(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消毒装置を流れる被処理水の水量(単位時間当たりの水量)は、排水処理装置の使用状況に応じて、大きく変化し得る。消毒装置には、水量の多い少ないによらずに消毒を適切に行うことが要求される。ところが、種々に変化し得る水量に適応する消毒装置において、不具合が生じる可能性があった。例えば、水量が少ない場合にも消毒を適切に行うために、消毒剤が溶けやすい構成が採用され得る。この場合、消毒剤が過剰に溶けてしまい、消毒剤の消費が速く進んでしまう可能性があった。
【0005】
本発明の主な利点は、消毒装置の不具合が生じる可能性を低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態]
排水処理装置用の消毒装置であって、
内底面を有する被処理水の流路であって、前記内底面の一部が、消毒剤を配置するための領域である消毒剤領域を形成する、消毒流路と、
前記消毒流路の前記内底面に設けられた溝であって、一部が前記消毒剤領域内に設けられた溝と、
前記溝に向かって被処理水を導入する導入部と、
前記溝から溢れて前記消毒流路を流れる被処理水を前記消毒流路から流出させる流出部と、
前記消毒流路における前記溝と前記流出部との間に設けられた堰と、
前記堰の前記溝側から、前記堰を通り抜けて延びて、前記流出部に至る流路である移送路と、
を備え、
前記堰は、前記移送路が通り抜けるための隙間を有し、
前記消毒流路は、
前記堰の上流側に配置された板である第1底板と、
前記堰の下流側であって前記第1底板よりも高い位置に配置された板である第2底板と、
前記第1底板と前記第2底板とを接続することによって前記堰を形成する板である堰板と、
を有し、
前記第1底板は、前記消毒流路の前記内底面のうちの、前記消毒剤領域内に設けられた部分を含む一部分を形成し、
前記流出部は、前記第2底板に設けられ、
前記移送路は、前記第1底板によって形成される内底面である第1内底面から、前記堰板の前記隙間を通り抜けて延びて、前記流出部に接続され、
前記消毒流路内の水位が前記堰よりも低い場合には、前記被処理水は、前記第1底板上を流れ、
前記消毒流路内の水位が前記堰よりも高い場合には、前記被処理水は、前記第1底板上と前記第2底板上とを流れる、
消毒装置。
【0007】
[適用例1]
排水処理装置用の消毒装置であって、
内底面を有する被処理水の流路であって、前記内底面の一部が、消毒剤を配置するための領域である消毒剤領域を形成する、消毒流路と、
前記消毒流路の前記内底面に設けられた溝であって、一部が前記消毒剤領域内に設けられた溝と、
前記溝に向かって被処理水を導入する導入部と、
前記溝から溢れて前記消毒流路を流れる被処理水を前記消毒流路から流出させる流出部と、
を備える、消毒装置。
【0008】
この構成によれば、導入部から溝に向かって被処理水が導入される。溝が被処理水で満たされた後に、溝から被処理水が溢れる。溝から溢れた被処理水は、消毒流路を流れ、流出部から流出する。ここで、溝の一部は、消毒剤を配置するための消毒剤領域内に設けられている。従って、消毒装置に流入する被処理水の量(単位時間当たりの量)が少ない場合であっても、溝に導入された被処理水が溝から溢れることによって、適切に、被処理水を消毒剤に接触させることができる。また、消毒装置への被処理水の流入が無い状態においては、溝から溢れて消毒流路を流れる被処理水(すなわち、消毒剤と接触する被処理水)が流出部から流出するので、消毒装置への被処理水の流入が無い状態であるにも拘わらずに被処理水が消毒剤と接触し続ける可能性(すなわち、消毒剤が溶け続ける可能性)を低減できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の消毒装置であって、さらに、
前記消毒流路における前記溝と前記流出部との間に設けられた堰と、
前記堰の前記溝側から、前記堰を通り抜けて延びて、前記流出部に至る流路である移送路と、
を含む、消毒装置。
【0010】
この構成によれば、溝から溢れた被処理水が流出部に流れる際の、堰(移送路)を通り抜ける被処理水の流量(単位時間当たりの量)が、堰によって制限される。従って、消毒装置に流入する被処理水の量が増えた場合に、堰の上流側(溝側)の水位が上昇する。この結果、水面下に沈む消毒剤の量が増大するので、流入水量が増えた場合に、被処理水に溶ける消毒剤の量が不足する可能性を低減できる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の消毒装置であって、
