(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、
前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行うとともに、前記第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更する第1フィルタ処理手段と、
前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、を備え、
前記第1フィルタ処理手段は、
前記第1制御量の変化率の正負の符号が変わったことを条件として、前記フィルタ係数を小さく変更し、
前記変化率の正負の符号が所定時間の間一定であることを条件として、前記フィルタ係数を大きく変更することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、
前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行うとともに、前記第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更する第1フィルタ処理手段と、
前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、
前記マスタ圧取得手段で取得したマスタリンダ圧に対して、フィルタ処理を行い、フィルタ処理後の値を前記制御量算出手段に出力する第2フィルタ処理手段と、を備え、
前記第2フィルタ処理手段のフィルタ処理時におけるフィルタ係数が、前記第1フィルタ処理手段のフィルタ処理時におけるフィルタ係数の可変範囲の最小値よりも大きな値に設定されていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、
前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行う第1フィルタ処理手段と、
前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、
倍力装置が正常か否かを判定する判定手段と、を備え、
前記昇圧手段は、前記判定手段によって倍力装置が正常ではないと判定された場合に、前記第2制御量で前記ポンプを制御することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した技術では、マスタシリンダ圧の検出値に対して常に細かいフィルタ処理を行うことにより、マスタシリンダ圧の検出値に急激な変化があった場合であってもフィルタ処理によって検出値の変化が抑えられるため、応答性の高い制御量を算出することができないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ポンプ作動時のブレーキ液圧の脈動の影響が除去された制御量と、応答性の高い制御量の両方を得ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行う
とともに、前記第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更する第1フィルタ処理手段と、前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、を備え
、前記第1フィルタ処理手段は、前記第1制御量の変化率の正負の符号が変わったことを条件として、前記フィルタ係数を小さく変更し、前記変化率の正負の符号が所定時間の間一定であることを条件として、前記フィルタ係数を大きく変更することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて第1制御量を算出するので、応答性の高い第1制御量を得ることができ、この第1制御量を適宜他の制御に利用することが可能となる。また、フィルタ処理された第2制御量で昇圧制御することで、ポンプ作動時のブレーキ液圧の脈動の影響を除去することができるので、安定した制御を実行することができる。
【0010】
また、前記した構成によれば、第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更するので、第1制御量の変動状態に応じた良好な制御を行うことができる。
【0012】
また、前記した構成によれば、ポンプ作動時のブレーキ液圧の脈動により第1制御量の変化率の正負の符号が頻繁に切り替わるような場合(ハンチングした場合など)には、フィルタ係数が小さく変更されて第2制御量の変化が抑えられるので、脈動の影響を除去した制御を行うことができる。また、脈動がない場合や昇圧制御に対する脈動の影響が少ない場合には、フィルタ係数が大きく変更されて第2制御量の変化が大きくなるので、応答性の高い第2制御量を算出することができる。
【0013】
また、
本発明は、マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行うとともに、前記第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更する第1フィルタ処理手段と、前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、前記マスタ圧取得手段で取得したマスタリンダ圧に対して、フィルタ処理を行い、フィルタ処理後の値を前記制御量算出手段に出力する第2フィルタ処理手段
と、を備え、前記第2フィルタ処理手段のフィルタ処理時におけるフィルタ係数が、前記第1フィルタ処理手段のフィルタ処理時におけるフィルタ係数の可変範囲の最小値よりも大きな値に設定されてい
る。
【0014】
