特許第5787768号(P5787768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787768
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】積層ディーゼル酸化触媒複合材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20150910BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20150910BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150910BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B01J29/74 AZAB
   B01J35/10 301F
   B01D53/86 100
   B01D53/86 222
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
   F01N3/24 E
   F01N3/24 C
   F01N3/28 301C
   F01N3/08 A
   F01N3/02 301E
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-546345(P2011-546345)
(86)(22)【出願日】2010年1月15日
(65)【公表番号】特表2012-515087(P2012-515087A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】US2010021107
(87)【国際公開番号】WO2010083357
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2013年1月15日
(31)【優先権主張番号】12/687,597
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/145,412
(32)【優先日】2009年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】カジ,シャヤハン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】デーバ,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ノイバウァ,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】プンケ,ヘルムート,アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー−シュタッハ,ヴォルフガング,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】グルベルト,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ロト,エイ.,スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ホーク,バーモント,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】スン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シンイー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュン−ツォン
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−162575(JP,A)
【文献】 特開平08−010566(JP,A)
【文献】 特開平11−104462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上の、5〜75g/ft(0.18〜2.65kg/m)の範囲の量のパラジウム成分を含むディーゼル酸化触媒材料と、少なくとも二つの層と、を含む積層ディーゼル酸化触媒複合材料であって、
前記二つの層は、
少なくとも一つの分子篩を含み、且つ実質的にパラジウムを含まない炭化水素捕捉層;
及び
パラジウム成分を含み、且つ実質的に分子篩を含まないパラジウム含有層で、前記パラジウム成分が高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体上に位置する層であり、
高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体が0.5〜1.5cm/gの範囲の細孔容積、及び少なくとも75Åの平均細孔径を有するアルミナを含むことを特徴とする積層ディーゼル酸化触媒複合材料。
【請求項2】
前記触媒材料は10g/ft〜150g/ft(0.35〜5.30kg/m)の範囲で白金成分をさらに含み、
当該白金成分の20質量%以下の量が少なくとも一つの分子篩に組み込まれ、且つ
当該白金成分の少なくとも80質量%の量がパラジウム含有層の高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体上に存在する請求項1に記載の積層触媒複合材料。
【請求項3】
前記高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、酸化ランタン−アルミナ、酸化ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−酸化ランタン−アルミナ、バリア−酸化ランタン−ネオジム−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、及びジルコニア−チタニアからなる群から選択される活性化、安定化、又は両方の化合物を含む請求項1又は2に記載の積層触媒複合材料。
【請求項4】
前記アルミナが、75Å〜150Åの範囲の平均細孔径を有する請求項1に記載の積層触媒複合材料。
【請求項5】
前記分子篩が、ベータゼオライト、ZSM−5、ゼオライト−Y、又はそれらの組み合わせを含むゼオライトを含む請求項1〜4の何れか1項に記載の積層触媒複合材料。
【請求項6】
さらに担体上であって前記少なくとも二つの層の下に位置する下塗り層を含み、当該下塗り層が高表面積の耐熱性金属酸化物を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の積層触媒複合材料。
【請求項7】
