(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のキャスクでは、角パイプの外側面に長手方向に溝部の加工が必要であるため、加工コストが上昇する。
【0006】
本発明の目的は、溝部の加工を不要とする簡易な構成の放射性物質格納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による放射性物質格納容器は、放射性物質を含む複数の燃料集合体を配列して格納する放射性物質格納容器であって、収容部と、収容部を、複数の燃料集合体を収容する複数の収容空間に区画するセル構造体と、セル構造体の内側面に面して配置される平板状の中性子吸収材と、前記中性子吸収材に面して前記収容空間に配置され、中性子吸収材を保持するとともに、燃料集合体の格納部を形成する保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、中性子吸収材をセル構造体に固定する必要がないため、セル構造体の加工が容易であり、加工コストの上昇を抑えることができる。
【0009】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、収容空間が、直方体形状であり、保持部材は、燃料集合体の挿入方向に延在し、断面がL字形状を呈する。
【0010】
この構成によれば、平板の折り曲げ加工等により容易に保持部材を形成することができる。
【0011】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、収容空間が、直方体形状であり、保持部材は、燃料集合体の挿入方向に延在し、断面が矩形の枠形状を呈する。
【0012】
この構成によれば、収容空間内に精度よく所定形状の枠部を形成することができ、収容空間内への中性子吸収材および燃料集合体の挿入が容易である。
【0013】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、セル構造体は、中性子吸収性能を有する材料を含まない構成材からなる。
【0014】
この構成によれば、セル構造体として強度の高い材料を用いることができ、セル構造体を容易に薄肉化することができる。
【0015】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、保持部材は、中性子吸収性能を有する材料を含まない構成材からなる。
【0016】
この構成によれば、薄肉部材の加工性が向上し、所定形状の薄肉部材を容易に得ることができる。
【0017】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、保持部材が、収容空間内における保持部材の位置を拘束する位置拘束部を有する。
【0018】
この構成によれば、保持部材の位置が拘束されるため、中性子吸収材の設置スペースを容易に確保することができる。
【0019】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、保持部材が、燃料集合体を収容空間に挿入するための入口部を端部に有し、この入口部は、燃料集合体の挿入側の開口面積が増加するように設けられている。
【0020】
この構成によれば、入口面積が増加するため、燃料集合体を引っ掛かりなく、収容空間に容易に挿入することができる。
【0021】
本発明の別の態様による放射性物質格納容器では、セル構造体が、最外部に配置される外側隔壁部と、外側隔壁部の内側に配置される内側隔壁部とを有し、中性子吸収材は、内側隔壁部の内側面に面して配置される一方、外側隔壁部の内側面に面して配置されていない。
【0022】
この構成によれば、中性子吸収材は必要箇所にのみ配置されるため、燃料集合体の設置スペースを拡大できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、加工コストの上昇を抑えて、中性子吸収材を備えた放射性物質格納容器を構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図5を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る放射性物質格納容器の概略構成を示す縦断面図であり、
図2は、
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。ここでは、放射性物質格納容器として、リサイクル燃料の集合体(燃料集合体)を格納するキャスク100を例示している。
【0026】
