特許第5787530号(P5787530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787530
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】電子写真装置の固定部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-11750(P2011-11750)
(22)【出願日】2011年1月24日
(65)【公開番号】特開2011-154369(P2011-154369A)
(43)【公開日】2011年8月11日
【審査請求日】2014年1月17日
(31)【優先権主張番号】12/693,011
(32)【優先日】2010年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー スー キム
(72)【発明者】
【氏名】ユー キ
(72)【発明者】
【氏名】ナン−シン フー
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−114290(JP,A)
【文献】 特開昭64−029882(JP,A)
【文献】 特開2006−084651(JP,A)
【文献】 特開平11−024423(JP,A)
【文献】 特開平05−053467(JP,A)
【文献】 特開2004−355004(JP,A)
【文献】 特表2009−509794(JP,A)
【文献】 特開2002−322299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた、テクスチャー表面を形成するための複数の構造的特徴を有する支持ポリマーと、
を備え、
前記支持ポリマーは、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、及びポリケトンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記テクスチャー表面は、複数の周期的に整列された凹凸である前記構造的特徴と、粒子、シャフト、ピラー、ワイヤ、ロッド、ニードル、ファイバ、スレッド、フレーク、及びこれらの組み合わせから選択される形状を有するフッ素ポリマーとを含み、
前記フッ素ポリマーは、少なくとも前記支持ポリマーの前記構造的特徴中に分散している、又は前記支持ポリマーの前記構造的特徴上に存在していることを特徴とする固定部材。
【請求項2】
請求項1に記載の固定部材において、
前記フッ素ポリマーは、前記支持ポリマーの重量に対して約5%〜約50%の含有量で、前記支持ポリマーの前記構造的特徴中に分散していることを特徴とする固定部材。
【請求項3】
請求項1に記載の固定部材において、
前記フッ素ポリマーは、前記支持ポリマーの前記構造的特徴上に存在しており、記構造的特徴の凸部のみを被覆していることを特徴とする固定部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定部材において、
前記フッ素ポリマーは、粒子形状を有し、当該粒子の一次元の長さが、約10nm〜約10μmであることを特徴とする固定部材。
【請求項5】
請求項1に記載の固定部材において、
前記フッ素ポリマーは、前記支持ポリマーの前記構造的特徴上に存在しており、前記支持ポリマーの表面における前記フッ素ポリマーの面密度が、約10-6g/cm2〜約10-3g/cm2であることを特徴とする固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、電子写真装置に使用される固定部材に関し、より詳細には、表面エネルギーが小さなテクスチャー表面を有するポリマーベースの固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素エラストマーやフッ素樹脂を含むフッ素重合体のような高分子材料は、電子写真装置のフューザのトップコートとして用いられる。これらのトップコート材料は、溶融工程において、トナーをリリースするために必要な熱安定性と共に、低表面エネルギー及び/又は高耐薬品性を与える。フューザは、常に紙とトナーに接するため、従来のトップコート材料は劣化し易く、よってフューザの耐用年数が限定されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
芳香族ポリイミドは、機械的強度、摩耗耐久性、耐薬品性、熱安定性を有するため、耐久性のあるポリマーとして知られている。これらは、フューザのトップコートに望ましい性質である。しかしながら、ポリイミドは、高い表面エネルギーも有しており、これはフューザのトップコートには望ましくない。
【0004】
