(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
工業炉では、バーナから生じる燃焼排ガスはレキュペレータ、リジェネレイティブバーナといった熱交換装置においてその熱を回収し、燃焼に必要な空気を予熱することで熱効率を高め、省エネルギーを図ってきた(例えば、レキュペレータについて特許文献1参照、リジェネレイティブバーナについて特許文献2参照)。
【0003】
しかし、レキュペレータの場合、熱交換後の排ガス温度は400℃程度で予熱空気温度は500℃程度であり、充分な熱回収が行われているわけではなく、更なる熱回収が望まれている。
【0004】
また、リジェネレイティブバーナでは、熱交換後の排ガス温度は200℃程度で予熱空気の温度は1000℃程度となり、レキュペレータに比べて熱回収は改善されているが、200℃程度の排ガスからも熱回収ができればさらなる省エネルギーが可能となる。また、現状では熱交換に必要な排ガス量は全体の約80%であり、残りの約20%は炉内被加熱物との熱交換後に800℃程度で廃棄されており、有効利用されていない。
【0005】
一方、吸熱や発熱反応を伴う化学反応を用いて蓄熱、吸熱を行うケミカルヒートポンプが知られている(例えば、特許文献3参照)。このケミカルヒートポンプは、その名の通り、入力以上の温度を出力させることができる。例えば、酸化カルシウム、水、及び水酸化カルシウムを用いた以下の反応式で示す系が挙げられる。
【0006】
【数1】
【0007】
この系では、Ca(OH)
2に熱を加えることで反応が左に進み、CaOとH
2O(水蒸気)が得られ、水蒸気を凝縮させて水として分離することで逆反応の進行を抑制できる。左向きの反応が終了後、得られたCaOに分離凝縮させていた水を蒸発させて水蒸気として供給することで反応が右に進み、熱量Q
Hを得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、バーナ装置における燃焼排ガスからの熱回収と燃焼空気の加熱にケミカルヒートポンプを利用することで、高効率での燃焼空気の加熱を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、バーナと、前記バーナの燃焼排ガスから回収した熱で前記バーナに供給される燃焼空気を予熱する主熱交換部と、前記主熱交換部に供給される前又は後の前記燃焼排ガスから熱を吸収し、吸収した熱を前記バーナに供給される前の前記燃焼空気に放出するケミカルヒートポンプとを備え
、前記ケミカルヒートポンプは、化学蓄熱材が収容され、この化学蓄熱材と前記燃焼排ガス及び前記燃焼空気との間での熱交換のための熱交換器が設けられた3個以上の反応部と、前記反応部において前記化学蓄熱材が前記燃焼排ガスから吸熱する際の生成物質を前記反応部から取り出して凝縮させ、前記反応部において前記化学蓄熱材が前記燃焼空気に放熱する際に前記生成物質を蒸発させて前記反応部に供給する凝縮蒸発部とを備え、個々の前記反応部は、前記化学蓄熱材が前記燃焼排ガスから吸熱する蓄熱モード、前記化学蓄熱材と前記燃焼排ガス及び前記燃焼空気との間での熱交換を行わない待機モード、及び前記化学蓄熱材が前記燃焼空気に放熱する放熱モードを繰り返し、前記3個以上の反応部間で、前記蓄熱モード、前記待機モード、及び放熱モードを繰り返す周期が互いにずれており、個々の前記反応部の前記放熱モードの終了タイミングより前に、次の前記反応部における前記放熱モードの開始タイミングが到来する、バーナ装置を提供する。
【0011】
本発明のバーナ装置は、主熱交換部に加えてケミカルヒートポンプを備えることで高効率で燃焼空気を加熱できる。特に、ケミカルヒートポンプを備えることで燃焼空気を燃焼排ガスの温度よりも高い温度に加熱できる。また、ケミカルヒートポンプを備えることで、前記主熱交換部に供給された後の燃焼排ガス、つまり低温熱源からの熱回収を行って燃焼空気の加熱に利用できる。
【0012】
例えば、前記主熱交換部はレキュペレータである。レキュペレータにケミカルヒートポンプを組み合わせることで、燃焼空気の高温化により燃料消費量を減少できる。また、燃焼排ガスが800℃以下であっても、燃焼空気を800℃以上に予熱できるので、省エネに適した高温空気燃焼を実現できる。
