(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、少なくとも前記検出値が前記所定の閾値以上である場合に前記警報を報知し、前記所定領域の内側における所定の閾値は、前記所定領域の外側における所定の閾値よりも小さい、請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両用周辺監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、前、後、左及び右は、運転席に着座したオペレータを基準とする用語である。例えば、前は、運転席に着座した操作者であるオペレータ(作業車両を点検又は修理する際は、オペレータではなくサービスマン)の視線が向かう側であり、運転席からオペレータによって操作されるハンドルに向かう側である。後は、前の反対側であり、ハンドルから運転席に向かう側である。作業車両の車幅方向は、作業車両の左右方向と同義である。
【0017】
<作業車両>
図1は、本実施形態に係る作業車両を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る作業車両が有するキャブ3の構造及び内部を示す図である。本実施形態において、作業車両としてのダンプトラック(オフハイウェイトラックともいう)1は、鉱山での作業等に用いられる自走式の超大型の車両である。本実施形態において、作業車両は、上部旋回体及び作業機を有していないものであればよい。また、作業車両としてのダンプトラックの形式は限定されるものではない。
【0018】
ダンプトラック1は、例えば、アーティキュレーテッド式等であってもよい。ダンプトラック1は、車体部2と、キャブ3と、ベッセル4と、左右一対の前輪5と、左右各々が2輪1組となり左右一対をなす後輪6とを含む。車体部2は、アッパデッキ2b及び前後方向に沿って配置されたフレーム2fを含む。また、ダンプトラック1は、自身の周囲を監視して、その結果を表示する周辺監視システムを有する。周辺監視システムの詳細は後述する。
【0019】
本実施形態において、ダンプトラック1は、ディーゼルエンジン等の内燃機関が発電機を駆動することによって発生した電力で電動機を駆動し、後輪6を駆動する。このように、ダンプトラック1は、いわゆる電気駆動方式であるが、ダンプトラック1の駆動方式はこれに限定されるものではない。例えば、ダンプトラック1は、内燃機関の動力を、トランスミッションを介して後輪6へ伝達し、これを駆動するものであってもよいし、架線からトロリーを介して供給された電力で電動機を駆動し、この電動機によって後輪6を駆動するものであってもよい。
【0020】
フレーム2fは、内燃機関及び発電機等の動力発生機構とその補機類とを支持している。フレーム2fの前部には、左右の前輪5(
図1では右前輪のみを示している)が支持されている。フレーム2fの後部には、左右の後輪6(
図1では右後輪のみを示している)が支持されている。前輪5及び後輪6は、直径が2m(メートル)〜4m(メートル)程度である。後輪6は、ベッセル4の幅方向内側の位置又はベッセル4の幅方向外側と後輪6の幅方向外側とがほぼ同じ位置に配置される。フレーム2fは、ロアデッキ2aと、アッパデッキ2bとを有する。ロアデッキ2aは地面に近い側に設けられており、アッパデッキ2bはロアデッキ2aの上方に設けられている。このように、鉱山で用いられるダンプトラック1は、ロアデッキ2aとアッパデッキ2bとを有する二重デッキ構造となっている。
【0021】
ロアデッキ2aは、フレーム2fの前面の下部に取り付けられる。アッパデッキ2bは、ロアデッキ2aの上方に配置されている。ロアデッキ2aの下方には、例えば、キャブ3への乗降用に用いられる可動式のラダー2cが配置されている。ロアデッキ2aとアッパデッキ2bとの間には、両者の間を行き来するための斜めラダー2dが配置されている。また、ロアデッキ2aとアッパデッキ2bとの間には、ラジエーターが配置されている。アッパデッキ2bの上には、柵状の手すり2eが配置されている。本実施形態において、ラダー2c及び斜めラダー2dは、アッパデッキ2b及びロアデッキ2aの一部であるものとする。
【0022】
図1に示すように、キャブ(運転室)3は、アッパデッキ2b上に配置されている。キャブ3は、アッパデッキ2b上において、車幅方向の中央よりも車幅方向における一方側にずらされて配置されている。具体的には、キャブ3は、アッパデッキ2b上において車幅方向の中央よりも左側に配置されている。キャブ3の配置は、車幅方向の中央よりも左側に限定されるものではない。例えば、キャブ3は、車幅方向の中央よりも右側に配置されていてもよいし、車幅方向の中央に配置されていてもよい。キャブ3内には、運転席、ハンドル、シフトレバー、アクセルペダル及びブレーキペダル等の操作部材が配置されている。
【0023】
図2に示すように、キャブ3は、複数本(本実施形態では4本)の支柱3a、3b、3c、3dを含むROPS(Roll-Over Protection System:転倒時保護構造)を備えている。ROPSは、万一ダンプトラック1が転倒した場合、キャブ3内のオペレータを保護する。ダンプトラック1の運転者は、車体部2の左側の路肩を容易に確認できる状態で走行するが、車体部2の周囲を確認するためには、頭を大きく動かす必要がある。また、アッパデッキ2bには、ダンプトラック1の周囲を確認するために、図示しないサイドミラーが複数設けられている。これらのサイドミラーは、キャブ3から離れた位置に配置されているので、運転者は、サイドミラーを用いて車体部2の周辺を確認する場合にも、頭を大きく動かす必要がある。
【0024】
図2に示すように、キャブ3内には、運転席31、ハンドル32、ダッシュカバー33、無線装置34、ラジオ受信機35、リターダ36、シフトレバー37、トレーナー席38、
図2には示していない監視制御装置としてのコントローラ(詳細は後述する)、モニタ50、アクセルペダル及びブレーキペダル等が設けられている。モニタ50は、ダッシュカバー33に組み込まれたものを
図2に示している。しかし、これに限定されず、例えば、モニタ50は、ダッシュカバー33の上に設置されたものでもよいし、キャブ3内の天井から吊り下げて設置されたものでもよい。つまり、オペレータがモニタ50を視認できる位置にモニタ50が設置されていればよい。なお、
