特許第5787762号(P5787762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成ケミカルズ株式会社の特許一覧

特許5787762コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤
<>
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000004
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000005
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000006
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000007
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000008
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000009
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000010
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000011
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000012
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000013
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000014
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000015
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000016
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000017
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000018
  • 特許5787762-コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787762
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】コーティングフィルム、及びそれを用いた顆粒、錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20150910BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K47/02
   A61K9/16
   A61K9/20
   A61K9/50
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2011-535419(P2011-535419)
(86)(22)【出願日】2010年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2010067537
(87)【国際公開番号】WO2011043370
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2009-235284(P2009-235284)
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100132492
【弁理士】
【氏名又は名称】弓削 麻理
(74)【代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大生 和博
【審査官】 田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−015966(JP,A)
【文献】 特開2000−128776(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011367(WO,A1)
【文献】 Chem. Pharm. Bull.,2008年,Vol.56, No.4,pp.530-535
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A:エチルセルロース、成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマー、成分C:医薬用添加剤としてポリビニルアルコールコポリマー又はメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、成分D:可塑剤としてクエン酸トリエチル、及び成分E:無機物を含み、前記成分A:B:C:D:Eの質量比が、100:(100〜300):(6〜90):(6〜90):(30〜90)であり、引張伸度が150%以上、かつ引張強度が9N以上であるコーティングフィルム。
【請求項2】
前記成分E:無機物が、酸化チタンである請求項に記載のコーティングフィルム。
【請求項3】
薬物を含有する素顆粒の外周が、請求項1又は2に記載のコーティングフィルムにより被覆され、薬物の溶出速度が1分で10%以下、かつ30分で90%以上であり、さらに凝集率が10%以下である顆粒。
【請求項4】
前記顆粒のコーティングフィルムは一層のみで、顆粒に最大25kNの圧縮圧力を加えても薬物の溶出速度が、圧縮圧力を加えていない顆粒の溶出速度に対し±10%以内である請求項に記載の顆粒。
【請求項5】
前記素顆粒が、結晶セルロースを70質量%以上含む球形核粒子を含有する、請求項に記載の顆粒。
【請求項6】
請求項のいずれか一項に記載の顆粒を、0.55〜90.0質量%含有する錠剤。
【請求項7】
さらに、トレハロース、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含有する請求項に記載の錠剤。
【請求項8】
顆粒:トレハロース:結晶セルロース:崩壊剤:滑沢剤の質量比が、100:(30〜6900):(12〜3000):(0.1〜1000):(0.1〜1000)である請求項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングフィルム、及びそれを用いて製造される顆粒、さらにそれを含有する錠剤に関連し、水なしでも服用でき、口腔内でも薬物の苦味を感じず、速崩壊性、速溶出性を有し、且つ適度な硬度を有する口腔内速崩壊錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品固形製剤は、副作用の低減、服用回数の低減、薬物の苦味マスク等を目的として、フィルムコーティングを施す場合がある。フィルムコーティングは、錠剤や顆粒剤に施すことができるが、コーティング被膜のバラツキを低減するために、顆粒剤に施される場合が多い。特に、薬物の溶出速度を精緻に制御する必要があるので、粒子径のそろった球形核粒子が用いられることが多い。さらに、医薬品固形製剤の中で最も患者に好まれる剤形は錠剤であることから、このフィルムコーティング顆粒にその他の賦形剤を配合して、錠剤化されることが望まれる。さらに、患者へのコンプライアンスの向上のため、水なしでも服用できる口腔内速崩壊錠にした製剤が、より望まれている。
【0003】
錠剤を作るための一般的技術は、打錠機による圧縮成形である。錠剤の実用的な製造性、取扱いやすさ、輸送性を確保するためには、ある程度の圧力で圧縮成形し、錠剤硬度を上げる必要がある。ところが、この圧力によって、フィルムコーティング顆粒のフィルムが損傷し、薬物の溶出機能や薬物の苦味マスク効果を損なう事が多い。そのため、複数のフィルムを被覆するなどの試みがなされている。
【0004】
一種類のフィルムでフィルムコーティング工程を終えることは生産性の点で非常に有利である。フィルムが打錠時の機械的応力に耐えるようにするための一つの方法は、フィルムにゴムのような柔軟性を与えることである。ところが柔軟性が高いフィルムはフィルム表面の粘着性もまた高く、フィルムコーティング時に顆粒の凝集が起きやすい。このフィルムコーティング時の顆粒の凝集を防ぐために、大きな顆粒を使用する、フィルムコーティング液の被覆速度を低速にする、フィルムコーティング液にタルクなどの粘着性低減剤を配合する、などの対処方法がある。しかし、いろいろなサイズの顆粒に対し、生産性及びフィルム性能(薬物溶出制御、薬物の苦味マスク制御、機械的強度)を犠牲にすることなく対処することは、従来困難であった。
【0005】
アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、及び酢酸ビニルポリマーから作られるフィルムは非常に柔軟であることが知られている。しかし、フィルム表面の粘着性が高く、タルクなどの粘着性低減剤を配合しなければ、実用的なフィルムコーティングは困難であり、特に平均粒子径300μm以下の顆粒に対するフィルムコーティングはきわめて困難であった。
【0006】
近年、高齢化社会が急速に進む中、高齢者や小児などの嚥下力の弱い患者でも服用しやすい剤形として、唾液や少量の水で速やかに崩壊する速崩壊性の口腔内速崩壊錠が開発され、医療現場での利便性や患者への服用性などのコンプライアンスの向上に寄与している。しかしながら、口腔内速崩壊錠の歴史は浅く、口腔内での崩壊時間や服用感、製造や流通時に割れや摩損しない錠剤の硬度の確保といった技術的な問題もある。よって、適度な硬度及び速やかな崩壊性と薬物の苦味をマスクするなどして服用感を向上させた口腔内速崩壊錠の製造技術の開発が望まれており、より完成度の高い口腔内速崩壊錠技術が期待されている。
【0007】
特許文献1は、薬物の苦味をマスクすることが目的ではなく、薬物を徐々に放出する徐放性機能を有する顆粒含有錠用フィルムコーティング液が開示されている。
【0008】
特許文献2は、薬物の苦味をマスクした口腔内速崩壊錠であるが、結晶セルロース製核粒子に薬物を被覆することなく、薬物及び糖類にフィルムコーティング液を混合後、噴霧乾燥して、苦味をマスクした薬物含有粒子を製造している。さらに、この薬物含有粒子と糖類を混合して錠剤を製造する方法が開示されている。
【0009】
特許文献3は、糖質系の核粒子に薬物を担持させ、少なくとも二層以上のフィルムコーティング層を施し、打錠時のフィルム損傷を防止する方法が開示されている。
【0010】
特許文献4は、球形核粒子に薬物を担持後、フィルムを施して苦味をマスクし、短時間で薬物を放出するフィルムコーティング顆粒の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2009/011367号公報
