【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法を採用する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は下記の高純度単分散シリカ粒子及びその製造方法に関する。
1.1)水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する工程及び
2)ケイ酸アルキルを加水分解して得られた加水分解液を前記母液に添加する工程
を含む球状の高純度単分散シリカ粒子の製造方法であって、
前記加水分解の温度が20℃以下である、
ことを特徴とする製造方法。
2.前記加水分解の温度が15℃以下である、上記項1に記載の製造方法。
3.前記ケイ酸アルキルがテトラメチルオルトシリケートである、上記項1又は2に記載の製造方法。
4.1)水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する工程及び
2)ケイ酸アルキルを加水分解して得られる加水分解液を前記母液に添加する工程
を含む異形の高純度単分散シリカ粒子の製造方法であって、
前記加水分解の温度が20℃以下であり、
前記加水分解液を前記母液に添加する工程は、
A)混合液のpHが7未満となるまで前記加水分解液を添加する工程1
B)混合液のpHが7以上となるまでアルカリ水溶液を添加する工程2及び
C)混合液のpHを7以上に維持しながら前記加水分解液を添加する工程3
を順に有することを特徴とする製造方法。
5.前記加水分解の温度が15℃以下である、上記項4に記載の製造方法。
6.前記ケイ酸アルキルがテトラメチルオルトシリケートである、上記項4又は5に記載の製造方法。
7.1)ナトリウム、2)カルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属、3)鉄、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン及びコバルトから選ばれる重金属類並びに4)ヒドロキシ陰イオン以外の陰イオンの含有量がそれぞれ1重量ppm以下であり、且つ、下記式(1):
CV=(σ/D)×100 (1)
〔式中、Dは平均粒子径を示し、σは標準偏差を示す。〕
により算出されるCV値が20以下である、
ことを特徴とする球状の高純度単分散シリカ粒子。
8.前記球状の高純度単分散シリカ粒子の乾固物に対して内部標準としてポリジメチルシラン1重量%を添加した試料において、固体
29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを測定した場合におけるシリカ粒子ピーク面積/ポリジメチルシランピーク面積の計算式で求められるピーク面積値が20未満である、上記項7に記載の球状の高純度単分散シリカ粒子。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
≪球状の高純度単分散シリカ粒子とその製造方法≫
1.球状の高純度単分散シリカ粒子
本発明の球状の高純度単分散シリカ粒子は、1)ナトリウム、2)カルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属、3)鉄、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン及びコバルトから選ばれる重金属類並びに4)ヒドロキシ陰イオン以外の陰イオンの含有量がそれぞれ1重量ppm以下であり、且つ、下記式(1):
CV=(σ/D)×100 (1)
〔式中、Dは平均粒子径を示し、σは標準偏差を示す。〕
により算出されるCV値が20以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の高純度単分散シリカ粒子は、1)ナトリウム、2)カルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属、3)鉄、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン及びコバルトから選ばれる重金属類並びに4)ヒドロキシ陰イオン以外の陰イオンの含有量がそれぞれ1重量ppm以下(高純度)である。特に、電子材料を研磨する研磨剤として使用する場合、電子材料に悪影響を及ぼすナトリウムの含有量がより少ないか又は含まれていないことが好ましい。なお、本発明において、重金属類は、密度が4g/cm
3以上の金属元素を示す。アルカリ土類金属及び重金属類の含有量は、金属元素ごとの含有量を意味する。
【0018】
本発明の高純度単分散シリカ粒子は、下記式(1):
