(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787985
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】大きいピニオンの機械加工のための架台
(51)【国際特許分類】
B23F 23/06 20060101AFI20150910BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20150910BHJP
B23Q 1/26 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B23F23/06
B23Q3/06 304G
B23Q1/26 Z
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-509156(P2013-509156)
(86)(22)【出願日】2011年5月3日
(65)【公表番号】特表2013-529141(P2013-529141A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】US2011034878
(87)【国際公開番号】WO2011140004
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2013年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/331,549
(32)【優先日】2010年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイ.シュタットフェルド
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−039216(JP,A)
【文献】
米国特許第04340211(US,A)
【文献】
仏国特許発明第2631099(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/06,
B23Q 3/06,1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工のための、把持される部分が円柱状に成形された加工対象物を支持しおよび位置決めするための架台であって、
前記架台は、長さ方向に延びる中心線を有し、および前記長さ方向に沿って配置された複数の交互に対向する角度のあるプレートを含む少なくとも1つの位置決めユニットであって前記加工対象物を把持するための寸法調整可能な角柱状である空間を有する位置決めユニットと、前記加工対象物を前記複数の交互に対向する角度のあるプレートに対して固定するための上部固定用ヨークと、前記中心線の周りを回転可能な第1および第2の弓形部材と、を含み、
前記角度のあるプレートは、互いに向かっておよび互いから離れて前記長さ方向に概して垂直な方向に移動可能であり、それによって、前記角度のあるプレート上に設置された前記加工対象物は、前記加工対象物の回転軸が前記架台の前記中心線と一致するように位置決めされることができ、
前記少なくとも1つの位置決めユニットは、前記第1および第2の弓形部材と共に回転可能であるように構成されており、これによって、前記少なくとも1つの位置決めユニットは、前記中心線の周りに回転可能であることを特徴とする架台。
【請求項2】
前記第1および第2の弓形部材の間に延びる床部材をさらに含み、前記少なくとも1つの位置決めユニットは、前記床部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項3】
前記第1および第2の弓形部材は、円弧の形状であることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項4】
前記第1および第2の弓形部材のそれぞれに取り付けられている少なくとも1つの付加的な円弧セグメントをさらに含み、それによって完全な円形部材が形成されることを特徴とする請求項3に記載の架台。
【請求項5】
前記第1および第2の弓形部材は、それらの外面に歯を含むことを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項6】
前記第1および第2の弓形部材は、モーターおよびギアを用いて回転可能であり、前記ギアは、前記第1および第2の弓形部材の前記歯とかみ合っていることを特徴とする請求項5に記載の架台。
【請求項7】
前記長さ方向に沿って配置された複数の交互に対向する角度のあるプレートを含む2つの位置決めユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項8】
前記角度のあるプレートの動きおよび前記少なくとも1つの位置決めユニットの回転運動を制御する手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項9】
制御手段を有する工作機械に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項10】
前記角度のあるプレートの動きおよび前記少なくとも1つの位置決めユニットの回転運動は、前記工作機械の制御手段によって制御されることを特徴とする請求項9に記載の架台。
