特許第5788124号(P5788124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788124ペンダントフリーラジカル重合性四級アンモニウム置換基を含むポリ(イソブチレン)コポリマーを含む接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788124
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ペンダントフリーラジカル重合性四級アンモニウム置換基を含むポリ(イソブチレン)コポリマーを含む接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/22 20060101AFI20150910BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150910BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20150910BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150910BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20150910BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C09J123/22
   C09J11/06
   C09J5/06
   C09J7/02 Z
   C08F236/04
   C08F8/32
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-503199(P2015-503199)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公表番号】特表2015-517006(P2015-517006A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】US2013023704
(87)【国際公開番号】WO2013147989
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】61/617,257
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヘ‐ソン
(72)【発明者】
【氏名】チャッタージー, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ガダム, バブ エヌ.
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/177530(WO,A1)
【文献】 特表平06−504628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレン繰り返し単位と、イソプレン、ブタジエン、又はこれらの組合せに由来するアルケン繰り返し単位とのコポリマーであって、前記アルケン繰り返し単位の少なくとも一部が、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩のペンダント窒素原子に結合しているコポリマーと、
任意で粘着付与剤と、を含む接着剤組成物。
【請求項2】
四級アンモニウム塩基の前記窒素原子に結合しているアルケン繰り返し単位を0重量%超かつ20重量%未満含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
四級アンモニウム塩基の前記窒素原子に結合しているイソプレンに由来する前記繰り返し単位が、次の式:
【化1】

(式中、Zは、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩基である)
を有する、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記コポリマーが、次の式:
【化2】

(式中、aは、少なくとも20であり、bとcとの合計は、少なくとも1であり、Zは、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩基である)
を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記四級アンモニウム塩基が、次の式:
(NR)(X又は
【化3】

(式中、Rは、フリーラジカル重合性基を含み、R及びRは、それぞれ独立して、C〜C18アルキルであり;
はハロゲンである)
を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記フリーラジカル重合性基又はRが、(メタ)アクリレート基又は(メタ)アクリルアミド基である、請求項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
5〜50重量%の粘着付与剤を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
架橋されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
裏材上に請求項1〜のいずれか一項に記載の接着剤組成物を含む、接着物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
ポリイソブチレン(PIB)は、オレフィン系熱可塑性プラスチックに対するその優れた接着特性のために、低表面エネルギー(LSE)での接合用途における魅力的な材料であると考えられている。(例えば、国際公開第2011/062852号及び同第2011/062851号を参照)。
【0002】
本発明は、イソブチレン繰り返し単位とアルケン繰り返し単位とのコポリマーを含む接着剤組成物について記載する。アルケン繰り返し単位の少なくとも一部は、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩のペンダント窒素原子に結合している。接着剤は、任意で、粘着付与剤、非官能化ポリイソブチレンポリマー、可塑剤、及びこれらの組合せ等の他の成分を含む。
【0003】
1つの実施形態では、コポリマーは、以下の一般式を有する:
【0004】
【化1】

