特許第5787956号(P5787956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787956ワイヤ放電加工装置及びワイヤ放電加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787956
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ワイヤ放電加工装置及びワイヤ放電加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/06 20060101AFI20150910BHJP
   B23H 7/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B23H7/06 Z
   B23H7/02 G
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-213817(P2013-213817)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-176953(P2014-176953A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-28150(P2013-28150)
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(74)【代理人】
【識別番号】100151356
【弁理士】
【氏名又は名称】浅香 小百合
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 理恵
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−345045(JP,A)
【文献】 特開平11−285923(JP,A)
【文献】 特開平09−267220(JP,A)
【文献】 特開平04−135120(JP,A)
【文献】 特開2012−240128(JP,A)
【文献】 特開平02−190220(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02607006(EP,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19548001(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平1軸方向をX軸、前記X軸方向に直交する水平1軸方向をZ軸、前記X軸方向と前記Z軸方向に直交する鉛直1軸方向をY軸として、これら各制御軸を多軸制御し、前記Y軸上のワークホルダにワークを保持させて、ワイヤ電極の供給及び引取機構によってワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工装置であって、所定間隔で配設された一対のワイヤガイドの間に前記ワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って張架し前記X軸と平行な回動軸を中心として前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記一対のワイヤガイドと一体的に回動させる方向をV軸とし前記V軸を制御して前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記V軸方向に所定角度の範囲で回動する傾き調整機構を備え、前記傾き調整機構によって前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在していることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
【請求項2】
前記Z軸方向に往復移動する移動テーブルを備え、前記移動テーブル上には取付台が設けられ、前記取付台に前記傾き調整機構が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工装置。
【請求項3】
前記傾き調整機構には、前記回動軸を中心として回動し前記一対のワイヤガイドが取り付けられた回動テーブルが備わっており、前記回動テーブルを回動させる駆動モータのシャフトに前記回動テーブルが直結していることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤ放電加工装置。
【請求項4】
前記制御軸として、さらに、前記ワークの回転角度を割り出すU軸と前記ワークを定速回転させるR軸のいずれかないしは両方を制御するための回転及び角度割出機構が前記ワークホルダ上に配されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のワイヤ放電加工装置。
【請求項5】
前記Y軸が前記傾き調整機構の回動軸に対して上下に直交する条件のときに、前記Y軸上に装置本体の中心又は重心があることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のワイヤ放電加工装置。
【請求項6】