【請求項11】
前記加工対象物は、ピニオンのギアまたはピニオンのブランクを含むことを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項12】
水平方向の基準面に関して、対向する角度のあるプレートは、加工対象物を前記基準面から離れて移動させるために互いに向かって相対的に移動可能であり、および対向する角度のあるプレートは、加工対象物を前記基準面に向かって移動させるために、互いから離れて相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項13】
対向する角度のあるプレートは、前記長さ方向に概して垂直な前記方向に一緒に移動可能であり、それによって、前記加工対象物は、前記長さ方向に概して垂直な前記方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年5月5日に出願されその全開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/331,549号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、ギアの機械加工に関し、特に、大きいピニオンの機械加工のための架台を対象とする。
【背景技術】
【0003】
1000mmから2500mmの、または2500mmさえ超えるリングギア直径を有するギアセットは、一般に、1000mmより長い、例えば2000mmさえ超えるピニオンシャンクを有する。今日では、そのようなピニオンは、垂直位置に保持される。上下逆さまに固定することは、大抵の場合不可能である。長いピニオンは、端部でピニオンの頭部に対向して回転テーブルに垂直方向に固定される。このことは、機械加工ゾーンを多軸複合工作機械(multi-axis machining center)の垂直移動の領域の上側に位置付け、これは、低い剛性および低い精度をもたらす。しかしながら大抵の場合、1500mmよりも大きいシャンクを備えるピニオンを機械加工することは、これらの機械の垂直移動の制限により、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,340,211号明細書
【特許文献2】米国特許第4,445,678号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばChiappettiに対する特許文献1に開示されているようなVブロック(「V字型ブロック(vee block)」としても知られている)、またはGeorgeに対する特許文献2によって開示されるようなVブロックを使用して、長い円形の加工対象物のような
湾曲した外表面を有する物体を水平に固定することは知られている。そのような装置は、円形の棒の柄の全長を固定することができるかもしれないが、ピニオンの頭部の寸法は依然として
重要であり、多軸複合工作機械の軸
移動の機能に
問題があり、剛性および精度の低下が心配事のままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、大きいピニオンギアまたはブランク(例えば、ピニオン加工対象物)のような、
把持される部分が概して円柱状に成形された加工対象物のための架台装置を対象とし、ここでピニオン加工対象物は、機械加工のために支持されおよび回転させられることができる。ピニオン架台は、1つまたは複数の調節可能な角柱位置決めユニットを含み、該ユニットのそれぞれは、その上に配置されるピニオンを上げ下げしおよび/または横方向に移動させるために、ピニオン架台の幅方向に沿って互いに向かっておよび互いから離れて移動可能である角度のある複数のプレートをそれぞれ含み、それによって、機械加工のためにピニオンを位置付ける。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明のピニオン架台の切り取り側面図である。
【
図4】2つの機械加工ゾーン、およびピニオンの全ての溝(slot)を機械加工するために2つの機械加工ゾーンに接近するピニオン架台の回転運動を例示する図である。
【
図5】それによって360度の架台の回転を可能にする付加的なレール部分を含めた、
図3と同一の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の何らかの特徴および少なくとも1つの構成が詳細に説明される前に、本発明は、その用途が、以下に説明されまたは図面に例示される構成および構成要素の配置の詳細に限定されるものではないことは理解されよう。本発明は、他の構成のもの、および様々な方法で実施または実行されているものであることができる。また、本明細書で使用される法律用語および専門用語は、説明目的のためであり、限定するものであるとみなされるべきではないことは理解されよう。
【0009】
図1から3は、その上に位置付けられるピニオン4を備えた本発明のピニオン架台2(固定用ヨークは、
