(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トルクリミットは、少なくとも予め設定されたマージンによって、脱調が発生する最大トルク以下に前記油圧モータのトルクが維持されるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記励磁器コントローラは、前記系統、または、前記同期発電機から前記系統へのトランスミッションラインにおける異常事象に起因して前記同期発電機の前記端子電圧が減少した後、前記界磁電流が迅速に増加するように前記励磁器を制御する構成としたことを特徴とする請求項8に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記励磁器コントローラは、前記励磁器による前記界磁電流の増加後、前記同期発電機の内部相差角が増大したとき前記界磁電流が増加し、前記同期発電機の前記内部相差角が減少したとき前記界磁電流が減少するように前記励磁器を制御する構成としたことを特徴とする請求項8に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記トランスミッションコントローラは、前記異常事象対応モードにおいて、前記同期発電機の負荷トルクと、前記油圧モータによって生成されて前記同期発電機に入力されるトルクとの差分を調節するために、前記油圧モータの前記押しのけ容積を低減するように、前記油圧トランスミッションを制御する構成としたことを特徴とする請求項11に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記モータ要求値決定ユニットは、前記異常事象対応モードにおいて前記同期発電機によって生成された出力に基づいて、前記油圧モータの前記押しのけ容積の前記要求値Dmを決定するように構成されたことを特徴とする請求項11に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記再生エネルギー型発電装置は、前記再生エネルギーである風を用いて発電し、前記作動要素が少なくとも一本のブレードを含むロータである風力発電装置により構成されることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2011/147996号及び国際公開第2011/147997号(Caldwell他)には、油圧トランスミッションによって駆動され、系統へ電力供給するための発電機を用いるタービン発電機が開示されている。回転シャフトは、ブレードを有するロータを介して風からエネルギーを受け取って、油圧ポンプを駆動する。該油圧ポンプは、低圧マニホールドから作動油を受け取って、高圧マニホールドへ圧油を供給する。
少なくとも一つの油圧モータは、高圧マニホールドから圧油を受け取って、この圧油のエネルギーによってシャフトを介して発電機を駆動するようになっている。
【0003】
油圧ポンプ及び油圧モータは、それぞれ、可変容量型であり、油圧ポンプ及びモータの押しのけ容積は、発電機を最適化するために制御される。発電の高効率化のためには、風速に応じて最適トルクが変化するようにロータブレードのトルクを制御することが重要である。これは、油圧ポンプの押しのけ容積の制御および高圧マニホールドの圧力の制御によって実行される。油圧モータの押しのけ容積は、発電機へ適用されるトルクを制限するために制御される。
【0004】
系統への電力供給に際しては、電力変換器を介さずに電力系統へ連系可能な同期発電機が好適に用いられる。同期発電機を用いれば、電力損失が低減し、発電機効率の向上が図れる。特に、同期発電機のロータは、電力系統の周波数で正確に回転するようになっている。例えば、4極数(4-pole)発電機および50Hzの系統において、ロータは1500rpmで回転する。原動機から発電機ロータに作用するトルクによって、磁気トルクが原動機トルクに一致するまで負荷角(ロータと、固定子巻線からの回転磁界との間の位相角)を増加させる。一定の端子電圧と界磁電流によって、負荷角とトルクとの間の関係は略正弦波となる。発電機トルクは、発電機ロータの界磁回路を介した界磁電流及び端子電圧に比例する。回転磁界の強さは、発電機の最大吸収トルクを決定する。トルクが最大吸収トルク値(負荷角90°)を超えて増加した場合、発電機は脱調が発生する。これは、発電機に著しく損傷を与える事象であり、回避する必要がある。
【0005】
例えば、落雷、強風による電源導体間の放電、あるいは、絶縁破壊や他の電気的又は機械的な不具合に起因した電気機器の回路電流における短絡によって、電力系統の事故が発生することがある。殆どの場合、事故が発生した時、端子電圧は0に低下し、電流は急激に増加する。このような事象が発生した場合、抵抗トルクは、例えば数ミリ秒程度といった極めて短時間の間に低下する。原動力によってロータの駆動は維持されるので、ロータはすぐに同期速度を超えて、脱調(pole slip)が瞬時に発生する可能性がある。
【0006】
さらに、特に調整機器が誤設定された場合においては、電力系統事故が発生していない周囲においても脱調が発生する可能性がある。例えば、発電装置は、一般的に同期発電機および自動電圧調整器を含んでいる。この調整器は、発電機の出力電圧または力率を調節するために、発電機の界磁電流を変化させるものである。電圧の制御モードの設定において、端子電圧が高く且つ発電機が高出力で動作しているとき、調整器は、界磁電流を低下させることによって、ロータとステータの間の電磁結合が極めて弱く、結果的に発電機へ損傷を与える程の端子電圧の低下を招くことがある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記した再生エネルギー型発電装置において、脱調を防止しながら高い信頼性を確保し、且つ効率的な運転を実現するための技術的な課題を解決するものである。本発明の幾つかの実施形態は、電力系統における異常(系統事故等)時に、脱調防止を図る。本発明の幾つかの実施形態では、必ずしも電力系統の異常時でなく、通常運転時に発生した事象の間、脱調を防止して保護するようにしている。
【0008】
ここでは、油圧ポンプまたは油圧モータにおける回転シャフトの単位回転当たりに押しのけられた(受け入れたかあるいは排出した)作動流体の容積を、油圧ポンプおよび油圧モータの押しのけ容積と呼んでいる。
【0009】
本発明の第一の態様は、
再生エネルギーを用いて発電を行う再生エネルギー型発電装置であって、
再生エネルギー源から受け取るエネルギーによって作動する作動要素と、
