特許第5787758号(P5787758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラウン パッケイジング テクノロジー インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5787758-缶蓋 図000002
  • 特許5787758-缶蓋 図000003
  • 特許5787758-缶蓋 図000004
  • 特許5787758-缶蓋 図000005
  • 特許5787758-缶蓋 図000006
  • 特許5787758-缶蓋 図000007
  • 特許5787758-缶蓋 図000008
  • 特許5787758-缶蓋 図000009
  • 特許5787758-缶蓋 図000010
  • 特許5787758-缶蓋 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787758
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】缶蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/32 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   B65D17/32
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-525491(P2011-525491)
(86)(22)【出願日】2009年8月6日
(65)【公表番号】特表2013-500905(P2013-500905A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2009060243
(87)【国際公開番号】WO2010026019
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】506128042
【氏名又は名称】クラウン パッケイジング テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ホール ジェイソン ジョン
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−040660(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/098761(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/104392(WO,A1)
【文献】 特開平01−182247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開けやすい缶蓋(1)であって、蓋パネル(2)と、あらかじめ配置された開放領域を画定するように前記蓋パネルに形成された刻み目線(3)と、取っ手(12)を備えたタブ(10)と、前記タブを前記蓋パネルに固定するタブ固定手段(20)とを有し、前記蓋パネルが前記タブ固定手段と前記タブの前記取っ手の端部との間の位置で前記タブの下面に接触可能な少なくとも1つの可動部分(7)を備える、缶蓋において、前記可動部分は、該可動部分がその初期状態において凹状ウェルを構成するよう下方に突き出ると共に、前記タブの前記下面を押して凸状突起を構成し、それにより前記タブの前記取っ手を前記蓋パネルから遠ざかるように前記蓋パネルに対して傾け、ユーザによる指のアクセスを促進するための隙間(d)を前記タブの下に生じさせるよう圧力(p)の影響を受けて上方に変形可能である、缶蓋。
【請求項2】
前記可動部分は、双安定パネル(7)である、請求項1記載の缶蓋。
【請求項3】
前記タブ(10)の一部分(14)は、前記凹状ウェルを覆って延び、前記一部分は、別の缶蓋上への前記缶蓋の効果的な積み重ねを容易にするよう前記凹状ウェル内に内方に傾けられている、請求項1または2記載の缶蓋。
【請求項4】
前記可動部分(7)は、その上方変形状態にロック可能である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の缶蓋。
【請求項5】
前記可動部分(7)は、ロック性を容易にするように、塑性変形可能な領域を備えている、