図2には示していないコントローラは、後述する周辺監視システム10の一部である。シフトレバー37は、ダンプトラック1のオペレータが、ダンプトラック1の進行方向を切り替えたり、速度段を切り替えたりするための装置である。
【0025】
図1に示すベッセル4は、砕石等の積荷を積載するための容器である。ベッセル4の底面の後部は、回転ピンを介してフレーム2fの後部に回動可能に連結されている。ベッセル4は、油圧シリンダ等のアクチュエータによって、積載姿勢と起立姿勢とを取ることができる。積載姿勢は、
図1に示すように、ベッセル4の前部がキャブ3の上部に位置する姿勢である。起立姿勢は、積荷を排出する姿勢であり、ベッセル4が後方かつ下方へ向かって傾斜した状態となる姿勢である。ベッセル4の前部が上方に回動することによってベッセル4は積載姿勢から起立姿勢に変化する。ベッセル4は、前方に鍔部4Fを有している。鍔部4Fは、プロテクターとも呼ばれることがあり、キャブ3の上方まで延出してキャブ3を覆っている。キャブ3の上方に延出した鍔部4Fは、砕石等の衝突からキャブ3を保護する。
【0026】
<周辺監視システム>
図3は、本実施形態に係る周辺監視システム10を示す図である。
図4は、本実施形態に係る周辺監視システム10が有する撮像装置11〜16を搭載したダンプトラック1の斜視図である。
図5は、複数の撮像装置11〜16によって撮像される領域及び複数の撮像装置11〜16によって撮像された画像の情報に基づいて生成された俯瞰画像200を示す模式図である。
図5に示す、複数の撮像装置によって撮像される領域は、地面を基準とした領域である。
図3に示すように、周辺監視システム10は、複数(本実施形態では6台)の撮像装置11、12、13、14、15、16と、複数(本実施形態では8台)のレーダ装置21、22、23、24、25、26、27、28と、モニタ50と、監視制御装置としてのコントローラ100とを有している。なお、本実施形態において、周辺監視システム10には、撮像装置11、12、13、14、15、16は必ずしも必要ではない。
【0027】
<撮像装置>
撮像装置11、12、13、14、15、16は、ダンプトラック1に取り付けられる。撮像装置11、12、13、14、15、16は、例えば、ワイドダイナミックレンジ(WDR:Wide Dynamic Range)カメラである。ワイドダイナミックレンジカメラは、明るい部分を視認できるレベルに保ちながら、暗い部分を明るく補正し、全体をくまなく視認できるように調整可能な機能を有したカメラである。
【0028】
撮像装置11、12、13、14、15、16は、ダンプトラック1の周囲を撮像し、画像情報として出力する。以下において、適宜、撮像装置11を第1撮像装置11、撮像装置12を第2撮像装置12、撮像装置13を第3撮像装置13、撮像装置14を第4撮像装置14、撮像装置15を第5撮像装置15、撮像装置16を第6撮像装置16という。また、これらを区別する必要がない場合、適宜、撮像装置11〜16という。
【0029】
図4に示すように、6台の撮像装置11〜16は、ダンプトラック1の周囲360度の範囲における画像を撮像するために、ダンプトラック1の外周部分にそれぞれが取り付けられている。本実施形態において、それぞれの撮像装置11〜16は、左右方向において120度(左右60度ずつ)、高さ方向において96度の視野範囲を有しているが、このような視野範囲に限定されるものではない。また、
図4には各撮像装置11〜16から矢印を示しているが、これら矢印の向きは各撮像装置11〜16が向いている方向を表している。
【0030】
図4に示すように、第1撮像装置11は、ダンプトラック1の前面に取り付けられる。具体的には、第1撮像装置11は、斜めラダー2dの上端部、より具体的には、最上段の踊り場部分の下部に配置される。第1撮像装置11は、アッパデッキ2bに取り付けられたブラケットを介して、ダンプトラック1の前方に向かって固定されている。
図5に示すように、第1撮像装置11は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第1領域11Cを撮像して画像情報としての第1画像情報を出力する。第1領域11Cは、ダンプトラック1の車体部2の前方に広がる領域である。
【0031】
図4に示すように、第2撮像装置12は、ダンプトラック1の前面における一方の側部に取り付けられる。具体的には、第2撮像装置12は、アッパデッキ2bの前面の右側部に配置される。第2撮像装置12は、アッパデッキ2bに取り付けられたブラケットを介して、ダンプトラック1の右斜め前方に向かって固定されている。
図5に示すように、第2撮像装置12は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第2領域12Cを撮像して画像情報としての第2画像情報を出力する。第2領域12Cは、ダンプトラック1の車体部2の右斜め前方に広がる領域である。
【0032】
図4に示すように、第3撮像装置13は、ダンプトラック1の前面における他方の側部に取り付けられる。具体的には、第3撮像装置13は、アッパデッキ2bの前面の左側部に配置される。そして、第3撮像装置13は、ダンプトラック1の車幅方向中央を通る軸に対して第2撮像装置12と左右対称となるように配置される。第3撮像装置13は、アッパデッキ2bに取り付けられたブラケットを介して、ダンプトラック1の左斜め前方に向かって固定されている。
図5に示すように、第3撮像装置13は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第3領域13Cを撮像して画像情報としての第3画像情報を出力する。第3領域13Cは、ダンプトラック1の車体部2の左斜め前方に広がる領域である。
【0033】
図4に示すように、第4撮像装置14は、ダンプトラック1の一方の側面に取り付けられる。具体的には、第4撮像装置14は、アッパデッキ2bの右側面の前部に配置される。第4撮像装置14は、アッパデッキ2bに取り付けられたブラケットを介して、ダンプトラック1の右斜め後方に向かって固定されている。
図5に示すように、第4撮像装置14は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第4領域14Cを撮像して画像情報としての第4画像情報を出力する。第4領域14Cは、ダンプトラック1の車体部2の右斜め後方に広がる領域である。