これによれば、マスタシリンダ圧に対してフィルタ処理を行うので、マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧から最低限のノイズを除去することができる。また、第2フィルタ処理手段におけるフィルタ係数を、第1フィルタ処理手段におけるフィルタ係数の可変範囲の最小値よりも大きな値に設定することで、マスタシリンダ圧の検出値の変動を抑えすぎてしまうのを防止できるので、第1フィルタ処理手段によるフィルタ処理を行う前において、応答性の高い制御量を算出することができる。
【0015】
また、
本発明は、マスタシリンダからブレーキ液を汲み上げて、マスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように車輪ブレーキの液圧を昇圧可能なポンプを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、マスタシリンダ圧を取得するマスタ圧取得手段と、前記マスタ圧取得手段で取得したマスタシリンダ圧に基づいて、前記車輪ブレーキの液圧を前記ポンプで昇圧するための第1制御量を算出する制御量算出手段と、前記制御量算出手段で算出した前記第1制御量に対してフィルタ処理を行う第1フィルタ処理手段と、前記第1フィルタ処理手段によってフィルタ処理された第2制御量で昇圧制御する昇圧手段と、倍力装置が正常か否かを判定する判定手段
と、を備え、前記昇圧手段は、前記判定手段によって倍力装置が正常ではないと判定された場合に、前記第2制御量で前記ポンプを制御するように構成され
る。
【0016】
これによれば、倍力装置が正常ではないと判定された場合にポンプでブレーキ液圧を昇圧するフェールセーフ制御において、フィルタ処理した第2制御量でポンプ作動時のブレーキ液圧の脈動の影響を除去した安定した制御を行うことができるとともに、応答性の高い第1制御量を利用することが可能となる。
また、前記した構成において、前記第1フィルタ処理手段は、前記第1制御量の変動状態に応じてフィルタ係数を変更するのが望ましい。
また、前記した構成において、前記第1フィルタ処理手段は、前記第1制御量の変化率の正負の符号が変わったことを条件として、前記フィルタ係数を小さく変更し、前記変化率の正負の符号が所定時間の間一定であることを条件として、前記フィルタ係数を大きく変更するのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプ作動時のブレーキ液圧の脈動の影響が除去された第2制御量と、応答性の高い第1制御量の両方を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100は、車両CRの各車輪Wに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、油路(液圧路)や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部20とを主に備えている。また、この車両用ブレーキ液圧制御装置100の制御部20には、マスタ圧取得手段の一例としての圧力センサ30、負圧室圧力センサ40および車輪速センサ50が接続されており、各センサ30〜50からの信号が入力されるようになっている。
【0020】
圧力センサ30は、マスタシリンダMC内の圧力(以下、マスタシリンダ圧ともいう。)を検出(取得)するセンサであり、後述する液圧ユニット10内に設けられている(
図2参照)。
【0021】
負圧室圧力センサ40は、倍力装置の一例としてのブレーキブースタBBの負圧室内の圧力を検出するセンサであり、マスタシリンダMCとブレーキペダルBPとの間に設けられている。
【0022】
車輪速センサ50は、車輪Wの車輪速度を検出するセンサであり、各車輪Wに設けられている。
【0023】
制御部20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、各センサ30〜50からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって、制御を実行する。
【0024】
また、ホイールシリンダHは、マスタシリンダMCおよび車両用ブレーキ液圧制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Wに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0025】
図2に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置100の液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダMCと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。マスタシリンダMCの二つの出力ポートM1,M2は、ポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0026】
ここで、出力ポートM1から始まる油路は、前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は、前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
【0027】
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、この液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、オリフィス5a、調圧弁(レギュレータ)R、吸入弁7が設けられている。また、液圧ユニット10には、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ9が設けられている。このモータ9は、回転数制御可能なモータであり、本実施形態では、デューティ制御により回転数制御が行われる。
【0028】
