特許第5787994号(P5787994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787994冷機運転時および/または暖機運転時の冷却用の冷媒集合管を備えた内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787994
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】冷機運転時および/または暖機運転時の冷却用の冷媒集合管を備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/10 20060101AFI20150910BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20150910BHJP
   F01P 5/10 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   F02F1/10 D
   F01P3/02 A
   F01P5/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-514587(P2013-514587)
(86)(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公表番号】特表2013-528743(P2013-528743A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011002957
(87)【国際公開番号】WO2011157417
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】102010024319.1
(32)【優先日】2010年6月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ドーア、ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ペールマン、アクセル
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−257227(JP,A)
【文献】 特開2009−047001(JP,A)
【文献】 特開2009−191661(JP,A)
【文献】 実開平05−066243(JP,U)
【文献】 特開2004−108159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/10
F01P 3/02
F01P 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック(2)と、一体型排気マニホールド(4)を有するシリンダヘッドと(3)、を備えた内燃機関(1)であって、
前記シリンダブロック(2)・前記シリンダヘッド(3)・前記一体型排気マニホールド(4)が、互いにつながり合ったウォータージャケット(12)を備え、前記ウォータージャケット(12)が内燃機関(1)の冷媒回路(6)の一部となっている内燃機関において、
前記冷媒回路(6)には、くびれた開口断面を有する連通孔(38)を介して前記ウォータージャケット(12)と連通する集合管(27)が含まれており、
前記連通孔(38)を通る流向の延長上に配置されるウォータージャケット(12)の冷媒通路(39)は、前記排気マニホールド(4)へと通じており、
前記連通孔(38)の下流側で側方に分岐しているウォータージャケット(12)の冷媒通路(32)は、前記シリンダブロック(2)へと通じており、
前記連通孔(38)はその開口断面が、集合管(27)側から、排気マニホールド(4)につながる冷媒通路(39)側へかけて狭隘化するようになっており、
集合管(27)から供給される冷媒の大部分が排気マニホールド(4)につながる冷媒通路(39)を通って流れ、冷媒のわずかな部分のみがシリンダブロック(2)に取り廻されている冷媒通路(32)へと方向転換されること
を特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記集合管(27)が前記シリンダブロック(2)に一体化されていること
を特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記連通孔(38)が、前記集合管(27)の上向きの流出口(37)内に配設されており、
前記排気マニホールド(4)へ通じる前記各冷媒通路(39)が、前記流出口(37)および前記連通孔(38)を直接延長した延長線上方に導かれていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記連通孔(38)が、シリンダヘッド用ガスケット(34)の流路口(33)の下方に配置されており、
