特許第5787868号(P5787868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787868
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   G03G21/00 398
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-282282(P2012-282282)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126651(P2014-126651A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2014年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】友藤 真司
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−173744(JP,A)
【文献】 特開2004−012868(JP,A)
【文献】 特開平05−346832(JP,A)
【文献】 特開2012−074933(JP,A)
【文献】 特開2011−237520(JP,A)
【文献】 特開2003−348819(JP,A)
【文献】 特開平05−115124(JP,A)
【文献】 特開2008−079376(JP,A)
【文献】 特開2012−131202(JP,A)
【文献】 特開2012−137716(JP,A)
【文献】 特開2013−099110(JP,A)
【文献】 特開2014−121805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
B41J 29/38
H04N 1/00
G06F 3/12
G06F 1/26−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1負荷を含む複数の負荷に電力を供給する通常動作モードと、少なくとも前記第1負荷を含む一部の負荷だけに電力を供給する省電力モードのいずれかに切り替えて各負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記複数の負荷に電力を供給可能な第1電源と、
前記第1電源よりも出力電流容量の小さい第2電源と、
前記第1負荷の動作中の消費電流を検知する電流検知手段と、
前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であるかどうかを判定する判定手段と、
前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であると前記判定手段によって判定された場合に、前記省電力モードにおいて前記第2電源から前記第1負荷に電力を供給し、前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量よりも大きいと前記判定手段によって判定された場合に、前記省電力モードにおいて前記第1電源から前記第1負荷に電力を供給する供給制御手段と、を具備する電源装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記通常動作モードから前記省電力モードに切り替えるための切替条件が満たされた場合に、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であるかどうかを判定する請求項に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1負荷は、前記第1負荷を除く他の負荷に対する動作指示を示す信号の入力を受け付ける入力受付部である請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1電源から前記第1負荷を除く他の負荷に電力を供給するための第1給電経路と、
前記第1給電経路を導通又は遮断する第1スイッチ回路と、
前記第2電源から前記第1負荷に電力を供給するための第2給電経路と、
前記第2給電経路を導通又は遮断する第2スイッチ回路と、
前記第1電源から前記第1負荷に電力を供給するための第3給電経路と、
前記第3給電経路を導通又は遮断する第3スイッチ回路と、を更に備え、
前記供給制御手段は、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であると判定された場合に、前記第1スイッチ回路で前記第1給電経路を遮断し、前記第2スイッチ回路で前記第2給電経路を導通し、前記第3スイッチ回路で前記第3給電経路を遮断するようにスイッチング制御し、前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記第1スイッチ回路で前記第1給電経路を遮断し、前記第2スイッチ回路で前記第2給電経路を遮断し、前記第3スイッチ回路で前記第3給電経路を導通するようにスイッチング制御するものである請求項1からのいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の電源装置と、
被記録媒体に対して画像形成を行う前記第1負荷を除く他の負荷としての画像形成部と、
