特許第5787706号(P5787706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787706
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】オーディオケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/00 20060101AFI20150910BHJP
   H01B 11/18 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 11/20 20060101ALI20150910BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H01B11/00 Z
   H01B11/18 Z
   H01B7/00 306
   H01B11/20
   H01B7/18 D
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-224732(P2011-224732)
(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公開番号】特開2013-84501(P2013-84501A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−285738(JP,A)
【文献】 特開平01−302612(JP,A)
【文献】 特開2004−119060(JP,A)
【文献】 特開2012−014830(JP,A)
【文献】 特開2006−202641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/17
H01B 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が絶縁体で覆われ上記絶縁体がシールド導体で覆われた単位ケーブルが複数用いられ、
上記複数の単位ケーブルの両端部にコネクタが結合され、
上記複数の単位ケーブルのうち一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの一つの電極に接続され、
上記複数の単位ケーブルのうち他の一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの他の電極に接続され、
上記各シールド導体にグランド引き出し線が接続されているオーディオケーブル。
【請求項2】
複数の単位ケーブルは外側シースで覆われて一体となっている請求項1記載のオーディオケーブル。
【請求項3】
導線が絶縁体で覆われ上記絶縁体がシールド導体で覆われた単位ケーブルが複数用いられ、
上記複数の単位ケーブルは束ねられてその外周が外側シールド導体で覆われ、
上記複数の単位ケーブルの両端部にコネクタが結合され、
上記複数の単位ケーブルの上記各導線が上記両端部のコネクタの一つの電極に接続され、
上記複数の単位ケーブルの上記各シールド導体が上記両端部のコネクタの他の電極に接続され、
上記外側シールド導体にグランド引き出し線が接続されているオーディオケーブル。
【請求項4】
複数の単位ケーブルの外周と外側シールド導体の間には内側シースが介在し、上記外側シールド導体の外周は外側シースで覆われている請求項3記載のオーディオケーブル。
【請求項5】
導線が絶縁体で覆われた複数の単位ケーブルがシールド導体で覆われ、
上記シールド導体は外側シースで覆われ、
上記複数の単位ケーブルの両端部にコネクタが結合され、
上記複数の単位ケーブルのうち一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの一つの電極に接続され、
上記複数の単位ケーブルのうち他の一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの他の電極に接続され、
上記シールド導体にグランド引き出し線が接続されているオーディオケーブル。
【請求項6】
導線が絶縁体で覆われた複数の単位ケーブルがシールド導体で覆われてなるオーディオケーブルユニットが複数ユニット束ねられ、
上記複数のオーディオケーブルユニットは外側シースで覆われて一体となりこのオーディオケーブルユニットの両端部にコネクタが結合され、
上記複数のオーディオケーブルユニットのうち一部のオーディオケーブルユニットの上記各導線が上記両端部のコネクタの一つの電極に接続され、
上記複数のオーディオケーブルユニットのうち他の一部のオーディオケーブルユニットの上記各導線が上記両端部のコネクタの他の電極に接続され、