前記高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体が、80〜200m/gの範囲の表面積、0.6〜1.0cm/gの範囲の細孔容積、及び75Å〜150Åの範囲の平均細孔径を有するアルミナを含み、且つ
前記ゼオライトが、白金成分の少なくとも10質量%の量が組み込まれたベータゼオライトを含む請求項2に記載の積層触媒複合材料。
【請求項8】
合計15〜225g/ft(0.53〜7.95kg/m)の範囲の量の貴金属成分を有する請求項1〜7の何れか1項に記載の積層触媒複合材料。
【請求項9】
前記触媒材料におけるパラジウムに対する白金の質量比が10:1〜1:10の範囲である請求項2に記載の積層触媒複合材料。
【請求項10】
前記パラジウム含有層が前記担体上に位置し、且つ前記炭化水素捕捉層が前記パラジウム含有層上に位置する請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層触媒複合材料。
【請求項11】
さらに下塗り層を含み、
前記触媒材料におけるパラジウム成分が40g/ft1.41kg/m)の量で存在し、
前記パラジウム含有層が、前記触媒材料における100%のパラジウム成分と、0.85cm/gの一点吸着の合計細孔容積、及び100Åの平均BET細孔径を有するガンマアルミナと、を含み、
前記パラジウム含有層がさらに白金を含み、且つ前記炭化水素捕捉層がベータゼオライト、ガンマアルミナ、及び白金を含む請求項10に記載の積層触媒。
【請求項12】
ディーゼルエンジンのガス状排出流の処理方法であって、
前記排出流が、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排出ガス成分を含み、
前記方法が、前記排出流を請求項1〜11の何れか1項に記載のディーゼル酸化触媒に接触させる方法。
【請求項13】
さらに、ディーゼル排出ガス流を前記ディーゼル酸化触媒複合材料の下流に位置する1個以上のすすフィルター、及び当該触媒すすフィルター(CSF)の上流又は下流に位置する選択的触媒還元(SCR)触媒物品に向けることを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炭化水素、一酸化炭素、及び他の排出ガス成分を含むディーゼルエンジン排気流の処理システムであって、
排気マニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通する排気管路;
担体が貫流基材、又は壁面流基材である請求項1〜11の何れか1項に記載のディーゼル酸化触媒複合材料;及び
当該複合材料と流体連通する1個以上のすすフィルター、選択的触媒還元(SCR)触媒物品、及びNOx貯蔵及び還元(NSR)触媒物品等を含む処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年1月16日に受理されたUS仮出願No,61/145,412に基づく合衆国法典35巻の119条(e)の利益を主張する。それは、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般的に、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含有するガス状の蒸気を処理するために用いられる積層触媒に属する。より具体的には、本発明は、パラジウムを含む一つの層とゼオライト等の炭化水素捕捉材料を含む一つの層の、二以上の材料層等の多層を有するディーゼル酸化触媒組成物に関する。触媒材料は、さらに、少量の白金成分が炭化水素捕捉層中に存在し、大部分の白金成分がパラジウム含有層に存在する白金成分を含むことができる。
【背景技術】
【0003】
例えば、ディーゼルエンジン及びリーンバーンガソリンエンジン等のリーンバーンエンジンの運転は、燃料希薄条件下における高い大気/燃料比でのそれらの運転のために、使用者に優れた燃料の節約を提供し、且つ、ガス相炭化水素及び一酸化炭素の非常に低い排出を有する。ディーゼルエンジンの排気は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOX)、未燃炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)を含む。NOXは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、及び他のものを含む窒素酸化物の様々な化学種を記述するために用いられる用語である。
【0004】
ディーゼルエンジンの排気ガスとガソリンエンジンの排気ガスの処理のために使用される触媒系の間には、大きな違いがある。その二つの型のエンジンの間の重要な違いは、ガソリンエンジンは火花点火であり、化学量論の燃料に対する大気割合の範囲で運転するが、ディーゼルエンジンは大過剰の空気で運転する圧縮点火エンジンであることである。これらの二つの型のエンジンからの排気は非常に異なり、そして完全に異なる触媒戦略を要求する。通常、ディーゼル排気の処理は、ガソリンエンジンの排気処理より複雑である。特に、ガソリンエンジンは可溶性有機成分(SOF)が少ない排気を生成する。ディーゼル排気中のSOFは、未燃焼のディーゼル燃料と潤滑油の組み合わせである。
【0005】
伝統的にディーゼルエンジンのためには、白金DOC触媒が用いられる。また、ゼオライト等の炭化水素捕捉材料がディーゼル排気の処理のために効果的であることも知られる。例えば、US特許NO,6,093,378(Deeba)は、二以上のゼオライトと白金等の支持された貴金属成分を供給するディーゼル排気触媒に関する。第一のゼオライトは実質的に貴金属の非存在下で供給され、第二のゼオライトは貴金属でドープされる。このようにして、第一のゼオライトはガス状の炭化水素を吸着し、第二のゼオライトはNOXの還元を触媒する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US特許NO,6,093,378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パラジウムは、それが重量ベースでやや低い反応性であるにも関わらず、白金とともに、要求される量の白金を低減させるためにDOC触媒中で好適であることを証明した。DOC触媒中でのパラジウムの低い反応性のために、パラジウムがDOC触媒中で、その能力が抑制されないように位置することを保証することが重要である。
【0008】
排気ガス調節がより厳密になるように、着火性能等の性能の向上を提供するディーゼル酸化触媒(DOC)系を発展させるという継続的な目標がある。また、ゼオライト及びパラジウム等のDOCの成分を可能な限り効率的に活用するという目標がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