CV=(σ/D)×100 (1)
〔式中、Dは平均粒子径を示し、σは標準偏差を示す。〕
により算出されるCV値が20以下(好ましくは15以下)であり、単分散性が良好である。なお、平均粒子径D及び標準偏差σは、動的光散乱法による粒度分析装置で測定でき、動的光散乱法による粒度分析装置としては、市販品「ELS8000」(大塚電子株式会社製)を用いることができる。測定用サンプルとしては、シリカ粒子を含むコロイダルシリカ4mlを0.3重量%クエン酸水溶液50mLに加えて均一化したものを用いる。
【0019】
本発明の高純度単分散シリカ粒子は、その乾固物に対して内部標準としてポリジメチルシラン1重量%を添加した試料において、固体
29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを測定した場合におけるシリカ粒子ピーク面積/ポリジメチルシランピーク面積の計算式で求められるピーク面積値が20未満であることが好ましい。その中でも、18以下がより好ましく、16以下であることが最も好ましい。下限値は限定されないが8程度である。
【0020】
前記ピーク面積値は、シリカ粒子における残存シラノール基の多さを示す(例えば、「第43回 熱硬化性樹脂講演討論会講演要旨集」,p45(1993)参照))。即ち、Si(OH)
2、Si(OH)
1は、Siに直接OH基が結合したSi原子をカウントし、Si(OH)
0は、直接には結合したOHはないものの、近傍にOHが存在するSi原子をカウントしている。上記比が小さいほど残存シラノール基の絶対数が少ないことを示し、本発明のシリカ粒子として望ましい。なお、上記ピーク面積値は、公知のNMRスペクトル分析装置に備えられているデータ処理回路により作成される積分曲線の高さの比から算出できる。
【0021】
また、本発明のシリカ粒子は、固体
29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを測定した場合において、コロイダルシリカ由来ピークの合計強度(面積値)を100とした場合のSi(OH)
0のピーク強度比が40以上であることが望ましい。更に好ましくは、45以上であることが望ましい。これは、シリカ粒子を研磨用として用いる際、直接被研磨面と接する表面近傍の緻密性が高いことを意味する。なお、上記強度比は、公知のNMRスペクトル分析装置に備えられている波形分離処理の結果得られるシリカ粒子由来ピークのSi(OH)
2、Si(OH)
1、Si(OH)
0の各ピークの強度比を百分率として算出した値である。
【0022】
本発明における乾固物とは、本発明のシリカ粒子をシリカ分10重量%に調整したもの10gを50ml磁性るつぼに入れ、150℃にセットされたホットプレート上で、10時間熱処理することにより得られたものを言う。
【0023】
なお、本発明で使用するポリジメチルシランは、重量平均分子量が2000のものを使用する。
【0024】
本発明のシリカ粒子の一次粒子径は限定されないが、通常は5〜200nm程度、特に10〜100nmが望ましい。なお、一次粒子径はBET法(2727/比表面積値)によって算出される一次粒子径を表す。また、別に、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELS8000」)で測定した粒子径を二次粒子径として示す。動的光散乱法での測定用サンプルとしては、シリカ粒子を含むコロイダルシリカ4mlを0.3重量%クエン酸水溶液50mLに加えて均一化したものを用いる。
【0025】
本発明は、本発明シリカ粒子を含む研磨剤も包含する。特に、電子材料を研磨する電子材料研磨材として好適に用いることができる。例えば、シリコンウエハ研磨、LSI製造プロセスに於ける化学的機械的研磨(CMP)、フォトマスクブランクス研磨、ハードディスク研磨等が挙げられる。
【0026】
研磨剤の使用に際しては、公知の研磨剤と同様にして実施すれば良い。例えば、シリコンウエハを研磨する際は、用途等に応じて濃度を調整した上、研磨機の常盤にセットされた研磨パッド上に滴下すればよい。
2.球状の高純度シリカ粒子の製造方法
本発明のシリカ粒子は、蒸留精製により高純度に精製可能なケイ酸アルキルをシリカ原料として製造する。好ましくは、シリカ原料として、高純度に精製可能で、かつ反応性が高く、無触媒でも容易に加水分解されるテトラメチルオルトシリケートが望ましい。
【0027】
具体的には、1)水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する工程及び
2)ケイ酸アルキルを加水分解して得られた加水分解液を前記母液に添加する工程