なお、以下では、説明の便宜上、キャスク100の蓋体2を上方、底部1bを下方として、
図1に示すように上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。この方向はキャスク100の使用状況に応じて変化するものであり、
図1の方向にキャスク100の構成が限定されるものではない。
図1は、上下方向に延在するキャスク100の中心線(軸線)に沿ってキャスク100を切断した断面図である。燃料集合体101は、直方体形状を呈し、上下方向は、燃料集合体101をキャスク100に挿入する方向に一致する。なお、この場合の直方体形状とは、純粋な直方体形状だけでなく、直方体形状と実質的に同等な形状も含む。
【0027】
図1、
図2に示すように、キャスク100は、胴本体1と、蓋体2と、バスケット10と、伝熱板3と、外筒4と、中性子遮蔽体5とを有する。なお、
図1では、バスケット10の図示を省略し、
図2では、バスケット10の詳細形状の図示を省略している。
【0028】
胴本体1は、底面が閉塞した有底円筒形状を呈しており、上端面に開口部1aが設けられている。胴本体1の内部には、複数の燃料集合体101を収容する中空円柱状のキャビティ6が形成される。キャビティ6は燃料集合体101の形状に対応した上下方向長さを有する。胴本体1は、ステンレス鋼や炭素鋼などの材料によって構成され、燃料集合体101から放出されたγ線を遮断可能な肉厚を有する。
図1に示すように胴本体1の底部1bと側部1cとを一体に形成してもよいが、これらを別体に形成した後、溶接等により一体化してもよい。
【0029】
蓋体2は、胴本体1の開口部1aを閉塞する一次蓋2aと一次蓋2aの上方を覆う二次蓋2bとを有する二重構造をなしている。一次蓋2aおよび二次蓋2bは、それぞれ全体が円盤形状を呈し、γ線を遮蔽可能なステンレス鋼や炭素鋼などの材料によって構成されている。なお、この場合の円盤形状とは、純粋な円盤形状だけでなく、円盤形状と実質的に同等な形状も含む。一次蓋2aおよび二次蓋2bは、それぞれボルト等により胴本体1の上端面に着脱可能に取り付けられている。図示は省略するが、一次蓋2aおよび二次蓋2bの取付部には、それぞれ金属ガスケットが介装され、キャビティ6内および一次蓋2aと二次蓋2bとの間の空間が、それぞれ気密に封止されている。
【0030】
バスケット10は、燃料集合体101の外形形状に対応した複数の角パイプ11を、その側面同士が当接し合うように結束して構成され、複数の角パイプ11によりキャビティ6内に格子状のセルが形成されている。すなわち、バスケット10は、複数の角パイプ11によりセル構造体を形成する。各角パイプ11は、上下方向に延在し、燃料集合体101を収納する細長直方体形状の収容空間12を形成する。キャビティ6の内周面をバスケット10の外周形状に対応した形状とすることで、バスケット10は胴本体1内に位置決めされる。なお、キャビティ6の周面を単なる円筒形状とし、キャビティ6とバスケット10との間の隙間に、伝熱性能に優れたスペーサを配置してもよい。バスケット10内には、燃料集合体101から放出された中性子を吸収する中性子吸収材が設けられるが、この点については後述する。
【0031】
伝熱板3は、複数の板状部材であり、その長手方向一端部が胴本体1の外周面に放射状に取り付けられている。伝熱板3は、胴本体1と同種の材料、あるいは胴やアルミニウム等の熱伝導性のよい材料によって構成されている。伝熱板3は、胴本体1からの熱を外筒4に伝える。
【0032】
外筒4は、キャスク100の外周部に配置された一定厚さの筒状体である。外筒4の内周面には複数の伝熱板3の他端部が取り付けられ、伝熱板3を介して外筒4に伝えられた熱は、外筒4の外周面から大気中に放出される。胴本体1の外周面と外筒4の内周面との間の円筒状空間は、伝熱板3により周方向に複数の分割空間7に区画されている。
【0033】
中性子遮蔽体5は、伝熱板3により区画された各分割空間7に充填され、胴本体1の外周を包囲して配置される。中性子遮蔽体5は、所定量の水素を含有し、ボロンまたはボロン化合物を添加したレジンから構成される。中性子遮蔽体5は、燃料集合体101から放出される中性子を遮蔽し、キャスク100の外部への中性子の漏洩を抑制する。
【0034】
このように構成されたキャスク100においては、燃料集合体101から放出された中性子を吸収して未臨界状態を維持する機能(中性子吸収機能)が要求される。この要求を満足するために、例えばボロンまたはボロン化合物を添加したステンレス鋼等の鋼材、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金等によって、セル構造体としての角パイプ11を構成することが考えられる。しかしながら、ボロン含有材は、ボロン非含有材に比べて硬度が高いため、ボロン含有材によってセル構造体を構成した場合には、加工性が著しく劣り、加工コストの上昇を招く。