支持体上にディーゼル酸化触媒材料を用いる排気ガス系、構成物品、及びそれらの使用方法が提供される。その支持体は、ディーゼル酸化触媒(DOC)のために使用される貫流の設計でもよく、又は触媒すすフィルター(CSF)のために使用される壁面流の設計でもよい。担体上の、5〜75g/ft3(0.18〜2.65kg/m3)の範囲の量のパラジウム成分を含むディーゼル酸化触媒材料と、少なくとも二つの層と、を含む積層ディーゼル酸化触媒複合材料であって:
少なくとも二つの層が、
少なくとも一つの分子篩を含み、且つ実質的にパラジウムを含まない炭化水素捕捉層; 及び
パラジウム成分を含み、且つ実質的に分子篩を含まないパラジウム含有層で、パラジウム成分が高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体上に位置する層であることを特徴とするディーゼル酸化触媒材料が提供される。
【0010】
他の態様は、ディーゼルエンジンのガス状排気流の処理方法であって、その排気流が炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含み、その方法が本発明の実施の形態に係る積層ディーゼル酸化触媒複合材料へのその排気流の接触を含む方法を提供する。他の方法は、さらに1以上のディーゼル排出ガス流を、ディーゼル酸化触媒複合材料の下流に位置するすすフィルター、及びその触媒すすフィルター(CSF)の上流若しくは下流に位置する選択的触媒還元(SCR)触媒物品に向けることを含ませることができる。
【0011】
さらなる態様は、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含むディーゼルエンジン排気流の処理システムを提供する。その排出ガス処理システムは、排気マニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通する排気管路、担体が貫流基材又は壁面流基材である本発明の実施の形態に基づくディーゼル酸化触媒複合材料、並びにその触媒複合材料と流体連通する1個以上のすすフィルター、選択的触媒還元(SCR)触媒物品、NOX貯蔵及び還元(NSR)触媒物品等を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
触媒材料中でパラジウムがゼオライトから分離されたディーゼル排出システム及び構成物品が提供される。触媒材料には、それゆえ、実質的にゼオライトを含まないパラジウム含有層と少なくとも一つのゼオライトを含み、実質的にパラジウムを含まない炭化水素捕捉層の少なくとも二つの層がある。ゼオライトからのパラジウムの分離は、パラジウムの効果を高めること及び貴金属(すなわち、パラジウム)の起こり得るシリカ被毒又はゼオライト表面への貴金属(例えば、パラジウム)の移動に起因するCO及びHC着火活性の損失の最小化を意図する。ゼオライト含有層からのパラジウムの除去がすぐれた着火性能をもたらすことがわかった。また、ゼオライトから貴金属成分のほとんどすべて(例えば、80%、85%、90%、又は95%さえも超える)を分離することが有利である。また、加えて、ゼオライトの非存在下におけるパラジウム及び白金への多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体の使用は、すぐれた着火性能をもたらす。また、下層に(実質的に貴金属を含まない)高表面積の耐熱性金属酸化物支持体を使用することは、高い変換での着火の改善につながる。
【0013】
そのような触媒は、ディーゼルエンジンから排出された炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化させるために効果的である。炭化水素捕捉層のゼオライトはディーゼルエンジンと連携する条件下でのHCの吸着に活性を有し、白金及びパラジウム等の貴金属はディーゼル排気のHC及びCOの酸化に活性を有する。
【0014】
触媒複合材料との言及は、HC、CO、及び/又はNOXの酸化を触媒するのに効果的な貴族金属成分等の触媒成分を含有する1以上の薄め塗膜を有するハニカム基材等の担体基材を含む触媒物品を意味する。
【0015】
“基本的に〜ない”、“基本的に〜ない”、及び“実質的に〜ない”との言及は、記載された材料が意図的に記載された層中に供給されたものではないことを意味する。しかしながら、その材料は、実質的ではないと考えられるわずかな量(それは、材料の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満である)で記載された層に移行又は拡散してもよいと理解される。
【0016】
高表面積の耐熱性金属酸化物支持体は、20Åより大きい細孔と広い細孔分布を有する支持体粒子を言及している。本明細書中に規定されているように、そのような金属酸化物支持体は分子篩、特に、ゼオライトを除外する。また、アルミナ支持体材料等の高表面積の耐熱性金属酸化物支持体は、通常、1グラムあたり60平方メートル(“m/g”)を超える、しばしば約200m/g以下、又はそれを越えるBET表面積を示すものを“ガンマアルミナ”又は“活性化アルミナ”と言及する。そのような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマ及びデルタ相の混合物であるが、実質的な量のイータ、カッパ、及びゼータアルミナ相を含んでいても良い。活性化アルミナ以外の耐熱性金属酸化物を支持体として触媒成分の少なくとも一部のために提供された触媒中で使用することができる。例えば、大量の酸化セリウム、ジルコニア、アルファアルミナ、及び他の材料がそのような使用のために知られている。これらの材料の多くは活性化アルミナよりもかなり小さいBET表面積を有するという欠点に悩まされるけれども、その欠点は結果として生じる触媒の素晴らしい耐久性により相殺される傾向にある。“BET表面積”は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Teller法を言及するというその通常の意味を有する。また、細孔径及び細孔容積はBET型のN吸着を用いて決定することができる。好ましくは、その活性化アルミナは60〜350m/g、及び通常90〜250m/gの特定の表面積を有する。耐熱性酸化物支持体上の積載量は、好ましくは約0.1〜約6g/in約0.006g/cm約0.366g/cm)、より好ましくは約2〜約5g/in約0.122g/cm約0.305g/cm)、最も好ましくは約3〜約4g/in約0.183約0.244g/cm)である。
【0017】