前記排気マニホールド(4)へ通じる前記冷媒通路(39)が、前記流路口(33)の上方に配置されており、
前記冷媒通路(32)が、前記流路口(33)の下方で分岐していること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記集合管(27)が、前記冷媒回路(6)の分岐回路(10)に接続されており、前記分岐回路(10)には電動式冷媒ポンプ(22)が含まれていること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記集合管(27)が、前記冷媒回路(6)の分岐回路(10)に接続されており、前記分岐回路(10)には暖房用熱交換器(23)が含まれていること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
内燃機関(1)の冷機運転の際および/または暖機運転の際に前記冷媒回路(6)から前記集合管(27)に冷媒を供給する手段(11,15,16,21,22)が設けられていること
を特徴とする請求項5または請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の運転方法であって、
前記一体型排気マニホールド(4)を冷却しつつ前記シリンダブロック(2)のウォータージャケット(29)内を流れる冷媒の量を最小限化するために、内燃機関(1)の停止後において前記冷媒回路(6)内で循環される冷媒を前記集合管(27)内に供給すること
を特徴とする内燃機関の運転方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の運転方法であって、
前記一体型排気マニホールド(4)および前記シリンダヘッド(3)を冷却しつつ前記シリンダブロック(2)のウォータージャケット(29)内を流れる冷媒の量を最小限化するために、内燃機関(1)の始動後において前記冷媒回路内で循環される冷媒を前記集合管(27)内に供給すること
を特徴とする内燃機関の運転方法。
【請求項10】
暖房用熱交換器(23)を介して冷媒を前記集合管(27)内へ供給する工程を有すること
を特徴とする請求項9に記載の内燃機関の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の内燃機関と、請求項8および/または9に記載の本発明に係る内燃機関の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気マニホールドがシリンダヘッドに一体化されている内燃機関では、外付けタイプの排気マニホールドを備えた従来型の内燃機関の場合と比べ、より大量の熱が蓄えられる。そのため、場合によっては内燃機関の停止後に、一体型排気マニホールド内の冷媒が沸騰し始めて、損傷を引き起こすことがある。こうした排気マニホールド部における冷媒の好ましくない沸騰は、内燃機関の停止後にも所定期間にわたって一体型排気マニホールドの冷却を行う、いわゆるアフターアイドリングの冷機運転を行うことで回避することができる。
【0003】
しかしながら、この冷機運転時の冷却が、電動式冷媒ポンプを使用して、シリンダブロック、シリンダヘッド、および一体型排気マニホールドの、互いにつながり合っているウォータージャケットを通り抜けるように冷媒を循環させることで行われる場合は、循環される冷媒のうち、ごくわずかな部分だけしか排気マニホールドに供給されないことになる。したがって十分な冷却性能を保証するためには、電動式冷媒ポンプにより大量の冷媒を循環させなければならず、またこれにより電動式冷媒ポンプのサイズも相応に大型化した寸法にしなければならない。
【0004】
さらに、今後は冷間始動後の内燃機関の急速暖機も重要になってくる。なぜならばそれにより、冷間始動後の摩擦が低減され、燃料消費量が抑えられるのみならず、有害物質の排出量も低減されるからである。自動車の内燃機関においては、車室を急速に暖房して車両乗員の快適性を高めるために、急速暖機によって早めに加熱昇温された冷媒を自動車の暖房用熱交換器に供給することさえも可能となる。内燃機関の急速暖機にはこうした利点があるものの、内燃機関の始動直後においては、内燃機関のウォータージャケット内の冷媒は、全くあるいはほとんど動かされない。しかもこれがあまり長いと、ウォータージャケット内で最も急速に加熱される箇所にある冷媒がおおよそ沸点に達するまでかかることもありうる。排気マニホールドが一体化されている内燃機関においては、そのような箇所が、一体型排気マニホールド内に位置することになる。内燃機関の暖機運転時におけるこうした沸騰を、ウォータージャケットを通り抜けるように冷媒を循環させることで防止しようとしても、ウォータージャケットが互いにつながり合っている場合は、上記で冷機運転時の冷却について説明したのと同様の問題が生じてしまう。