【0013】
あるいは、前記主熱交換部はリジェネレイティブバーナの蓄熱体である。
【0014】
リジェネレイティブバーナにケミカルヒートポンプを組み合わせて燃焼空気の加熱効率を向上することで、特にバーナ装置を新設する場合、蓄熱体を小型化することでき、排ガス吸引率(燃焼排ガス全体に対する蓄熱体の加熱に使用される燃焼排ガスの割合)も低減できる。その結果、排ガス吸引ファンを低容量化できる。また、蓄熱体の加熱に使用されることなく排出される高温排ガス量が増加し、例えば廃熱回収ボイラによる熱回収量を増やすことができる。
【0015】
バーナ装置が新設と既存のいずれの場合でも、リジェネレイティブバーナにケミカルヒートポンプを組み合わせて燃焼空気の加熱効率を向上することで、バーナの切換え時間が延びる。その結果、例えば切換えバルブのようなバーナの切換えのための機器を長寿命化できる。バーナの切換え時間が延びることで、バーナの切換え時に炉内に生じる温度や圧力の変動を抑制でき、炉内均一性も向上する。
【0016】
既存のバーナ装置の場合も、リジェネレイティブバーナにケミカルヒートポンプを組み合わせて燃焼空気の加熱効率を向上することで、燃焼空気の加熱効率の向上により、排ガス吸引率を低減できるので、排ガス吸引ファンの低容量化と高温排ガス量の増加を図ることができる。
【0017】
具体的には、前記ケミカルヒートポンプは、化学蓄熱材が収容され、この化学蓄熱材と前記燃焼排ガス及び前記燃焼空気との間での熱交換のための熱交換器が設けられた反応部と、前記反応部において前記化学蓄熱材が前記燃焼排ガスから吸熱する際の生成物質を前記反応部から取り出して凝縮させ、前記反応部において前記化学蓄熱材が前記燃焼空気に放熱する際に前記生成物質を蒸発させて前記反応部に供給する凝縮蒸発部とを備える。
【0018】
前記ケミカルヒートポンプは、3個の前記反応部を備え、個々の前記反応部は、前記化学蓄熱材が前記燃焼排ガスから吸熱する蓄熱モード、前記化学蓄熱材と前記燃焼排ガス及び前記燃焼空気との間での熱交換を行わない待機モード、及び前記化学蓄熱材が前記燃焼空気に放熱する放熱モードを繰り返し、前記3個の反応部間で、前記蓄熱モード、前記待機モード、及び放熱モードを繰り返す周期が互いにずれている。
【0019】
この構成により、ケミカルヒートポンプによる燃焼空気の加熱効率の時間的な変動を抑制し、安定して燃焼空気を加熱できる。
【0020】
個々の前記反応部の前記放熱モードの終了タイミングより前に、次の前記反応部における前記放熱モードの開始タイミングが到来する。このようにすると、3個の反応部で順に実行される放熱モード間に時間的なオーバーラップを設けることで、ケミカルヒートポンプによる燃焼空気の加熱効率の時間的な変動をさらに効果的に抑制できる。ここで便宜上、反応部を3個としたが、同じ動作が可能であれば3個以上の反応部を設けてもよいことは言うまでもない。
【0021】
本発明の第2の態様は、前記のバーナ装置を備える工業炉を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のバーナ装置は、燃焼排ガスからの熱の回収と回収した熱による燃焼空気の予熱のために、主熱交換部(レキュペレータやリジェネレイティブバーナ)に加えてケミカルヒートポンプを備えるので、主熱交換部に供給後の燃焼排ガス(つまり、低温熱源)からも熱回収して高効率で燃焼空気を加熱でき、燃焼空気を燃焼排ガスの温度以上の高温に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態のバーナ装置を備える炉を示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施形態のバーナ装置を示すブロック図。
【
図3】1つの反応器のみに着目した場合の構造を示すブロック図。
【
図4A】反応器の運転モードを説明するための概念図。
【
図4B】反応器の運転モードの代案を説明するための概念図。
【