本明細書中で使用されるように、ゼオライト等の分子篩は、微粒子形状で触媒貴族金属を支持する材料であって、20Åより小さい平均細孔径と実質的に一定の細孔分布を有する材料を言及する。触媒層における“非ゼオライト支持体”への言及は、分子篩又はゼオライトではなく、貴金属、安定剤、促進剤、及び結合剤等を会合(association)、散布、含浸、又は他の好適な方法を通じて受け取る材料を言及している。そのような支持体は、例えば、高表面積の耐熱性金属酸化物を含むが、これに限定されるものではない。本発明の1以上の実施の形態は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、酸化ランタン−アルミナ、酸化ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア(baria)−アルミナ、バリア−酸化ランタン−アルミナ、バリア−酸化ランタン−ネオジム(neodymia)−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、及びジルコニア−チタニアからなる群から選択される活性化化合物を含む高表面積の耐熱性金属酸化物支持体を含む。
【0018】
そのゼオライトは、フォージャサイト、菱沸石、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5ゼオライト、ZSM−12ゼオライト、SSZ−3ゼオライト、SAPO5ゼオライト、オフレタイト、又はベータゼオライト等の天然若しくは合成ゼオライトを用いることができる。好ましいゼオライト吸着剤材料は、アルミナに対する高いシリカ比を有する。そのゼオライトは、少なくとも約25/1からのシリカ/アルミナのモル比で、好ましくは少なくとも約50/1、有用な範囲では約25/1〜300/1までと同様に約25/1〜1000/1、50/1〜500/1までを有して良く、約100/1〜250/1まで、又は二者択一的に約35/1〜180/1までもまた例示される。好ましいゼオライトは、ZSM、Y、及びベータゼオライトを含む。特に好ましい吸着剤は、US6,171,556に開示された型のベータゼオライトを含んでも良い。積載したゼオライトは、十分なHC貯蔵能力を保証するために、且つ低温保管後の昇温の間の保存されたパラフィンの早すぎる放出を未然に防ぐために、0.1g/in0.006g/cm)未満にすべきではない。好ましくは、ゼオライト含量は約0.4〜約0.7g/in約0.024約0.043g/cm)の範囲である。ゼオライトからの芳香族化合物及びパラフィンの早すぎる放出は、CO及びHC着火の遅延を引き起こす。
【0019】
“含浸した”への言及は、貴金属含有溶液がゼオライト又は非ゼオライト支持体等の材料の細孔中に注入されることを意味する。詳細な実施例では、貴金属の含浸は、希釈した貴金属の含有物の容積が支持体の細孔容積とおおよそ等しい初期湿潤によって達成される。通常、初期湿潤含浸はその材料の細孔系全体にその前駆体溶液の実質的に均一な分布をもたらす。貴金属を付加する他の方法もまた当業者に公知であり、かつ使用することも可能である。
【0020】
OSC(酸素貯蔵成分)への言及は、2以上の原子価をもつ状態を有し、そして、排気条件下で積極的に酸素を貯蔵し且つ放出する実体を言及する。一般的に、酸素貯蔵成分は1以上の希土類金属の1以上の還元性酸化物を含む。好適な酸素貯蔵成分は、例えば、セリアを含む。また、プラセオジム(Praseodymia)をOSC又は促進剤として含むことができる。
【0021】
本発明の実施の形態によるガス処理物品およびシステムの成分の詳細を以下に記す。
【0022】
担体
1以上の実施の形態によると、担体はDOC触媒の製造に一般的に用いられる任意のそれらの材料であり、好ましくは金属又はセラミックのハニカム構造を含む。任意の好適な担体は、その担体の入口若しくは出口の面から貫通して延伸する複数の細かい平行ガス流の通路を有する型の一体式担体等が採用されてよく、通路はそれを通じて流体の流れに解放されるようになっている。通路の流体入口から通路の流体出口まで基本的に直線の経路である通路は、その通路を流れる気体がその触媒材料と接触するように触媒材料が“薄め塗膜”として塗布された壁によって定義される。一体式担体の流路は、薄壁経路であり、それは台形、長方形、正方形、正弦波状、六角形、楕円形、円形等の任意の適切な断面形状及び大きさのあっても良い。
【0023】
本発明に従って使用される多孔性の壁面流フィルターは、1以上の材料をその上に有するか、又はその中に含む前述の元素の壁に任意に触媒されており、そのようなCSF触媒組成物は上述されている。触媒材料が、その元素壁の入り口側のみ、出口側のみ、入口側と出口側の両方、又はその壁自体が触媒材料の全て若しくは一部を構成しても良い範囲内で存在しても良い。他の実施の形態では、本発明はその元素の壁の入口及び/又は出口に、触媒材料の1以上の薄め塗膜層及び触媒材料の1以上の層の組み合わせの使用を含んでも良い。
【0024】
そのような一体式担体は、約900(約139.5)以下又はそれ以上の断面の平方インチ(平方センチメートル)あたりの流路(又は“セル”)を含むことが多いが、はるかに少ないものが使用されても良い。例えば、その担体は、約50(約7.8))〜600(約93.0)、より一般的には約200(約31.0)〜400(約62.0)の平方インチ(平方センチメートル)あたりのセル数(“cpsi”)を有しても良い。そのセルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形の断面を有することができる。貫流基材は、通常、0.002インチ(0.005センチメートル)と0.1インチ(0.254センチメートル)の間の壁厚を有する。好ましい貫流基材は、0.002インチ(0.005センチメートル)と0.015インチ(0.038センチメートル)の間の壁厚を有する。
【0025】
セラミック担体は、コージライト、コージライト−α、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ、マグネシア、ジルコンケイ酸塩、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α−アルミナ、及びアルミノケイ酸塩等の任意の好適な耐熱性材料で製造することができる。
【0026】