前記流出部は、
鉛直方向に延びる流出管と、
前記流出管の上端の開口であって、前記消毒流路を流れる被処理水を受け入れる開口である流出開口と、
を有する、消毒装置。
【0012】
この構成によれば、流出開口から流出管内を被処理水が鉛直下方向に流れることによって、消毒装置から被処理水が流出する。従って、水平に延びる流出管の一端が流出開口を形成する場合と比べて、流出開口における水位が低くても、被処理水が流出管の全体を流れることができる(満管とも呼ばれる)。この結果、流出管を水平に延ばす場合と比べて、流出管の径が小さくても、多量の水を排出することができる。すなわち、消毒装置の小型化が可能である。
【0013】
[適用例4]
適用例3に記載の消毒装置であって、
前記消毒流路は、
前記堰の上流側に配置された板である第1底板と、
前記堰の下流側であって前記第1底板よりも高い位置に配置された板である第2底板と、
前記第1底板と前記第2底板とを接続することによって前記堰を形成する板である堰板と、
を有し、
前記第1底板は、前記消毒流路の前記内底面のうちの、前記消毒剤領域内に設けられた部分を含む一部分を形成し、
前記溝は、板状の部材を用いて形成され、
前記第2底板には、前記流出管が固定され、
前記第2底板は、前記流出開口の一部である水平開口部を有し、
前記流出管は、前記流出管の側面のうちの前記堰側に設けられた開口部である側面開口部を有し、
前記移送路は、板状の部材を用いて形成されるとともに、前記第1底板によって形成される内底面である第1内底面から、前記堰板を通り抜けて延びて、前記流出管の前記側面開口部に接続され、
前記流出開口は、前記第2底板に形成された前記水平開口部と、前記流出管に形成された前記側面開口部とを、含む、
消毒装置。
【0014】
この構成によれば、第1底板と第2底板とを接続する板(堰板)によって堰が形成されるので、凸状の部材を用いずに堰を形成することができる。さらに、溝と移送路とが板状の部材を用いて形成され、第2底板には流出管が固定される。これらの結果、板を接続した簡単な構成によって、消毒装置を構成することができる。
【0015】
[適用例5]
排水処理装置であって、
排水を処理する排水処理部と、
前記排水処理部から流出した被処理水を消毒するための消毒部と、
を備え、
前記消毒部は、
内底面を有する被処理水の流路であって、前記内底面の一部が、消毒剤を配置するための領域である消毒剤領域を形成する、消毒流路と、
前記消毒流路の前記内底面に設けられた溝であって、一部が前記消毒剤領域内に設けられた溝と、
前記溝に向かって被処理水を導入する導入部と、
前記溝から溢れて前記消毒流路を流れる被処理水を前記消毒流路から流出させる流出部と、
を備える、
排水処理装置。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、消毒装置、消毒装置を備える消毒槽、消毒装置を備える排水処理装置、消毒装置を利用した被処理水の消毒方法、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の実施の形態を実施例と変形例とに基づいて説明する。
【0019】
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としての消毒装置500(「薬筒受け500」とも呼ぶ)を示す説明図である。消毒装置500は、容器510と、容器510の上部の載せられる蓋(後述)と、を有している。
図1は、一点透視図法で表現された容器510を示しており、容器510を鉛直方向の上方から下方に向かって見た図を示している。
図2は、容器510の上面図を示し、
図3は、
図2のA−A断面図(後述する溝112Gを通りX方向およびZ方向と平行な断面)を示し、
図4は、
図2のB−B断面図(後述する溝112Gを横切りY方向およびZ方向と平行な断面)を示している。
図3と
図4とには、容器510の上部に載せられた蓋520が、示されている。
【0020】
図1、