【0034】
図4に示すように、第5撮像装置15は、ダンプトラック1の他方の側面に取り付けられる。具体的には、第5撮像装置15は、アッパデッキ2bの左側面の前部に配置される。そして、第5撮像装置15は、ダンプトラック1の車幅方向中央を通る軸に対して第4撮像装置14と左右対称となるように配置される。
図5に示すように、第5撮像装置15は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第5領域15Cを撮像して画像情報としての第5画像情報を出力する。第5領域15Cは、ダンプトラック1の車体部2の左斜め後方に広がる領域である。
【0035】
図4に示すように、第6撮像装置16は、ダンプトラック1の後部に取り付けられる。具体的には、第6撮像装置16は、フレーム2fの後端であって、2個の後輪6、6を連結するアクスルハウジングの上方、かつベッセル4の回動軸付近に配置される。第6撮像装置16は、左右のフレーム2fを連結するクロスバーに取り付けられたブラケットを介して、ダンプトラック1の後方に向かって固定されている。
図5に示すように、第6撮像装置16は、ダンプトラック1の周囲に存在する領域のうち第6領域16Cを撮像して画像情報としての第6画像情報を出力する。第6領域16Cは、ダンプトラック1の車体部2の後方に広がる領域である。
【0036】
上述した6台の撮像装置11〜16を用いることにより、本実施形態に係る周辺監視システム10は、
図5の中央に示すように、ダンプトラック1の全周360度の画像を撮像し、その画像情報を取得することができる。6台の撮像装置11〜16は、それぞれが撮像した画像情報としての第1画像情報〜第6画像情報を、
図3に示すコントローラ100に送信する。
【0037】
第1撮像装置11、第2撮像装置12、第3撮像装置13、第4撮像装置14及び第5撮像装置15は、比較的高い位置にあるアッパデッキ2bに設けられている。このため、コントローラ100は、第1撮像装置11〜第5撮像装置15によって上方から地面を見下ろすような画像を得ることができ、また、地面に存在する車両等の物体(以下、適宜対象物という)を広範囲に撮像することができる。また、第1撮像装置11〜第6撮像装置16が取得した第1画像情報〜第6画像情報から、コントローラ100が
図5に示す俯瞰画像200を生成する際に視点変換を実行した場合でも、第1画像情報〜第6画像情報のうち第1画像情報〜第5画像情報は上方から撮像されて得られた情報なので、立体物の変形の程度が抑制される。
【0038】
<レーダ装置>
図6は、レーダ装置21〜28の配置を示す斜視図である。
図7は、各レーダ装置21〜28の検出範囲を示す図である。
図8は、ダンプトラック1の前方を検出するレーダ装置の具体的な配置を示す図である。
図9は、ダンプトラック1の左側方を検出するレーダ装置の具体的な配置を示す図である。
図10は、ダンプトラック1の右側方を検出するレーダ装置の具体的な配置を示す図である。
図11は、ダンプトラック1の後方を検出するレーダ装置の具体的な配置を示す図である。
図12は、ダンプトラック1の左側面とレーダ装置の照射状態を示す図である。
図13は、ダンプトラック1の後方とレーダ装置の照射状態を示す図である。
【0039】
本実施形態において、物体検出装置としてのレーダ装置21、22、23、24、25、26、27、28(以下、適宜レーダ装置21〜28という)は、例えば、方位(水平)方向80度(±40度)、上下(垂直)方向16度(±8度)の検出角度を有し、検出距離が最大15m以上のUWB(Ultra Wide Band)レーダ(超広域帯レーダ)である。レーダ装置21〜28は、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物とダンプトラック1との相対的な位置(相対位置)を検出する。それぞれのレーダ装置21〜28は、撮像装置11〜16と同様に、ダンプトラック1の外周部分に取り付けられる。各レーダ装置21〜28の方位(水平)方向の検出角度は、80度(±40度)としているが、これ以上の検出角度を有していてもよい。また、
図6には各レーダ装置21〜28から矢印を示しているが、これら矢印の向きが各レーダ装置21〜28の検出範囲の方向を表している。
【0040】
レーダ装置21、22について、主として、
図6及びダンプトラック1の前方視の
図8を参照して説明する。レーダ装置21、22は、アッパデッキ2bの下方に位置する、地上から1m程度の高さになるロアデッキ2a上及びラダー2dの下方に設けられる。レーダ装置21、22は、それぞれブラケットB21、B22を介して車両中心面Cに対して左右対称に取り付けられる。ここで、車両中心面C内の軸として、ダンプトラック1内で地上からの高さが同一の2点の場所を結んだ線であって、ダンプトラック1の後方から前方に向かって伸びている車両中心面C内にある線を基準軸として定義する。
図7に示す一点鎖線CHは、その車両中心面C内の基準軸に対して、ダンプトラック1の左右方向に平行な線を、説明のために示したものである。以下、レーダ装置21、22の具体的な取付例に関して説明する。レーダ装置21は、前方斜め左方向に向けられて配置され、レーダ装置22は、前方斜め右方向に向けられて配置される。具体的には、
図7に示すように、レーダ装置21の水平方向の照射中心軸C21は、ダンプトラック1の中心面(以下、適宜車両中心面という)C内の基準軸を基準として、その基準軸から反時計まわりであって、ダンプトラック1の左側に45度傾けられる。レーダ装置22の水平方向の照射中心軸C22は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から時計回りであって、ダンプトラック1の右側に45度傾けられる。各照射中心軸C21、C22は、互いに交差する。また、レーダ装置21、22の垂直方向の各照射中心軸は、約5度の俯角を有する。このようにすることで、ダンプトラック1の前端部から前方の領域の障害物をすべて検出することができる。
【0041】
車両中心面Cを中心として左右対称に配置する、レーダ装置28及びレーダ装置23を、
図6、ダンプトラック1の左側から側方視となる
図9及びダンプトラック1の右側からの側方視となる