水平1軸方向をX軸、前記X軸方向に直交する水平1軸方向をZ軸、前記X軸方向と前記Z軸方向に直交する鉛直1軸方向をY軸として、これら各制御軸を多軸制御し、前記Y軸上のワークホルダにワークを保持させて、ワイヤ電極の供給及び引取機構によってワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工方法であって、所定間隔で配設された一対のワイヤガイドの間に前記ワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って張架し前記X軸と平行な回動軸を中心として前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記ワイヤガイドと一体的に回動させる方向をV軸とし前記V軸を制御して前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記V軸方向に所定角度の範囲で回動する傾き調整機構を備えたワイヤ放電加工装置を用いて、前記傾き調整機構によって前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在している状態で前記ワークを放電加工することを特徴とするワイヤ放電加工方法。
【請求項7】
前記X軸方向に往復移動する移動体と前記Z軸方向に往復移動する移動体とによって前記傾き調整機構を水平移動させることを特徴とする請求項6記載のワイヤ放電加工方法。
【請求項8】
前記傾き調整機構には、前記回動軸を中心として回動し前記一対のワイヤガイドが取り付けられた回動テーブルが備わっており、前記回動テーブルを駆動モータに直結させて前記回転テーブルを回動させることを特徴とする請求項6または7記載のワイヤ放電加工方法。
【請求項9】
回転及び角度割出機構が前記ワークホルダ上に設けられ、前記制御軸として、さらに、前記ワークの回転角度を割り出すU軸と前記ワークを定速回転させるR軸のいずれかないしは両方を制御することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項記載のワイヤ放電加工方法。
【請求項10】
前記ワークは回転対称形状であり、前記Y軸を前記傾き調整機構の回動軸に対して上下に直交させたときの位置を基準位置として前記ワークを放電加工することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項記載のワイヤ放電加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物であるワークに対してワイヤ電極を横方向に走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工装置、及び当該ワイヤ放電加工装置を用いたワイヤ放電加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極に所定のテンション(張力)をかけた状態でワイヤ電極を被加工物であるワークを挟んで設けられる一対のワイヤガイド間に張架しワイヤ電極を引き出し走行させながら、ワークとワイヤ電極との間に形成される加工間隙に放電を発生させ、放電エネルギにより前記ワークの一部を除去し所定形状に加工する放電加工装置である。
ワイヤ放電加工装置には、ワイヤ電極を上下方向(縦方向)に引き出し走行させてワークを加工する装置(縦ワイヤ型とする)と、ワイヤ電極を左右方向または前後方向(横方向)に走行させてワークを加工する装置(横ワイヤ型とする)がある。前者の縦ワイヤ型は、加工媒体である放電加工液噴流を加工間隙に供給する上で有利であるため、ワークを切断加工する一般的なワイヤカットに適しており、後者の横ワイヤ型は、ワークの外形を精密加工するのに適している。
【0003】
コンピュータ技術の発達に伴って、X軸、Y軸、Z軸、V軸、U軸、R軸などの各制御軸に対して同時3軸以上の同時多軸制御がなされて、複雑な形状のワークを精度良く加工できるようになった。ただし、横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置における各制御軸の表記は、一般的な工作機械における直交軸の表記と同じにされていないことが多い。原則として、操作者がNCプログラムを作成しやすいように、古くからある縦ワイヤ型の表記を、比較的歴史の浅い横ワイヤ型に適用するようにされている。つまり、工具であるワイヤ電極を走行させる水平1軸方向(左右方向)を主軸Z軸としている。
【0004】
特許文献1は、縦ワイヤ型のワイヤ放電加工装置に関し、水平面上で直交するX軸及びY軸方向の移動軸からなる第1の座標系と、上記X軸及びY軸にそれぞれ平行なU軸及びV軸方向の移動軸からなる第2の座標系とを有し、上記第1の座標系の移動ユニット上に第2の座標系の移動ユニットが搭載され、第2の座標系の上にX軸及びY軸と直交するZ軸方向へ移動可能な加工ヘッドを備えた工作機械の加工ヘッドの移動軸制御方法において、上記移動軸を移動させているときまたは移動させる前に、上記第1の座標系と第2の座標系との平行な2組の軸(X軸とU軸、Y軸とV軸)の各組における各軸の座標位置を逐次加算して加算値を得るステップと、上記加算値を予め設定された上記各組の軸座標位置の和から成る移動限界値と比較するステップと、上記少なくとも1組の平行軸の上記逐次の加算値が上記移動限界値に達したときは、X軸、U軸、Y軸、及びV軸方向の移動を停止するか、または移動させないようにするステップと、を順次実行すること(その請求項1)が、記載されている。
【0005】
