(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
シリカ系複合粒子
本発明に係るシリカ系複合粒子は、シリカ粒子の表面にアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む非晶質の酸化物層Aと、アルミニウムを含む非晶質の酸化物層Bとを有するシリカ系複合粒子であって、該酸化物層Aと酸化物層Bに含まれるアルミニウム含有量の合計がシリカ粒子に対してAl
2O
3換算基準で0.5〜150重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0015】
このような2つの酸化物層を表面に有するシリカ系複合粒子は、研磨速度が高く、かつスラリー中での分散性に優れ、研磨用粒子として用いるのに適している。
前記シリカ粒子はシリカを主成分とするものであれば良く、さらに副成分あるいは不純物としてナトリウム、カリウムなどの元素を含んでいてもよい。
【0016】
前記シリカ粒子の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、最終的に得られるシリカ系複合粒子の大きさが10〜1000nmの範囲となるようなものであることが好ましい。
【0017】
シリカ粒子の形状は特に制限されるものではなく例えば球状、金平糖状、鎖状そのほか公知の形状のシリカ粒子を用いることができる。
前記シリカ粒子は非晶質であることが好ましい。
【0018】
前記シリカ粒子が結晶質であると、シリカ系複合粒子同士が焼結して凝集体を形成し、粉砕することが困難となるため、研磨スラリーとして使用することが難しい。また、シリカ粒子の結晶性が高くなると結晶性のクリストバライトを含み、工業上での使用が法的に制限される場合があり好ましくない。
【0019】
前記酸化物層Aは非晶質であって、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含むものである。
【0020】
前記酸化物層Aは単独酸化物であっても複合酸化物であってもよい。
上記の元素を含む非晶質の酸化物層Aを非晶質のシリカ粒子の表面に有することによっ て、焼成工程によるシリカ粒子の焼結を抑制することができる。
【0021】
上記の元素はシリカとの間に複合酸化物を形成して安定化しやすく、このような元素を含む酸化物層Aを有するシリカ系複合粒子は焼成した際の焼結が大幅に抑制され、シリカ粒子を結晶化させることがないので、容易に粉砕することができ、粒子径や粒度分布、粒子形状の制御が容易に可能である。
【0022】
また、pHがアルカリ性の領域で他の元素との複合化を実施する場合に、シリカと他の元素成分との間ではゼータ電位の差が大きく電気的に反発し、シリカ粒子の表面に酸化物層Bの前駆体を形成させることが困難な場合があるが、上述した元素を含む酸化物層Aをその中間に設けることで電気的な反発が少なくなり、酸化物層Aの表面に大量の酸化物層Bを均一かつ安定に形成させることが可能となり、シリカ系複合粒子の研磨速度を大幅に向上させることができる。
【0023】
前記酸化物層Aは非晶質であることが好ましい。酸化物層Aが結晶質であるとシリカ系複合粒子の焼成時に焼結し研磨用粒子として用いることができないので好ましくない。
前記非結晶質の酸化物層Aは、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄、ペルオキソチタン酸、ポリジルコン酸、硝酸第一セリウムより選ばれたいずれか1種以上を由来とするものであることが好ましい。
【0024】
ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄、ペルオキソチタン酸、ポリジルコン酸を原料として得られる酸化物層Aは、上記材料が金属の重合体を含むために、シリカ粒子表面での水酸化物の形成が穏やかで均一となり、安定に均一な酸化物層Aを形成できるので、シリカ系複合粒子の焼結防止や研磨速度向上の効果が高く好ましい。
【0025】
硝酸第一セリウムを原料として得られる酸化物層Aは、硝酸第一セリウムに由来する3価のセリウムイオンとシリカ粒子表面の反応性が高く、均一な酸化物層Aを形成することができるので、シリカ系複合粒子の焼結防止や研磨速度向上の効果が高く好ましい。
【0026】
シリカ系複合粒子に含まれる酸化物層Aの量については、特に制限されるものではないが、好ましくは、シリカ粒子Aの固形分重量に対して酸化物層Aに含まれる金属元素の酸化物換算基準の固形分重量が0.3〜2.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0027】