図10を参照して説明する。レーダ装置28は、主にレーダ装置21、22の左側側方を撮像する撮像装置13、15が備えられるアッパデッキ2bの下方に位置するロアデッキ2aの左側端部、かつラダー2c上端部近傍に設けられる。レーダ装置28は、ロアデッキ2bにブラケットB28を介し取り付けられ、レーダ装置21、22の左側の側方かつ外側に向けて配置される。
【0042】
レーダ装置23は、ダンプトラック1の右側からの側方視となる
図10や後に詳細を説明する
図7に示すように、レーダ装置28とは車両中心面Cを中心(基準)に左右対称位置に設置される。レーダ装置23は、主にダンプトラック1の右側側方を撮像する撮像装置12、14が備えられるアッパデッキ2bの下方に位置するロアデッキ2aの右側端部かつ車両右側方に設けられたラダー2cに設けられる。レーダ装置23は、ロアデッキ2aにブラケットB23を介し取り付けられ、ダンプトラック1の右側の側方かつ外側に向けて配置される。
【0043】
図7は、レーダ装置21〜28の検出範囲を示す。まず、車両中心面Cを中心として左右対称に配置される、レーダ装置23、28の具体的な取付例を説明する。レーダ装置23の水平方向における照射中心軸C23は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から反時計まわりであって、ダンプトラック1の右側に70度傾けられている。レーダ装置28の水平方向の照射中心軸C28は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から時計まわりであって、ダンプトラック1の左側に70度傾けられている。また、レーダ装置23、28の垂直方向の各照射中心軸は、約5度の俯角を有している。
【0044】
レーダ装置23、28は、ダンプトラック1の側方、特に前輪5及び後輪6の前方側に存在する対象物を検出する。また、レーダ装置23、28は、ベッセル4及びアッパデッキ2bの下方に位置しているので、積載時にベッセル4から飛び出す飛石等の衝突といった影響を受けにくくなっている。
【0045】
車両中心面Cを中心として左右対称に配置する、レーダ装置27及びレーダ装置24を、
図6、ダンプトラック1の左側から側方視となる
図9及びダンプトラック1の右側からの側方視となる
図10を参照して説明する。レーダ装置27は、エアークリーナ62の側端部に配置される。エアークリーナ62は、アッパデッキ2bの下方に位置するロアデッキ2aに向けて延伸する車両左側のフロントフェンダー2gから側方に張り出した位置に設けられている。アッパデッキ2bには、主にダンプトラック1の左側における側方を撮像する撮像装置13、15が備えられる。レーダ装置27は、フロントフェンダー2gにブラケットB27を介し、後方に向けて取り付けられる。本実施形態では、レーダ装置27の取り付け高さは、地上から2.5m程度であるが、この取り付け高さは車両の大きさに応じて適宜決められる。他のレーダ装置21〜26、28の取り付け高さも同様に車両の大きさに応じて適宜決められる。
【0046】
図6及び
図7に示すように、レーダ装置24は、ダンプトラック1の左側からの側方視において、レーダ装置27とは車両中心面Cを基準に左右対称位置に設置される。レーダ装置24は、エアークリーナ62の側端部に配置される。エアークリーナ62は、アッパデッキ2bの下方に位置するロアデッキ2aに向けて延伸する車両右側のフロントフェンダー2gから右側側方に張り出した位置に設けられている。アッパデッキ2bには、主に車両の右側側方を撮像する撮像装置12、14が備えられる。レーダ装置24は、フロントフェンダー2gにブラケットB24を介し、後方に向けて取り付けられる。
【0047】
次に、レーダ装置24、27の具体的な取付例を説明する。レーダ装置24の水平方向の照射中心軸C24は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から反時計まわりであって、ダンプトラック1の右側に30度傾けられている。レーダ装置27の水平方向の照射中心軸C27は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から時計まわりであって、ダンプトラック1の左側に30度傾けられている。これらの角度は、30度に限らず、45度以下であればよい。すなわち、水平検出範囲の後方側限界線L24、L27が車両中心面C側に向けられ、照射領域には前輪5及び後輪6を含めた車両重複領域E1が形成される角度になればよい。この照射中心軸C24、C27は、前輪5が若干照射領域に含まれるとともに、後輪6の接地部分が照射領域に含まれるように指向されることが好ましい。レーダ装置24、27の垂直方向の各照射中心軸は、約15度の俯角を有する。車両重複領域E1は、ダンプトラック1の内側の領域と照射領域とが重なった領域であり、後述する車両領域に含まれる。
【0048】
レーダ装置24、27は、ダンプトラック1の側方、特にベッセル側方全域に該当する側方後方領域に存在する対象物を検出する。また、各レーダ装置24、27は、ベッセル4及びアッパデッキ2bの下方に位置するので、積載時にベッセル4から飛び出す飛石等の衝突といった影響を受けにくくなる。
【0049】
図7に示すように、レーダ装置23、24の水平方向の側方検出範囲及びレーダ装置27、28の水平方向の側方検出範囲はそれぞれ重複部分を有している。このためレーダ装置23、24、27、28は、ダンプトラック1の前端から後端までの間における両側方の領域に存在する対象物を隈なく検出することができる。また、キャブ3が設置されるダンプトラック1の左側の対称位置となる車両右側に配置されるレーダ装置23、24は、キャブ3からの視認が困難になるダンプトラック1の右側方向に存在する対象物を検出することが可能になる。
【0050】
レーダ装置25、26を、
図6及びダンプトラック1の後方視となる
図11を参照して説明する。レーダ装置25、26は、地上から2m程度の高さ、かつベッセル4の撮像装置16が設置されたクロスメンバー70よりも下方に位置する後輪6の駆動軸のリアアクスル71のケース後方側に配置される。なお、レーダ装置25、26の取り付け高さは、車両の大きさに応じて適宜決められる。レーダ装置25、26は、それぞれブラケットB25、B26を介して車両中心面Cに対して左右対称に取り付けられる。また、レーダ装置25、26は、リアサスペンションシリンダ72の接合部73間に設けられる。レーダ装置25は、後方斜め右方向に向けられて配置され、レーダ装置26は、後方斜め左方向に向けられて配置される。
