【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、開けやすい缶蓋であって、蓋パネルと、蓋パネルに設けられていて、あらかじめ配置された開放領域を画定する刻み目線と、取っ手を備えたタブと、タブを蓋パネルに固定するタブ固定手段とを有する、缶蓋において、蓋パネルは、タブ固定手段とタブの取っ手の端部との間の位置でタブの下面に接触可能な少なくとも1つの可動部分を備え、可動部分は、タブの下面を押してタブの取っ手を蓋パネルから遠ざかるように傾け、それによりユーザによる指のアクセスを可能にするための隙間をタブの下に生じさせるよう圧力の影響を受けて上方に変形可能であることを特徴とする缶蓋が提供される。
【0011】
本発明の缶蓋は、タブの取っ手の下に指のアクセスを可能にするよう国際公開第03/104092号の仕組みとは異なる仕組みを利用している。本発明は、タブそれ自体の取っ手の下に専用のフィンガウェルを必要としないで、タブの取っ手を缶蓋から押し離すために可動部分の変形を利用している。その結果、本発明は、缶蓋を備えた容器内に正圧が生じても、これがタブへのアクセス具合を損なわないでこれを促進するという作用効果を有するという点において、国際公開第03/104092号の発明と比較して顕著な利点を有する。
【0012】
本発明の缶蓋のもう1つの利点は、タブの長さが所与の場合、本発明では、タブの取っ手の下に同一の隙間を提供するのに国際公開第03/104092号の場合よりも可動部分の領域が小さくて済むということにある。これは次の理由による。
・本発明がタブへのアクセスを可能にする別の仕組みがあること(即ち、タブの下面を押してこれに反作用することによる)
・可動部分がタブ固定手段とタブの取っ手の端との間に配置されていること
【0013】
これにより必要な成形が少なくなるので製造の容易さという観点において利益が得られる。一般に、所与のサイズの可動部分の場合、可動部分がタブ固定手段に近ければ近いほど、結果として生じる蓋パネルからのタブの取っ手の傾斜角度がそれだけ一層大きくなる。
典型的には、可動部分の外方の端パネルは、ほぼ扁平であり、説明書き、ロゴ及び/又は他のテキスト/図形を印刷しやすい表面が提供されるということが想定される。本発明の可動部分の領域に関する要件の緩和(国際公開第03/104092号と比較して)は、説明書き、ロゴ及び/又は他の図形/テキストの印刷に適した広いスペースを可動部分の外方に残すという利点を有する。この利点は、可動部分の領域の大部分がタブそれ自体の下に隠されるので一段と増す。
【0014】
理想的には、本発明の缶蓋は、可動部分がその初期状態にある状態で(即ち、タブの傾斜に先立って)製造される。この状態では、1つの缶蓋を別の缶蓋の上に効果的に積み重ねることが可能であり、この場合、可動部分及び/又はタブは、積み重ね性を損なわない。これにより、貯蔵及び輸送中における缶蓋のスタックの密集度が最大になる。
【0015】
好ましくは、可動部分は、双安定パネルの形態をしている。「双安定パネル」という用語は、2つの定められた安定状態を備えたパネルを意味している。
【0016】
好都合には、可動部分は、この可動部分がその初期状態において凹状ウェルを構成するよう下方に突き出ると共にその上方変形状態では凸状突起を構成するよう圧力の影響を受けて
上方に変形可能であるように形成されている。可動部分に関するかかる凹状/凸状形態は、上述の双安定パネルを提供する好ましいやり方であり、凹状輪郭形状は、固有の双安定性をもたらす。缶蓋がこれらの初期状態にあるときに1つの缶蓋の別の缶蓋上への積み重ね性の向上を図るため、タブの一部分が凹状ウェル内で内方に傾斜していることが更に好ましい。この特徴により、可動部分とタブとの間の隙間は、缶蓋がその初期状態にあるときにできるだけ小さいようにすることが可能になり、それにより、缶蓋の密集度が最大になる。この傾斜部分は、タブが下に位置する凹状ウェルの曲率に全体として一致した曲率を有することによって提供できる。変形例として、傾斜部分は、タブに設けられたキンクによって提供されても良い。
【0017】
好ましくは、可動部分は、その上方変形状態にロック可能である。本発明のこの観点は、可動部分が偶発的にその初期状態に逆戻り、それによりタブの下に指をアクセスできないようになる事態を生じさせないようにする。「ロック可能」という用語は、可動パネルをその初期位置に変形して戻すのに必要な力が最初にこの可動パネルを上方に変形させるのに必要な力よりも大きいことを意味している。
【0018】
このようにロック可能であるということは、可動部分が塑性変形可能な領域を有していることによって提供できる。可動部分の下面への所定の圧力の印加により、この領域は、塑性変形し、圧力を除いたときに、可動部分は、その上方変形状態のままであるようになり、それにより、タブの取っ手の下の隙間が保持される。缶蓋が容器へのその取り付け中に受けるものと考えられる所定の圧力を知ることにより、塑性変形が缶蓋の可動部分にのみ限定されるよう可動部分を構成することが可能である。
【0019】
塑性変形可能な領域を提供する特に好ましいやり方は、可動部分が可動部分の外方に位置する蓋パネルの厚さに対して減少した厚さの領域を有するよう可動部分を形成することである。減少した厚さのこの領域は、可動部分が塑性変形しやすい度合いを増大させる。したがって、所定圧力が蓋パネルの下面全体に加えられた場合、可動部分の厚さが減少しているので、塑性変形が可動部分に局限化される。「圧力」を缶蓋に加えることができる種々の仕方について本明細書において後で説明する。
【0020】
好都合には、可動部分は、その初期状態においてはほぼ扁平であり、可動部分は、上方に突き出るよう圧力の影響を受けて上方に変形可能であり、それにより、可動部分の全て又は一部は、その上方変形状態にロック可能であるように塑性変形する。好ましくは、この扁平な可動部分は、可動部分の外方の蓋パネルの厚さに対して減少した厚さのものである(上述してある)。
