特許第5787767号(P5787767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフの特許一覧

特許5787767“X”ワイヤ風速計プローブ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787767
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】“X”ワイヤ風速計プローブ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G01P5/12 A
【請求項の数】22
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2011-541488(P2011-541488)
(86)(22)【出願日】2009年12月18日
(65)【公表番号】特表2012-513021(P2012-513021A)
(43)【公表日】2012年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2009067577
(87)【国際公開番号】WO2010070119
(87)【国際公開日】20100624
【審査請求日】2012年11月8日
(31)【優先権主張番号】0858879
(32)【優先日】2008年12月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】モロ・ジャン・ポール
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−183414(JP,A)
【文献】 特開昭62−017626(JP,A)
【文献】 J. Phys. E Sci. Instrum.,1989年,22,262-268
【文献】 Stavros Tavoularis,Measurement in Fluid Mechanics,米国,Cambridge University Press,2005年 1月,p.250-p.251
【文献】 Rev. Sci. Instrum.,2007年,78,104903-1〜104903-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面近傍で測定を行うシングルワイヤ又はn(n>1)ワイヤ風速計プローブの製造方法であって、前記ワイヤの少なくとも1つについて、
a)保護シース(22)によって覆われた0.6μm未満の直径dの金属コア(20)を有する前記ワイヤ(2)の直線部を2つの面(61´、63´)上に配置及び支持すること、
b)長さlで、l/d比が600〜1500である活性ワイヤ測定領域(14)を露出するために前記シース(22)の一部を除去すること、
c)前記ワイヤを前記プローブの2つのピン(4、6、40、60)に半田付けすること、
を含む。
【請求項2】
少なくとも2つのワイヤを備える風速計プローブを製造するための方法であって、
少なくとも、前記ワイヤの第1のワイヤの製造に前記工程a)〜c)を用い、前記ワイヤの第2のワイヤの製造に前記工程a)〜c)を用いることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブはマルチワイヤプローブであり、前記ワイヤは平行であるか、又は“X”状に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイヤは、0.2mm〜1mm間隔で互いに離隔されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程b)は前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、
前記ワイヤの第1部分を前記2つの面の第1面に配置し、この前記ワイヤの前記第1部分を接着材料の第1滴(71)を使用して前記第1面に固定し、
前記ワイヤの第2部分を前記2つの面の第2面に配置し、この前記ワイヤの前記第2部分を接着材料の第2滴(73)を使用して前記第2面に固定すること、を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、前記工程a)の後に、ワイヤの湾曲を形成すること、を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記湾曲は、前記ワイヤが位置されている前記2つの面(61´、63´)を互いに向かって移動させることにより形成されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程b)は前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、活性測定領域(14)を形成するために、前記ワイヤシース(22)を剥離すること、を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)は前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、
第1の酸洗い工程、
第2の電気化学的な剥離工程、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、剥離長を決定するために、前記ワイヤの抵抗値の測定を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
剥離液の滴(102)を保持することが可能なワイヤ(101)によって形成されたループを使用して剥離すること、を特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ワイヤの少なくとも1つ、又は各ワイヤに対して、前記ワイヤが使用される温度よりもはるかに高い温度でのアニーリングを行うこと、を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
半田付けは、ホットエアペンシル又はレーザ衝撃によって行われることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程a)の前に事前ワイヤ伸長工程を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程c)は、錫−鉛タイプの半田を使用して行われることを特徴とする請求項1乃至14もいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
a)少なくとも2つのホールドピン(4、6、40、60)と、
b)前記ピンに半田付けされており、直線部を含む少なくとも1つのワイヤ(2)と、
を備え、
前記直線部は、0.6μm未満の直径dを有し、保護シース(22)に覆われ、
前記保護シースは、長さlで、l/d比が600〜1500である活性ワイヤ測定領域(14)を露出するために、部分的に除去されていることを特徴とする表面近傍で測定を行うシングルワイヤ風速計プローブ、又はn(n>1)ワイヤ風速計プローブ。
【請求項17】
前記プローブは、マルチワイヤプローブであり、前記ワイヤは平行であるか、又は“X”状に配置されることを特徴とする請求項16に記載のプローブ。
【請求項18】
前記ワイヤは、0.2mm〜1mm間隔で互いに離隔されているか、又は互いに平行に配置されて0.2mm〜1mm間隔で互いに離隔された平面に配置されていることを特徴とする請求項16又は17に記載のプローブ。
【請求項19】
前記プローブの本体を衝撃吸収シース(12)に挿入することを含むことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記プローブの本体は、衝撃吸収シース(12)に挿入されていることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項21】