請求項4記載の缶蓋。
【請求項6】
前記塑性変形可能な領域は、前記可動部分の外方に位置する前記蓋パネル(2)の厚さ(A,tgeneral)に対して減少した厚さ(treduced)の領域を有する前記可動部分(7)によって提供される、請求項5記載の缶蓋。
【請求項7】
前記可動部分(7)は、その初期状態においてはほぼ扁平であり、前記可動部分は、上方に突き出るよう圧力(p)の影響を受けて上方に変形可能であり、それにより、前記可動部分の全て又は一部は、その上方変形状態にロック可能であるように塑性変形する、請求項5又は6記載の缶蓋。
【請求項8】
2つの可動部分(7a,7b)を有し、各可動部分は、前記タブ(10)の長手方向軸線(16)に関して対称に配置されると共に前記タブの前記下面に接触可能であり、前記可動部分は、前記タブの前記下面を押して前記タブの前記取っ手(12)を前記蓋パネル(2)から遠ざかって傾ける(α)よう圧力(p)の影響を受けて同時に上方に変形するようになっている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の缶蓋。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一に記載の缶蓋(1)を有する容器(40)であって、前記缶蓋は、容器本体(30)のアクセス開口部に締結(33)されている、容器。
【請求項10】
開けやすい容器(40)を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体(30)に貯蔵中、ガスを放出する炭酸液体製品又は他の製品を充填するステップと、
b.請求項1〜8のうちいずれか一に記載の缶蓋(1)を用意し、前記缶蓋を充填状態の前記容器本体に固定(33)して密閉容器(40)を形成するステップと、を含み、
c.前記製品は、前記容器の内部を正圧に加圧(p)し、前記缶蓋の前記可動部分(7)は、正圧の作用を受けて上方に変形して前記タブの下面を押し、それによりユーザによる指のアクセスを促進するために、隙間(d)を前記タブの下に生じさせるよう前記タブ(10)の前記取っ手(12)を前記蓋パネル(2)から遠ざかるよう前記蓋パネルに対して傾ける(α)、方法。
【請求項11】
開けやすい容器(40)を提供する方法であって、
a.ヘッドスペース(32)を後に残すよう上部開放型容器本体(30)に製品(31)を充填するステップと、
b.請求項1〜8のうちいずれか一に記載の缶蓋(1)を用意し、前記缶蓋を充填状態の前記容器本体に固定(33)して密閉容器(40)を形成するステップと、
c.前記容器の一部分を内方に矯正(50)して前記ヘッドスペースの容積を減少させ、それにより前記容器の内部を正圧状態に加圧(p)するステップと、を有し、前記缶蓋の前記可動部分(7)は、正圧の作用を受けて上方に変形して前記タブの下面を押し、それによりユーザによる指のアクセスを促進するために、隙間(d)を前記タブの下に生じさせるよう前記タブ(10)の前記取っ手(12)を前記蓋パネル(2)から遠ざかるよう前記蓋パネルに対して傾ける(α)、方法。
【請求項12】
食品のための開けやすい容器(40)を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体(30)に製品(31)を充填するステップと、
b.請求項1〜8のうちいずれか一に記載の缶蓋(1)を用意し、前記缶蓋を充填状態の前記容器本体に固定(33)して密閉容器(40)を形成するステップと、
c.前記密閉容器を加熱するステップと、を有し、
d.前記ステップ“c”の加熱の結果として、前記容器内に正圧(p)を生じさせ、前記缶蓋の前記可動部分(7)は、正圧の作用を受けて上方に変形して前記タブの下面を押し、それによりユーザによる指のアクセスを促進するために、隙間(d)を前記タブの下に生じさせるよう前記タブ(10)の前記取っ手(12)を前記蓋パネル(2)から遠ざかるよう前記蓋パネルに対して傾ける(α)、方法。
【請求項13】
前記ステップ“d”の実施中、前記正圧(p)の作用は、周囲温度への前記容器(40)の冷却時に、前記可動部分がその上方変形状態にロックされたままであり、それにより前記隙間(d)を前記タブ(10)の前記取っ手(12)の下に維持するように、前記可動部分(7)を塑性変形させる、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放手段が改良された開けやすい缶蓋に関する。本発明は、食品及び飲料のための金属包装に利用されるに特に適している。