なお、以下では、マスタシリンダMCの出力ポートM1,M2から各調圧弁Rに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統の調圧弁Rから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統の調圧弁Rから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
【0029】
制御弁手段Vは、マスタシリンダMCまたはポンプ4から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR(詳細には、ホイールシリンダH)への液圧の行き来を制御する弁であり、ホイールシリンダHの圧力を増加、保持または低下させることができる。そのため、制御弁手段Vは、入口弁1、出口弁2、チェック弁1aを備えて構成されている。
【0030】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMCとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の比例電磁弁である。そのため、入口弁1に流す駆動電流の値に応じて、入口弁1の上下流の差圧が調整可能となっている。
【0031】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Wがロックしそうになったときに制御部20により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0032】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0033】
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を貯留する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁3aが介設されている。
【0034】
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、マスタシリンダMCやリザーバ3内のブレーキ液を吸入して吐出液圧路D(車輪液圧路B)に吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3により吸収されたブレーキ液をマスタシリンダMCに戻すことができるとともに、後述するようにブレーキペダルBPの操作の有無に関わらずブレーキ液圧を発生して、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに制動力を発生することができる。
【0035】
詳しくは、ポンプ4は、車輪ブレーキFL,RR,RL,RR(ホイールシリンダH)の液圧がマスタシリンダ圧よりも高い液圧となるように、マスタシリンダMC等からブレーキ液を汲み上げて、車輪ブレーキFL,RR,RL,RRの液圧を昇圧可能となっている。なお、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量は、モータ9の回転数(デューティ比)に依存している。すなわち、モータ9の回転数(デューティ比)が大きくなると、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量も大きくなる。
【0036】
オリフィス5aは、ポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動を減衰させている。
【0037】
調圧弁Rは、通常時にマスタシリンダMCからのブレーキ液を車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに流すことを許容するとともに、ポンプ4が発生したブレーキ液圧によりホイールシリンダH側の圧力を増加するときには、この流れを遮断(車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側からマスタシリンダMC側への流れを抑止)しつつ、ホイールシリンダH側の圧力を設定値以下に調節する機能を有している。具体的に、調圧弁Rは、切換弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
【0038】
切換弁6は、マスタシリンダMCに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型の比例電磁弁である。そのため、切換弁6に入力される駆動電流の値(指示電流値)に応じて閉弁力を任意に変更することで、切換弁6の上下流の差圧が調整されて、車輪液圧路Bの圧力を設定値以下に調節可能となっている。
【0039】
チェック弁6aは、各切換弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0040】
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。吸入弁7は、例えば、ポンプ4によって各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR内の液圧を加圧するときに制御部20の制御により開弁される。
【0041】
次に、制御部20の詳細について説明する。
図3に示すように、制御部20は、主に圧力センサ30および負圧室圧力センサ40から入力された信号に基づき、液圧ユニット10内の調圧弁R(切換弁6)および吸入弁7の開閉動作ならびにモータ9の動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御している。具体的に、この制御部20は、公知のABS制御等を実行する他、ポンプ4による昇圧制御、例えばブレーキブースタBBの失陥時におけるポンプ4での昇圧制御などを実行するようになっている。
【0042】
制御部20は、判定手段21、制御量算出手段22、第1フィルタ処理手段23、記憶部24、昇圧手段25、モータ駆動部26および弁駆動部27を備えて構成されている。