前記ワイヤは、0.3mm〜0.8mm間隔で互いに離隔されていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記ワイヤは、0.3mm〜0.8mm間隔で互いに離隔されているか、又は互いに平行に配置されて0.3mm〜0.8mm間隔で互いに離隔された平面に配置されていることを特徴とする請求項18に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面近傍で風力測定を行うプローブの分野に関し、さらに具体的には、ホットワイヤ式(熱線式)又はコールドワイヤ式(冷線式)の風速計型のプローブ又は装置とそのようなプローブの製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、そのようなプローブ用の電源制御及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ホットワイヤ式風速計の原理について簡単に説明すると、この技術では、通常2〜5μmの直径を有する非常に細い金属ワイヤがジュール効果によって加熱される。この金属ワイヤが、当該ワイヤの温度未満の気流中に配置されると、当該ワイヤは、強制対流によって冷却される。流動流体(flow fluid)の速度及び/又は温度の変動は、ワイヤ温度の変動を引き起こし、結果として、当該ワイヤの電気抵抗の変動を引き起こす。このような電気抵抗の変動は、測定のために使用される。
【0004】
ワイヤから放出され、その後ワイヤとその周囲の環境との間で交換される電力は、電子回路によって異なる方法で供給することが可能であって、次の3タイプの風速計、
定電流型風速計、
定温度型風速計、
定電圧型風速計、
を定義するために使用することができる。
【0005】
表面はその存在によって速度測定に影響を及ぼすため、物体の表面近傍で行われる測定は、非常に特別である。この結果、速度値の過大評価を生じさせる。
【0006】
この過大評価は、物理的に以下のように説明される。前記の金属ワイヤが過熱されるため、ワイヤは熱拡散スポット(thermal diffusion spot)によって囲まれる。前記の金属ワイヤと前記の物体の表面との距離がワイヤを取り囲むこのホットスポットのサイズより小さく減少すると、エネルギー伝達が前記の物体の表面に向かって発生する。前記の金属ワイヤについては、前記物体の表面が存在しない状態で測定されたキャリブレーションと比較して、測定された速度の増加に等しい前記の伝達されたエネルギーの増加をもたらす。この過速度現象は、前記の物体の表面からおよそy+=6程度の無次元距離から有効になる。異なる分析的な補正は、この表面の架橋現象(surface bridge phenomenon)に影響を受ける測定値を補正するために開発された。これらの補正方法は、(例外なく)期待された結果から始めてそれらが構築されているという重大な欠点がある。その結果、前記の補正方法は、定常状態でない流体の流れの状態には使用できない。
【0007】
概略的には、リグラーニ(Ligrani)及びブラッドショー(bradshaw)の1987年の文書に記載され、図1に示された公知のプローブは、白金及び10%のロジウムからなる合金で作られた金属ワイヤ201(ホットワイヤ直径0.625μm)を含む。この金属ワイヤは、“U”字形状であって、その活性部600(加熱長さ)において電流が流される。
【0008】
上記の金属ワイヤは、アラルダイト接着剤450によって互いに接触が保たれた2つの先端400、600の端部に固定されている。前記金属ワイヤ、当該ワイヤを固定する(錫)半田ポイント221によって、前記の端部上に固定される。
【0009】
2つのピンの先端間の間隔eは、0.5mmである
【0010】
図1で見ることができるように、ワイヤは、ピンが互いに接近させることにより生まれるブロッキング効果を中和するように、先端400、600によって定義される平面から約15°の角度αで傾斜した平面を定義している。遮断効果(ブロッキング効果)は、ピンの端部同士が近すぎるという事実によって、流体の流れを妨げる。この障害は、活性部600で行われた全ての測定に影響を与える。
【0011】
そのため、課題の1つは、そのようなプローブよりも良い性能を有するプローブを作ることにある。特に、図1に示すような型のプローブは、振動に対する耐性と感度に問題がある。
【0012】
予想される測定タイプの別の態様は、フィルタリング現象である。この現象は、活性領域が大きすぎるときに発生し、ポイント測定値よりもむしろ平均測定値または積分測定値を与える。
【0013】
このフィルタリング現象を制限するための1つの解決策は、ワイヤの長さを減少させるために、ピン同士の間隔を減少させることである。しかしながら、上述したように、ピン同士を互いに近接しすぎると、Comte-Bellot等(ASME, J.Applied Mechanics, vol.38, 767-774, 1971)の「単一ホットワイヤプローブによって生じる空気力学的攪乱において(“On aerodynamic disturbances caused by single hot-wire probes”)」と題された論文に記載されているように、流体の流れへの遮断効果が生じる。「リグラーニ(“Ligrani”)」プローブの概念に基づいてワイヤの活性長を削減することからなるこの解決策は、ピンが互いに近接しすぎることによって、遮断効果が効果的に増大する。
【0014】
Dantesc社及びTSI社によって販売されているものなどのように、上述の問題を解決可能な既製品のプローブはない。
【0015】
したがって、既製の風速計アセンブリを含む公知のプローブ(定温度風速計に関する通常2.5μm径のプローブ)は、小規模な乱気流の測定には適さず、我々が求める表面の近傍での測定には全く適さない。
【0016】
さらに、ますます正確な速度測定及び物理的な表現をする場合、全てのワイヤの体積が可能な限り小さな範囲内であり、そのため全てのワイヤで速度が同じであると仮定できるほど、全てのワイヤによって定められた体積が非常に小さなマルチワイヤプローブが必要である。
【0017】
最後に、このタイプのプローブの製造には未だほとんど解決されていない多数の技術的な問題がある。
【0018】
現時点では、1mmの数分の1未満の非常に小さな距離で分離されたいくつかのワイヤから構成されるプローブを作成することは不可能である。
【0019】
本発明で生じる1つの特定の課題は、優れた性能を有するプローブを作成する再現可能な製造方法を見つけることである。特に、そのような方法は、単一のワイヤプローブ又は“X”の又は平行のマルチワイヤプローブの作成を可能にするべきである。
【0020】
本発明は、特に遮断効果(ブロッキング効果)を制限するために、具体的には、非常に小さな径を有し、ピン同士の間隔が大きなプローブの製造に有用である。
【0021】
特に、本発明は、直径0.35〜0.625μmのワイヤ、例えば、0.5μm径のワイヤを用いてプローブを再現可能に作成するために利用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、優れた性能を有するプローブを作成する再現可能な製造方法を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第一に、本発明は、表面近傍で測定を行うために、平行又はXに配置されたn個(nは1以上)のワイヤを有する風速計プローブに関連し、該風速計プローブは、各々のワイヤについて、
a)各々の端部にワイヤ配置及び固定領域を有する2つのワイヤホールドピンと、
b)該ワイヤ配置及び固定領域上に半田付けされる直線ワイヤ部と、