【背景技術】
【0002】
例えば1995年5月9日に発行された米国特許第5413241号明細書(発明者:イェーシ‐ショウ(YEHHSI-SHOU))の図4及び図5に示されると共に説明されている開けやすい缶蓋(缶端部)が缶製造分野において周知である。缶蓋は、あらかじめ配置された開放領域を画定する刻み目線を備えた蓋(端)パネルを備えている。タブが蓋パネルに固定され、タブのノーズが刻み目線に隣接して配置されている。缶蓋自体の輸送中における隣り合う缶蓋相互間の干渉を回避するため、タブの取っ手は、蓋パネルの外面に当てて配置される。タブの取っ手は、事実上全ての現行の開きやすい缶蓋について通常のやり方通りに、缶本体への缶蓋の取り付け後ではこの位置のままである。しかしながら、これは、缶を開けたいと思っている消費者にとっては問題となる。というのは、消費者は、まず最初に、タブの取っ手をこじ開けてこれを蓋パネルの表面から遠ざけなければならないからであり、その目的は、タブを持ち上げて刻み目線を破ることにある。タブ取っ手と蓋パネルとの間には隙間がないために、特に手の力の弱い人にとっては、これは、骨の折れる作業になる。
【0003】
2003年12月18日に公開された国際公開第03/104092号(出願人:マエイル・デイリ・インダストリ・カンパニー・インコーポレイテッド(MAEIL DAIRY INDUSTRY CO LTD))は、タブのアクセスに関する上述の問題に対する一解決策を提供している。国際公開第03/104092号は、タブの取っ手の下に押し潰し可能な突起を備えた缶蓋を開示している。押し潰し可能な突起は、当初、タブと突起との間に最小限の(又はゼロの)隙間を生じさせるよう缶蓋から上方に突き出ている(貯蔵/輸送目的で1つの缶蓋を別の缶蓋の上に効果的に積み重ねることができるようになっている)が、ユーザが自分の指を挿入するのに十分な凹状フィンガウェルをタブの取っ手の下に生じさせるようタブから下方に変形可能である(タブの下への指のアクセスを可能にすると共に消費者によって開けやすいようにしている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5413241号明細書
【特許文献2】国際公開第03/104092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、国際公開第03/104092号に記載されると共に図示されている突起には次のように幾つかの問題がある。
【0006】
・第1に、国際公開第03/104092号の押し潰し可能な突起は、消費者が自分の指をタブの下に挿入することができるのに十分な深さのフィンガウェルを形成するために缶蓋の相当な領域を占めなければならない。
【0007】
・第2に、国際公開第03/104092号の缶蓋を備えた容器が正圧にさらされると(即ち、容器内の圧力が外部の圧力よりも高い場合)、突起は、その上方状態に逆戻りしやすい場合があり、それにより、タブの下の隙間がなくなってタブへのアクセスができなくなる。正圧は、缶蓋を備えた容器を貯蔵した環境に起因して又は容器内に貯蔵されている製品の性状に起因して生じる場合がある。例えば、炭酸飲料は、正圧を常に生じさせる。変形例として、或る特定の食品は、これらの貯蔵中、ガスを放出する場合がある。加うるに、レトルト処理に起因した加熱の結果として、容器内に正圧が生じる場合がある。
【0008】
・第3に、国際公開第03/104092号の突起は、表面が平坦ではなく、この表面は、ロゴ、画像又は説明書きを印刷するには困難な表面となる場合がある。
【0009】
したがって、
i.印刷に適した缶蓋の領域を最大にし、
ii.缶蓋がその隣りの缶蓋のタブと蓋パネルとの間に捕捉状態になる恐れを生じないで効率的な貯蔵/輸送にとって容易に積み重ね可能であり、