図2に示すように、消毒装置500は、底板100と、底板100の周囲の全周に設けられた側板200と、を有する箱形状の装置である。底板100は、上方から見て矩形状を有する。側板200は、上方から見て矩形を形成するように配置された4枚の側板210、220、230、240を有している。これらの側板210〜240は、いずれも、鉛直方向と平行な板である。第1側板210は第4側板240と平行であり、第2側板220は第3側板230と平行である。第1側板210には、被処理水が流入する開口(「導入開口310」とも呼ぶ)を形成するソケット300が固定されている。ソケット300は円筒状の部材であり、第1側板210を貫通して水平方向に延びる。
【0021】
図(例えば、
図2)中のZ方向は、鉛直上方向を示し、X方向は、第1側板210から第4側板240に向かう水平方向を示し、Y方向は、第3側板230から第2側板220に向かう水平方向を示している。第1側板210と第4側板240とは、Y方向と平行であり、第2側板220と第3側板230とは、X方向と平行である。以下、X方向のことを「+X方向」とも呼び、X方向の逆方向を「−X方向」とも呼ぶ。Y方向、Z方向についても、同様である。
【0022】
図1〜
図3に示すように、底板100は、第1底板110と、第2底板120と、第3底板130と、堰板140と、を有している。第1底板110は、底板100の−X方向側の一部分を形成し、第2底板120は、底板100の+X方向側の一部分を形成する。第1底板110と第2底板120とは、いずれも板状の部材であり、それぞれ容器510の水平な内底面を形成する。堰板140は、Y方向と平行で、略垂直な板状の部材である。
図3に示すように、第2底板120は、第1底板110よりも高い位置に配置されている。
【0023】
図3に示すように、堰板140は、第1底板110の+X方向側の端から上方に向かって延びて、第2底板120の−X方向側の端に接続される。
図1、
図2に示すように、堰板140(本実施例では、堰板140の中央部分)には、隙間140Aが設けられている。堰板140は、隙間140Aによって、2つの部分140L、140Rに分割されている。第1堰板140Lは、堰板140の+Y方向側の部分であり、第2堰板140Rは、堰板140の−Y方向側の部分である。
【0024】
第3底板130は、第1底板110から、第1堰板140Lと第2堰板140Rとの間を通り抜けて、+X方向に向かって延びる板状の部材であり、容器510の水平な内底面を形成する。
【0025】
堰板140は、第1底板110から第3底板130へ流れる被処理水の水量(単位時間当たりの量)を制限する堰140Wを形成する。
【0026】
図2に示すように、第1底板110には、溝112Gが形成されている。溝112Gは、第1側板210の近傍から、第1底板110の中央部分まで、+X方向に向かって延びるライン状の溝である。
図3、
図4に示すように、溝112Gは、第1底板110に設けられた凹部112によって形成されている(凹部112は、鉛直下方向に向かって凹んだ板状の部材を用いて形成されている)。
図2、
図3に示すように、上方から下方に向かって見た場合に、導入開口310の最下位置310pが溝112Gと重なるように、溝112Gが形成されている。
【0027】
図5は、容器510の一部分(ソケット300と溝112Gとを含む部分)を斜め上方から見た斜視図である。図中の矢印Fは、容器510に流入する被処理水の流れを示している。ソケット300は、+X方向に向かって延びるように、配置されている。導入開口310は、ソケット300の+X方向側の端である。従って、導入開口310から消毒装置500に流入する被処理水は、導入開口310から、+X方向に向かって移動しつつ、底板100(具体的には、第1底板110)に向かって落下する。また、上述したように、溝112Gは、導入開口310の下方から+X方向に向かって延びている。これらの結果、導入開口310から流入した被処理水は、溝112Gに向かって落下する。
【0028】
図3、
図4に示すように、第1底板110には、消毒剤620を収容する消毒剤容器600(以下「薬筒600」とも呼ぶ」)が載せ置かれる。
図1、
図2に示す領域116は、薬筒600が配置される領域を示している(以下「消毒剤領域116」と呼ぶ)。薬筒600は、第1底板110の消毒剤領域116内の部分によって支持される(以下、「支持領域116A」とも呼ぶ。
図2中では、支持領域116Aにハッチングが付されている)。消毒剤は、この消毒剤領域116内に配置され得る。