図5】反応器の運転モードの切り換えを説明するための模式的なタイムチャート。
【
図6】各運転モードにおける弁の開閉状態を説明するための模式的なタイムチャート。
【
図7A】本発明の第1実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図7B】本発明の第1実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図7C】本発明の第1実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図8】本発明の第2実施形態のバーナ装置を備える炉を示す模式図。
【
図9】本発明の第2実施形態のバーナ装置を示すブロック図。
【
図10A】本発明の第2実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図10B】本発明の第2実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図10C】本発明の第2実施形態のバーナ装置の運転状態を示すブロック図。
【
図11】本発明の変形例のバーナ装置を示すブロック図。
【
図12】本発明の他の変形例のバーナ装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るバーナ装置1を備える工業炉2を概略的に示す。バーナ装置1は、バーナ3、レキュペレータ(主熱交換部)4、及びケミカルヒートポンプ5を備える。工業炉2の炉壁に取り付けられたバーナ3は、空気ライン7を介して燃焼空気ファン8から送り込まれる燃焼空気と共に燃料を炉内に噴出し、炉内で燃焼させる。燃焼排ガスを炉外に排出するための排ガスライン9にレキュペレータ4が設けられている。このレキュペレータ4において、排ガスライン9を通って排出される燃焼排ガスと空気ライン7を通ってバーナ3に送り込まれる燃焼空気との間で熱交換が行われ、燃焼空気が加熱される(一次熱交換)。空気ライン7はケミカルヒートポンプ5を通過している。レキュペレータ4において燃焼排ガスと熱交換した燃焼空気は、ケミカルヒートポンプ5において後述する化学蓄熱材14と熱交換を行ってさらに加熱される(二次熱交換)。
【0026】
図2及び
図3を参照すると、ケミカルヒートポンプ5は、3個の反応器(反応部)A,B,C、凝縮器11、冷熱源12、及び蒸発器13を備える。
【0027】
個々の反応器A〜Cには、化学蓄熱材14として水酸化カルシウムが収容されている。また、個々の反応器A〜C内には第1熱交換器15が配置されている。
【0028】
前述の空気ライン7は、上流側空気ライン7aと下流側空気ライン7bとを備える。上流側空気ライン7aは、上流側が燃焼空気ファン8に接続され、下流側が空気入口バルブ16aを介して個々の反応器A〜Cの第1熱交換器15の入口に接続されている。一方、下流側空気ライン7bは、上流側が空気出口バルブ16bを介して個々の反応器A〜Cの第1熱交換器15の出口に接続され、下流側がバーナ3に接続されている。
【0029】
排ガスライン9においては、レキュペレータ4よりも下流側で排ガスライン9から分岐し、ケミカルヒートポンプ5を経て再び排ガスライン9に合流する迂回ライン17が設けられている。この迂回ライン17は、上流側迂回ライン17aと下流側迂回ライン17bとを備える。上流側迂回ライン17aは、上流側が排ガスライン9に接続され、下流側が排ガス入口バルブ18aを介して個々の反応器A〜Cの第1熱交換器15の入口に接続されている。一方、下流側迂回ライン17bは、上流側が排ガス出口バルブ18bを介して個々の反応器A〜Cの第1熱交換器15の出口に接続され、下流側が排ガスライン9に接続されている。下流側迂回ライン17bには、蒸発器13の第2熱交換器19が介装されている。
【0030】
反応器A〜Cと凝縮器11を接続する蒸気取出ライン21が設けられている。この蒸気取出ライン21は、上流側が蒸気出口バルブ22bを介して個々の反応器A〜Cに接続され、下流側が凝縮器11に接続されている。
【0031】