iii.また、消費者がタブを容易に持ち上げることができるようタブへのアクセスを可能にすると共に保つことができる(容器に取り付けて使用中、正圧を受けた場合であっても)改良型缶蓋を提供することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、開けやすい缶蓋であって、蓋パネルと、蓋パネルに設けられていて、あらかじめ配置された開放領域を画定する刻み目線と、取っ手を備えたタブと、タブを蓋パネルに固定するタブ固定手段とを有する、缶蓋において、蓋パネルは、タブ固定手段とタブの取っ手の端部との間の位置でタブの下面に接触可能な少なくとも1つの可動部分を備え、可動部分は、タブの下面を押してタブの取っ手を蓋パネルから遠ざかるように傾け、それによりユーザによる指のアクセスを可能にするための隙間をタブの下に生じさせるよう圧力の影響を受けて上方に変形可能であることを特徴とする缶蓋が提供される。
【0011】
本発明の缶蓋は、タブの取っ手の下に指のアクセスを可能にするよう国際公開第03/104092号の仕組みとは異なる仕組みを利用している。本発明は、タブそれ自体の取っ手の下に専用のフィンガウェルを必要としないで、タブの取っ手を缶蓋から押し離すために可動部分の変形を利用している。その結果、本発明は、缶蓋を備えた容器内に正圧が生じても、これがタブへのアクセス具合を損なわないでこれを促進するという作用効果を有するという点において、国際公開第03/104092号の発明と比較して顕著な利点を有する。
【0012】
本発明の缶蓋のもう1つの利点は、タブの長さが所与の場合、本発明では、タブの取っ手の下に同一の隙間を提供するのに国際公開第03/104092号の場合よりも可動部分の領域が小さくて済むということにある。これは次の理由による。
・本発明がタブへのアクセスを可能にする別の仕組みがあること(即ち、タブの下面を押してこれに反作用することによる)
・可動部分がタブ固定手段とタブの取っ手の端との間に配置されていること
【0013】
これにより必要な成形が少なくなるので製造の容易さという観点において利益が得られる。一般に、所与のサイズの可動部分の場合、可動部分がタブ固定手段に近ければ近いほど、結果として生じる蓋パネルからのタブの取っ手の傾斜角度がそれだけ一層大きくなる。
典型的には、可動部分の外方の端パネルは、ほぼ扁平であり、説明書き、ロゴ及び/又は他のテキスト/図形を印刷しやすい表面が提供されるということが想定される。本発明の可動部分の領域に関する要件の緩和(国際公開第03/104092号と比較して)は、説明書き、ロゴ及び/又は他の図形/テキストの印刷に適した広いスペースを可動部分の外方に残すという利点を有する。この利点は、可動部分の領域の大部分がタブそれ自体の下に隠されるので一段と増す。
【0014】
理想的には、本発明の缶蓋は、可動部分がその初期状態にある状態で(即ち、タブの傾斜に先立って)製造される。この状態では、1つの缶蓋を別の缶蓋の上に効果的に積み重ねることが可能であり、この場合、可動部分及び/又はタブは、積み重ね性を損なわない。これにより、貯蔵及び輸送中における缶蓋のスタックの密集度が最大になる。
【0015】
好ましくは、可動部分は、双安定パネルの形態をしている。「双安定パネル」という用語は、2つの定められた安定状態を備えたパネルを意味している。
【0016】
好都合には、可動部分は、この可動部分がその初期状態において凹状ウェルを構成するよう下方に突き出ると共にその上方変形状態では凸状突起を構成するよう圧力の影響を受けて上方に変形可能であるように形成されている。可動部分に関するかかる凹状/凸状形態は、上述の双安定パネルを提供する好ましいやり方であり、凹状輪郭形状は、固有の双安定性をもたらす。缶蓋がこれらの初期状態にあるときに1つの缶蓋の別の缶蓋上への積み重ね性の向上を図るため、タブの一部分が凹状ウェル内で内方に傾斜していることが更に好ましい。この特徴により、可動部分とタブとの間の隙間は、缶蓋がその初期状態にあるときにできるだけ小さいようにすることが可能になり、それにより、缶蓋の密集度が最大になる。この傾斜部分は、タブが下に位置する凹状ウェルの曲率に全体として一致した曲率を有することによって提供できる。変形例として、傾斜部分は、タブに設けられたキンクによって提供されても良い。
【0017】
好ましくは、可動部分は、その上方変形状態にロック可能である。本発明のこの観点は、可動部分が偶発的にその初期状態に逆戻り、それによりタブの下に指をアクセスできないようになる事態を生じさせないようにする。「ロック可能」という用語は、可動パネルをその初期位置に変形して戻すのに必要な力が最初にこの可動パネルを上方に変形させるのに必要な力よりも大きいことを意味している。
【0018】