【特許文献2】WO2002/02083号公報
【特許文献3】特開平8−109126号明細書
【特許文献4】特開2000−128776号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の手法は、薬物を短時間で放出する即放性の機能ではなく、薬物を徐々に放出する徐放性の機能に関連する。また、単にフィルムコーティング顆粒を含んだ錠剤としているだけで、薬物の苦味マスクや口腔内速崩壊錠といった機能を含んだものではない。
【0013】
また、特許文献2に記載の方法は、薬物含有粒子の苦味マスクのフィルム性能を損なわないよう低い圧縮圧力で打錠している。低い圧縮圧力で製造された錠剤は実用的な硬度を確保できないことから、加湿乾燥と低温乾燥の二段階式乾燥で、錠剤の硬度を確保している。このように、製造工程中の乾燥工程の条件を調整することによって錠剤の硬度や速崩壊性を確保しているのであり、錠剤や打錠用のコーティング顆粒の処方について、何ら改良がされているわけではない。
【0014】
特許文献3は、腸溶層の内側或いは外側又は両側に腸溶層とは異なるフィルムの軟化温度を持つフィルム層を施し耐衝撃性のあるフィルムコーティング手法について開示している。この方法では、打錠用の顆粒を多層のコーティング膜で被覆することにより、打錠時のコーティング膜の破損の低減を達成している。しかし、このような多層のコーティングは、一層のコーティングと比較して、生産性、経済性の点で劣る。
【0015】
さらに、特許文献4では、苦味マスクのフィルムコーティングを顆粒に施した手法であるが、フィルムコーティング顆粒を含有させた錠剤及び口腔内速崩壊錠の製造方法やフィルムコーティング顆粒の錠剤への適用について何ら言及がない。
【0016】
以上の通り、従来、薬物の苦味マスク及び速溶出性に優れ、且つ、フィルムコーティングした顆粒を含有させた錠剤が口の中で速やかに崩壊する、口腔内速崩壊錠の技術は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、前記課題を解決するため、薬物の苦味をマスクすることができるフィルムコーティング液の配合処方について鋭意検討した結果、一般的に苦味マスクに用いられる医薬用固形製剤用のフィルムコーティング液に柔軟性のあるフィルムコーティング液を配合することによって柔軟性を付与でき、さらに、薬物の苦味もマスクでき、短時間で薬物を溶出するフィルムコーティング顆粒を提供するに至った。また、両液の配合比率を限定することで、フィルムの柔軟性と強度を示す引張伸度を150%以上、引張強度を9N以上にすることができ、このフィルムを素顆粒の外周に1層被覆した顆粒は、外部から圧縮圧力を加え、顆粒が変形しても、フィルムの損傷は少なく薬物の溶出率の変動が少ないことを見出した。同様に、このフィルムを被覆した顆粒に錠剤にするときの圧縮圧力を加えて錠剤にしてもフィルムの損傷は少なく、該錠剤の薬物溶出パターンは、このフィルムを被覆した顆粒に外部から圧縮圧力を加えた時の薬物溶出パターンとほぼ同一であった。
また、この顆粒の薬物溶出速度は、苦味のある薬物でも対応できるように、1分後の薬物溶出率を10%以下、さらに、30分後の溶出率を90%以上にし、初期の薬物溶出率を抑制しながら、即効性の効果も十分期待できる溶出制御にしている。
本願の場合、フィルムコーティングを施す顆粒の作製時に顆粒同士が接着し、凝集した顆粒を凝集率として表しているが、この凝集率を10%以下に抑制し、通常の医薬品生産効率で十分生産できる。
【0018】
本願の薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒を含有する錠剤により、崩壊性固形製剤、すなわち適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮する錠剤を、煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる。本願発明のフィルムコーティング顆粒及び錠剤は、薬物の苦味をマスクしているが、短時間で薬物を溶出させる速溶性のフィルムコーティング顆粒及び錠剤である。
【0019】
また、本発明者等は薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒を含有した崩壊性固形製剤に使用される他の成分組成として、糖質のトレハロース、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤が適していることを見出した。糖質のトレハロース、結晶セルロースを予め、一緒に混合・造粒し、平均粒子径50〜400μmの造粒顆粒に整粒し、この造粒顆粒に薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒、崩壊剤、滑沢剤を混合し、この混合物を打錠することにより口腔内での速やかな崩壊を示し、薬物の苦味をマスクした口腔内速崩壊錠が得られる。
【0020】
また、糖質をトレハロースに限定し、結晶セルロースとの配合比率を一定の範囲に限定することで、低い圧縮圧力であっても、薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒のフィルムを損傷することなく、高硬度の速崩壊性の錠剤が得られる。同じ糖質のマンニトールをトレハロースの替わりに用いると成形性が低下し、高い圧縮圧力が必要になり、結果、錠剤の崩壊性が低下し速崩壊性の錠剤が得られない。
【0021】
これらの成分を混合し、混合物を特殊な製造機器を用いず、一般的な造粒機、打錠機にて打錠し、錠剤に成型するといった簡便な方法で、所望する適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮する口腔内速崩壊錠が得られる。
【0022】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)成分A:エチルセルロース、及び成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーを含み、引張伸度が150%以上、かつ引張強度が9N以上であるコーティングフィルム。
(2)さらに、成分C:医薬用添加剤、成分D:可塑剤、及び成分E:無機物を含む(1)に記載のコーティングフィルム。
(3)前記成分A:B:C:D:Eの質量比が、100:(100〜300):(6〜90):(6〜90):(30〜90)である(2)に記載のコーティングフィルム。
(4)前記成分C:医薬用添加剤が、ポリビニルアルコールコポリマー又はメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマーである(2)又は(3)に記載のコーティングフィルム。
(5)前記成分D:可塑剤が、クエン酸トリエチルである、(2)又は(3)に記載のコーティングフィルム。
(6)前記成分E:無機物が、酸化チタンである(2)又は(3)に記載のコーティングフィルム。
(7)薬物を含有する素顆粒の外周が、コーティングフィルムにより被覆され、薬物の溶出速度が1分で10%以下、かつ30分で90%以上であり、さらに凝集率が10%以下である顆粒。
(8)前記コーティングフィルムが、(1)〜(6)のいずれかに記載のコーティングフィルムである、(7)に記載の顆粒。
(9)前記顆粒のコーティングフィルムは一層のみで、顆粒に最大25kNの圧縮圧力を加えても薬物の溶出速度が、圧縮圧力を加えていない顆粒の溶出速度に対し±10%以内である(7)又は(8)に記載の顆粒。
(10)前記素顆粒が、結晶セルロースを70質量%以上含む球形核粒子を含有する、(9)に記載の顆粒。
(11)(7)〜(10)のいずれかに記載の顆粒を、0.55〜90.0質量%含有する錠剤。
(12)さらに、トレハロース、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含有する(11)に記載の錠剤。
(13)顆粒:トレハロース:結晶セルロース:崩壊剤:滑沢剤の質量比が、100:(30〜6900):(12〜3000):(0.1〜1000):(0.1〜1000)である(12)に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、打錠による溶出変化の少ない、薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒を効率よく製造し得るという効果を有する。さらに、その薬物の苦味をマスクしたフィルムコーティング顆粒を含有した錠剤は、適度な硬度を有し、口腔内で速やかに崩壊しても苦味を感じることがなく、服用後は短時間で薬物が溶出し、高齢者、小児及び嚥下困難な患者にとって服用しやすい口腔内速崩壊錠を提供する。しかも該錠剤は、煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる。
【0024】
本発明のフィルムコーティング液は、薬物の苦味を抑制するもので、口腔内で錠剤が崩壊する際に、薬物の苦味を感じない程度に施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例1のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図2図2は、実施例2のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図3図3は、実施例3のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図4図4は、実施例4のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図5図5は、実施例5のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図6図6は、参考例6のフィルムコーティング顆粒のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図7図7は、実施例7のフィルムコーティング顆粒のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図8図8は、実施例8のフィルムコーティング顆粒のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図9図9は、参考例9のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図10図10は、参考例10のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図11図11は、実施例11のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図12図12は、実施例12のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図13図13は、実施例13のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図14図14は、比較例1のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図15図15は、比較例2のフィルムコーティング顆粒及のin vitro薬物溶出プロファイルである。