【0035】
一方、別の方法として、セル構造体としての角パイプ11をボロン非含有材によって構成するとともに、中性子吸収材を各角パイプ11の外側面に固定し、中性子吸収材とセル構造体とを一体に設けることが考えられる。しかしながら、この場合には、セル構造体に中性子吸収材を固定するための加工(例えば溝加工)を施す必要があり、セル構造体の形状が複雑となって加工コストが上昇する。とくに、燃料集合体は長尺物であるので、中性子吸収材も長尺のものが必要となる。このため、長尺の中性子吸収材をセル構造体に一体に取り付けるためには、溝加工の加工精度を高める必要があり、加工コストの上昇を招きやすい。
【0036】
そこで、本実施形態では、加工コストの上昇を抑え、簡易な構成によりバスケット10内に中性子吸収材を配置するために、以下のように構成する。
【0037】
図3は、
図2の一の収容空間12を拡大して示す図である。なお、
図3には、使用済みの燃料集合体101をバスケット10内の収容空間12に装荷した状態を示している。
図3に示すように、収容空間12内には、燃料集合体101を包囲するように水平方向断面がL字形状の一対の薄板状の保持部材20が配置されている。さらに、保持部材20と角パイプ11の各内側面との間に、それぞれ中性子吸収材15が配置されている。なお、この場合のL字形状とは、純粋なL字形状だけでなく、L字形状と実質的に同等な形状も含む。
【0038】
中性子吸収材15は、全体が矩形の平板形状を呈し、全体にわたって所定厚さt1(例えば1mm程度)を有する。なお、この場合の矩形とは、純粋な矩形だけでなく、矩形と実質的に同等な形状も含む。中性子吸収材15は、燃料集合体101から放出された中性子を吸収する機能を有する。中性子吸収材15の上下方向長さは、燃料集合体101の上下方向長さにほぼ等しく、断面形状は上下方向全長にわたって一定である。なお、中性子吸収材15は、隣接する収容空間12a内に配置された燃料集合体101から放出された中性子を吸収する。
【0039】
図3において、角パイプ11の4つの内側面をそれぞれ第1側面111、第2側面112、第3側面113および第4側面114とすると、中性子吸収材15は、第1側面111〜第4側面114に面してそれぞれ配置されている。これにより角パイプ11の内側面全体が中性子吸収材15によってほぼ覆われている。
【0040】
より厳密には、第1側面111と第3側面113に面する中性子吸収材15(第1中性子吸収材151と呼ぶ)の幅W1は、第2側面112から第4側面114までの距離Waよりもやや短く(例えば1mm程度短く)、第1中性子吸収材151は角パイプ11の第2側面112、第4側面114から隙間を空けて配置されている。一方、第2側面112と第4側面114に面する中性子吸収材15(第2中性子吸収材152と呼ぶ)の幅W2は、第1側面111から第3側面113までの距離Wbから板厚t1の2倍を減じた値(Wb−2×t1)よりもやや短く(例えば1mm程度短く)、第2中性子吸収材152は第1中性子吸収材151の内側表面から隙間を空けて配置されている。
【0041】
なお、収容空間12が断面正方形状である場合、すなわち第2側面112から第4側面114までの距離Waと第1側面111から第3側面113までの距離Wbが互いに等しい場合、
図4に示すように中性子吸収材15の幅W3を、距離Wc(=Wa=Wb)から中性子吸収材15の厚さt1だけ差し引いた値よりもやや短く(例えば1mm程度短く)形成してもよい。この場合、中性子吸収材15の一端面を第1側面111〜第4側面114に対向し、他端面を隣り合う中性子吸収材15の内側表面に対向するように、各中性子吸収材15を配置すればよい。これにより全ての中性子吸収材15の形状を互いに同一にすることができ、コストの削減に資する。
【0042】
なお、中性子吸収材15の幅方向両端面の隙間は、中性子吸収材15が発揮する中性子吸収機能を考慮して決定されるものであり、隙間をより小さくまたはより大きくして、場合によっては隙間を0にして中性子吸収材15を配置してもよい。
【0043】