特許文献2は、横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置に関し、ベッド上の加工槽内のテーブル上に、荒加工用の標準線径のワイヤ電極と仕上げ加工用の前記標準線径よりも細い細線径のワイヤ電極とを、水平面内の一軸に対して平行に所定の間隔で、かつ加工槽内の加工液に浸漬状態で軸方向に走行させるように張架する走行経路形成手段と、該走行経路形成手段に対する前記標準ワイヤ電極と細線ワイヤ電極の各供給手段と引取手段と、前記標準ワイヤ電極と細線ワイヤ電極との2つの放電加工部位の軸線に対して直交する水平軸方向に移動するラムと、該ラムに載置される、前記放電加工部位の軸線に対して直交する鉛直移動軸を有する加工ヘッドと、該加工ヘッドの軸端に設置される、被加工体を着脱自在に懸垂把持する保持手段と、前記加工ヘッドに内蔵され、該加工ヘッドを前記テーブルに対して相対的に旋回・割出し制御する旋回・割り出し装置と、前記被加工体を前記標準ワイヤ電極と細線ワイヤ電極とに順次に相対向させて所望の放電荒加工と仕上げ加工とを行なわせる制御装置を備えたこと(その請求項1)が、記載されている。
【0006】
特許文献3は、横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置に関し、被加工物の両側に略水平位置に支持される一対の自動結線手段と、前記一対の自動結線手段間を略水平に走行するワイヤ電極と、前記一対の自動結線手段間で被加工物を略垂直に支持する取付手段と、前記取付手段とワイヤ電極とを相対的に移動させて前記被加工物にワイヤ電極による加工軌跡を形成する駆動手段と、前記取付手段を被加工物とともにワイヤ電極の走行方向に対して直交な方向、且つ、上下方向に対して直交な方向に回転させて前記被加工物の内側(中子)部分を分離する回転手段と、前記分離された内側(中子)部分をワイヤ放電加工装置内から自動排出する排出手段とを具備すること(その請求項1)が、記載されている。
【0007】
特許文献4は、横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置に関し、テーブルまたは加工ヘッドの一方に設けられるか、テーブルまたは加工ヘッドの一方が兼用してもよい取付けベースと、該取付けベースの表面に、該表面に沿って所望角度の旋回位置決めをするように枢軸を介して取り付けられた旋回テーブルと、該旋回テーブルの旋回位置決め駆動手段と、ワイヤ電極が更新移動する張架加工部を形成するように間隔を置いて取り付けられた一対のガイドブロックを有する支腕と、該支腕の一端側を支点として支持し、他端を旋回テーブル表面に垂直方向に旋回位置決めするように旋回テーブル上に取り付けられた支腕旋回制御手段と、前記取付けベース廻りに設けられるワイヤ電極の供給引取手段に対して、前記旋回する支腕のガイドブロック間の加工部にワイヤ電極を供給および引取るよう走行させるワイヤ電極の引廻し手段とを有し、相対的に直交3軸方向の移動制御が可能な前記テーブルと加工ヘッドとの他方に設けた、工具素材を取り付ける割出し位置決め可能な回転角度割出軸と前記加工部ワイヤ電極が交叉するように相対向して配置されること(その請求項1)が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−170117号公報
【特許文献2】特許第4247932号(特開2000−52150号公報)
【特許文献3】特許第2721092号(特開平6−55354号公報)
【特許文献4】特許第3883879号(特開2003−245828号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1から4記載の既知のワイヤ放電加工装置には、4軸ないしは5軸の制御軸が備わっており、これら4軸ないしは5軸の制御軸を位置合わせすることで、ワークに対するワイヤ電極の位置合わせを行っている。しかしながら、例えば4軸の制御軸を位置合わせするとワイヤ電極の位置合わせに4軸分の誤差が含まれることになり、また例えば、5軸の制御軸を位置合わせするとワイヤ電極の位置合わせに5軸分の誤差が含まれることになるので、これら多軸分の重なり合った誤差によって安定して位置決め精度を得ることが難しく、加工精度が低下するという課題がある。
【0010】
と図に示す装置は、比較例としての横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置である。図と図に示される横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置は、被加工物であるワーク11に対して前後方向をX軸、左右方向をZ軸、上下方向をY軸として、これら各制御軸を多軸制御し、前記Y軸を制御するための加工ヘッドのワークホルダ12にてワーク11を保持させて、ワイヤ電極Wrの供給及び引取機構によってワイヤ電極Wrを左右方向に走行させワーク11を放電加工するワイヤ放電加工装置であり、前記X軸と平行な位置にある回動軸を中心に回動する方向となるV軸を制御するための傾き調整機構18が備わっている。前記V軸を制御するための傾き調整機構18には、駆動モータとハーモニックギアによって回動する回動テーブル18tが配されており、アームH1が回動テーブル18tから外側方向に延設されており、アームH1に取り付けられたワイヤガイドにワイヤ電極Wrが取り付けられている。ここで、図は、回動テーブル18tの回動角度が10度のときを示しており、ワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点を傾き調整機構18の回動軸の中心に比較的近い位置とすることが可能な位置にある。