図16図16は、比較例3のフィルムコーティング顆粒及びフィルムコーティング顆粒を含む錠剤のin vitro薬物溶出プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のフィルムは、成分A:エチルセルロース、及び成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーを含む。
【0027】
成分A:エチルセルロースとは、医薬品固形製剤用のフィルムコーティング剤として一般に用いられており、市販品としては、アクアコートECD30(FMC)、シュアリース(カラコン)などが使用できる。
【0028】
成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーとは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを乳化剤として用い、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルを水中で重合して得られる共重合樹脂の乳濁液であり、微量のジメチルポリシロキサンを含むものである。その固形分含有量は約30質量%である。具体的には、医薬品添加物規格2003の「アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液」の規格に適合するものであり、市販品としては、オイドラギットNE30D(デグサ)、コリコートEMM30D(BASF)などが使用される。
【0029】
可塑化酢酸ビニルポリマーとは、酢酸ビニルポリマー(ポビドン2.5%とラウリル硫酸ナトリウム0.3%を含む、酢酸ビニル樹脂微粒子(約27質量%)の水分散体である。市販品としては、例えばコリコート(登録商標)SR30D(BASF)などが使用できる。)に可塑剤(クエン酸トリエチル、プロピレングリコールなど)を、水分散体固形分に対して15質量%程度配合したものである。
【0030】
本発明のフィルムは、さらに、引張伸度が150%以上、かつ引張強度が9N以上であることが必要である。引張伸度及び引張強度は、後述(実施例)のキャストフィルムの引張伸度と引張強度で表される値であり、引張伸度を150%以上、かつ引張強度を9N以上とすることで、錠剤を作成する際、打錠時の圧縮圧力によってフィルムが損傷したり、溶出性が変化することもない。
【0031】
好ましい引張伸度は200〜800%であり、さらに好ましくは300〜800%である。また、好ましい引張強度は10〜300N、さらに好ましくは11〜300Nである。
【0032】
本発明のフィルムは、成分A:エチルセルロース、成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーの他に、さらに成分C:医薬用添加剤、成分D:可塑剤、成分E:無機物を含んでいることが好ましい。
【0033】
成分C:医薬用添加剤とは、医薬品添加物規格に収載している添加物品目の中から選択され、ポリビニルアルコールコポリマー(例えば商品名「PVAコポリマー(POVACOAT)」)、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー(例えば商品名「アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギッドEPO)」、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば商品名「HPC」)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば商品名「ヒプロメロース」)、ポリビニルピロリドン(例えば商品名「ポビドン」)、乳糖、ショ糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの1種又は2種以上が好ましい。より好ましくは、ポリビニルアルコールコポリマー(例えば商品名「PVAコポリマー(POVACOAT)」)、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー(例えば商品名「アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギッドEPO)」である。これらは、水に速やかに溶解し、溶解しても溶解液の粘着性が増すことが無いことから、コーティングフィルム用の医薬用添加剤として適している。
【0034】
成分D:可塑剤とは、高分子物質に塑性を付与する物質であり、通常、ガラス転移点や軟化温度を低下させるものである。可塑剤の具体例としては、医薬品添加物規格に収載されているクエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、フタル酸ジブチル、プロピレングリコール、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノールなどが挙げられる。可塑剤の選択は、薬物の溶出性と製剤設計(薬物の溶出速度、保存安定性)に大きく依存するため、薬物とフィルム性能の相関性から選択する。その中で好ましくは、クエン酸トリエチルであり、クエン酸トリエチルは成分A:エチルセルロース及び成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーに混ぜても、ポリマーが壊れることなく、最適なフィルム塑性(引張伸度と引張強度)を付与することができる。
【0035】
成分E:無機物とは、医薬品添加物規格に収載している添加物品目の中から、酸化チタン、タルク、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が使用される。その中で好ましくは、酸化チタンであり、粒子径が小さいことからフィルム内に点在してもフィルム特性に影響を及ぼさない。さらに、比重が大きいので、フィルムコーティング液への分散性もよく操作性も良い。通常、粘着性低減目的としてはタルクが使用されるが、本処方においては酸化チタンが粘着性低減、強度向上、フィルムコーティング時の作業性改善(静電気による装置内壁への付着量低下)の点で、きわめて優れた性能を発揮する。
【0036】
酸化チタンとは、二酸化チタン(TiO)のことで、第十五改正日本薬局方(以下、日局)の「酸化チタン」の規格に適合するものである。市販品としては、KA−10(チタン工業)、酸化チタン(東邦チタンニウム)等が入手可能である。
【0037】
上記成分(A)〜(E)を含むフィルムの組成は、(A)エチルセルロース、(B)アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマー、(C)医薬用添加剤、(D)可塑剤、及び(E)無機物の成分の質量比が、100:(100〜300):(6〜90):(6〜90):(30〜90)であることが好ましく、より好ましくは100:(100〜250):(10〜70):(10〜50):(30〜80)であり、さらに好ましくは、100:(100〜200):(10〜50):(10〜30):(30〜70)である。
【0038】
(A)エチルセルロース100に対して、(B)アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーが100以上だと、フィルムの伸度及び強度が良好になる。300以下だと、フィルムの粘着性が減少し、フィルムコーティング後の顆粒の凝集が発生しにくい。
(A)エチルセルロース100に対して、(C)医薬用添加剤が6以上だと、薬物の溶出速度が速くなり、速溶性が良好になる。90以下だと、薬物の溶出速度を抑えることができ、口腔内で薬物の苦味を感じ苦味マスク効果が良好になる。
【0039】
本発明のフィルムで被覆した顆粒は、製造直後の薬物溶出パターンが適当であることはもちろんであるが、貯蔵中にそのパターンが大きく変わってはならない。そのためには、フィルムが厚い方が安定であり、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。しかし、単にフィルムコーティング量を増やすと、薬物溶出速度が低下し、極端な場合には薬物が全く溶出しなくなる。そのため、目標のフィルムコーティング量(フィルム厚み)と溶出パターンを得るために、上記配合範囲であると好ましい。
【0040】
本発明のフィルムで被覆した顆粒のフィルム層は好ましくは1層のみであり、打錠時の圧縮圧力が好ましくは0.1〜25kNの範囲内である。この範囲内であれば、フィルムは損傷せず、薬物の溶出速度も圧縮圧力を加えていない状態の顆粒の溶出速度に対し±10%以内で薬物溶出の変動がほとんどない。
【0041】
圧縮圧力は、錠剤を成型するのに必要な圧力ではあるが、打錠機の劣化やフィルムへの付加を考慮すると0.1〜20kNがより好ましく、0.1〜15kNがさらに好ましい。
【0042】
(A)エチルセルロース100に対して、(D)可塑剤が6以上だと、(A)エチルセルロースのガラス転移点が適度に下がり、フィルムの成膜性に影響を及ぼさない。90以下だと、フィルムが軟化しすぎず、粘着性が低くなり、フィルムとして最適である。
【0043】
(A)エチルセルロース100に対して、(E)無機物が30以上だと、フィルムの粘着性低減効果が向上し、コーティング後の顆粒の凝集が低減する。90以下だと、フィルム内に適度に点在し、フィルムの伸度や強度を維持できる。
【0044】
本発明のフィルムを作成する際のコーティング液は、水以外の固形分成分の濃度が5.0%〜50.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0〜35.0質量%であり、さらに好ましくは10.0〜30.0質量%である。
【0045】
前述の通り、成分A:エチルセルロースに、柔軟性のある成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又は可塑化酢酸ビニルポリマーを配合することで柔軟性を付与でき、また両液の配合比率を限定することで、フィルムの柔軟性と強度を示す引張伸度を150%以上、引張強度を9N以上とすることができる。及び強度を付与することができる。さらに、水に速やかに溶解する成分C:医薬用添加剤を配合することで、溶解しても溶解液の粘着性が増すこともなく、薬物の溶出速度をコントロールすることができる。また、成分D:可塑剤、及び成分E:無機物を配合することにより、柔軟性を維持したまま、粘着性を低減し、かつ、強度を向上させることができる。