前記作動要素を介して受け取った前記再生エネルギーによって回転する回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動される油圧ポンプ、および、前記油圧ポンプから高圧マニホールドを通って供給される圧油により駆動される油圧モータを含む油圧トランスミッションと、
前記油圧モータによって駆動されて電力を生成し、電力変換器を介在せずに系統に連系されて該系統へ前記電力を供給するとともに、界磁強度を有する界磁コイルを含む同期発電機と、
通常運転モードにおいて、前記再生エネルギー型発電装置の通常運転時、前記発電機によって生成される前記電力の周波数を前記系統の周波数に維持しながら、前記再生エネルギーの流速に応じて変化する回転数で前記回転シャフトが回転するように、前記油圧ポンプおよび前記油圧モータのそれぞれの押しのけ容積を調節するために前記油圧トランスミッションを制御するように構成されたトランスミッションコントローラと、を備え、
前記トランスミッションコントローラは、
前記高圧マニホールドの圧力と、脱調防止のために前記発電機によって許容される最大トルクに関係するとともに前記界磁強度および前記発電機の端子電圧の測定値に依存するトルクリミットとを考慮して、前記油圧モータの前記押しのけ容積の要求値D
mを決定するためのモータ要求値決定ユニットを含むことを特徴とする。
【0010】
これは、脱調防止のために発電機に許容された最大トルクに関係しており、界磁強度および発電機端子電圧の測定値の両方に依存するトルクリミットを考慮し、さらにはこのトルクリミットを考慮して最大トルクを制限することによって、脱調を防止できる。トルクリミットを設けることによって、油圧モータによって生成されるトルクがトルクリミットを越えてしまうことを防止できる。
【0011】
また、界磁強度は、界磁電流および界磁電圧に依存する。典型的には、トルクリミットは、界磁強度に関係した少なくとも一つのパラメータの測定値に依存して決定する。ブラシレス発電機の場合、界磁電流は、通常、界磁電圧と共に測定されて、トルクリミットは界磁電流の測定値に依存する。この場合、界磁電流を直接測定することは困難である。しかしながら、励磁器の界磁電流または界磁電圧および回転数は計測できるので、主発電機の界磁電流をそこから取得することもできる。そのため、トルクリミットは、励磁器の界磁電流および/または電圧、および回転数を考慮して決定される。励磁器は、増幅器として機能する。励起された界磁電流は制御および測定され、発電機の主界磁電流の推定値に変換される。
【0012】
幾つかの実施形態において、界磁強度は界磁電流の制御(直接的にまたは励磁器を介して)によって調節される。界磁抵抗は固定値であるので、界磁電圧および界磁強度は界磁電流から求めることができる。
【0013】
油圧モータは、発電機ロータに連結されたモータ回転シャフトを有しているため、油圧モータの押しのけ容積は、発電機により生成された電力の周波数と関連している。ただし、発電機の極数、モータ回転シャフト(大抵は一本)の単位回転当たりの作動室容積の周期数、および(望ましい形態ではないが)モータ回転シャフトおよび発電機ロータとの間に介装されたギヤによるので、その比率は必ずしも1:1ではない。
【0014】
油圧モータの押しのけ容積は、油圧モータの押しのけ容積の要求値D
mによって調節可能となっている。要求値D
mは、モータシャフトの単位回転当たりに要求される(作動油の)容量であってもよい。モータシャフトの回転数の測定値は、通常、押しのけ容積の要求値の決定時に考慮される。
【0015】
モータ要求値決定ユニットは、通常運転モードにおける油圧モータの押しのけ容積の要求値D
mを算出するための標準要求値算出ユニットと、最大トルクが制限されていないとき、算出された要求値を制限するためのトルクリミッタとを含んでいる。典型的には、モータ要求値決定ユニットは、制限内における高圧マニホールドの圧力維持を考慮して、要求値を算出するようになっている。
【0016】
前記モータ要求値決定ユニットは、前記油圧モータの前記押しのけ容積の変化率を制限するように構成(プログラムされたものとして)してもよい。
【0017】
比率による制限は、状況次第では利用可能である。油圧モータによるトルクの変化率は、脱調を引き起こす可能性がある。発電機の界磁強度は、モータによって生成されたトルクに応じて変化するようになっている。例えば、モータによって生成されたトルクは、力率コントローラおよび/または自動電圧調整装置によって規定される界磁電流、そして界磁強度に影響を及ぼす出力に作用することがある。その結果、状況次第では、モータによって生成されたトルクと界磁電圧との間のフィードバックループとなるかもしれない。いずれにしても、界磁電流の変化率の実際の最大値は誘導され、よってその変化率は脱調を防止可能である。発電機の界磁電流は、事前にあるいは同時にモータによって増加するトルクが変化する。
【0018】
典型的に、再生エネルギー型発電装置は、界磁コイルの電圧を調整するための界磁コイル電圧調整器を含んでいる。発電機の端子電圧は、通常、発電機に連系された系統の圧力によって決定される。
【0019】
前記トルクリミットは、前記界磁強度に関係した少なくとも一つのパラメータの測定値および/または前記発電機の前記端子電圧の測定値に依存して決まるように構成されてもよい。
【0020】
前記トルクリミットは、前記発電機の負荷角および/または界磁コイル巻線のリアクタンスにさらに依存していてもよい。
【0021】
前記油圧モータの前記押しのけ容積は、前記油圧モータに供給される前記圧油の圧力(通常、高圧マニホールドの圧力と一致する)で除算された前記トルクリミットに制限されてもよい。
【0022】
前記トルクリミットは、脱調の発生し得るトルクが前記発電機の前記端子電圧および前記界磁強度(例えば、界磁電流、励磁器電流等)に関係したパラメータに関連付けられた格納データを考慮して決定されてもよい。
【0023】
格納データは、トルクリミットを決定するために算出されたモデルのパラメータであってもよい。また、格納データは、参照テーブル(a look-up table)を含んでいてもよい。モデルのパラメータまたは参照テーブルは、油圧モータの押しのけ容積が、端子電圧および界磁強度(例えば、必要に応じて、一定の界磁電流または一定の励磁器電流等)が、脱調が発生するまで増加するような実験から取得してもよい。
【0024】