前記酸化物層Aの量が0.3重量%未満の場合には、所望量の酸化物層Bを形成させることができない場合があったり、シリカ粒子が結晶質となる場合があったりするので好ましくない場合がある。
【0028】
また、前記酸化物層Aの量が2.0重量%を越えると酸化物層Aの金属元素に由来する単独の酸化物微粒子が生成する場合があるので、好ましくない場合がある。
なお、前記金属元素の酸化物換算はAl
2O
3、ZrO
2、TiO
2、Fe
2O
3、Mn
2O
3、ZnO、CeO
2、Y
2O
3、CaO、MgO、La
2O
3、SrO)とし、フッ素の場合は原子換算基準(F)の重量の合計とし、シリカ粒子の固形分重量はSiO
2換算基準とする。
【0029】
また、酸化物層Aが、副成分としてさらにケイ素、塩素、窒素および硫黄などを含んでいてもよい。(ケイ素については、測定法が問題となった場合に削除します。)
また、前記酸化物層Aがアルミニウムを含む場合には、シリカ粒子に対するアルミニウムの量がAl
2O
3換算基準で100重量%未満となるようにすることが好ましい。
【0030】
酸化物層Aがアルミニウムを100重量%以上含むと、アルミニウムを含む酸化物層Bを形成させることができないので好ましくない。
従来の結晶性の無機酸化物粒子を粉砕し研磨用スラリーとする際には、粒子同士の焼結のため、該粒子の粒子径や粒度分布を制御することは困難であるが、本発明に係るシリカ系複合粒子は、シリカ系複合粒子同士の焼結が抑制され、シリカ粒子の非晶質性が保たれているので、該シリカ粒子の一次粒子径や形状が焼成工程などで損なわれにくく、シリカ系複合粒子の粒子径、粒度分布および形状を制御することが可能となり、これによって研磨スラリーの性能を向上させることができる。
【0031】
前記非晶質の酸化物層Bは、アルミニウムを含むものである。
前記酸化物層Bは、アルミニウムの単独酸化物であっても、複合酸化物であってもよい。
【0032】
また、前記酸化物層Bは、前記酸化物層Aと同一のものであっても良い。
その場合、酸化物層Aと酸化物層Bの境界は区別できないが、製造工程において、シリカ粒子表面に2段階に分けて酸化物層を形成させたものであれば良い。
【0033】
前記酸化物層Aの上にアルミニウムを含む酸化物層Bを形成させることで、シリカ系複合粒子の研磨速度と分散性を向上させることができる。
すなわち、シリカ粒子表面に前記酸化物層Aを形成させた上で、酸化物層Bをさらに形成させることによって、アルミニウムの修飾量を従来技術では達成できなかった範囲まで増やすことができ、研磨速度を向上させることができるとともに、焼成工程に処した際のシリカ粒子Aの焼結が抑制されるので、研磨スラリー中での分散性が向上する。
【0034】
前記酸化物層Bは非晶質である。この酸化物層Bは、結晶質であっても特に問題はないが、酸化物層Bに含まれるアルミニウムは安定に高分散しているため、結晶質になりにくい。
【0035】
なお、前記シリカ粒子および前記酸化物層A、酸化物層Bの結晶性については、測定方法の欄に後述するとおり、XRD回折法による判別を基準とする。
また、前記酸化物層Bは、さらに副成分としてケイ素、塩素、窒素および硫黄などを含んでいてもかまわない。(ケイ素については同上)
【0036】
前記酸化物層Aと前記酸化物層Bに含まれるアルミニウム含有量の合計のシリカ粒子に対する比率の下限値としては、Al
2O
3換算基準で 0.5重量%、好ましくは、2重量%である。上限値としては、Al
2O
3換算基準で 150重量%、好ましくは、100重量%、より好ましくは50重量%、さらに好ましくは、10 重量%である。
【0037】
より具体的には、Al
2O
3換算基準で0.5〜150重量%、より好ましくは2〜100重量%の範囲にあることが必要である。
前記アルミニウム含有量が0.5重量%未満の場合には、シリカ系複合粒子の研磨速度が低下するので好ましくない。前記アルミニウム含有量が150重量%を超えると、アルミナの結晶が成長する事があり、粒子形状もいびつになるとなるので好ましくない。
【0038】
アルミニウムは酸化物層Bだけに含まれていても良く、酸化物層Aと酸化物層Bの両方に含まれていても良い。両方に含まれる場合にはその合計が上記範囲にあればよい。
本発明に係わるシリカ系複合粒子は、2層の酸化物層をシリカ粒子表面に段階的に形成させることで、シリカ系複合粒子のアルミニウム含有量を増やすことができるので、研磨速度を向上させることができる。
【0039】
前記酸化物層Bは、ポリ塩化アルミニウムを原料とした酸化物層であることが好ましい。ポリ塩化アルミニウムを用いると、アルミニウムの重合体を含むため、酸化物層Bの前駆体を形成する際にその反応が穏やかで均一なものとなり、安定な酸化物層Bが形成できるので、シリカ系複合粒子の研磨速度が向上し、好ましい。