図1では図の明確性のために省略されている)を示す。ピニオン架台は、架台の縦(軸)方向に沿って延びる中心線Cを有する。ピニオン4は、頭部6、第1のシャンク部分8および第2のシャンク部分10を含み、シャンク部分8は第2のシャンク部分10よりも大きい直径を有する。ピニオンのシャンクの直径はその全長に沿って一様であってもよく、またはピニオンのシャンクはその長さに沿って2つ以上の異なる直径の部分を含んでいてもよいことは理解されよう。
【0010】
ピニオン架台2は、土台12、第1の支持台14および第2の支持台16を含む。第1の支持台14は、複数のボルト15のような適当な取り外し可能な取付手段を用いて、またはブラケットによって、土台12に取り付けられている。第2の支持台16は、ボルト17のような適当な取り外し可能な取付手段を用いて、またはブラケットによって、土台12に取り付けられている。あるいはまた、支持台14、16は、溶接を用いて土台12に取り付けられていてもよく、または、例えば鋳造によって単一ユニットとして、土台12と一体的に形成されていてもよい。土台12、第1の支持台14および第2の支持台16は、鋳鉄、鋼、または鉱物の鋳造物の集合体で作られていてもよい。例えば、ピニオン架台2は、クレーンまたはフォークトラックによって設置されおよび/または取り除かれることができ、および工場の床に対して、あるいは複合工作機械またはギア製造機械の枠、テーブルまたは回転テーブルに対して、ブラケットまたはボルトを用いてしっかりと固定されていてもよい。
【0011】
ピニオン架台2は、前方の弓形部材20、後方の弓形部材22および床部材24を含む内部回転部材18をさらに含む。弓形部材20、22は、好ましくは円弧、最も好ましくは半円の形状を有する。弓形部材20、22は、支持台14、16それぞれの内面に回転のために設置される。ピニオン4を機械加工しおよび搭載/取り外しするために、可逆モーター26およびウォームホイール28(
図3)は、内部回転部材18を中心線Cの周りに回転させおよび位置付けるために、弓形部材22の外周に形成された対応する歯(例えば、ウォームギアの歯、不図示)と係合してもよい。したがって、中心線Cは、内部回転部材18の回転軸を表す。モーター26およびウォームホイール28は弓形部材20と係合していてもよく、あるいはまた、弓形部材20、22の各々がモーター26およびウォームホイール28と関連付けられていてもよい。当業者によって評価され得るように、内部回転部材18を回転させおよび位置付ける他の手段が利用されていてもよい。
【0012】
床24上には、ピニオン架台2の長さに沿って配列された少なくとも1つ、好ましくは2つの調節可能な角柱位置決めユニット30、32が設置されており、各角柱(prismatic)ユニットは、複数の交互に対向する角度のあるプレートを含む。角柱ユニット30は角度のあるプレート34、36を含み、および角柱ユニット32は、角度のあるプレート38、40を含む。角度のあるプレート34、36および38、40は、その上に位置付けられたピニオンを上げ下げするために、ピニオン架台2の幅方向に沿って(すなわち、中心線Cに対して概して垂直に)互いに向かってまたは互いから離れて移動可能である。
【0013】
角柱ユニット30は、軸方向に位置付けられた1対のレール42、44を含み、それらの間に、角度のあるプレート34、36が交互に配置されている。角度のあるプレート34は、48および50の適切な手段(例えば、ウォームギア、ボールスリーブ)を介して作動するモーター46を用いて移動させられて、棒52をレール42、44に沿ったどちらかの方向に移動させる。棒52は、角度のあるプレート34に取り付けられ、それによって、角度のあるプレートを、移動する棒52に沿って移動させる。モーター46から手段48、50に延びる駆動軸は、棒52内に設置されていてもよい。同様に、角度のあるプレート36は、モーター54を用いてレール42、44に沿ったどちらかの方向に移動させられる。棒56は、角度のあるプレート36に取り付けられ、それによって、角度のあるプレート36を、移動する棒56に沿って移動させる。モーター54から手段58、60に延びる駆動軸は、棒56内に設置されていてもよい。角度のあるプレート34、36の互いに向かう動きは加工対象物の上方移動をもたらし、一方、角度のあるプレート34、36の互いから離れる動きは加工対象物の下方移動をもたらすことが分かる。
【0014】
同様に、角柱ユニット32は、軸方向に位置付けられた1対のレール62、64を含み、それらの間に、角度のあるプレート38、40が交互に配置されている。角度のあるプレート38は、68および70の適切な手段(例えば、ウォームギア、ボールスリーブ)を介して作動するモーター66を用いて移動させられて、棒72をレール62、64に沿ったどちらかの方向に移動させる。棒72は、角度のあるプレート38に取り付けられ、それによって、角度のあるプレートを、移動する棒72に沿って移動させる。モーター66から手段68(例えば、
図3に示されるように、ウォームギア76およびボールスリーブ78)および70に延びる駆動軸は、棒72内に設置されていてもよい。同様に、角度のあるプレート40は、モーター80を用いてレール42、44に沿ってどちらかの方向に移動させられる。棒82は、角度のあるプレート40に取り付けられ、それによって、角度のあるプレート40を、移動する棒82に沿って移動させる。モーター80から手段86(例えば、