前記トルクリミットは、少なくとも予め設定されたマージンによって、脱調が発生する最大トルク以下に前記油圧モータのトルクが維持されるように設定されていてもよい。トルクリミットは、最大トルクに関連付けられており(例えば、比例的に、あるいは固定された範囲内で)、典型的には最大トルクより小さい。
【0025】
また、前記トランスミッションコントローラは、
通常運転モードにおいて、タービン回転数にて回転する前記回転シャフトの最適トルクに基づいて前記油圧ポンプのトルク目標値を決定するように構成されたトルク目標値決定ユニットと、
通常運転モードにおいて、前記油圧ポンプの前記トルク目標値に基づいて前記油圧ポンプの押しのけ容積の要求値D
pを決定するように構成されたポンプ要求値決定ユニットと、
前記油圧ポンプの前記押しのけ容積が前記要求値D
pとなるように調節するためのポンプ制御ユニットと、を含んでいてもよい。
【0026】
さらに、上記再生エネルギー型発電装置は、
前記発電機の前記端子電圧を測定するための端子電圧センサと、
前記同期発電機の界磁巻線へ界磁電流を供給するための励磁器と、
前記端子電圧センサによって検出された前記端子電圧と前記端子電圧の目標値との差分に基づいて前記励磁器を制御するように構成された励磁器コントローラとをさらに備えていてもよい。
【0027】
前記励磁器コントローラは、前記系統、または、前記同期発電機から前記系統へのトランスミッションラインにおける異常事象に起因して前記同期発電機の前記端子電圧が減少した後、前記界磁電流が迅速に増加するように前記励磁器を制御する構成としてもよい。
【0028】
トランスミッションラインまたは電力系統において異常が発生すると、発電機端子電圧が瞬時に低下し、これに伴って発電機の電気的出力(有効電力)も瞬時に低下する。そのため、油圧モータからの機械的入力が発電機の電気的出力に対して過剰になり、同期発電機の回転子が加速され、同期発電機の脱調が起きてしまうおそれがある。そこで、送電線または電力系統における異常事象の発生により同期発電機の端子電圧が低下した直後、界磁電流を増加させることで、発電機内部誘起電圧が大きくなり、発電機の電気的出力が上昇する。そのため、同期発電機の同期化力が大きくなって、異常事象発生後の同期発電機の第一波動揺が抑制され、過渡安定度が向上する。このようにして同期発電機の脱調が防止される。
【0029】
さらに、このような過渡安定度を向上させるための励磁機の制御は、超速応励磁方式と称される応答速度が非常に速い励磁方式(例えばサイリスタ励磁方式)によって好適に実現できる。
【0030】
また、前記励磁器コントローラは、前記励磁器による前記界磁電流の増加後、前記同期発電機の内部相差角が増大したとき前記界磁電流が増加し、前記同期発電機の前記内部相差角が減少したとき前記界磁電流が減少するように前記励磁器を制御する構成としてもよい。
【0031】
異常事象発生による端子電圧の低下直後に界磁電流を増加させると、既に説明したように同期発電機の第一波動揺が抑制され過渡安定度が向上するものの、応答性が良いためにかえって第一波動揺以降の定態安定度を損なうおそれがある。そこで、内部相差角の増大時に界磁電流を増加させ、内部相差角の減少時に界磁電流を減少させることで、同期発電機の動揺を速やかに抑制し、定態安定度を向上させることができる。
なお、このような定態安定度を向上させるための励磁機の制御は、電力系統安定化装置(PSS)によって好適に実現できる。
【0032】
前記トランスミッションコントローラは、前記油圧モータの前記押しのけ容積が通常運転モードよりも減少される異常事象対応モードを有しており、
前記異常事象対応モードは、前記発電機の前記端子電圧の測定値が閾値以下であることが検出されたら始動するように構成されてもよい。
【0033】
電力系統における異常(例えば系統事故)は、例えば、短絡、低圧事象またはトランスミッションラインにおける異常を含むものである。
【0034】
また、前記トランスミッションコントローラは、前記異常事象対応モードにおいて、前記同期発電機の負荷トルクと、前記油圧モータによって生成されて前記同期発電機に入力されるトルクとの差分を調節するために、前記油圧モータの前記押しのけ容積を低減するように、前記油圧トランスミッションを制御する構成としてもよい。
【0035】
さらに、前記モータ要求値決定ユニットは、前記異常事象対応モードにおいて前記同期発電機によって生成された出力に基づいて、前記油圧モータの前記押しのけ容積の前記要求値D
mを決定するように構成されてもよい。
【0036】
また、前記トランスミッションコントローラは、前記発電機の電圧の測定値が、閾値以上に上昇したとき、前記異常事象対応モードを維持するようにし、前記トランスミッションコントローラによるヒステリシスの実行およびチャタリングの回避を行う前記異常事象対応モードを開始するように構成されてもよい。
【0037】
トランスミッションコントローラに入力される閾値圧力と、異常事象応答モードに設定された値との差分は、5%以上10%以下の範囲内である。
【0038】
例えば風力発電装置または潮流発電装置の場合において、前記作動要素はロータであってもよい。しかしながら、波力発電装置のような他のタイプの作動要素も知られている。このような作動要素は、例えば、受け取ったエネルギーに対応して回転シャフトが作動(駆動される)するようになっている。
【0039】
典型的には、ロータは少なくとも一本のブレードを含んでいる。
【0040】
また、前記再生エネルギー型発電装置は、前記少なくとも一本のブレードのピッチ角を調節するためのピッチ駆動機構をさらに備えており、
前記ピッチ駆動機構は、前記異常事象対応モードにおいて前記少なくとも一本のブレードの前記ピッチ角をフェザー側へ変化させる構成としてもよい。
【0041】
さらに、前記異常事象から回復した後、前記ピッチ駆動機構は、前記少なくとも一本のブレードの前記ピッチ角をファイン側へ変化させて、前記モータ要求値決定ユニットは前記同期発電機によって生成される電力が増大するように前記油圧モータの前記押しのけ容積の前記要求値D
mを増加させる構成としてもよい。
【0042】
また、前記再生エネルギー型発電装置は、前記再生エネルギーである風を用いて発電し、前記作動要素が少なくとも一本のブレードを含むロータである風力発電装置により構成されてもよい。
【0043】
前記発電機に伝達される前記油圧モータの出力によって前記再生エネルギーから得られる出力が制限されるように、前記油圧ポンプの前記押しのけ容積の前記要求値要求値が制限されてもよい。通常、ポンプの押しのけ容積の要求値は、コントローラが異常事象応答モードに切り替わった時、モータの押しのけ容積の要求値とともに低減する。
【0044】