図3に示すように、消毒装置500の上部には、蓋520が載せられる。蓋520には、薬筒600を挿入するための開口526が形成されている。蓋520の開口526に薬筒600を挿入することによって、第1底板110上の支持領域116Aに薬筒600が載る。溝112Gの+X方向側の端部は、消毒剤領域116内に、形成されている。
【0029】
図3に示すように、薬筒600の下部には、複数の孔610が設けられている。第1底板110上の消毒剤領域116(支持領域116A)を被処理水が流れる場合には、被処理水が、孔610を通じて薬筒600の内部に流入し、薬筒600の内部に収容された消毒剤620と接触する。
【0030】
図6は、容器510の一部分(第2底板120を含む部分)を斜め上方から見た斜視図である。
図7は、容器510の一部分(第2底板120を含む部分)を斜め下方から見た斜視図である。図示するように、第2底板120には、略円形状の開口410が設けられている。この開口410に、流出管400が固定されている。流出管400は、第2底板120(開口410)から鉛直下方向に向かって延びる円筒状のパイプである。
【0031】
図2、
図3、
図6に示すように、堰板140の隙間140Aには、第1底板110上から流出管400へ被処理水を移送させる移送路150が形成されている。移送路150は、第1底板110から堰140Wを通り抜けて流出管400に至る流路である。この移送路150を通じて、被処理水は、堰板140を乗り越えることなく、第1底板110から流出管400へ流れ得る。
【0032】
移送路150は、第3底板130と堰板140L、140Rとによって形成されている。第3底板130は、第1底板110から、堰板140を通り抜けて、+X方向に向かって延びて、流出管400の側面に接続されている。
図2、
図6に示すように、第1堰板140Lは、第2側板220から−Y方向に向かって延び、隙間140Aで+X方向に曲がり、流出管400の側面に接続されている。第2堰板140Rは、第3側板230から+Y方向に向かって延び、隙間140Aで+X方向に曲がり、流出管400の側面に接続されている。流出管400の側面の堰140W側には、切り欠き420が形成されている。この切り欠き420には、移送路150が接続されている。また、この切り欠き420は、開口410と繋がっている。このように、切り欠き420と開口410との全体が、流出管400の開口を形成する(以下「流出開口430」とも呼ぶ)。なお、第2底板120の、移送路150の上方を覆う部分は、切り欠かれている(「切り欠き120A」とも呼ぶ)。この切り欠き120Aは、開口410と繋がっている。
【0033】
図8は、消毒装置500における被処理水の流れを示す説明図である。
図8は、消毒装置500に流入する被処理水の水量(単位時間当たりの水量)が少量である場合を示している(後述するように、第1底板110における水位が上昇しない程度の量)。
図8(A1)、8(B1)、8(C1)は、
図3と同じ断面図の簡略図を示し、
図8(A2)、8(B2)、8(C2)は、
図2と同じ上面図の簡略図を示している。図中のハッチングで示される領域は、被処理水が流れる領域を示している。
【0034】
消毒装置500に被処理水が流入すると、被処理水は、溝112Gに流入する。
図8(A1)、8(A2)は、流入した被処理水が溝112Gに溜まった状態を示している。続けて被処理水が流入すると、被処理水が溝112Gから溢れる。
図8(B1)、8(B2)は、被処理水が溝112Gから溢れた状態を示している。上述したように、溝112Gの上に薬筒600が配置されている。従って、溢れた被処理水は、薬筒600に流入して、消毒剤620と接触する。このように、被処理水の流入量(単位時間当たりの流入量)が少ない場合であっても、適切に、被処理水を消毒剤620に接触させることができる。また、溢れた被処理水は、堰140Wを乗り越えることなく、移送路150を通って、流出管400に流入する。そして、被処理水は流出管400から排出される。
【0035】
図8(C1)、8(C2)は、被処理水の流入が止まった後の状態を示している。被処理水の流入が止まった場合も、第1底板110上の被処理水は、移送路150を通じて、流出管400から排出される。このように、第1底板110上の被処理水、すなわち、薬筒600(消毒剤620)と接触し得る被処理水は、流出管400から排出される。従って、被処理水が流入していないにも拘わらずに消毒剤620が被処理水と接触し続けることを抑制できる。この結果、消毒剤が過剰に消費される可能性を低減できる。