【0051】
図7に示すように、レーダ装置25の水平方向の照射中心軸C25は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から反時計まわりであって、ダンプトラック1の右側に45度傾けられている。レーダ装置26の水平方向の照射中心軸C26は、車両中心面C内の基準軸を基準として、その基準軸から時計まわりであって、ダンプトラック1の左側に45度傾けられている。各照射中心軸C25、C26は、ベッセル4の下方において車両中心面C上でそれぞれ交差する。また、レーダ装置25、26の垂直方向の各照射中心軸は、俯角方向に0〜10度、本実施形態では約5度の俯角を有する。
【0052】
各レーダ装置25、26は、車両中心面Cに対し左右対称に取り付けられ、かつ各照射中心軸が交差するように設置されている。このため、ダンプトラック1の後端部から後方の領域に存在する対象物をすべて検出することができる。特に、レーダ装置25、26は、クロスメンバー70よりも低い位置となるリアアクスル71のケースに小さい俯角をもって配置される。
図12及び
図13に示すように、ダンプトラック1の低い位置に小さい俯角をもって設置されたレーダ装置25、26は、ダンプトラック1の遠方及びベッセル4の下方又は後方に隠れた対象物を同時に検出することができる。本実施形態において、レーダ装置25の水平方向の照射中心軸C25とレーダ装置26の水平方向の照射中心軸C26とは、車両中心面Cに対して45度としたが、45度以下であればよく、例えば30度であってもよい。この値は、後輪6の後端に対するレーダ装置25、26の後方への張り出し具合によって決定すればよい。
【0053】
8台のレーダ装置21〜28は、ダンプトラック1の周囲360度全周を検出範囲として、対象物とダンプトラック1との相対位置を検出することができる。8台のレーダ装置21〜28は、それぞれ検出した対象物とダンプトラック1との相対位置を示す相対位置情報をコントローラ100に送信する。このように、複数(8台)のレーダ装置21〜28は、車体部2に設けられて、車体部2の全周範囲に存在する対象物を検出可能である。
【0054】
ダンプトラック1の各々の方向に存在する対象物を検出するレーダ装置21〜28は、俯瞰画像を生成するためダンプトラック1の各々の方向を撮像する各撮像装置11〜16よりも低い位置の部材に取り付けられる。各撮像装置11〜16は、俯瞰画像を生成するために高い位置に配置された方が俯瞰画像に違和感がない。また、照射領域が垂直方向に狭い角度を有するレーダを用いても、撮像装置11〜16より低い位置にレーダを設置することにより、近くから遠くまでの対象物を検出することができ撮像装置11〜16が撮像し生成した俯瞰画像中に、レーダ装置21〜28が検出した対象物位置情報に対応する指標を俯瞰画像中へ表示することができる。
【0055】
<コントローラ>
図3に示すコントローラ100は、撮像装置11〜16及びレーダ装置21〜28を用いて、ダンプトラック1の周囲における対象物の有無を俯瞰画像200に表示し、必要に応じて対象物の存在をオペレータに報知する。コントローラ100は、
図3に示すように、俯瞰画像合成部110、カメラ画像切替・視点変換部120、対象物位置情報生成部130、表示制御部140、対象物情報収集部210及び対象物処理部220を有している。
【0056】
俯瞰画像合成部110は、
図3に示すように、撮像装置11〜16に接続されている。俯瞰画像合成部110は、それぞれの撮像装置11〜16が撮像し、生成した複数の画像情報(第1画像情報〜第6画像情報)を受信する。そして、俯瞰画像合成部110は、受信した複数の画像情報に対応した画像を合成して、ダンプトラック1の全周囲を含む俯瞰画像200を生成する。具体的には、俯瞰画像合成部110は、複数の画像情報をそれぞれ座標変換することによって、複数の画像を所定の投影面上に投影させた俯瞰画像200をモニタ50に表示するための俯瞰画像情報を生成する。
【0057】
カメラ画像切替・視点変換部120は、
図3に示すように、撮像装置11〜16に接続されている。そして、カメラ画像切替・視点変換部120は、例えば、レーダ装置21〜28による障害物検出の結果等に応じて、俯瞰画像200とともにモニタ50の画面に表示される各撮像装置11〜16による撮像画像を切り替える。また、カメラ画像切替・視点変換部120は、各撮像装置11〜16によって取得された画像情報を、上方無限遠からの視点からの画像情報に変換する。
【0058】
対象物位置情報生成部130は、
図3に示すように、カメラ画像切替・視点変換部120、表示制御部140及び対象物処理部220に接続されている。対象物位置情報生成部130は、各撮像装置11〜16によって取得された画像情報を合成して形成される俯瞰画像200中に、レーダ装置21〜28によって取得された対象物の位置情報を合成して表示させるための対象物位置情報を生成し、カメラ画像切替・視点変換部120及び表示制御部140に対して送信する。
【0059】
表示制御部140は、
図3に示すように、俯瞰画像合成部110、カメラ画像切替・視点変換部120、対象物位置情報生成部130に接続されている。表示制御部140は、俯瞰画像合成部110が生成したダンプトラック1の全周囲における俯瞰画像情報と、レーダ装置21〜28によって取得されたダンプトラック1の全周囲における対象物位置情報とに基づいて、対象物の位置が含まれた俯瞰画像200を生成する。この画像は、モニタ50に表示される。このように、表示制御部140は、対象物位置情報に基づいて、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物を示す指標をモニタ50に表示させることにより、ダンプトラック1の周囲に対象物が存在することをダンプトラック1のオペレータに対して警報として報知することができる。なお、表示制御部140は、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物を示す指標を、撮像装置11〜16によって取得された画像情報とともにモニタ50へ表示してもよい。また、表示制御部140には、スピーカ51が接続されている。表示制御部140は、対象物位置情報に基づき、ダンプトラック1の周囲に対象物が存在することを示す警報音をスピーカ51に発生させ、警報を報知することもできる。