すなわち、循環される冷媒のうち、ごくわずかな部分だけしか一体型排気マニホールドには届けられない一方で、冷媒のかなり多くの部分はシリンダブロックを通って流れる。このため、シリンダが不必要なまでに冷却されてしまい、少なくとも目標とされる摩擦や燃料消費量の低減を達成できないことになってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、ウォータージャケットが互いにつながり合っていても、排気マニホールドの冷機運転および/または暖機運転の際に、ウォータージャケットに供給される冷媒の大半の部分が一体型排気マニホールド内に供給されるようにする一方で、冷媒のごくわずかな部分のみがシリンダブロックを通ってシリンダ周辺へと流れるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、くびれた開口断面を有する連通孔を介してウォータージャケットと連通する集合管が含まれており、前記連通孔内の流れの向きの直接延長上に配置されるウォータージャケットの冷媒通路は、排気マニホールドへと通じており、前記連通孔の下流側で側方に分岐している冷媒通路は、シリンダブロック内のウォータージャケットへと通じているということにより、上記課題は解決される。
【0007】
本発明は、集合管に導かれた冷媒が連通孔の開口断面のくびれ部を通って著しく加速されて、連通孔から放出される冷媒がより高い流体インパルスを持つようになるという着想に基づいている。こうした流体インパルスにより、連通孔の下流側では、冷媒の大半の部分が、まっすぐ流れていく、すなわち、連通孔に対してほぼ一直線上に配設され排気マニホールドに取り廻された冷媒通路を通って連通孔内の流れの向きの延長線上へと流れていくようになっている一方で、冷媒のごくわずかな部分のみが、連通孔の下流側で側方に分岐されてシリンダブロック内に取り廻されている冷媒通路内へと転向されるようになっている。上述の流れの様子は、数学的シミュレーションによって確認され、集合管内に供給される冷媒の大部分が実際に一体型排気マニホールド内へと届けられる。これにより、大量の冷媒をウォータージャケットに通して循環させざるを得ないということもなく、一体型排気マニホールドの冷却性を、内燃機関の冷機運転中にも暖機運転時にも改善することができる。
【0008】
以下の説明で使用する用語「シリンダブロックのウォータージャケット」と、「シリンダヘッドのウォータージャケット」と、「一体型排気マニホールドのウォータージャケット」は、互いに分離した複数のウォータージャケットではなくて、シリンダブロック内と、シリンダヘッド内と、排気マニホールド内に空所として設けられている部分がひとつながりとなったウォータージャケット、すなわち互いにつながり合った冷媒通路と解釈されるべきである。
【0009】
本発明の好ましい構成形態の一例においては、排気マニホールドの暖機運転の際には、冷媒回路の主回路に組み込まれ内燃機関により駆動される主冷媒ポンプによって冷媒を集合管に供給できるようになっており、また、冷機運転の際に内燃機関が停止して内燃機関により駆動される主冷媒ポンプが停止しているならば、冷媒回路の分岐回路に組み込まれる電動式冷媒ポンプによって冷媒を集合管に供給できるようになっている。本発明に係る特徴の組み合わせによると、集合管からの冷媒の大半の部分が一体型排気マニホールド内へと供給されることになり、またこれにより一体型マニホールドを冷却するためには比較的少ない冷媒流量で十分となって、ウォータージャケットの全体を通り抜けて冷媒が流れる場合と比べて、電動式冷媒ポンプをより小型の寸法とすることが可能となる。内燃機関の通常運転の間は、電動式冷媒ポンプのスイッチが切られて、冷媒は主冷媒ポンプによって循環されるが、このときに冷媒は、分岐回路や集合管に供給されるのではなく、少なくとも一つの別の入口を通って内燃機関のウォータージャケット内へと供給されるようになっており、冷媒はウォータージャケットの冷媒通路を通り抜けるように導かれる、つまり、まずシリンダブロックを通り抜け、続いてシリンダヘッドや排気マニホールドを通り抜けて流れるようになっている。
【0010】
自動車の内燃機関においては、内燃機関の暖機運転の際に必要に応じて車室の急速暖房ができるように、集合管に接続される分岐回路に少なくとも暖房用熱交換器を含めることが好ましい。この分岐回路は、ほかにもさらに、停止された内燃機関のターボチャージャーのクールダウンのためにも利用することができる。このターボチャージャーには、内燃機関の通常運転の間にも冷媒を供給する必要があるので、ターボチャージャーは冷媒回路の主回路にも接続するのが好ましい。
【0011】