反応器A〜Cと蒸発器13を接続する蒸気供給ライン23が設けられている。この蒸気供給ライン23は、上流側が蒸発器13に接続され、下流側が蒸気入口バルブ22aを介して個々の反応容器A〜Cに接続されている。
【0032】
凝縮器11と蒸発器13は、常開の仕切バルブ24が介設された凝縮水供給ライン25で接続されている。
【0033】
コントローラ27は、バーナ3、燃焼空気ファン8、及び図示しない燃料供給装置による炉内での燃焼を制御すると共に、ケミカルヒートポンプ5をバルブ16a,16b,18a,18b,22a,22b,24の開閉により制御する。
【0034】
図4Aに概念的に示すように、本実施形態では、ケミカルヒートポンプ5が備える3個の反応器A〜Cはそれぞれ、蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードをこの順で繰り返す。また、
図5に概念的に示すように、3個の反応器A〜C間で蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードを繰り返す周期が互いにずれている。まず、反応器Aが蓄熱モードのとき、反応器Bは放熱モードで反応器Cは待機モードである。また、反応器Aが待機モードのとき、反応器Bは蓄熱モードで反応器Cは放熱モードである。さらに、反応器Aが放熱モードのとき、反応器Bは待機モードで反応器Cは蓄熱モードである。
図6に示すように、個々の反応器A〜Cにおける蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードは、空気入口バルブ16a、空気出口バルブ16b、排ガス入口バルブ18a、排ガス出口バルブ18b、蒸気入口バルブ22a、及び蒸気出口バルブ22bの開閉をコントローラ27が制御することで実現される。なお、
図4Bに概念的に示すように、個々の反応器A〜Cが本実施形態とは逆の順序、すなわち、蓄熱モード、放熱モード、及び待機モードの順でモードを繰り返してもよい。
【0035】
以下、主として反応器Aに着目して蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードについて具体的に説明する。なお、
図7Aから
図7Cにおいて、開弁しているバルブは黒塗りで示し、閉弁しているバルブは白抜きで示す。
【0036】
まず、蓄熱モードについて説明する。蓄熱モードでは、反応器A〜Cの化学蓄熱材14が燃焼排ガスから熱を吸収して蓄積する。
図7Aに示すように反応器Aが蓄熱モードのとき、反応器Aの空気入口バルブ16aと空気出口バルブ16bは閉弁し、排ガス入口バルブ18aと排ガス出口バルブ18bは開弁している。また、反応器Aが蓄熱モードのとき、反応器Aの蒸気入口バルブ22aは閉弁し、蒸気出口バルブ22bは開弁している。
【0037】
反応器Aが蓄熱モードのとき、レキュペレータ4を通過後の燃焼排ガスの一部が排ガスライン9から、上流側迂回ライン17a及び開弁している排ガス入口バルブ18aを介して反応器Aの第1熱交換器15の入口に供給され、第1熱交換器15を通過する。さらに、燃焼排ガスは反応器Aの第1熱交換器15の出口から開弁している排ガス出口バルブ18bを介して下流側迂回ライン17bに流入し、蒸発器13の第2熱交換器19を通って排ガスライン9に戻る。
【0038】
蓄熱モードの反応器Aでは第1熱交換器15において燃焼排ガスの熱(熱量Q
H)が以下の式(1)における左向きの化学反応によって化学蓄熱材14に吸収される。つまり、水酸化カルシウムに燃焼排ガスの熱Q
Hが加えられることで吸熱反応が起こり、水酸化カルシウムが酸化カルシウムとなると共に水蒸気が生成される。
【0040】
吸熱反応によって反応器A内で生成された水蒸気は、開弁している蒸気出口バルブ22b及び蒸気取出ライン21を通って凝縮器11に供給される。凝縮器11内では、冷熱源12(例えば冷却水)との熱交換により水蒸気が凝縮して水となり凝縮熱Q
Lを放出する。凝縮器11の水は凝縮水供給ライン25及び開弁している仕切バルブ24を介して蒸発器13に供給される。
【0041】