を有する。
【0024】
ピンの端部は、少なくとも4mmの間隔で離隔されてもよい。
【0025】
好ましくは、ワイヤは、白金及びロジウムの合金からなり、直径dが0.35〜0.6μmである中央コアと、0.4〜0.5mmの長さで、センシティブ又は活性領域と呼ばれる、銀のシース(sheath)が除去されたワイヤと、を含む。
【0026】
ワイヤは、錫−鉛タイプの半田を使用してピン上に半田付けされてもよい。
【0027】
ワイヤは、ワイヤの活性部の破損の問題を解決するために湾曲している。
【0028】
上述のタイプの本発明に係るプローブは、平行、又は「X」状のn個(nは2以上)のワイヤを含む。例えば、平行に、又は「X」状に配置された2個、3個又は4個のワイヤを含んでもよい。
【0029】
本発明はまた、n個(nは1又は2以上)のワイヤを有する風速計プローブの製造方法に関連し、特に、表面の近傍で測定を行うための以上に定義されたようなプローブは、少なくとも1つのワイヤについて、
a)例えば、研磨加工された2つの表面に、保護シース(protective sheath)によって包まれた金属コアを含むワイヤの直線部の配置及び支持し、
b)その後に、活性ワイヤ測定領域(active wire measurement zone)を露出するためのシース部分の除去と、
c)その後、ワイヤをプローブの2つのピン上に半田付けすること、
を含む。
【0030】
本発明によると、事前に露出又は剥離されたワイヤ(工程b)は、ピン上に実装される(工程c)。
【0031】
それがプローブのピンに半田付けされる前に、ワイヤの活性部が露出されたり、局所的に除去される(工程b)ことができるように、ワイヤは、構造または表面上に配置される(工程a)。この技術では、n個のワイヤが平行に又は「X」状に配置される非常に複雑な構造のプローブを製造することが可能になる。
【0032】
ワイヤが支持されている表面は、ワイヤの水平な支持及びワイヤの可能な限り正確なアライメントを提供するように、事前に整列されている。
【0033】
以上の工程は、マルチワイヤにおける各ワイヤについて繰り返されてもよい。
【0034】
したがって、本発明はまた、少なくとも2つのワイヤを有する風速計プローブを製造するための上述したような方法に関連し、前記ワイヤの少なくとも1つの第1のワイヤに対して工程a)〜c)を使用し、その後、前記ワイヤの第2のワイヤに対して工程a)〜c)を使用すること、を含む。
【0035】
工程b)は、ワイヤの少なくとも1つに対して、
2つの表面の第1表面上にワイヤの第1部分を配置し、接着部材の第1の滴下を使用して、このワイヤの第1部分をこの第1表面に固定し、
2つの表面の第2表面上にワイヤの第2部分を配置し、接着部材の第2の滴下を使用して、このワイヤの第2部分をこの第2表面に固定すること、を含む。
【0036】
これら配置の工程と接着の工程との間に、ワイヤは、第1の接着点に対する湾曲を防ぐ手段によって支持されてもよく、そのような湾曲は、第2の配置及び接着工程において発生する。
【0037】
本発明に係る方法は、工程a)及びb)の後に、例えば、2つの表面を互いに向き合わせること(bringing the two surfaces towards each other)によってワイヤの湾曲の形成を含んでもよい。
【0038】
一実施形態によると、工程b)は、活性測定領域を形成するためにワイヤシース(wire sheath)の剥離、例えば、
第1の酸洗い(first acid pickling)工程、
その後の、第2の電気化学的な剥離工程、を含む。
【0039】
ワイヤの抵抗測定は、剥離長を決定するために行うことができる。剥離はまた、剥離液の液滴を保持できるワイヤにより形成されるループを使用して行なわれてもよい。
【0040】
本発明に係るワイヤの一製造方法は、ワイヤが使用される温度よりもはるかに高い温度でのアニーリング工程を含む。
【0041】
半田付けは、ホットエアペンシル又はレーザ衝撃によって行なわれてもよい。
【0042】
工程a)の前に、例えば、ワイヤの軸方向の機械的な張力に起因する伸長といった予備ワイヤ伸長工程がワイヤの直線部を形成するために用いられることが可能である。例えば、ワイヤは、1つが自由に動く2つのパッドの端部に固定保持される。この可動パッドは、少なくとも1つの方向、好ましくは、2方向又は3方向に沿ってマイクロメートル移動のテーブル(micrometric displacement table)に接続される。
【0043】
本発明はまた、本発明によるプローブの使用を含む風量(anomometric magnitude)測定方法に関連し、特に、表面近傍での測定方法に関連する。
【0044】
別の態様によると、本発明はまた、定電流のワイヤ風速計を制御する装置に関連し、
電源手段及びワイヤへの電源電流及び基準抵抗を制御する手段と、
プローブワイヤの端子での信号と基準抵抗の端子での信号との間の差を決定する手段と、
装置の定温度を維持する手段と、を含む。
【0045】
この制御装置は、上述の本発明に係るプローブ、又は別のタイプの風速計プローブに適用されることができる。しかし、特に有用な結果は、本発明に係るプローブを用いて得られる。
【0046】
例えば、ワイヤ及び基準抵抗は、カレントミラー状に実装されてもよい。
【0047】
電源電流を制御する手段は、好ましくは、ダイオードに実装された制御トランジスタ及びポテンショメータを備える。
【0048】
本発明はまた、コールドワイヤ式温度風速計に関連し、例えば、上述した本発明の範囲内の構造を備える風速計と、
上述したような制御装置と、を備える。
【0049】
本発明は、追加の熱電対(thermocouple)なしに上述したような温度風速計の使用を含む、流動流体(flowing fluid)における温度を測定する方法に関する。
【発明の効果】
【0050】
この装置は、流体の流れにおける温度変動の測定だけでなく、過去には不可能であった、その平均気温の測定に使用されることができる。
【0051】
平均温度の測定のために、熱電対を使用することなくコールドワイヤ式風速計を使用することができる。
【0052】
風速計の測定値に影響を及ぼさず、機械的なストレス又は振動を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】公知のホットワイヤ式プローブを示す図面である。
図2A】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図2B】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図2C】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図2D】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図2E】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図3A】2つ又は2つ以上のワイヤを備える、本発明に係るほかのタイプのプローブを示す図面である。
図3B】2つ又は2つ以上のワイヤを備える、本発明に係るほかのタイプのプローブを示す図面である。
図4】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図5】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図6】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図7】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図8】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図9】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図10】本発明に係るプローブを製造する工程を示す図面である。