【0043】
判定手段21は、負圧室圧力センサ40からの信号に基づいて、ブレーキブースタBBが正常か否かを判定する機能を有している。具体的に、判定手段21は、例えば、負圧室圧力センサ40の検出値が判定閾値を上回ったか否かを判定し、判定閾値を上回った場合に正常でないと判定する。そして、判定手段21は、判定結果を制御量算出手段22に出力する。
【0044】
制御量算出手段22は、判定手段21から出力されてくる判定結果が正常でないことを示す場合には、圧力センサ30からマスタシリンダ圧を取得し、取得したマスタシリンダ圧に基づいて、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの液圧をポンプ4で昇圧するための第1制御量を算出する機能を有している。具体的に、制御量算出手段22は、
図4に示すマップMP2とマスタシリンダ圧とに基づいて、第1制御量の一例としての要求レギュレータ圧(調圧弁Rの上下流の差圧の目標値)を算出している。
【0045】
このように、圧力センサ30で取得したマスタシリンダ圧、つまりフィルタ処理されていないマスタシリンダ圧に基づいて要求レギュレータ圧を算出することで、応答性の高い要求レギュレータ圧を得ることができるので、この応答性の高い要求レギュレータ圧を適宜他の制御に利用することが可能となっている。
【0046】
ここで、
図4に示す2種類のマップMP1,MP2は、記憶部24に記憶されており、これらのうち2点鎖線で示す第1マップMP1は、ブレーキブースタBBの正常時に対応したマップであり、マスタシリンダ圧と要求レギュレータ圧との関係が一致し、比例関係となるように設定されている。つまり、第1マップMP1は、ブレーキブースタBBの正常時を表したマップであり、切換弁6に駆動電流(指示電流)が付与されておらず、切換弁6の上下流に差圧が発生しないため、マスタシリンダ圧と要求レギュレータ圧の圧力は一致するようになっている。
【0047】
また、1点鎖線で示す第2マップMP2は、ブレーキブースタBBの異常時に対応したマップである。この第2マップMP2は、マスタシリンダ圧と要求レギュレータ圧の関係が所定の小さな値P1までは第1マップMP1と同じような比例関係となり、その後は第1マップMP1の傾きよりも大きな傾きで増加するように設定されている。
【0048】
そして、制御量算出手段22は、ブレーキブースタBBが異常時には、記憶部24から第2マップMP2を参照して要求レギュレータ圧を算出する。
【0049】
第1フィルタ処理手段23は、制御量算出手段22で算出した要求レギュレータ圧に対してフィルタ処理を行う機能を有している。具体的に、第1フィルタ処理手段23は、下記の計算式(1)に要求レギュレータ圧を代入することで、フィルタ処理された値(第2制御量)を算出している。
FPr = Pr1+Cf・(Pr2−Pr1)
FPr:フィルタ処理された要求レギュレータ圧
Pr1:要求レギュレータ圧の前回値
Pr2:要求レギュレータ圧の今回値
Cf:フィルタ係数
【0050】
そして、第1フィルタ処理手段23は、要求レギュレータ圧Prの変動状態に応じてフィルタ係数Cfを変更するように構成されている。より詳しくは、第1フィルタ処理手段23は、要求レギュレータ圧Prの変化率の正負の符号が変わったことを条件として、フィルタ係数Cfを小さく変更し、変化率の正負の符号が所定時間の間一定であることを条件として、フィルタ係数Cfを大きく変更するように構成されている。
【0051】
これにより、ポンプ4の作動時のブレーキ液圧の脈動により要求レギュレータ圧Prの変化率の正負の符号が頻繁に切り替わるような場合(ハンチングした場合)には、フィルタ係数Cfが小さく変更されて要求レギュレータ圧Prの変化が抑えられるので、脈動の影響を除去した制御を行うことが可能となっている。また、脈動がない場合(変化率の正負の符号が所定時間の間一定である場合)や昇圧制御に対する脈動の影響が少ない場合には、フィルタ係数Cfが大きく変更されて要求レギュレータ圧Prの変化が大きくなるので、応答性の高い要求レギュレータ圧FPrを算出することが可能となっている。
【0052】
ここで、フィルタ係数Cfの可変範囲は、0〜1の範囲で決めればよく、例えば0.03〜0.8とすることができる。そして、第1フィルタ処理手段23は、フィルタ処理した要求レギュレータ圧FPrを昇圧手段25に出力する。
【0053】
記憶部24には、前述したマップMP1,MP2やフィルタ係数Cf等が記憶されている。
【0054】
昇圧手段25は、第1フィルタ処理手段23からフィルタ処理された要求レギュレータ圧が出力されてきた場合(すなわち、判定手段21によってブレーキブースタBBが正常ではないと判定された場合)に、そのフィルタ処理された要求レギュレータ圧で昇圧制御するように構成されている。詳しくは、昇圧手段25は、調圧弁Rの上下流の差圧が、フィルタ処理された要求レギュレータ圧となるように、モータ駆動部26にモータ駆動の信号を出力し、調圧弁駆動部27aに要求レギュレータ圧に対応した指示電流値を指示し、吸入弁駆動部27bに吸入弁7を開く信号を出力する。
【0055】
このように、フィルタ処理された要求レギュレータ圧で昇圧制御することで、ポンプ4の作動時のブレーキ液圧の脈動の影響を除去することができるので、安定した制御を実行することが可能となっている。
【0056】
モータ駆動部26は、昇圧手段25の指示に基づきモータ9の回転数を決定し、駆動するものである。すなわち、モータ駆動部26は、回転数制御によりモータ9を駆動するものであり、例えばデューティ制御により回転数制御を行う。
【0057】
弁駆動部27は、昇圧手段25の指示に基づいて、調圧弁Rおよび吸入弁7を制御する部分である。そのため、弁駆動部27は、調圧弁駆動部27aおよび吸入弁駆動部27bを有する。
【0058】