典型的には、油圧モータは、周期的に容積が変化する複数の作動室と、低圧マニホールドおよび高圧マニホールドの間の作動油の流れを調節するための複数のバルブとを含んでいる。少なくとも一つのバルブは、作動室に関連付けられた電子的な制御バルブである。油圧モータは、前記電子制御バルブを能動的に制御するためのコントローラを有している。
該電子制御バルブは、作動室容積の各サイクルで油圧機械を介して作動油の押しのけ容積が選択されるようになっている。典型的には、それぞれ作動室に関連づけられた少なくとも2つのバルブは、コントローラによって制御される電子制御バルブである。すなわち、低圧バルブは、各作動室と低圧マニホールドとの間の作動油の流れを調整するようになっている。同様に、高圧バルブは、各作動室と高圧マニホールドとの間の作動油の流れを調節するようになっている。
【0045】
典型的に、作動油は圧力媒体液である。また、典型的に、同期発電機はブラシレス発電機である。再生エネルギー型発電装置は、風力発電装置である場合、該風力発電装置は、少なくとも25m以上の高さ、少なくとも50m以上の高さ、または少なくとも100m以上の高さを有するタワーを含んでいる。風力発電装置は、洋上風力発電装置であってもよい。
【0046】
このように、本発明の実施形態に係る再生エネルギー型発電装置によれば、脱調することなく、電力変換器を介さず系統へ直接的に接続される同期発電機であっても、エネルギー効率改善のために、脱調することなく高い信頼性で制御可能である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に、本発明の一実施形態では、電力系統(101)に連系されるエネルギー抽出装置として、風力発電装置(WTG,100)を例示する。風力発電装置は、タワー(105)に回転自在に取り付けられ、3本のブレード(109)を支持するハブ(107)が取り付けられたナセル(103)を備えている。なお、3本のブレード(109)およびハブ(107)は、ロータとして知られている。ナセルの外部に配置された風速計(111)は、計測された風速信号(113)を、トランスミッションコントローラとして機能するコントローラへ送信する。ナセルに設けられた回転数センサ(115)は、回転数信号(117,回転シャフトの現在の回転数)をコントローラへ送信する。システムの一例において、それぞれのブレードの風に対する迎え角は、ピッチ動作信号およびピッチ検出信号(121)を送受信するピッチアクチュエータ(119)によって変化可能となっている。なお、本発明は、ピッチアクチュエータを有してない風力発電装置にも適用できる。コントローラは、典型的に、電子回路として実装可能な機能の一部またはすべてにおいて、格納されたプログラムを実行するように構成されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラである。コントローラは、複数に分割されており、コントローラの総括的な機能を各々が部分的に実行するように構成された複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラから構成されてもよい。
【0049】
ハブは、ロータの回転方向(127)に回転する回転シャフトとしてのロータシャフト(125)を介して、油圧ポンプ(129)に直接的に接続されている。好ましくは、油圧ポンプは
図3に示される形態を有する。油圧ポンプと油圧モータは、高圧マニホールド(133)および低圧マニホールド(135)を介して流体的に接続されており、各々の高圧ポートおよび低圧ポートはそれぞれ接続されており、流れを制限するためのバルブが介在していないという意味では、直接的に接続されている。そして、油圧ポンプ、油圧モータ、低圧マニホールドおよび高圧マニホールド、並びに関連機器によって、油圧トランスミッション(136)が構成される。
【0050】
油圧ポンプおよび油圧モータは、高圧マニホールドおよび低圧マニホールドがこれらの間および内部を形成するようにして、相互に直接的に取り付けられている。チャージポンプ(137)は、低圧アキュムレータ(141)が接続されており、リザーバ(139)から低圧マニホールドへ流体を連続的に供給するようになっている。低圧リリーフバルブ(143)は、熱交換制御ライン(146)で接続されるコントローラにより制御可能であって作動流体の温度調整を行うように構成された熱交換器(144)を介して、低圧マニホールドからリザーバへ流体を戻すようになっている。平滑化アキュムレータ(145)は、油圧ポンプと油圧モータとの間に設けられた高圧マニホールドに接続されている。第1高圧アキュムレータ(147)及び第2高圧アキュムレータ(149)(共に、弾性変形可能な流体保持体として機能)は、それぞれ、第1遮断バルブ(148)および第2遮断バルブ(150)に接続されている。第1および第2高圧アキュムレータは、異なるプリチャージ圧を有していてもよく、また、プリチャージ圧の範囲をより拡大するために、他の付加的な高圧アキュムレータを有していてもよい。第1および第2遮断バルブの状態は、それぞれ、第1遮断バルブ信号(151)および第2遮断バルブ信号(152)を用いて、コントローラによって設定される。高圧マニホールドの流体圧は、コントローラへ高圧マニホールド圧信号(154)を出力するように構成された圧力計(154)によって計測される。圧力計は、選択的に、流体温度を計測し、流体温度信号をコントローラへ出力するように構成されてもよい。高圧リリーフバルブ(155)は、高圧マニホールドと低圧マニホールドとを接続している。
【0051】
油圧モータは、発電機シャフト(159)を介して、負荷である同期発電機(157)に接続されている。発電機は、接触器(161)を介して電力系統に接続されている。接触器は、発電機および接触器コントローラ(163)からの接触器制御信号(162)を受け取るとともに、電力系統への発電機の選択的な接続や遮断を操作可能に構成されている。接触器によって発電機が電力系統に接続されている時、発電機は、発電効率低減の要因となる電力変換器を介在することなく、電力系統へ連結される。発電機および接触器コントローラは、電力供給センサ(168)および発電機出力センサ(170)によってそれぞれ測定された電圧、電流および周波数の測定値を、電力供給信号(167)および発電機出力信号(169)を介して受け取り、発電機および接触器コントローラ信号(175)を経由してコントローラへそれらを送信し、電流および/または界磁電圧の調節によって発電機の出力を制御する。発電機および接触器コントローラは、電流調整モジュールを含んでいる。電流調整モジュールは、発電機からの出力の力率を系統の要求に一致させるための力率コントローラ(164)として機能するとともに、典型的には自動電圧調整装置としても機能する。力率の調整は、ブラシレス同期発電機の場合には励磁器によって実行される界磁電流の調整を含むものである。