図11】本発明の範囲内に使用されることができる電源及び測定回路を示す図面である。
図12】本発明の温度風速計についての、本発明の測定曲線を示す図面である。
図13】本発明の温度風速計についての、本発明の測定曲線を示す図面である。
図14】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの態様を示す図面である。
図15A】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの別の構造を示す図面である。
図15B】本発明に係る“X”状のワイヤを備えるプローブの別の構成を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図2A乃至図2E及び図14は、本発明に係るプローブの一例を示す。
【0055】
これは、一つの特定の構成であり、他の多くの構成が可能である。
【0056】
この例によると、プローブは、好ましくはセラミックで形成された円筒形絶縁体10内に伸長された2つの金属ピン4、6の尖った端部同士の間に張られたワイヤ2を備える。
【0057】
また、絶縁体10内に伸長された2つの金属ピン40、60の尖った端部同士の間に張られたワイヤ20を備える。
【0058】
2つのワイヤ2、20は、それらが互いに平行な異なる2つの平面に配置され、絶縁体10の軸によって特定された装置の軸に対して垂直であっても、それらの間で角度αを成して配置される(図14は、装置を正面から見た図である)。それらのワイヤを含むこれらの平行な面は、0.8mm以下、又は0.2〜1mm、若しくは0.3〜0.8mmの間隔で離隔される。角度αは90°であってもよく、そのため、2つのワイヤは、図14に示される正面図で見られるように互いに直角を成してもよい。これらの構造は、図14に示されるようなワイヤの相対的な位置によって、“X”構造として特定される。
【0059】
しかし、本発明はまた、図3A及び図3Bに示されるような平行なワイヤを備える装置及び装置の製造を可能にすることに関連する。前述のように、ワイヤは、0.8mm以下、又は0.2〜1mm、若しくは0.3〜0.8mmの間隔δで離隔される。
【0060】
通常、このワイヤが配置されている平面間の最大距離、又はワイヤ間の最大距離は、観測された現象の非常に良好な表示が得られるポイント測定値の実現に貢献する。
【0061】
図15A及び図15Bは、別のX構造を示す。この構造でも、以下に述べる図2Eに示すように、中央検出領域をそれぞれ有する2つのワイヤ2、20を備える。ワイヤは、上述したように、プローブ本体に配置された2つのピン4、6、及び40、60、によって各々固定されている。この図は、この構造の場合、プローブを側面から見たときに、“X”形状を見ることができることを示している。他の多くの“X”構造が可能である。実際の構造は、測定を行う周囲環境下及び条件下に依存する。
【0062】
実施形態にかかわらず、プローブ本体10は、例えば、直径が2〜4mmであるセラミックシリンダーを備え、その中に、直径が例えば0.2〜0.4mmのステンレススチール針をピン4、6、40、60として機能するように設置することができる(図2A及び図2Bの事例であるが、図3A及び図3Bに示されるような他のケースに適用されることもできる)。
【0063】
ワイヤ2(及び場合によっては別のワイヤ又は本発明によって作成されるプローブに使用される他のワイヤ)は、ピン4、6上に配置される。図2Cは、これらのピンの形状の一例、即ち、、ピン4の側面図を示す。参照番号43は、ワイヤ2の端部が半田付けされるピン4の一部を示す。他のピン6も同じ構造を有する。そのため、各ピンは、AA´方向に沿った実質的に円筒形の断面を有し、例えば、ピンが円筒形状を有する(図2C)を有する場合、AA´軸はピンの回転対称軸である。
【0064】
ワイヤ2も1mmの100分の1オーダーの非常に正確なアライメントを有する。(図1を参照して前述したような)公知のプローブの構造とは異なり、ワイヤ2の直線部はピン4、6上に位置する。湾曲は、装置の精度と再現性を低下させるため、図1の事例のように“U”字状にワイヤを湾曲させる必要はない。
【0065】
錫−鉛合金タイプの半田がピン4、6上にワイヤ2を半田付けするために使用されてもよい。
【0066】
ピンの突出長Lは、構造によるが、約15mmであってもよい。図2A及び図2Bにおける“X”状の構造では、プローブの前面に最も近いワイヤの後ろのワイヤ用のピンの突出長の長さが短く、言い換えると、図2Bにおけるワイヤ2用のピンの突出長よりもワイヤ20用のピンの突出長のほうが短い。
【0067】
一つのワイヤを支持するための2つのピンの端部を離隔する距離Dは、境界層流速が12m/s前後になるように、約5mm以上であってもよく、好ましくは5〜8mmである。一方、高いせん断状況、例えば、ジェット境界では、良好な動作は、ピン間の間隔が4mmを超えていないときにだけ得られる。間隔が4mmを超えると、(以下に述べる構造である)ワイヤ2の銀シース(silver sheath)の不十分な剛性により、せん断励振(shear excitation)がワイヤの規模で大きな振幅振動を誘発し、ワイヤを破壊することがある。操作中におけるワイヤの活性部分の破壊のリスクを低減するために、プローブ本体は、活性部分が非常に脆いワイヤ2に伝播する可能性がある波又は振動を吸収するエラストマーチューブ12で覆われる。
【0068】
ワイヤ2(又は20、或いは本発明により製造されるプローブに使用される他のあらゆるワイヤ)は、図2Dに示すように、好ましくは、50〜80μmの直径を有する銀シースで覆われて、白金又は白金−ロジウム合金で構成された中央部21を備えるワイヤである。
【0069】
中央部21の直径は非常に小さく、0.635μm以下、又は0.6μm、例えば、0.35μm又は0.5μmである。使用するワイヤは、好ましくは、白金−ロジウム(白金−10%ロジウム)合金で構成される“ウォラストンタイプのワイヤ”である。リスクなしに直接この直径のワイヤを扱うことは不可能である。30〜50μm径の銀シースでワイヤを囲む(図2D)ことにより、この扱いが可能である。
【0070】
そのようなワイヤは、図2Eに示すように、銀シースを局所的に剥離することによって測定領域14を定めることができるため、公知のデバイスを使用した場合よりも良好なポイント測定値を提供する。その結果、アクティブ長1は0.4mm〜0.5mmとなる。アクティブ長がこれよりも短いと、測定領域14の境界での銀シースの端部22´、22´´によるエッジ効果が高くなりすぎるため、測定の精度が低くなる。この態様は、活性部14及び銀シース22を明確に見ることができる図2Eに示されている。
【0071】
この活性部の幅(0.4mm〜0.5mm)はピン4、6の端部間の間隔E(少なくとも5mm)に比べて小さいため、活性部14は図2Aでは視認されない。
【0072】
ワイヤのアクティブ長とその直径のl/d比は、約600〜1500である。測定結果が集中する特性(concentrated nature)は、この範囲よりも高い値で消える:即ち、記述のフィルタリング又は平均化された測定効果はその後現れる。前記の比が600〜1500の間(600≦l/d≦1500)であれば、2次元的に仮定でき、そのため活性領域での非常に平坦な温度プロファイルが満足される。末端効果は、前記比が600未満である場合に現れ、ワイヤに沿った温度プロファイルはもはや“ゲート”プロファイル(分布)(言い換えると、ワイヤに沿って定温であること)として考慮されず、このプロファイルはむしろ放物線タイプのプロファイルに近い。特に、このような状況は、ワイヤの感度の損失とS/N比の低下をもたらす。物理的に、これは、小さな振幅現象を捕らえることが不可能であることを意味する。
