(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(商標)D9101.15 メルトフローレート:2.1(230℃))50質量部に変更し、かつフィルム厚みを200μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0075】
参考例5
実施例1の方法において、樹脂配合を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(商標)6015 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:0.41(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるランダム共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 ENGAGE(商標)8137 メルトフローレート:30(190℃))50質量部に変更し、かつフィルム厚みを200μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0076】
〔参考例1〕
真空乾燥機にて180℃3時間乾燥し、水分を十分に除去した実質的に無滑剤のポリエチレンテレフタレート樹脂85質量部とプライムポリマー(株)社製の低密度ポリエチレン樹脂(SP1540)15質量部の混合物を単軸押出機に供給し、280℃で溶融し、フィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。次いで、長手方向へ温度103℃で長手方向に5.0倍延伸し、厚み150μmの光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0077】
〔参考例2〕
参考例1において、低密度ポリエチレン樹脂を変性ポリプロピレン系樹脂(大日精化(株)社製CAP350)に変更し、かつ得られるフィルム厚みを200μmに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0078】
〔実施例6〕
フッ素系樹脂(Kynar 720(PVDF) アルケマ社製 メルトフローレート:10(230℃、5kgf))50質量部とポリメチルペンテン系樹脂(TPX(商標)DX820 三井化学社製、メルトフローレート:110(260℃、5kgf))50質量部を、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み225μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はエアーナイフを用いて行った。また、片面にコロナ処理を施した。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0079】
〔参考例3〕
フッ素系樹脂(Kynar 720(PVDF)アルケマ社製 メルトフローレート:10(230℃、5kgf))50質量部と環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(商標)6013 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.1(230℃、2.16kgf))50質量部を、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み70μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。また、片面にコロナ処理を施した。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、エッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かった。
【0080】
〔参考例4〕
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(商標)6015 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:0.41(230℃、2.16kgf))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(商標)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃、2.16kgf))50質量部を、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、梨地加工した冷却ロール(Ra=0.55)で冷却することにより厚み400μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却ロールの反対面は鏡面の押さえロールを用いた。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本実施例のバックライト装置は、実施例1と同様にエッジ部出光斑が小さく輝度の均質性が高かったが、実施例1に比べて導光板に導入される光量の低下が大きいので、導光板表面の輝度がやや低下した。
【0081】
〔比較例1〕
ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)53質量部にエチレン・ブテン共重合体(三井化学社製、タフマー A1085S)47質量部を、60mmφ単軸押出機(L/D;22)内で樹脂温度240℃にて溶融混合してTダイで押出した後、20℃のキャスティングロールで冷却することにより未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用して延伸温度118℃で4.5倍に延伸し、引き続きその片面にコロナ処理をして厚み200μmの光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本比較例のバックライト装置は、エッジ部の出光斑が大きく、エッジ部の輝度の均質性が劣っていた。
【0082】
〔比較例2〕
厚み250μmの高透明性ポリエステルフィルム(東洋紡績社製 コスモシャインA4300)の片面に、平均粒径が3μmの真球状のアクリル樹脂粒子(東洋紡績社製 タフチック(商標)FH−S300)50質量部とポリウレタン樹脂50質量部の混合部が乾燥後厚みで25μmになるように、塗工機を用いて、塗布および乾燥をすることにより光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本比較例のバックライト装置は、エッジ部の出光斑が大きく、エッジ部の輝度の均質性が劣っていた。
【0083】
〔比較例3〕
表面にエンボス加工されたポリカーボネート樹脂よりなる光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例の光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本比較例のバックライト装置は、エッジ部の出光斑が大きく、エッジ部の輝度の均質性が劣っていた。
【0084】
〔比較例4〕
参考例2において、延伸倍率を1.5倍に変更し、かつ得られるフィルム厚みを25μmに変更した以外は、参考例2と同様にして光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本比較例のバックライト装置は、エッジ部の出光斑が大きく、エッジ部の輝度の均質性が劣っていた。
【0085】
〔比較例5〕
実施例6において、延伸倍率を1.5倍に変更し、かつ得られるフィルム厚みを25μmに変更した以外は、実施例6と同様にして光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様の方法でバックライト装置を作製した。
本比較例のバックライト装置は、エッジ部の出光斑が大きく、エッジ部の輝度の均質性が劣っていた。
【0086】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のバックライト装置は、導光板のエッジ部の出光斑がほとんどなく、輝度の均質性に優れるので、液晶表示装置の機能向上に極めて有用である。
図1
図2