【0040】
なお、前記酸化物層Bの形成量は、前記酸化物層Aと酸化物層Bに含まれるアルミニウムがAl
2O
3換算基準でシリカ粒子のSiO
2換算基準の固形分重量に対して0.5〜150重量%となるような量を形成すればよい。
【0041】
前記シリカ系複合粒子の平均粒子径は10〜1000nm、より好ましくは50〜200nmの範囲にあることが好ましい。
前記平均粒子径が10nm未満の場合には、シリカ粒子が結晶質となる場合があり、また前記平均粒子径が1000nmを超えると研磨時に研磨基材の表面にキズが発生する場合があるので、好ましくない。
【0042】
研磨用スラリー
本発明に係る研磨用スラリーは、本発明に係るシリカ系複合粒子を含むことを特徴としている。
前記研磨用スラリーは、ハードディスクや半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズが少ないなどの効果に優れている。
前記研磨用スラリーは、さらに分散溶媒として、水および/または有機溶媒を含む。
【0043】
前記分散溶媒としては例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。
さらに、前記研磨用スラリーは、所望により、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を含んでいても良い。
【0044】
また、前記研磨用スラリーの分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いても良い。
【0045】
前記研磨スラリーに含まれるシリカ系複合粒子の固形分濃度は3〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
前記濃度が3重量%未満の場合には研磨速度が低下する場合があるので好ましくない。
前記濃度が30重量%を超えても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ないので、不経済となり好ましくない。
【0046】
シリカ系複合粒子の製造方法
本発明に係るシリカ系複合粒子の製造例を以下に説明する。
本発明に係るシリカ系複合粒子の好ましい製法の一例は、下記工程
(1)シリカ粒子Aを含むシリカゾルに、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む金属塩および/または高分子化合物を添加したのち、5〜98℃で0.5〜24時間攪拌して混合液を得る工程と、
(2)前記工程で得られた混合液に、さらにアルミニウムを含む高分子化合物を添加して5〜98℃で0.5〜24時間攪拌してシリカ系複合粒子の前駆体粒子を含む分散液を得る工程と、
(3)前記工程で得られた分散液を乾燥させたのち、400〜1200℃で焼成する工程
を含むことを特徴としている。
【0047】
工程(1)
この工程では、シリカ粒子を含むシリカゾルに、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む金属塩および/または高分子化合物を添加したのち、5〜98℃で0.5〜24時間攪拌することによって、シリカ粒子表面に前記金属元素の水酸化物または酸化物を形成させる。
【0048】
この水酸化物または酸化物が後の焼成工程により酸化物Aとなる。
この水酸化物または酸化物をシリカ粒子の表面に一旦形成することにより、次の工程で酸化物層Bあるいはその前駆体がシリカ粒子の表面に形成しやすくなるので、シリカ系複合粒子の研磨速度や焼結抑制効果が向上する。
【0049】
シリカ粒子を含むシリカゾルとしては、公知のものを用いることができる。
例えば特開昭63−045113号公報、特開昭63−064911号公報に記載される製造方法に準じて製造することができ、カタロイドSI−80(日揮触媒化成株式会社製)、スノーテックスZL(日産化学工業株式会社製)などの市販品を用いても良い。
【0050】
またアルコキシシランの加水分解により製造したシリカゾルを用いてもよく、乾式法により製造したシリカ粒子を水に分散させた分散液を用いても良い。
前記シリカゾルに含まれるシリカ粒子の平均粒子径は、最終的なシリカ系複合粒子の平均粒子径が10nm〜1000nmの範囲となるようなものであれば良く、後の焼成工程の条件にもよるが、焼成による粒子径の減少を考慮すると概ね13〜1100nmの範囲にあればよい。
【0051】
なお、本発明のシリカ系複合粒子は粒子の焼結を抑制する効果に優れるため、最終的なシリカ系複合粒子の平均粒子径や粒度分布、粒子形状などは原料シリカゾルの正常に準じて決定される。従って、シリカ系複合粒子の研磨特性を制御するには、用途などに応じてこの時点で所望の性状を有するシリカゾルを選択すればよい。