【0060】
対象物情報収集部210は、
図3に示すように、レーダ装置21〜28と対象物処理部220とに接続されている。対象物情報収集部210は、レーダ装置21〜28からそれぞれの検出範囲における対象物検出結果を受信し、対象物処理部220へ送信する。
【0061】
対象物処理部220は、
図3に示すように、対象物情報収集部210と対象物位置情報生成部130とに接続されている。対象物処理部220は、対象物情報収集部210から受信した対象物の位置情報を、対象物位置情報生成部130へ送信する。
【0062】
コントローラ100は、例えば、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)と記憶装置としてのメモリとを組み合わせたコンピュータと、俯瞰画像の合成等といった画像処理を実行する画像処理用デバイス(例えば、画像ボード)とを組み合わせたものである。画像処理用デバイスは、例えば、俯瞰画像を合成する等の画像処理を実行する専用のIC(例えばFPGA:Field-Programmable Gate Array)及びメモリ(例えばVRAM:Video Random Access Memory)等を搭載している。
【0063】
本実施形態において、
図4に示すように、撮像装置11〜16がアッパデッキ2bの正面及び側面並びにベッセル4の下方に配置されている。そして、コントローラ100は、撮像装置11〜16が撮像し、取得した第1画像情報〜第6画像情報を合成して、
図5に示すような俯瞰画像200を生成して、キャブ3内における運転席31の前方に配置されるモニタ50に表示させる。このとき、モニタ50は、コントローラ100の制御に応じて、俯瞰画像200等の画像を表示する。俯瞰画像200は、撮像装置11〜16が撮像した第1領域11C〜第6領域16Cに対応する第1画像情報〜第6画像情報をコントローラ100が合成することによって得られる。周辺監視システム10、より具体的にはコントローラ100の表示制御部140は、このような俯瞰画像200をモニタ50に表示する。また、表示制御部140は、対象物位置情報生成部130が生成した対象物位置情報を取得し、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物を示す指標を、例えば、モニタ50の俯瞰画像200中に表示する。周辺監視システム10を用いることにより、ダンプトラック1のオペレータは、モニタ50に表示された俯瞰画像200を視認するだけで、ダンプトラック1の周囲360度の全範囲を監視することができる。
【0064】
<レーダ装置21〜28が検出した情報に基づく対象物検出処理>
図14は、レーダ装置が検出した情報に基づいた対象物検出処理の手順を示すフローチャートである。ステップS101において、
図3に示す対象物処理部220は、各レーダ装置21〜28が所定数走査することによって得られた情報(以下、適宜レーダ検出データという)を、対象物情報収集部210から入力する。次に、ステップS102において、対象物処理部220は、これらのレーダ検出データに対して、基本フィルタを用いて有効データがあるか否かを判断する。この基本フィルタ(前処理フィルタ)は、例えば、レーダの検出範囲(有効走査角及び有効距離)内で、自動車程度の大きさを示す有効検出範囲を有し、かつ最低限の所定反射信号強度を有するものを有効データ(第1有効データ)として抽出し、出力する。基本フィルタは、コントローラ100の対象物処理部220が備えている。
【0065】
基本フィルタによって第1有効データが抽出された場合(ステップS102、Yes)、ステップS103に進み、対象物処理部220は、抽出された第1有効データの中からセンサ別フィルタが有効とする有効データ(第2有効データ)があるか否かを判断する。センサ別フィルタは、各レーダ装置21〜28の仕様に基づいたフィルタ処理を行うものである。センサ別フィルタは、レーダ装置21〜28が検出する範囲をレーダ装置21〜28の検出能力に対応して複数の領域に区分し、各領域の条件を満足するデータを第2有効データとして抽出し、出力する。反射信号は、遠い領域では強度が小さくなり、近い領域では時間分解能が悪くなり、走査角によっても検出能力が異なる場合があるからである。センサ別フィルタは、コントローラ100の対象物処理部220が備えている。
【0066】
センサ別フィルタが有効とする第2有効データがある場合(ステップS103、Yes)、ステップS104に進み、対象物処理部220は、センサ別フィルタが有効であるとして抽出した第2有効データの中から、領域フィルタが有効とする有効データ(第3有効データ)があるか否かを判断する。領域フィルタは、センサ別フィルタが有効として抽出した第2有効データの中に、ダンプトラック1を示す予め設定された車両領域がある場合に、この車両領域内の有効データを削除する。領域フィルタは、コントローラ100の対象物処理部220が備えている。車両領域は、ダンプトラック1の内側の領域である。
【0067】
領域フィルタが有効とする有効データがある場合(ステップS104、Yes)、ステップS105において、対象物処理部220は、第3有効データの中から、警報を報知する対象の有効データ(第4有効データ)を、所定の閾値に基づいて決定する。具体的には、対象物処理部220は、第3有効データの値(レーダ装置21〜28の少なくとも1つによって検出された検出値)ALが所定の閾値ALcz、ALcoよりも大きいものを第4有効データとして決定する。検出値ALは、例えば、レーダの反射強度、検出された対象物とダンプトラック1との相対速度及び検出された対象物とダンプトラック1との距離のうち少なくとも1つである。所定の閾値ALczは、ダンプトラック1の周囲に設定された所定領域(適宜、限界領域という)内におけるものであり、所定の閾値ALcoは、限界領域外におけるものである。本実施形態においては、ALcz<ALcoである。
【0068】