本発明のさらなる好適な実施形態においては、集合管がシリンダブロックに一体化される。このようにすると、シリンダブロックのウォータージャケットへの集合管の接続を容易に実現できる。この場合には、開口部の断面がくびれた連通孔を、集合管の上向きの流出口通路に配設し、その延長線上方へ向けて排気マニホールドのウォータージャケットに通じる冷媒通路が導かれるようにするのが好ましい。
【0012】
さらに集合管をシリンダブロックへ一体化することの利点として、シリンダヘッド用ガスケットに設けられている既存の流路口(内燃機関の通常運転の際にシリンダヘッドおよび排気マニホールドのウォータージャケット内の冷媒の一部が通り抜けるようになっている流路口)を、内燃機関の冷機運転または暖機運転の際に、集合管から狭隘化された連通孔を通って排気マニホールドのウォータージャケットの冷媒通路内に流れ込む冷媒を導くために利用することができるという点がある。これにより、排気マニホールドが一体化されている既存のシリンダヘッドに、変更を加える必要がなくなる。集合管の連通孔は、シリンダヘッド用ガスケットの流路口より下方で、集合管の上向きの流出口通路に配設されるのが好ましく、そのようにすると、内燃機関の冷機運転または暖機運転時において、流出口通路および連通孔を通り抜けて流れて連通孔内で加速された冷媒の大部分は、直線的に上方に向けてシリンダヘッド用ガスケットの流路口を通り抜け、それから排気マニホールドのウォータージャケットへと流れ込んでいく。これに対して、シリンダブロックのウォータージャケットに通じる冷媒通路は、シリンダヘッド用ガスケットまたはその流路口より下方で、一つまたは複数の側方に向けて流出口から分岐しており、これにより冷媒のごくわずかな部分のみがシリンダブロック方面の冷媒通路内に流れ込むようになっている。
【0013】
本発明に係る内燃機関の運用においては、内燃機関の停止後および/または暖機運転時に、一体型排気マニホールドの冷機運転時の冷却またはウォーミングアップ時の冷却のために、冷媒回路を通り抜けるように循環される冷媒を集合管内に供給することにより、排気マニホールドを十分に冷却する一方で、そのために内燃機関のウォータージャケットを通して循環させなければならない冷媒の量を抑制している。集合管への冷媒の供給は、内燃機関の通常運転中には冷媒が循環されない冷媒回路の分岐回路を介して行われることが好ましい。自動車の内燃機関では、内燃機関の暖機運転時における自動車内車室の急速暖房ができるように、冷媒が暖房用熱交換器を通して集合管内に供給されるようにするとよい。
【0014】
以下においては、図面に示される実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一体型排気マニホールドを有する内燃機関の冷媒回路の模式図である。
図2】内燃機関のウォータージャケットと、このウォータージャケットに接続された集合管の斜視図である。
図3】若干拡大して示す、シリンダブロックのウォータージャケットおよび集合管の斜視図である。
図4】内燃機関の通常運転時の、シリンダブロックのウォータージャケット内の流れの状況を解説するための、図3と同様な斜視図である。
図5】内燃機関の停止後および暖気運転時の、シリンダブロックのウォータージャケット内の流れの状況を解説するための、図3と同様な斜視図である。
図6】集合管の作用の様子を解説するための、図3の線VI―VIに沿って切り取ったときの、概略的な断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に模式的にのみ示す自動車の内燃機関1は、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、このシリンダヘッド3に一体化された排気マニホールド4、そしてターボチャージャー5を有しており、内燃機関1は、冷媒回路6を通り循環される液体冷媒により冷却されるようになっている。
【0017】
図1に示されるように、この冷媒回路6は、主回路7、短絡用分岐管8、オイルクーラー用分岐管9、および分岐回路10から成っている。主回路7は、内燃機関1の通常運転の際に冷媒を循環させる、内燃機関1によって駆動される主冷媒ポンプ11を有しており、冷媒は、まず内燃機関1のウォータージャケット12を通り抜けた後、続いてファン14が備えられたメインラジエータ13を通り、主冷媒ポンプ11に還流されるようになっている。主回路7はさらに、主冷媒ポンプ11の上流側に配置される第1のロータリーバルブ15を有しており、内燃機関1の暖機運転の間は、ウォータージャケット12を通り抜けて送られる冷媒が、メインラジエータ13を迂回して短絡用分岐管8を通って冷却されることなく直接に主冷媒ポンプ11に還流されるように、このロータリーバルブ15を調整できるようになっている。そのほか、主回路7は、主冷媒ポンプ11から主回路7を通って循環される冷媒の流量をそれによって制御できる、主冷媒ポンプ11の下流側に配置される第2のロータリーバルブ16を有している。内燃機関1のウォータージャケット12は、シリンダブロック2に配設された入口17により主冷媒ポンプ11に接続され、かつ、シリンダヘッド3に配設された第1の出口18によりメインラジエータ13および短絡用分岐管8に接続されている。
