(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787535
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】改善された劣化挙動を有するニッケル基超合金
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20150910BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20150910BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20150910BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
C22C19/05 C
F01D5/28
F02C7/00 C
F01D25/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-22846(P2011-22846)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2011-162878(P2011-162878A)
(43)【公開日】2011年8月25日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】00142/10
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【復代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド ナズミー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス パウル ゲアデス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス キュンツラー
【審査官】
蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−030529(JP,A)
【文献】
特開昭55−047351(JP,A)
【文献】
特開2004−190139(JP,A)
【文献】
特開2004−332061(JP,A)
【文献】
特表平11−511203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00 〜 19/05
F01D 5/28
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された劣化挙動を有するニッケル基超合金であって、以下の化学的組成(質量%での記載):
7.7〜8.3 Cr
5.0〜5.25 Co
2.0〜2.1 Mo
7.8〜8.3 W
5.8〜6.1 Ta
4.9〜5.1 Al
1.3〜1.4 Ti
0.1〜0.6 Pt
0.1〜0.5 Nb
0.1〜0.15 Si
0.11〜0.15 Hf
200〜750ppm C
50〜400ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を特徴とするニッケル基超合金。
【請求項2】
以下の化学的組成(質量%での記載):
7.7〜8.3 Cr
5.0〜5.25 Co
2.0〜2.1 Mo
7.8〜8.3 W
5.8〜6.1 Ta
4.9〜5.1 Al
1.3〜1.4 Ti
0.1〜0.5 Pt
0.1〜0.2 Nb
0.1〜0.15 Si
0.11〜0.15 Hf
200〜300ppm C
50〜100ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を特徴とする、請求項1に記載のニッケル基超合金。
【請求項3】
以下の化学的組成(質量%での記載):
8.0 Cr
5.0 Co
2.0 Mo
8.0 W
6.0 Ta
5.0 Al
1.4 Ti
0.5 Pt
0.2 Nb
0.1 Si
0.1 Hf
200ppm C
80ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を特徴とする、請求項2に記載のニッケル基超合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料技術の分野に関する。本発明は、ニッケル基超合金、特に単結晶構成部品(SX合金)もしくは方向性凝固組織を有する構成部品(DS合金)、例えば改善された劣化挙動(Degradationsverhalten)に優れたガスタービン用の動翼などの構成部品の製造のためのニッケル基超合金に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基超合金は、公知である。前記合金からなる単結晶構成部品は、高い温度で非常に良好な材料強度を有する。それによって、例えばガスタービンの吸気温度を高めることができ、こうしてガスタービンの効率が高まる。
【0003】