即ち、本発明の目的は、上記課題を解決して、ポリマーベースで表面エネルギーの低い固定部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る固定部材は、基材と、前記基材上に設けられた支持ポリマーとを備え、前記支持ポリマーは、テクスチャー表面を形成するための複数の構造的特徴を有し、該テクスチャー表面は、フッ素ポリマーを含んで構成されることを特徴とする。
【0006】
上記固定部材は、例えば、低表面エネルギーであるため、電子写真装置のフューザに好適であり、フューザの長寿命化を可能にする。
【0007】
上記固定部材は、例えば、基材と、基材上にコーティングされ、凹凸が形成された表面構造を含む支持ポリマー層と、当該表面構造の少なくとも一部を被覆するフッ素ポリマーとで構成される。
【0008】
上記フッ素ポリマーは、例えば、支持ポリマー層の凹凸表面の全体を被覆してもよいし、凸部上のみを被覆してもよい。特に、凸部上にフッ素ポリマーが存在することが好ましい。また、例えば、凹凸表面を被覆する薄膜コーティング層として形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態である固定部材の一部を示す図である。
図2】本発明の実施形態である固定部材の他の例を示す図である。
図3】本発明の実施形態である固定部材の製造方法を示す図である。
図4】本発明の実施形態である固定部材の製造方法の他の例を示す図である。
図5】本発明の実施形態である固定部材の製造方法の他の例を示す図である。
図6】各サンプルの接触角を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
好ましい実施形態は、電子写真装置に用いられるポリマーベース材料及び関連した固定部材の材料及び方法を提供する。固定部材は、基材上に設けられた表面層を含むことができる。表面層は、支持層を組み込んだフッ素ポリマーを含むことができる。さらに、表面層は、フッ素ポリマーを少なくとも含み、テクスチャー表面を与える複数の構造的特徴(表面構造)を含むことができる。
例えば、テクスチャー表面とは、表面に凹凸が形成された凹凸表面であり、支持ポリマーで構成される支持層の表面に形成される。そして、当該凹凸表面の少なくとも一部、好ましくは凹凸表面の凸部をフッ素ポリマーが被覆する。
【0012】
幾つかの実施形態では、フッ素ポリマーは、支持ポリマーの構造的特徴又は支持ポリマー中に分散又は組み込むことができる。ある実施形態では、フッ素ポリマーが支持ポリマーの表面に分散し、テクスチャー表面を形成することができる。また、別の実施形態では、支持ポリマーとともに(例えば、内部又は表面に分散して)組み込まれたフッ素ポリマーが熱的にアニールされることで、アニールされた構造的特徴を又はアニールテクスチャー表面を形成することができる。
つまり、支持ポリマーと、支持ポリマーの表面又は内部に分散されたフッ素ポリマーとを熱処理することで、熱処理を施した凹凸構造又は熱処理を施したテクスチャー表面を形成できる。
【0013】
特に指定しない限り、本明細書において「固定部材」は、フューザ部材、圧力部材、加熱部材、及び/又はドナー部材(これらに限定されない)を含む、プリンタ(電子写真装置)に使用される部材を包含する。幾つかの実施形態においては、「固定部材」とは、例えば、ローラ、シリンダー、ベルト、プレート、フィルム、シート、ドラム、ドレルト(ベルトとドラムの中間物)の形態、又は固定部材として知られた他の形態を有することができる。
【0014】
特に指定しない限り、本明細書において「フッ素ポリマー」とは、フッ素原子を含む任意のポリマーのことを指す。実施形態においては、フッ素含有量は、フッ素ポリマーの全体の重量に対して、少なくとも約30%、少なくとも約50%、又は少なくとも約80%とすることができる。
【0015】
フッ素ポリマーとしては、次のものが例示できる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えば、デュポン社のテフロン(登録商標))、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA、例えば、デュポン社のテフロン)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP、例えば、デュポン社のテフロン)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE、例えば、デュポン社のテフゼル(登録商標)、又は旭硝子株式会社のフルオン(登録商標))、ポリフッ化ビニル(PVF、例えば、デュポン社によるテドラー(登録商標))、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(PECTFE、例えば、ソルベイソレクシス社のヘイラー(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、例えば、アルケマ社のカイナー(登録商標))、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)の共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の共重合体、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDF又はVF2)の共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、及びTFE、VF2、HFPのテトラポリマーが例示できる。