図3に示されるように、ウォームギア90およびボールスリーブ92)および88に延びる駆動軸84は、棒82内に設置されていてもよい。角度のあるプレート38、40の互いに向かう動きは加工対象物の上方移動をもたらし、角度のあるプレート38、40の互いから離れる動きは加工対象物の下方移動をもたらすことが分かる。
【0015】
角度のあるプレート34、36および38、40は、好ましくは、最初は、架台2内に位置付けられるべきピニオンの直径に従って、ピニオンの回転軸が架台2の中心線Cと揃うように、互いに関して位置付けられる。図に示されるピニオン4に関して、ピニオンのシャンク部分8、10の異なる直径を考慮すると、角度のあるプレート38、40は、角度のあるプレート34、36よりも、互いにより近接して位置付けられることになる。ピニオン4が架台2内に配置されると、適正な軸/中心線の位置合わせを実現するために、角度のあるプレート34、36および/または38、40の位置の調節が必要とされる。位置合わせがされると、1つまたは複数の上部固定用ヨークが、角柱ユニット30、32のそれぞれに位置付けられてもよい。後方上部固定用ヨーク94は、
図3に示される。
【0016】
また、角度のあるプレート34、36(および/または38、40)のそれぞれの同じ方向への動きは、加工対象物の位置を架台2の幅に沿って変えるために使用されてもよいことは理解されよう。
【0017】
回転アクチュエータ(例えば、モーター26)は、好ましくは、多軸複合工作機械のような工作機械(machine tool)の制御部(例えば、CNC)に連結されている。1つのピニオンの歯の溝の位置から次の位置にインデックスを付けるための手動の信号または電子信号を受け取る個別の制御部を使用することも可能である。架台は、歯の溝の位置の間(すなわち、溝の間隔)にインデックスを付けるために主に使用されるが、その間、架台は、部分的または完全な回転運動(roll motions)を行う。また、モーター46、54、66および80は、好ましくは工作機械の制御部に連結されているが、しかし、代わりに、架台2に別個の制御部を有していてもよい。
【0018】
機械制御部内に架台の軸を設置するために、測定用プローブを使用して、基準面を決めることができる。また、測定用プローブを用いて、ピニオンの軸位置を決定することもできる。架台は、+/−90°回転可能であり、およびそのようなものとして、ピニオンのブランク上の至る所が180°回転することを可能にする。
【0019】
図4に見られるように、溝フライス加工(milling)領域が、最初に半数の歯に関して(1)であり、および機械加工ゾーンが (1)からゾーン(2)に変更される場合であって、(2)は(1)からピニオン軸の周囲方向に約180°間隔を空けている場合、ピニオンの全ての溝を機械加工するために、フライス加工または研削工具を用いて360°の全周囲が達成され得る。機械加工のセグメント間に重複するゾーンを実現するために、架台の回転は、+/−90°よりもいくらか大きい量をカバーすることができる。
【0020】
図5に見られるように、本発明は、さらに、360°の架台の回転を実現するために、部材20および/または22の上方に搭載される1つまたは複数の付加的な弓形レールセグメント96(1つが示されている)、好ましくは円弧形状のレールセグメントを考慮する。付加的な弓形レールセグメントは、部材22および96間に形成される継ぎ目98が架台2内に搭載されるピニオンの回転に対してなんら障害を引き起こさないように、その端面において任意の適切な接続部(例えば、蟻継ぎ(dove-tail))を用いて部材20および/または22に接続される。好ましくは、部材20および/または22は、付加的な弓形(例えば円弧)のレール部材セグメント96とあらかじめ組み立てられて円形レールを形成しており、および次いで、歯(例えばウォームギアの歯)は、あらかじめ組み立てられた円形レールの外周内に形成される。円形レールは、次いで解体され、部材20および/または22は架台2内に位置付けられる。所望の場合、付加的な部材96は、架台2上に位置付けられてもよく、および歯の切削または研削工程に適した、継ぎ目98を通る伝達の正確なレベルは、あらかじめ組み立てられた状態における全ての円形レールの歯の構成によって実現される。
【0021】
架台の利点は水平配向であり、これは、水平移動が制限された機械内の下方の垂直移動範囲に歯のあるゾーンを位置付けることを可能にする。本発明の架台の別の利点は、角柱台座(seating)内に収まった長いピニオンを中心線の調節が終了するまで保持するために重力が利用され、およびピニオンはヨークによって架台に固定されるという事実である。
【0022】
また、中心線の高さおよび配向を調節せずに、ローカルマシンのプローブの測定結果を使用して、実際の中心線および軸方向のピニオンの位置を見つけ、工具通路の側面(flank surfaces)を多軸複合工作機械に対するピニオンの実際の位置に変換(transform)することも可能である。
【0023】
本発明を好ましい実施形態を用いて説明したが、本発明はそれらの事項に限定されないことは理解されよう。本発明は、添付される特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなしに、当技術分野の当業者にとって明らかな変更を含むことを意図している。