一方、図は、回動テーブル18tの回動角度が60度のときを示しており、ワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点を傾き調整機構18の回動軸の中心に比較的近い位置とすることが不可能な位置にある。すなわち、図のときは、立ち上がったアームH1がワークホルダ12やその周辺の構造体に接触する虞があるため、アームH1とワーク11とが互いに干渉しないように、前記加工ヘッドの位置を退避させておく必要がある。よって、ワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点を傾き調整機構18の回動軸の中心軸線上の位置に比較的近い位置とすることが不可能である。そして、このことからも、4軸ないしは5軸の制御軸を位置合わせして、ワーク11に対するワイヤ電極Wrの位置合わせを行わざるを得ないのが実情である。
【0011】
さらに、図と図に示す比較例の装置では、回動テーブル18tから外側方向に延設されているアームH1を回動させるために、必要なパワーを得るべく、前記V軸にはハーモニックギアを使用しているが、ハーモニックギアを使用することで、バックラッシュの影響が大きく、このため、ワーク11の位置決めが複雑で時間を要する。例えば、電源を立上げ直した場合、原点復帰時のV軸位置のバラツキが大きいという問題点がある。また、図では、ワーク11の加工位置が回動軸の中心軸線上の位置から大きく離れており、回動テーブル18tから外側方向に大きく延設されているアームH1の構造では、ワイヤガイド間距離(ガイドスパン)が100mm程度あるため、横方向に張架されたワイヤ電極の自由長さが約100mmと長くなってしまい、ワーク11の加工の際に、加工液の噴流によって前記横方向に張架されたワイヤ電極が振動し易いことなどから、振動によって加工精度を悪くする可能性がある。
【0012】
例えば、円柱状の工具素材でその直径が0.5mm以下のものを、先端刃のように微小な形状に加工する場合、その加工精度は極めて高いものが要求されるが、既知の横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置におけるワイヤ電極の位置合わせでは、位置合わせが複雑で、ワイヤ電極の振動等の影響もあり、精度の高い加工をすることが難しいといわれている。
【0013】
そこで本発明の目的は、ワークに対してワイヤ電極を横方向に走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工装置において、前記ワイヤ電極の位置合わせを正確かつ容易にして、ワークの加工精度を向上させたワイヤ放電加工装置、並びに、ワイヤ放電加工装置におけるワイヤ電極の位置合わせを正確かつ容易にし、ワークの加工精度を向上させるワイヤ放電加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のワイヤ放電加工装置は、水平1軸方向をX軸、前記X軸方向に直交する水平1軸方向をZ軸、前記X軸方向と前記Z軸方向に直交する鉛直1軸方向をY軸として、これら各制御軸を多軸制御し、前記Y軸上のワークホルダにワークを保持させて、ワイヤ電極の供給及び引取機構によってワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工装置であって、所定間隔で配設された一対のワイヤガイドの間に前記ワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って張架し前記X軸と平行な回動軸を中心として前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記一対のワイヤガイドと一体的に回動させる方向をV軸とし前記V軸を制御して前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記V軸方向に所定角度の範囲で回動する傾き調整機構を備え、前記傾き調整機構によって前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在していることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在しているので、Z軸とY軸をV軸の傾きに合せて移動させる必要がなく、従前の装置と比較して少なくとも2軸分の誤差が排除されているため、前記ワイヤ電極の位置合わせを正確かつ容易にして、ワークの加工精度の向上を図ることができる。また、従前の装置と比較してワイヤガイド間距離を小さくすることが容易な構成であるから、前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極の振動等の影響が大幅に軽減されて接触感知の精度が向上し、尚且つ、装置の小型化が図れる。
【0016】
本発明は、前記Z軸方向に往復移動する移動テーブルを備え、前記移動テーブル上には取付台が設けられ、前記取付台に前記傾き調整機構が取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、シンプルな構成でありながら安定した精度で加工することが容易となる。
【0018】