【0036】
本実施例の消毒装置500は、排水処理装置で利用されることが想定されており、排水処理装置に取り付けられる。ここで、消毒装置500が、設計通りの配置から若干ずれて、取り付けられる可能性がある(取り付け誤差)。例えば、第1底板110が若干傾いた状態で、消毒装置500が排水処理装置に取り付けられる可能性がある。
図9は、比較例の消毒装置を示す概略上面図である。
図9は、
図8(B2)と同様に、被処理水が流れる様子を示している。この比較例の構成は、実施例の消毒装置500から溝112Gを省略して得られる構成と、同じである。
図9には、消毒装置が、−Y方向側が低くなるように傾いて、排水処理装置に取り付けられた状態を示している。図示するように、被処理水は、第1底板110上の、薬筒600の−Y方向側を流れて、流出管400から排出される。このように、溝112Gの無い消毒装置では、被処理水は、定常的に薬筒600を迂回して、流れ得る。また、底板(例えば、第1底板110)の製造誤差に起因して、内底面に緩やかな凹凸が形成され得る。例えば、第1底板110の中央部分が、第1底板110の周縁部分よりも、上方に盛り上がる場合があり得る。このような場合には、消毒装置が、設計通りの配置に取り付けられた場合であっても、
図9に示すように、被処理水が、定常的に薬筒600を迂回して、流出管400から流出し得る。
【0037】
一方、本実施例の消毒装置500には、溝112Gが設けられている。従って、第1底板110の上面(内底面)に凹凸が形成された場合や、消毒装置500が、若干傾いた状態で、排水処理装置に取り付けられた場合であっても、
図8に示すように、導入開口310から流入した被処理水は、溝112Gに導入される。そして、溝112Gから溢れた被処理水は、消毒剤620と接触する。このように、本実施例では、被処理水が定常的に薬筒600(消毒剤620)を迂回して流出管400から流出する可能性を、低減できる。
【0038】
なお、
図9の比較例のように溝112Gの無い消毒装置においても、流入水量(単位時間当たりの水量)が多い場合には、被処理水が容易に消毒剤容器600(消毒剤)と接触する。従って、溝112Gの無い消毒装置も、流入水量が適切であれば、適切な消毒機能を発揮し得る。
【0039】
図10は、別の比較例の消毒装置を示す概略断面図である。
図10は、
図8(C1)と同様に、被処理水の流入が停止した状態を示している。この比較例は、
図9の比較例よりも、消毒剤が容易に被処理水に溶けるように、構成されている。この比較例の容器510dは、四角柱状の容器であり、−X側の側壁に流入管300dが設けられ、+X側の側壁に流出管400dが設けられている。流入管300dと流出管400dとは、それぞれ、水平方向に延びている。また、この容器510dでは、溝と堰とが省略されている。流出管400dは、流入管300dよりも低い位置に配置されている。ただし、流出管400dの上流側の開口(流出開口430d)の下端430pは、容器510dの内底面100dよりも高い位置に配置されている。この結果、容器510d内には、流出開口430dの下端430pよりも低い位置に、被処理水が溜まる。また、この比較例では、容器510dの内底面100dに、薬筒600が載せ置かれている。これらの結果、消毒剤620が、容器510dに溜まった被処理水に溶けるので、流入水量(単位時間当たりの水量)が少ない場合であっても、適切に、消毒を行うことができる。但し、長期間に亘って被処理水の流入が停止した場合であっても、容器510dに溜まった被処理水に消毒剤620が溶けるので、消毒剤620の消費速度が速くなる可能性がある。ただし、頻繁に被処理水が流入する場合には、消毒剤620の消費速度を、適切な速度に保つことができる。
【0040】
一方、本実施例の消毒装置500では、
図3に示すように、流出開口430の下端(切り欠き420の下端)が第1底板110の上面(内底面)と同じ高さである。この結果、流出開口430は、第1底板110上に長期間に亘って被処理水を溜めずに、第1底板110上から被処理水を排出することができる。この結果、本実施例の消毒装置500は、
図10の比較例と比べて、被処理水の流入量(単位時間当たりの量)や流入頻度に拘わらずに、消毒剤620の消費が過剰に速く進んでしまう可能性を低減できる。
【0041】
図11は、消毒装置500における被処理水の流れを示す説明図である。