【0016】
実施形態では、フッ素ポリマーは、例えば、粒子、シャフト、ピラー(例えば、柱状)、ワイヤ、チューブ、ロッド、ニードル、ファイバ、スレッド、フレーク、コーティング層又はこれらの組み合わせの形態とすることができる。
同様の形態として、例えば、棒状、柱状、針状、糸状、薄膜状等が例示できる。例えば、フッ素ポリマーは、支持層の凹凸表面にコーティングされて、薄膜のコーティング層を形成することもできる。
【0017】
実施形態では、フッ素ポリマーは、支持ポリマーの重量に対して、少なくとも約0.5%、又は約5%〜約50%含有され、又は少なくとも約5%の含有量で支持ポリマー中に分散又は組み込まれる。
【0018】
実施形態では、フッ素ポリマーが粒子状である場合、そのフッ素ポリマー粒子は少なくとも一次元の長さが、少なくとも約1nm、又は少なくとも約10nm、又は約10nm〜約10μmの範囲とすることができる。
【0019】
実施形態では、フッ素ポリマーは、少なくとも約1nm、又は少なくとも約10nm、又は約10nm〜約1μmの細長い構造とすることができる。そして、この細長いフッ素ポリマーのアスペクト比は、少なくとも約1、又は少なくとも約10、又は約100〜約1000とすることができる。
【0020】
実施形態において、フッ素ポリマーは、支持ポリマーの構造的特徴を少なくとも部分的に覆うように、支持ポリマーの表面上に設けることができる。この場合、フッ素ポリマーの面密度は、支持ポリマーのテクスチャー表面において、少なくとも約10-6g/cm2とすることができる。幾つかの実施形態では、このような面密度の範囲は、約10-6g/cm2〜約103g/cm2、又は約10-6g/cm2〜約10-3g/cm2とすることができる。
【0021】
支持ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、以下のうち一又は複数のポリマーから形成することができる。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、ポリケトン、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE)、そして、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)の共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の共重合体、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDF又はVF2)の共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、及びTFE、VF2、HFPのテトラポリマーが例示できる。
【0022】
支持ポリマーとして、例えば、ポリイミド材料を用いることができる。実施形態として、使用されるポリイミド材料の数平均分子量は、例えば、約5000〜約500000、又は約10000〜約100000、又は約15000〜約200000とすることができる。一方、ポリイミドの重量平均分子量は、例えば、約50000〜約5000000とすることができ、さらなる例では、約100000〜約1000000、又は約150000〜2000000とすることができる。
【0023】
ある実施形態では、フッ素エラストマーを支持ポリマーとして使用することができる。例えば、フッ素エラストマーは、限定されるものではないが、以下のものを含むモノマー繰り返し単位を有することができる。例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びこれらの混合物が例示できる。さらに、フッ素エラストマーは、硬化部位モノマー(硬化剤)を含むことができる。
【0024】
実施形態では、支持ポリマーは、公知の無機充填剤を含み、固定部材の基材上に表面層を形成することができる。
【0025】