本発明は、前記傾き調整機構には、前記回動軸を中心として回動し前記一対のワイヤガイドが取り付けられた回動テーブルが備わっており、前記回動テーブルを回動させる駆動モータのシャフトに前記回動テーブルが直結していることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記回動テーブルが駆動モータのシャフトと直結しており、ハーモニックギアをなくしたことで、バックラッシュの影響を受け難くなり、また、原点復帰時のV軸位置のバラツキが抑えられる構成となる。
【0020】
本発明は、前記制御軸として、さらに、前記ワークの回転角度を割り出すU軸と前記ワークを定速回転させるR軸のいずれかないしは両方を制御するための回転及び角度割出機構が前記ワークホルダ上に配されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、これら多軸制御によって、複雑な形状のワークを精度良く加工することが容易となる。
【0022】
本発明は、前記Y軸が前記傾き調整機構の回動軸に対して上下に直交する条件のときに、前記Y軸上に装置本体の中心又は重心があることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、装置の振動等によるワイヤ電極の振動等の影響を最小限度に抑制した機械構成となる。
【0024】
本発明のワイヤ放電加工方法は、水平1軸方向をX軸、前記X軸方向に直交する水平1軸方向をZ軸、前記X軸方向と前記Z軸方向に直交する鉛直1軸方向をY軸として、これら各制御軸を多軸制御し、前記Y軸上のワークホルダにワークを保持させて、ワイヤ電極の供給及び引取機構によってワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って走行させ前記ワークを放電加工するワイヤ放電加工方法であって、所定間隔で配設された一対のワイヤガイドの間に前記ワイヤ電極を前記Z軸方向に沿って張架し前記X軸と平行な回動軸を中心として前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記ワイヤガイドと一体的に回動させる方向をV軸とし前記V軸を制御して前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極を前記V軸方向に所定角度の範囲で回動する傾き調整機構を備えたワイヤ放電加工装置を用いて、前記傾き調整機構によって前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在している状態で前記ワークを放電加工することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前記傾き調整機構によって前記一対のワイヤガイドの間に張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記回動軸の中心軸線上に常に存在している状態で前記ワークを放電加工するので、Z軸とY軸をV軸の傾きに合せて移動させる必要がなく、従前の装置による加工方法と比較して少なくとも2軸分の誤差が排除されているため、前記ワイヤ電極の位置合わせを正確かつ容易にして、ワークの加工精度の向上を図ることができる。
【0026】
本発明は、前記X軸方向に往復移動する移動体と前記Z軸方向に往復移動する移動体とによって前記傾き調整機構を水平移動させることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、シンプルな構成でありながら安定した精度で加工することが容易となる。
【0028】
本発明は、前記傾き調整機構には、前記回動軸を中心として回動し前記一対のワイヤガイドが取り付けられた回動テーブルが備わっており、前記回動テーブルを駆動モータに直結させて前記回転テーブルを回動させることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、前記回動テーブルを駆動モータに直結させて、ハーモニックギアをなくすことで、バックラッシュの影響を受け難くなり、また、原点復帰時のV軸位置のバラツキを抑えられる。
【0030】
本発明は、回転及び角度割出機構が前記ワークホルダ上に設けられ、前記制御軸として、さらに、前記ワークの回転角度を割り出すU軸と前記ワークを定速回転させるR軸のいずれかないしは両方を制御することを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、これら多軸制御によって、複雑な形状のワークを精度良く加工することが容易となる。
【0032】
本発明は、前記ワークは回転対称形状であり、前記Y軸を前記傾き調整機構の回動軸に対して上下に直交させたときの位置を基準位置として前記ワークを放電加工することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、本発明によれば、回転対称形状のワークの外形をワイヤカットによって加工するに際して、前記ワークの中心軸線上にある位置を基準位置にすることができるので、前記ワークの中心位置を誤ることなく前記ワークをより容易に放電加工することとなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のワイヤ放電加工装置によれば、水平1軸方向に沿って張架されたワイヤ電極におけるワーク加工点が前記傾き調整機構の回動軸中心軸線上の位置と常に一致しているので、Z軸とY軸をV軸の傾きに合せて移動させる必要がなく、従前の横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置と比較して少なくとも2軸分の誤差が排除されているので、前記ワイヤ電極の位置合わせをより正確かつ容易にして、ワークの加工精度の向上を図ることができる。また、従前の装置と比較してワイヤガイド間距離を小さくすることが容易な構成であるから、横方向に張架された前記ワイヤ電極の振動等の影響が大幅に軽減されて接触感知の精度が向上し、尚且つ、装置の小型化が図れる。本発明によれば、シンプルな構成でありながら安定した精度で加工することが容易となる。本発明によれば、前記ワイヤガイドが取り付けられた回動テーブルを駆動モータのシャフトと直結させることで、ハーモニックギアをなくしているので、バックラッシュの影響を受け難くなり、また、原点復帰時のV軸位置のバラツキが抑えられる構成となる。本発明によれば、装置の振動等によるワイヤ電極の振動等の影響を最小限度に抑制した機械構成となる。