前記画像形成部に対する印刷指示を示す信号の入力を受け付ける前記第1負荷としての入力受付部と、を具備する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1負荷を含む複数の負荷に電力を供給する通常動作モードと、少なくとも前記第1負荷を含む一部の負荷だけに電力を供給する省電力モードのいずれかに切り替えて各負荷に電力を供給する電源装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター、ファクシミリなどの画像形成装置では、印刷指示が入力されたときにすぐに動作可能な状態で待機させておく通常動作モードと、一部の構成要素だけに電力を供給して装置の消費電力を抑えた状態で待機させておく省電力モード(スリープモードともいう。)と、を有している。例えば、電源投入後から印刷指示が入力されるまでの待機時間が所定時間以内の場合は、画像形成装置は前記通常動作モードで動作し、前記待機時間が前記所定時間を超えた場合は、前記所定時間の経過後に前記通常動作モードから前記省電力モードに移行するように制御される。また、特許文献1には、前記省電力モードのときは主制御部を除く被制御部への電力供給を停止し、前記待機状態が更に継続した場合に、前記主制御部への電力供給さえも停止させて、省電力効果をより一層高めた画像形成装置が開示されている。
【0003】
この種の画像形成装置の電源装置には、DC/DCコンバーターなどの電力変換器が備えられている。この電力変換器は、外部からの商用電力を画像形成装置内の各駆動部に適した電力に変換してから、各駆動部に供給している。具体的には、AC100Vの商用電力を直流に変換し、更に駆動部に適した電圧に昇圧又は降圧させてから各駆動部に供給している。しかしながら、一般に、前記電力変換器の変換効率は、電力変換器の出力電流容量に対する負荷電流の比率が大きいほど良く、前記比率が小さいほど悪い。そのため、前記通常動作モード及び前記省電力モードそれぞれの動作において共通の電力変換器から電力を供給する構成では、前記省電力モードのときは消費電流が小さいため、前記比率が極めて小さくなる。その結果、前記電力変換器の変換効率が極めて悪くなり、十分な省電力効果を得られない場合がある。このため、従来の画像形成装置では、比較的容量の大きい大容量タイプの電力変換器と小容量タイプの電力変換器とを個別に設けて、前記通常動作モードのときは大容量タイプの電力変換器から各負荷に電力を供給し、前記省電力モードのときは小容量タイプの電力変換器から一部の負荷だけに電力を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−334304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成装置が省電力モードのときは、外部から印刷指示を受けつけた場合に前記通常動作モードに移行させなければならないため、前記省電力モードのときでも前記印刷指示を受け付けるインターフェース部には電力が供給される。このため、前記省電力モードのときに使用される小容量タイプの電力変換器の出力電流容量は、前記インターフェース部の負荷電流を基準に設定される。この場合、小容量タイプの電力変換器の出力電流容量を、前記インターフェース部の負荷電流の比率が大きくなるように設定することで、前記小容量タイプの電力変換器の変換効率を良くすることができ、省電力効果を高めることができる。
【0006】
しかしながら、前記インターフェース部の負荷電流は個体ごとにばらつきがあるため、そのばらつきを考慮して、前記電力変換器の出力電流容量が設定されると、前記出力電流容量に対する前記インターフェース部の負荷電流の比率が最大とはならず、高い省電力効果を得ることができない。また、負荷電流が他のインターフェース部よりも突出して大きなインターフェース部が画像形成装置に組み込まれている場合があり、このようなケースを想定して前記電力変換器の出力電流容量が設定されると、前記出力電流容量に対する前記インターフェース部の負荷電流の比率が必然的に小さくなってしまい、結局のところ、高い変換効率で前記小容量の電力変換器を使用することができなくなり、十分な省電力効果を得られなくなる。
また、近年、画像形成装置に用いられる互換性の高い多種多様の高機能な電子デバイスが流通しており、例えば、画像形成装置の前記インターフェース部が互換性のある他のインターフェース部に取り替えられて使用される場合がある。この場合、取り替えられたインターフェース部の負荷電流が当初取り付けられていたインターフェース部の負荷電流よりも高い場合は、インターフェース部の負荷電流が前記電力変換器の容量を超えてしまい、前記インターフェース部が誤動作したり、前記電力変換器が破損したりするおそれがある。
もちろん、このような問題は、前記インターフェース部に限られず、画像形成装置が省電力モードにあるときに電力供給されるデバイスに対して生じうる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、省電力モードのときに電力が供給される負荷における消費電流のばらつきに関係なく、前記負荷に対して十分な電力を供給しつつ高い省電力効果を奏することが可能な電源装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、第1負荷を含む複数の負荷に電力を供給する通常動作モードと、少なくとも前記第1負荷を含む一部の負荷だけに電力を供給する省電力モードのいずれかに切り替えて各負荷に電力を供給する電源装置として構成されている。この電源装置は、前記複数の負荷に電力を供給可能な第1電源と、前記第1電源よりも出力電流容量の小さい第2電源と、前記第1負荷の動作中の消費電流を検知する電流検知手段と、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であるかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、前記省電力モードにおいて前記第1電源又は前記第2電源のいずれかから前記第1負荷へ電力を供給する供給制御手段と、を具備する。
【0009】
このように、前記第1負荷が前記第2電源の出力電流容量以下であるかどうかの判定結果に基づいて、前記省電力モードにおいて前記第1負荷へ供給する電力の供給源が前記第1電源又は前記第2電源のいずれかに決定されて、前記省電力モードの際に前記第1電源又は前記第2電源のいずれかから電力が前記第1負荷に供給される。これにより、前記省電力モードにおいて、前記第1負荷を流れる実際の消費電流がいくつであっても、前記第1負荷に対して前記第1電源又は前記第2電源のいずれかから必要とされる十分な電力を供給することができる。