また、本発明の積層触媒複合材料のための有用な担体は、自然界の金属、及び1以上の金属若しくは合金で構成される金属であっても良い。その金属担体は波形板又は一体式形状等の様々な形状を採用しても良い。好ましい金属支持体は、鉄が実質的に若しくは主な成分である他の合金と同様にチタン及びステンレス鋼等の耐熱金属及び合金を含む。そのような合金は、1以上のニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを含んでもよく、且つ、10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウム、及び20質量%以下のニッケル等、これらの金属の合計量が少なくとも15質量%の合金を有利に含んでもよい。また、その合金は、マグネシウム、銅、バナジウム、及びチタン等の少量の又は痕跡量の1以上の他の金属を含んでもよい。その表面又はその金属担体は、担体の表面に酸化層を形成することにより合金の耐蝕性の改善するために、例えば、1000℃以上の高温で酸化されてもよい。そのような高温誘導性酸化は、担体への耐熱性金属酸化物支持体及び触媒的に促進する金属成分の付着を増幅する。触媒すすフィルターのために、基材はハニカム壁面流フィルター、巻きつけ若しくは充填された繊維フィルター、連続気泡フォーム、及び焼結金属フィルター等で良く、壁面流フィルターと共にであることが好ましい。CSF組成物を支持するための有用な壁面流基材は、その基材の縦軸に沿って実質的に平行に伸長する複数の細かいガス流の通路を有する。通常、それぞれの通路は、基材本体の一端で閉塞され、代替の通路が反対の端面で閉塞される。
【0027】
本発明のシステムに使用するための好ましい壁面流基材は、流体流が物品を横切る圧力または背圧の大きな増加を引き起こすことなく通過する薄い多孔性壁の(一体式)ハニカムを含む。通常、きれいな壁面流物品の存在は10psig(68950Pa(ゲージ圧))で1インチ(2.54センチメートル)水柱の背圧を引き起こす。そのシステムで使用されるセラミック壁面流基材は、好ましくは少なくとも5ミクロン(例えば、5〜30ミクロン)の平均細孔サイズを有し、少なくとも40%(例えば、40〜70%)の間隙率を有する材料で形成される。より好ましくは、基材は少なくとも10ミクロンの平均細孔径サイズを有し、少なくとも50%の間隙率を有する。これらの間隙率とこれらの平均細孔サイズを有する基材が下記の手法で塗布される場合、優れたNOx変換効率とすすの焼剥きを達成するためにCSF触媒組成物の適切な水準を基材上に積載することができる。これらの基材はまだ適切な排出流特性、すなわち、CSF触媒の積載にも関わらず許容可能な背圧を維持することができる。好適な壁面流基材は、例えば、US4,329,162に開示されている。
【0028】
触媒複合材料の製造
本発明の触媒複合材料は単層又は多層で形成されても良い。いくつかの実施例では、触媒材料の一つの懸濁液を製造すること、そして担体上に多層を形成するためにこの懸濁液を使用することが好適である。その複合材料は、先行技術の公知の方法により容易に製造することができる。代表的な方法が以下に述べられる。本明細書で使用されるように、“薄め塗膜”の用語は、触媒又は他の材料の薄く粘着性の塗膜が、処理されるガス流の通過を許すために十分に多孔性であるハニカム型担体部材等の基材担体材料に施される技術分野において通常の意味を持つ。
【0029】
触媒複合材料は一体式担体上で層状に容易に製造することができる。特定の薄め塗膜の第一の層のために、ガンマアルミナ等の高表面積の耐熱性金属酸化物の微粉砕粒子が水等の好適な媒体中で懸濁される。その後、例えば、ひと浸しあたり約0.5〜約2.5g/in約0.031約0.153g/cm)の金属酸化物の所望の積載量が担体上に堆積するように、担体はそのような懸濁液に1以上の回数で浸されるか、又はその懸濁液がその担体に塗布される。貴金属(パラジウム、ロジウム、白金、及び/又は同一物の組み合わせ等)、安定剤、及び/又は促進剤等の成分を組み込むために、そのような成分が懸濁液中に水溶性若しくは水分散性化合物又は複合体として組み込まれても良い。その後、塗布された担体は、例えば、400〜600℃、約10分から約3時間の加熱によりか焼される。通常、パラジウムが要求される場合、活性化アルミナ等の耐熱性金属酸化物支持体上でのパラジウム成分の分散を達成するために、パラジウム成分は化合物又は複合体の形状で利用される。本発明の目的のために、“パラジウム成分”の用語は、任意の化合物又は複合体等であって、それら自身のか焼又は使用の際、分解し、又は他方では触媒活性型へと変換するものを意味し、通常、その金属又は金属酸化物である。その金属成分の水溶性化合物若しくは水分散性化合物又は複合体は、含浸又は堆積するために使用される液状媒体である限り使用して良く、耐熱性の金属酸化物支持体粒子上のその金属成分は、触媒組成物中に存在して良く、且つ加熱及び/又は減圧の適用による揮発又は分解によってその金属成分から除去することができるその金属、その化合物、その複合体、又は他の成分と逆反応しない。ある場合には、触媒が使用されるように配置され、運転中に遭遇する高温にさらされるまでその液体の除去の完了が起こらないことがある。一般的に、経済的及び環境的な側面の両方の観点から、貴金属の水溶性化合物又は複合体の水溶液が利用される。例えば、好適な化合物は硝酸パラジウム又はテトラアミン硝酸パラジウムである。か焼工程の間、又は少なくともその複合体の使用の初期段階の間、そのような化合物はその金属又は化合物自身の触媒活性型に変換される。
【0030】
本発明の積層触媒複合材料の任意の層を製造する好適な方法は、所望の貴金属化合物(例えば、パラジウム化合物)の溶液と、後に塗布可能な懸濁液を形成するための水と結合する湿潤固体を形成するために、実質的に全ての溶液を吸着するために十分に乾燥したガンマアルミナ等の微粉砕された高表面積の耐熱性金属酸化物支持体等の少なくとも一つの支持体との混合物を製造することである。1以上の実施の形態では、その懸濁液は、例えば、約2〜約7未満のpHを有する酸性である。その懸濁液のpHは、懸濁液中への適切な量の無機若しくは有機酸の添加により下げられても良い。酸と原材料の互換性が考慮されている場合、両者の組み合わせを用いることができる。無機酸は硝酸を含むが、これに限定されるものではない。有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、及びクエン酸等を含むが、これに限定されるものではない。その後、所望により、水溶性若しくは水分散性化合物又は酢酸バリウム等の安定剤、及び硝酸ランタン等の促進剤がその懸濁液に添加されてもよい。
【0031】
一実施の形態では、その後、懸濁液は、約20ミクロン未満の粒子サイズ、すなわち、約0.1〜15ミクロンの間の平均直径を有する実質的に全ての固形物に結果として粉砕される。その粉砕は、ボールミル又は他の類似の機器によって達成され、そして、懸濁液の固形分は、例えば、約20〜60質量%であってよく、より詳細には約30〜40質量%であってよい。
【0032】
追加の層、すなわち、第二及び第三の層は、担体上への最初の層の堆積のための上述のように同じ方法で最初の層の上に堆積させて製造して良い。
【0033】
塗布され、多重に区分された触媒基材の提供は、例えば、US特許NO.7,189,376に記載されるように、従来公知の方法によりなすことができ、参照により本明細書に組み入れられる。