【0073】
ワイヤ2は、これらのピン上に銀シースを半田付けすることにより、ピン4、6に接続される。
【0074】
【0075】
本発明は、シングルワイヤプローブ及び図3A及び図3Bに示すような平行マルチワイヤプローブに関する。
【0076】
本発明の別の目的は、ダブルプローブ、例えば、図3Aの側面図に示されるように、互いに平行なホットワイヤ2とコールドワイヤ2´とを0.3mm間隔程度(通常、0.2〜1mmの間)を空けて組み合わせたプローブである(ワイヤを側面から見ているだけであるため、図3A及び図3Bにおいては、各ワイヤ2、2´は点として示される)。その他の参照番号は、図2A乃至図2Eと同一であり、同一の要素を示す。本実施形態には2対のピンがあり、ペア4、6は既に上述したようにワイヤ2が半田付けされており、別のペア4´、6´(図3Aではピン4´しか見ることができない)はワイヤ2´が半田付けされている。
【0077】
図3Bは、3つの平行なワイヤ2、2´、2´´を使用するトリプルプローブの側面図である。前述のように、参照番号は、図2A乃至図2Eと同一であり、同一の要素を示し、ワイヤ間の最大距離は、0.2〜1mm、好ましくは0.3〜0.8mmである。この実施形態においては3対のピンがあり、既に上述したように、ペア4、6はワイヤ2が半田付けされており、ペア4´、6´(図3Bではピン4´しか見ることができない)はワイヤ2´が半田付けされており、ペア4´´、6´´(図3Bではピン4´´しか見ることができない)はワイヤ2´´が半田付けされている。このようなトリプルプローブは、好ましくは、中央のホットワイヤ(ワイヤ2´)と流れ方向に関する情報を提供する両側の2つのコールドワイヤ(ワイヤ2、2´´)とで動作する。
【0078】
ダブルプローブ又はn個のワイヤを備える通常のプローブにおいて、少なくとも1つのワイヤ又はワイヤの各々は、上述の特性を有し、上述のようなピンの対に固定される。
【0079】
速度及び温度測定は、本発明に従って作製された5つのワイヤプローブで行われた。前記ワイヤの各々は、l/d比が600〜1500になるように剥離された領域を有する。このプローブは、各々のペアが“X”状に配置され、他のペアの平面に対して垂直な平面に含まれている2対のワイヤと、温度測定用の追加のワイヤ(コールドワイヤ)と、から構成される。この構成は、非等温流における速度の3つのコンポーネントの同時測定を可能にする。各ワイヤのl/d比が約1000のときに、2対のワイヤによって定められる体積は約0.4mmである。
【0080】
本発明の係るプローブの製造方法について説明する。これは、単一のワイヤプローブの製造に関連するが、とくに指定がない限り、任意の数のワイヤを備えるプローブの製造に適用することができる。
【0081】
全ての操作は、構成要素のサイズと必要な精度を考慮し、双眼顕微鏡(binocular magnifying glass)下で行われる。この顕微鏡又は他の選択された、若しくは同等な形態の装置は、100分の1mmの精度で表示することが可能である。
【0082】
第1に、ピン4、6、40、60をプローブ本体10、12に固定する。これらのピンを位置に配置できるように、プローブ本体に穴をあけるか、溝を形成する。ピンは、それらが同じ長さでプローブ本体から突出するように、テンプレートを使用してプローブ本体に挿入されてもよい。
【0083】
電源ケーブル19、19´(図2A)とピン4、6との溶接接続(これらの接続手段は、ワイヤ2に流れる電流の供給に使用される)は、本体10の溝又は穴に位置してもよく、外側に位置してもよい。この接続は、この準備工程の間に半田付けされる。これらの接続部及びケーブル、又は他の接続部及びケーブルは、他のピンに対しても使用されることができる。
【0084】
ピンを設置した後で、セラミックと共存できるコンクリートでピンをコーティングすることにより、支持体中に密封することができる。テストでは、接着剤、例えば、アラルダイト接着剤が、振動の吸収及びプローブの保護に非常に有用な弾力性を維持しながら、このシール機能を完璧に実行できることを示す。
【0085】
ピン4、6、40、60を一旦取り付けたプローブ本体10は、ワイヤ20の非常に薄い活性部を破損する可能性のある振動を除去するために、エラストマー衝撃吸収シース12に挿入される。
【0086】
ピン4、6は、後にワイヤが半田付けできるよう最適な濡れ性を達成するために、洗浄される。別の酸化物を除去し、半田が接着できる支持体を作成するために、半田ごてを使用してステンレススチールシート上に配置された半田ペースト(Castolin 157Aを参照)を使用してピンの端部は錫めっきされる。その後、ピンはアセトンで洗浄される。
【0087】
図4は、プローブワイヤ2を受ける準備ができたピン4、6を備えるプローブ本体10、12を示す。プローブの本体は、極めて正確なほとんど100分の1ミリメートル程度の移動が2次元又は3次元に沿って行えるように、図示されないマイクロメータテーブル装置に取り付けられる。
【0088】
ワイヤ2自体は、通常、コイル形状の巻線始めの部分で作られている。
【0089】
そのため、最初の工程は、コイル上に巻かれたワイヤの形状記憶を除去するためのワイヤの伸長工程である。中心コア径が0.5μm未満、例えば、0.35μmのワイヤについては、作業面(working surface)上で転がすことによるワイヤの伸長工程の際、ワイヤの中心コアが破損するリスクがある。
【0090】
適切な伸長工程は、ワイヤ上の機械的な軸力によって生じる張力を利用している。実際には、ワイヤの2つの端部が2つのパッド49、51に取り付けられたシステム上に半田付けされ、図5に示すように、2次元X、Y移動マイクロメータテーブル69のプレートにパッドの一方が取り付けられているため、パッドの他方(パッド49)は自由に移動する。このテーブルは、2次元の各々に沿って、非常に正確なほとんど100分の1ミリメートル程度の移動を行こと可能である。
【0091】
伸長工程が最適化できるように、パッド49、51の2つの先端が最初に同一平面にあることが好ましい。
【0092】
ワイヤをまっすぐにするために使用される機械的な張力は、正確に定量化されていない。しかし、次の方法を用いることができる。
【0093】
移動パッド49の移動は、マイクロメータテーブルを利用して測定される。ワイヤ張力が、ワイヤ上に位置し、オペレータによって保持される針(例えば、50mm長と0.2mm径)の湾曲を開始すると、移動の原点が決まる(操作は、高倍率での観察下で、例えば、双眼顕微鏡を使用して行われることを念頭に置く)。実験は、移動パッド49の0.4mmの移動がワイヤの良好な真直度(straightness)及び剛性を増大させるのに十分であることを示す。
【0094】
半田付けされたワイヤをパッド49、51から分離した後、ワイヤ2の両端は、ワイヤの直線部のみを残すための残りの工程のために切断される。この工程は、かみそりの刃を用いて行われる。
【0095】
ワイヤの配置について、図6乃至図8を参照して説明する。
【0096】
図7は、2つのアセンブリ81、83を備える全体システムを全体的に示す。各々のアセンブリは、3つのマイクロメータテーブル81´(Xに沿った移動用)、81´´(Yに沿った移動用)、81´´´(Zに沿った移動用)及び83´(Xに沿った移動用)、83´´(Yに沿った移動用)、83´´´(Zに沿った移動用)を備える。各テーブルは、非常に正確なほとんど100分の1ミリメートル程度の移動を行うことが可能である。
【0097】