(式中、aは、少なくとも20であり、bとcとの合計は、少なくとも1であり、Zは、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩基である)。
【0005】
本明細書に記載する発明は、イソブチレンコポリマーから調製される接着剤及び封止剤、並びにそれから調製されるテープ物品に関する。好ましい実施形態では、接着剤は、感圧性接着剤である。
【0006】
接着剤組成物は、イソブチレン繰り返し単位とアルケン繰り返し単位とのコポリマーであって、前記アルケン繰り返し単位の少なくとも一部がフリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム基のペンダント窒素原子に結合しているコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、コポリマー自体を接着剤として利用することができる。他の実施形態では、接着剤は、粘着付与剤、非官能化イソブチレンポリマー(即ち、コポリマー又はホモポリマー)又はこれらの組合せと組み合わせて、このようなイソブチレンコポリマーを含む。
【0007】
イソブチレンのコポリマーは、アルケン繰り返し単位を含む。本明細書で使用するとき、「アルケン」は、例えば、イソプレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等の不飽和を有する直鎖又は分岐鎖二価炭化水素を意味する。典型的な実施形態では、コポリマーのアルケン繰り返し単位は、典型的に、イソプレン、ブテン、又はこれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では、コポリマーは、イソブチレン繰り返し単位及びイソプレン繰り返し単位のコポリマーであって、前記イソプレン繰り返し単位の一部が、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム基のペンダント窒素原子に結合しているコポリマーを含む。
【0008】
本明細書で使用するとき、「フリーラジカル重合性」基又は置換基は、好適なフリーラジカル源に曝露したときに架橋反応に関与するエチレン性不飽和部分を指す。フリーラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル基、並びに(例えば、芳香環の)ビニルが挙げられる。フリーラジカル重合性基は、典型的に、(例えば、分岐鎖又は直鎖)アルキレン基等の二価連結基を用いて四級アンモニウム基の窒素原子に結合する。アルキレン連結基は、典型的に、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ネオペンテン、ヘキセン、及びオクテン等の、少なくとも2個の炭素原子且つ18個以下又は12個以下の炭素原子を有する。
【0009】
幾つかの実施形態では、例えば、イソプレン又はブタジエンに由来するイソブチレン及びアルケン繰り返し単位は、コポリマーの唯一の繰り返し単位である。しかし、コポリマーは、接着剤の剥離及び剪断特性を損なわせない限り、任意で、パラメチルスチレンを含む繰り返し単位等の他の繰り返し単位を低濃度で含んでもよい。パラメチルスチレンモノマー単位は、パラメチルスチレン自体の凝集力及び硬度によって、コポリマーに耐熱性及び強度を付与することができる。しかし、本明細書に記載する接着剤組成物は、パラメチルスチレン繰り返し単位を含むコポリマーの非存在下で、高剪断値(10,000分+室温)とともに優れた接着性を呈する。
【0010】
イソブチレン繰り返し単位とアルケン繰り返し単位とのコポリマーは、一般的に、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム基の窒素原子に結合している低濃度のアルケン(例えば、イソプレン)繰り返し単位を含む。濃度は、組成物の0重量%超であり、典型的に、少なくとも1、2、3、4、又は5重量%である。四級アミン基の窒素原子に結合しているアルケン(例えば、イソプレン)繰り返し単位の濃度は、典型的に、20重量%以下、幾つかの実施形態では、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、又は10重量%以下である。フリーラジカル重合性置換基の分子量は、典型的に、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム基の分子量の約半分であるので、フリーラジカル重合性基の濃度は、典型的に、イソブチレンコポリマーの少なくとも0.5、1、1.5、又は2重量%であり、典型的に、10重量%以下、又は7.5重量%以下、又は7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下である。低濃度のフリーラジカル重合性基は、(例えば、ホットメルト)加工中に、早期にゲル形成することなく架橋を介して剪断強度を上昇させやすい。
【0011】
四級アミン基の窒素原子に結合しているイソプレンに由来する繰り返し単位は、次の式によって表すことができる:
【0012】
【化2】

(式中、Zは、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム基である)。
【0013】
以下の反応スキームに示す通り、コポリマーは、一般的に、三級アミンによる、ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)を含む市販のハロゲン化PIBの求核置換によって調製され、それによって、ハロゲン(例えば、臭素)が負に帯電している対イオンとして置換されている四級アンモニウム塩を形成する。
【0014】
このような求核置換に好適な三級アミンとしては、例えば、3−(ジメチルアミノ)ネオペンチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、及びビニルピリジンが挙げられる。
【0015】
【化3】
【0016】
コポリマーがイソプレンに由来する繰り返し単位を含む場合、反応スキームは、以下の通り記載することができる:
【0017】
【化4】