【0034】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されている構成や工程段階の詳細に限定されるものではないと理解される。本発明は、他の実施形態の様々な方法で実施されることが可能である。以下に、単独で、又は無制限の組み合わせで使用され、本発明の他の側面のシステム及び方法を含む使用として記載されるそのような組み合わせを含む、積層した触媒のための好ましい設計が提供される。
【0035】
実施形態1では、触媒材料が5〜75g/ft3(0.18〜2.65kg/m3)の範囲の量でパラジウム成分を含む担体上のディーゼル酸化触媒材料、及び少なくとも一つの分子篩を含み、実質的にパラジウムを含まない炭化水素捕捉層と、パラジウム成分を含み、実質的に分子篩を含まないパラジウム含有層であって、パラジウム成分が高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体上に位置するパラジウム含有層と、の少なくとも二つの層を含む積層ディーゼル酸化触媒複合材料が提供される。
【0036】
実施形態2では、触媒材料がさらに白金成分を10g/ft3〜150g/ft3(0.35〜5.30kg/m3)の範囲で含み、20質量%以下の白金成分が少なくとも一つの分子篩に組み込まれ、白金成分の少なくとも80質量%の量がパラジウム含有層の高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体上に存在する。
【0037】
実施形態3では、積層触媒複合材料が、さらに下塗り層を含む。
【0038】
実施形態1〜3の何れか、その同一物を用いたシステム、及び方法が、1以上の以下の任意の設計特徴を含む:
高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、酸化ランタン−アルミナ、酸化ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−酸化ランタン−アルミナ、バリア−酸化ランタン−ネオジム−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、及びジルコニア−チタニアから構成される群から選択される活性化、安定化、又は両方の化合物を含む;
高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体は、0.5〜1.5cm/gの範囲の細孔容積を有し、少なくとも75Åの平均細孔径、特定の実施形態では75Å〜150Åの範囲の平均細孔径を有するアルミナを含有する;
分子篩は、ベータゼオライト、ZSM−5、ゼオライト−Y、又はそれらの組み合わせを含むゼオライトを含む;
ゼオライトは、20:1〜1000:1の範囲のアルミナに対するシリカの比を含む;
積層触媒複合材料は、担体上であって少なくとも二つの層の下に位置する下塗り層を含み、その下塗り層は高表面積の耐熱性金属酸化物を含む;
高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体が、60〜200m/gの範囲の表面積、0.6〜1.0cm/gの範囲の細孔容積、及び70Å〜150Åの範囲の平均細孔径を有するアルミナを含み、ゼオライトが、中に白金成分の少なくとも10質量%の量が組み込まれたベータゼオライトを含む;
積層触媒複合材料は合計15〜225g/ft(0.53〜7.95kg/m)の範囲の量で積載した貴金属成分を有する;
触媒金属におけるパラジウムに対する白金の質量比は、10:1〜1:10の範囲である;特定の実施形態では、触媒金属におけるパラジウムに対する白金の質量比は、4:1〜1:1の範囲である;
パラジウム含有層が担体上に位置し、且つ炭化水素捕捉層はパラジウム含有層上に位置するか、又は、炭化水素捕捉層が担体上に位置し、且つパラジウム含有層は炭化水素捕捉層上に位置する;
炭化水素捕捉層は実質的に非ゼオライト支持された貴金属成分を含まない;
炭化水素捕捉層は実質的に酸素貯蔵成分を含まない;
触媒材料はNOx(窒素酸化物)貯蔵に好適な量の卑金属を含まない;そのような卑金属は、Ba、Mg、K、及びLa等を含むが、それらに限定されるものではない;
触媒材料は、ロジウムを含まない;
パラジウム含有層は担体上に位置し、且つ炭化水素捕捉層は高表面積のパラジウム含有層上に位置する;そして、高表面積の多孔性で耐熱性の金属酸化物支持体は、60〜200m/gの範囲の表面積、0.6〜1.0cm/gの範囲の細孔容積、及び70Å〜150Åの範囲の平均細孔径を有するアルミナを含有し、且つ、少なくとも一つのゼオライトがベータゼオライトを含有する;そして、触媒材料はさらに白金成分を含有し、その白金成分の10質量%以下の量がそのベータゼオライト中に組み込まれ、白金成分の少なくとも90質量%の量がアルミナ中に組み込まれる。
【実施例】
【実施例】
【0039】
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な実施の形態を説明するのに役に立つ。各実施例において、担体はコージライトであった。第一の塗膜及び第二の塗膜への言及は、位置又は塗膜の方向について何の限定をもたらすものではない。
【0040】
実施例1
触媒材料を有する複合材料を、下塗り層、内側層、及び外側層の三つの層を用いて製造した。積層した触媒複合材料は、パラジウムと白金を、合計約120g/ft4.24kg/m)の貴金属積載量で、且つ2/1/0の名目上のPt/Pd/Rh比で含んだ。基材は5.3in(0.9L)の容積、平方インチ(平方センチメートル)あたり400(62.0)セルのセル密度、及び約100μmの膜厚を有した。その層を以下のように製造した:
【0041】
下塗り層
下塗り層に存在する成分は100%の高表面積(70m/g)ガンマアルミナであった。下塗り層の積載量の合計は1.0g/in0.061g/cm)であった。
ガンマアルミナを水(45〜50%の固形物懸濁液)及び酢酸と組み合わせてpH4.5未満とし、そして8ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕することで水性懸濁液を作った。コージライト基材上に触媒を堆積させる公知の堆積法を用いてその懸濁液をコージライト担体上に塗布した。塗布後、下塗り層を加えた担体を乾燥させ、それから450℃で約1時間か焼した。
【0042】
内側層
内側層に存在する成分は、高表面積(80m/g)ガンマアルミナ、白金、及びパラジウムであり、か焼した触媒の質量に対してそれぞれ約95.1%、3.2%、及び1.7%の濃度であった。中間層の合計積載量は1.4g/in0.085g/cm)であった。内側層は積載量が100%のパラジウム及び積載量が約90%の白金を含んだ。ガンマアルミナは0.59〜0.71cm/gの範囲の一点吸着の合計細孔容積、及び319〜350Åの範囲の平均BET細孔径を有した。