【0035】
本発明のワイヤ放電加工方法によれば、バックラッシュの影響を受け難くなり、また、原点復帰時のV軸位置のバラツキを抑えられる。本発明によれば、回転対称形状のワークの外形をワイヤカットによって加工するに際して、前記ワークの中心軸線上にある位置を基準位置にすることができるので、前記ワークの中心位置を誤ることなく前記ワークをより容易に放電加工することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態のワイヤ放電加工装置を示す正面図である。
図2】上記実施形態の装置の要部を示す正面図である。
図3】上記実施形態の装置の傾き調整機構を示す正面図であり、特に、回動テーブルの回動角度が0度のときを示している。
図4】上記実施形態の装置の傾き調整機構を示す正面図であり、特に、回動テーブルの回動角度が60度のときを示している。
図5】上記実施形態の装置の傾き調整機構を模式的に示す側面図である。
図6】本発明の実施形態のワイヤ放電加工装置で加工したワークの例を示す図である。
図7】比較例としての横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置の要部を示す正面図であり、特に、回動テーブルの回動角度が10度のときを示している。
図8】比較例としての横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置の要部を示す正面図であり、特に、回動テーブルの回動角度が60度のときを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施形態の横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置を示す正面図である。図は、本実施形態の装置の要部を示す正面図である。なお、図1に示される実施形態のワイヤ放電加工装置では、図1の向かって手前側を前面とし、両側面の横方向を左右方向、前面と背面との横方向を前後方向、縦方向を上下方向という。
【0039】
本実施形態の数値制御ワイヤ放電加工装置1は、被加工物であるワーク11に対して前後方向(水平1軸方向)をX軸、左右方向(X軸に直交する水平1軸方向)をZ軸、上下方向(X軸とZ軸とに直交する鉛直1軸方向)をY軸として、これら各制御軸を同時多軸制御する。ワイヤ放電加工装置1では、前記Y軸を制御するための加工ヘッド10にワーク11を保持させる。そして、ワイヤ放電加工装置1には、所定間隔で一対のワイヤガイド17,17が配置されており、ワイヤ電極Wrとワーク11との間に形成される加工間隙(ワーク加工点)においてワイヤ電極WrがZ軸方向に沿って横方向に張架される。すなわち、本実施形態のワイヤ放電加工装置1は、ワイヤ電極Wrの供給及び引取機構3によってワイヤ電極Wrを左右方向(横方向)に走行させてワーク11を加工する横ワイヤ型の装置である(図1等)。
【0040】
本実施形態のワイヤ放電加工装置1は、基台となるベッド4が水平に接地され、ベッド4の上には、X軸方向に往復移動する移動体であるサドル5が配され、サドル5の上にはZ軸方向に往復移動する移動体である移動テーブル6が配されており、移動テーブル6上には取付台9が固定されており、取付台9にワイヤ電極Wrの案内機構が設けられている(図1)。取付台9は、水平に配された状態で、サドル5と移動テーブル6とによって、X軸方向(前後方向)とZ軸方向(左右方向)のいずれかないしは両方に移動する構成となっている。そして、ベッド4の後方側にはコラム7が立設し、コラム7には移動ラム8と送り機構が配されており、コラム7の前方側には加工ヘッド10が配されている(図1)。加工ヘッド10は、垂直に配された状態で、送り機構13によって、Y軸方向(上下方向)に移動する構成となっている。
【0041】
前記移動テーブル6の上には加工槽16が配されており、取付台9は加工時に放電加工部が加工液に浸漬状態となるように加工槽16内に組み込まれている(図1)。そして、ワイヤ放電加工用電源及び数値制御装置を含む電源及び制御機構2と、ワイヤ電極Wrの供給,引取り及び回収手段3が一体構造となったワイヤ電極の供給及び引取機構3が設けられているとともに(図1)、ワイヤ電極加工部の加工槽16へ加工液を供給及び回収して浄化処理する加工液供給手段が設けられている(図示せず)。
【0042】