【0052】
また、用いるシリカゾルの分散媒は水を含むことが好ましく、水ゾルを使用することが好ましい。
シリカゾルの濃度としてはSiO
2換算基準での固形分濃度が20〜40重量%の範囲にあるものが好ましい。
【0053】
前記固形分濃度が20重量%未満の場合には、製造工程でのシリカ濃度が低くなり生産性が悪いので好ましくない。前記固形分濃度が40重量%を超えても、その後の工程で希釈をするので特に問題はない。シリカ濃度は扱いが可能な範囲で上限を設定することができる。
【0054】
シリカゾルのpHは特に限定されるものではないが、8〜10.5の範囲にあることが好ましい。
また、陽イオン交換樹脂あるいは陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜などを用いて、必要に応じて、シリカゾルの脱イオン処理を行うことができる。
【0055】
脱イオン処理により不純物イオンなどを除去したシリカゾルは表面にケイ素を含む水酸化物を形成させやすいのでより好ましい。
アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、鉄、マンガン、亜鉛、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、フッ素、ランタニウム、ストロンチウムより選ばれた1種以上の元素を含む金属塩および/または高分子化合物の一例としては、これらの元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシド、ポリ硫酸鉄、ペルオキソチタン酸、ポリジルコン酸、ポリ塩化アルミニウムなどを用いることができる。
【0056】
上記の元素を含む高分子化合物、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄、ペルオキソチタン酸は、上記元素の重合体を含み、シリカ粒子表面における水酸化物の形成が穏やかで、安定に均一な前駆体を形成することができるので、特に好ましい。
【0057】
また、硝酸第一セリウムは、3価のセリウムを含み、シリカ粒子との反応性に優れるので、シリカ系粒子複合粒子の焼結の抑制と研磨速度の増加効果が高く好ましい。
前記金属塩および/または高分子化合物の添加量は、特に制限されるものではないが、好ましくはシリカ粒子の固形分重量に対して前記金属塩および/または高分子化合物の重量比が酸化物換算重量比で0.01〜1.5の範囲にあることが望ましい。
【0058】
前記金属塩および/または高分子化合物の添加量が上記範囲にあると高い収率で酸化物層Aが形成されるので好ましい。
なお、この工程でアルミニウムを含む金属塩または高分子化合物を用いる場合には、最終的に得られるシリカ系複合粒子において、酸化物層Aと酸化物層Bのアルミニウム含有量の合計がシリカ粒子に対してAl
2O
3換算基準で0.5〜150重量%となるような量に調整すれば良い。
【0059】
前記攪拌の際の温度は5〜98℃、より好ましくは20〜80℃の範囲にあることが好ましい。前記温度が5℃未満の場合には反応が進まず酸化物層Aが形成されないので好ましくない。また前記温度が98℃を超えると反応器壁面にスケールなどが発生するので好ましくない。
【0060】
前記攪拌の時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜8時間の範囲にあることが好ましい。前記温度が0.5時間未満の場合には反応が未完結となるので好ましくない。前記温度が24時間を超えると、既に反応は完結しておりそれ以上反応が進まないので不経済である。
【0061】
また、この工程で得られた混合液を、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮して、次の工程(2)に処しても良い。
このとき混合液の固形分濃度は23〜27重量%の範囲となるように調整すればよい。
【0062】
また、この工程で得られた混合液を、陽イオン交換樹脂あるいは陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜などを用いて脱イオン処理してもよい。このような処理は、用いる原料にもよるが、不純物除去などの目的で必要に応じて行うことができる。
【0063】
工程2
この工程は、前記工程(1)で得られた混合液に、さらにアルミニウムを含む高分子化合物を添加して5〜98℃で0.5〜24時間攪拌することにより、シリカ系複合粒子の前駆体粒子を含む分散液を得る工程である。
【0064】
アルミニウムを含む高分子化合物としては、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。