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウム及びアミン塩形態の白金を、初期湿潤を達成させる間、湿式粉体を形成させる遊星型ミキサー(P−ミキサー)によりガンマアルミナに含浸させた。それから、pHを4.5未満に減少させるために酸を用いて水性懸濁液を形成した。懸濁液を10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。懸濁液をコージライト基材上に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法を用いてコージライト担体上に内側層に亘って塗布した。塗布後、下塗り層及び内側層を加えた担体を乾燥させ、それから450℃の温度で約1時間か焼した。
【0043】
外側層
外側層に存在する成分は、か焼した触媒の質量に対してそれぞれ約32.3%、25.8%、38.7%、及び3.2%の濃度の高表面積ガンマアルミナ、H−ベータゼオライト、0.6%のPt−ベータゼオライト、及び結合剤であった。外側層の合計積載量は0.8g/in0.049g/cm)であった。
ガンマアルミナの水性懸濁液を、そのpHを4.5未満に低減させるために酸を用いて形成した。その懸濁液を16ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。H−ベータゼオライト及びPt−ベータゼオライトをその懸濁液に添加した。その後、懸濁液を10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。結合剤をその懸濁液に添加した。懸濁液をコージライト基材上に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法を用いてコージライト担体上に内側層に亘って塗布した。塗布後、下塗り層、内側層、及び外側層を加えた担体を、それから450℃の温度で約1時間か焼した。
【0044】
実施例2
触媒材料を有する複合材料を、内側層及び外側層の二つの層を用いて製造した。その積層触媒複合材料は、合計約120g/ft約4.24kg/m)の貴金属積載量及び2/1/0の名目上のPt/Pd/Rh比でパラジウムと白金を含んだ。基材は5.3in(0.09L)の容積、平方インチ(平方センチメートル)あたり400(62.0)セルのセル密度、及び約100μmの壁厚を有した。内側層を、実施例1の内側層同様、その同一の成分、量、及び方法で製造した。外側層を、実施例1の外側層同様、その同一の成分及び量で製造した。
【0045】
実施例3
比較
触媒材料を有する比較の複合材料を、内側層と外側層の二つの層を用いて製造した。積層した触媒複合材料は、パラジウムと白金を合計約120g/ft約4.24kg/m)の貴金属積載量、及び2/1/0の名目上のPt/Pd/Rh比で含んだ。その層を次のように製造した:
【0046】
内側層
内側層に存在する成分は高表面積(70m/g)ガンマアルミナ、促進剤、及びその層中に60g/ft2.12kg/m)の量で、且つ7/5の名目上のPt/Pd比で存在する白金及びパラジウムの貴金属であった。ガンマアルミナは合計約0.4cm/gの一点吸着の細孔容積、及び約74Åの平均BET細孔径を有した。
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウム及びアミン塩の形態の白金を、初期湿潤を達成させる間に湿式粉体を形成させる遊星型ミキサー(P−ミキサー)によりそのガンマアルミナに含浸させた。それから、pHを低減させるために酸を用いて水性懸濁液を形成した。懸濁液を約10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。懸濁液をコージライト基材上に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法によりコージライト担体上に塗布した。塗布後、内側層を加えた担体を乾燥させ、その後か焼した。
【0047】
外側層
外側層に存在する成分は高表面積(100m/g)ガンマアルミナ、ベータゼオライト、促進剤、及び60g/ft2.12kg/m)の量でその層に3/1の名目上のPt/Pd比で存在する白金及びパラジウムの貴金属であった。その貴金属をガンマアルミナ上に支持した。ガンマアルミナは合計約0.4cm/gの一点吸着の細孔容積及び150〜171Åの範囲の平均BET細孔径を有した。
パラジウム硝酸溶液の形態のパラジウム及びアミン塩の形態の白金を、初期湿潤を達成させる間に湿式粉体を形成させる遊星型ミキサー(P−ミキサー)によりガンマアルミナに含浸させた。それから、pHを低下させるための酸を用いて水性懸濁液を形成した。懸濁液を約10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。ベータゼオライト及び促進剤をその懸濁液に添加した。懸濁液をコージライト基材に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法を用いてコージライト担体上に内側層に亘って塗布した。塗布後、内側及び外側層を加えた担体を乾燥させ、その後か焼した。
【0048】
実施例4
試験
実施例1〜3の複合材料を次のように試験した。サイズ1.5”×3.0”(3.8cm×7.6cm)の触媒複合材料を研究室のオーブンで10%の蒸気大気中で約750℃で5時間エージングし、経時変化させた。エージング後、その複合材料を研究室の反応系を用いて着火を評価した。着火試験手順は、1500ppmのCO、400ppmのC1(134ppmのC36、133ppmのC78、n−C1022)、10%のO2、100ppmのNO、5%のCO2、及び7%のH2Oの試験ガス組成物を含んだ。勾配率は15℃/minであった。空間速度は50,000h-1であった。反応ガス給送に最初の含浸はなかった。
温度が80℃から325℃まで急速に上昇する間、HC/CO変換を測定した。CO濃度はフーリエ変換赤外線分析計(FTIR)を用いて測定した。総炭化水素(THC)をFIDを用いて測定した。CO及びTHCの50%変換が生じた温度を表1に報告する。
【0049】
【表1】
【0050】
着火試験の結果は、ゼオライト層から分離されたパラジウムを有し、且つ貴金属成分を支持する内側層に多孔性アルミナを有する触媒を用いる利点を明確に示した。
【0051】
実施例5