前記加工ヘッド10の下側には、回転及び角度割出機構14が配されており、回転及び角度割出機構14の下には、ワークホルダ12が配されている(図1、図)。ワーク11は、ワークホルダ12によって保持され、回転及び角度割出機構14によって、Y軸廻りに回転角度割出を行なう角度割出軸をU軸とし、Y軸廻りに所定の回転速度で回転させる回転軸をR軸として、ワーク11の回転角度を割り出すU軸と、ワーク11を定速回転させるR軸のいずれかが切り替えられて制御される。そして、ワーク11は、ワークホルダ12によって保持され、送り機構13によって、Y軸が制御される。本実施形態では、U軸が制御されるときは、X,Y,Z,U,Vの同時5軸制御、R軸が制御されるときは、X,Y,Z,Vの同時4軸制御となる。
【0043】
は、ワイヤ電極Wrの張架走行経路を説明する図となっている。ワイヤ電極Wrの供給及び引取機構3によって、引き出されたワイヤ電極Wrは、複数箇所に配された大小のプーリ19及びワイヤガイド17,17を介してワイヤ走行する。より具体的には、図1に示される供給及び引取機構3には、テンションローラを含むテンション機構31が設けられ、放電加工に供された使用済のワイヤ電極Wrを巻き取って排出する巻取ローラを含む回収機構32との間でワイヤ電極Wrに所定の張力が付与される。リールにセットされたワイヤボビン33に巻き回されたワイヤ電極Wrは、ワイヤボビン33から引き出されて、取付台9の上に設けられた案内機構の大小複数のプーリ19に引き回される。その結果、ワイヤ電極Wrは、所定間隔で配設された一対のワイヤガイド17,17の間でZ軸方向に沿って張架され、所定の張力をもって所定の速度で走行する。
【0044】
は、本実施形態の装置1の傾き調整機構18を示す正面図であり、特に、傾き調整機構18の回動角度が0度のときを示している。図は、本実施形態の装置1の傾き調整機構18を示す正面図であり、特に、傾き調整機構18の回動角度が60度のときを示している。図は、本実施形態の装置1の傾き調整機構18を模式的に示す側面図である。
本実施形態では、取付台9の上に絶縁ブロック22が配設され、絶縁ブロック22の上にバランスウエイト21が配され、バランスウエイト21の上に傾き調整機構18が配されている(図〜図))。前記バランスウエイト21,21は、傾き調整機構18の左右のバランスを調整するためのものである。すなわち、傾き調整機構18は、左右のバランスがとれており、取付台9と電気絶縁された状態で、取付台9に固定されている。傾き調整機構18の後方側には駆動モータ51が配されており、傾き調整機構18の前方側には回動テーブル18tが配されており、回動テーブル18tが駆動モータ51のシャフト52と直結している(図)。
【0045】
前記傾き調整機構18は、前記X軸と平行な回動軸の中心軸線上にある位置を回転の中心Qとして一対のワイヤガイド17,17の間に張架されたワイヤ電極Wrを一対のワイヤガイド17,17と一体的に回動させる方向をV軸として、V軸を制御することによって一対のワイヤガイド17,17の間に張架されたワイヤ電極WrをV軸方向に所定角度の範囲で回動するためのものである。傾き調整機構18の回動軸の中心軸線は、駆動モータ51のシャフト52の中心軸線と同軸である(図)。
【0046】
より具体的には、図に示すように、前記傾き調整機構18は、回動テーブル18tを含んでなる。回動テーブル18tは、駆動モータ51のシャフト52と直結して駆動する、いわゆるダイレクトドライブ方式の回動テーブルである。ワイヤ電極Wrは、回動テーブル18tの前面側に所定間隔で配設された一対のワイヤガイド17,17一対のワイヤガイド17,17にそれぞれ対応するように回動テーブル18tの前面側に取り付けられたプーリ19によって、Z軸方向に沿って張架されている。そして、駆動モータ51によって回動テーブル18tが所定角度の範囲で回動したときに、一対のワイヤガイド17,17の間にZ軸方向に沿って張架されたワイヤ電極Wrが回動軸を中心Qとして一対のワイヤガイド17,17と一体的にV軸方向に所定角度の範囲で回動する構成となっている(図〜図)。つまり、V軸を制御して、傾き調整機構18によって、一対のワイヤガイド17,17の間に張架されたワイヤ電極Wrが所定角度の範囲で回動する構成である。
【0047】
前記Z軸方向に沿って張架されたワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点は、ワイヤガイド17とワイヤガイド17の間の位置にある。図と図に示す比較例では、ワイヤガイド17とワイヤガイド17の間のワイヤ電極Wrの自由振動長さは約75mmとなっている。これに対して、図と図に示す本実施形態では、ワイヤガイド17とワイヤガイド17との間のワイヤガイド間距離を短くすることができ、ワイヤガイド間距離に相当するワイヤ電極Wrの自由振動長さは約20mmとなっている。つまり、本実施形態では、ワイヤガイド17,17間のワイヤ電極Wrの自由振動長さが比較例の約1/4となっており、これにより、ワイヤ電極Wrの振動の影響が大幅に軽減され、接触感知の精度影響も小さくなった。
【0048】
一対のワイヤガイド17,17の間に前記Z軸方向に沿って張架されたワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点には、加工媒体としての加工液を噴流させて供給する必要があり、そのための配管35がワイヤガイド17の一方側に取り付けられている。図と図に示す比較例では、構造上、配管35が回動テーブル18tの内周側に配されている。これに対して、図と図に示す本実施形態では、配管35が回動テーブル18tの外周側に配されている。つまり、本実施形態では、配管35を回動テーブル18tの外周側に配することで、配管35のチューブに余裕を持たせた構成となっており、回動テーブル18tを回動させるための駆動モータ51のパワーが小さくても対応できるようになっており、省電力化が図られているとともに、トルクを得るための波動歯車装置(Strain wave gearing)などの減速機を廃してダイレクトドライブ方式で回動テーブル18tを駆動することを可能な構成としている。