【0010】
(2) 前記供給制御手段は、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であると判定された場合に、前記第2電源から前記第1負荷に電力を供給する。また、前記供給制御手段は、前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記第1電源から前記第1負荷に電力を供給する。これにより、前記第1負荷の消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下の場合は、第1電源よりも小容量の第2電源から電力が供給されることになるので、第2電源は高い変換効率で使用されることになり、第2電源における省電力効果を高めることができる。また、前記第1負荷の消費電流が前記第2電源の出力電流容量よりも大きい場合は、第2電源から無理に電力供給されるのではなく、第2電源よりも大容量の第1電源から前記第1負荷に十分な電力が供給されることになる。このため、第2電源から供給した場合に生じる電力不足による第1負荷の誤動作や電力供給不足による第2電源の故障などの不具合を解消することができ、省電力モードにおいて安定して第1負荷を動作させることができる。
【0011】
(3) 前記判定手段は、前記通常動作モードから前記省電力モードに切り替えるための切替条件が満たされた場合に、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であるかどうかを判定する。なお、前記切替条件としては、例えば、一定時間前記第1負荷を除く負荷に対して動作指示が入力されなかったことなどが考えられる。
【0012】
(4) 前記第1負荷は、前記第1負荷を除く他の負荷に対する動作指示を示す信号の入力を受け付ける入力受付部である。例えば、前記第1負荷は、前記動作指示の信号を検知して受け入れるインターフェース部である。
【0013】
(5) 本発明の電源装置は、前記第1電源から前記第1負荷を除く他の負荷に電力を供給するための第1給電経路と、前記第1給電経路を導通又は遮断する第1スイッチ回路と、前記第2電源から前記第1負荷に電力を供給するための第2給電経路と、前記第2給電経路を導通又は遮断する第2スイッチ回路と、前記第1電源から前記第1負荷に電力を供給するための第3給電経路と、前記第3給電経路を導通又は遮断する第3スイッチ回路と、を更に備える。この構成において、前記供給制御手段は、前記電流検知手段によって検知された前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量以下であると判定された場合に、前記第1スイッチ回路で前記第1給電経路を遮断し、前記第2スイッチ回路で前記第2給電経路を導通し、前記第3スイッチ回路で前記第3給電経路を遮断するようにスイッチング制御し、前記消費電流が前記第2電源の出力電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記第1スイッチ回路で前記第1給電経路を遮断し、前記第2スイッチ回路で前記第2給電経路を遮断し、前記第3スイッチ回路で前記第3給電経路を導通するようにスイッチング制御するものである。このように構成されることで、本発明が具体的に実現される。
【0014】
(6) 本発明は、上述に記載の電源装置と、被記録媒体に対して画像形成を行う前記第1負荷を除く他の負荷としての画像形成部と、前記画像形成部に対する印刷指示を示す信号の入力を受け付ける前記第1負荷としての入力受付部と、を具備する画像形成装置として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記省電力モードにおいて前記第1負荷を流れる実際の消費電流がいくつであっても、前記第1負荷に対して十分な電力を供給することができ、且つ、高い省電力効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る複合機Xの概略構成を模式的に示す模式構成図である。
図2】複合機Xの概略構成を示すブロック図である。
図3】電源装置60の構成を示す模式構成図である。
図4】電源装置60の電源制御部62によって実行される動作モード切替制御手順の一例を示すフローチャートである。
図5】電源装置60の動作状態を示す模式構成図である。
図6】電源装置60の動作状態を示す模式構成図である。
図7】電源装置60の動作状態を示す模式構成図である。
図8】電源装置60の動作状態を示す模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[複合機Xの概略構成]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る電源装置60(本発明の電源装置の一例)及びこの電源装置60を備えた複合機X(本発明の画像形成装置の一例)の概略構成について説明する。
【0019】
図1及び図2に示されるように、複合機Xは、画像読取部10、原稿カバー20、ADF(自動原稿送り装置)21、画像形成部22(本発明の画像形成部の一例)、操作表示部24(図2参照)、給紙カセット25、NIC(ネットワークインターフェースカード)42(図2参照)、及びこれらを制御する主制御部50(図2参照)を備えている。また、複合機Xは、画像読取部10や、画像形成部22、操作表示部24、NIC42、主制御部50などに必要な電力を供給する電源装置60を備えている。ここで、NIC42は、本発明の第1負荷及び入力受付部の一例である。また、NIC42を除く他の構成要素、具体的には、主制御部50、画像読取部10、ADF21、画像形成部22などは本発明の他の負荷の一例である。なお、本実施形態では、本発明の画像形成装置の一例として複合機Xを例示して説明するが、これに限られず、例えばプリンター、ファクシミリ装置、複写機も本発明の画像形成装置に該当する。