中性子吸収材15は、例えばアルムニウム粉末にボロンを添加して構成されたボロン含有材であり、ボロンの含有率は重量比で例えば30%程度である。これに対し、仮に、角パイプ11をボロン含有材により構成する場合、加工性を考慮すると角パイプ11のボロン含有率は、一般に10%未満(例えば7%程度)に抑えられる。この点、本実施形態では、中性子吸収材15を角パイプ11とは別体で構成するため、ボロン含有率の高い中性子吸収材15を用いることができ、燃料集合体101から放出された中性子を効率よく吸収することができる。
【0044】
図3に示すように、保持部材20は、例えば所定厚さt2を有する薄板を直角に折り曲げて形成され、折り曲げ部21の両側にそれぞれ支持部22,23を有する。なお、直角とは、純粋な直角だけでなく、直角とほぼ同等な形状も含む。保持部材20の上下方向長さは、燃料集合体101の上下方向長さにほぼ等しく、その断面形状は上下方向全長にわたって一定である。収容空間12内の一対の保持部材20は、互いに同一形状である。
【0045】
一方の保持部材20(第1保持部材201と呼ぶ)は、一対の支持部22および23を第1側面111側および第4側面114側の中性子吸収材15にそれぞれ対向して配置されている。他方の保持部材(第2保持部材202と呼ぶ)は、一対の支持部23および22を第2側面112側および第3側面113側の中性子吸収材15にそれぞれ対向して配置されている。第1保持部材201の支持部22の端部は、第2保持部材202の支持部23の端部に当接あるいは近接し、第1保持部材201の支持部23の端部は、第2保持部材202の支持部22の端部に当接あるいは近接している。これにより収容空間12内に矩形の枠部25が形成され、中性子吸収材15は収容空間12内の枠部25の外側空間13に配置される。なお、この場合の矩形とは、純粋な矩形だけでなく、矩形と実質的に同等な形状も含む。
【0046】
より厳密には、支持部22の幅W4は、第2側面112から第4側面114までの距離Waから中性子吸収材15の板厚t1の2倍および保持部材20の板厚t2を減じた値(Wb−2×t1−t2)よりもやや短い(例えば1mm程度短い)。また、支持部23の幅W5は、第1側面111から第3側面113までの距離Wbから中性子吸収材15の板厚t1の2倍および保持部材20の板厚t2を減じた値(Wa−2×t1−t2)よりもやや短い(例えば1mm程度短い)。これにより中性子吸収材15の位置が規制され、中性子吸収材15を、角パイプ11の内側面に近接し、かつ、角パイプ11の内側面に平行な姿勢(対向姿勢と呼ぶ)に保持することができる。なお、この場合の平行とは、純粋な平行状態だけでなく、平行状態と実質的に同等な状態も含む。
【0047】
図3の状態では、保持部材20は、キャスク100の構造部品(角パイプ11等)に固定されておらず、収容空間12内の他の部品(中性子吸収材15や他方の保持部材20)と接触するまで、収容空間12内を移動可能である。中性子吸収材15も、角パイプ11等に固定されておらず、収容空間12内の他の部品(保持部材20や角パイプ11や他の中性子吸収材15)に接触するまで、対向姿勢を保持しながら外側空間13内を移動可能である。
【0048】
なお、中性子吸収材15の厚さ方向両側の隙間は、収容空間12内への中性子吸収材15と保持部材20の設置手順、設置の容易性等を考慮して決定されるものであり、隙間をより小さくまたはより大きくして、場合によっては隙間を0にして中性子吸収材を配置するようにしてもよい。また、支持部22,23の長さW4,W5を互いに異なった値に設定することもできるが、
図3に示すように収容空間12が正方形状である場合には、支持部22,23の長さW4,W5を互いに等しくすればよい。なお、この場合の正方形状とは、純粋な正方形状だけでなく、正方形状と実質的に同等な形状も含む。
【0049】
一対の保持部材20によって形成された枠部25の内側には、矩形断面の格納部26が形成され、この格納部26に燃料集合体101が格納される。なお、この場合の矩形断面とは、純粋な矩形の断面だけでなく、矩形と実質的に同等な断面も含む。格納部26の幅方向寸法は、格納部26への燃料集合体101の挿入を容易にするために、燃料集合体101の幅よりも所定長さ(例えば1〜2mm程度)だけ大きい。
【0050】
保持部材20は、鋼材(例えばステンレス鋼)やアルミニウム、あるいはアルミニウム合金等のボロンを含まない所定厚さの材料によって構成される。キャスク100には、水平落下時、すなわち上下方向が水平になった状態での落下時における十分な構造強度が必要とされるが、水平落下時に保持部材20には、単一の燃料集合体101からの荷重が作用するだけであり、水平落下時に必要とされる構造強度は主に角パイプ11によって担保される。このため、保持部材20の厚さt2は、中性子吸収材15を対向姿勢に保持し得る程度の厚さ(例えば0.5mm程度)で十分である。