図1A〜1C及び図2A、2Bは、種々の好ましい実施形態である固定部材100A〜100C、200A、200Bの一部を示す。当業者によれば、これらの図において、各固定部材は一般化され模式的に表されており、他の構成要素/層/粒子を追加してもよく、又は、存在している構成要素/層/粒子は除去しても又は変更しても構わないことは直ちに明らかである。
【0026】
図1Aに示されているような一実施形態では、部材100Aは、基材110と、該基材110上に設けられた表面層を含むことができる。図1Aの表面層は、一又は複数の表面の構造的特徴135(表面構造)を含む支持ポリマー130、及び該表面の構造的特徴135上に分散されたフッ素ポリマー22を含むことができる。
つまり、例えば、表面層は、凹凸が形成された凹凸表面構造を含む支持ポリマー130層と、当該凹凸表面の凸部上に設けられたフッ素ポリマー22とを含む。
【0027】
図1、2においてフッ素ポリマー22は、粒子状として描かれているが、ロッド、チューブ、フレーク、又はコーティング層(ただし、これらに限定されない)を含む他の適切な形態も、各種の実施形態に関して用いることが可能である。
【0028】
図1Bに例示される形態では、部材100Bは、例えば、フッ素ポリマー粒子又はフッ素ポリマーコーティングといったフッ素ポリマー22が、構造的特徴135の表面を含む支持ポリマー130の表面(即ち、テクスチャー表面)の全体に分散される以外は、図1Aに例示した構成と類似の構成を含むことができる。
【0029】
図1Cに例示される形態では、部材100Cは、図1A、1Bの表面層をアニールした表面層によってオーバレイされた基材110を含むことができる。図1Cに例示される形態では、熱処理された表面の構造的特徴139は、図1A、1Bの支持ポリマー130及び/又はフッ素ポリマー22を熱処理することによって形成することができる。
【0030】
図2Aに例示される形態では、部材200Aは、基材110と、支持ポリマー130中に分散又は組み込まれたフッ素ポリマー22を有する表面層とを含むことができる。この表面層は、構造的特徴232と、フッ素ポリマー22を含むテクスチャー表面とを含むことができる。
【0031】
図2Bに例示される形態では、部材200Bは、基材110上に設けられたアニールされた表面層222を含むことができる。このアニールされたポリマーベースの表面層222は、例えば、支持ポリマー130中に分散したフッ素ポリマー22を含み、例えば、図2Aの表面層を熱でアニールしたものとすることができる。このアニールされたポリマーベースの表面層222は、したがって、フッ素ポリマー22を含むテクスチャー表面を得るために、一又は複数のアニールされた構造的特徴239を有することができる。
【0032】
実施形態においては、図1、2の基材110は、ローラ、ベルト、プレート、フィルム、シート、ドラム、ドレルト(ベルトとドラムの中間物)を含む固定部材とすることができる。幾つかの実施形態においては、基材110は、例えば、金属、金属合金、ゴム、ガラス、セラミック、プラスチック、繊維など、多様な種類の材料によって形成することができる。また、使用される金属は、アルミニウム、陽極酸化アルミ、鉄、ニッケル、銅、及びそれらの混合物を含むことができる。また、使用されるプラスチックは、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、及びそれらの混合物を含むことができる。
【0033】
ある実施形態では、図1、2の基材110の厚みは、約50μm〜約400μm、又は約50μm〜約100μmであるベルト状とすることができる。又は、基材110は、厚みが約2mm〜約20mm、又は約3mm〜約10mmである円柱状又はロール状とすることができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、図1、2の基材110と表面層との間に、一又は複数の機能層を設けることができる。例えば、支持ポリマー130、222を、基材110上に設けることが可能な弾性層上に形成することができる。別の例では、弾性層と支持ポリマー130、222との間にさらに界面層を設けても良い。
【0035】
実施形態では、基材と支持ポリマー又は表面層との間に設けられる弾性層は、例えば、シリコンエラストマー、ポリペルフルオロエーテルエラストマー、フッ素エラストマー、又はこれらの組み合わせを含む硬化ポリマーを含むことができる。
【0036】
実施形態では、基材110上の表面層のテクスチャー表面は、例えば、図1、2の周期的及び/又は規則的ナノ、マイクロ、又はナノマイクロ表面の構造的特徴135、139、232、239のような種々の規則的又は非規則的な形状を有する、ナノ、又はマイクロレベルの表面を含むことができる。例えば、この構造的特徴は、所望の表面ぬれ性を与えるために規則的又は不規則的な突出又は窪んだ特長を有することができる。
【0037】