【0020】
画像読取部10は、原稿から画像データを読み取る画像読取処理を実行するものである。図1に示されるように、画像読取部10は、コンタクトガラス11、読取ユニット12、ミラー13,14、光学レンズ15、及びCCD16などを備えている。
【0021】
読取ユニット12は、LED光源121及びミラー122を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーターを用いた不図示の移動機構によって副走査方向55(図1における左右方向)へ移動可能に構成されている。そして、前記駆動モーターにより読取ユニット12が副走査方向55へ移動されると、LED光源121から画像読取部10の上面に設けられたコンタクトガラス11へ向けて照射される光が副走査方向55へ走査される。
【0022】
ミラー122は、LED光源121から光が照射されたときに、原稿又は原稿カバー20の裏面で反射した反射光をミラー13へ向けて反射させる。ミラー122で反射した光は、ミラー13,14によって光学レンズ15に導かれる。光学レンズ15は、入射した光を集光してCCD16に入射させる。
【0023】
CCD16は、受光した光をその光量(輝度の強度)に応じた電気信号(電圧)に変換して主制御部50へ出力する光電変換素子である。主制御部50では、CCD16からの電気信号を画像処理することによって原稿の画像データを生成する。なお、本実施形態では、撮像素子としてCCD16を用いた例について説明するが、CCD16による読取機構に代えて、CCD16よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS: Contact Image Sensor)を用いた読取機構を適用することも可能である。
【0024】
画像読取部10には、原稿カバー20が回動自在に設けられている。原稿カバー20が回動操作されることによって、画像読取部10の上面のコンタクトガラス11が開閉される。原稿カバー20の回動支持部には、リミットスイッチなどのカバー開検出センサー(不図示)が設けられており、ユーザーが原稿の画像を読み取らせようとして原稿カバー20が開けられると、前記カバー開検出センサーが作動して、その検出信号(カバー開検出信号)が電源装置60の電源制御部62に出力される(図2参照)。
【0025】
ここで、画像読取部10による原稿画像の読み取りは、以下の手順で行われる。まず、原稿がコンタクトガラス11上に載置され、その後、原稿カバー20が閉姿勢にされる。その後、操作表示部24から画像読取指示が入力されると、読取ユニット12を副走査方向55の右向きへ移動させつつLED光源121から連続して順次1ライン分の光が照射させる。そして、原稿又は原稿カバー20の裏面からの反射光がミラー122,13,14及び光学レンズ15を介してCCD16に導かれ、CCD16にて受光した光量に応じた光量データが順次主制御部50に出力される。主制御部50では、光が照射された領域全体における光量データが得られると、その光量データを処理することによって、前記光量データから原稿の画像データを生成する。
【0026】
なお、原稿カバー20には、ADF21が設けられている。ADF21は、原稿セット部21Aにセットされた一以上の原稿を複数の搬送ローラーによって順次搬送して、コンタクトガラス11上に定められた自動原稿読取位置を副走査方向55の右向きへ通過するように原稿を移動させるものである。ADF21による原稿の移動時は、前記自動原稿読取位置の下方に読取ユニット12が配置され、この位置で読取ユニット12によって移動中の原稿の画像が読み取られる。原稿セット部21Aには、接点信号を出力可能な機械的な原稿検出センサー(不図示)が設けられており、原稿セット部21Aに原稿がセットされると、前記原稿検出センサーが作動して、その検出信号(原稿検出信号)が電源装置60の電源制御部62に出力される(図2参照)。
【0027】
図1に示されるように、画像形成部22は、画像読取部10で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置からNIC42を通じて入力された印刷ジョブに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。具体的には、画像形成部22は、感光体ドラム31、帯電装置32、現像装置33、トナーコンテナ34、転写ローラー35、除電装置36、定着ローラー37、加圧ローラー38などを備えている。なお、本実施形態では、電子写真方式の画像形成部22を例にして説明するが、画像形成部22は電子写真方式のものに限られず、インクジェット記録方式のものであっても、或いはそれ以外の記録方式又は印刷方式のものであってもかまわない。
【0028】
ここで、画像形成部22では、給紙カセット25から供給される印刷用紙に対する画像形成処理が以下の手順で行われる。まず、NIC42を通じて印刷指示を含む印刷ジョブが入力されると、帯電装置32によって感光体ドラム31が所定の電位に一様に帯電される。次に、不図示のレーザスキャナユニット(LSU)により感光体ドラム31の表面に前記印刷ジョブに含まれる画像データに基づく光が照射される。これにより、感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム31上の静電潜像は現像装置33によってトナー像として現像(可視像化)される。なお、現像装置33には、トナーコンテナ34からトナー(現像剤)が補給される。続いて、感光体ドラム31に形成されたトナー像は転写ローラー35によって印刷用紙に転写される。その後、印刷用紙に転写されたトナー像は、その印刷用紙が定着ローラー37及び加圧ローラー38の間を通過して排出される際に定着ローラー37で加熱されて溶融定着する。なお、感光体ドラム31の電位は除電装置36で除電される。
【0029】