図11は、消毒装置500に流入する被処理水の水量(単位時間当たりの水量)が、
図8の例よりも多い中量である場合を示している。
図11(A1)、11(B1)は、
図3と同じ断面図の簡略図を示し、
図11(A2)、11(B2)は、
図2と同じ上面図の簡略図を示している。図中のハッチングで示される領域は、被処理水が流れる領域を示している。
【0042】
消毒装置500に被処理水が流入すると、
図8(B1)、8(B2)と同様に、溝112Gから被処理水が溢れる。溢れた被処理水は、移送路150を通って、流出管400から排出される。さらに、
図11の例では、
図8の例と比べて、単位時間当たりの流入水量が多い。従って、
図11(B1)、11(B2)に示すように、堰140Wよりも上流側(第1底板110)の水位が上昇する。従って、水面下に沈む消毒剤620の量が増大する。この結果、被処理水に溶ける消毒剤の量が不足する可能性を低減できる。
【0043】
図12は、消毒装置500における被処理水の流れを示す説明図である。
図12は、消毒装置500に流入する被処理水の水量(単位時間当たりの水量)が、
図11の例よりも多い多量である場合を示している。
図12(A1)、12(B1)は、
図3と同じ断面図の簡略図を示し、
図12(A2)、12(B2)は、
図2と同じ上面図の簡略図を示している。図中のハッチングで示される領域は、被処理水が流れる領域を示している。
【0044】
消毒装置500に被処理水が流入すると、溝112Gから被処理水が溢れ、そして、
図11(B1)、11(B2)と同様に、堰140Wよりも上流側の水位が上昇する。さらに、
図12の例では、
図11の例と比べて、単位時間当たりの流入水量が多い。従って、
図12(B1)、12(B2)に示すように、水位が堰140Wよりも高くなる。従って、水面下に沈む消毒剤620の量が更に増大する。この結果、被処理水に溶ける消毒剤の量が不足する可能性を低減できる。
【0045】
また、
図12(B1)、12(B2)に示すように、流出管400の流出開口430の全体が水面下に沈む。従って、流出管400の全体通じて、被処理水が排出される。仮に流出管400が水平に延びている場合には、流出管400の上流側の開口が水面下に沈むほどに水位が高くならなければ、流出管400の全体を通じて被処理水を排出することができない。このように、流出管400が水平に延びている場合と比べて、流出管400が鉛直方向に延びる場合には、低い水位で、流出管400の全体を通じて多量の被処理水を排出することができる。この結果、流出管400の内径を小さくすることができる。
【0046】
図13は、比較例の消毒装置を示す概略断面図である。この比較例は、
図10に示す比較例と同じである。
図13は、多量の被処理水が容器510dに流入した場合を示している。上述したように、流出管400dが水平方向に延びている。従って、流出管400dの全体を通じて被処理水を排出するためには、水位が流出管400dの流出開口430dよりも高くなる必要がある。
図13には、このように、水位が流出開口430dよりも上まで上昇した状態を示している。また、
図13では、水位は、流入開口310dの下端310dpよりも上まで上昇している。この場合、消毒剤620の溶けた被処理水が、上流側に逆流し得る。消毒装置の上流側には、微生物を用いた処理槽が配置され得る。従って、消毒剤の逆流は、微生物による処理を損なう可能性がある。そこで、
図13に示す構成を採用する場合には、逆流が生じないように、より高い位置に、流入管300d(流入開口310d)が配置される。この結果、消毒装置、ひいては、排水処理装置が大型化する可能性がある。
【0047】
一方、本実施例の消毒装置500では、上述したように、流出管400が鉛直方向に延びているので、
図13の比較例のように水位が過剰に高くなるよりも前に、流出管400の全体を通じて被処理水を排出することができる(
図12(B2))。この結果、消毒装置、ひいては、排水処理装置の大型化を、抑制できる。
【0048】
以上のように、ソケット300を通じて流入した被処理水は、容器510を流れて、流出管400から流出する。ソケット300は、溝112Gに向かって被処理水を導入する導入部に対応する。容器510は、被処理水が流れる消毒流路に対応する。流出管400とその上端の開口(流出開口430)とは、溝から溢れて容器510を流れる被処理水を流出させる流出部に対応する。また、消毒剤領域116は、消毒剤620を配置するための領域に対応する。また、流出開口430の一部である切り欠き420は、流出管400の側面開口部に対応する。流出開口430の一部である開口410は、水平開口部に対応する。