前述のように、反応器Aの第1熱交換器15から下側迂回ライン17bに流入した燃焼排ガスは排ガスライン9に戻る前に蒸発器13の第2熱交換器19を通る。第2熱交換器19を通過する燃焼排ガスと、蒸発器13内の水(凝縮器11で凝縮した水)との間で熱交換が行われる。この熱交換により、蒸発器13内の水は燃焼排ガスから蒸発熱Q
Lを吸収して蒸発して水蒸気となる。蒸発器13で生成された水蒸気は、反応器Aが蓄熱モードであるときに放熱モードである反応器Bへ蒸気供給ライン23を介して供給される。
【0042】
次に、待機モードについて説明する。待機モードでは、反応器A〜Cの化学蓄熱材14は燃焼排ガス及び燃焼空気のいずれとも熱交換を行わない。
図7Bに示すように反応器Aが待機モードのとき、空気入口バルブ16a、空気出口バルブ16b、排ガス入口バルブ18a、排ガス出口バルブ18b、蒸気入口バルブ22a、及び蒸気出口バルブ22bはいずれも閉弁されている。つまり、待機モードにある反応器Aは、バーナ3、空気ライン7、排ガスライン9、凝縮器11、及び蒸発器13のいずれからも遮断されている。
【0043】
次に、放熱モードについて説明する。放熱モードでは、反応器A〜Cの化学蓄熱材14は蓄熱モードにおいて蓄積した熱を放出して燃焼空気を加熱する。
図7Cに示すように反応器Aが放熱モードのとき、反応器Aの空気入口バルブ16aと空気出口バルブ16bは開弁し、排ガス入口バルブ18aと排ガス出口バルブ18bは閉弁している。また、反応器Aが放熱モードのとき、反応器Aの蒸気入口バルブ22aは開弁し、蒸気出口バルブ22bは閉弁している。
【0044】
反応器Aが放熱モードのとき、蒸発器13で生成された水蒸気(蓄熱モードである反応器Cから第2熱交換器19に供給される燃焼排ガスとの熱交換により生成される。)が、蒸気供給ライン23及び開弁している蒸気入口バルブ22aを介して、反応容器A内に供給される。水蒸気(H
2O)が供給された反応器A内では、前述の式(1)における右向きの化学反応によって化学蓄熱材14が前回の蓄熱モードで蓄えた熱Q
Hを放出する。つまり、酸化カルシウムに水が加えられることで発熱反応が起こり、水酸化カルシウムの生成と共に熱Q
Hが発生する。
【0045】
反応器Aが放熱モードのとき、レキュペレータ4を通過後の燃焼空気は、上流側空気ライン7a及び開弁している空気入口バルブ16aを介して反応器Aの第1熱交換器15の入口に供給され、第1熱交換器15を通過する。前述のように反応器A内では化学蓄熱材14が熱Q
Hを放出しているので、第1熱交換器15を通過する燃焼空気は化学蓄熱材14との熱交換により加熱される。
【0046】
本実施形態のバーナ装置1は、特に以下に列挙する特徴がある。
【0047】
レキュペレータ4にケミカルヒートポンプ5を組み合わせることで、高効率で燃焼空気を加熱できる。高効率で加熱することで燃焼空気を高温化でき、燃料消費量を減少できる。また、ケミカルヒートポンプ5を備えることで燃焼空気を燃焼排ガスの温度よりも高い温度に加熱できる。例えば、燃焼排ガスが800℃以下であっても、燃焼空気を800℃以上に予熱でき、省エネに適した高温空気燃焼を実現できる。また、ケミカルヒートポンプ5を備えることで、レキュペレータ4に供給された後の燃焼排ガス、つまり低温熱源からの熱回収を行って燃焼空気の加熱に利用できる。ただし、燃焼排ガスをレキュペレータ4通過する前にケミカルヒートポンプ5の反応器A〜Cのうち蓄熱モードのものに供給し、その後にレキュペレータ4に供給してもよい。
【0048】
図5に示すように、3個の反応器A〜Cが蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードを順に繰り返し、かつ反応器A〜C間でこれらのモードを繰り返す周期が互いにずれている。そのため、3個の反応器A〜Cのうちのいずれかが常に放熱モードにあり、燃焼空気を加熱する。そのため、ケミカルヒートポンプ5による燃焼空気の加熱効率の時間的な変動を抑制し、安定して燃焼空気を加熱できる。
【0049】
なお、