上記各オーディオケーブルユニットの各シールド導体はグランド引き出し線に接続されているオーディオケーブル。
【請求項7】
導線は、複数種類の素材からなる細線が束ねられることにより構成されている請求項1乃至6のいずれかに記載のオーディオケーブル。
【請求項8】
単位ケーブルは、導線の外周に紐状の部材がスパイラル状に巻かれることにより、導線と絶縁体との間に空間が形成されたコルデル構造を備えている請求項1乃至7のいずれかに記載のオーディオケーブル。
【請求項9】
シールド導体は、合成樹脂ベースの一面側に導電層が形成されたテープ状の部材が螺旋状に巻かれることにより形成されている請求項1乃至8のいずれかに記載のオーディオケーブル。
【請求項10】
グランド引き出し線は、複数の単位ケーブルの合流部から引き出されている請求項1ないし10のいずれかに記載のオーディオケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性の改善によって優れた音響特性を得ることができるオーディオケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオケーブルの一つとして、例えばCDプレーヤなどの音源とアンプなどを接続するRCAプラグ付きのケーブルがある。RCAプラグはピンプラグとも言われている。RCAプラグは所定の規格のもとに製作されるため、外径に制約があり、これに伴いケーブルの外径も制約を受け、よって、ケーブル内の導体の量、より厳密にいえば導体の横断面積が制限される。ケーブル内の導体量が少ないと、電気抵抗値が高くなり伝送損失が増大するなど、電気特性が悪化し、音質が劣化する。オーディオケーブルは、導体の横断面積が大きい程、より正確には横断面における導体の外周長さの合計が長い程電気抵抗が低くなり、音質の向上が期待できる。しかし、RCAプラグ付きのケーブルのようにプラグの規格が定められていると、導体量が制限されるため、導体の横断面積の大きさが制限され、オーディオケーブルの品質や特性によっては音質向上の阻害要因となる。ケーブルが長くなると電気特性が劣化するので、良好な音質で音を再生するにはケーブルの長さも制限される。
【0003】
本発明に係るオーディオケーブルに関連のある先行技術として、特許文献1に記載されているマイクロホンケーブルの発明がある。特許文献1記載の発明の要旨は、マイクロホンケーブルが備えている外部絶縁シースのうち、少なくともフレキシブルパイプ内に通される部分に短毛のパイルを植え付け、このパイルがフレキシブルパイプ内面に押し付けられるようにすることにより、フレキシブルパイプの屈曲時に発生する機械的振動を制限することにある。本発明に関連のある構成として、特許文献1には、2本の内部導体が内部絶縁シースで包囲された2本の内部導体が平行に配置されて絶縁体を介して一体化され、これがシールド線で包囲され、さらに上記外部絶縁シースで包囲されてなるケーブルの構造が開示されている。
【0004】
前記RCAプラグ付きのケーブル構造や、特許文献1記載のケーブル構造などを含む従来のオーディオケーブルにおいては、導体の横断面積が制限され、音質向上のネックとなっている。このように、導体の横断面積が制限されながらも、導体の素材として金や銀などの貴金属を用いる、あるいは導線の表面に金や銀などのめっきを施す、などの工夫がなされているが、コネクタ部分の品質や特性の改善に留まっており、オーディオケーブル全体としての音質向上は限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−229435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、規格などによって端部のコネクタの形や大きさに制限を受けても、伝送損失の低減を図り、また、信号線相互間の静電容量の低減を図ることにより、音響特性を改善することができるオーディオケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るオーディオケーブルは、
導線が絶縁体で覆われ上記絶縁体がシールド導体で覆われた単位ケーブルが複数用いられ、
上記複数の単位ケーブルの両端部にコネクタが結合され、
上記複数の単位ケーブルのうち一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの一つの電極に接続され、
上記複数の単位ケーブルのうち他の一部の単位ケーブルの上記導線が上記両端部のコネクタの他の電極に接続され、
上記各シールド導体にグランド引き出し線が接続されている
ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
コネクタが、規格によって形や大きさなどの制限を受けても、横断面における導体の面積が増大し、導体の抵抗値が減少して伝送損失が減少する。ケーブル両端のコネクタから見れば、コネクタの電極の一方につながる導体と電極の他方につながる導体相互間の間隔を広く設定することができるため、導体間の静電容量を低減することができる。このような作用効果を有する本発明に係るオーディオケーブルを用いれば、音響特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るオーディオケーブルの一実施例を示す横断面図である。
図2】本発明に係るオーディオケーブルの別の実施例を示す横断面図である。
図3】本発明に係るオーディオケーブルにおける複数の単位ケーブルの合流部とその前後の外観例を示す斜視図である。
図4】本発明に用いることができる単位ケーブルの例を示す横断面図である。
図5】本発明に係るオーディオケーブルのさらに別の実施例を示す横断面図である。
図6】本発明に係るオーディオケーブルのさらに別の実施例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るオーディオケーブルの実施例について図面を参照しながら説明する。なお、本発明に係るオーディオケーブルは、両端部に音源やアンプなどに接続するためのコネクタが結合される。コネクタは、一般に、互いに嵌り合う雌型のジャックと雄型のプラグからなる。オーディオケーブルの両端部には一般にプラグが結合されているので、本発明の各実施例においては、オーディオケーブルの両端部にプラグが結合されていることを想定して説明する。また、オーディオケーブルのプラグは、規格化されたRCAプラグあるいはピンプラグといわれるプラグが一般に用いられているので、本発明の各実施例においてもRCAプラグが用いられているものとして説明する。さらに、RCAプラグは、中心部の円柱状の電極とその周りを囲むリング状の電極を有してなる。上記円柱状の電極は一般に信号電極とされている。本明細書では、上記信号電極を、「プラス電極」という場合もある。上記リング状の電極は一般に接地電極とされている。本明細書では上記接地電極を、「マイナス電極」という場合もある。
【実施例】
【0011】
本発明は、前述のとおり、複数の単位ケーブルを用いることを特徴としている。そこでまず、図4に示す単位ケーブルの例について説明する。図4において、単位ケーブルの横断面中心には導体1が配置されている。導体1は複数本の導電体からなる細線が束ねられることによって構成されている。細線の素材は、例えば銅線で構成することもできるが、図示の例では、3本の金クラッドOFCすなわち金を張り合わせた無酸素銅線からなる細線、1本のPCOCC(Pure Copper Ohno Continuous Casting Process)により製造された細線、1本の6NOFC細線、47本のOFC細線を束ねることによって構成されている。もっとも、どの種類の細線を用いるか、どの種類の細線の本数をいくつにするかは任意である。
【0012】
上記導体1の外周にはPE(ポリエチレン)からなる紐状の部材2が比較的大きなピッチでスパイラル状に巻かれることにより、コルデル構造になっている。紐状の部材2の外周側には絶縁体3が被せられている。導体1と絶縁体3の間には、紐状の部材2が介在することによって、紐状の部材2が占める空間を除き紐状の部材2の直径に相当する間隔の空間が生じている。絶縁体3の外周には介在シース4が被せられている。
【0013】
絶縁体3の外周にはシールドテープ5が螺旋状に隙間なく巻き付けられている。シールドテープ5は合成樹脂製のテープをベースにしてその一面側に銅などの導電層からなるシールド導体6が形成されたもので、シールド導体6が外周面側になるように絶縁体3に巻き付けられている。シールドテープ5の外周は内側シース7で覆われ、内側シース7の外周は外側シース8で覆われている。内側シース7はチタンの粉末が混入されたエラストマーからなり、外側シース8はPVC(ポリビニルクロライド)からなる。上に示したシールドテープ5、内側シース7、外側シース8の素材は一例であって、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、上に述べた単位ケーブルとほぼ同じ構造の単位ケーブルが2本束ねられたオーディオケーブルの実施例を示す。図1において、2本の単位ケーブルはそれぞれ、図4に示したとおり、導体1、紐状の部材2、絶縁体3、介在シース4、シールドテープ5、内側シース7を有してなる。2本の単位ケーブルは、双方の内側シース7の外周面が線接触するように平行に配置され、2本の単位ケーブルの外周が外側シース9で覆われることによって束ねられている。2本の単位ケーブルの各内側シース7の外周面相互間には、上記線接触部分の近傍に、ナイロン製の芯材を高機能熱可塑性エラストマーで覆った横断面円形の制振部材10が、上記線接触部分を挟んで両側に配置されている。外側シース9は、2本の単位ケーブルの外周面と制振部材10の外周面との間に生じる空間を埋めている。外側シース9の横断面形状は長円形の小判形になっている。