【0046】
上記フィルムは、例えば、(1)純水をプロペラで撹拌しつつ、そこに成分D:可塑剤を投入し、約10分間攪拌させた後、成分A:エチルセルロースを投入し、約10分間撹拌する。(2)撹拌を継続したまま、さらに成分C:医薬用添加剤及び成分E:無機物を投入し、約15分間撹拌し、(3)さらに、成分B:アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(或いは、あらかじめ混合しておいた可塑剤と酢酸ビニルポリマーの混合液)を投入し、ゆるやかに約10分間撹拌し、(4)目開き250μmの篩を通す、という操作によって調製される。
【0047】
成分A:エチルセルロースは、可塑剤がなければ成膜しないものであるが、本発明においてはきわめて懸濁安定性の高い粘着性低減剤として作用する。
【0048】
本願発明のフィルムにより、素顆粒(薬物を含有する粒子)を、公知の方法でコーティングして得られる顆粒は好ましい態様である。
【0049】
素顆粒は、高速撹拌造粒、流動層造粒、押出造粒、押出/球形化造粒法、又は核粒子を用いた薬物レイヤリング法によって調製された顆粒であってもよいし、或いは薬物結晶粒子でもよい。しかし、溶出速度が精緻に制御されるフィルムコーティング顆粒を作るためには、レイヤリング法を用いて調製された球形の顆粒が最適である。
【0050】
素顆粒の大きさは製剤設計思想に従って決定すればよいが、さらに錠剤化するためにはより小さいものであることが望ましい。それは、打錠時の機械的応力によるフィルムの損傷抑制はもちろんのこと、打錠用粉体の混合や輸送時、及び打錠時の偏析(混合成分の比率がバラつくこと)の抑制に有効だからである。具体的には、素顆粒の平均粒子径が50μm以上300μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であるとさらに好ましい。なお、ここでいう平均粒子径とは、篩分法によって測定される粒子径の篩下積算分布の積算50質量%の値を意味する。
【0051】
本願発明のフィルムにより素顆粒が被覆された顆粒の、薬物の溶出速度は、苦味のある薬物の場合、1分後の薬物溶出速度を抑制させる必要があり、苦味の度合いにもよるが、どの薬物も1分後の薬物溶出率が10%以下であれば苦味を感じないレベルであり、好ましい。また、速やかに薬物が溶出されるレベルとして、30分後の溶出率が90%以上であれば速溶出性と判断され好ましい。
【0052】
上記の顆粒の凝集率は、フィルムコーティング顆粒調整時にフィルム粘着力の影響を受けて顆粒同士が接着し、凝集した顆粒の割合を示したものである。凝集した顆粒は、目的の溶出制御機能が損なわれる為、排除する必要があり、顆粒の凝集は生産効率の低下につながる。通常、医薬品の生産効率から凝集率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。さらに、フィルム単独の粘着性についてはフィルム表面を指先で触れた値でも評価可能であるが、これらは、実用的な生産効率であるかを判断する為の基準として用いており、このような物性を得るように、上述の通り、フィルム組成成分の固形分重量比を適宜調整する。
【0053】
薬物レイヤリング法に使用される球形核粒子は薬学的に不活性であり、すなわち、薬物を含まず、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、又はキサンタンガムなどからなる。中でも、結晶セルロース製球形核粒子の使用は、レイヤリング時の顆粒の凝集が少ない。結晶セルロースを70質量%以上含む球形核粒子が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、結晶セルロース製球形核粒子の例としては、セルフィア(登録商標)(旭化成ケミカルズ(株))を挙げることができる。
【0054】
球形核粒子を用いた薬物レイヤリング法による素顆粒の製造方法について説明する。レイヤリング法としては、核粒子に対して、薬物粉末と結合剤水溶液を同時に供給して被覆する方法、薬物粒子の懸濁液を供給して被覆する方法、薬物水溶液を供給して被覆する方法、などがある。薬物粉末と結合剤水溶液を同時に供給する方法の場合、薬物以外の添加剤、例えば賦形剤は、適宜、薬物粉末と混合して使用する。薬物懸濁液や水溶液を用いる場合、流動層コーティング装置(流動層乾燥機又は流動層造粒機と呼ばれる場合もある。)の使用が適当である。
【0055】
流動層コーティング装置は、通常の流動層型の他に、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型や、底部に回転機構を備えた転動流動層型などを使用することができる。装置の例としては、フロイント産業社製「フローコーター」(商品名)、「スパイラフロー」(商品名)、Glatt社製「WST/WSGシリーズ」、「GPCGシリーズ」、不二パウダル社製「ニューマルメライザー」(商品名)、パウレック社製「マルチプレックス」(商品名)などを挙げることができる。レイヤリング液の供給は、トップスプレー、ボトムスプレー、サイドスプレー、タンジェンシャルスプレーの中から各装置に適した方法を選択し、連続的に又は間欠的に、核粒子に噴霧する。このような装置の使用は、より小さな核粒子でも凝集を少なく生産することが可能なので、好ましい。
【0056】
素顆粒は、通常少なくとも0.01質量%の薬物を含有する。本発明で使用される薬物とは、人及び動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具・機械ではないもののことであり、例としては、抗癲癇剤(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、等)、解熱鎮痛消炎剤(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド、等)、鎮暈剤、例えば、ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール、等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール、等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン、等)、骨格筋弛緩剤(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン、等)、自律神経用剤(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、等)、鎮痙剤(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン、等)、抗パーキンソン剤(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ、等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン、等)、不整脈用剤(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド、等)、利尿剤(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド、等)、血圧降下剤(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノロール、カプトプリル、メチルドパ、等)、血管収縮剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、等)、血管拡張剤(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、等)、動脈硬化用剤(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート、等)、循環器官用剤(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン、等)、呼吸促進剤(塩酸ジメフリン、等)、鎮咳去痰剤(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等)、利胆剤(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン、等)、整腸剤(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、等)、消化器官用剤(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン、等)、ビタミン剤(酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン、等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム、等)、化学療法剤(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、等)が挙げられる。
【0057】
素顆粒は、薬物レイヤリング法と同様の装置を用いて、フィルムコーティングされる。好ましいのは、内部に案内管(ワースターカラム)を有する噴流層型や、底部に回転機構を備えた転動流動層型の流動層装置の使用である。フィルムコーティング液の供給は、トップスプレー、ボトムスプレー、サイドスプレー、タンジェンシャルスプレーの中から各装置に適した方法が選択され、素顆粒に噴霧される。噴霧中は、フィルムコーティング液中の無機物が沈降しないように、プロペラ等で常時撹拌しておく。噴霧終了後は、サンプルを取り出すことなく、そのまま、或いは風量及び温度を適宜調節して、フィルムコーティング顆粒を乾燥する。さらに加熱処理(キュアリング)を行うことは、フィルムの成膜性を上げるので、好ましい。
装置から回収したフィルムコーティング顆粒は、全仕込み質量に対して、回収されたフィルムコーティング顆粒の質量割合を算出し、回収率とする。製品の生産効率に影響する為、通常、回収率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0058】
本発明のフィルムにより被覆された顆粒を含有した錠剤、好ましくは口腔内での速崩壊性製剤、すなわち口腔内速崩壊錠とは、水なしでも服用できる医薬品製剤で、口腔内でも苦味を感じることなく、第15改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に準じて実施した錠剤の崩壊時間が、90秒以内で崩壊することを指し、より好ましくは60秒以内で崩壊、さらに好ましくは30秒以内で崩壊することを意味する。