【0052】
油圧ポンプ及び油圧モータは、各々のシャフトの瞬間的な角度位置および回転数、ならびに、作動油の温度および圧力をコントローラへ送信する。そして、コントローラは、ポンプ動作信号、ポンプシャフト信号(171)、モータ動作信号およびモータシャフト信号(173)を用いて、それぞれのバルブの状態を設定する。コントローラは、ピッチ動作信号、遮断バルブ信号、ポンプ動作信号およびモータ動作信号を増幅するための増幅器(180)を用いるようになっている。
【0053】
図2は、複数の作動室(202,以下、個々の作動室に符号A〜Hを付与)を含み、電子的に整流化された油圧ポンプ/油圧モータの形態における油圧モータ(131)を示している。作動室は、シリンダ(204)およびピストン(206)の内面によって規定される容積を有している。ピストンは、作動室の容積の周期的な変化に対応してシリンダ内で往復運動するように構成されている。回転シャフト(208)は、偏心カム(209)を介してピストンによって回転するようになっている。回転シャフトは、発電機シャフト(159)に接続され、該発電機シャフトと共に回転するようになっている。油圧モータは、軸方向に離間したバンクを複数有していてもよい。複数のバンクは、同様に離間した偏心カムによって同一シャフトにより駆動される作動室に設けられる。シャフト位置および速度センサ(210)は、瞬間的なシャフトの角度位置および回転数を検出し、いくつかのモータ動作およびモータシャフト信号(173)として、信号ライン(211)を介して、各々の作動室の周期における瞬間的な位相を決定可能なコントローラ(112)へ送信する。典型的には、コントローラは、格納されたプログラムを実行するように構成されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラである。コントローラは、複数に分割されており、コントローラの総括的な機能を各々が部分的に実行するように構成された複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラから構成されてもよい。
【0054】
作動室は、電子的に作動する面シールポペットバルブ(214)の形態を有する低圧バルブ(LPVs)と関連付けられている。低圧バルブは、これらに関連づけられた作動室側に面しており、作動室から低圧管路(216)へ延在する流路を選択的に封止するように制御される。なお、前記流路は、一般的に流路網または流体貯留部として機能し、一または複数の作動室に接続されていてもよいし、あるいは、図示したように、風力発電装置の低圧マニホールド(135)に流体的に接続される低圧ポート(217)へ接続されていてもよい。低圧バルブは、作動室内の圧力が低圧マニホールド内の圧力より低い場合または同等の場合、すなわち吸入工程の間、作動室と低圧マニホールドとの間で流体の授受が可能となるように、受動的に開くように構成されたノーマルオープン型のソレノイドバルブである。さらに、低圧バルブは、低圧バルブ制御ライン(218,モータ動作およびモータシャフト信号173の送受信用ライン)を介したコントローラの制御下で、作動室と低圧マニホールドとの間で流体が授受されないように、選択的に閉止可能な構成も有している。なお、代替として、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブを採用してもよい。
【0055】
さらに、作動室は、圧力作動送出バルブの形態を有する高圧バルブ(HPVs)(220)とも関連付けられている。高圧バルブは、作動室から外側へ向けて開き、作動室から高圧管路(222)まで延在する流路の閉鎖を制御可能となっている。なお、前記流路は、流路網または流体貯留部として機能し、一または複数の作動室に接続されていてもよいし、あるいは、図示したように、高圧マニホールド(133)に流体的に接続される高圧ポート(224)へ接続されていてもよい。高圧バルブは、作動室内の圧力が高圧マニホールド内の圧力を超えたら受動的に開くように構成されたノーマルクローズ型の差圧逆止バルブとして機能する。また、高圧バルブは、高圧バルブ制御ライン(226,モータ動作およびモータシャフト信号173の送受信用ライン)を介したコントローラの制御下で、選択的に、開いた状態が維持されるように構成されてもよい。なお、代替として、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブを採用してもよい。通常、高圧バルブは、高圧マニホールドの圧力に反してコントローラにより制御することはできない。付加的な構成として、高圧バルブは、作動室ではなく高圧マニホールドが高圧であるとき、コントローラの制御下で開放可能としてもよい。あるいは、部分的に開放可能としてもよい。例えば、高圧バルブは、国際公開第2008/029073号または国際公開第2010/029358号に開示される方法によって、開放可能な構成としてもよい。
【0056】
例えば、欧州特許出願公開第0361927号明細書、欧州特許出願公開第0494236号明細書および欧州特許出願公開第1537333号明細書に開示される内容では、通常モードの制御において、コントローラは、油圧モータにて作動室の周期内で最小容積となる前に、一または複数の低圧バルブを短時間で能動的に閉じ、圧縮工程の残部によって作動室内の流体が圧縮されるように低圧マニホールドへの流路を閉じ、高圧マニホールドからの流体の総押しのけ容積を選択するようになっている。高圧バルブは差圧が同等となったら開かれて、流体の一部が高圧バルブを通って作動室へ流入するようになっている。そして、コントローラは、典型的には作動室の周期における最大容積に近い状態となるまで高圧バルブが開いた状態を能動的に維持する。その際、高圧マニホールドから作動室へ流体が流入し、回転シャフトへトルクが与えられる。選択的なポンプモードにおいては、コントローラは、油圧モータにて典型的には作動室の周期における最大容積に近い状態となるまで、一または複数の低圧バルブを能動的に閉じることによって、低圧マニホールドへの流路を閉じ、これにより次の圧縮工程において高圧バルブを通って流体が外部へ流れて(ただし、高圧バルブは能動的に開いた状態を維持しない)、高圧マニホールドへの総押しのけ容積を選択するようになっている。コントローラは、選択された総押しのけ容積を実現するために、流体の流れの形成やシャフトトルクの生成を目的とした低圧バルブの閉止および高圧バルブの開放のシーケンス、またはそれらの数を選択する。また、低圧バルブの閉止の要否または開放状態の維持の要否の決定と同様に、コントローラは、高圧バルブ開放時の位相を変化させ、これにより高圧マニホールドから低圧マニホールドへの流体、あるいはその逆の流れの流体の総押しのけ容積を選択するために制御可能となっている。