例えばUS4,643,782号、EP0208645号及びUS5,270,123号から知られる単結晶構成部品用のニッケル基超合金は、そのために、固溶強化性の合金元素、例えばRe、W、Mo、Co、Cr並びにγ′相形成性の元素、例えばAl、Ta及びTiを含有する。基礎マトリクス(オーステナイト系γ相)中の高融点合金元素(W、Mo、Re)の含量は、合金の負荷温度が増加するにつれて連続的に増加する。ここで、例えば単結晶のための通常のニッケル基超合金は、6〜8%のWと、6%までのReと、2%までのMoを含有する(質量%での記載)。上述の刊行物に開示された合金は、高いクリープ強さ、良好なLCF(低い応力サイクル数の場合の疲労)特性及びHCF(高い応力サイクル数の場合の疲労)特性並びに高い耐酸化性を有する。
【0004】
これらの公知の合金は、航空機用タービンのために開発されたものであり、従って短時間の使用及び中程度の時間の使用に最適化されている。すなわち、負荷期間は、20000時間までで設計されている。これとは異なり、工業用ガスタービン構成部品は、75000時間までの負荷期間で設計されなければならない。
【0005】
300時間の負荷期間後に、例えばUS4,643,782号に記載の合金CMSX−4は、ガスタービンへの試験的使用の際に1000℃を上回る温度でγ′相の強い粗大化を示し、この粗大化は、不利なことに合金のクリープ速度の上昇を伴なう。
【0006】
また、公知の合金の耐酸化性は、非常に高い温度で改善する必要もある。文献US4,719,080号からは、例えば、Pt、Pd、Ru及びOsの添加が、この文献に記載される単結晶超合金の耐酸化性及び耐腐蝕性の向上に良い影響を及ぼすという情報が得られる。その際、前記の元素の全割合は、0〜10質量%の非常に広い範囲にあるべきである。
【0007】
公知のニッケル基超合金、例えばUS5,435,861号から公知の合金の更なる問題点は、大型の構成部品の場合に、例えば80mmより長い長さを有するガスタービン動翼の場合に、鋳造性が不十分なことにある。ニッケル基超合金からの完璧な比較的大型の方向性凝固された単結晶構成部品の鋳造は、極めて困難である。それというのも、これらの構成部品の殆どは、欠陥、例えば小角粒界、"フレックル(Fleckles)"(すなわち高い含量の共晶を有する同方向に向いた粒子の鎖によって引き起こされる欠陥)、等軸のばらつきの境界(aequiaxiale Streugrenze)、ミクロポロシティ等を有するからである。これらの欠陥は、該構成部品を高い温度で弱化させるので、タービンの望まれる寿命もしくは作動温度は達成されない。しかし、完璧に鋳造された単結晶構成部品は、極めて高価であるので、当該産業界は、寿命もしくは作動温度を損なわずに、可能な場合に多くの欠陥を許容する傾向がある。
【0008】
最も頻度の高い欠陥の1つは、単結晶構成部品の高温特性に対して特に害のある粒界である。小角粒界は、小型の構造部材の場合に、比較的僅かしか生じない一方で、前記粒界は、高い温度で、鋳造性、機械的特性及び酸化挙動に関して、大型のSX構成部材もしくはDS構成部材の場合に高い重要性がある。
【0009】
粒界は、結晶格子の局部的な欠陥秩序(Fehlordnung)が高い領域である。それというのも、この領域内で隣接粒子は境界を接しており、それによって結晶格子間で一定の転位(Desorientierung)が存在するからである。転位が大きくなればなるほど、欠陥秩序はますます大きくなる。すなわち、必要とされる粒界内でのずれの数はますます大きくなり、それによって双方の粒子は適合する。この欠陥秩序は、高い温度の場合には、材料の挙動に直接に関連する。この欠陥秩序は、温度が等擬温度(=0.5×融点K)を超えて上昇する場合に、材料を弱化する。
【0010】
この効果は、GB2234521号Aの記載から公知である。ここで、粒子の転位が6゜を上回ると、慣用のニッケル基単結晶合金は、例えば871℃の試験温度で破壊強度は極端に減少する。それは、方向性凝固組織を有する単結晶構成部品の場合にも確認されたので、一般に、6゜を上回る転位を許容しないという見解がなされた。
【0011】
また、上述のGB2234521号Aから、ニッケル基超合金をホウ素もしくは炭素で富化することによって、方向性凝固に際して、等軸のもしくは角柱状の粒子構造を有する組織が生成することが知られている。炭素及びホウ素は、高い温度で安定な粒界での炭化物及びホウ化物の析出を引き起こすので、炭素及びホウ素は粒界を強化する。更に、前記の元素の存在は、粒界内でかつ粒界に沿って、粒界の弱さの主要な原因である拡散プロセスを減少させる。従って、転位を10゜〜12゜に高めるにも拘わらず、高い温度で材料の良好な性質を達成させることが可能である。しかし、特に、ニッケル基超合金からなる大型の単結晶構成部品の場合には、これらの小角粒界は、特性に不利な影響を及ぼす。
【0012】
EP1359231号B1から、単結晶構成部品の製造用のニッケル基超合金であって、上述の合金と比較して改善された鋳造性と高められた耐酸化性を有し、かつ以下の化学的組成(質量%での記載)
7.7〜8.3 Cr
5.0〜5.25 Co
2.0〜2.1 Mo
7.8〜8.3 W
5.8〜6.1 Ta
4.9〜5.1 Al
1.3〜1.4 Ti
0.11〜0.15 Si
0.11〜0.15 Hf
200〜750ppm C
50〜400ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を特徴とする、ニッケル基超合金が知られている。
【0013】