また、錠剤を実際に、人の口の中に入れて唾液のみで崩壊させる口腔内崩壊試験では、60秒以内で崩壊することが好ましく、30秒以内ではより好ましい。
【0059】
上記錠剤は、上記フィルムコーティング顆粒を0.55−90.0質量%含有し、さらにトレハロース、結晶セルロース、崩壊剤、及び滑沢剤を含有するのが好ましい。
【0060】
上記錠剤、好ましくは口腔内での速崩壊性製剤、すなわち口腔内速崩壊錠は、トレハロース、結晶セルロース、活性成分、崩壊剤、及び滑沢剤以外の成分を含んでも良い。そのような成分としては他の賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤などが挙げられる。賦形剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトースなどの糖類、キシリトール、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール類、コメ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機類等が挙げられる。
【0061】
結合剤としては、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等が挙げられる。
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、l−メントールなどが挙げられる。
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール等が挙げられる。
着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、リボフラビンなどが挙げられる。
【0062】
甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア等が挙げられる。界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0063】
本発明で使用されるトレハロースとは、グルコースがα−1,1結合した、非還元性二糖類であり、白色の結晶又は非結晶性の粉末で、においはなく、味は甘い。市販品としてはトレハロースG、SG(林原生物化学研究所)、トレハロースP、G(旭化成ケミカルズ)などが使用できる。
【0064】
本発明で使用される結晶セルロースとは、白色の結晶性粉末であり、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製したものである。また、結晶セルロースには様々なグレードがあるが、本発明においては、高成形性の結晶セルロースの粉体物性値である嵩密度が0.2g/ml、平均粒子径が50μm、安息角が50°、平均粒子径の長径短径比(L/D)が2.5〜4.0を示す結晶セルロースが好ましい。市販品としてはセオラスKG−802(商品名)、セオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)などが使用できる。
【0065】
本発明で使用される崩壊剤としては、例えば、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等が挙げられるが、クロスポビドン(ポリプラスドンXL−10:ISP)、部分アルファー化デンプン(PCS PC−10:旭化成ケミカルズ)、アルファー化デンプン(SWELSTAR PD−1、FD−1:旭化成ケミカルズ)がより好ましい。
【0066】
本発明で使用される滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、タルクがより好ましい。このタルクは白色から灰白色の微細な結晶性粉末で、天然の含水ケイ酸マグネシウムと少量のケイ酸アルミニウムを含むものである。市販品としてはタルカンハヤシ(商品名)(林化成)、タルク(日本タルク、富士タルク工業、オリエンタル薬品工業、土屋カオリン工業)などが使用できる。
【0067】
本来、滑沢剤とは、錠剤を打錠する際に生じる臼や杵への粉の付着を防止させる目的で配合されるが、滑沢効果が強すぎると、錠剤の成形性が悪くなり、実用的な錠剤硬度である40〜60Nとするために高い圧力をかけなければならない。高い圧力で作製された錠剤は、錠剤の崩壊速度が遅延する傾向にあることから、口腔内崩壊錠には適さない。このため、できるだけ低い圧力で打錠する必要がある。
錠剤の硬さは錠剤の硬度で表され、輸送や保管時に錠剤が欠けたり、割れたりするのを防止する為、錠剤硬度は40〜120Nが好ましい。ほとんどの場合、硬度と崩壊時間は比例する関係にあり、口腔内崩壊錠は崩壊時間を短くする必要がある為、錠剤硬度は40〜80Nがより好ましく、40〜60Nがさらに好ましい。
さらに、錠剤の硬さを試験する摩損度試験(第15改正日本薬局方、製剤総則に従って実施)は、錠剤を回転盤に投入し、一定時間回転させた後、錠剤が欠けたり、割れたりし、粉化した質量割合を算出し、摩損度が0.5%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。
上記錠剤は、口腔内で60秒以内に錠剤が崩壊する錠剤組成として、顆粒:トレハロース:結晶セルロース:崩壊剤:滑沢剤の質量比が、100:(30〜6900):(12〜3000):(0.1〜1000):(0.1〜1000)であることが好ましい。より、顆粒を0.55〜90.0%含有する錠剤がより好ましく、顆粒を1.0〜70.0%を含有する錠剤がさらに好ましい。
顆粒と崩壊剤の質量比は、100:(0.1〜1000)が好ましいが、錠剤全体の崩壊剤の質量比としては、0.1〜10.0%が好ましく、1.0〜7.0%がより好ましい。崩壊剤は錠剤の崩壊を促進させる目的で配合するが、崩壊剤単独の流動性や成形性が錠剤の重量バラツキや硬度低下に起因するので、適宜調整する。
顆粒と滑沢剤の質量比は、100:(0.1〜1000)が好ましいが、前述にあるように、滑沢剤の配合量と滑沢効果は比例するので、錠剤全体の滑沢剤の質量比としては、0.1〜5.0%が好ましく、0.1〜3.0%がより好ましい。
【0068】
トレハロースと結晶セルロースの質量比は、錠剤の硬度、崩壊性や口腔内での甘味及び食感から、トレハロース:結晶セルロース=100.0:(11.1〜100.0)が好ましく、100.0:(25.0〜70.0)がより好ましい。結晶セルロースの質量比率が、トレハロースに対して100.0質量%以下であると、服用時の口腔内の舌ざわりが良く、十分な甘味を有するので、口腔内崩壊錠として好ましい。また、11.1質量%以上のとき、成形性が良く、錠剤打錠時に高い圧力をかける必要がないため、口腔内崩壊錠として好ましい。
【0069】
トレハロースと結晶セルロースは、その質量比率をトレハロース:結晶セルロース=100.0:(11.1〜100.0)として混合粉体を造粒し、造粒顆粒を得る。混合方法としては、通常、医薬品の製造に使用される装置による方法が用いられ、装置として、例えば、V型混合機、ダブルコーン型混合機、タンブラー型混合機(ダルトン)などが挙げられる。造粒方法は、造粒機内で流動している混合粉末に水を添加若しくは噴霧させて、造粒顆粒を製造する。造粒装置としては、流動層造粒機(フロイント)、高速攪拌造粒機(パウレック)などが挙げられる。造粒顆粒の乾燥方法は、送風乾燥、熱風乾燥などの方法があり、乾燥装置として、流動層乾燥機(フローコーター(商品名);フロイント、マルチプレックス(商品名);パウレック)や箱型熱風循環式乾燥機、棚型乾燥機などを挙げることができる。
【0070】
乾燥した造粒顆粒は、顆粒の大きさを整えるため、整粒装置で平均粒子径50〜400μmになるように調製するのが好ましく、50〜300μmになるように調製するのが、さらに好ましい。整粒装置としては、オシレーター、コーミルなどを挙げることができる。
【0071】
崩壊剤は、錠剤の崩壊性を良くするために配合するが、造粒段階で他の薬物や賦形剤と一緒に造粒して使用してもよく、また、造粒顆粒に配合してもよい。崩壊剤の配合量は、錠剤重量に対して、0.1〜20.0質量%が好ましく、0.1〜10.0質量%がさらに好ましい。20.0質量%以下の配合であれば、錠剤の成形性への影響をより小さくすることができるので、好ましい。
【0072】
口腔内速崩壊錠を製造する打錠方法は、混合粉体を充填して圧縮成形して錠剤を作製するが、打錠装置としては、一般的にロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所)を挙げることができる。粉末を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさから攪拌フィーダーやオープンフィーダーなどフィーダーの種類を選択することができる。
【実施例】
【0073】
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明で用いられる物性の測定方法及び条件は以下のとおりである。
【0074】
まず、物性の測定方法を以下にまとめて記す。
<キャストフィルムの粘着性、引張強度、引張伸度>
(1)フィルムコーティング液を、直径8.5cmのプラスチック製シャーレに適当量(キャストフィルムの厚みが0.27〜0.37mmの範囲内に入るようにする。水以外の固形分成分濃度が17質量%のフィルムコーティング液の場合は、11.3g程度に相当する。)入れる。
(2)無風オーブン中で40℃、10時間乾燥する。
(3)オーブンから取り出して直ちに、フィルム表面を指先(あらかじめ石けんでよく洗浄後、充分に乾燥しておく。)で触れて、粘着性(べたつき)を評価する。粘着性の評価基準(4段階評価)とそれに対応するコーティング時の評価とを検討した結果、下記のような相関が認められた。
【0075】
1 無 :比較的高速でスプレーできる(凝集微少)
2 微弱 :スプレー速度を落とすとコーティングできる程度(凝集少々)
3 弱 :間欠スプレーで、やっとコーティングできる程度(凝集多め)
4 強 :すぐに凝集し、コーティングできない
(4)さらにシャーレを無風オーブン中で、80℃、1時間加熱処理する。
(5)室温まで冷却後、フィルムを剥離し、10mm×30mmの矩形に切り出す。
(6)引張試験の測定部分の間隔が10mmになるようにキャストフィルムを引張試験機(クリープメータ、RE−33005型(シート引張試験用アダプター、200Nロードセル使用)、(株)山電)にセットし、0.5mm/secの速度で引っ張り、フィルムが破断した時の伸び(mm)と強度(引張強度)[N]を求める。
(7)引張伸度[%](=100×伸び(mm)/10(mm))を算出する。