【0057】
ポート(217,224)の矢印は、モータモードにおける流体の流れ方向を示している。ポンプモードにおける流れ方向は逆となる。圧力リリーフバルブ(228)は、油圧モータを損傷から保護するように構成されてもよい。
【0058】
図3は、電磁バルブを備えた油圧ポンプ(129)の部位(301)を示す概略図である。油圧ポンプは、放射状に配列された複数の作動室(303)を含んでいる。ただし、
図3では複数の作動室のうち3つの作動室のみを例示している。各作動室は、シリンダ(305)およびピストン(306)の内面によって規定される容積を有している。ここで、ピストンは、ローラ(308)を介してリングカム(307)によって駆動される。また、ピストンは、作動室の容積を周期的に変化させるようにシリンダ内で往復運動する構成となっている。リングカムは、回転シャフト(125)に連結されたシャフト(322)に取り付けられ、複数のセグメントに分割可能に構成されてもよい。
【0059】
油圧ポンプは、作動室が放射状に配列された一以上のバンクを有していてもよい。低圧マニホールド内および作動室内の流体の圧力は、リングカム、あるいはローラのリングカムとの接触状態を維持するためのスプリング(不図示)の周囲の圧力より大きい。シャフト位置および速度センサ(309)は、瞬間的な角度位置およびシャフトの回転数を検出し、電気的接続(311,ポンプ動作およびポンプシャフト信号171の送受信用ライン)によってコントローラへ送信する。これにより、コントローラは、個々の作動室の周期における瞬間的な位相を決定可能となっている。
【0060】
各作動室は、電子的に作動する面シールポペットバルブ(313)の形態を有する低圧バルブ(LPV)を含んでいる。このバルブは、作動室側に面しており、作動室から低圧管路(314)へ延在する流路を選択的に封止するように制御可能となっている。なお、前記流路は、一般的に(ポンプモードにおいては)流路網(または流体貯留部)として機能する。低圧管路は、低圧マニホールド(135)へ流体的に接続されている。低圧バルブは、ノーマルオープン型のソレノイドバルブである。低圧バルブは、作動室内の圧力が低圧管路内の圧力より低い場合、すなわち吸入工程の間、作動室と低圧マニホールドとの間で流体の授受が可能となるように、受動的に開くように構成されたノーマルオープン型のソレノイドバルブである。さらに、低圧バルブは、電気的な低圧バルブ制御信号(315,ポンプ動作およびポンプシャフト信号171)を介したコントローラの制御下で、作動室と低圧管路との間で流体が授受されないように、選択的に閉止可能な構成も有している。なお、代替として、電気的な制御バルブは、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブであってもよい。
【0061】
さらに、作動室は、圧力作動送出バルブの形態を有する高圧バルブ(HPVs,317)を含んでいる。高圧バルブは、作動室から外側へ向けて面しており、作動室から高圧管路(319)まで延在する流路の閉鎖を制御可能となっている。なお、前記流路は、流路網または流体貯留部として機能し、高圧マニホールド(133)と流体的に接続されている。高圧バルブは、作動室内の圧力が高圧マニホールド内の圧力を超えたら受動的に開くように構成されたノーマルクローズ型の差圧逆止バルブとして機能する。また、高圧バルブは、高圧バルブ制御信号(321,ポンプ動作およびポンプシャフト信号171)を介したコントローラの制御下で、選択的に、高圧バルブが開いたら作動室内の圧力によって開いた状態が維持されるように構成されてもよい。高圧バルブは、作動室ではなく高圧マニホールドが高圧であるとき、コントローラの制御下で開放可能としてもよい。
【0062】
例えば、欧州特許出願公開第0361927号明細書、欧州特許出願公開第0494236号明細書および欧州特許出願公開第1537333号明細書に開示される内容では、通常モードの制御において、コントローラは、高圧マニホールドへの流体の押しのけ容積を選択するようになっている。典型的には作動室の周期における最大容積に近い状態で、一または複数の低圧バルブを能動的に閉止することによって、低圧マニホールドとの流路を閉じ、これにより次の圧縮工程において高圧バルブを介して外部へ流体を送り出す。選択された総押しのけ容積を実現するために、流体の流れの形成やシャフト(322)へのトルクの付与を目的とした低圧バルブの閉止のシーケンス、またはそれらの数を選択する。また、低圧バルブの閉止の要否または開放状態の維持の要否の決定と同様に、コントローラは、低圧バルブ閉止時の位相を変化させ、これにより低圧マニホールドから高圧マニホールドへの流体の総押しのけ容積を選択するために制御可能となっている。
【0063】
図4は、コントローラ(112)の機能ユニットの概略構成を示す図である。機能ユニットは、電子回路、または、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、コンピュータプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムコード命令を含んでいてもよい。
【0064】
トランスミッションコントローラとして機能するコントローラ(112)は、トルク目標値決定ユニット(500)を備えている。トルク目標値決定ユニットは、現在の回転数W
rに依存した回転シャフトの最適トルクを考慮して、油圧ポンプのトルク目標値を決定するように構成されている。トルク目標値は、ポンプ要求値決定ユニット(502)への出力である。ポンプ要求値決定ユニットは、現在のシステム圧力P
sを考慮したトルクを得るために要求される正確なポンプ要求値D
p(油圧ポンプの回転シャフトにおける単位回転当たりに押しのけられる作動油の総容量の機能的な表現)を決定する。ポンプ要求値D
pは、ポンプ制御ユニットへの出力である。ポンプ制御ユニットは、要求値に対応した油圧ポンプの押しのけ容積を選択するために、適した制御信号を出力することによって、油圧ポンプの低圧バルブを能動的に制御する。