【0015】
上記2本の単位ケーブルの両端にはそれぞれ雌雄のコネクタの一方を構成するプラグが結合されている。一方の単位ケーブルの導線1は、両端において各プラグの一方の電極、例えば信号電極(プラス電極)に、他方の単位ケーブルの導線1は、両端において各プラグの他方の電極、すなわち接地電極(マイナス電極)に接続されている。2本の単位ケーブルの各シールド導体6は単位ケーブルの両端近くで合流し、グランド引き出し線が接続されている。グランド引き出し線については後で説明する。
【0016】
上記2本の単位ケーブルが束ねられた部分は断面積が大きくなっているので、この部分を大断面積部分という。2本の単位ケーブルの各シールド導体6同士が合流する部分を合流部という。2本の単位ケーブルの両端の上記シールド導体同士が合流したあとの部分の断面積は小さくなっているので、この部分を小断面積部分という。この小面積部分に上記プラグが結合され、プラグの各電極に、上記のように各導線1が接続されている。上記2本の単位ケーブルは、合流部分を含めて外側シース9で覆われることによって一体となっている。
【0017】
上記2本の単位ケーブルは、導体1がプラグの信号電極(プラス電極)に接続されているものと接地電極(マイナス電極)に接続されているものを区別するために、内側シース7の色を、例えば一方が白色、他方が赤色、というように色分けしている。
【0018】
図3は、2本の単位ケーブルの両端部におけるシールド導体6の合流部分とその前後部分の外観を示す。図3において、符号21は2本の単位ケーブルを束ねた大断面積部分を、符号23は上記2本の単位ケーブルの端部近くにおけるシールド導体6の合流部を、符号22は合流後のケーブルの小断面積部分を示す。2本の単位ケーブルは、合流部23において上記各シールド導体6が合流し、合流部23からケーブル端に至る部分が小断面積部分22となっている。
【0019】
単位ケーブルが複数束ねられた大断面積部分21、合流部分23、合流後の小断面積部分22は外側シース9で覆われている。上記ケーブル端の小断面積部分22に図示されないプラグが結合され、合流部23で合流した各単位ケーブルのシールド導体6にグランド引き出し線24が接続されている。グランド引き出し線24は上記プラグとは別に合流部23から外に引き出されている。グランド引き出し線24は、オーディオケーブルで接続される機器、例えば音源装置やアンプなどのシャーシなどに接続され、接続機器双方のアースラインが構成される。
【0020】
上記オーディオケーブルの実施例によれば、2本の単位ケーブルを束ね、各単位ケーブルの導線1をプラグの信号電極(プラス電極)と接地電極(マイナス電極)に振り分けて接続しているため、導体1の横断面積を実質的に増大させることができる。これにより、電気抵抗が低下して伝送損失が低減され、音響特性の改善を図ることができる。換言すれば、ケーブルの長さを長くしても音響特性の劣化を防ぐことができることにもなる。複数の単位ケーブルを束ねているため、複数の信号線間距離すなわち複数の導体1間の距離を離すことができ、導体1間の静電容量が低減され、この点からも音響特性の改善を図ることができる。プラグの信号電極につながる導線1とプラグの接地電極につながる導線1の横断面積を等しくすることができるため、信号を効率よく伝送することができる。
【実施例2】
【0021】
次に、図2に示す第2の実施例について説明する。この実施例は、図1に示す第1の実施例に外側シールド導体20を付加し、束ねられた2本の単位ケーブルを、外側シールド導体20で覆った構造になっている。束ねられた2本の単位ケーブルの外周面と外側シールド導体20の内周面との間に生じる空間は介在部材18で埋められ、外側シールド導体20の外周は外側シース9で覆われている。前記第1の実施例で用いられていた制振材は、この実施例では用いられていないが、制振材を付加してもよい。単位ケーブル自体の構成は図4に示す構成と同じであるから、説明は省略する。
【0022】