<フィルムコーティング顆粒、素顆粒、核粒子の平均粒子径[μm]>
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製、シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩を用いて試料10gを15分間篩分することにより粒度分布を測定する。そして、篩下積算分布における積算50質量%粒子径を平均粒子径とする。
<素顆粒、フィルムコーティング顆粒の回収率[%]>
素顆粒又はフィルムコーティング顆粒の回収量を、用いた原料の総量で除し、質量%で表す。
<素顆粒、フィルムコーティング顆粒の凝集率[%]>
レイヤリングによって得られた素顆粒、或いはフィルムコーティングによって得られたフィルムコーティング顆粒の凝集物(粗大粒子:顆粒の粒子径355μm以上)を篩目355μmで除去し、その重量を全量で除し、質量%で表す。
<薬物の溶出試験>
フィルムの溶解性はpHに依存しない為、試験液のpHは特に限定しなくても良いが、試験方法が明確に記載されている一般試験法「溶出試験法」に準じて実施した。装置は「装置2」(パドル法)を使用し、パドル回転数は100rpm、試験液は日本薬局方「溶出試験第1液」を使用する。
【0076】
カフェイン(分子量212.21)の場合、苦味を感じる閾値は148.5mg/Lである。実施例のフィルムコーティング顆粒は全てカフェイン含量が1.82%なので、そのフィルムコーティング顆粒1000mgを水20mlで服用すると仮定した場合、カフェイン全量が溶出すると、その濃度は910mg/Lとなる。この910mg/Lのカフェイン濃度に対して、苦味を感じる閾値の溶出率を算出((148.5/910)×100)すると16.3%となる。より厳しい側で判定する為、溶出試験において、カフェイン溶出率が10%以下であれば口腔内で苦味を感じることがないと考えた。よって、溶出試験において、1分後の溶出率が10%以下であるとき、苦味を抑制していると判断した。また、服用後の即放出性として、溶出試験における30分後の溶出率を指標とし、30分後の溶出率が90%以上であることを要件とした。また、実施例では錠剤に含まれるフィルムコーティング顆粒の含有量が違う事から、フィルムコーティング顆粒の含有量が1000mg付近になるように、錠剤の数を調整して溶出試験を実施した。(例えば、総重量180mgの錠剤中、フィルムコーティング顆粒の含有量が30%の場合、18錠を1つの試験液で溶出試験した)
<造粒顆粒の平均粒子径[μm]>
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製、シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩を用いて試料20gを15分間篩分することにより粒度分布を測定した。そして、篩下積算分布における積算50質量%粒子径を平均粒子径とした。
<錠剤の崩壊試験>
第15改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液は水を用いた。
<錠剤の口腔内崩壊試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の唾液で錠剤が完全に崩壊する時間を測定した。各人2回測定し、3人の平均値を用いた。
<錠剤の摩損度試験>
第15改正日本薬局方、製剤総則に従って実施した。一定速度の25rpmで回転する円筒中に錠剤を20錠入れ、中板により錠剤の落下を繰り返した。4分間回転させ、円筒内の錠剤を取り出した。破損分離した粉及び小粒子を篩別除去して質量を測定し、質量減をもとの質量に対する百分率で表示した。
(実施例1)
結晶セルロース製球形核粒子(CP−203旭化成ケミカルズ社製)(平均粒子径237μm、355μm以上の粒子を含有せず)を転動流動層型コーティング装置に仕込み、薬物水分散液(3.0%カフェイン、2.0%ポビドン、2.0%酸化チタン)で噴霧・被覆(レイヤリング)し、素顆粒(G1)を得た。この素顆粒(G1)はカフェインを1.95質量%(核粒子に対して2質量%)含み、その平均粒子径は238μmであった。レイヤリング条件は下記の通りであった。
【0077】
(1)使用装置 :マルチプレックス(商品名)MP−25型((株)パウレック)
(2)風量 :8m/min
(3)給気温度 :70〜75℃
(4)排気温度 :35.0〜39.5℃
(5)ローター回転速度 :250〜300rpm
(6)核粒子量 :10.0kg
(7)薬物水分散液量 :6660.0kg
(8)薬物水分散液噴霧速度 :100〜120g/min
(9)噴霧エア圧 :0.55MPa
(10)噴霧エア量 :700NL/min
次に、前述の方法に従って、エチルセルロース(A)と、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(B)と、ポリビニルアルコールコポリマー(C)と、クエン酸トリエチル(D)と、酸化チタン(E)とを含むフィルムコーティング液(固形分濃度17質量%)(L1)を調製した。エチルセルロースはアクアコートECD30(FMC)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーはオイドラギットNE30D(デグサ)、ポリビニルアルコールコポリマーはPOVACOAT(大同化成工業)、酸化チタンはNA61(東邦チタニウム)を使用した。成分A、B、C、D及びEの質量比は、100:133:33:33:33とした。このキャストフィルムの引張伸度は250%、引張強度は12.0N、粘着性は「1:無」であった。
【0078】
次に、素顆粒(G1)を転動流動層型コーティング装置に仕込み、フィルムコーティング液(L1)で噴霧・被覆(フィルムコーティング)し、篩で355μm以上の粒子を除去し、フィルムコーティング顆粒(F1)を得た。フィルムコーティング顆粒(F1)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は295.0μm(フィルム厚みは約28.5μm)であった。回収率は93.5%、凝集率は5.7%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:5.8%、30分後:96.8%であった。フィルムコーティング条件は下記の通りとした。
【0079】
(1)使用装置 :マルチプレックス(商品名)MP−25型((株)パウレック)
(2)風量 :7.5〜8m/min
(3)給気温度 :45〜50℃
(4)排気温度 :27〜31℃
(5)ローター回転速度:240〜300rpm
(6)素顆粒量 :10kg
(7)フィルムコーティング液量:11.7kg
(8)フィルムコーティング液噴霧速度:100〜120g/min
(9)噴霧エア圧 :0.6MPa
(10)噴霧エア量 :700NL/min
さらに、前述の方法に従って、ヒプロメロースと水を含むオーバーコーティング液(固形分濃度10質量%)(L2)を調製した。ヒプロメロースはヒドロキシプロピルメチルセルロースTC−5E(信越化学)を使用した。フィルムコーティング顆粒(F1)を転動流動層型コーティング装置に仕込み、オーバーコーティング液(L2)で噴霧・被覆(フィルムコーティング)し、篩で355μm以上の粒子を除去し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でオーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒(F2)を得た。オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒(F2)のフィルムコート量は5質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、オーバーコートを施したフィルムコーティング条件は下記の通りとした。
【0080】
(1)使用装置 :マルチプレックス(商品名)MP−25型((株)パウレック)
(2)風量 :7.5〜8m/min
(3)給気温度 :60〜70℃
(4)排気温度 :32〜43℃
(5)ローター回転速度:240〜300rpm
(6)素顆粒量 :10.0kg
(7)フィルムコーティング液量:5.0kg
(8)フィルムコーティング液噴霧速度:100〜120g/min
(9)噴霧エア圧 :0.6MPa
(10)噴霧エア量 :700NL/min
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒(F2)100質量%、トレハロース(トレハロースP(商品名)、林原)163質量%、結晶セルロース(セオラスKG−802(商品名)、旭化成ケミカルズ)70質量%、クロスポビドン(ポリプラスドンXL−10、ISP)10質量%(外割)、タルク(タルカンハヤシ(商品名)、林化成)3.4質量%(外割)を混合し、ロータリー打錠機(クリーンプレス・コレクト12HUK(商品名)、菊水製作所)で打錠した。打錠用の臼杵は、直径8mm、杵の凹曲面半径が12mmのものを12セット使用し、ターンテーブル回転数45rpm、圧縮圧力6.6kNで打錠し、180mgの錠剤を得た。
【0081】
得られた錠剤の硬度は43N、摩損度0.13%、崩壊時間は27秒、口腔内崩壊試験は25秒、カフェインの溶出速度は、1分後:6.2%、30分後:98.9%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:280:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L3)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は350%、引張強度は30N、粘着性は「1:無」であった。
【0082】
次にフィルムコーティング液として(L3)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F3)を得た。フィルムコーティング顆粒(F3)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は305μm(フィルム厚みは約33.5μm)であった。回収率は92.0%、凝集率は6.9%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:4.3%、30分後:94.3%であった。
【0083】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F3)を用いる以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する180mgの錠剤を得た。錠剤の硬度は50N、摩損度0.16%、崩壊時間は28秒、口腔内崩壊試験は25秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:4.6%、30分後:95.6%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図2に示す。