図5において符号tで示すように、反応器A〜Cのうちのいずれかの放熱モードの終了タイミングTeよりも前に、反応器A〜Cのうちの次に放熱モードとなるもの(例えば、反応器Aが放熱モードである場合、その次に放熱モードとなるのは反応器Bである。)の、放熱モードの開始タイミングTsが到来することが好ましい。このように、3個の反応器A〜Cで順に実行される放熱モード間に時間的なオーバーラップtを設けることで、反応器A〜Cのうちの一つ(例えば反応器B)が放熱モードを開始してから充分な発熱反応が得られるまでの間の発熱量不足を反応器A〜Cのうちのそれまで放熱モードであったもの(例えば反応器A)が発熱量不足を補うので、ケミカルヒートポンプ5による燃焼空気の加熱効率の時間的な変動を、さらに効果的に抑制できる。なお、本実施形態では蓄熱モード後に待機モードとしているが、前述した
図4Bのように放熱モード後に待機モードとする場合も、同様の時間的なオーバーラップを設けることで燃焼空気の加熱効率の時間的な変動を抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、
図8から
図10Cを参照して本発明の第2実施形態に係るバーナ装置1を備える工業炉2を説明する。これらの図において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0051】
本実施形態におけるバーナ装置1はリジェネレイティブバーナであり、対をなす2個のバーナ3A,3Bを備える。個々のバーナ3A,3B毎に、蓄熱体31A,31Bが収容された蓄熱室32A,32Bが設けられている。
図8を参照すると、燃焼空気ファン8とバーナ3A,3Bまでの空気ライン7の一部である下流側空気ライン7bは、下流側が給気切換バルブ33A,33Bを介して個々の蓄熱室32A,32Bに接続されている。また、
図8を参照すると、排ガスライン9のうち上流側排ガスライン9aは、上流側が排気切換バルブ34A,34Bを介して個々の蓄熱室32A,32Bに接続されている。さらに、排ガスライン9のうち下流側排ガスライン9bは、下流側が排ガス吸引ファン35に接続されている。
図8にのみ示すように、排ガスライン9にはケミカルヒートポンプ5を通過する排ガス量を調整するための調整弁41が設けられている。
【0052】
コントローラ27は、給気切換バルブ33A,33Bと排気切換34A,34Bの開閉を制御し、一定時間毎に2つのバーナ3A,3Bを燃焼側と排気側に切り変える。例えば、給気切換バルブ33Aを開弁する一方、吸気側切換バルブ33Bを閉弁し、かつ排気切換バルブ34Aを閉弁して排気側切換バルブ34Bを開弁する(第1の状態)。この第1の状態では、燃焼空気ファン8から供給される燃焼空気がケミカルヒートポンプ5と蓄熱体31Aで予熱されてバーナ3Aで燃料と共に噴出され、炉内で燃料を燃焼させる。また、第1の状態では、炉内の燃焼排ガスは排ガス吸引ファン35の吸引により蓄熱室32B内の蓄熱体31Bを通過後に排気され、その際に熱交換して蓄熱体31Bを加熱する。つまり、第1の状態では、バーナ3Aが燃焼側でバーナ3Bが排気側となり、排気側の蓄熱体31Bが加熱される。給気切換バルブ33A,33Bと排気切換バルブ34A,34Bの開閉状態が第1の状態とは逆(第2の状態)となると、バーナ3Bが燃焼側でバーナ3Aが排気側となり、排気側の蓄熱体31Aが加熱される。炉内で発生した燃焼排ガスのすべてが排ガス吸引ファン35の吸引により排ガスライン9を通って排気されるのではなく、一部は主排ガスライン36を介して排出される。例えば、一方のバーナ3Aによる燃焼中、燃焼空気ファン8から送り込まれる空気は、まずケミカルヒートポンプ5において後述する化学蓄熱材14と熱交換(一次熱交換)を行って加熱され、その後、バーナ3A側の蓄熱室32Aの蓄熱体31A(他方のバーナ3Bによる燃焼中に加熱済み)と熱交換してさらに加熱される。
【0053】
ケミカルヒートポンプ5の構成は第1実施形態と同様である。