操作表示部24は、各種操作キーや液晶ディスプレイなどを備えて構成されている。操作キーとして、例えば、原稿の読取開始指示を入力するためのスタートボタン、読み取りを中断させるストップボタン、テンキー、十字キーなどが配列されている。複合機Xでは、操作表示部24から入力された種々の動作指示にしたがって、画像読取処理や画像形成処理が実行される。なお、ユーザーが画像読取動作や画像形成動作を実行させるために前記操作キーを操作すると、前記操作キーの接点信号が操作入力信号として操作表示部24から電源装置60の電源制御部62に出力される(図2参照)。
【0030】
NIC42は、例えば標準規格IEEE802.3に準拠したLAN及びインターネット等からなるネットワークを通じて、外部の情報処理装置との間で印刷ジョブの入力を受け付ける通信インターフェースカードである。具体的には、複合機X内に設けられた図示しない拡張スロットに差し込んで使用される拡張カードの一種である。NIC42には、LANやインターネットなどのネットワークと通信するための電子的な回路が実装されている。NIC42は、前記拡張スロットに対して着脱可能に構成されており、NIC42が前記拡張スロットに装着されることによって、複合機Xにネットワーク通信機能が追加される。NIC42は、前記情報処理装置から有線又は無線などのデータ伝送媒体を介して印刷ジョブを受信すると、受信したことを示す受信信号を電源装置60の電源制御部62に出力する。
【0031】
なお、前記拡張スロットには、NIC42だけが装着可能なのではなく、NIC42と同じ機能を有する装着互換性のある他のNICも装着可能となっている。
【0032】
主制御部50は、複合機Xの動作を制御するものである。主制御部50は、CPU、ROM、RAM、EEPROMを主な構成要素とするマイクロコンピュータが実装された制御基板として構成されている。また、主制御部50には、図示しないモータードライバーや液晶コントローラーなどの制御デバイスも搭載されている。図2に示されるように、主制御部50には、画像読取部10、画像形成部22、操作表示部24、駆動モーター41、NIC42などが内部バス56を介して電気的に接続されている。この内部バス56にはアドレスバスやデータバス、制御信号線が含まれる。主制御部50は、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUが実行することにより、複合機Xを統括的に制御する。なお、主制御部50は集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0033】
電源装置60は、複合機Xの構成要素である主制御部50、画像読取部10、ADF21、画像形成部22、操作表示部24、NIC42などに対して、これらの構成要素が必要としている電力を供給するものである。図2に示されるように、電源装置60は、主制御部50、画像読取部10、ADF21、画像形成部22、操作表示部24、NIC42それぞれと電源ケーブル(図2線参照)で接続されており、電源装置60から各構成要素それぞれに電力を供給できるように構成されている。電源装置60には、不図示の整流回路によって商用電源であるAC100Vを整流して変換されたDC24Vが供給されており、この電源装置60内で、DC24Vが更にDC18V、DC5V、DC3.3Vに変換されて各構成要素に供給される。なお、以下においては、説明の簡便化のため、主制御部50、画像読取部10、ADF21、画像形成部22、操作表示部24を駆動部45と総称する。
【0034】
[電源装置60の構成]
次に、図3を参照して、電源装置60の構成について詳細に説明する。図3に示されるように、電源装置60は、電源制御部62(本発明の判定手段及び供給制御手段の一例)と、電源ユニット63と、FET(電界効果トランジスタ)に代表されるNPN型の4つのトランジスタ64〜67と、電流検出回路68(本発明の電流検知手段の一例)と、を備えている。
【0035】
図3に示されるように、電源ユニット63は、通常動作用コンバーター(以下「N−コンバーター」という。)63A(本発明の第1電源の一例)と、省電力動作用コンバーター(以下「S−コンバーター」という。)63B(本発明の第2電源の一例)と、を有する。電源装置60に外部から供給されたDC24Vは、N−コンバーター63A及びS−コンバーター63Bそれぞれに入力されている。N−コンバーター63A及びS−コンバーター63Bは、いずれも、入力された直流電圧(DC24V)を予め定められた電圧に変換するものである。
【0036】
N−コンバーター63Aは、NIC42及び駆動部45などの複合機X内の全ての負荷機器に必要な電力を供給するものであり、その出力電流容量は、NIC42及び駆動部45それぞれにおける負荷電流の合計値よりも大きな値に設定されている。具体的には、NIC42及び駆動部45で消費される最大消費電流に所定の安全率を乗じた値に設定されている。
【0037】
S−コンバーター63Bは、NIC42に必要な電力を供給するものであり、その出力電流容量は、NIC42の負荷電流よりも大きな値に設定されている。具体的には、NIC42で消費される最大消費電流に所定の安全率を乗じた値に設定されている。なお、NIC42は、複合機Xのメーカーが複合機Xに適合するものとして用意又は製造したものである。本実施形態では、このようなNIC42の負荷電流を基準にしてS−コンバーター63Bの出力電流容量が定められているのであって、NIC42の拡張スロットに接続可能な互換性のある他のNICの負荷電流を基準にして前記出力電流容量が定められるわけではない。
【0038】
ここで、N−コンバーター63AはNIC42だけでなく駆動部45にも電力を供給するものであるのに対して、S−コンバーター63BはNIC42だけに電力を供給するものである。したがって、S−コンバーター63Bの出力電流容量は、N−コンバーター63Aの出力電流容量よりも十分に小さいものが用いられている。
【0039】