L字状の梁61、63がこれら2つのアセンブリ81、83の各々に固定される(図6及び図7参照))。“L”字状の梁61の最大の部分は、図8におけるX軸及びZ軸のそれぞれから約45°の方向に沿って、“L”字状の梁63の最大の部分と実質的に同じ方向に沿って配置される(2つの梁の前面を示す図9を参照)。図9は、前面における2つの梁61、63の位置を示す。
【0098】
ワイヤ2の各両端は、これら2つの梁61、63を備えるこのシステム上に配置される。より具体的には、ワイヤ2の各端部は、研磨加工され、対応する梁の表面と接触して配置される。
【0099】
直交するX軸及びZ軸についての2つの梁(“X”状プローブ用)の両端間のオフセット距離d、d´(図9)は、ワイヤが固定されるプローブのピン4、6間の間隔に特に依存する。
【0100】
これら2つの梁61、63は、最初は同一平面上に配置される。
【0101】
以下の手順は、2つの梁が同一平面上にあることを確認するために使用することができる。
【0102】
事前に伸長したワイヤを2つの梁をまたいで配置する。2つの梁は、ワイヤが各梁の面61´、63´上に均一に接触したときに、同じ高さにあると見なされる。マイクロメータテーブルの“Y”(垂直軸)移動を変化させて、この状態を得る。
【0103】
次に、プローブワイヤは、図7に示すように、接着剤やセメントタイプの材料、例えば、耐火セメント(デグサ社(Degussa)製)の滴下71、73を用いて各梁上に固定される。
【0104】
ワイヤと各々の滴との間の接触させることは、表面張力現象によりワイヤの小さな移動を引き起こし、その工程は極めてデリケートである。この移動現象は、すでに配置された第1滴によって支持された第1固定部に対してワイヤの湾曲を引き起こすため、第2のセメント滴を配置するときに問題となる。この湾曲は、最後のワイヤ剥離段階でワイヤの中心コアの破損を引き起こすには十分である。そのため、この移動現象は、第1滴71が配置される梁61の端部に配置されたチップ67を使用してワイヤ2をブロックすることによって中和される。
【0105】
小さな半田は、ワイヤ2と各保持ピンとが将来的に接合される各場所に、針の先端を使って配置することができる。この半田は、低融点を得るために、異なる要素を組み合わせて(錫62%:鉛36%:銀2%)作られた15μm径のマイクロボールで構成されることが好ましい。
【0106】
ワイヤ配置工程が終了すると、測定に使用されるワイヤの中央部14は剥離されることができる(活性部14、図2E)。
【0107】
剥離は、化学的又は電気化学エッチングによる銀シース22の局所溶解によって行われる。
【0108】
このシースは、硝酸でエッチングされる。これは、2つの技術、即ち、噴射技法及び滴下技法(jet and drop techniques)を用いて行うことができる。噴射技法では、ミリメートルの酸噴射(millimetric acid jet)がワイヤに噴霧される。一方、滴下技法では、酸の液滴が形成され、徐々にワイヤに接触させる。ワイヤに圧力がかかるため、噴射技法は断念されており、静的な滴との接触は、小径ワイヤが低い機械的強度である理由でより好適である。
【0109】
剥離される長さlがホットワイヤとして使用されたときにワイヤ上で可能な限り或いは最も均一な温度プロファイルを形成するように要求される場合、250以上のl/d比で活性部の両端部での伝導が(所定の材料及び所定の冷線長さについての)測定に与える影響を制限することが分かっているので、剥離される長さlは、ワイヤ径dの関数として決定される。ワイヤの抵抗は、剥離長の目安を得るために以下の関係式を用いて測定されることができる。
【数1】

ここで、ρは材料、ここでは白金ロジウムの場合の電気抵抗率(ρ=1.9×10−7Ω・m)である。このため、この抵抗は、剥離の間に測定される。
【0110】
径が0.35及び0.5μmのワイヤで且つ剥離長lが0.4〜0.5mmであるものに対して得られる結果は、近似的には次のとおりである。
0.35μm径については:1150<l/d<1400
0.5μm径については:800<l/d<1000
【0111】
剥離のためにここに記載されるシステムは、数百ミリのステンレススチールワイヤ101を備える。図10に示されるように、このワイヤ101は、剥離されるワイヤ102の近傍で2つの梁61、63の間の位置に配置される。このワイヤ101の一端は、液滴(drop)102を保持するループを形成する。純硝酸で構成されるこの液滴は、シリンジを使用してループ上に配置される。液滴を剥離されるワイヤ2と接触させるために、ループ及び液滴をマイクロマニピュレータを使用して移動させる。
【0112】
銀シース22を溶解させるために、マイクロ移動テーブルを使用して、前後に移動を行う。一旦液滴が銀で飽和されると、その液滴はワイヤから除去されて、硝酸の別の液滴に置き換えられる。この手順は、白金−ロジウムワイヤ21が露出し、このワイヤの抵抗が変化を開始するまで継続される。剥離長さは、プローブの抵抗の関数として調整される。一般的に、ワイヤの抵抗は、0.5μm径で500Ω、0.35μm径で1kΩであり、これらは、l/dがそれぞれ1100及び1600に対応する50〜60分の1mmの剥離長に対応する。本発明によると、0.5μmのワイヤは、1100のl/d比を与えるために使用される。フィルタリング効果が生じたり、上述したような測定値の平均化が影響するため、上述したように、l/d比が1500以上のプローブは、局所測定を十分に行うことができない。
【0113】
純粋な酸を用いた剥離が一旦行われると、露出されたワイヤから残留銀の全ての痕跡を除去するように第2の電気化学的な剥離が行われる。ワイヤ上に銀が残っていると、銀は白金−ロジウムの粒界に移動して、その抵抗値を変化させる。それは、元のキャリブレーションへの再調整を不可能にし、正確な測定を行うことができない。
【0114】
そのため、バッテリ、ポテンショメータ及びスイッチを備える単純な電子回路が、(図10に示すように)液滴を支える金属ループ及びワイヤ2に接続される。次の工程は、前のような剥離のための液滴102の形成であるが、ここでは5%の希硝酸で構成する。液滴は、前述の液滴と同じようにワイヤを液滴の中で湿らせるように近づけられる。ワイヤの大きさの程度で高速で強力な脱気を行うために、短時間の間スイッチを作動する。この工程の後、ワイヤ上に残留する酸を除去するために、ワイヤは蒸留水で洗われる。
【0115】
前の方法は、ループの大きさと表面張力によって制約される大きさの液滴を形成することにより利用される。
【0116】
ワイヤの剥離の後、露出部分でワイヤが破損しないように、2つの梁61、63のどちらか一方を“X”軸に沿って100〜200分の1mm移動させて他方に近づけることによって、僅かな湾曲が形成される。
【0117】
2点間(具体的には、ワイヤが2つのピン4、6に固定されている場合、これらのピンの間)に張られたワイヤは、非常に傷つきやすく、小さな振動で容易に破損し、使用するワイヤ2の直径が小さいときに特にそうなる。多くの試みは、厳格なアセンブリに事前対策がとられても、きつく張ったワイヤを備えるプローブが破損する可能性があることを示す。
【0118】
そのため、上述したような僅かな湾曲が製造時にワイヤ2に適用されて、プローブの機械的強度を強める。
【0119】
次に、例えば、プローブ本体10に軸に実質的に垂直な平面において、ワイヤ2は、数百分の1mm、例えば、2/100、又は4/100mmの僅かな湾曲又は撓みを有する。この湾曲は、風速計の測定値に影響を及ぼさず、機械的なストレス又は振動を吸収できるように、より柔軟性を与える。
【0120】
これら全ての工程が終了すると、ワイヤはプローブのピン4、6、40、60上に半田付けされることができる。次に、これらのピンをワイヤに近付ける(図6及び図7プローブ本体10、12も位置を参照、図示はしないがマイクロメータテーブル上に実装される)。微細な配置決めは、テーブル81、83のセットを使用して行われる。プローブ本体自体は、アセンブリ81、83のいずれかのようなテーブルセットに固定される。プローブ本体は、その軸がワイヤが位置する水平面を実質的に通過するようにプローブ本体を近付ける。