対象物処理部220は、限界領域内においてAL≧ALczである対象物及び限界領域外においてAL≧ALcoである対象物の有効データを第4有効データとして決定する。ステップS106において、対象物処理部220は、決定した第4有効データを対象物位置情報として表示制御部140に出力する。表示制御部140は、取得した対象物位置情報に基づき、モニタ50に対象物の位置を俯瞰画像200とともに表示したり、スピーカ51から警報音を発生させたりする。すなわち、コントローラ100は、少なくとも検出値ALが所定の閾値ALcz、ALco以上である場合に警報を報知する。その後、ステップS107において、コントローラ100は、本処理の終了指示があった場合(ステップS106、Yes)、本処理を終了する。
【0069】
なお、上記の説明では限界領域内のすべての領域(所定領域)で、2つの所定の閾値ALcz、ALcoを用いて警報を報知したが、限界領域内の特定の領域では、一つの閾値のみを所定の閾値として設定しておいてもよい。例えば、限界領域内の後方領域(ダンプトラック1の後方であって、一辺を代表寸法Wtとした辺と代表寸法Wtから後方に所定範囲の長さを持った辺とで構成される矩形の領域)のみは、一つの閾値のみを所定の閾値として、その閾値の大きさは小さな値としてもよい。このようにすることで、ダンプトラック1の後方にある対象物を限界領域の内外に関わらず敏感に検出するようにすることができる。つまり、限界領域内の特定の領域のみ、2つの所定の閾値(ALcz、ALco)は同値として、その特定の領域以外(所定領域)は、上述のように限界領域内外で異なる所定の閾値(ALcz<ALco)としてもよい。また、上述した限界領域内における特定の領域は、限界領域内の側方領域であるように設定してもよい。
【0070】
本実施形態において、ダンプトラック1の後方、すなわち特定の領域は厳密な矩形となっていなくてもよい。このため、本実施形態において、前記所定領域の形状は、ダンプトラック1の前方及び側方の少なくとも一方又は両方において平面視が矩形となっていればよい。
【0071】
基本フィルタによる有効データがない場合(ステップS102、No)、センサ別フィルタが有効とする有効データがない場合(ステップS103、No)、領域フィルタが有効とする有効データがない場合(ステップS104、No)及び終了指示がない場合(ステップS107、No)、コントローラ100は、ステップS101に戻って上述した処理を繰り返す。次に、限界領域について説明する。
【0072】
図15は、限界領域CZを説明するための図である。限界領域CZは、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物のうち、ダンプトラック1のオペレータがより注意すべき対象物の順位付けをするために用いられる。すなわち、限界領域CZは、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物に対して、オペレータが注目すべき優先度を与えるために用いられる。本実施形態では、上述したように、限界領域CZ内の所定の閾値ALczを、限界領域CZ外の所定の閾値ALcoよりも小さくしている。このようにすることで、限界領域CZ内側と外側とで、第4有効データとして決定される検出値ALを異ならせることができる。
【0073】
限界領域CZ内の所定の閾値ALczを、限界領域CZ外の所定の閾値ALcoよりも大きくすることで、コントローラ100が報知する警報の優先度は、限界領域CZ外に存在する対象物よりも限界領域CZ内に存在する対象物の方が高くなる。限界領域CZの内側は、ダンプトラック1により近接した領域なので、コントローラ100は、このような領域に存在する対象物をオペレータに対して確実に報知することができる。
【0074】
次に、限界領域CZを設定する手法について説明する。本実施形態において、限界領域CZは、ダンプトラック1が占める領域である車両領域1Rの周囲に存在する所定の領域である。ダンプトラック1は3次元形状なので、車両領域1R及び限界領域CZも3次元形状である。車両領域1Rは、ダンプトラック1が占める空間を、例えば、直方体のような簡易な形状で近似したものである。本実施形態において、車両領域1Rは、ダンプトラック1の車幅方向における代表寸法Wtを短辺とし、前後方向における代表寸法Ltを長辺とした矩形の領域を底面とし、ダンプトラック1の高さ方向における代表寸法Htを高さとした直方体の領域である。したがって、車両領域1Rは、ダンプトラック1及びその周辺の領域を俯瞰して見た場合において、ダンプトラック1の車幅方向における代表寸法Wtを短辺とし、前後方向における代表寸法Ltを長辺とした矩形の領域である。代表寸法Wt、Lt、Htは、例えば、ダンプトラック1の最大幅、最大長、最大高さとすることができるが、これに限定されない。
【0075】
限界領域CZは、車両領域1Rの周囲における所定の領域なので、ダンプトラック1及びその周辺の領域を俯瞰して見た場合においては、矩形形状の車両領域1Rの周囲に存在する矩形の領域となる。具体的には、限界領域CZは、ダンプトラック1及びその周辺の領域を俯瞰して見た場合において、車両領域1Rの外側、かつ4本の線分CZ1、CZ2、CZ3、CZ4で囲まれた領域である。線分CZ1は、車両領域1Rの前縁LEから前方に向かって距離Lfだけ離れた位置に存在し、かつダンプトラック1の後輪6回転中心軸、すなわち駆動軸ZRに平行な線分である。線分CZ2は、車両領域1Rの後縁LTから後方に向かって距離Lrだけ離れた位置に存在し、かつダンプトラック1の駆動軸ZRに平行な線分である。線分CZ3は、車両領域1Rの左側縁SLから左方に向かって距離Wlだけ離れた位置に存在し、かつダンプトラック1の車幅方向中心軸Zltに平行な線分である。線分CZ4は、車両領域1Rの右側縁SRから右方に向かって距離Wrだけ離れた位置に存在し、かつダンプトラック1の車幅方向中心軸Zltに平行な線分である。限界領域CZは、3次元形状の領域なので、高さを有する。本実施形態において、限界領域CZの高さは、例えば、ダンプトラック1の高さ方向における代表寸法Htとすることができるが、これに限定されない。
【0076】
距離Lfは、ダンプトラック1の前側角部1FL、1FRの軌跡TCcl、TCcrに基づいて定められる。具体的には、距離Lfは、車両領域1Rの前縁LEと、ダンプトラック1が最小旋回半径で右旋回した場合における前側角部(左前側角部)1FLの軌跡TCcrの、ダンプトラック1の最も前方側に存在する部分Pfr(又はPfl)との最短距離である。なお、距離Lfは、ダンプトラック1が最小回転半径で左旋回した場合における前側角部(右前側角部)1FRの軌跡TCclの、ダンプトラック1の最も前方側に存在する部分Pflを用いて定めてもよい。ダンプトラック1の動きとして想定される動作範囲に基づく動作範囲により距離Lfが求められるのである。本実施形態において、距離Lrは、距離Lfに等しい。