図9をさらに参照すると、ケミカルヒートポンプ5が備える3個の反応器A〜C(硫酸カルシウム等の化学蓄熱材14を収容している)の第1熱交換器15の入口は、蓄熱体31A,31Bよりも下流側の排ガスライン9から分岐した上流側迂回ライン17aと排ガス入口バルブ18aを介して接続され、一方、第1熱交換器15の出口は排ガス出口バルブ18bを介して下流側迂回ライン17b(排ガスライン9に合流する)に接続されている。また、反応器A〜Cの第1熱交換器15の入口は燃焼空気ファン8に接続された上流側空気ライン7aと空気入口バルブ16aを介して接続され、一方、第1熱交換器15の出口は空気出口バルブ16bを介して下流側空気ライン7bに接続されている。さらに、反応器A〜Cは、蒸気出口バルブ22bを介設した蒸気取出ライン21により凝縮器11に接続され、蒸気入口バルブ22aを介設した蒸気供給ライン23により蒸発器13に接続されている。凝縮器11と蒸発器13は仕切バルブ24を介設した凝縮水供給ライン25で接続されている。
【0054】
第1実施形態と同様に、
図10A〜
図10Cに示すように、空気入口バルブ16a、空気出口バルブ16b、排ガス入口バルブ18a、排ガス出口バルブ18b、及び蒸気入口バルブ22a、蒸気出口バルブ22bの開閉を制御することで、3個の反応器A〜Cが蓄熱モード、待機モード、及び放熱モードをこの順で繰り返し、かつ反応器A〜C間でモードを繰り返す周期が互いにずれている。
【0055】
本実施形態のバーナ装置1は、特に以下に列挙する特徴がある。
【0056】
リジェネレイティブバーナ(蓄熱体31A,31B)にケミカルヒートポンプ5を組み合わせることで、高効率に燃焼空気を加熱できる。例えば、蓄熱体31A,31Bで熱交換後の200℃程度の燃焼排ガスからの蓄熱と、それによる燃焼空気の加熱が可能である。特にバーナ装置1を新設する場合、ケミカルヒートポンプ5を利用して高効率で燃焼空気を加熱することで、蓄熱体31A,31Bを小型化することでき、排ガス吸引率も低減できる。ここで、排ガス吸引率は排ガスライン9及び主排ガスライン36を通って排出される燃焼排ガス全体に対する蓄熱体31A,31Bの加熱に使用される燃焼排ガス(排ガスライン9を通って排出される燃焼排ガス)の割合である。排ガス吸引率の低減により、排ガス吸引ファン35の低容量化できる。また、蓄熱体31A,31Bの加熱に使用されることなく主排ガスライン36から排出される高温排ガス量が増加し、例えば廃熱回収ボイラによる熱回収量を増やすことができる。
【0057】
バーナ装置1が新設と既存のいずれの場合でも、リジェネレイティブバーナにケミカルヒートポンプ5を組み合わせて燃焼空気の加熱効率を向上することで、バーナ3A,3Bの切換え時間が延びる。その結果、例えば給気切換バルブ33A,33B、排気切換バルブ34A,34Bのようなバーナ3A,3Bの切換えのための機器を長寿命化できる。バーナの切換え時間が延びることで、また、バーナ3A,3Bの切換え時に炉内に生じる温度や圧力の変動を抑制でき、炉内均一性も向上する。
【0058】
既存のバーナ装置1の場合も、リジェネレイティブバーナにケミカルヒートポンプ5を組み合わせて燃焼空気の加熱効率を向上することで、排ガス吸引率を低減できるので、排ガス吸引ファン35の低容量化と高温排ガス量の増加を図ることができる。
【0059】
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
本発明は実施形態に実施形態に限定されず、以下に列挙するように種々の変形が可能である。
【0061】
図11に示すように、第1実施形態においてケミカルヒートポンプ5が2個の反応器A,Bを備える構成も可能である。同様に、
図12に示すように、第2実施形態においてケミカルヒートポンプ5が2個の反応器A,Bを備える構成も可能である。これの場合、個々の反応器A,Bは蓄熱モードと放熱モードを繰り返す。また、2個の反応器A,Bのうち一方が蓄熱モードである間は、他方が放熱モードとなる。
【0062】
ケミカルヒートポンプ5の化学蓄熱材は実施形態で例示した水酸化カルシウムに限定されない。化学蓄熱材として採用する化学物質の特性により適した温度域があり、物質の選定により幅広い入力温度に対応できる。
【0063】
空気ライン7、排ガスライン9等は必ずしも管路として構成される必要はなく、その一部又は全部が例えば炉壁等に穿設されたガス流路により構成されていてもよい。