図2に示す第2の実施例において、2本の単位ケーブルが束ねられている部分は図3に示す大断面積部分21である。2本の単位ケーブルの各導線1は図3に示す合流部23において合流し、2本の単位ケーブルの各シールド導体6も合流部23において合流している。合流した導線1およびシールド導体6は小断面積部分22につながっていて、小断面積部分22に図示されないコネクタの片方であるプラグが結合されている。このプラグの信号電極(プラス電極)に、合流した上記導線1が電気的に接続され、プラグの接地電極(マイナス電極)に、合流した上記シールド導体6が電気的に接続されている。
【0023】
また、合流部23において、外側シールド導体20に図3に示すグランド引き出し線24が接続され、合流部23からグランド引き出し線24が引き出されている。グランド引き出し線24は、オーディオケーブルによって接続される音源装置やアンプなどのオーディオ機器のシャーシなどに接続され、導線1へ侵入しようとする電磁波などの雑音源を阻止する。
【0024】
なお、図2に示す構成において、前記第1の実施例のように、一方の単位ケーブルの導線1はプラグの信号電極(プラス電極)に、他方の単位ケーブルの導線1はプラグの接地電極(マイナス電極)に接続し、各単位ケーブルのシールド導体6と外側シールド導体20を合流させてこれにグランド引き出し線24を接続してもよい。
【実施例3】
【0025】
次に、図5に示す第3の実施例について説明する。この実施例は、単位ケーブルの構造およびオーディオケーブルの断面形状が前記実施例と異なっている。まず、単位ケーブルの構造を説明すると、単位ケーブルは、導体1とその外周に螺旋状に巻かれることによりコルデル構造を形成している紐状の部材2と、その外周を覆う円筒形状の絶縁体3からなり、前述の単位ケーブルと対比して簡単な構造になっている。
【0026】
上記構造の横断面円筒形状の単位ケーブルが2個、双方の絶縁体3の外周面を線接触させて束ねられ、上記2個の単位ケーブルが、横断面円形に巻かれたシールドテープ15で覆われている。シールドテープ15は合成樹脂製のベース部材とその一面に形成された導電層からなるシールド導体16を有し、このシールド導体16を外側にして隙間なく螺旋状にかつ円筒形状に巻き回されている。
【0027】
上記のように、横断面円形の2個の単位ケーブルを横断面円形のシールドテープ15で覆う構造になっているため、2個の単位ケーブルの外周面とシールドテープ15の内周面との間に分銅形の空間が生じている。この空間には二つの横断面円形の制振部材30が配置されるとともに、二つの制振材30で埋めることができない上記空間の残りは介在部材12によって埋められている。図5に示す横断面において、各制振部材30の外周面が2個の単位ケーブルの外周面とシールド導体16を保持するベース部材15の内周面の3点で接するように、各制振部材30の外径が定められている。制振部材30は内側と外側の2重構造になっていて、それぞれの材質が異なっている。制振部材30の材質は本発明の要旨に関係がないため、詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施例において、介在部材12は、綿糸を撚り合わせたものを用いている。
上記シールド導体16の外周はシース7によって覆われている。
【0029】
上記第3の実施例も、2本の単位ケーブルが束ねられている部分は図3に示す大断面積部分21となっており、2本の単位ケーブルの各導体1同士が合流部23で合流している。前記第1の実施例と同様に、合流した後の小断面積部分22にはプラグが結合されている。上記プラグの一方の電極である信号電極(プラス電極)に、一方の単位ケーブルの導線1が接続され、上記プラグの他方の電極である接地電極(マイナス電極)に、他方の単位ケーブルの導線1が接続されている。シールド導体16には図3に示すグランド引き出し線24が合流部23において接続され、合流部23から上記プラグとは別に外部に引き出されている。
【0030】
上記第3の実施例は、単位ケーブル自体がシールド導体を有するものではないが、2個の単位ケーブルをまとめてシールド導体16で覆っているため、前記第1の実施例と同様のシールド効果およびその他の作用効果を得ることができる。この実施例においても、2個の単位ケーブルの一方と他方とを識別するために、それぞれの絶縁体3の色を例えば白色と赤色にするとよい。プラグの一方の電極につながる導線1の断面積とプラグの他方の電極につながる導線1の断面積は等しくなっている。
【実施例4】
【0031】
次に、図6に示す第4の実施例について説明する。この実施例は、図5に示す前記第3の実施例に係るオーディオケーブルが2本並設されて束ねられ、これら2本のオーディオケーブルが外側シース40で覆われた構造になっている。本明細書では、個々のオーディオケーブルを「オーディオケーブルユニット」という。したがって、図6に示す実施例では、2本のオーディオケーブルユニットが束ねられ、合計4本の単位ケーブルが束ねられて4個の導体1が並置された形になっている。