(実施例3)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:85:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L4)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は185%、引張強度は11N、粘着性は「1:無」であった。
【0084】
次にフィルムコーティング液として(L4)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F4)を得た。フィルムコーティング顆粒(F4)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は301μm(フィルム厚みは約31.5μm)であった。回収率は92.7%、凝集率は5.5%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:8.5%、30分後:100.0%であった。
【0085】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F4)を用いて、圧縮圧力5.7kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する180mgの錠剤を得た。錠剤の硬度は47N、摩損度0.18%、崩壊時間は25秒、口腔内崩壊試験は26秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:9.0%、30分後:100.0%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図3に示す。
(実施例4)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:75:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L5)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は340%、引張強度は24N、粘着性は「1:無」であった。
【0086】
次にフィルムコーティング液として(L5)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F5)を得た。フィルムコーティング顆粒(F5)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は296μm(フィルム厚みは約29.0μm)であった。回収率は91.3%、凝集率は6.6%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:4.2%、30分後:93.1%であった。
【0087】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F5)を用いて、圧縮圧力8.2kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する180mgの錠剤を得た。錠剤の硬度は53N、摩損度0.15%、崩壊時間は28秒、口腔内崩壊試験は30秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:4.6%、30分後:94.2%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図4に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:80であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L6)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は180%、引張強度は10N、粘着性は「1:無」であった。
【0088】
次にフィルムコーティング液として(L6)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F6)を得た。フィルムコーティング顆粒(F6)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は295μm(フィルム厚みは約28.5μm)であった。回収率は98.9%、凝集率は2.0%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:7.3%、30分後:100.0%であった。
【0089】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F6)を用いて、圧縮圧力7.6kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する180mgの錠剤を得た。錠剤の硬度は46N、摩損度0.17%、崩壊時間は26秒、口腔内崩壊試験28秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:7.8%、30分後:100.0%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図5に示す。
参考例6)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:350:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L7)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は500%、引張強度は25N、粘着性は「4:強」であった。
【0090】
次にフィルムコーティング液として(L7)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F8)を得た。フィルムコーティング顆粒(F7)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は318μm(フィルム厚みは約40.0μm)であった。回収率は86.8%、凝集率は23.6%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:12.3%、30分後:100.0%であった。
【0091】
薬物溶出パターンを図6に示す。
(実施例7)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:95:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L8)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は310%、引張強度は21N、粘着性は「4:強」であった。
【0092】
次にフィルムコーティング液として(L8)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F8)を得た。フィルムコーティング顆粒(F8)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は314μm(フィルム厚みは約38μm)であった。回収率は83.5%、凝集率は28.5%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:13.5%、30分後:100.0%であった。
【0093】
薬物溶出パターンを図7に示す。
(実施例8)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:20であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L9)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は276%、引張強度は13N、粘着性は「3:弱」であった。
【0094】
次にフィルムコーティング液として(L9)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F9)を得た。フィルムコーティング顆粒(F9)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は286μm(フィルム厚みは約24μm)であった。回収率は94.7%、凝集率は21.3%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:11.8%、30分後:100.0%であった。
【0095】
薬物溶出パターンを図8に示す。
参考例9)
成分Cをヒドロキシプロピルセルロース(HPC)に変更する以外は、実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L10)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は235%、引張強度は11N、粘着性は「2:微弱」であった。次にフィルムコーティング液として(L10)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F10)を得た。フィルムコーティング顆粒(F10)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は286μm(フィルム厚みは約24μm)であった。回収率は94.4%、凝集率は7.7%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:7.2%、30分後:98.3%であった。
【0096】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F10)を用いて、圧縮圧力6.8kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は44N、摩損度0.15%、崩壊時間は26秒、口腔内崩壊試験は27秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:7.8%、30分後:99.6%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図9に示す。
参考例10)