電源制御部62は、CPU、ROM、RAM、EEPROMなどを主な構成要素とするマイクロコンピュータが実装された制御基板として構成されている。また、電源制御部62には、図示しない内部タイマーなどの制御デバイスも搭載されている。電源制御部62は、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUが実行することにより、図4のフローチャートに示される手順にしたがって後述の動作モード切替制御が行われる。なお、電源制御部62は、集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0040】
電源制御部62は、電源ユニット63からNIC42や駆動部45へ出力される電力の供給を制御する。具体的には、複合機Xの動作モードを、通常動作モードと省電力動作モードとに切り替える制御を行う。ここで、前記通常動作モードとは、N−コンバーター63AからNIC42及び駆動部45に電力を供給してNIC42及び駆動部45を動作させる動作モードのことである。また、前記省電力動作モードとは、N−コンバーター63A又はS−コンバーター63Bのいずれか一方からNIC42だけに電力を供給してNIC42を動作させる動作モードのことであり、前記通常動作モードよりも省電力効果が高い動作モードである。本実施形態においては、前記省電力モードには、第1省電力モードと第2省電力モードの2種類のモードがある。前者の第1省電力モードは、S−コンバーター63BからNIC42だけに電力を供給してNIC42を動作させる動作モードであり、後者の第2省電力モードは、N−コンバーター63AからNIC42だけに電力を供給してNIC42を動作させる動作モードである。以下、前記第1省電力モード及び前記第2省電力モードを総称して省電力モードという。これらの動作モードについては後述する。
【0041】
複合機Xが前記通常動作モードで動作しているときは、NIC42や駆動部45に常時電力が供給されている。そのため、印刷ジョブや原稿読取指示が入力されると、直ちに画像形成処理又は画像読取処理が実行される。一方、複合機Xが前記省電力モードで動作しているときは、印刷ジョブや原稿読取指示が入力されてから、駆動部45に電力が供給される。そのため、画像形成部22の定着ローラー37が所定温度になるまで、又は読取ユニット12のLED光源121の輝度が安定するまでの待機時間が必要であり、この待機時間の経過後に画像形成処理又は画像読取処理が実行される。
【0042】
電流検出回路68は、NIC42が動作中に消費する消費電流を測定するものであり、電流検出アンプ(電流検出器)69と、シャント抵抗70と、により構成されている。電流検出アンプ69の2つの入力端子69A,69B間にシャント抵抗70が接続されている。また、電流検出アンプの−側の端子69BはNIC42の入力端子42Aに接続されており、+側の端子69Aはトランジスタ66のエミッタに接続されている。電流検出アンプ69は、シャント抵抗70に流れる電流による電圧を差動増幅し、電圧信号として電源制御部62に出力している。
【0043】
トランジスタ67(本発明の第1スイッチ回路の一例)は、N−コンバーター63Aから駆動部45に電力を供給するための給電経路81(本発明の第1給電経路の一例、図3線参照)を導通又は遮断するものである。トランジスタ67のコレクタはN−コンバーター63Aの出力端子63A1に接続されており、エミッタは駆動部45の入力端子45Aに接続されており、ベースは電源制御部62の信号出力端子62Dに接続されている。電源制御部62によって信号出力端子62DからHIGHレベルの制御信号が出力されると、その信号がトランジスタ67のベースに入力されて、トランジスタ67のコレクタとエミッタとが導通する。これにより、N−コンバーター63Aから駆動部45に電力が供給される。一方、信号出力端子62Dからの前記制御信号が無くなると、トランジスタ67のコレクタとエミッタとの間が遮断される。これにより、N−コンバーター63Aから駆動部45への電力供給が停止される。
【0044】
トランジスタ64(本発明の第2スイッチ回路の一例)は、S−コンバーター63BからNIC42に電力を供給するための給電経路82(本発明の第2給電経路の一例、図3線参照)を導通又は遮断するものである。トランジスタ64のコレクタはS−コンバーター63Bの出力端子63B1に接続されており、エミッタはNIC42の入力端子42Aに接続されており、ベースは電源制御部62の信号出力端子62Aに接続されている。電源制御部62によって信号出力端子62AからHIGHレベルの制御信号が出力されると、その信号がトランジスタ64のベースに入力されて、トランジスタ64のコレクタとエミッタとが導通する。これにより、S−コンバーター63BからNIC42に電力が供給される。一方、信号出力端子62Aからの前記制御信号が無くなると、トランジスタ64のコレクタとエミッタとの間が遮断される。これにより、S−コンバーター63BからNIC42への電力供給が停止される。
【0045】
トランジスタ65(本発明の第3スイッチ回路の一例)は、N−コンバーター63AからNIC42に電力を供給するための給電経路83(本発明の第3給電経路の一例、図3線参照)を導通又は遮断するものである。トランジスタ65のコレクタはN−コンバーター63Aの出力端子63A1に接続されており、エミッタはNIC42の入力端子42Aに接続されており、ベースは電源制御部62の信号出力端子62Bに接続されている。電源制御部62によって信号出力端子62BからHIGHレベルの制御信号が出力されると、その信号がトランジスタ65のベースに入力されて、トランジスタ65のコレクタとエミッタとが導通する。これにより、N−コンバーター63AからNIC42に電力が供給される。一方、信号出力端子62Bからの前記制御信号が無くなると、トランジスタ65のコレクタとエミッタとの間が遮断される。これにより、N−コンバーター63AからNIC42への電力供給が停止される。
【0046】