を含む球状の高純度単分散シリカ粒子の製造方法であって、
前記加水分解の温度が20℃以下である製造方法により製造する。
【0028】
以下、上記製造方法の各工程について説明する。
【0029】
母液調製工程
母液調製工程では、水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する。例えば、水にアルカリ触媒を添加することにより母液を調製すれば良い。
【0030】
アルカリ触媒は、公知のアルカリ触媒を用いることができるが、特に金属不純物の混入を回避するという点で金属成分を含まない有機系塩基触媒が好適である。このような有機系塩基触媒としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン等の含窒素有機系塩基触媒が挙げられる。好ましくは、添加工程の温度範囲(加熱)で揮散しない、揮発性の低い有機系塩基触媒が好ましい。揮散する塩基の場合、連続的に添加して系内pHを維持してもよい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。例外的に、研磨剤用途では、KOHを成分として配合することがあり、このような配合組成の研磨剤向けには、KOHをアルカリ触媒として用いることもできる。
【0031】
アルカリ触媒の添加量は、添加しないか、pHが12以下の範囲内になるように適宜設定すれば良い。より好ましいpHは10以下である。更に好ましくは9以下である。
【0032】
本発明では、後記のケイ酸アルキルの加水分解液を添加する際に、母液を加熱しておくことが好ましい。特に、母液を加熱することにより水リフラックス(水還流)状態とすることが望ましい。リフラックスは、公知の装置を用いて実施することができる。反応温度は、より高温であるほど緻密粒子が得られる。従って、添加工程は、より高温度でリフラックスできるよう加圧状態で実施しても良い。この場合には、例えばオートクレーブ等の公知の装置を使用することができる。
【0033】
添加工程
添加工程では、ケイ酸アルキル(好ましくはテトラメチルオルトシリケート)の加水分解液(以下単に「加水分解液」ともいう。)を前記母液に添加する。
【0034】
加水分解液は、ケイ酸アルキルを純水で加水分解して調製する。具体的には、ケイ酸アルキルとしてテトラメチルオルトシリケートを用いる場合には、メトキシ基に対し1倍当量以上の水を加えて、下記反応を行わせて活性ケイ酸アルキル溶液を調製する。
【0035】
Si(OMe)
4+4H
2O → Si(OH)
4+4MeOH
(但し、Meは、メチル基を示す。)
ケイ酸アルキルの加水分解液は、公知の方法によって調製することができる。例えば、水にケイ酸アルキルを加え、攪拌すれば良い。このようにして得られた反応液では、1〜2時間程度で加水分解が進行し、所定の加水分解液を得ることができる。
【0036】
ケイ酸アルキルの水への添加量は、最終的に得られる加水分解液のシリカ濃度が通常1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%となるように設定する。これにより、ケイ酸アルキル加水分解液のゲル化を防止しつつ、効率的にシリカ粒子を成長させることが可能となる。
【0037】
また、本発明では、必要に応じてケイ酸アルキルと水を相溶させるために、反応液中に相溶化溶媒として一部の水に代えて水溶性有機溶媒を含有させることもできる。水溶性有機溶媒の一例としては、アルコール類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール(特に炭素数1〜3のアルコール)を例示することができる。水溶性有機溶剤の含有量は特に限定的ではないが、通常は反応液中0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%程度とすれば良い。
【0038】
ケイ酸アルキル加水分解液は保存性が低いので、固形分濃度に応じて2〜10時間毎に調製することが好ましい。保存性は、前記の相溶化溶媒の添加で改善されるので、この面も考慮して相溶化溶媒の添加量を決定する。
【0039】
本発明では、加水分解は、触媒の存在下であっても良いし、無触媒下で実施しても良い。触媒を使用する場合は、酸触媒として硫酸、塩酸、硝酸、酢酸等の無機酸又は有機酸、強酸性陽イオン交換樹脂等の固体酸を使用すれば良い。特に、本発明では、不純物の混入を回避するという見地より、無触媒下で加水分解することが望ましい。特にテトラメチルオルトシリケート(TMOS)は無触媒でも加水分解され易い。
【0040】