成分Dをトリアセチンに変更する以外は、実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L11)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は160%、引張強度は9N、粘着性は「1:無」であった。次にフィルムコーティング液として(L11)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F11)を得た。フィルムコーティング顆粒(F11)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は280μm(フィルム厚みは約21μm)であった。回収率は95.7%、凝集率は4.5%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:8.2%、30分後:99.2%であった。
【0097】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F11)を用いて、圧縮圧力8.6kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は42N、摩損度0.19%、崩壊時間は28秒、口腔内崩壊試験は29秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:8.9%、30分後:100.0%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図10に示す。
(実施例11)
実施例1のフィルムコーティング顆粒(F2)を用いて、圧縮圧力23kNで打錠する以外は実施例1と同様にして、180mgの錠剤を得た。
【0098】
得られた錠剤の硬度は105N、摩損度0.04%、崩壊時間は35秒、口腔内崩壊試験は40秒、カフェインの溶出速度は、1分後:6.2%、30分後:99.4%であった。
すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図11に示す。
(実施例12)
成分Bに可塑化酢酸ビニルポリマーを用いる以外は実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L12)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は240%、引張強度は11N、粘着性は「1:無」であった。
次にフィルムコーティング液として(L12)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F12)を得た。フィルムコーティング顆粒(F12)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は290μm(フィルム厚みは約26μm)であった。回収率は92.7%、凝集率は5.8%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:6.0%、30分後:94.9%であった。最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F12)を用いて、圧縮圧力6.6kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は42N、摩損度0.14%、崩壊時間は28秒、口腔内崩壊試験は27秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:6.5%、30分後:99.2%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図12に示す。
(実施例13)
成分Cにメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマーを用いる以外は実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L13)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は245%、引張強度は12N、粘着性は「1:無」であった。
次にフィルムコーティング液として(L13)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F13)を得た。フィルムコーティング顆粒(F13)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は292μm(フィルム厚みは約27μm)であった。回収率は94.2%、凝集率は6.3%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:6.4%、30分後:98.2%であった。最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F13)を用いて、圧縮圧力6.6kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は43N、摩損度0.13%、崩壊時間は27秒、口腔内崩壊試験は25秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:6.9%、30分後:99.4%であった。すなわち、硬度、崩壊性に優れ、かつ、打錠前のフィルムコーティング顆粒の溶出速度に対し±10%以内である薬物溶出速度を有する、苦味マスクフィルムコーティング顆粒含有の口腔内速崩壊錠を得ることができた。薬物溶出パターンを図13に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:90:33:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L14)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は130%、引張強度は7N、粘着性は「1:無」であった。
【0099】
次にフィルムコーティング液として(L14)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F14)を得た。フィルムコーティング顆粒(F14)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は290μm(フィルム厚みは約26.0μm)であった。回収率は98.6%、凝集率は2.5%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:6.3%、30分後:97.8%であった。
【0100】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F14)を用いて、圧縮圧力7.5kNで打錠する以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は45N、摩損度0.15%、崩壊時間は25秒、口腔内崩壊試験は27秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:13.7%、30分後:100.0%であった。
すなわち、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(B)の配合比が少ないことで、フィルムの伸度及び強度が足りず打錠時の圧縮圧力でフィルムが損傷し、薬物の溶出が速まる結果となった。薬物溶出パターンを図14に示す。
(比較例2)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:95:33:33であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L15)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は120%、引張強度は6N、粘着性は「1:無」であった。
【0101】
次にフィルムコーティング液として(L15)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F15)を得た。フィルムコーティング顆粒(F15)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は302μm(フィルム厚みは約32μm)であった。回収率は98.3%、凝集率は2.8%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:14.5%、30分後:100.0%であった。
すなわち、ポリビニルアルコールコポリマー(C)の配合比が多いことで、フィルムの伸度、強度が低下し、さらに、水溶性成分であることで、薬物の溶出速度が促進され、1分で10%以下の溶出にすることができなかった。薬物溶出パターンを図15に示す。
(比較例3)
実施例1と同様にして、成分A、B、C、D及びEの質量比が、100:133:33:33:95であるフィルムコーティング液(水以外の成分濃度17質量%)(L16)を調製した。このキャストフィルムの引張伸度は110%、引張強度は5N、粘着性は「1:無」であった。
【0102】
次にフィルムコーティング液として(L16)を用いる以外は実施例1と同様に操作し、オーバコートを施したフィルムコーティング顆粒(F16)を得た。フィルムコーティング顆粒(F16)のフィルムコート量は20質量%(素顆粒(G1)に対して)であり、平均粒子径は320μm(フィルム厚みは約41μm)であった。回収率は98.2%、凝集率は3.0%(355μm以上)であった。カフェインの溶出速度は、1分間後:6.2%、30分後:93.0%であった。
【0103】
最後に、オーバーコートを施したフィルムコーティング顆粒として(F16)を用いる以外は実施例1と同様に操作して、フィルムコーティング顆粒を30質量%含有する錠剤を得た。錠剤の硬度は43N、摩損度0.13%、崩壊時間は27秒、口腔内崩壊試験は25秒、カフェインの溶出速度は、1分間後:14.5%、30分後:100.0%であった。
すなわち、酸化チタン(E)の配合比が多いことで、フィルムの伸度、強度が低下し、打錠後のフィルムコーティング顆粒に被覆されたフィルムが損傷し、薬物の溶出速度が促進され、1分で10%以下の溶出にすることができなかった。薬物溶出パターンを図16に示す。
【0104】
以下の表1〜2に各実施例及び比較例の処方と評価の結果を示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、医薬品薬物を含有する医薬品製剤の分野で好適に利用できる。特に優れた崩壊性を有しているため、水なしで服用できる崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16