【0018】
オイルクーラー用分岐管9はオイルクーラー17を含んでおり、このオイルクーラー17は、シリンダヘッド3側のウォータージャケット12の第2の出口19の下流側かつ第1のロータリーバルブ15の上流側に位置するオイルクーラー用分岐管9に配置されていて、そのためエンジンオイルを冷却するために冷媒の一部をこのロータリーバルブ15によってオイルクーラー17に通して導くことができるようになっている。
【0019】
分岐回路10は、内燃機関1のウォータージャケット12とメインラジエータ13または短絡用分岐管8との間で主回路7から分岐しており、この分岐回路10は、制御が可能な遮断弁21と、オン・オフ可能な電動式冷媒ポンプ22と、自動車の室内暖房の暖房用熱交換器23とを含んでおり、分岐回路10はさらにそこからターボチャージャー5へと取り廻され、分岐回路10を通り流れる冷媒によりターボチャージャー5の冷却を行えるようになっている。分岐回路10は、第1のロータリーバルブ15と主冷媒ポンプ11との間において主回路7に再び合流しており、さらに、二本の管路24、25により内燃機関1のウォータージャケット12に接続されている。両管路24、25のうち、第1の管路24は、暖房用熱交換器23の下流側で分岐回路10から分岐しており、この第1の管路24は、分岐回路10からウォータージャケット12に向けての一方向の流れだけを許容する逆止弁26を備えており、さらにこの第1の管路24は、後ほど図3から図6を参照して詳しく説明する冷媒集合管27に合流している。第2の管路25は、ウォータージャケット12から分岐回路10へと取り廻されて、第1の管路24の分岐回路10からの分岐点の下流側かつターボチャージャー5の上流側で分岐回路10に合流している。この第2の管路25も同様に逆止弁28を備えており、この逆止弁28は、ウォータージャケット12から分岐回路10に向けての一方向の流れだけを許容するようになっていて、冷媒がターボチャージャー5に供給されるのは、主回路7および第2の管路25を通ってなのか、それとも分岐回路10を通ってなのかを、選択できるようになっている。
【0020】
図2に最もよく示されているように、内燃機関のウォータージャケット12は、シリンダブロック2内と、シリンダヘッド3内または一体型排気マニホールド4内に空所として設けられており互いにつながり合った、または互いに連通している三つの部分29、30、31を備えており、以下においてはこの部分29をシリンダブロック2のウォータージャケット、部分30をシリンダヘッド3のウォータージャケット、部分31を排気マニホールド4のウォータージャケットと呼ぶ。
【0021】
図1および図4に示されるように、内燃機関1の通常運転中は、冷媒入口17にて主回路7からシリンダブロック2のウォータージャケット29内に供給される。図4に矢印Aで示されるように、冷媒はまずシリンダブロック2のウォータージャケット29を通って各シリンダ周囲を流れた後、その大部分は、集合管27の上方の各冷媒通路32およびシリンダヘッド用ガスケット34(図6)の各流路口33を通り、図4に矢印Bで示されるように、シリンダブロック2から上向きに流出していくようになっている。ここで、各流路口33とつながっている冷媒通路39を通った冷媒は、排気マニホールド4のウォータージャケット31およびシリンダヘッド3のウォータージャケット30内に入り、そこから出口18、19(図1)のいずれかを通り再び流出していくようになっている。シリンダブロック2内に供給される冷媒のさらに別の一部は、図4に矢印Cで示されるように、集合管27の下側のシリンダブロック2に配設された出口35を通り、管路25を通ってターボチャージャー5まで流れるようになっている。
【0022】
内燃機関1が停止して主冷媒ポンプ11が停止状態となることにより、運転中に排気マニホールド4内に蓄えられた高熱で排気マニホールド4のウォータージャケット31内の冷媒が沸騰してしまうことを回避するために、冷機運転時に、ターボチャージャー5の冷却と並行して排気マニホールド4も冷却されるようになっている。そのために、電動式冷媒ポンプ22が始動されると同時に、分岐回路10の弁21が開弁されて、冷媒を主回路7から分岐回路10に通して図1の矢印Dの向きに循環させるようになっている。循環される冷媒の一部がターボチャージャー5を冷却する一方で、残りの冷媒は、図5に矢印Eで示されるように、集合管27の流入口36を通じてウォータージャケット12内に供給され、供給された冷媒の大部分は、図5に矢印Fで示されるように、排気マニホールド4へと上向きに流れていく。ここで、ウォータージャケット12内に供給される冷媒の相当な部分が無駄にシリンダブロック2を通り抜けて流れていってしまい、所望されるほどには排気マニホールド4のウォータージャケット31内に供給されないということが、集合管27の補助により回避されるようになっている。