本発明では、加水分解の温度は20℃以下とし、その中でも15℃以下が好ましく、15〜10℃がより好ましい。かかる加水分解温度を採用することにより、最終的に得られるシリカ粒子の単分散性を向上させることができる。
【0041】
ケイ酸アルキルの加水分解液の母液への添加は、所望の粒径のコロイド粒子に成長するまで継続する。加水分解液の添加速度は、加水分解液の濃度、所望のコロイド粒子の粒径等によって異なるが、緻密なシリカ粒子が形成されるのに十分な速度とすれば良い。好ましくは、41gシリカ/時/kg母液以下である。ここで、「gシリカ」はシリカの重量を示し、「kg母液」は母液の重量を示す。
【0042】
本発明では、水とアルカリ触媒からなる母液中で種粒子が先ず形成され、その後粒子成長が開始すると考えられる。種粒子の形成個数は、初期に添加されるケイ酸アルキルの加水分解液の量(濃度)によって形成されることから、母液仕込み重量とケイ酸アルキルの加水分解液の添加速度の比がパラメータとなる。
【0043】
添加速度が速すぎる場合は、粒子が緻密にならない状態(シラノール基が残存した状態)で粒子が成長してしまい、ピーク面積値が増大する。また、粒子表面への析出が間に合わず、新しく微粒子が形成され粒度分布が広くなりCV値が増加するか、全体がゲル化することが考えられる。従って、濾過性等他の物性が悪化する弊害もある。一方、遅い場合は、より緻密で均一粒子となるが、生産性が低下し、不経済である。実用的には、0.7gシリカ/時/kg母液以上である。
【0044】
ケイ酸アルキルの加水分解液の添加に伴い、反応液のpHは徐々に低下する。反応液のpHは、7〜10に保たれるよう常に監視し、適宜アルカリ触媒を添加して、pHを維持する必要がある。pHが酸性領域まで低下するとゲル化するおそれがある。中性付近の製品が求められる場合、pHを徐々に低下させながら反応させても良い。
【0045】
所定の粒径をもつコロイド粒子が生成すれば、加水分解液の添加を中止する。必要に応じて、反応液内に残存するアルコールを蒸留等により除去しても良い。この場合、連続的に水溶性有機溶媒(アルコール等)を除去することにより、反応温度の低下を回避することができる。また、添加工程における多量の水溶性有機溶媒(アルコール等)の存在は、ケイ酸アルキルを溶解させる等、シリカの析出を妨げる現象が観察されるため、余分な水溶性有機溶媒(アルコール等)は速やかに系外に留去することが好ましい。系外に留去することで、後述する濃縮を同時に進行させることもできる。反応終了時点で、固形分濃度を25%以上に濃縮することが可能である。
【0046】
次いで、必要に応じて、反応液を濃縮する。濃縮に先立って、必要に応じて、系内に残存する微量の水溶性有機溶媒(アルコール等)を予め除去することもできる。
【0047】
反応液を濃縮する場合は、温度(系内温度)が100℃に達し、蒸気温度も100℃に達し、水溶性有機溶媒の除去終了を確認したら、そのまま所定の固形分濃度になるまで濃縮する。濃縮方法としては、例えば蒸留濃縮法、膜濃縮法等の公知の濃縮方法を採用することができる。なお、蒸留濃縮法を採用する場合は、乾燥粒子の発生を防ぐため、所定の容量の容器にフィード(供給)する方式で壁面での空焚きの発生を回避することが望ましい。濃縮物は、所定のフィルターでろ過し、粗大粒子、異物等を除去した後、そのまま各種の用途に使用することができる。
≪異形の高純度単分散シリカ粒子とその製造方法≫
1.異形の高純度単分散シリカ粒子
本発明の異形の高純度単分散シリカ粒子は、1)ナトリウム、2)カルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属、3)鉄、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン及びコバルトから選ばれる重金属類並びに4)ヒドロキシ陰イオン以外の陰イオンの含有量がそれぞれ1重量ppm以下であり、且つ、SEM画像により各粒子のアスペクト比(長径/短径比)を測定した場合において、前記アスペクト比が1.3以下の低会合粒子の割合が50%以下であることを特徴とする。異形の高純度単分散シリカ粒子の長径は、
図1に示される通り異形粒子の最も長い径を意味し、短径は長径に垂直方向の最も短い径を意味する。
【0048】
本発明の異形の高純度単分散シリカ粒子は、1)ナトリウム、2)カルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属、3)鉄、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン及びコバルトから選ばれる重金属類並びに4)ヒドロキシ陰イオン以外の陰イオンの含有量がそれぞれ1重量ppm以下(高純度)である。特に、電子材料を研磨する研磨剤として使用する場合、電子材料に悪影響を及ぼすナトリウムの含有量がより少ないか又は含まれていないことが好ましい。なお、本発明において、重金属類は、密度が4g/cm
