特許第5787913号(P5787913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787913
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20150910BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C08J7/04 DCFD
   B32B27/36
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-12716(P2013-12716)
(22)【出願日】2013年1月26日
(65)【公開番号】特開2014-145000(P2014-145000A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄三
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰史
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153875(JP,A)
【文献】 特開2012−232581(JP,A)
【文献】 特開2011−093173(JP,A)
【文献】 特開2011−152704(JP,A)
【文献】 特開2011−230450(JP,A)
【文献】 特開2011−231269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04−7/06
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、アクリル樹脂、塗布層の全不揮発成分に対して15〜30重量%のメラミン化合物、および帯電防止剤とを含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
帯電防止剤がイオン導電性である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
イオン導電性の帯電防止剤が4級アンモニウム基を有する化合物である請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた帯電防止性を有するとともに、塗膜強度に優れ、加工ラインの汚染を抑制するポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリア性、耐薬品性などに優れ、包装材料、製版材料、表示材料、転写材料、建材、窓貼り材料などを始め、メンブレンスイッチや、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム、透明性タッチパネルなどに使用されている。
【0003】
ポリエステルフィルムは、プラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいと言う特徴がある。そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題や、光学フィルムとした際に、静電気により複数のフィルム同士が貼り付き、フィルムがたわむことで画質にムラを起こすといった問題が生じる。ポリエステルフィルムの帯電の抑制についても、フィルム上に帯電防止性能を有する塗布層を設ける方法がある。
【0004】
上記の問題点に関連して、特許文献1〜4において、カチオン性帯電防止剤を含む塗布層を有し、コーターでの走行性が良好なポリエステルフィルムが提案されている。さらにこれらの中で、密着性向上のため、塗布層にはカチオン性帯電防止剤と共にポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンのバインダーの使用などが開示されている。
【0005】
一方、帯電防止能の付与によって周囲の埃の付着やフィルム同士の貼り付きが抑制できる場合でも、塗膜強度が十分でないと加工工程で塗膜が削れ、塗布層自体が製品や加工ラインの汚染の原因となるほか、塗膜に傷がつくことで製品検査にも支障をきたす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−1164号公報
【特許文献2】特開平8−143691号公報
【特許文献3】特開2008−81551号公報
【特許文献4】特開2008−81552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた帯電防止性を有するとともに、塗膜強度に優れ、加工ラインの汚染を抑制するポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、アクリル樹脂、塗布層の全不揮発成分に対して15〜30重量%のメラミン化合物、および帯電防止剤とを含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯電防止性を有するとともに、塗膜強度に優れ、加工ラインの汚染を抑制するポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の1種または2種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0013】
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限は無く、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、液晶などの劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0015】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0016】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0017】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0018】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜4μmの範囲である。5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程においてハードコート層等の各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0019】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常5重量%未満、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、塗布層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0020】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0022】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。
【0023】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、単軸押出機を用いてダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0024】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0025】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
【0026】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0027】
本発明におけるポリエステルフィルムは少なくとも片面に塗布層を有するが、フィルムの反対面に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0028】
次に、本発明においてフィルムに設ける塗布層について述べる。本発明においては、
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂、メラミン化合物、帯電防止剤、およびオキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とし、優れた帯電防止性を有するとともに、塗膜強度に優れ、加工ラインの汚染を抑制するよう設計されたものである。
【0029】
本発明者らは鋭意検討の結果、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる架橋剤を単独で用いるのではなく、メラミン化合物と他の架橋剤を併用する事により、塗膜強度が向上できることを見出した。
【0030】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、塗布外観や各種の上塗り層との密着性を向上させる目的で、アクリル樹脂が使用される。本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支え無い。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタンなど)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合成モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。各種上塗り層との密着性向上の観点から、ガラス転移温度が60℃以下のアクリル樹脂が好ましい。
【0031】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合成モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリルなどのような種々の窒素含有化合物;スチレン、α―メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのような種々の珪素含有重合成モノマー類;燐含有ビニルモノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0032】