【0065】
ロータシャフト(125)の回転数は、風速(およびその結果としての風から受けるエネルギーの流体速度)に応じて変化する。ただし、正確な回転数は、システム圧や、許容範囲内にシステム圧を維持するための要望や、装置の運転開始または停止、あるいは他の理由(例えば、突風または他の風力発電装置に対応した動作等)によるシステム圧の調整のための一時的な要求を含む各種の要因に依存している。
【0066】
コントローラは、標準モータ要求値決定ユニット(506)をさらに備えている。
標準モータ要求値決定ユニットは、トルクリミットが適用される場合を除いては瞬間的なシステム圧力P
s(高圧マニホールドの圧力)を考慮して、モータ押しのけ容積目標値D
mを決定するように構成されている。なお、本発明の主要な構成ではないが、幾つかの実施形態では、以下に示すように、油圧ポンプのトルク目標値を決定するためのトルク目標値決定ユニット(500)と、例えば規定範囲内でシステム圧を維持するための標準モータ要求値決定ユニット(506)との間には、幾つかの相互作用が存在してもよい。
【0067】
標準モータ要求値決定ユニット(506)は、通常運転時、モータ制御ユニット(508)と通信可能に構成され、モータ押しのけ容積目標値D
mを算出して出力するように構成されている。モータ制御ユニットは、モータ押しのけ容積目標値D
mに応じた油圧モータの押しのけ容積の調節を目的として、モータの作動室容積の各周期における低圧バルブおよび高圧バルブ制御信号を生成する。
【0068】
しかしながら、脱調(pole slip)が発生しないように、モータ押しのけ容積を確保するように動作するトルクリミッタ(510)も与えられている。トルクリミッタは、脱調が発生する可能性のある発電機の界磁電流(磁界強度を決定する)および発電機の端子電圧の値が格納されたトルク値のデータベース(512)にアクセスするように構成されている。トルクリミッタの機能は、以下に詳述する。トルク目標値決定ユニット(500)およびトルクリミッタ(570)は、共にモータ要求値決定ユニットとして機能する。
【0069】
図5Aおよび
図5B(
図5Aの続き)は、制御アルゴリズム(400)の1タイムステップにおける手順を示している。この制御アルゴリズムは、風力発電装置の通常運転モードにおいてントローラ(112)内で実行されるものである。なお、制御アルゴリズムは、繰り返し実行されてもよい。
【0070】
ステップS1において、ロータ回転数W
rがロータ回転数信号(117)から算出される。ここで、油圧ポンプおよびロータはロータシャフトによって直接的に接続されているので、代替として油圧ポンプの回転数を計測してもよい。次いで、ステップS2において、ロータ回転数からトルク目標値T
dが算出される。国際公開第2011/147996号および国際公開第2011/147997号(Caldwell他)に記載されるように、トルク目標値は、空力的な理想トルクに基づいて設定されてもよい。例えば、風速の一時的な低下(lull)の間により多くのエネルギーを蓄積可能なように、風速の一時的な低下の前にシステム圧を低減する。
【0071】
そして、ステップS3において、高圧マニホールドの測定圧力(高圧マニホールド圧信号154から取得)でトルク目標値を除算し、ポンプ要求値D
pumpを算出する。ポンプ要求値は、選択された油圧ポンプの総押しのけ容積であって、且つ、制御アルゴリズムの出力(402)であり、以下に述べるような方法で、油圧ポンプの低圧バルブ(および場合によっては高圧バルブ)を選択的に制御するためのコントローラを用いて算出される。
【0072】
ステップS4において、コントローラは、変動エネルギー流Power
rotorに対応した出力を算出する。これは、複数の異なる方法によって算出できる。例えば、油圧ポンプの回転数、油圧ポンプの総押しのけ容積、および流体的な出力を算出するための高圧マニホールドの圧力を用いて、出力を算出してもよい。あるいは、ロータの回転数および機械的な出力を算出するための空力トルク推定値T
aeroを用いて、出力を算出してもよい。
【0073】
ステップS6において、例えば、第1ローパスフィルタ等の平滑化モジュールを実行することによって、変動エネルギー流Power
rotorを平滑化した値Power
motorが算出される。なお、設計者は、風力発電装置およびその状態に適した平滑化アルゴリズムを選択してもよい。この平滑化された値は、油圧モータによる作動流体の総押しのけ容積の算出基準となり、その独立性から、高圧マニホールド内の圧力が総押しのけ容積へ与える影響を考慮せず、設定されるものである。
【0074】
ステップS7において、ヘッドルームトルクT
hが算出される。ヘッドルームトルクは、油圧ポンプに対して最小トルクを規定するものである。これは、予測不能なガストまたは風速増大の間、ロータ回転数を適正に制御するために適用される。ヘッドルームトルクは、油圧ポンプの回転数の役割を果たす。
【0075】
ロータトルクは、単位回転当たりの総押しのけ容積(作動室の数および容積によって規定される設定リミット値を含む)が選択される油圧ポンプによって生成され、ヘッドルームトルク要求値によって下限値
Pminが設定される。ステップS8において、許容圧力範囲の下限値によって規定される高圧マニホールドの最小圧力P
minがヘッドルームトルクT
hから算出される。さらに、平滑化手段(または第1および第2アキュムレータ)の最小プリチャージ圧P
acc,minとして、付加的な下限値P
minが設定されている。下限値以下である場合、好ましい制御を実行するためには高圧マニホールドの圧力追従性が不十分となる可能性がある。そのため、許容圧力範囲、上述した両方の下限値を備えることが望ましい。
【0076】
ステップS9において、高圧マニホールドの最小圧力P
min、前記マニホールドP
max(許容圧力範囲の上限値として機能する)の設定最大圧力、および、変動エネルギー流またはその平滑化した値のいずれかに基づいて、圧力制御ゲインK
pが算出される。
【0077】
ステップS10において、風力発電装置における一または複数の最適運転ポイント、風力発電装置の制御範囲限界または最小圧力要求から圧力目標値P
dが算出される。
【0078】
ここまでのステップは、ポンプ要求値決定ユニット(502)の機能を実行するものである。以降のステップでは、モータ要求値決定ユニットの機能を実行する。
【0079】
次に、ステップS11において、コントローラは、モータ(モータ要求値)の総押しのけ容積のモータ名目値D