触媒支持材料の間隙率の効果を評価した。高間隙率のアルミナ粉末を1g/ft0.04kg/m)の積載量で含み、2:1のPt:Pd比及び60g/ft2.12kg/m)の積載量で白金及びパラジウムの貴金属を含む薄め塗膜から本明細書の“触媒複合材料の製造”に記載の方法に従って形成した単一塗膜の支持体で着火試験を行った。表2中に示されるように、サンプル5B(比較)のより小さい間隙率のアルミナと比較してサンプル5Aの高間隙率のアルミナは25℃の着火の利点を示した。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例6
ゼオライトからのパラジウム及び大部分の白金の分離の効果を評価した。一酸化炭素の変換を、750℃/24時間のエンジンのエージング後のNEDC試験の間、2.0L試験車両で、ユーロ4試験を用いて3つの触媒で評価した。表3に示されるように、触媒は次の組成及び構成を有し、記載のCO変換効率を示した。
【0054】
【表3】
【0055】
ゼオライトからパラジウム及び白金の大部分を分離したサンプル6A及び6Bはサンプル6A及び6Bと同じ全体組成を有する単一層の触媒であるサンプルCと比較して改善されたCO変換を示した。
【0056】
実施例7
触媒材料を有する複合材料を下塗り層、内側層、及び外側層の三つの層を用いて製造した。積層した触媒複合材料はパラジウム及び白金を合計約120g/ft約4.24kg/m)の貴金属積載量及び2/1/0の名目上のPt/Pd/Rh比で含んだ。基材は75.5in(1.24L)の容積、平方インチ(平方センチメートル)あたり400(62.0)セルのセル密度、及び約6μmの壁厚を有した。その層を次のように製造した:
【0057】
下塗り層
下塗り層に存在する成分は100%高表面積(70m/g)ガンマアルミナであった。下塗り層の合計積載量は1.0g/in0.061g/cm)であった。
水性懸濁液を、ガンマアルミナを水及び酸と組み合わせてpH4.5未満とし、10ミクロン未満の粒子サイズが90%となるよう粉砕することにより形成した。その懸濁液をコージライト担体に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法を用いてコージライト担体上に塗布した。塗布後、下塗り層を加えた担体を乾燥させ、その後450℃の温度で約1時間か焼した。
【0058】
内側層
内側層に存在する成分は高表面積(160m/g)ガンマアルミナ、白金、パラジウム、及び安定剤であった。その中間層の合計積載量は1.6g/in0.098g/cm)であった。その内側層は100%のパラジウム及び約90%の白金積載物を含む。ガンマアルミナは合計約0.85cm/gの範囲の一点吸着の細孔容積及び約100Åの平均BET細孔径を有した。
溶解性塩の形態のパラジウム及び白金を、初期湿潤を達成させる間に湿式粉体を形成させる遊星型ミキサー(P−ミキサー)によりガンマアルミナ上に含浸させた。その後、水性懸濁液をpHを4.5未満に低下させるために酸を用いて形成した。懸濁液を10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。懸濁液をコージライト基材に触媒を堆積させるための先行技術で公知の堆積法を用いてコージライト担体上に下塗り層に亘って塗布した。塗布後、下塗り層及び内側層に加えてその担体を乾燥させ、それから450℃の温度で約1時間か焼した。
【0059】
外側層
外側層に存在する成分は高表面積(160m/g)ガンマアルミナ、H−ベータゼオライト、及び白金であった。外側層の合計積載量は0.8g/in0.049g/cm)であった。
ガンマアルミナの水性懸濁液はpH4.5未満に低下させるために酸を用いて形成した。その懸濁液を10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。白金の可溶性塩を懸濁液中に添加されるH−ベータゼオライトに含浸させるために用いた。懸濁液を10ミクロン未満の粒子サイズが90%に粉砕した。その懸濁液をコージライト基材に触媒を堆積させるための先行技術で公知な堆積法を用いてコージライト担体上に内側層に亘って塗布した。塗布後、下塗り層、内側層、及び外側層を加えた担体を乾燥させ、それから450℃の温度で約1時間か焼した。
【0060】
実施例8
試験
実施例3〜7の触媒材料を75in3(1.24L)の基材に塗布し、エンジンの着火性能を評価した。温度が80℃から325℃まで急速に上昇する間のHC/CO変換を測定した。CO濃度はフーリエ変換赤外線分析計(FTIR)を用いて測定した。総炭化水素(THC)はFIDを用いて測定した。変換効率、COのためのT50(50%のCOが変換される温度)、HCのためのT70(70%のHCsが変換される温度)を表4に報告する。表4は、実施例7の積層触媒が70%の炭化水素変換で18℃、50%の一酸化炭素変換で31℃の改善を提供したことを示している。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例3〜7の積層触媒材料を1.5Lエンジンと2Lエンジンの二つの異なるエンジンサイズを有するユーロ4型車両で試験した。CO及びHCに対する変換効率を、規制されたヨーロッパのNEDC運転サイクルで測定し、表5に報告した。
【0063】
【表5】
【0064】
表5中のこれらの車両変換試験結果は、ゼオライト層から分離されたパラジウムを有し、且つ貴金属成分を支持する内側層に多孔性アルミナを有する触媒を使用する利点を明確に示した。COに対して変換効率は23%ポイント改善し、HCに対して変換効率は12%ポイント改善した。
【0065】
実施例9
触媒材料を有する触媒すすフィルター(CSF)を下塗り層、内側層、及び外側層の三つの層を用いて製造する。CSFはパラジウム及び白金を25g/ft3の合計PGM積載量及び2/1/0の名目上のPt/Pd/Rh比で含有する。その層は、背圧への悪影響なくCO及びHCsを変換するために十分な積載量で実施例1、3、及び7の1以上に基づく組成物を含む。
【0066】
本明細書を通じて“ある実施の形態”、“特定の実施形態”、“1以上の実施形態”、又は“1実施の形態”への言及は、その実施例に関して記載される特定の機能、構成、材料、又は特徴が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の様々な場所での“1以上の実施形態”、“特定の実施形態に”、“ある実施の形態に”、又は“1実施の形態に”等の語句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態を言及しているわけではない。さらに、特定の機能、構成、材料、又は特徴は1以上の実施の形態における任意の好適な方法に関連していても良い。
【0067】
その上、本発明は上述の実施例及び変形例への具体的な言及とともに記載される。更なる変形及び変更が他に本明細書の解釈及び理解上に生じても良い。そのような変形及び変更が本発明の範囲内に入る限りそれらは全て含むように意図されている。