【0021】
ちょうど1つだけの可動部分により十分なタブへのアクセスを得ることができるが、缶蓋が2つの可動部分を有し、各可動部分は、タブの長手方向軸線に関して対称に配置されると共にタブの下面に接触可能であり、可動部分は、タブの下面を押してタブの取っ手を蓋パネルから遠ざかって傾けるよう圧力の影響を受けて同時に上方に変形するようになっていることが有益であることが判明した。可動部分を1つだけ用いることにより、タブの取っ手は、タブの幅全体にわたって一様に傾けられることがないようにすることができる。したがって、「2つの」可動部分をタブの長手方向軸線に関して対称に配置することにより、十分な隙間がタブの幅全体の下に提供されることが一段と保証される。この場合も又、2つの可動部分を設けることによって占められる蓋パネルの領域は、国際公開第03/104092号の単一の押し潰し可能な突起(即ち、フィンガウェル)の場合に必要な領域よりも小さい。
【0022】
本発明の缶蓋を任意の従来方式、例えば二重継ぎ合わせによって容器本体のアクセス開口部に締結することができる。
【0023】
注目されるように、本明細書では、可動部分は、「圧力」の影響下で上方に変形可能である。この圧力は、容器本体への缶蓋の締結に先立って、例えば、可動部分の下面に作用するパンチによって手動で加えられても良い。しかしながら、缶蓋が容器内で生じる正圧を受ける(どこかの箇所で)容器に用いられる場合、生じた正圧は、可動部分を上方に変形させてこれをタブの下面に押し付け、それによりタブの取っ手を傾けてタブの隙間を提供するよう作用する。圧力を生じさせることができる種々の仕方について以下の段落で説明する。
【0024】
炭酸液体製品(例えば、発泡性飲み物)の場合、上述の正圧は製品それ自体から自然に生じ、炭酸液体からの圧力は、可動部分を上方に変形させる。したがって、本発明の第2の観点では、開けやすい容器を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体に貯蔵中、ガスを放出する炭酸液体製品又は他の製品を充填するステップと、
b.請求項に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.製品は、容器の内部を正圧に加圧し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0025】
上述の方法は、製品それ自体がタブの下への指のアクセスを可能にすると共にそうすることができるようにする状態を保持するのに役立つという利点をもたらし、この場合、可動部分は、それ自体がその上方変形状態にロックするよう塑性変形する(又は、何らかの特別な構造的特徴を有する)必要はない。さらに、この方法により、別個の製造プロセスにより可動部分を上方に変形させる必要性が回避される。
【0026】
他の製品(例えば、食品又は非炭酸液体)の場合、密閉充填容器の一部分を上方に矯正して容器容積を減少させ、それにより正圧を容器内に生じさせることによって圧力を発生させることができる。したがって、本発明の第3の観点では、開けやすい容器を提供する方法であって、
a.ヘッドスペースを後に残すよう上部開放型容器本体に製品を充填するステップと、
b.請求項に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.容器の一部分を内方に矯正してヘッドスペースの容積を減少させ、それにより容器の内部を正圧状態に加圧するステップと、を有し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0027】
矯正ステップは、容器の側壁の所定の領域を座屈させることによって達成できる。代替的に(又は追加的に)、容器のベースは、容器の内部中にドーム状になっているのが良く、それにより正圧が得られる(例えば、1993年1月7日に公開された欧州特許出願公開第0521642号(出願人:シーエムビー・フードカン・ピーエルシー(CMB FOODCAN PLC))に開示されている)。
【0028】
滅菌目的で加熱することが必要な食品の場合、充填容器を加熱することにより、可動部分を上方に変形させるのに十分な正圧が容器内に生じる。加熱は、レトルト中で起こる。したがって、本発明の第4の観点では、食品のための開けやすい容器を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体に製品を充填するステップと、
b.請求項1〜9のうちいずれか一に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.密閉容器を加熱するステップと、d.ステップ“c”の加熱の結果として、容器内に正圧を生じさせるステップとを有し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0029】
最も好ましくは、ステップ“d”の実施中、正圧の作用は、周囲温度への容器の冷却(及びその結果としての正圧の消失/減少)時に、可動部分がその上方変形状態にロックされたままであり、それにより隙間をタブの取っ手の下に維持するよう可動部分を塑性変形させる。
【0030】
本発明のこの第4の観点では、充填容器には、ヘッドスペースがあっても良くなくても良い。充填容器がヘッドスペースを有する場合、正圧は、2つの成分、即ち、ヘッドスペースガスの膨張によって生じる成分と製品の膨張によって生じる成分を有する。
【0031】
以下において、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。