このようにロック可能であるということは、可動部分が塑性変形可能な領域を有していることによって提供できる。可動部分の下面への所定の圧力の印加により、この領域は、塑性変形し、圧力を除いたときに、可動部分は、その上方変形状態のままであるようになり、それにより、タブの取っ手の下の隙間が保持される。缶蓋が容器へのその取り付け中に受けるものと考えられる所定の圧力を知ることにより、塑性変形が缶蓋の可動部分にのみ限定されるよう可動部分を構成することが可能である。
【0019】
塑性変形可能な領域を提供する特に好ましいやり方は、可動部分が可動部分の外方に位置する蓋パネルの厚さに対して減少した厚さの領域を有するよう可動部分を形成することである。減少した厚さのこの領域は、可動部分が塑性変形しやすい度合いを増大させる。したがって、所定圧力が蓋パネルの下面全体に加えられた場合、可動部分の厚さが減少しているので、塑性変形が可動部分に局限化される。「圧力」を缶蓋に加えることができる種々の仕方について本明細書において後で説明する。
【0020】
好都合には、可動部分は、その初期状態においてはほぼ扁平であり、可動部分は、上方に突き出るよう圧力の影響を受けて上方に変形可能であり、それにより、可動部分の全て又は一部は、その上方変形状態にロック可能であるように塑性変形する。好ましくは、この扁平な可動部分は、可動部分の外方の蓋パネルの厚さに対して減少した厚さのものである(上述してある)。
【0021】
ちょうど1つだけの可動部分により十分なタブへのアクセスを得ることができるが、缶蓋が2つの可動部分を有し、各可動部分は、タブの長手方向軸線に関して対称に配置されると共にタブの下面に接触可能であり、可動部分は、タブの下面を押してタブの取っ手を蓋パネルから遠ざかって傾けるよう圧力の影響を受けて同時に上方に変形するようになっていることが有益であることが判明した。可動部分を1つだけ用いることにより、タブの取っ手は、タブの幅全体にわたって一様に傾けられることがないようにすることができる。したがって、「2つの」可動部分をタブの長手方向軸線に関して対称に配置することにより、十分な隙間がタブの幅全体の下に提供されることが一段と保証される。この場合も又、2つの可動部分を設けることによって占められる蓋パネルの領域は、国際公開第03/104092号の単一の押し潰し可能な突起(即ち、フィンガウェル)の場合に必要な領域よりも小さい。
【0022】
本発明の缶蓋を任意の従来方式、例えば二重継ぎ合わせによって容器本体のアクセス開口部に締結することができる。
【0023】
注目されるように、本明細書では、可動部分は、「圧力」の影響下で上方に変形可能である。この圧力は、容器本体への缶蓋の締結に先立って、例えば、可動部分の下面に作用するパンチによって手動で加えられても良い。しかしながら、缶蓋が容器内で生じる正圧を受ける(どこかの箇所で)容器に用いられる場合、生じた正圧は、可動部分を上方に変形させてこれをタブの下面に押し付け、それによりタブの取っ手を傾けてタブの隙間を提供するよう作用する。圧力を生じさせることができる種々の仕方について以下の段落で説明する。
【0024】
炭酸液体製品(例えば、発泡性飲み物)の場合、上述の正圧は製品それ自体から自然に生じ、炭酸液体からの圧力は、可動部分を上方に変形させる。したがって、本発明の第2の観点では、開けやすい容器を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体に貯蔵中、ガスを放出する炭酸液体製品又は他の製品を充填するステップと、
b.請求項に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.製品は、容器の内部を正圧に加圧し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0025】
上述の方法は、製品それ自体がタブの下への指のアクセスを可能にすると共にそうすることができるようにする状態を保持するのに役立つという利点をもたらし、この場合、可動部分は、それ自体がその上方変形状態にロックするよう塑性変形する(又は、何らかの特別な構造的特徴を有する)必要はない。さらに、この方法により、別個の製造プロセスにより可動部分を上方に変形させる必要性が回避される。
【0026】
他の製品(例えば、食品又は非炭酸液体)の場合、密閉充填容器の一部分を上方に矯正して容器容積を減少させ、それにより正圧を容器内に生じさせることによって圧力を発生させることができる。したがって、本発明の第3の観点では、開けやすい容器を提供する方法であって、