3以上の金属元素を示す。アルカリ土類金属及び重金属類の含有量は、金属元素ごとの含有量を意味する。
【0049】
屈曲構造及び/又は分岐構造を持つシリカ二次粒子の含有量は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した20万倍での任意の視野内の粒子個数中の30%以上が好ましい。また、同視野内の粒子について、アスペクト比が1.3以下の低会合粒子の割合が50%以下であり、40%以下が好ましく、30%以下が最も好ましい。
【0050】
上記二次粒子を構成する一次粒子の粒子径は限定されないが、通常は5〜200nm程度、特に10〜100nmが望ましい。なお、一次粒子径はBET法(2727/比表面積値)によって算出される一次粒子径を表す。また、別に、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELS8000」)で測定した粒子径を二次粒子径として示す。動的光散乱法での測定用サンプルとしては、シリカ粒子を含むコロイダルシリカ4mlを0.3重量%水溶液50mLに加えて均一化したものを用いる。また、別に、異形の高純度単分散シリカ粒子の長径は、
図1に示される通り異形粒子の最も長い径を示し、短径は長径に垂直方向の最も短い径を示す。
【0051】
また、シリカ粒子を研磨剤として使用する場合は、緻密な構造を有するシリカ粒子を調製することが必要となる。より具体的には、シロキサン結合がより完全に形成された粒子を調製することが求められる。逆に言えば、残存するシラノール基が少ない粒子を調製することが好ましい。本発明者等は、固体
29Si−CP/MAS−NMRスペクトルがOH基を近傍に持つ
29Siを検出することができ、内部標準ピーク面積で規格化した3ピークの合計面積、即ちピーク面積値が、シリカ粒子の緻密さを評価する指標として有効であることを見出した。
【0052】
本発明のシリカ粒子は、前記ピーク面積値が20未満であり、その中でも、18以下がより好ましく、16以下であることが最も好ましい。下限値は限定されないが5程度である。
【0053】
前記ピーク面積値は、シリカ粒子における残存シラノール基の多さを示す(例えば、「第43回 熱硬化性樹脂講演討論会講演要旨集」,p45(1993)参照))。即ち、Si(OH)
2、Si(OH)
1は、Siに直接OH基が結合したSi原子をカウントし、Si(OH)
0は、直接には結合したOHはないものの、近傍にOHが存在するSi原子をカウントしている。上記面積値が小さいほど残存シラノール基の絶対数が少ないことを示し、本発明のシリカ粒子として望ましい。
【0054】
なお、上記ピーク面積値は、公知のNMRスペクトル分析装置に備えられているデータ処理回路により作成される積分曲線の高さの比から算出できる。
【0055】
また、本発明のシリカ粒子は、固体
29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを測定した場合において、シリカ粒子由来ピークの合計強度(面積値)を100とした場合のSi(OH)
0のピーク強度比が40以上であることが好ましく、45以上がより好ましく、50以上が最も好ましい。これは、シリカ粒子を研磨用として用いる際、直接被研磨面と接する表面近傍の緻密性が高いことを意味する。
【0056】
なお、上記強度比は、公知のNMRスペクトル分析装置に備えられている波形分離処理の結果得られるコロイダルシリカ由来ピークのSi(OH)
2、Si(OH)
1、Si(OH)
0の各ピークの強度比を百分率として算出した値である。
【0057】
本発明における乾固物とは、本発明のシリカ粒子を含むコロイダルシリカのシリカ分を10重量%に調整したもの10gを50ml磁性るつぼに入れ、150℃にセットされたホットプレート上で、10時間熱処理することにより得られたものを言う。
【0058】
なお、本発明で使用するポリジメチルシランは、重量平均分子量が2000のものを使用する。また、NMRスペクトル分析装置としては、日本電子株式会社製JNM−ECA400(1Hの共鳴周波数が400MHz)を使用した。詳細測定条件を下記に示す。
・測定核:29Si
・パルスシーケンス:CP/MAS法
・90°パルス:2.8マイクロ秒
・コンタクトタイム:8ミリ秒
・繰り返し待ち時間:5秒
・試料管:3.2mmΦ
・試料回転数: 約6kHz
・積算回数:8000回
・測定温度:室温