なお、本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、アクリル樹脂以外のポリマーを併用することも可能である。
【0033】
ポリマーの具体例としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0034】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成には、塗布層の塗膜を強固にし、ハードコート層など各種の上塗り剤と十分な密着性を有し、耐熱特性を向上させるために、架橋剤としてメラミン化合物およびオキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等が使用される。
【0035】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるメラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0036】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用される帯電防止剤としては、イオン導電性の帯電防止剤が好ましく、中でも4級アンモニウム基を含有する化合物がさらに好ましい。π共役系導電性高分子、たとえばポリチオフェンやポリアニリン含有の塗布液から形成される塗布層は一般に強く着色するため、透明性が求められる光学用途には好適でない場合がある。またπ共役系導電性高分子塗料はイオン導電性塗料に比べ一般に高価になるため、製造コストの観点からもイオン導電性の帯電防止剤が好適に用いられる。
【0037】
4級アンモニウム基を含有する化合物とは分子内に4級化されたアンモニウム基を有する化合物を指し、特に高分子化合物であることが好ましく、また水溶性化合物であることが好ましい。
【0038】
本発明では例えば、4級アンモニウム基を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
【0039】
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式1または下記式2で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。
【0040】
【化1】
【0041】
上記式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、RおよびRは化学的に結合していてもよく、例えば、−(CH−(m=2〜5の整数)、−CH(CH)CH(CH)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=C−、−CHOCH−、−(CHO(CH−などが挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】
上記式(2)中、Rは−O−または−NH−、Rはアルキレン基または式2の構造を成立しうるその他の構造、R、R、R、Rはそれぞれが、水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。
【0044】
上記式(1)および(2)中のXは本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えばハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等が挙げられる。
【0045】
また4級アンモニウム塩化合物の数平均分子量は通常は1000〜500000、好ましくは2000〜100000、さらに好ましくは5000〜50000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。
【0046】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるオキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0047】
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜9mmol/g、より好ましくは3〜8mmol/g、さらに好ましくは4〜6mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、塗膜強度の向上のために好ましい。
【0048】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるイソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0049】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、イソブタノイル酢酸メチルなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0050】
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。
【0051】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物である。より良好な密着性等を得るために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
【0052】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0053】
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの4級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0054】
本発明のフィルムにおける塗布層の形成に使用されるカルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜700、さらに好ましくは350〜650の範囲である。上記の範囲を外れる場合は、塗布層の強度や各種上塗り層との密着性が悪化する懸念がある。
【0055】
さらに本発明における塗布層中には、発明の趣旨を損なわない範囲において、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド化合物以外の架橋剤を併用することも可能である。公知の樹脂が使用できるが、例えばエポキシ化合物、アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0056】
本発明のフィルムにおける塗布層に用いられる架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0057】
本発明のフィルムにおける塗布層には、滑り性やブロッキングの改良のため、塗布層の構成成分として、粒子を併用してもよい。
【0058】
粒子の平均粒径は、フィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。
【0059】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0060】
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、帯電防止剤は通常15〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、より好ましくは25〜50重量%の範囲である。上記の範囲を下回ると塗布層の帯電防止性が十分でない場合があり、上記の範囲を超えると塗布層の透明性や強度が悪化する懸念がある。
【0061】
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、アクリル樹脂は通常10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%の範囲である。上記の範囲を下回ると塗布外観や各種上塗り層との密着性が不足する懸念があり、上記の範囲を超えると塗布層の帯電防止性が不足する懸念がある。
【0062】
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、メラミン化合物は通常5〜40重量%、好ましくは15〜30重量%の範囲である。上記の範囲を下回ると塗布層の強度が十分でない場合があり、上記の範囲を超えると帯電防止性能や、塗布層の透明性が悪化する懸念がある。
【0063】
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド化合物の合計量は、通常3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。上記の範囲を下回ると塗布層の強度や各種上塗り層との密着性が十分でない場合があり、上記の範囲を超えると帯電防止性能や、塗布層の透明性が悪化する懸念がある。
【0064】
塗布層中の各種成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0065】
本発明のフィルムにおける塗布層の帯電防止性は、塗布層の表面抵抗により測定される。表面抵抗の値が小さいほど、帯電防止性が良好であるといえる。表面抵抗が1×1013Ω以下であれば帯電防止性としては問題のないレベルと言え、1×1012Ω以下であれば、良好な帯電防止性能であると言える。
【0066】
本発明においては、ディスプレイ用途等、透明性が要求される用途に使用する場合のために、透明性が高いフィルムがより好ましい。例えば、透明性の1つの指標としてヘーズが挙げられ、その値は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.6%以下の範囲である。ヘーズが高い場合は、フィルムの視認性が低下する場合がある。