調圧弁駆動部27aは、通常時は、調圧弁Rに電流を流さない。そして、昇圧手段25から要求レギュレータ圧に対応した指示電流値の出力があった場合には、この指示電流値に従い調圧弁Rに駆動電流を供給する。調圧弁Rに駆動電流が供給されると、調圧弁Rの上下流には、この駆動電流に応じた差圧(要求レギュレータ圧)が形成可能となり、これ以上の差圧が発生すると調圧弁Rは開弁して駆動電流に応じた差圧を維持する。その結果、車輪ブレーキ内の液圧が調圧される。
【0059】
吸入弁駆動部27bは、通常時は、吸入弁7に電流を流さない。そして、昇圧手段25から指示があった場合には、この指示に従い吸入弁7に信号を出力する。これにより、吸入弁7が開いてマスタシリンダMCからポンプ4へブレーキ液が吸入されるようになっている。
【0060】
次に、ブレーキブースタBBの異常時における制御部20の動作について
図5を参照して詳細に説明する。制御部20は、常時、
図5に示すフローチャートを繰り返し実行する。
【0061】
具体的に、この制御において、制御部20は、まず、ブレーキブースタBBが異常であるか否かを判定する(S1)。ステップS1において、制御部20は、異常でないと判定した場合には(No)、本制御を終了し、異常であると判定した場合には(Yes)、マスタシリンダ圧を取得する(S2)。
【0062】
ステップS2の後、制御部20は、取得したマスタシリンダ圧から要求レギュレータ圧を算出した後(S3)、算出した要求レギュレータ圧にフィルタ処理を実行する(S4)。ステップS4の後、制御部20は、フィルタ処理した要求レギュレータ圧に基づいてポンプ4や調圧弁R等を制御して車輪ブレーキの液圧を昇圧させる昇圧制御を実行して(S5)、本制御を終了する。
【0063】
次に、ブレーキブースタBBの異常時において算出される要求レギュレータ圧の例について
図6を参照して説明する。
【0064】
図6(a)に示すように、例えば、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んでいく途中で(時刻t1)で、ブレーキブースタBBが異常になった場合には、制御部20は、時刻t1以降でマスタシリンダ圧を取得し、取得したマスタシリンダ圧から要求レギュレータ圧Prを算出する。この際に算出する要求レギュレータ圧Prは、
図6(b)に示すように、時刻t1から駆動を開始したポンプ4の脈動の影響を大きく受けるマスタシリンダ圧から直接求めているため、同様に脈動の影響を大きく受けている。
【0065】
そのため、この要求レギュレータ圧Prは、実際のマスタシリンダ圧に対して応答性の高い値となり、他の制御に適宜利用することが可能となっている。また、この要求レギュレータ圧に対してフィルタ処理を実行すると、図に実線で示すように、フィルタ処理された要求レギュレータ圧FPrが算出される。
【0066】
これにより、ポンプ4や調圧弁Rの制御は、フィルタ処理された要求レギュレータ圧FPrに基づいて行われるので、安定した制御を実行することが可能となっている。
【0067】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前記した第1の実施形態に係る制御部20の一部の構造を変更したものであるため、第1の実施形態と略同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0068】
第2の実施形態では、第1の実施形態に係る制御部20に対し、新たな第2フィルタ処理手段28が設けられている。第2フィルタ処理手段28は、判定手段21から出力されてくる判定結果が正常でないことを示す場合には、圧力センサ30からマスタシリンダ圧を取得し、取得したマスタシリンダ圧に対して、フィルタ処理を行い、フィルタ処理後の値を制御量算出手段22に出力する機能を有している。
【0069】
具体的に、第2フィルタ処理手段28のフィルタ処理時におけるフィルタ係数は、第1フィルタ処理手段23のフィルタ処理時におけるフィルタ係数の可変範囲の最小値よりも大きな値に設定されている。すなわち、第2フィルタ処理手段28によるフィルタ処理は、ある程度緩めのフィルタ処理となっている。
【0070】
このような第2フィルタ処理手段28を有する制御部20では、
図8に示すようなフローチャートに従って制御が行われている。
図8に示すフローチャートでは、
図5に示すフローチャートにおけるステップS2とステップS3の間に、緩めのフィルタ処理(入力値に対する出力値の変化が小さいフィルタ処理)を実行するステップS10の処理が追加されている。
【0071】
このような制御部20では、マスタシリンダ圧に対して緩めのフィルタ処理を行うので、圧力センサ30で取得したマスタシリンダ圧から最低限のノイズを除去することが可能となっている。また、第2フィルタ処理手段28におけるフィルタ係数を、第1フィルタ処理手段23におけるフィルタ係数の可変範囲の最小値よりも大きな値に設定することで、マスタシリンダ圧の検出値の変動を抑えすぎてしまうのを防止できるので、第1フィルタ処理手段23によるフィルタ処理を行う前において、応答性の高い第1制御量を算出することが可能となっている。
【0072】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、第1制御量の一例として要求レギュレータ圧を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車輪ブレーキ(ホイールシリンダ内)の目標液圧(要求キャリパ圧)を第1制御量としてもよい。
【0073】
前記実施形態では、ブレーキブースタBBの異常時における制御に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、例えばブレーキアシスト制御等に本発明を適用してもよい。
【0074】
前記実施形態では、ブレーキブースタBBとして負圧によって作動するものを例示したが、本発明はこれに限定されず、油圧によって作動するものや、電動モータによってピストンを直接作動させるものであってもよい。