【0051】
本実施形態では、中性子吸収機能を有する中性子吸収材15を角パイプ11と別体に設けているため、角パイプ11自体が中性子吸収機能は有する必要はない。このため、角パイプ11は、例えばステンレス鋼)やアルミニウム、あるいはアルミニウム合金等のボロン非含有材を構成材として、例えば押し出し成形によって形成される。このように角パイプ11をボロン非含有材として構成することで、材料選択の幅が広がり、ボロン含有材よりも強度の高い材料を用いることができる。このため、本実施形態のようにボロン非含有材からなる角パイプ11を用いる場合、ボロン含有材からなる角パイプを用いる場合に比べて、角パイプ11を薄肉化することができ、中性子吸収材15と保持部材20の設置スペースを容易に確保できる。
【0052】
本実施形態に係るキャスク100には、例えば以下のような手順によって燃料集合体101が格納される。まず、蓋体2を取り外した状態で、胴本体1のキャビティ6内に、開口部1aからバスケット10(角パイプ11)を挿入する。次いで、バスケット10の各収容空間12に、開口部1aから一対の保持部材20をそれぞれ挿入し、収容空間12内に枠部25を形成する。
【0053】
さらに、収容空間12内の枠部25の外側の外側空間13に、開口部1aから中性子吸収材15を挿入し、中性子吸収材15を、角パイプ11の内側面に面した対向位置に配置する。この場合、中性子吸収材15は、その周囲に隙間を設けた状態で配置されるため(
図3参照)、外側空間13への中性子吸収材15の挿入が容易である。中性子吸収材15が配置されると、中性子吸収材15の移動は枠部25によって規制され、中性子吸収材15は対向姿勢を維持する。
【0054】
以上の手順が終了すると、枠部25の内側の格納部26に、開口部1aから使用済みの燃料集合体101を装荷する。その後、胴本体1の上部に蓋体2を装着し、キャスク100内に燃料集合体101を格納する。なお、燃料集合体101の格納手順は上述したものに限らない。例えば、バスケット10の収容空間12内に中性子吸収材15を挿入した後、その内側に保持部材20を配置し、中性子吸収材15を対向姿勢に保持するようにしてもよい。
【0055】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)複数の角パイプ11を結束してなるバスケット10により、胴本体1のキャビティ6内を複数の収容空間12に区画し、角パイプ11の各内側面に面して平板状の中性子吸収材15をそれぞれ配置し、中性子吸収材15に面して収容空間12に配置された断面L字形状の一対の保持部材20により、これら中性子吸収材15を保持するとともに、燃料集合体101の格納部26を形成するようにした。この構成によれば、中性子吸収材15を角パイプ11に固定する必要がないため、角パイプ11に中性子吸収材固定用の溝加工等を施す必要がない。したがって、簡易な構成により中性子吸収材15を収容空間12内に配置することができ、加工コストの上昇を抑えることができる。
【0056】
(2)上下方向に延在する保持部材20を、断面L字形状に構成したので、平板を折り曲げ加工等することによって保持部材20を容易に形成することができ、直方体形状の収容空間12内における枠部25の配置が容易である。
(3)中性子吸収材15をボロン含有物によって構成し、セル構造体(複数の角パイプ11)をボロン非含有物によって構成するようにしたので、セル構造体として強度の高い材料を用いることができ、セル構造体を容易に薄肉化することができる。
(4)中性子吸収材15をボロン含有物によって構成し、薄肉部材20をボロン非含有物によって構成するようにしたので、薄肉部材20の加工性が良好であり、薄肉部材20をL字形状に容易に加工することができる。
【0057】
ところで、本実施形態では、角パイプ11を構成する隔壁部14(
図3)によりキャビティ6を複数の収容空間12に区画したが、隔壁部14は、キャビティ6の周面部においてはバスケット10の最外部を規定する。すなわち、
図2に示すように、収容空間12を形成する4つの隔壁部14(第1隔壁部141、第2隔壁部142、第3隔壁部143および第4隔壁部144)のうち、第3隔壁部143と第4隔壁部144とは、隣り合う収容空間12を区画するのに対し、第1隔壁部141と第2隔壁部142は、バスケット10の最外部を規定する。したがって、第1隔壁部141および第2隔壁部142に隣接する収容空間12は存在せず、第1隔壁部141および第2隔壁部142では中性子を吸収する必要がない。この点を考慮し、第1隔壁部141の内側面と第2隔壁部142の内側面に面した中性子吸収材15の設置を省略してもよい。