前記ポリ塩化アルミニウムの添加量は、最終的に得られるシリカ系複合粒子の酸化物層Aと酸化物層Bに含まれるアルミニウムがAl
2O
3換算基準でシリカ粒子の固形分重量に対して0.5〜150重量%の範囲となるように添加すればよい。
【0065】
さらに、本工程(2)で得られた分散液に、酸またはアルカリを添加して、pH5〜9、より好ましくは8〜9の範囲に調整してから、次の工程(3)に処することが好ましい。
【0066】
あるいは、本工程において、前記工程(1)で得られた混合液に、ポリ塩化アルミニウムを添加する際に、分散液が上記pH範囲となるように酸またはアルカリで調整してもよい。
【0067】
このようなpH条件に調整すると、得られるシリカ系複合粒子の焼結を抑制する効果がさらに高まるため好ましい。
また、この工程で得られた分散液を、陽イオン交換樹脂あるいは陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜などを用いて脱イオン処理してもよい。このような処理は、用いる原料にもよるが、不純物除去などの目的で必要に応じて行うことができる。
【0068】
工程(3)
この工程では、前記工程で得られた分散液を乾燥させたのち、400〜1200℃で焼成することにより、シリカ複合粒子を得る工程である。この工程により、シリカ粒子の結晶性が増加し、シリカ系複合粒子の研磨速度を向上させることができる。
【0069】
しかも、酸化物層Aと酸化物層Bとを2段階に形成させているために、焼成してもシリカ系複合粒子が焼結することなく、高い分散性を維持することができる。
このシリカ系複合粒子は一次粒子の形状や粒子径が変動しにくいので、シリカ系複合粒子の形状や粒子径、粒度分布制御が容易である。
【0070】
前記焼成温度は400〜1200℃、より好ましくは800〜1000℃の範囲にあることが好ましい。前記温度が400℃未満の場合には、酸化物層Bの結晶化が不十分となるので好ましくない。前記温度が1200℃を超えると酸化物層Bの結晶が異常成長したり、シリカ粒子が結晶化したりするので好ましくない。
このようにしてシリカ系複合粒子を含む焼成体を得ることができる。
【0071】
研磨スラリーの製造方法
上記のような製造方法により得られたシリカ系複合粒子の焼成体を、粉砕したのち、分散溶媒に分散させ、必要に応じて希釈または濃縮することにより、シリカ系複合粒子を含む研磨スラリーを得ることができる。
【0072】
前記粉砕と分散は同時に行ってもよい。
前記粉砕は公知の方法で行うことができ、乾式法であっても湿式法であってもとく、例えばビーズミル、ジェットミル、サンドミル、ロールミル、超音波分散機、アルティマイザー、ナノマイザーのような装置を用いて行えばよい。
【0073】
このときシリカ系複合粒子の平均粒子径が10〜1000nmの範囲となるように粉砕すればよい。
また研磨用スラリーの固形分濃度は3〜30重量%となるように調整すればよい。
【0074】
分散溶媒については上述したものを用いることができる。
またこの研磨用スラリーに上述した添加剤を添加してもよい。
本発明に係る研磨スラリーは、シリカ系複合粒子を含むので、研磨速度が非常に高く、分散性に優れ、必ずしも高価な酸化セリウムを使用する必要がない。また、酸化セリウムを使用する場合でも、酸化セリウムの使用量を低減することができるので、安価に製造することが可能である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定
されるものではない。
[測定方法]
(1)平均粒子径の測定方法
シリカ系複合粒子の平均粒子径は、シリカ系複合粒子を固形分濃度で1重量%含む水分散液を、日機装株式会社マイクロトラックUPA装置に供して、レーザー回折・散乱法により、シリカ系複合粒子の平均粒子径を求めた。
なお、原料に使用したシリカゾルに含まれるシリカ粒子の平均粒子径については、BET表面積換算の平均粒子径についても参考までに併記した。
【0076】
(2)シリカ系複合粒子の結晶構造の解析方法
実施例および比較例で得られたシリカ系複合粒子の焼成粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気株式会社製、RINT1400)により測定したXRD回折パターンから結晶構造を調べた。
【0077】
(3)シリカ系複合粒子の組成分析
[SiO
2含有量の測定方法]
シリカ系複合粒子の固形分重量から、不純物としてのナトリウム成分(Na
2O換算)と、酸化物層Bの含有量と、酸化物層Cを含む場合にはその含有量とを差し引いたものをSiO
2の含有量として求めた。
【0078】
[Na