【0049】
また、本実施例では、第1底板110の支持領域116Aが、薬筒600を支持することによって、消毒剤領域116を形成する。なお、消毒剤620は、薬筒600に収容されずに、直接的に第1底板110上に載せ置かれてもよい。この場合も、第1底板110の消毒剤620を支持する部分(例えば、支持領域116A)が、消毒剤が配置され得る領域(例えば、消毒剤領域116)を形成する。
【0050】
また、本実施例の容器510の全体は、板状の部材を用いて形成されている。特に、容器510の底面は、上流側から下流側に向かって階段状に高くなるように構成されている。この結果、凸状の部材を用いずに堰140Wを形成することができる。これらの結果、容器510を容易に製造することができる。例えば、成形型を用いた成形によって容器510を一体的に製造してもよい。この場合には、容器510の種々の要素(例えば、側板200と堰板140と流出管400)に、成形型から抜くための傾斜を設けることが好ましい。また、第1底板110には、
図5に示すように、凹部112が形成されている。この凹部112は、補強リブとして機能する。この結果、凹部112が無い場合と比べて、第1底板110の強度を増すことができる(換言すれば、第1底板110の厚さを薄くすることができる)。なお、容器510は、成形型を用いた成型に限らず、他の任意の方法で製造されてよい。例えば、複数の部材をネジや接着剤を用いて組み合わせることによって、容器510を製造してもよい。この場合には、容器510は、板状の部材に限らず、より複雑な形状の部材を含んでもよい。
【0051】
図14は、消毒装置500を有する排水処理装置の実施例を示す概略図である。この排水処理装置800は、一般家庭等からの排水の浄化処理を行う装置である(このような装置は「浄化槽」とも呼ばれる)。排水処理装置800は、複数のステップを経て浄化処理を行うために、複数の水処理槽を有している。
図14の実施例では、排水処理装置800は、上流(
図1の左側)から順番に、夾雑物除去槽810、嫌気濾床槽820、好気処理槽830、濾過槽840、消毒槽850を収容している。図中では、水処理槽810、820、830、840は、機能ブロックで図示され、消毒槽850は、概略側面図で図示されている。
【0052】
排水処理装置800に流入した排水は、まず、夾雑物除去槽810に流入する。夾雑物除去槽810は、排水中の夾雑物を分離する水処理槽である。夾雑物が分離(除去)されたあとの水は、嫌気濾床槽820に移流する。嫌気濾床槽820は、嫌気性微生物による嫌気処理を行う水処理槽である。嫌気濾床槽820で処理されたあとの水は、好気処理槽830に移流する。好気処理槽830は、好気性微生物による好気処理を行う水処理槽である。好気処理槽830で処理されたあとの水は、濾過槽840に移流する。濾過槽840は、好気処理槽830から移流した固形物を、重力沈降および濾過によって、被処理水から分離する水処理槽である。濾過槽840で処理されたあとの水は、消毒槽850に移流する。消毒槽850には、濾過槽840からの被処理水を消毒する消毒装置500と、消毒装置500によって消毒された水を一時的に貯留する貯留槽852と、貯留槽852に貯留された水を汲み出すポンプ854と、が設けられている。
【0053】
水処理槽810、820、830、840の全体は、排水を処理する排水処理部(以下、「排水処理部801」と呼ぶ)に対応する。消毒槽850は、排水処理部801から流出した被処理水を消毒する消毒部に対応する。
【0054】
なお、排水処理装置800の構成は、
図14に示す構成とは異なる他の種々の構成であってよい。例えば、消毒槽850からポンプ854を省略してもよい。嫌気濾床槽は、第1室と第2室との2つの槽に分かれていてもよい。好気処理槽830は、接触材を有する接触曝気槽であってよく、また、槽内を流動する担体を有する担体流動槽であってもよい。
【0055】
また、排水処理部801の構成は、
図14に示す構成に限らず、排水を処理する任意の構成であってよい。例えば、濾過槽840の代わりに沈殿分離槽を採用してもよい。また、流量調整機能を有する排水処理部を採用してもよい。また、活性汚泥を用いて排水を処理する排水処理部を採用してもよい。