【0121】
一旦この工程が終わると、ワイヤ2と第1のピン(例えば、ピン40)はアセトンで脱脂洗浄される。
【0122】
次の工程は、例えば、ホットエアペンシルを使用して、半田を溶融することである。この段階では、ワイヤ2はピン4に固定され、次の工程はワイヤを第2のピン6に半田付けすることである。前述したようなワイヤに適用された湾曲は、この工程を破損のリスクなしに行うことを可能にする。
【0123】
半田付けが終了すると、数百分の1mm、例えば、2/100、又は4/100mmの僅かな湾曲又は撓みを採用し、保持する。
【0124】
次に、ワイヤ2はかみそりの刃を使用してピンと平行にカットされて、ワイヤサポートアセンブリを取り外すことができ、ワイヤサポートアセンブリ上の残ったワイヤ端を取り除くことができる。
【0125】
この半田付け技術を使用して数個のワイヤを備えるプローブを製造することが困難であることがある。第2のワイヤの半田付けの際に、第1の半田付けされたワイヤとホットエアペンシルからのジェットとの相互作用を全て防げるほど2つのワイヤ間の間隔は、十分ではない。この問題に対する一つの解決法は、第1のワイヤを保護するために、2対のピンの間の空間に熱シールドを設置することである。
【0126】
別の技術は、周囲環境を熱汚染しないという利点がある、レーザビームによる非常に局所的な出力を使用する。使用するレーザは、パルスモードで最大出力30WのYAGタイプのものである。パルス周波数及び継続期間は調整可能である。レーザに取り付けられたカメラを使用して、ピンの端部にある半田付けポイントにビームの焦点を合わせ、レーザは、半田を溶かしてワイヤをピンに固定するために照射される。この技術では、プローブの小型化の度合い及びそれに含まれるワイヤの数にかかわらず、半田付け工程を行うことができる。
【0127】
次に、プローブの最後のアニーリングが行われる。プローブの抵抗の関数として計算された電流をワイヤ2に流す。このため、ワイヤは、それが動作する温度よりもはるかに高い温度に加熱される。ワイヤと周囲の空気の温度差は、以下の関係式によって与えられる。
【数2】

ここで、Rは周囲の空気の温度でのプローブの抵抗値であり、αは温度に対する抵抗値の変動係数(白金10%ロジウムに対して1.6×10−3K)であり、Rfilはオームの法則によって与えられ、温度T+ΔTに加熱されるワイヤの抵抗値である。
【0128】
この工程は、白金ロジウムワイヤの結晶構造におけいかなる銀の痕跡も最終的に拡散させる。剥離が正確に行われれば、残留銀の量は極めて少なくなり、1日後に安定化し、その抵抗値はもはや変化しない。
【0129】
プローブの構成によっては、いくつものワイヤがある場合、次のワイヤの前に1つのワイヤを取り付けることが都合がよいかもしれない。
【0130】
実験では、ワイヤ径が0.625μmを下回ると、プローブの扱いがすぐに非常に困難になることを示す。具体的には、本発明に係るプローブが風洞に置かれる場合、振動が生じ、それらはピンを通してワイヤまで伝播する波を生成するのに十分であるため、センサの抵抗値のために重大である。その機械的強度が低いため、活性部における湾曲の存在は、ワイヤの破損を引き起こす可能性があるこれら振動を減衰させるのに常に十分であるわけではない。例えば、それがネジでそのサポート上に固定されている場合、ほとんどの振動がプローブ本体を介してピンの端部に伝播されることが観察されている。
【0131】
ワイヤを保護するための最善の解決法は、ピンが固定されたセラミックプローブ本体を非常に柔らかい衝撃吸収シース12(約25ショアA)に一旦取り付けること、を含む。
【0132】
本発明に係るプローブは、電源手段、及びワイヤの電気抵抗値の変化を測定する手段と共に使用される。これら変動は、プローブが浸漬された流体の流れで運ばれる流体の速度変動及び/又は温度変動を示す。
【0133】
一般に、正確で再現性のある測定を行うために、バッテリ電力供給を使用することが好ましい。したがって、前記のシステムは、(例えば、近傍の装置の始動又は停止によって)電位が変動する可能性がある電気的ネットワークから切り離される。さらに、センサにおいて関係する電流及び/又は電圧は非常に低いので、このようなネットワークの変動がいかに小さくても容易に動揺され得る。
【0134】
さらに、風洞のような据え付けられた装置では、全ての異なる接地点を同じ電位にすることは困難である。その結果、ネットワークの電圧の変動によって生じるこれらの異なる接地点との間にループ電流が流れ、これらの電流も測定を大きく阻害し得る。
【0135】
これの解決法では、それら回路が電子回路用の電圧レギュレータに接続されている場合のように、電源は、変動しない一定のグランド電位を有する全ての回路に利用することができる。
【0136】
回路は、電磁環境両立性(EMC)を達成するために、バッテリのグランドに接続されたグランドプレーンを形成する筺体、例えば、銅の筐体内に配置されることが好ましい。プローブ接続ワイヤを囲むブレード(braid)もこのグランドプレーンに接続される。このように、電磁界に対する全てのそのような保護材料は、固定電位に接続される。
【0137】
上述した解決法は、第1に、影響を受けない電源の入手、第2に、電磁環境両立性のために全ての動作タイプの風速計に適用可能である。
【0138】
一つの具体的な動作は、いわゆる「コールドワイヤ(冷線)」動作である。これは、定電圧動作モードであり、非常に小さな電流がワイヤに入力される。
【0139】
コールドワイヤ式風速計は既に公知である。
【0140】
これら公知の装置は、流体の流れの速度が変動する場合、ワイヤ内の定電流の強さIを維持するために、ワイヤに対して直列に配置された高抵抗Rを備える。ワイヤは、その抵抗値Rを正確に測定するためにホイートストンブリッジに組み込まれ、出力信号はブリッジの頂点で収集される。
【0141】
定電流風速計には利点がある。温度変化を観察する際に非常に便利なあらゆる方法が、温度を上げる(過熱)ために使用されることができる。ワイヤ用の固定抵抗を置き換えて、その後に測定に必要な補正を行うことによって、バックグラウンドノイズもまた測定することができる。一方、出力信号は大幅に増幅される。この測定原理の通過帯域は、ワイヤの熱慣性によって設定される。
【0142】
この動作タイプでは、ワイヤに電力を供給する電流は、ワイヤの温度上昇を最小限に抑えるために、ほぼゼロまで低減される。ワイヤは、(それが加熱されない限り)対流によって冷却されず、以下の関係式によるその抵抗値Rwireを介して周囲の媒質の温度Tに対してのみ高感度となる。
【数3】

ここで、Rは基準温度でのプローブの抵抗値であり、αは温度に対する抵抗値の変動係数である。
【0143】
この動作タイプでは温度差が小さく、ワイヤに入力される電流は非常に小さい。それは、その抵抗の値を決定するために、ワイヤの端子で電圧を測定するためだけに使用される。通常は、ほぼ50〜200μA程度である。このため、ジュール効果によるワイヤの加熱は無視することができる。これがこの風速計がコールドワイヤ式風速計と呼ばれている理由である。
【0144】
この動作タイプで生じる1つの問題点は、測定温度ドリフト(measured temperature drifts)であり、このため、平均的な温度測定を得るために、プローブは熱電対と共に使用する必要がある。
【0145】
本発明はこの問題の解決法を提案する。
【0146】
図11は、定電流風速計に関連付けられる電気的手段を示し、ワイヤは参照番号2として示される。この回路は、
前述したように好ましくはバッテリである電源手段110と、
基準抵抗112と、