本発明は、本発明のシリカ粒子を含む研磨剤も包含する。特に、電子材料を研磨する電子材料研磨材として好適に用いることができる。例えば、シリコンウエハ研磨、LSI製造プロセスに於ける化学的機械的研磨(CMP)、フォトマスクブランクス研磨、ハードディスク研磨等が挙げられる。
【0059】
研磨剤の使用に際しては、公知の研磨剤と同様に使用すればよい。例えば、シリコンウエハを研磨する際は、用途等に応じて濃度を調整した上、研磨機の常盤にセットされた研磨パッド上に滴下すればよい。
【0060】
また、本発明のシリカ粒子は高会合粒子の割合が多いため、トナー外添剤として、以下の理由で有用である。即ち、樹脂であるトナーの外添剤としてシリカ粒子には、トナー表面にシラノール基由来の負の電荷を帯電させることと、トナー樹脂の表面を無機微粒子が覆うことによってトナー同士の融着を防ぐ目的があるが、一般的にシリカ粒子が小粒子化し、球状になると、トナー樹脂に埋没し易くなるため、先の効果が得られにくくなる。また、大粒径のシリカ粒子には、トナー樹脂自体の微粒子化が進む中で、その大きさにはおのずと限界がある。
【0061】
従って、小粒子径でありながら、トナー樹脂に埋没しない性質のシリカ粒子が、このトナー外添剤の用途で最も望ましい性質であるといえ、この埋没しにくいシリカの形状としては、程よい二次粒子径を有する異形化した粒子が好ましいということになる。しかも、この異形化した粒子中には埋没するような球状のものをなるべく含まないことが望ましいと言える。このことから、上記したような単分散で異形化したシリカ粒子は、トナーの外添剤として有用であるといえる。
2.異形の高純度シリカ粒子の製造方法
本発明のコロイダルシリカは、蒸留精製により高純度に精製可能なケイ酸アルキルをシリカ原料として製造する。好ましくは、シリカ原料として、高純度に精製可能で、かつ反応性が高く、常温で無触媒でも容易に加水分解されるテトラメチルオルトシリケート(TMOS)が望ましい。
【0062】
具体的には、次の製造方法が好適な態様として挙げられる。
【0063】
1)水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する工程及び
2)ケイ酸アルキルを加水分解して得られる加水分解液を前記母液に添加する工程
を含むコロイダルシリカの製造方法であって、
前記加水分解の温度が20℃以下であり、
前記加水分解液を前記母液に添加する工程は、
A)混合液のpHが7未満となるまで前記加水分解液を添加する工程1
B)混合液のpHが7以上となるまでアルカリ水溶液を添加する工程2及び
C)混合液のpHを7以上に維持しながら前記加水分解液を添加する工程3
を順に有することを特徴とする製造方法。
【0064】
以下、上記本発明製造方法について説明する。
【0065】
母液調製工程
母液調製工程では、水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する。ここで、アルカリ性の母液を調製する際は、例えば、水にアルカリ触媒を添加することにより母液を調製する。
【0066】
アルカリ触媒は、公知のアルカリ触媒を用いることができるが、特に金属不純物の混入を回避するという点で金属成分を含まない有機系塩基触媒が好適である。このような有機系塩基触媒としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン等の含窒素有機系塩基触媒が挙げられる。好ましくは、添加工程の温度範囲(加熱)で揮散しない、揮発性の低い有機系塩基触媒が好ましい。揮散する塩基の場合、連続的に添加して系内pHを維持してもよい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。例外的に、研磨剤用途では、KOHを成分として配合することがあり、このような配合組成の研磨剤向けには、KOHをアルカリ触媒として用いることもできる。
【0067】
アルカリ触媒の添加量は、添加しないか、母液のpHが12以下になるように適宜設定すれば良い。より好ましいpHは10以下、更に好ましくは、9以下である。
【0068】
理由は明確でないが、添加するアルカリ量が多いと、異形化の度合いが低下する。より異形化度を上げる為には、アルカリを添加せず、酸性時のpHをできるだけ低くすることが必要である。
【0069】
本発明では、後記のケイ酸アルキルの加水分解液を添加する際に、母液を加熱しておくことが好ましい。特に、母液を加熱することにより水リフラックス(水還流)状態とすることが望ましい。リフラックスは、公知の装置を用いて実施することができる。反応温度は、より高温であるほど緻密粒子が得られる。従って、添加工程は、より高温度でリフラックスできるよう加圧状態で実施しても良い。この場合には、例えばオートクレーブ等の公知の装置を使用することができる。