【0056】
B.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
変形例1:
上記実施例において、容器510に被処理水を導入する導入部は、ソケット300に限らず、溝112Gに向かって被処理水を導入する任意の構成であってよい。例えば、下流側の開口が溝112G内に配置された管を、導入部として採用してもよい。
【0058】
変形例2:
上記実施例において、容器510から被処理水を流出させる流出部は、流出管400に限らず、溝112Gから溢れて流路(容器510)を流れる被処理水を流路(容器510)から流出させる任意の構成であってよい。例えば、流出管400が水平方向に延びていても良い。この場合には、流出管400の開口の下端が、支持領域116Aと同じ高さ、あるいは、支持領域116Aよりも低い位置に配置されていることが好ましい。また、流出管400が省略されて、流路(例えば、容器510)に、被処理水が流出する開口(例えば、流出開口430)のみが形成されていてもよい。この場合には、流出開口430が、流出部に対応する。
【0059】
変形例3:
上記実施例において、消毒剤領域116に対する溝112Gの配置は、
図1に示す配置に限らず、溝112Gの一部が消毒剤領域116内に設けられるような任意の配置であってよい。例えば、溝112Gの途中に消毒剤領域116が設けられていても良い。また、溝112Gの構成は、
図1、
図2、
図5に示す構成に限らず、他の種々の構成であってよい。例えば、上方から下方に向かって見たときに、溝112Gの形状が、直線形状とは異なる他の形状(例えば、L字状やS字状)であってもよい。
【0060】
変形例4:
上記実施例において、堰140Wの構成は、
図1、
図3、
図6に示す構成に限らず、溝112Gと流出管400との間に設けられた種々の構成であってよい。例えば、第2底板120が、第1底板110と同じ高さ、または、第1底板110よりも低い位置に配置され、第1底板110と第2底板120との間を区切る凸状の壁が、堰として採用されてもよい。何れの場合も、移送路の構成は、第1底板110から、堰を通り抜けて、流出部(ここでは、流出管400)に至る種々の構成であってよい。なお、堰を通り抜ける移送路は、単位時間当たりの最大可能流量が流出部の最大可能流量と比べて小さくなるように、構成されていることが好ましい。こうすれば、消毒装置500に流入する被処理水の量(単位時間当たりの量)が、流出部における最大可能流量よりも少ない場合においても、堰の上流側の水位を上昇させることが可能となる(
図11)。この結果、被処理水に溶ける消毒剤の量が不足する可能性を低減できる。ただし、このような堰を省略することも可能である。
【0061】
変形例5:
上記実施例では、第1底板110が水平な内底面を形成しているが、第1底板110は、上流側から下流側に向かって下り勾配で傾斜する内底面を形成してもよい。この場合には、消毒剤領域116は、溝112Gにおける最も先に被処理水が溢れる位置と重なっていることが好ましい。こうすれば、溝112Gから溢れた被処理水を、適切に、消毒剤620と接触させることができる。同様に、移送路150が上流側から下流側に向かって下り勾配で傾斜する内底面を形成していてもよい。一般には、支持領域116Aから流出管400の開口へ至る流路が、支持領域116Aと同じ高さの部分と、支持領域116Aよりも低い位置に設けられた部分との、一方あるいは両方によって構成されていればよい。こうすれば、消毒装置500への被処理水の流入が止まった場合に、支持領域116A上の被処理水が、支持領域116Aに長時間に亘って滞在せずに下流側に流れるので、被処理水が消毒剤と接触し続けることを抑制できる。
【0062】
変形例6:
上記実施例では、蓋520(
図3)の開口526が、薬筒600の位置を決定しているが、薬筒600の位置を決める部材は、蓋520とは異なる他の部材であってもよい。例えば、容器510または排水処理装置800(
図14)の壁に固定されたホルダによって、薬筒600の位置が決められても良い。
【0063】
変形例7:
上記実施例において、上方から見た容器510の形状は、矩形に限らず、他の任意の形状であってよい。また、消毒装置の流路は、上記実施例のような容器510に限らず、被処理水が流れる種々の形状の流路であってよい。