a.ヘッドスペースを後に残すよう上部開放型容器本体に製品を充填するステップと、
b.請求項に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.容器の一部分を内方に矯正してヘッドスペースの容積を減少させ、それにより容器の内部を正圧状態に加圧するステップと、を有し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0027】
矯正ステップは、容器の側壁の所定の領域を座屈させることによって達成できる。代替的に(又は追加的に)、容器のベースは、容器の内部中にドーム状になっているのが良く、それにより正圧が得られる(例えば、1993年1月7日に公開された欧州特許出願公開第0521642号(出願人:シーエムビー・フードカン・ピーエルシー(CMB FOODCAN PLC))に開示されている)。
【0028】
滅菌目的で加熱することが必要な食品の場合、充填容器を加熱することにより、可動部分を上方に変形させるのに十分な正圧が容器内に生じる。加熱は、レトルト中で起こる。したがって、本発明の第4の観点では、食品のための開けやすい容器を提供する方法であって、
a.上部開放型容器本体に製品を充填するステップと、
b.請求項1〜9のうちいずれか一に記載の缶蓋を用意し、缶蓋を充填状態の容器本体に固定して密閉容器を形成するステップと、
c.密閉容器を加熱するステップと、d.ステップ“c”の加熱の結果として、容器内に正圧を生じさせるステップとを有し、缶蓋の可動部分は、正圧の作用を受けて上方に変形し、可動部分の上方変形により、タブの取っ手は、ユーザによる指のアクセスを可能にするために、隙間をタブの下に生じさせるよう蓋パネルから遠ざかるよう傾けられることを特徴とする方法が提供される。
【0029】
最も好ましくは、ステップ“d”の実施中、正圧の作用は、周囲温度への容器の冷却(及びその結果としての正圧の消失/減少)時に、可動部分がその上方変形状態にロックされたままであり、それにより隙間をタブの取っ手の下に維持するよう可動部分を塑性変形させる。
【0030】
本発明のこの第4の観点では、充填容器には、ヘッドスペースがあっても良くなくても良い。充填容器がヘッドスペースを有する場合、正圧は、2つの成分、即ち、ヘッドスペースガスの膨張によって生じる成分と製品の膨張によって生じる成分を有する。
【0031】
以下において、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】容器本体への取り付け前の「製造されたままの」(初期)状態にある本発明の缶蓋の断面図である。
図2】3つの缶蓋のスタック(積み重ね体)の断面図である。
図3】容器本体への缶蓋の取り付け直後における充填密閉容器の上方部分の断面図である。
図4図3の容器の下側部分の断面図であり、容器の一部分が容器内に正圧を生じさせるようパンチによってどのように二次成形されるかを示す図である。
図5】矯正作業後における図4の容器の上側部分の断面図である。
図6】その後のレトルト処理中における図5の容器の上側部分の断面図である。
図7】本発明の缶蓋の平面図である。
図8図7の缶蓋の変形例としての缶蓋の平面図である。
図9a】可動部分の別の形態を示す図である。
図9b】可動部分の更に別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
缶蓋(端部)1は、刻み目線3を備えた蓋(端)パネル2を有している。刻み目線3は、あらかじめ配置された開放領域(孔)を画定し、それにより(図示の実施形態では)、刻み目線の内方に位置する蓋パネル2全体は、缶蓋1から取り外し可能である。皿座ぐり部4が刻み目線3の半径方向外方に配置されている(図1参照)。チャック壁5が最初に皿座ぐり部4の底部から上方に延び、次に外方に延びて継ぎ合わせパネル6を形成している(図1参照)。タブ10がリベット20により蓋パネル2に固定されている。タブ10の一端部は、刻み目線3に隣接して位置するノーズ11を備えている(図1参照)。タブ10の反対側の端部は、取っ手12を有している(図1参照)。図7及び図8に示されているように、取っ手12は、リング部分13を有している。図示の缶蓋は、材料規格DR550Nに準拠した0.21mmゲージの2回圧延(DR)ブリキ板で作られている。しかしながら、十分な強度/剛性をもたらす他の材料をこれに代えて用いても良い。