実施形態においては、図1、2の構造的特徴135、139、232、239の断面形状は、例えば、円、長方形、楕円、正方形、三角形、多角形、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0038】
実施形態においては、図1、2の各構造的特徴135、139、232、239の外周は、少なくとも約10nm、又は少なくとも約100nm、又は約100nm〜約200μmの範囲とすることができる。
【0039】
実施形態においては、図1、2の各構造的特徴135、139、232、239の深さは、少なくとも約10nm、又は少なくとも約100nm、又は約100nm〜約5μmの範囲とすることができる。
【0040】
実施形態においては、図1、2の構造的特徴135、139、232、239は、周期的に整列された構造的特徴であり、アレイを形成することができる。この整列構造的特徴のアレイは、例えば、六角アレイ、正方アレイ、準結晶アレイ、線形アレイ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0041】
実施形態においては、複数の周期的に整列された構造的特徴は、約100nm〜約500μmの範囲を含む、少なくとも約100nm、又は約500μmよりも大きい中心間距離を有することができる。
【0042】
このようにして、図1、2に示されているように、固定部材は、例えば、増加した疎水性/疎油性、及び/又は減少した表面エネルギーを含む所望の表面特性を有することができる。
【0043】
例えば、フッ素ポリマーを含む図1、2のテクスチャー表面は、少なくとも約90°、又は少なくとも約120°の水接触角を有することができる。実施形態においては、図1、2の固定部材のテクスチャー表面は、少なくとも約150°の水接触角を有する超疎水性とすることができる。ある好ましい実施形態では、図1、2の固定部材のテクスチャー表面は、超疎水性であって水接触角が約170°以上(ハスの葉と同様)とすることができる。
【0044】
ある実施形態においては、図1、2の固定部材のテクスチャー表面は、疎油性とすることができる。これは例えば、ヘキサデカン(又は、炭化水素、シリコンオイルなど)の接触角が約60°以上、又は約90°以上、又は約120°以上である。
【0045】
実施形態においては、図1、2の固定部材のテクスチャー表面は、例えば約50mN/m以下、又は約30mN/m以下、又は約20mN/m以下(例えば、約5mN/m〜約20mN/m)の低表面エネルギーを有することができる。
【0046】
ある実施形態においては、図1、2の固定部材は、例えば、電子写真印刷工程におけるオイルレス運転のための溶融ローラ又は溶融ベルトとして用いることができる。
【0047】
図3は、各種の実施形態に係る固定部材の製造方法300を示す。本方法300は、説明の便宜上、図1A〜1Cに関して記載されるが、方法300の工程は図1A〜1Cに示された構成に限定されるものではない。
【0048】
加えて、図3の方法300は、連続した動作又は事象として以下に説明されるが、例示の動作又は事象の順番に限定されない。例えば、幾つかの複数の動作は、他の動作又は事象と異なった順番で及び/又は同時に生じ得る。また、本発明の一又は複数の側面又は実施形態に従った方法を実行するのに、説明される全てのステップが必要というわけではないかもしれない。また、本明細書において表現される一又は複数の動作を一又は複数の分離した動作及び/又は段階において実行しても良い。
【0049】
図3の301においては、固定部材の基材(例えば、図1、2に示すような基材110)を選択する。
【0050】
図3の303においては、支持ポリマー13を基材110に適用する。支持ポリマーは、この段階では平滑な表面を有することができる。
【0051】
好ましい実施形態では、支持ポリマーは、当業者に知られている「液体ポリイミド」、即ちポリアミド酸溶液から形成されるポリイミドベース層とすることができる。ある実施形態では、ポリイミドベース層は、例えば、ポリアミド酸溶液、及び任意で、有機極性溶媒中の熱伝導性種(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)など)を含むコーティング溶液によって形成することができる。支持ポリマー層の形成には、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングなど、公知のコーティング又は印刷技術を用いることができる。
【0052】