かかる超合金は、鋳造工程後に熱処理に供される。そこで、第一の固溶化熱処理工程において、鋳造工程の間に不均一に析出されたγ′相は、該組織中で完全にもしくは部分的に溶かされる。第二の熱処理工程においては、この相は再び制御下に析出される。最適な特性を達成するために、この析出熱処理は、微細な一様に分布されたγ′相の結晶粒がγ相(=マトリクス)内に生じるように実施される。
【0014】
長時間の高温負荷(クリープ負荷)下での機械的負荷を作用させた場合に又は材料の塑性変形に引き続き材料の高温負荷が行われた後に、かかる合金の組織中には、γ′結晶粒の方向性粗大化、いわゆるフロート形成(Flossbildung)(ラフト化:rafting)が生じることが確認された。高いγ′含量(すなわち、少なくとも50%のγ′体積割合)で、それは、微細構造の逆転をもたらす。すなわちγ′が、当初のγマトリクスが埋め込まれている連続相となる。かかる構造変化は、超合金の塑性変形によっても形成し、それに引き続き熱処理(高温焼き鈍し)が行われる。
【0015】
金属間化合物のγ′相は周辺脆化(environmental embrittlement)の傾向にあるので、それは、後に、ある一定の負荷条件下で、室温(25℃)で、かかる事前のクリープ負荷に供されていないサンプルと比較して、機械的特性(とりわけ降伏点)の大きな低下を引き起こす。この降伏点の悪化は、特性の"劣化(Degradierung)"という概念で説明される(Pessah−Simonetti、P.Caron及びT.Kahn:Effect of long−term prior aging on tensil behaviour of high−performance single crystal superalloy,Journal de Physique IV,Colloque C7,Volume 3,1993年11月を参照)。
【0016】
しかし、引張試験を室温ではなく、高い試験温度で、例えば950℃で実施する場合に、様々に負荷された材料の間では、降伏点及び延性に関して、まさにこの記載した相違点は全く存在しないか、あるいは殆ど存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US4,643,782号
【特許文献2】EP0208645号
【特許文献3】US5,270,123号
【特許文献4】US4,719,080号
【特許文献5】US5,435,861号
【特許文献6】GB2234521号A
【特許文献7】EP1359231号B1
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Pessah−Simonetti、P.Caron及びT.Kahn:Effect of long−term prior aging on tensil behaviour of high−performance single crystal superalloy,Journal de Physique IV,Colloque C7,Volume 3,1993年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上述の欠点を回避することである。本発明の課題は、前記の種類のニッケル基超合金であって、改善された劣化挙動に優れており、従って例えば高い温度に続き室温で長時間にわたり行われる機械的負荷に引き続き、できる限り高い(残留)強度/硬度が存在するニッケル基超合金を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、前記課題は、本発明による改善された劣化挙動を有するニッケル基超合金が、以下の化学的組成(質量%での記載):
7.7〜8.3 Cr
5.0〜5.25 Co
2.0〜2.1 Mo
7.8〜8.3 W
5.8〜6.1 Ta
4.9〜5.1 Al
1.3〜1.4 Ti
0.1〜0.6 Pt
0.1〜0.5 Nb
0.11〜0.15 Si
0.11〜0.15 Hf
200〜750ppm C
50〜400ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を特徴とすることによって解決される。
【0021】
本発明の利点は、本発明の利点は、この合金がEP1359231号B1から公知の合金の非常に良好な特性(良好な鋳造性、高い温度での耐酸化性、良好なクリープ強度)を有するが、付加的に、事前の高温クリープ負荷後に室温で降伏点の低下を示さない、従って良好な劣化挙動を示すことにある。
【0022】
特定の利点を有するのは、該合金が、以下の組成(質量%での記載):
7.7〜8.3 Cr
5.0〜5.25 Co
2.0〜2.1 Mo
7.8〜8.3 W
5.8〜6.1 Ta
4.9〜5.1 Al
1.3〜1.4 Ti
0.1〜0.5 Pt
0.1〜0.2 Nb
0.11〜0.15 Si
0.11〜0.15Hf
200〜300ppm C
50〜100ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を有する場合である。
【0023】
特に好ましい合金は、以下の化学的組成(質量%での記載):
8 Cr
5 Co
2 Mo
8 W
6 Ta
5 Al
1.4 Ti
0.5 Pt
0.2 Nb
0.1 Si
0.1 Hf
200ppm C
80ppm B