【0034】
可動部分7が双安定パネル(図1参照)の形態をして蓋パネル2に設けられている。図示の実施形態では、可動部分7は、蓋パネル2と一体であり、それにより、缶蓋1を構成する別々の構造コンポーネントの数が減少している。
【0035】
図1は、缶蓋1の双安定パネル7をその「製造されたままの」又は初期状態で示している。この状態では、双安定パネル7は、タブ10の下に凹状ウェルを形成している。取っ手12の遠位端部は、蓋パネル2の外面に当てて配置されている。さらに、凹状ウェルを覆って延びるタブ10の部分は、タブに設けられたキンク14によって凹状ウェル内に内方に傾けられている。図2は、缶蓋1のスタック(積み重ね体)15を示しており、この図は、タブ10のキンク付き部分14が上に積み重ねられる同じ缶蓋の凹状ウェルの全て又は一部を受け入れるスペースをどのようにもたらしているかを明確に示している。
【0036】
缶蓋のスタック15は、いつでも容器本体に取り付けることができる状態で充填物の施設に輸送される。充填物の施設への到着に続き、各缶蓋1は、食品31(図3参照)が充填された容器本体30のアクセス開口部を閉鎖すると共に密封するよう取り付けられる。容器本体30は、製品31と缶蓋1の内面との間にヘッドスペース32を残すよう充填される(図3参照)。従来型継ぎ合わせ作業を利用して缶蓋1を容器本体30に締結する(継ぎ目33参照)。
【0037】
図3及び図4は、缶蓋1の継ぎ合わせ直後に結果として得られた密閉充填容器40のそれぞれの上側部分及び下側部分の別々の図である。図4で理解できるように、容器本体30の側壁は、環状溝35を有し、従来型の扁平な缶蓋36が容器本体の底部に継ぎ合わされて(37)、容器40のベースを形成している。容器40の下側部分の「製造されたままの」輪郭形状が実線の黒い線として示されている。環状溝35は、例えば、容器本体30の側壁を圧延することによって形成できる。
【0038】
缶蓋1の継ぎ合わせに続き、異形パンチ50が容器40の底部上の扁平な缶蓋36の外面に適用され、パンチ及び/又は容器は、軸線41に沿って互いに向かってしだいに動かされる。パンチ50は、
・扁平な缶蓋36を内方に矯正して逆さまのドーム状輪郭形状38を形成すると共に、
・環状溝35が潰れて内方に突き出たビード39を形成するよう作用する。
【0039】
逆さまのドーム状輪郭形状38及び潰れた状態の内方に突き出たビード39は、細い波線として図4に示されている。
【0040】
扁平な缶蓋36を矯正するプロセスと環状溝35を潰すプロセスの各々により、ヘッドスペースガス32が圧縮され、それにより容器40(図5参照)内に累積正圧(preform/collapse)(なお、下付き表記“reform/collapse”は「矯正/潰れ」の意である)が生じる。図5に示されているように、この正圧(preform/collapse)は、双安定パネル7が上方に変形してこれが凸状突起を構成する第2の状態になるようにするのに十分である。双安定パネルが上方に変形すると、双安定パネルは、タブ10の下面に作用してこれを押す。このような押す作用により、タブ10は、リベット20を中心として角度αだけ回動し、タブの取っ手12と蓋パネル2との間に隙間(d)を形成する(図5参照)。この隙間(d)は、消費者がタブ10の下に自分の指を容易に挿入することができるほど十分な大きさのものである。食品31が加熱又は滅菌を何ら必要としない場合、容器40を単に、消費者に送り届けるよう輸送可能である。容器40内の正圧(preform/collapse)は、凸状双安定パネル7のその初期の凹状の状態への逆戻りに抵抗し、それにより、タブへのアクセス手段(d)が維持されるようにする。
【0041】
変形例として、食品31は、レトルト内で調理/滅菌を必要とするものであっても良い。レトルト処理により生じた熱により、ヘッドスペースガス32の膨張が生じ、従って、圧力(pretort)(なお、下付き表記“retort”は「レトルト」の意である)が生じる。図5に示されているように、この正圧(preform/collapse)がベース矯正/溝潰れにより生じる圧力(preform/collapse)よりも一段と増大する。図6で理解できるように、この追加の圧力により、蓋パネル2は、図5の状態に対して弓形に曲がる。しかしながら、周囲温度への冷却時、レトルト作業により生じた追加の正圧は、散逸し、缶蓋1の輪郭形状は、ベース矯正/溝潰れの直後に取られる状態、即ち、例えば図5の状態に戻る。容器40内の残りの正圧(preform/collapse)は、凸状双安定パネル7のその初期の凹状の状態への逆戻りに抵抗し、それによりタブアクセス手段(d)が維持されるようになる。