図3の305では、一又は複数の構造的特徴135を、例えば、パターニング工程又は他の適切な技術によって、図1A〜1Cに示されるような支持ポリマー層に設けることができる。実施形態においては、構造的特徴135は、各種の構造的アレイを形成する周期的整列構造的特徴とすることができる。つまり、例えば、支持ポリマー層は、周期的な凹凸が形成された表面構造を有する。実施形態において、パターニング工程は、例えば、インプリンティング、エンボシング、モールディング、ミクロ接触プリンティング、マイクロ機械加工、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、ソフトリソグラフィなどが例示できる。特に、モールディング技術は、例えば、レプリカモールディング、ミクロトランスファモールディング、微細毛細管モールディング、及び/又は溶媒補助ミクロモールディングを含むことができる。また、モールディング技術は、例えば、プラスチック産業において使用されている溶融押出又は注入モールド工程を含むことができる。
【0053】
実施形態では、構造的特徴135は、例えば、パターニング工程及びエッチング工程を含むフォトリソグラフィを用いて、支持ポリマー130をパターニングすることで形成することができる。このエッチング工程には、例えば、ウェットエッチング、酸素エッチング、又はプラズマエッチングが含まれる。
【0054】
好適なインプリンティング工程では、構造的特徴135(表面構造)を形成するために、型(スタンプ)を用いて支持ポリマー層にテクスチャー(表面凹凸)を付けることができる。実施形態では、この型は、支持ポリマー130において形成されるべき構造的特徴135の輪郭に合う対応した構造的特徴を有する。典型的な工程では、構造的特徴を有する型をモールドとして用い、支持ポリマー130に押圧することで構造的特徴135を形成することができる。
【0055】
図3の307では、フッ素ポリマー22、そして任意に、溶媒中のペルフルオロ界面活性剤を含む、分散フッ素ポリマーを準備する。
【0056】
実施形態においては、フッ素ポリマー22は、分散フッ素ポリマーの総重量に対して、約10%〜約90%、又は約10%〜約80%、又は約20%〜約60%の含有量とすることができる。
【0057】
実施形態において、好適なペルフルオロ界面活性剤は、次のような化学式を有する。
【化1】
ここで、m及びnはそれぞれ独立した約1〜約300の整数を表し、pは約1〜約100の整数を表し、fは約1〜約20の整数を表し、iは約1〜約500の整数を表す。実施形態では、他の適切なペルフルオロ界面活性剤も用いることができる。
【0058】
溶媒は、例えば、水、炭化水素系溶媒、アルコール、ケトン、塩素系溶媒、エステル、エーテルなどを用いることができる。適切な炭化水素系溶媒は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、テルピネン、イソパラフィン溶媒、及びそれらの異性体など、少なくとも5個〜約20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素が例示できる。また、例えば、トルエン、キシレン、エチルトルエン、メシチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、エチルベンゼン、及びそれらの異性体及び混合物など、約7個〜約18個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を含むことができる。適切なアルコールとしては、少なくとも6個の炭素原子を持つことができ、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、及びヘキサデカノール、また、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどのジオール、また、ファルネソール、デデカジエノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ヘプタジエノール、テトラデセノール、ヘキサデセノール、フィトール、オレイルアルコール、デデセノール、デセノール、ウンデシレニルアルコール、ノネノール、シトロネロール、オクテノール、及びヘプテノールなどの不飽和二重結合を含むアルコール、また、メチルシクロヘキサノール、メントール、ジメチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキセノール、テルピネオール、ジヒドロカルベオール、イソプレゴール、クレゾール、トリメチルシクロヘキセノールなどの不飽和二重結合を有する又は有さない脂環式アルコールが例示できる。
【0059】
図3の309では、分散フッ素ポリマーを、構造的特徴135を有するパターニングされた支持ポリマー130のテクスチャー表面に適用することができる。分散フッ素ポリマーの適用は、例えば、公知のコーティング又は印刷工程によって実行することができる。典型的なコーティング工程としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングなどが挙げられる。典型的な印刷工程としては、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷などが挙げられる。
【0060】
適用される分散フッ素ポリマーは、例えば、乾燥され、蒸発され、及び/又は熱せられることにより、フッ素ポリマー粒子22が支持ポリマーの構造的特徴135の凸部の表面に(図1A参照)、又は支持ポリマー130のテクスチャー表面全体に(図1B参照)分散する。
【0061】
また、図1A、1Bに示されるような固定部材を、熱によってアニールし、図1Cに示されるような固定部材100Cを形成することもできる。実施形態においては、このアニーリングは、例えば、少なくとも100℃で、又は約150℃〜約400℃の範囲で、又は400℃よりも高温で実施することができる。
【0062】
図4A〜4Cは、図1A、1Bに示す固定部材の他の典型的な製造方法を示す。図4に示された方法は説明の便宜上、図1A、1Bに関連して記載されるが、図4の工程は図1A、1Bに示された構成に限定されるものではない。
【0063】
図4Aに示されるように、型450が使用できる。型450は、適切な構造的特徴455を与えることが可能な材料で構成される。実施形態では、型450は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素シリコン、又はこれらの混合物を含む、硬質の又は弾力性のある材料から形成することができる。型450の構造的特徴455は、図1A、1Bに示されるような最終的な支持ポリマー130において構造的特徴135を形成するための輪郭を有する。
【0064】
形成される構造的特徴135に対応して、型450の構造的特徴455は、正方形、長方形、円、三角形、及び/又は星形から成るグループから選択される断面形状を有する、一又は複数の突出又は窪んだ特徴を含むことができる。また、型の構造的特徴455は、周期的な整列構造又は周期的な階層構造を含むことができる。
【0065】
また、図4Aに示すように、分散フッ素ポリマー140は、構造的特徴455を有する型450に適用することができる。分散フッ素ポリマーの準備工程及び適用工程は、図3のステップ307及び309において記載されたものと同様とすることができる。例えば、フッ素ポリマー粒子を含む分散フッ素ポリマーを、構造的特徴455の表面上に、又は型450の表面全体に適用(例えば、コーティング、印刷、又はインプリント)することができる。
【0066】
図4Bでは、平滑な表面を有する支持ポリマー130が基材110上に設けられ、図4Aに示すような典型的な型によってパターニング又はインプリンティング工程が行われようとしている。
【0067】
次いで、図4Cでは、平滑な表面を有する支持ポリマー130が、型450上に分散したフッ素ポリマーを有する構造400Aを用いてインプリントされ、型450の表面構造が支持ポリマー130の表面に複製され、構造的特徴135が形成される。このとき、フッ素ポリマーを、支持ポリマー130の構造的特徴135の凸部表面(図1A参照)、又は支持ポリマー130のテクスチャー表面全体(図1B参照)に移すことができる。そして、例えば、フッ素ポリマー140を乾燥させて、固定部材100A、100Bが形成される。
【0068】
実施形態においては、図1Cの固定部材100Cは、構造的特徴135と共に、又は支持ポリマー130の表面全体と共にフッ素ポリマーを熱でアニールして形成し、少なくとも一又は複数のアニールされた構造的特徴139を形成することができる。支持ポリマー130のアニーリング工程は、例えば、少なくとも100℃で、又は約150℃〜約400℃の範囲で、又は400℃よりも高温で実施することができる。
【0069】
図5は、実施形態に係る種々の固定部材を形成する他の典型的な方法を示している。本方法500は、説明の便宜上、図1、2に関して記載されるが、方法500は図1、2に示された構成に限定されない。
【0070】
図5の501では、固定部材用の基材、例えば、図1、2の基材110を準備する。
【0071】
図5の503では、表面層が基材に適用される。実施形態では、この表面層は、図1〜4に示すように、支持ポリマー130と、フッ素ポリマー22、140とを含むことができる。
【0072】
ある実施形態では、支持ポリマー及びフッ素ポリマーを含む表面層を、図2A、2Bに示すように、支持ポリマー中にフッ素ポリマーを分散させて又は組み込んで、適用することができる。
【0073】
例えば、表面層は、図3の307で同様に説明されたように、最初に分散フッ素ポリマーを準備して形成することができる。次いで、分散フッ素ポリマーは、支持ポリマーと混合され、コーティング剤を形成することができる。実施形態において、支持ポリマーは、フッ素エラストマーを架橋するための対応する硬化部位モノマーを有するビトン(登録商標)フッ素エラストマーを含むエラストマーとすることができる。
【0074】