トランジスタ66は、N−コンバーター63Aから電流検出回路68及びNIC42に電力を供給するための給電経路84(図3線参照)を導通又は遮断するものである。トランジスタ66のコレクタはN−コンバーター63Aの出力端子63A1に接続されており、エミッタは電流検出回路68のシャントント抵抗70の一端に接続されており、ベースは電源制御部62の信号出力端子62Cに接続されている。なお、シャント抵抗70の他端はNIC42の入力端子42Aに接続されている。電源制御部62によって信号出力端子62CからHIGHレベルの制御信号が出力されると、その信号がトランジスタ66のベースに入力されて、トランジスタ66のコレクタとエミッタとが導通する。これにより、N−コンバーター63AからNIC42に電力が供給されるとともに、シャント抵抗70に電流が流れる。一方、信号出力端子62Cからの前記制御信号が無くなると、トランジスタ66のコレクタとエミッタとの間が遮断される。これにより、N−コンバーター63AからNIC42及び電流検出回路68への電力供給が停止される。
【0047】
次に、図4のフローチャート及び図5乃至図8の模式図を参照して、電源制御部62によって実行される動作モード切替制御の手順の一例について説明する。図4中のS11、S12、…は処理手順(ステップ)の番号を表している。また、図4中の記号TRはトランジスタを表している。これらの処理手順にしたがって各処理が電源制御部62によって実行されることにより、電源制御部62が本発明の判定手段及び供給制御手段として実現される。なお、図5は、前記通常動作モードのときの電源装置60の動作状態が示されている。図6は、電流検出時の電源装置60の動作状態が示されている。図7は前記第1省電力モードのときの電源装置60の動作状態が示されている。図8は前記第2省電力モードのときの電源装置60の動作状態が示されている。
【0048】
(ステップS11)
まず、複合機Xの主電源が投入されると、電源制御部62は、複合機Xを前記通常動作モードで動作させるように制御する。具体的には、図5に示されるように、電源制御部62は、トランジスタ65及びトランジスタ67それぞれのベースに制御信号を出力して、トランジスタ65及びトランジスタ67を作動させる。なお、トランジスタ64,66は作動させない。これにより、N−コンバーター63Aから給電経路83を介してNIC42に電力が供給され、また、N−コンバーター63Aから給電経路81を介して駆動部45に電力が供給される。
【0049】
(ステップS12)
ステップS12では、電源制御部62は、複合機Xが前記通常動作モードで動作しているときに、予め定められた設定時間内に印刷ジョブが入力されたかどうかを判定する。具体的には、外部のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置からネットワークを介して送信された印刷ジョブがNIC42で受信されると、その受信信号がNIC42から電源制御部62に出力されるから、電源制御部62は、その受信信号を受信したときから内部タイマーを作動させて、前記設定時間が経過するまでカウントする。ステップS12において、前記設定時間内に前記印刷ジョブが入力された場合は、前記通常動作モードでの動作を継続する。一方、ステップS12において、前記設定時間内に前記印刷ジョブが入力されなかった場合は、次のステップS13に進む。
【0050】
(ステップS13)
ステップS13では、電源制御部62は、NIC42が動作しているときのNIC42の消費電力を検出する処理が行われる。具体的には、図6に示されるように、電源制御部62は、トランジスタ65及びトランジスタ67への制御信号を停止して、トランジスタ66のベースに制御信号を出力して、トランジスタ66を作動させる。なお、トランジスタ64は作動させない。これにより、N−コンバーター63Aから給電経路84を介してNIC42とシャント抵抗70とに電流が流れる。このとき、電流検出アンプ69は、シャント抵抗70の両端の電圧を差動増幅して、電圧信号を電源制御部62に出力するから、電源制御部62は、前記電圧信号と電流検出アンプ69の内部抵抗からNIC42の消費電流を算出する。算出された消費電流の値は、電源制御部62のRAMなどに一時的に記憶される。その後、ステップS14に進む。
【0051】
(ステップS14〜S16)
ステップS14では、電源制御部62は、ステップS13で測定された消費電流と予め定められた閾値とを比較判定する処理を行う。本実施形態では、前記閾値は、S−コンバーター63Bの出力電流容量と同じ値に定められている。つまり、ステップS14では、ステップS13で測定された消費電流とS−コンバーター63Bの出力電流容量とが比較判定される。ステップS14において、前記消費電流が前記閾値以下、つまり、前記消費電流がS−コンバーター63Bの出力電流容量以下であると判定された場合は、S−コンバーター63BでNIC42を動作させることができるため、次のステップS15に進んで、前記第1省電力モードで複合機Xを動作させる。具体的には、図7に示されるように、電源制御部62は、トランジスタ66への制御信号を停止して、トランジスタ64のベースに制御信号を出力して、トランジスタ64を作動させる。なお、トランジスタ6,67は作動させない。これにより、S−コンバーター63Bから給電経路82を介してNIC42だけに電力が供給される。
【0052】
一方、ステップS14において、前記消費電流が前記閾値よりも大きい、つまり、前記消費電流がS−コンバーター63Bの出力電流容量よりも大きいと判定された場合は、S−コンバーター63BではNIC42を動作させるには電力が不足するため、次のステップS16に進んで、前記第2省電力モードで複合機Xを動作させる。具体的には、図8に示されるように、電源制御部62は、トランジスタ66への制御信号を停止して、トランジスタ6のベースに制御信号を出力して、トランジスタ6を作動させる。なお、トランジスタ64,6は作動させない。これにより、S−コンバーター63Bよりも出力電流容量の大きいN−コンバーター63Aから給電経路83を介してNIC42だけに電力が供給される。