【0070】
添加工程
添加工程では、ケイ酸アルキル(好ましくはテトラメチルオルトシリケート)の加水分解液(以下単に「加水分解液」ともいう。)を前記母液に添加する。
【0071】
加水分解液は、ケイ酸アルキルを純水で加水分解して調製する。具体的には、ケイ酸アルキルとしてテトラメチルオルトシリケートを用いる場合には、メトキシ基に対し1倍当量以上の水を加えて、下記反応を行わせて活性ケイ酸アルキル溶液を調製する。
【0072】
Si(OMe)
4+4H
2O → Si(OH)
4+4MeOH
(但し、Meは、メチル基を示す。)
ケイ酸アルキルの加水分解液は、公知の方法によって調製することができる。例えば、水にケイ酸アルキルを加え、攪拌すれば良い。このようにして得られた反応液では、1〜2時間程度で加水分解が進行し、所定の加水分解液を得ることができる。
【0073】
ケイ酸アルキルは、加水分解することで不揮発性のケイ酸オリゴマーとなると考えられ、より高温での粒子成長反応が可能となることから、より緻密な粒子を調製できる点で有利であると考えられる。
【0074】
ケイ酸アルキルの水への添加量は、最終的に得られる加水分解液のシリカ濃度が通常1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%となるように設定する。これにより、ケイ酸アルキル加水分解液のゲル化を防止しつつ、効率的にシリカ粒子を成長させることが可能となる。
【0075】
また、本発明では、必要に応じてケイ酸アルキルと水を相溶させるために、反応液中に相溶化溶媒として一部の水に代えて水溶性有機溶媒を含有させることもできる。水溶性有機溶媒の一例としては、アルコール類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール(特に炭素数1〜3のアルコール)を例示することができる。水溶性有機溶剤の含有量は特に限定的ではないが、通常は反応液中0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%程度とすれば良い。
【0076】
ケイ酸アルキル加水分解液は保存性が低いので、固形分濃度に応じて2〜10時間毎に調製することが好ましい。保存性は、前記の相溶化溶媒の添加で改善されるので、この面も考慮して相溶化溶媒の添加量を決定する。また、加水分解液は、保存温度が低いほど安定性が増すので、加水分解液調製後、凍結しない範囲で、冷却することも有効である。
【0077】
本発明では、加水分解は、触媒の存在下であっても良いし、無触媒下で実施しても良い。触媒を使用する場合は、酸触媒として硫酸、塩酸、硝酸、酢酸等の無機酸又は有機酸、強酸性陽イオン交換樹脂等の固体酸を使用すれば良い。特に、本発明では、Cl
−、NO
3−、SO
42−等の陰イオン不純物の混入を回避するという見地より、無触媒下で加水分解することが望ましい。特にテトラメチルオルトシリケート(TMOS)は、常温/無触媒でも加水分解され易く、これらの腐食性陰イオン不純物を1ppm未満とすることができる。
【0078】
本発明では、加水分解の温度は20℃以下とし、その中でも15℃以下が好ましく、15〜10℃がより好ましい。かかる加水分解温度を採用することにより、最終的に得られるシリカ粒子の単分散性を向上させることができる。
【0079】
本発明では、ケイ酸アルキルの加水分解液を母液に添加する工程は、具体的には、
A)混合液のpHが7未満となるまで前記加水分解液を添加する工程1
B)混合液のpHが7以上となるまでアルカリ水溶液を添加する工程2及び
C)混合液のpHを7以上に維持しながら前記加水分解液を添加する工程3
を順に有することを特徴とする。つまり、アルカリ性の母液に加水分解液を添加して一旦混合液のpHを7未満(酸性領域)とした後、アルカリ水溶液を添加して混合液のpHを7以上に戻し、その後はpHを7以上に維持しながら(即ちアルカリ水溶液を添加しながら)加水分解液の添加を継続することを特徴とする。なお、アルカリ水溶液を添加して混合液のpHを7以上に戻す工程(工程2)では加水分解液の添加を中止するか又は添加を少量とすることが好ましい。以下、工程毎に説明する。
【0080】
工程1は、混合液のpHが7未満となるまで前記加水分解液を添加する。pHの下限値は限定的ではないが、混合液の過度のゲル化を抑制する点では、pHは6以上とすることが好ましい。つまり、工程1では混合液のpHを6以上7未満に調整することが好ましい。より好ましくは、6.3以上7未満である。pHを低下させ過ぎると、異形の度合は大きくなるが、濾過性の低下や粘度上昇、ゲル化が起こり不都合である。