nを算出する。モータ名目値は、モータ回転数信号(211)、システム圧(例えば高圧マニホールドの圧力)信号(154)およびモータ出力値Power
motor(D
n = Power
motor / W
motor / P
s)から算出される。
【0080】
ステップS12において、制御アルゴリズムは、測定圧力と目標圧力P
dとの差分に圧力制御ゲインK
pを乗じることによって、モータ要求値の補正値D
bが算出される。
【0081】
ステップS13において、コントローラは、モータ名目値D
nと補正値D
bとを加算することによって、油圧モータ(モータ要求値)のモータ押しのけ容積D
mを算出する。
【0082】
通常運転時には、モータ押しのけ容積目標値D
mは、制御アルゴリズム(404)の出力である。このモータ押しのけ容積目標値は、コントローラが、上述の方法で油圧モータのバルブを選択的に制御する際に用いられる。
【0083】
ステップS14およびステップS15において、コントローラは、トルクリミッタの機能を実行する。ステップS14では、コントローラは、発電機の吸収トルクの最大値、すなわち脱調が発生するトルクリミットT
Lを算出する。これは、励磁器の電流値I
F(これは界磁電流および界磁強度に依存する)および発電機の端子電圧V
Tを読み取り、且つ、データベースから対応したトルクを抽出することによって実行される。データベースのデータは、トルクの経験的または実験的な測定値から取得可能である。このトルクは、同様の発電機において、励磁電流および発電機の端子電圧が与えられたとき、脱調が発生したトルクである。
【0084】
ステップS15において、コントローラは、モータ押しのけ容積目標値D
mがモータ制御ユニットへ送信された場合に、発電機のトルクを算出する。発電機のトルクは、モータ押しのけ容積、システム圧力P
sおよびモータシャフトの回転数wに比例し、モータ押しのけ容積目標値D
mがトルクリミットを超えた場合、トルクリミッタはモータ押しのけ容積目標値を決定できるようになっている。
【0085】
ステップS16において、コントローラは、トルクを制限するためにモータ押しのけ容積目標値D
mを低減するか否かを決定する。発電機に作用するトルクがトルクリミットT
Lを超えている場合、モータ押しのけ容積目標値D
mを低減する。実際には、ルクリミットT
Lの限界(例えば5%または10%、あるいはそれ以上)内においてトルクは発電機に作用するため、トルクリミッタは、一般的には確保されている。
【0086】
幾つかの実施形態において、データベースに格納されたデータは、トルクリミットT
Lではなく、マージンを含んだ値である。幾つかの実施形態で、望ましいモータトルクは、トルクリミット(例えば、望ましいモータトルクおよびトルクリミットの下限値の選択によって)を超えないように計算され、処理されて、処理されたトルクは、モータ押しのけ容積D
mの計算に用いられる。
【0087】
モータ押しのけ容積D
mの最終的な値は、ステップS17において、作動室容積の連続的な周期で低圧バルブおよび高圧バルブのタイミングを制御するモータ制御ユニットへ出力される。
【0088】
幾つかの実施形態において、トルクリミッタ機能は、通常はモータ押しのけ容積D
mの計算によって、しかしモータ押しのけ容積D
mの出力値のスルーレートを制限することによって、発電機に働くトルクの最大変化率を実行する。典型的に、許容スルーレートは、力率コントローラおよび/または自動電圧調整装置の応答速度に依存する。
【0089】
トルクリミッタは、風力発電装置の通常運転時、例えば、要求される力率を維持するために界磁強度が減少した場合、脱調を回避するために用いられる。しかしながら、本発明の幾つかの実施形態では、トルクリミッタ機能は、発電機が脱調するようなトルクの低減を引き起こす系統事故が検出されたら始動するようになっている。そのような系統事故は、発電機の端子電圧の低下から検出できる。系統事故の検出に応じて、風力発電装置は、異常事象対応モードを開始し、いくつかの実施形態では、異常事象対応モードにおいてのみトルクリミッタ機能を作動させる。
【0090】
トルクリミット機能は、特に、そのような系統事故への対応として重要な機能である。発電機の端子電圧を低減させるような系統事故が発生したとき、あるいは、界磁強度を減少させるような事故が発生したとき、発電機への損傷を回避するために、トルクリミットT
Lは急激に低下するように構成してもよい。
【0091】
異常事象対応モード(およびトルクリミッタを備えた実施形態においてトルクリミッタが作動する異常事象対応モード)は、例えば、発電機の端子電圧の閾値を超える降下によって始動してもよい。そして、風力発電装置は、発電機の端子電圧が閾値を超えて復帰したら通常運転モードに復帰してもよい。典型的には、モータ制御ユニットに送信されるモータ押しのけ容積要求値のチャタリングを回避するために、これらの制御においてヒステリシスを設けてもよい。
【0092】
励磁器(166)を制御するとともに制御信号(165)を介して界磁電流および界磁強度を調整するように構成された発電機および接触器コントローラ(163)は、発電機の界磁電流および界磁強度を制御しするように構成されている。この発電機および接触器コントローラは、発電機の端子電圧の瞬間的な計測値と、発電機の端子電圧が減少した場合に、発電機の界磁電圧との間の差分を測定し、トルクリミットT
L内において発電機の界磁電圧を増加させる。発電機および接触器コントローラは、同期発電機の内部相差角が増大したとき界磁電流が増加し、同期発電機の内部相差角が減少したとき界磁電流が減少するように励磁器を制御するようになっている。
【0093】
また、本発明は、異常の検出に応じて、油圧ポンプのポンプ押しのけ容積を修正するようになっている。幾つかの実施形態では、フィードフォワード制御モジュールによって、異常検出後(例えば迅速に)油圧ポンプのポンプ押しのけ容積を低減する。これにより、モータの押しのけ容積が低下するように、油圧ポンプによるエネルギー吸収率を低減し、高圧マニホールドの過度な圧力増大を回避する。
【0094】
熟練した技術者は、コントローラの機能が、コンピュータソフトウェアまたは電子回路、あるいはこれら2つを合体させた構成によって実現し得ることを理解するであろう。
【0095】
よって、本発明は、電力変換器を介さず系統へ直接的に接続される同期発電機であっても、エネルギー効率改善のために、脱調することなく高い信頼性で制御可能である風力発電装置、あるいは再生エネルギー型の他の発電装置を提供する。
【0096】
本明細書に開示される発明の範囲において、さらなる変更や変形がなされてもよい。