【0042】
変形実施形態(図示せず)では、上記とは異なり、容器には、貯蔵中にガスを放出する炭酸飲料製品又は別の製品が充填される場合がある。いずれの場合においても、製品の性状により、可動部分7がその初期状態から上方に変形し、それにより、タブ10を蓋パネル2から遠ざかるよう傾けてタブアクセス手段(d)を提供するのに十分な正圧が容器40内に生じる。製品それ自体により生じる連続的な圧力は、正圧を生じさせるのに容器40のどこかの部分の矯正/潰しを行う必要性を回避し、それにより、容器の製造を単純化し、更に、タブアクセス手段(d)が次の取り扱い/輸送中に維持されるようにする。
【0043】
図1図6に示されると共に説明される実施形態の別の変形例では、可動部分7は、塑性変形可能な領域を有する。図9a及び図9bは、塑性変形可能な領域を備えた可動部分7の2つの別の形態を示している。両方の図は、可動部分7をその「製造されたままの」状態で示し、単純化のため、缶蓋のタブ及び他の特徴部は、図示されていない。各形態では、可動部分7は、可動部分7の外方(矢印A参照)に位置する蓋パネルの厚さ(tgeneral)(なお、下付き表記“general”は「一般的な」又は「全体的な」の意である)に対して薄い厚さ(treduced)(なお、下付き表記“reduced”は「減少した」の意である)のものである。図9bの実施形態では、可動部分7は、一般に、その「製造されたままの」状態では蓋パネル2の残部と全体として同一平面内に位置する。図9aの変形実施形態では、可動部分7は、その「製造されたままの」状態では凹状のウェルを形成する。塑性変形可能な可動部分7のいずれかの形態を有する缶蓋は、容易に積み重ね可能である。調理/滅菌を必要とする食品の入った容器40に用いられる場合、レトルト処理により生じる正圧により、可動部分7は、上方に変形し、図1図6に示されている実施形態とほぼ同じ仕方でタブ10に作用する。しかしながら、決定的な違いは、この正圧により可動部分7の塑性変形が生じることにある。塑性変形により、可動部分7は、容器40が冷えてレトルト作業により生じた正圧が散逸した後ではその上方に変形した状態のままである。したがって、それにより、容器内に正圧を生じさせてこれを維持することを目的として容器40の一部を矯正する必要性が回避される。事実、塑性変形可能な領域は、容器が負圧を受けた場合であっても可動部分7がその上方に変形した状態に「ロック」可能であるようにする。「負圧」という用語は、容器内の圧力が容器の外部の圧力よりも低い場合を意味する。
【0044】
図7及び図8は、2つの缶蓋の平面図であり、各実施形態は、図1図6に利用可能である。図7の実施形態では、タブ10のリング部分13の中央の幅全体の下に延びる全体として長円形の輪郭形状を備えた単一の可動部分7が存在する。図8の実施形態では、缶蓋1は、タブ10の長手方向軸線16に関して対称に配置された全体として円形な輪郭形状の2つの可動部分7a,7bを備えている。可動部分7a,7bは各々、正圧にさらされると、同時に上方に変形する。図6の実施形態と図7の実施形態は両方共、剛性及び強度の増大をもたらすよう蓋パネル2に設けられたパネル8を有している。
【0045】
本発明は、刻み目線によって画定されたあらかじめ配置されている開放領域が蓋パネルの領域の全てを覆うか一部だけを覆うかとは関係なく、缶蓋に利用可能である。例えば、製品の放出量が最大にされるべき用途の場合、刻み目線は、一般に、あらかじめ配置された開放領域のサイズを最大にするよう蓋パネルの周囲の近くまで延びる。変形例として、飲料用途では、消費者が容器から注ぎだし又は飲むことができるようにするうえであらかじめ配置された開放領域が狭いことが望ましい場合が多い。用いられる缶蓋の形態に応じて、タブ及び可動部分は、刻み目線の内方又は外方に配置される場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b