【0049】
と図からも明らかなように、本実施形態によれば、一対のワイヤガイド17,17の間に張架されたワイヤ電極Wrにおけるワーク加工点が傾き調整機構18の回動軸の中心軸線上に常に存在するようにされているので、Z軸とY軸をV軸の傾きに合せて移動させる必要がなく、従前の装置と比較して少なくとも2軸分の誤差が排除されているので、前記ワイヤ電極Wrの位置合わせを正確かつ容易にして、ワーク11の加工精度の向上を図ることができる。また、従前の装置と比較してワイヤガイド間距離を小さくすることができていることから、前記張架されたワイヤ電極の振動等の影響が大幅に軽減されて接触感知の精度が向上し、尚且つ、装置の小型化が図れる。
【0050】
からも明らかなように、本実施形態によれば、ワイヤガイド17,17が取り付けられた回動テーブル18tを駆動モータ51のシャフト52と直結させて、ハーモニックギアをなくすことで、バックラッシュの影響を受け難くなり、また、原点復帰時のV軸位置のバラツキが抑えられる構成となった。
【0051】
そして、本実施形態では、前記Y軸が前記傾き調整機構18の回動軸の中心Qに対して上下に直交する条件のときに、前記Y軸上に装置本体の中心又は重心がある構成となっている(図と図を参照)。
【0052】
本実施形態によれば、装置の振動等によるワイヤ電極の振動等の影響を最小限度に抑制した機械構成となる。
【0053】
は、本実施形態のワイヤ放電加工装置1で加工したワークの例を示す図である。ワーク11A、11B、11Cは、いずれも回転対称形状の工具であり、先端が回転刃となっている。
【0054】
本実施形態の方法では、Y軸を傾き調整機構18の回動軸の中心軸線上の回動の中心Qに対して上下に直交させたときの位置を基準位置として、回転対称形状のワーク11(1A、11B、11C)を放電加工することを特徴とする。
【0055】
本実施形態によれば、回転対称形状のワーク11(11A、11B、11C)の外形をワイヤカットによって加工するに際して、ワーク11の中心軸線上にある位置を基準位置にすることができるので、ワーク11の中心位置を誤ることなくワーク11をより容易に放電加工することとなる。そして、本実施形態によれば、加工後の直径が0.5mm以下となるような超微細なワーク11(11A,11B,11C)を高精度に加工することができる。
【0056】
本実施形態では、機械電源をOFFするときは、ワーク11を加工ヘッド10により上方に移動させるか、或いは、移動テーブル9を前後左右に移動させるなどして、ワーク11からワイヤ電極Wrを離した位置に移動させてからOFFすることになる。そして、V軸の位置については、電源ON時は、原点復帰後に設定位置に戻るようになっている。
【0057】
上述のとおり、本実施形態のワイヤ放電加工装置1では、回動テーブル18tの回軸の中心軸線上に回動の中心Qが常に存在する構成である点、回動テーブル18tの回軸の中心軸線と駆動モータ51の駆動軸とが同軸である構成であって、特に、駆動モータ51のシャフト52が回転テーブル18tの回動軸に直結する構成である点、回動テーブル18tの回動における抵抗を可能な限り小さくする構成である点、Z軸方向に沿ってワイヤ電極Wrを張架し案内支持する一対のワイヤガイド17,17のワイヤガイド間距離がより短い構成である点、とは、総じてそれぞれの構成が相互に密接に関係し合って得ることができる本発明の特徴であり、その結果、本発明は、横ワイヤ型のワイヤ放電加工装置において、ワイヤ電極の位置合わせをより正確で容易にするとともにバラツキを小さく抑え、加工精度を向上させることができるという顕著な作用効果を奏するものである。
【0058】
したがって、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、組合せ、応用が可能である。例えば、上記実施形態において、加工ヘッド10のみを上下動と旋回及び割出し回転させることで、ワーク11を加工することも可能である。本実施形態が対象とするワークは、上述の回転対称形状のワーク11に限られず、板状のワークや非回転対称形状のワークを扱うことも可能である。さらに、上記実施形態の装置を90度回転させた向きに各構成要素を配置変更することも可能である。つまり、X軸とZ軸は同一面内にあり、Y軸はX軸及びZ軸からなる面と直交しており、V軸はX軸と平行な位置となっていれば、相対的な位置関係は本願発明と実質的に同じことであるから、たとえ各軸と左右、前後、上下との対応関係が文言上一致しなかったとしても、相対的な位置関係が本願発明と実質的に同じであれば、本願発明の範疇であるといえる。
【符号の説明】
【0059】
1 本発明のワイヤ放電加工装置、
2 電源及び制御機構、
3 ワイヤ電極の供給及び引取機構、
4 ベッド(基台)、
5 サドル、
6 移動テーブル、
9 取付台、
10 加工ヘッド、
11,11A,11B,11C ワーク、
12 ワークホルダ、
14 回転及び角度割出機構、
17 ワイヤガイド、
18 傾き調整機構、
18t 回動テーブル、
19 プーリ、
Q 傾き調整機構の回動軸の回動の中心(V軸中心)、
Wr ワイヤ電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8