【0058】
図5は、その一例を示す収容空間12の拡大断面図である。
図5では、第1側面111に面した中性子吸収材15と第2側面112に面した中性子吸収材15だけでなく、一方の薄肉部材20も省略されている。このように第1の実施形態では、薄肉部材20を断面L字形状に構成したので、中性子吸収材15を位置決めする必要のない薄肉部材20を省略することができ、その分、燃料集合体101の設置スペースを拡大できる。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、
図6を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、収容空間12内の保持部材の形状である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る放射性物質格納容器の要部構成を示す拡大図であり、第1の実施形態の
図3に対応した図である。なお、
図3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施形態との相違点を主に説明する。
【0060】
図6に示すように、保持部材30は、断面が矩形の枠形状を呈し、単一の保持部材30によって枠部25を構成している。なお、この場合の矩形とは、純粋な矩形だけでなく、矩形と実質的に同等な場合も含む。この保持部材30は、所定厚さの薄板を複数箇所で直角に折り曲げ加工し、その両端部を互いに溶接することによって構成することができる。なお、この場合の直角とは、純粋な直角だけでなく、直角と実質的に同等な角度も含む。保持部材30の断面形状は、L字形状の保持部材20によって構成された枠部25の形状(
図3)とほぼ同一である。保持部材30の材質、厚さも保持部材20と同一である。
【0061】
収容空間12内の保持部材30の外側空間13には、角パイプ11の第1側面111〜第4側面114に面してそれぞれ中性子吸収材15が配置され、中性子吸収材15は保持部材30によって対向姿勢に保持されている。保持部材30の内側には格納部26が形成され、格納部26に燃料集合体101が収容される。なお、第2の実施形態において、中性子吸収材15を
図5に示すように配置することもできる。
【0062】
第2の実施形態では、複数の角パイプ11を結束してなるバスケット10により、胴本体1のキャビティ6内を複数の収容空間12に区画し、角パイプ11の各内側面に面して平板状の中性子吸収材15をそれぞれ配置し、中性子吸収材15に面して収容空間12に配置された断面矩形の枠形状の保持部材30により、これら中性子吸収材15を、角パイプ11の内側面に近接かつ平行な対向姿勢に保持するようにした。これにより簡易な構成により中性子吸収材15を収容空間12内に配置することができ、加工コストの上昇を抑えることができる。
【0063】
また、保持部材30を断面矩形の枠形状としたので、収容空間12内に単一の保持部材30を挿入するだけで、収容空間12内に格納部26を形成することができ、燃料集合体101の格納手順を効率化できる。保持部材30を枠形状に構成したことで、収容空間12内における保持部材30の移動に拘らず、常に収容空間12内に所定寸法の格納部26を形成できる。このため、収容空間12内への中性子吸収材15や燃料集合体101の挿入が容易である。
【0064】
(変形例)
上記実施形態(
図3〜
図6)では、保持部材20,30を収容空間12内に先に挿入した状態において、保持部材20,30は角パイプ11の内側面に当接するまで収容空間12内を移動可能である。この保持部材20,30の移動をより制限するようにしてもよい。
図7は、その一例を示す収容空間12の要部拡大図である。なお、
図7は、断面L字形状の保持部材20に適用した例であり、収容空間12内に単一の保持部材20を配置した例を示している。
【0065】
図7では、保持部材20の両端部(支持部22,23の端部)を外側(角パイプ11の内側面側)に折り曲げて、折り曲げ部24を形成している。これにより保持部材20の支持部22,23は、角パイプ11の内側面から常に離れて配置され、支持部22,23と角パイプ11の内側面との間に所定範囲の外側空間13を形成できる。これにより、収容空間12内に中性子吸収材15の設置スペースを確保することができ、中性子吸収材15を容易に挿入することができる。また、保持部材20の両端部に折り曲げ部24を設けることで、保持部材20の剛性が向上し、保持部材20の撓み等による変形を抑制できる。
【0066】
上記実施形態で(
図3〜