【0081】
本発明の製造方法では、母液中で、種粒子が先ず形成され、その後粒子成長が開始すると考えられる。種粒子の形成個数は、初期に添加されるケイ酸アルキルの加水分解液の量(濃度)によって決定されることから、工程1における母液仕込み重量とケイ酸アルキルの加水分解液の添加速度の比がパラメータとなる。加水分解液の添加速度は、加水分解液の濃度、所望のコロイド粒子の粒径等によって異なるが、緻密なシリカ粒子が形成されるのに十分な速度とすれば良い。好ましくは、0.7〜41gシリカ/時/kg母液である。ここで、「gシリカ」はシリカの重量を示し、「kg母液」は母液の重量を示す。添加速度が速い場合は、生成する種粒子数が増加し、より小さい粒径で酸性化する。従って、異形化度合は大きくなるが、一方、pHの制御が難しくなる。粒径が小さすぎる場合、前記したように、粒子成長過程で異形状態が緩和されてしまう。逆に、添加速度が遅いと、生成する種粒子数が減少し、より大きい粒子で酸性化する。従って、異形化度合は低くなるが、一方pH制御は容易となる。工程1での添加速度は、これらを勘案して決定すれば良い。
【0082】
工程2は、混合液のpHが7以上となるまでアルカリ水溶液を添加する。アルカリ水溶液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、水の沸点で容易に揮発しない有機アミン等が使用できる。なお、汚染の原因となるNaOH、LiOH等は避けることが望ましく、具体的にはTMAHが好ましい。工程1、2において、混合液のpHが7未満である時間が0.5〜5時間となるように実施することが好ましい。工程2において、加水分解液の添加は行っても行わなくても良い。すなわち、工程1で、加水分解液を添加し、所定のpHまで低下させ、添加を中止して、所定の時間酸性状態のpHを維持させ、種粒子を凝集させる。次に、アルカリ水溶液を添加して、再度アルカリ側とする。アルカリ水溶液の添加は、徐々に行っても、また、一括して添加してもよい。
【0083】
工程3は、混合液のpHを7以上に維持しながら前記加水分解液を添加する。ここでは、好ましくはアルカリ水溶液を添加しながら加水分解液の添加を再開する。加水分解液の添加速度は、好ましくは、0.7〜41gシリカ/時/kg母液である。ケイ酸アルキルの加水分解液の母液への添加は、所望の粒径のコロイド粒子に成長するまで継続する。粒子成長により、本発明の屈曲構造及び/又は分岐構造を持つシリカ二次粒子を含有するコロイダルシリカが得られる。添加速度が速すぎる場合は、シラノール基が残存し、粒子が緻密にならない状態で粒子が成長してしまい、残存シラノール基数が増加する為、
29SiCP/MASNMRピーク面積値が増大する。また、粒子表面への析出が間に合わず、新しく微粒子が形成され粒度分布が広くなり、下記式(1):
CV=(σ/D)×100 (1)
〔式中、Dは平均粒子径を示し、σは標準偏差を示す。〕
により算出されるCV値増加するか、全体がゲル化することが考えられる。
【0084】
従って、濾過性等他の物性が悪化する弊害もある。一方、遅い場合は、より緻密な粒子となるが、生産性が低下し、不経済である。また、工程3での添加速度は、変化させてもよい。終了近くで、速度を低下させることで、特に表面部分の低シラノール化、緻密化を図ったり、粒径の精密な制御を図ったりすることができる。
【0085】
所定の粒径をもつコロイド粒子が生成すれば、加水分解液の添加を中止する。必要に応じて、反応液内に残存するアルコールを蒸留等により除去しても良い。この場合、連続的に水溶性有機溶媒(アルコール等)を除去することにより、反応温度の低下を回避することができる。また、添加工程における多量の水溶性有機溶媒(アルコール等)の存在は、ケイ酸アルキルを溶解させる等、シリカの析出を妨げる現象が観察されるため、余分な水溶性有機溶媒(アルコール等)は速やかに系外に留去することが好ましい。系外に留去することで、後述する濃縮を同時に進行させることもできる。反応終了時点で、固形分濃度を25%以上に濃縮することが可能である。
【0086】
次いで、必要に応じて、反応液を濃縮する。濃縮に先立って、必要に応じて、系内に残存する微量の水溶性有機溶媒(アルコール等)を予め除去することもできる。
【0087】
反応液を濃縮する場合は、温度(系内温度)が100℃に達し、蒸気温度も100℃に達し、水溶性有機溶媒の除去終了を確認したら、そのまま所定の固形分濃度になるまで濃縮する。濃縮方法としては、例えば蒸留濃縮法、膜濃縮法等の公知の濃縮方法を採用することができる。濃縮物は、所定のフィルターでろ過し、粗大粒子、異物等を除去した後、そのまま各種の用途に使用することができる。