(式中、Xは、ハロゲン、好ましくは臭素であり;
Zは、式−(NR)(X又は
【0018】
【化5】

の四級アミンであり;
は、フリーラジカル重合性基を含み;
及びRは、それぞれ独立して、C〜C18アルキルであり;
aは、少なくとも20であり;
bとcとの合計は、少なくとも1である)。
【0019】
添字「a」を有するモノマー単位は、重合イソブチレンモノマー単位であると認識される。更に、添字「b」及び「c」は、既に記載した通り、コポリマーが、1〜20重量%のそれぞれのモノマー単位を含むように選択される。
【0020】
幾つかの実施形態では、臭素化コポリマーと反応する三級アミンは、式NRを有し、一方、四級アンモニウム塩基Zは、一般式(NR(Xを有する。
【0021】
このように形成される三級アミン及び四級アンモニウム塩の置換基のうちの少なくとも2つ(例えば、R及びR)は、典型的に、独立して、C〜C18アルキル基である。アルキル基は、環状(R及びRは、一緒になって環を形成する)、直鎖、又は分岐鎖であってよい。幾つかの実施形態では、R及びRは、独立して、C〜C、例えば、メチル基である。
【0022】
三級アミンは、次の式によって表すことができる:
【0023】
【化6】

(式中、R及びRは、既に記載した通り、アルキル基であり、
Xは、−O−又は−NR−であり、
xは、0又は1であり、
は、アルキレンであり、
は、水素又はC〜Cアルキル基である)。
【0024】
他の実施形態では、例えば、ビニルピリジンを三級アミンとして利用するとき、窒素原子は、芳香環構造の一部である。五価窒素環化合物も、四級アンモニウム化合物であるとみなされる。
【0025】
触媒又はアルキル化剤を使用してもよいが、このような反応は、単に、昇温(例えば、約100℃)することによって開始させることができる。
【0026】
あるいは、フリーラジカル重合性置換基を含むペンダント四級アンモニウム塩を含むイソブチレンコポリマーは、ハロゲン化(典型的に、臭素化)イソブチレンコポリマーと求核剤(例えば、ヒドロキシアルキル基)を有するアミンとを反応させ、次いで、これをアクリロイルクロリド等の求電子物質と反応させて、ヒドロキシルをフリーラジカル重合性基に変換することによって形成することができる。このような反応物質は、以下に記載する通りである:
【0027】
【化7】
【0028】
幾つかの実施形態では、ペンダントフリーラジカル重合性基を含むイソブチレンを形成するための出発材料は、例えば、Lanxessから商品名「Lanxess Bromobutyl 2030」(約1.5〜2.0重量%の臭素含量及び約500,000g/モルの分子量(Mw)を有する)として入手可能な市販の臭素化コポリマーである。他の実施形態では、非官能化イソブチレンポリマーは、N−ブロモスクシンイミド(NBS)又は臭素と反応させ、次いで、フリーラジカル重合性置換基を含む三級アミン化合物と反応させることによってハロゲン化してよい。更に、非官能化ホモポリマー及びコポリマーは、ペンダント四級アンモニウム塩基を含むポリイソブチレンコポリマーとブレンドしてよい。したがって、非官能化イソブチレンコポリマーは、出発材料として有用である。非官能化イソブチレンコポリマー及びホモポリマーも、接着剤組成物の任意であるが更なる成分として有用である。ポリイソブチレンホモポリマーは、ハロゲン化に必要なポリマー中に不飽和が存在しないので、出発材料として有用ではない。このような不飽和は、アルケンコモノマー繰り返し単位によって提供される。
【0029】
ポリイソブチレン材料は、典型的には、イソブチレンを単独で重合させることにより、又は塩化アルミニウム、三塩化ホウ素(共触媒としての四塩化チタンと共に)若しくは三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、追加のエチレン性不飽和モノマー(イソプレン、ブタジエン、又はこれらの組み合わせ等)を加えてイソブチレンを重合させることにより調製される。コポリマーは、典型的に、ランダムコポリマーである。しかし、別の方法としてブロックコポリマーを用いてもよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、ペンダントフリーラジカル重合性四級アンモニウム基を含むイソブチレンコポリマーの重量平均分子量(M)は、少なくとも25,000グラム/モル、少なくとも50,000グラム/モル、少なくとも100,000グラム/モル、又は少なくとも150,000グラム/モルである。幾つかの実施形態では、重量平均分子量は、典型的に、4,000,000g/モル以下、又は3.000,000g/モル以下、又は2,000,000g/モル以下、又は1,000,000g/モル以下、又は500,000g/モル以下である。