2O含有量の測定方法]
実施例で調製したシリカ系複合粒子の研磨用スラリー2gを容量100mlの白金皿に採取したのち0.1mgまで秤量し、これをサンドバス上で200℃、20分間乾燥させたのち、バーナーで700℃、5分間加熱して有機物を除去後、10mlのHFと5mlのH
2SO
4を加えて白煙が出るまで加熱する。さらに、これを100mlとなるように純水で希釈した後、原子吸光装置(株式会社日立製作所製、Z−5300、ソフトウェアZ−2000)を用いて、シリカ系複合粒子に含まれるナトリウムの含有量をNa
2O換算基準で測定した。なお、カリウムも同様の方法で測定できる。
【0079】
[Al
2O
3含有量の測定方法]
1)実施例で調製したシリカ系複合粒子の研磨用スラリー2gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2) 濃度63%の硫酸2mlとフッ化水素酸20mlを加えて、400℃のサンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
3) 上記2)で得られた試料を室温まで冷却したのち、塩酸5mlと水を約30ml加えて、サンドバス上で加熱し溶解させる。
4) 上記3)で得られた試料を室温まで冷却したのち、容量200mlのフラスコに供して、水で200mlに希釈して試料溶液を作成する。
5) 上記4)で得られた試料溶液に含まれるアルミニウム、ジルコニウム、鉄、セリウムの量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所株式会社製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)により測定し、Al
2O
3換算基準での重量%を求めた。
【0080】
なお、その他の金属元素の含有量についても誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所株式会社製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)により酸化物換算基準での含有量を測定すればよい。
【0081】
ただしフッ素の含有量についてはケルダール蒸留装置を用いてシリカ系複合粒子の水蒸気蒸留を行い、得られた留出液をフッ化物イオン電極を有するイオンメーターにて測定して求めればよい。
【0082】
(4)研磨用スラリーの研磨評価
被研磨基板として、ハードディスク用アルミノシリケート製ガラス基板を準備した。
この基板はドーナツ形状で、外径64mm、内径20mm、厚み0.635mmである。この基板は一次研磨ずみで、表面粗さ(RA)は0.3nmであった。
【0083】
この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ナノファクター社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板荷重0.18MPA、テーブル回転速度30rpmで、固形分濃度が9重量%の研磨用スラリーを20g/分の速度で10分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の研磨基板の重量差と研磨時間から、研磨速度(nm/min)を算出した。
【0084】
[実施例1]
シリカゾルの調製
シリカ粒子を含むシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製カタロイドSI-80P、SiO
2固形分濃度40.5%、BET比表面積換算の平均粒子径80nm、レーザー回折・散乱法による平均粒子径105nm)493.8gにイオン交換水246.9gを添加してSiO
2濃度27%に調整した。これに陽イオン交換樹脂(三菱化学製SK-1BH)114gを徐々に添加して30分間攪拌を行ったのち、樹脂を分離した。この時のpHは1.8であった。次に陰イオン交換樹脂(三菱化学製SANUPC)30gを徐々に添加して30分間攪拌したのち樹脂を分離した。この時のpHは4.2であった。得られたシリカゾルにイオン交換水を加えてSiO
2固形分濃度23%のシリカゾル782.6gを得た。
【0085】
工程(1)
次に、このシリカゾル782.6gを攪拌しながら、ポリ塩化アルミニウム(多木化学製PAC#1000:Al
2O
3固形分濃度23.55重量%)6.96gを添加して1時間攪拌することにより、水酸化アルミニウムで被覆されたシリカ粒子を含む混合液789.6gを得た。次にイオン交換水を1634g加えたのち、陰イオン交換樹脂150gを徐々に添加し、30分間攪拌したのち樹脂を分離した。この時のpHは9.5であった。こうして固形分濃度9.5重量%の混合液1800gを得た。