【0077】
右旋回軌跡TCwrは、ダンプトラック1が最小回転半径で右に旋回した際の左前輪5が描く軌跡を示す。また、左旋回軌跡TCwlは、ダンプトラック1が最小回転半径で左に旋回した際の右前輪5が描く軌跡を示す。距離Wlは、ダンプトラック1の駆動軸ZRの位置における、軌跡TCcrと、車両領域1Rの左側縁SLとの最短距離である。距離Wrは、ダンプトラック1の駆動軸ZRの位置における、軌跡TCclと、車両領域1Rの右側縁SRとの最短距離である。具体的には、軌跡TCcrの半径Rcから、ダンプトラック1の駆動軸ZRの位置における、旋回中心CTから車両領域1Rの左側縁SLまでの距離、すなわち距離Rsaを減算することにより、距離Wlが求まる。また、軌跡TCclの半径Rcから、ダンプトラック1の駆動軸ZRの位置における、旋回中心CTから車両領域1Rの右側縁SRまでの距離、すなわち距離Rsaを減算することにより、距離Wrが求まる。ダンプトラック1の動きとして想定される動作範囲に基づく動作範囲により距離WlとWrが求められるのである。本実施形態において、WlとWrとは等しくなる。
【0078】
軌跡TCcl、TCcrの外側は、ダンプトラック1が最小旋回半径で旋回した場合において、ダンプトラック1と干渉しない領域である。また、車両領域1Rの右側における旋回中心CTから車両領域1Rの右側縁SRまでの最短距離Rsbを半径とする円TCbrで囲まれる領域から、軌跡TCclで囲まれる領域を除いた領域は、ダンプトラック1が最小旋回半径で旋回した場合において、ダンプトラック1と干渉しない領域(
図15のハッチングで示した部分)である。同様に、車両領域1Rの左側における旋回中心CTから車両領域1Rの左側縁SLまでの最短距離を半径とする円TCblで囲まれる領域から、軌跡TCcrで囲まれる領域を除いた領域は、ダンプトラック1が最小旋回半径で旋回した場合において、ダンプトラック1と干渉しない領域(
図15のハッチングで示した部分)である。
【0079】
このように、限界領域CZは、少なくともダンプトラック1が最小旋回半径で旋回した場合における、ダンプトラック1の前側角部1FL、1FRの軌跡TCcr、TCclに基づいて設定される。すなわち、限界領域CZは、ダンプトラック1の動作範囲に基づいてダンプトラック1の周囲に設定される。したがって、限界領域CZの外の領域は、ダンプトラック1が前進又は後進する際に最小回転半径で旋回を開始した場合において、ダンプトラック1と確実に干渉しない領域となる。このため、コントローラ100が、限界領域CZ内に存在する対象物の警報の優先度を限界領域CZ外に存在する対象物よりも高く設定することにより、ダンプトラック1と確実に干渉しない領域である限界領域CZの外側に存在する対象物については、警報を報知する優先度は低くなる。したがって、コントローラ100は、ダンプトラック1により近い限界領域CZ内に存在する対象物に対してオペレータの注意を集中させることができるので、限界領域CZ内の対象物の存在を、確実にオペレータへ確認させることができる。その結果、ダンプトラック1が旋回しながら前進又は後進する場合であっても、コントローラ100は、確実にダンプトラック1の周囲に存在する対象物をダンプトラック1の発進前にオペレータに認識させて、対象物とダンプトラック1との接触を回避させることができる。このように、コントローラ100を有する周辺監視システム10は、ダンプトラック1のオペレータに、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物の中で、オペレータが本来注意すべき対象物を認識させやすくすることができる。
【0080】
また、対象物処理部220は、領域フィルタによって車両領域1R内の有効データを削除するようにしている。例えば、レーダ装置24、27で検出された情報のうち、
図7に示した車両重複領域E1の情報は有効データでないとして領域フィルタによって削除される。この結果、車両重複領域E1の情報は、対象物位置情報生成部130及び表示制御部140を介してモニタ50に送出されないため、この車両重複領域E1の情報は、モニタ50に表示されない。
【0081】
各レーダ装置25、26は、各照射中心軸C25、C26が、車両中心面Cを中心に交差するように角度を設けて設置されるが、角度によってはリアサスペンションシリンダ72を検出してしまう(
図11参照)。このリアサスペンションシリンダ72を車両領域1Rとして予め設定しておくことによって、対象物処理部220の領域フィルタは、この車両領域1Rの情報を削除するため、このリアサスペンションシリンダ72の情報は、モニタ50に表示されない。
【0082】
なお、レーダ装置21〜28が検出したレーダ検出データは、地面の情報を含む場合がある。そこで、対象物処理部220は、車両の設置面以下の領域を車両領域1Rと同様の削除領域として予め設定し、領域フィルタによって、轍等を考慮した所定高さ以下となる地面のレーダ検出データを削除することが好ましい。
【0083】
このようなレーダ装置21〜28を用いることによって、車両の全周囲の障害物を検出することができる。特に、従来検出することができなかった、ベッセル側方領域の障害物を検出することができるとともに、ベッセル4の下方領域の障害物又はベッセル4の後端部より後方の領域の障害物を検出することができる。
【0084】
なお、後方の障害物を検出する一対のレーダ装置25、26を配置したが、これに限らず、例えば、180度に近い、水平方向に広角なレーダ装置を用いる場合、リアアクスル71の中央であって、リアサスペンションシリンダの接合部間に1つ設置するようにしてもよい。この場合、照射領域が垂直方向に狭い角度を有するレーダ装置を用いても、車両の低い位置にレーダを設置することにより車両遠方の障害物を検出することが可能になる。また、本実施形態では左右一対のレーダを記載しているが、ダンプトラック1の周囲に存在する対象物を検出できるようにするための配置とすれば、レーダ装置の配置は左右一対でなくてもよい。
【0085】
以上、本実施形態を説明したが、上述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。