【0067】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0068】
本発明のフィルムにおける塗布層の膜厚は、通常0.002〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.2μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲である。膜厚が上記の範囲を下回る場合は帯電防止性能や密着性が不十分となることがあり、上記の範囲を超える場合には、もはや帯電防止性能や密着性は飽和しており、逆にブロッキングの発生等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
【0069】
本発明のフィルムにおいて、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0070】
本発明のフィルムにおいて、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0071】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0072】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない範囲において、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0074】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0075】
(2)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO染色し、塗布層断面をTEM(Hitachi社製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0076】
(3)ガラス転移点(Tg)の測定方法
ウレタン樹脂の溶液もしくは水分散液を、乾燥後の膜厚が500μmになるように、テフロン(登録商標)製のシャーレ内で乾燥させ皮膜を得る。乾燥条件は、室温で1週間乾燥させた後、120℃で10分間さらに乾燥させる。得られた皮膜を幅5mmに切り出し、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置(DVA−200型)にチャック間20mmとなるように測定装置にセットし、−100℃から200℃まで、10℃/分の速度で昇温させながら、周波数10Hzで測定する。E’’が最大となる点をTgとした。
【0077】
(4)帯電防止性の評価方法
日本ヒューレット・パッカード製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
【0078】
(5)ヘーズの測定方法
村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM−150を使用して、JIS K 7136で測定した。
【0079】
(6)塗膜強度の評価方法
太平理化工業株式会社製ラビングテスター専用治具(荷重300g)に太平理化工業株式会社製ラビングテスター用フェルト(幅1cm)を取りつけ、塗布層の表面を10往復(7.5cm長の範囲)で擦ってサンプルを作成した。その後、擦った箇所を目視で観察し、下記の基準にて評価した。
○:擦った部分の塗布層の削れがない
○△:擦った部分の20%未満の面積で塗布層の削れがみられる
△:擦った部分の20%以上50%未満の面積で塗布層の削れがみられる
×:擦った部分の50%以上の面積で塗布層の削れがみられる
【0080】
(7)密着性の評価方法
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に下記塗布剤組成から構成される活性エネルギー線硬化樹脂を#16ワイヤーバーにより塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、紫外線照射機から紫外線をメタルハライドランプ120Wで180mJ/cm照射し、厚み5μmのハードコート層を形成した。得られたフィルムに対して、100個の升目状の切り傷を、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を升目上の切り傷面に貼り付け、2.0kgのローラーを20往復して完全に付着させた後、180度の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面を観察し、剥離面積が5%未満ならば○、5%以上20%未満なら○△、20%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
《活性エネルギー線硬化樹脂組成》
KAYARAD−DPHA(日本化薬(株)製)24部、R−128H(日本化薬(株)製)6部、Irgacure 651(BASF(株)製)1.5部、トルエン(和光純薬(株)製)70部
【0081】
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
<ポリエステル(1)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65のポリエステル(1)を得た。
【0082】
<ポリエステル(2)の製造方法>
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒径2.3μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.3重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、固有粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止させた以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いて固有粘度0.65のポリエステル(2)を得た。
【0083】
塗布組成物としては以下を用いた。
(E1):下記式1−1の構成単位と、下記式1−2の構成単位とを重量比率で95/5の重量比率で共重合した、数平均分子量20000の4級アンモニウム基含有化合物
【0084】
【化3】
【0085】
【化4】
【0086】
(E2):下記式2−1の構成単位からなる4級アンモニウム基含有化合物
【0087】
【化5】
【0088】
(A1):下記の組成で重合した、ガラス転移点が40℃のアクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(A2):下記の組成で重合した、ガラス転移点が25℃のアクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/28/3/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0089】
(C1):ヘキサメトキシメチロール化メラミン
(C2):オキサゾリン化合物
オキサゾリン基含有アクリルポリマー、エポクロスWS−500(オキサゾリン基量4.5mol/g)(株式会社日本触媒製)
(C3):イソシアネート系化合物
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n−ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート。
(C4):カルボジイミド化合物
ポリカルボジイミド化合物 カルボジライト SV−02(カルボジイミド当量:430)(日清紡株式会社製)
【0090】
比較例1
ポリエステル(1)とポリエステル(2)とを重量比で82/18でブレンドしたものを表層、およびポリエステル(1)のみを中間層の原料として、押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、2種三層の層構成で、押出条件で厚み構成比が表層/中間層/表層=5/90/5となるよう共押出し、表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させ、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール郡を通過させながら長手方向に3.5倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液1を塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.2倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.03μmの塗布層を有する、厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0091】
得られたポリエステルフィルムの表面抵抗は2×10Ωであり、良好な塗膜強度を有するものであった。
【0092】
実施例2〜14
比較例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は比較例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。これらの特性を下記表2に示す。
【0093】
比較例1〜
比較例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は比較例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは、塗膜強度が低く、耐擦傷性が劣るものであった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のフィルムは、帯電防止性および塗膜強度が要求される種々の用途に好適に用いることができる。