【0086】
工程(2)
この混合液1800gにさらにポリ塩化アルミニウム(多木化学製PAC#1000:Al
2O
3固形分濃度23.55重量%)6.61gを攪拌しながら添加して、さらに1時間攪拌して分散液を得た。なお、攪拌時の液温は25℃であった。
【0087】
次に、この分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学製SANUPC)150gを徐々に添加して、30分攪拌したのちに樹脂を分離した。
このときのpHは9.5であった。この分散液に酢酸を添加してpHを7に調整した。
【0088】
工程(3)
前記工程で得られた分散液を100℃の乾燥機で16時間乾燥させたのち、1000℃のマッフル炉にて2時間焼成を行いシリカ系複合粒子の粉体170gを得た。
【0089】
この焼成粉体に含まれるシリカ系複合粒子のXRD回折パターンを観察したところ、シリカとアルミニウムに由来する結晶ピークは観測されず、非晶質のシリカのパターンが得られ、シリカ粒子、酸化物層A、酸化物層Bのいずれも非晶質であることがわかった。
【0090】
また、このシリカ系複合粒子に含まれるSiO
2は96.3重量%、Al
2O
3は2.3重量%であって、酸化物層Aおよび酸化物層Bに含まれるAl
2O
3はシリカ粒子に対し2.4重量%であった。
【0091】
得られた焼成体のうち126gにイオン交換水378gを加え、直径0.5mmのガラスメジアにて180分間湿式粉砕を行い固形分濃度20重量%のスラリー409gを得た。
【0092】
これをさらにイオン交換水で希釈し固形分濃度9重量%としたものを研磨スラリーとして評価したところ、研磨速度は171nm/minであった。
またこの研磨スラリーに含まれるシリカ系複合粒子のレーザー回折・散乱法による平均粒子径は216nmであった。
【0093】
[比較例1]
シリカ粒子を含むシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製カタロイドSI-80P、SiO
2固形分濃度40.5%、BET比表面積換算の平均粒子径80nm、レーザー回折・散乱法による平均粒子径105nm)493.8gにイオン交換水を添加してSiO
2固形分濃度9重量%のシリカゾルとして、これを研磨用スラリーとして評価したところ、研磨速度は30nm/minであった。
【0094】
[比較例2]
実施例1のシリカゾルの調製の工程にて製造したシリカゾル(粒子径80nm)に3重量%のアンモニア水を添加してpHを7としたのち、100℃の乾燥機で16時間乾燥させて、1000℃のマッフル炉で2時間焼成を行いシリカ粒子の焼成粉体200gを得た。
【0095】
このシリカ粒子のXRDパターンを測定したところ、クリストバライトのSiO
2に由来する鋭い結晶ピークが確認された。この粉体126gにイオン交換水378gを加え、直径0.5mmのガラスメジアにて270分間湿式粉砕を行ったが、粒子焼結が進んでおり、粉砕することができなかったため、研磨スラリーとして用いることができなかった。
【0096】
[比較例3]
実施例1の工程(1)で調製した、水酸化アルミニウムで被覆されたシリカ粒子の混合液1800gに5重量%の酢酸を加えてpH7とし、100℃の乾燥機で16時間乾燥させたのち、1000℃のマッフル炉で2時間焼成を行いシリカ系複合粒子の複合粉体155gを得た。このシリカ系複合粒子のXRDパターンを測定したところ、ケイ素およびアルミニウムに由来する結晶ピークは確認されず、シリカの非晶質に由来するパターンが確認された。
【0097】
また、このシリカ系複合粒子に含まれるSiO
2は98.6重量%、Al
2O
3は0.9重量%であって、Al
2O
3含有量ははシリカ粒子に対し0.9重量%であった。
この粉体126gにイオン交換水378を加えて直径0.5mmのガラスメジアにて90分間湿式粉砕を行い、固形分濃度20重量%のスラリー410を得た。これをイオン交換水で希釈して固形分濃度9重量%のスラリーとし、研磨用スラリーとして評価したところ、研磨速度は33nm/minであった。
【0098】
またこの研磨スラリーに含まれるシリカ系複合粒子のレーザー回折・散乱法による平均粒子径は167nmであった。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
以上の実施例および比較例から、以下のことがわかる。
【0100】
本発明に係わるシリカ系複合粒子、すなわち、実施例のシリカ系複合粒子は、シリカ粒子の表面に、所定のアルミニウムを含有する非結晶質の酸化物層を2段階に分けて形成させ、焼成することで、研磨速度が高く、容易に粉砕が可能な研磨用のシリカ系複合粒子を得ることができる。