電流を調整するためのポテンショメータ114と、を備える。
【0147】
より正確には、バッテリ110によって表される回路電源Veは、電圧レギュレータ(MAX6325)を介して供給される。2つの抵抗2、112は、カレントミラー状に組み込まれる。これら2つの抵抗のうちの1つをそれぞれ含む前記ミラーの2つのブランチを流れる電流は、ポテンショメータ114を介してダイオードとして実装される調整トランジスタ116の電圧Vbeによって調整される。プローブ2と基準抵抗112との間の電位差は、計装用オペアンプ120に印加される。振幅利得からの出力は、ワイヤ2の抵抗値の変動を反映した測定信号を提供する。
【0148】
低振幅の情報を読み取れるように、信号はプローブ2の端子で増幅される。収集カード(acquisition cards)の電圧制限を考慮すると、非常に大きな増幅は好ましくはない(試みは、収集カードの電圧分解能を考慮するための試みである)。風速計プローブ2は高抵抗を有しており、増幅後、風速計の出力変動は収集カードの使用範囲を超える可能性がある。これは、温度計の出力信号をゼロ近傍に集中させることを決定される理由であり、測定範囲を最大限に活用することができ、増幅率をこのように適宜調整することが可能である。これは、基準抵抗112の端子における信号からプローブ2の端子における信号の値を差し引くことによって行われる。
【0149】
カレントミラー回路は、基準抵抗を流れる安定的な信号と、プローブ2を流れる安定的な電流を供給する。
【0150】
そのような装置は、風洞での一連の試験のために使用され、プローブはコールドワイヤ式のシングルワイヤプローブである。
【0151】
次に、平均温度測定において、測定条件及び装置に使用された白金の基準プローブ112に矛盾する異常なドリフトが観察された。このドリフトを生じさせることが可能な唯一の源は、電子回路であることがわかった。構成要素は周囲の環境の温度に敏感であり、校正室内及び風洞内における周囲の温度の違いは、観察された差異を容易に説明することができる。
【0152】
最初に、基準抵抗112が、温度に対する変動係数が非常に小さく(0.6ppm/℃)無視できるほどの金属抵抗に置き換えられた。
【0153】
関係している異なる電圧の記録は、電子回路を監視されている温度の乾燥器に入れることによって行われた。このように、電子電圧レギュレータからの出力電圧が温度に対して変動しない(5μV℃−1ドリフト)ことを検証することが可能である。基準抵抗の両端とプローブ(670Ωの抵抗値)をシミュレートするために備えられた第2の抵抗の両端での2つの電圧において、完全に調整されたドリフトは250μV℃−1であった。したがって、このことは、カレントミラーの2つのブランチにおいて、電流が同時に全く同じように変動したことを示す。
【0154】
次の工程は、この電流を固定する電圧値Vbeを検討することであった。同一の条件でなされた記録は、2.4mV℃−1に等しいこの電圧のドリフトを示す。このドリフトは、この電圧に影響されるトランジスタ116がダイオードに実装されているという事実に起因するものであり、ダイオードの両端で通常観察される電圧ドリフトは約2.5mV℃−1であり、これは我々の記録と完全に一致する。
【0155】
温度計の構成要素は、(プローブ、電源及び測定手段)は、このドリフトを防ぐために、一定温度に保たれている。例えば、風速計筐体に配置された加熱マットの電源は、電子的に制御されている。
【0156】
したがって、温度計の電気回路は、それが配置される室温よりも高い温度に保たれている。回路で保たれているこの温度は、プラスマイナス10分の1℃に制御されている。したがって、風速計を構成する構成要素は安定的に保たれるだけではなく、再現性のある状態で動作する。
【0157】
風速計システムの単一の校正が一旦行われると、この装置は、流れにおける温度変動の測定だけでなく、過去には不可能であった、流れの平均気温の測定に使用することができる。度量衡と測定のために特別な注意が払われる公知の装置の場合(これは、特に、でアンドレオポーラス(Andreopoulos)によって報告された「直交流における噴射の実験報告」(流体力学ジャーナル1983)における噴射からの出力部における温度測定の事例である)であっても、平均値がサーミスタ又は熱電対のような別の手段で提供される一方、温度変動はコールドワイヤによって測定される。
【0158】
この部分で説明された回路は、複数のワイヤを備えるプローブに適用可能である。多くの回路が必要に応じて作られる。
【0159】
校正と使用の一例について説明する。
【0160】
校正は、風洞で行われる。空気は先ず加熱ボックスに入り、次に水交換器を通過し、この電源及び速度は、室温と約150℃の間の所望の温度を得るために、独立的に制御される。
【0161】
コールドワイヤ式プローブ2は、空気噴射ノズルからの出力の中央で(熱保護リングで覆われた)校正ストリームに配置される。筐体温度は、電子測定ボックス(SFERE社のDGN75T)に組み込まれた白金100%の基準プローブによって10分の1の温度の精度で提供される。
【0162】
加熱ボックス及び水交換器の動作ポイントは、各校正ポイントに対して選択される。次の工程は、熱平衡が空気と風洞壁との間に設定できるようにすることであり、数時間(通常は4時間)かかる。次の工程は、測定の収束を得るために非常に十分である約30秒間の温度計からの出力電圧を読み出すことである。
【0163】
操作は、温度計の線形依存性のキャリブレーションのための係数を流体温度の関数として得るために5回繰り返される。
【数4】
【0164】
図12は、典型的なキャリブレーションの一例を示す。この図は、線形回帰が優れた結果を与えることを示している。
【0165】
図13は、風洞内の温度変動の測定から得られるエネルギースペクトル密度を示すプロット(曲線I)を含む。この測定は、外部エンベロープ(混合層)のジェット下流の3つの水力直径で10秒、50kHzで、ワイヤ20の直径が0.5μmであるプローブ2を使用して行われた。フロー条件は、Re=55000とRejet=60000(パイプの水力直径に基く)であった。フロー間の温度差は13℃であった。
【0166】
曲線IIは、ワイヤプローブの代わりに接続された抵抗を備えた温度計の出力電圧信号のエネルギースペクトル密度を表している。したがって、この密度は温度計のノイズを表す。
【0167】
温度計によって取得された最大スケールと温度計ノイズとの間、即ち、この場合、ほぼ3000程度である最大の検出可能な目盛りと最小の検出可能な目盛りとの間の比率は70の相違を観察できる。言い換えると、この場合の温度計の分解能は約5×10−3℃である。
【0168】
この分解能と大スケール及び小スケール間に大きな振幅のあるスペクトルエネルギー密度で得られた動作は、これまで知られていない。
【0169】
不安定な状況(表面上のホットジェットの影響)で測定が要求される場合、本発明に係るプローブは、補正なしに行う測定に使用される。
【0170】
本発明はまた、温度計を安定に保ち、大幅に感度を向上させるための改良を提供する。これは、本発明に係る小径プローブを共に使用する場合、実際のS/N比が数千(温度計について3500、定電圧風速計について10000)となる温度風速計を提供する。
【0171】
本発明では、平均温度の測定のために、熱電対を使用することなくコールドワイヤ式風速計を使用することができる。提案された制御回路はドリフトを補償することが可能であり、熱電対の必要性を排除することができる。
【0172】
ここで提案された制御回路は、図2A乃至図10を参照して説明したように、本発明に係るプローブ又は別のタイプの風速計プローブに適用することができる。

図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図14
図15A
図15B
図1
図13