図6)では、保持部材20,30の断面形状を上下方向にわたって一定としたが、燃料集合体101の挿入側の開口面積(入口面積)が増加するように保持部材20,30を構成してもよい。
図8は、その一例を示す保持部材20,30の縦断面図であり、燃料集合体101の挿入状態を示している。
図8では、保持部材20,30の上端部がその外側の中性子吸収材15に向けて折り曲げられ、折り曲げ部27が形成されている。
【0067】
これにより保持部材20,30の上端部において、格納部26が拡大し、燃料集合体101の挿入時の引っ掛かりを抑制することができ、燃料集合体101の格納部26への挿入が容易となる。また、中性子吸収材15の上方に折り曲げ部27が位置するため、中性子吸収材15の胴本体1の開口部1aへの移動を制限することができる。保持部材20,30の折り曲げ加工は容易であり、角パイプ11の端部に入口面積を増加するための加工を施す場合に比べ、入口面積を容易に増加させることができる。なお、
図8の例では、収容空間12に中性子吸収材15が挿入された後に、保持部材20,30が挿入される。
【0068】
以上の実施形態では、輸送用あるいは貯蔵用キャスク100に本発明を適用したが、本発明は燃料プールに設置される貯蔵ラック等、キャスク100以外の放射性物質格納容易にも適用することができる。したがって、胴本体1内にキャビティ6を形成すること以外によって、放射性物質格納用の収容部を構成してもよい。キャビティ6を中空円柱状としたが、収容部は他の形状(例えば角柱形状)でもよい。燃料集合体101は、使用済みのリサイクル燃料だけでなく、未使用の燃料でもよい。
【0069】
上記実施形態では、燃料集合体101の形状に対応した複数の角パイプ11により、セル構造体としてのバスケット10を構成し(
図2)、キャビティ6を複数の収容空間12に区画するようにしたが、角パイプ11以外によってセル構造体を構成してもよい。例えば複数の平板を格子状に配置しつつ上方に積み重ねてセル構造体を構成してもよい。燃料貯蔵ラックの例では、ラックの上部および下部にそれぞれサポート板を水平方向に配設し、各サポート板にそれぞれ燃料貯蔵用の開口部を設けた上で、上下の開口部を連通するように形成された空間により収容空間を構成してもよい。
【0070】
上記実施形態では、セル構造体の内側面に面する対向位置に、全体が矩形状の中性子吸収材15を配置するようにしたが、中性子吸収材15が平板状に構成されているのであれば、中性子吸収材15の形状は上述したものに限らない。
【0071】
上記実施形態では、断面L字形状の保持部材20(
図3〜
図5)あるいは断面矩形の枠形状の保持部材30(
図6)によって収容空間内に枠部25を構成したが、中性子吸収材15に面して収容空間12に配置され、中性子吸収材15を保持するとともに、燃料集合体101の格納部26を形成するのであれば、保持部材の構成はいかなるものでもよい。例えば保持部材20,30の一部に開口部を設け、軽量化してもよい。薄板ではなく、単なる板状部材により保持部材を構成してもよい。
【0072】
上記実施形態では、中性子吸収材15をボロン含有材によって構成し、セル構造体(バスケット10)および保持部材20,30をボロン非含有材によって構成したが、中性子吸収性能を有する他の材料(例えばカドミウム)を含んだ構成材によって中性子吸収材15を構成してもよい。バスケット10および保持部材20,30の少なくとも一方を、中性子吸収性能を有する材料によって構成することもできる。
【0073】
上記変形例(
図7)では、保持部材20の端部に折り曲げ部24を設けて収容空間12内における保持部材20の位置を拘束するように位置拘束部を構成したが、位置拘束部の構成はこれに限らない。また、保持部材30に位置拘束部を設けることもできる。
【0074】
上記変形例(
図8)では、保持部材20,30の上端部に折り曲げ部27を設けて燃料集合体101の挿入側の開口面積が増加するようにしたが、入口部を他の構成として開口面積を増加するようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態(
図5)では、角パイプ11を構成する隔壁部141〜144のうち、内側に配置される隔壁部143,144(内側隔壁部)の内側面に面して中性子吸収材15を配置し、最外部に配置される隔壁部111,112(外側隔壁部)の内側面に面しては中性子吸収材15を配置しないようにしたが、中性子吸収材15の配置パターンはこれに限定されない。
【0076】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。