【0023】
このために、図3および図6に最もよく示されているように、シリンダブロック2に一体化された、概ね水平方向に延びる集合管27は、複数の上向きの流出口37を有しており、その数は排気マニホールド4の冷媒通路31の数と等しいのが好ましい。図6にこの流出口37のうちの一つを例として示しているように、各流出口37内には、開口部の断面がくびれた、鉛直方向に向いた連通孔38が配設されている。集合管27内に供給された冷媒は、この連通孔38内で、断面がくびれて狭隘化しているために著しく加速されて、連通孔38のすぐ下流側の冷媒は、高い流速と強い上向きの流れのインパルスを持つことになる。各流出口37は、この連通孔38の下流側つまりは上方で、二つの冷媒通路32、39に分岐している。連通孔38内の冷媒の流れの向きの延長上の冷媒通路39が、連通孔38の上側に配設されたシリンダヘッド用ガスケット34の流路口33を経由してさらにその上に位置する排気マニホールド4のウォータージャケット31(図2)へと通じているのに対して、他方の冷媒通路32は、概ね直角に分岐した後、シリンダブロック2のウォータージャケット29へと通じている。連通孔38の下流側の強い上向きの流れの推進力のために、冷媒の大半の部分はシリンダヘッド用ガスケット34の流路口33を通って冷媒通路39内に至り、さらに排気マニホールドのウォータージャケット31へと流れる一方で、冷媒のごくわずかな部分だけは冷媒通路32へと方向転換し、そこからシリンダブロック2のウォータージャケット29へと流れる。排気マニホールド4のウォータージャケット31を通って流れる冷媒は、続いてシリンダヘッド3のウォータージャケット30を通り、出口18および/または出口19に向けて流れる。
【0024】
内燃機関1の暖機運転の際にも、上記で説明した冷機運転の冷却のときと同じ効果が利用される。冷間始動後の急速暖機のために、まず両方のロータリーバルブ15、16を適宜制御することによって、内燃機関1のウォータージャケット12内の冷媒を循環させない、または最小限の量だけで循環させるようにする。これは、最高温度の箇所、特に一体型排気マニホールド4内の最高温度の箇所での冷媒の循環が必要となるまで継続される。この際、排気マニホールド4を冷却するために、両方のロータリーバルブ15、16を制御して、冷媒が分岐回路10のみを通って流れてから、管路24を通って集合管27の流入口36に供給されるようにする。冷媒は、排気マニホールド4のウォータージャケット31およびシリンダヘッド3のウォータージャケット30の通過後、出口18から主回路7および短絡用分岐管8を経由して、主冷媒ポンプ11に戻され、そこからあらためて分岐回路10を通して送られる。排気マニホールド4内で加熱された冷媒は、車室を暖房するために、必要に応じて暖房用熱交換器23を通して送ることもできる。
【0025】
内燃機関1または冷媒が所望の動作温度に達すると、ロータリーバルブ15、16を制御して、主回路7を開き、主冷媒ポンプ11によって大量の冷媒を内燃機関1の冷媒ジャケット12全体を通して循環させる。ここで冷媒は、まず入口17を通ってシリンダブロック2のウォータージャケット29へ供給されて循環した後、各冷媒通路32、シリンダヘッド用ガスケット34の流路口33、および冷媒通路39を通り、排気マニホールド4およびシリンダヘッド3のウォータージャケット31、30へと流れ込むようになっている。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 一体型排気マニホールド
5 ターボチャージャー
6 冷媒回路
7 主回路
8 短絡用分岐管
9 オイルクーラー用分岐管
10 分岐回路
11 主冷媒ポンプ
12 内燃機関のウォータージャケット
13 メインラジエータ
14 ファン
15 第1ロータリーバルブ
16 第2ロータリーバルブ
17 入口
18 ウォータージャケット出口
19 ウォータージャケット出口
20 ―
21 遮断弁
22 電動式冷媒ポンプ
23 暖房用熱交換器
24 管路
25 管路
26 逆止弁
27 集合管
28 逆止弁
29 シリンダブロックのウォータージャケット
30 シリンダヘッドのウォータージャケット
31 排気マニホールドのウォータージャケット
32 シリンダブロックの冷媒通路
33 流路口
34 シリンダヘッド用ガスケット
35 ウォータージャケット出口
36 集合管流入口
37 集合管流出口
38 断面がくびれた連通孔
39 排気マニホールドの冷媒通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6