次いで、コーティング剤は、基材110に適用され、図2Aに示すような構造的特徴232を有する表面層を形成する。実施形態において、コーティング剤は、公知のコーティング、プリンティング、又はインプリンティング技術を用いて基材110に適用することができる。
【0075】
他の実施形態では、支持ポリマー及びフッ素ポリマーを含む表面層は、図1A〜1Cに示すような少なくとも一部が支持ポリマーを覆うフッ素ポリマーに適用できる。
【0076】
例えば、支持ポリマーは、最初に基材に適用することができる。次いで、フッ素ポリマーを、本明細書において開示されているように、フッ素ポリマー及び/又はペルフルオロ界面活性剤を含む分散フッ素ポリマーを用いて、支持ポリマーへ適用することができる。実施形態においては、支持ポリマー上にフッ素ポリマーを連続的にコーティングすることができる。
【0077】
503でコーティングされた表面層、例えば、支持ポリマーとフッ素ポリマー(図2A、2Bを参照)、及び/又は支持ポリマー上のフッ素ポリマー(図1A〜1Cを参照)を含むコーティング剤は、次に、インプリンティング工程、モールディング工程、又はエッチング工程によってパターニングされる(図5の505)。このパターニング工程は、コーティング剤が適用された後であって、適用されたコーティング剤の乾燥工程(例えば、蒸発、及び/又は熱によるもの)の前に、又は適用されたコーティング剤の乾燥工程の後に実施することができる。
【0078】
パターニング工程に続き、パターン付けされた表面層は、任意に、例えば、約100℃で、又は約150℃〜約400℃の範囲で、又は400℃より高温でアニールされ、図1C及び図2Bの固定部材を形成することができる。
このようにして、図1、2に示されるような基材上の表面層のテクスチャー表面は、少なくともフッ素ポリマーを含む。
【実施例】
【0079】
例1:バイナリ位相表面形態を有するPTFE/ポリイミド系材料の作製
【0080】
ポリイミド材料を4000rpmで30秒間の条件で、シリコン又はガラスの基材上にスピンコートし、平滑な表面を有するポリイミド層を形成した。
【0081】
約1μmの直径を有するPTFE粒子を5重量%、ペルフルオロ界面活性剤(GF−400、0.5重量%)を含むアルコール溶媒中に懸濁させた。この分散溶液を所望の凹凸構造が形成されたPDMSの型の上にスピンコートした。弾力性のあるPDMS型上にPTFEを均一に堆積させた後、マイクロ/ナノインプリンティング工程を実行し、ポリイミド層の表面にPTFE粒子を広く分散させた。以上のように、非破壊インプリンティング工程によってマイクロ/ナノ特徴を形成することができ、且つPTFE粒子をポリイミド層に移すことができる。幾つかの実験では、PTFE型とPTFE基材との接着も、インプリントされたポリイミド層の表面へのPTFE粒子の移送のために制御された。
【0082】
例2:PFA/ポリイミド系材料
【0083】
マイクロ/ナノインプリンティング工程を実行し、例1と同様にして、ポリイミド層の表面にPFA粒子を広く分散させた。次いで、インプリントされ、PFAを有するポリイミド層を約350℃の温度で熱アニールした。
【0084】
マイクロ/ナノインプリンティング工程を実行し、例1と同様にして、インプリントされたポリイミド表面上にPFA繊維(テフロン繊維)を転写した。幾つかの実験では、テフロン繊維は、特定の方向において空間的に整列する。次いで、インプリントされ、PFAを有するポリイミド試料を約350℃の温度で熱処理した。
【0085】
図6は、平滑なポリイミド表面603と、インプリントされてテクスチャーが形成されたポリイミド表面605と、該ポリイミド表面605上に連続的にテフロン繊維を有するテクスチャー表面609との接触角の比較を模式的に示している。接触角の測定は、脱イオン水を用いて行い、幾つかの測定の平均値を取った。
【0086】
図6に示すように、インプリントされたポリイミド表面上にテフロン繊維が分散したテクスチャー表面609は、約115°の接触角を有し、これは、約94°の接触角を持つインプリントされたポリイミド表面605よりも大きい。一方、インプリントされたポリイミド表面605は、接触角が約67°である平滑なポリイミド表面603よりも大きな接触角を有する。水接触角が大きくなればなるほど、表面は疎水性となり、表面エネルギーが小さくなる。このように、表面エネルギーが小さいことは、高い機械的堅牢性、材料がすぐに入手できること、多用途のインプリンティングと印刷方法と相まって、固定の用途において多くの利点をもたらす。
【符号の説明】
【0087】
22 フッ素ポリマー、100A〜100C,200A,200B 固定部材、110 基材、130 支持ポリマー、135 表面の構造的特徴(表面構造)、139 アニールされた表面の構造的特徴(熱処理された表面構造)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6