残分はニッケル及び製造で生ずる不純物
を有する。この合金は、大型の単結晶構成部品、例えばガスタービン用の動翼の製造に特に適している。
【0024】
図面には、本発明の実施例が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、それぞれ、比較合金の組織画像であって、a)出発状態のものと、b)冷間圧延とそれに引き続く1050℃/204時間での高温処理後のものを示している。
【
図2】
図2は、それぞれ、本発明による合金の組織画像であって、a)出発状態のものと、b)冷間圧延とそれに引き続く1050℃/204時間での高温処理後のものを示している。
【
図3】
図3は、比較合金VLと本発明による合金Lのそれぞれの硬度と組織状態との関係性を示している。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を実施例及び
図1〜3につき詳細に説明する。
【0027】
第1表に示される化学的組成を有するニッケル基超合金を調査した(質量%での記載)。
【0028】
第1表: 調査された合金の化学組成
【表1】
【0029】
合金Lは、単結晶構成部品用のニッケル基超合金であり、その組成は、本発明の特許請求の範囲内であり、かつ特に好ましい実施形態を表す。比較合金VLは、先行技術(EP1359231号B1)から公知である。該比較合金は、本発明による合金とは、前者がPt及びNbと合金化されていないという点で異なっている。
【0030】
炭素とホウ素は、粒界を、特にニッケル基超合金からなるSXガスタービン動翼もしくはDSガスタービン動翼で<001>方向に生ずる小角粒界も強化する。それというのも、これらの元素は、前記粒界で、高い温度で安定な炭化物及びホウ化物の析出を引き起こすからである。更に、前記の元素の存在は、粒界内でかつ粒界に沿って、粒界の弱さの主要な原因である拡散プロセスを減少させる。それによって、長い単結晶構成部品、例えば約200〜230mmの長さを有するガスタービン動翼の鋳造性はかなり改善される。
【0031】
0.11〜0.15質量%のSi、好ましくは0.1%のSiを、とりわけHfとほぼ同じ規模で組み合わせて添加することによって、今までに知られているニッケル基超合金に対する、高い温度での耐酸化性の実質的な改善が達成される。
【0032】
白金及びニオブは、本発明によれば、制御された少量で(Pt:0.1〜0.6、好ましくは0.5質量%、Nb:0.1〜0.5、好ましくは0.2質量%)、EP1359231号B1から公知の合金(相応のNiの残留割合の低下を伴う)に添加される元素である。これらの2つの元素は、γ′相とγ相の間の格子不整合(Gitterversatz)の大きさに影響し、それはまた、ニッケル基単結晶超合金の高温クリープ負荷後の相の形態学的変化と材料の残留強度に重要な役割を果たす。示される限度でPt及びNbを有するマイクロアロイは、高い温度で、γ′相とγ相との間の格子不整合がほぼゼロであることに導く。それは、γ′相のフロート形成に対してより低い傾向をもたらし、あるいはそれどころか、この傾向の抑制をもたらす。すなわちγ′相は球状に留まる。
【0033】
それは、両方の合金の組織形成の比較をもとに十分に認識できる。
図1aは、比較合金VLの出発状態の組織を示し、
図2aは、本発明による合金Lの出発状態の組織を示す。γ′相は、両方のサンプルでマトリクス(γ相)中に一様に分布しており、ほぼ球状の形態を有する。
【0034】
図1b及び
図2bは、それに対して、比較合金(
図1b)及び本発明による合金(
図2b)についての組織であって、冷間変形(冷間圧延)と、それに引き続く1050℃/204時間というパラメータでの高い温度における時効硬化(Auslagerung)処理後のものを示す。
【0035】
図1bには、非常にはっきりと、比較合金のγ′相のフロート形成が確認できる。それというのも、出発状態に対して、γ′相は、一方で粗大化し、他方で一つの方位方向(Vorzugsrichtung)に延びたからである。
【0036】
それに対して、
図2bは、本発明による合金のγ′相が確かに同様に出発状態に対して粗大化されているが、ここではγ′相のフロート形成は生じないか、あるいはほんの僅かにのみその形成が生じるにすぎないことを示している。
【0037】
僅かなPt及びNbの添加によって引き起こされたこれらの異なる組織形成がどのようにして室温での特性に作用するのかは、
図3で明らかに認識できる。
【0038】
図3において、比較合金VLと本発明による合金L(
図1a)及び
図1b)あるいは
図2a)及び
図2b)に相当する)との、室温でのビッカース硬度とそれぞれの組織状態との関係性がプロットされている。左側には、それぞれ出発状態の硬度HV2が、右側には、材料の劣化条件下での処理(冷間圧延及び1050℃/204時間での焼き鈍し)後の硬度HV2が示されている。
【0039】
両方の場合において、本発明による合金の優位が確認できる。
【0040】
出発状態において、本発明による合金での硬度HV2は、比較合金の場合に比して、約10%だけ良好である。前記の(劣化)処理後に、室温で測定された硬度HV2は、確かに両方の合金において、それぞれの出発状態と比較して、予想通りにより低いが、本発明による合金Lでは、依然として、比較合金VLの場合に比して、5%を超える分だけ高い。