【0053】
(ステップS17)
ステップS15又はステップS16の処理が終了すると、次のステップS17では、電源制御部62は、省電力モードを解除して通常動作モードへ移行させるための解除条件が成立したかどうかを判定する。具体的には、外部の情報処理装置から印刷ジョブが入力された場合にNIC42から出力される受信信号を受信したときに、前記解除条件が成立したと判定する。また、電源制御部62は、ADF21の原稿セット部21Aに原稿がセットされたときに出力される原稿検出信号や、原稿カバー20を開けたとき出力されるカバー開検出信号、操作表示部24からに出力される操作入力信号などを受信したときに、前記解除条件が成立したと判定してもよい。このように、前記解除条件が成立したと判定されると、電源制御部62は、ステップS11に戻って、複合機Xを前記通常動作モードで動作させる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の複合機Xには上述の電源装置60が設けられているため、前記通常動作モードから前記省電力モードに移行する条件が成立した場合は、装着されているNIC42の消費電流が計測され、その消費電流値がS−コンバーター63Bの出力電流容量以下であるかどうかの比較判定処理が電源制御部62によって行われる。そして、前記消費電流値がS−コンバーター63Bの出力電流容量以下である場合は、S−コンバーター63BからNIC42だけに電力が供給される前記第1省電力モードに移行して、複合機Xが前記第1省電力モードで動作する。この第1省電力モードでは、S−コンバーター63Bの出力電流容量に対するNIC42の消費電流の比率が極めて高い。したがって、S−コンバーター63Bにおける電力の変換効率が良いため、S−コンバーター63Bにおける消費電流をより小さくすることができる。その結果、電源装置60及び複合機Xにおいて高い省電力効果を得ることができる。
【0055】
また、同タイプの複数の複合機Xが製造された場合でも、それぞれに装着されているNIC42の負荷電流の値にはばらつきがある。仮に、そのばらつきに起因して特定のNIC42の消費電流がS−コンバーター63Bの出力電流容量を超えていたとしても、上述の実施形態では、省電力モードへの移行条件が成立したときに、N−コンバーター63AからNIC42だけに電力が供給される前記第2省電力モードに移行して、複合機Xが前記第2省電力モードで動作する。このため、電力が不足した状態でS−コンバーター63Bから電力がNIC42へ供給されることが回避されるので、電力不足に起因するNIC42の誤動作やS−コンバーター63Bの故障などの不具合が防止される。
【0056】
また、複合機Xに搭載されているNIC42に代えて、汎用品である互換性のある他のNICが複合機Xの拡張スロットに装着された場合でも、前記通常動作モードから前記省電力モードに移行する条件が成立した場合は、そのNICの消費電流が測定されて、上述と同様にして、その消費電流値がS−コンバーター63Bの出力電流容量以下である場合は前記第1省電力モードに移行し、その消費電流値がS−コンバーター63Bの出力電流容量よりも大きい場合は前記第2省電力モードに移行する。したがって、消費電流が不明な前記他のNICが装着された場合でも、最適な省電力モードに移行することができる。
【0057】
なお、上述の実施形態では、前記原稿検出信号、前記カバー開検出信号、前記操作入力信号が電源制御部62に入力される例について説明したが、これらの信号を全てNIC42に入力させて、いずれかの信号をNIC42が受信したときにその受信信号を電源制御部62に出力するようにしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、本発明のスイッチ回路としてトランジスタを用いて例について説明したが、トランジスタに代えて、機械的スイッチなどのデバイスを用いたものを適用してもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、上記省電力モード(第1省電力モード及び第2省電力モード)で複合機Xが動作する場合に、NIC42だけに電力を供給する例について説明したが、例えば、NIC42以外にも、常時電力を供給させる必要のある構成要素がある場合は、NIC42だけでなくその構成要素にも電力を供給する構成としてもよい。例えば、操作表示部24に対する操作入力を電気的に検知するために操作表示部24に常時電力を供給しておかなければならないのであれば、NIC42及び操作表示部24の双方に電力を供給する構成が考えられる。この場合は、NIC42及び操作表示部24の消費電流を検出できるように電流検出回路69を構成すればよく、或いは、NIC42及び操作表示部24それぞれに個別の電流検出回路69を設ければよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、本発明の第1負荷の一例としてNIC42を例示して説明したが、NIC42が搭載されていないタイプの複合機の場合は、常時電力を供給する必要がある構成要素が本発明の第1負荷に該当する。例えば、省電力モードから通常動作モードへの復帰条件として、操作表示部24に対する操作入力を電気的に検知する必要がある場合は、操作表示部24に常時電力を供給しておかなければならないので、この場合は、操作表示部24が本発明の第1負荷に該当する。
【符号の説明】
【0061】
X:複合機
10:画像読取部
21:ADF
22:画像形成部
24:操作表示部
45:駆動部
50:主制御部
60:電源装置
62:電源制御部
63:電源ユニット
63A:通常動作用コンバーター
63B:省電力動作用コンバーター
64−67:トランジスタ
68:電流検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8