【0032】
上記第4の実施例に係るオーディオケーブルの両端部へのプラグの接続形態は以下のとおりである。一方のオーディオケーブルユニットを構成する2本の単位ケーブルの各導線1同士が合流し、合流した各導線1が上記プラグの一方の電極、例えば信号電極(プラス電極)に接続されている。他方のオーディオケーブルユニットを構成する2本の単位ケーブルの各導線1同士が合流し、合流した各導線1が上記プラグの他方の電極、例えば接地電極(マイナス電極)に接続されている。2本のオーディオケーブルユニットのシールド導体16同士が合流し、合流したシールド導体16に、図3に示すグランド引き出し線24が接続されている。
【0033】
上記第4の実施例においても、図3に示すように、4本の単位ケーブルからなる2本のオーディオケーブルユニットを束ねた部分は大断面積部分21となり、複数の導線1同士と複数のシールド導体同士が合流部23で合流する。合流後のオーディオケーブルは、大断面積部分21よりも断面積の小さい小面積部分22となる。グランド引き出し線24は合流部23から引き出されている。
【0034】
以上説明した第4の実施例によれば、前述の第1、第2、第3の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
なお、上記第4の実施例において、それぞれ2本の単位ケーブルからなる2本のオーディオケーブルユニットをそれぞれ独立したオーディオケーブルとすることにより、ステレオオーディオケーブルを構成することができる。すなわち、各オーディオケーブルユニットの両端にそれぞれプラグを結合する。一方のオーディオケーブルユニットの各端部に結合したプラグの信号電極(プラス電極)に、上記オーディオケーブルユニットを構成する2本の単位ケーブルの各導線1を合流させて接続し、上記プラグの接地電極(マイナス電極)に、上記オーディオケーブルユニットを構成するシールド導体16を接続する。また、他方のオーディオケーブルユニットの各端部に結合したプラグについても、同様に接続する。このようにして構成されたステレオオーディオケーブルによれば、各オーディオケーブルユニットは複数単位のケーブルが束ねられて構成されるため、前記各実施例の効果と同様の効果を得ることができる。
【0036】
第4の実施例において、4個の単位ケーブルを識別するために、各単位ケーブルの絶縁体3を色分けするとよい。絶縁体3の素材としてポリエチレンを用いる場合、4個の単位ケーブルの識別のために、例えば、ポリエチレン自体のもともとの色、黄色、白色、赤色、青色、というように色分けするとよい。
【0037】
以上説明した何れの実施例においても、複数の導体1を有していて、一つの実施例内における各導体1の断面積は等しくなっている。したがって、例えば、一つの導体1のグループを信号線のプラス側、他の一つの導体1のグループを信号線のマイナス側として使い分ける場合、プラス側とマイナス側の信号線の断面積が等しくなる。
シールド導体の断面積についても、可能であれば導体1の断面積と等しくすることが音質の点から有利である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るオーディオケーブルは、規格化されたRCAケーブル(「ピンプラグ」ともいわれる)として構成することもできるし、スピーカケーブル、その他オーディオ用のケーブルとして用いることができる。各実施例に示すように、制振部材を埋め込んだものはカーオーディオ用ケーブルとして好適であるが、室内で用いるオーディオ装置をつなぐケーブルとして用いても所期の効果を得ることができる。
【0039】
各実施例においては、導体の外周側がコルデル構造となっており、その外周側が絶縁層、さらにはその外周側がシールド導体、というように、同軸ケーブル構造の単位ケーブルが用いられている。しかし、単位ケーブルの構造は必ずしも同軸ケーブル構造になっている必要はなく、ツイスト構造すなわち撚り線からなる導体とその外周側の絶縁体、網状のシールド線を有してなる比較的簡単な構造のものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 導線
2 紐状の部材
3 絶縁体
6 シールド導体
7 内側シース
9 外側シース
14 制振部材
20 外側シールド導体
21 大断面積部分
22 小断面積部分
23 合流部
24 グランド引き出し線
図1
図2
図3
図4
図5
図6