【0031】
非官能化イソブチレンコポリマーは、一般的に、ポリイソブチレン主鎖を有する合成ゴムである。幾つかの実施形態では、イソブチレンのイソブチレンコポリマーは、イソブチレンが別のモノマーと共重合している合成ゴムである。合成ゴムとしては、例えば、VISTANEX(Exxon Chemical Co.)及びJSR BUTYL(Japan Butyl Co.,Ltd.)の商品名で入手可能であるブチルゴムのような、大部分のイソブチレンと少量のイソプレン等のアルキレンとのコポリマーであるブチルゴムが挙げられる。合成ゴムはまた、大部分のイソブチレンとn−ブタン又はブタジエンとのコポリマーを含む。幾つの実施形態では、イソブチレンホモポリマーとブチルゴムとの混合物を用いてもよく、即ち、第1のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含み、第2のポリイソブチレンはブチルゴムを含む、又は第1のポリイソブチレンはブチルゴムを含み、第2のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、接着剤は、更に、イソブチレン繰り返し単位とアルケン繰り返し単位とのコポリマーであって、アルケン繰り返し単位の一部が、フリーラジカル重合性置換基を含む四級アンモニウム塩のペンダント窒素原子に結合しているコポリマーと組み合わせて非官能化イソブチレンホモポリマーを含む。
【0033】
ホモポリマーは、例えば、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から商品名OPPANOL(例えば、OPPANOL B10、B15、B30、B50、B80、B100、B150、及びB200)として市販されている。これらポリマーは、多くの場合、約35,000〜4,000,000g/モルの範囲の重量平均分子量(M)を有する。更に別の代表的なホモポリマーは、St.Petersburg,RussiaのUnited Chemical Products(UCP)から様々な分子量範囲で市販されている。例えば、ホモポリマーは、約35,000〜65,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量(M)を有する商品名SDGとしてUCPから市販されている。商品名EFROLENとしてUCPから市販されているホモポリマーは、約480,000〜約4,000,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量(M)を有する。商品名JHYとしてUCPから市販されているホモポリマーは、約3000〜約55,000グラム/モルの範囲の粘度平均分子量を有する。これらホモポリマーは、典型的に、フリーラジカル重合を介して共有結合を形成する反応性二重結合を有しない。
【0034】
利用されるとき、感圧性接着剤組成物における非官能化イソブチレンコポリマー又はホモポリマーの濃度は、典型的に、少なくとも5重量%、又は10重量%、15重量%である。非官能化イソブチレンコポリマー又はホモポリマーの濃度は、典型的に、50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下である。
【0035】
他の実施形態では、接着剤は、少なくとも1つの粘着付与剤を含む。粘着付与剤は、任意の好適な軟化温度、つまり軟化点を有してよい。軟化温度は、多くの場合、200℃未満、180℃未満、160℃未満、150℃未満、125℃未満、又は120℃未満である。しかし、熱が発生する傾向がある用途では、粘着付与剤は、多くの場合、少なくとも75℃の軟化温度を有するように選択される。このような軟化温度は、接着剤組成物を電子デバイス又は電子部品等からの熱に供する場合、接着剤組成物の残りからの粘着付与剤の分離を最小化するのに役立つ。軟化温度は、多くの場合、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、又は少なくとも95℃になるように選択される。しかし、熱の発生しない用途では、粘着付与剤は、75℃未満の軟化温度を有してもよい。
【0036】
代表的な粘着付与剤としては、炭化水素樹脂及び水素添加炭化水素樹脂が挙げられ、例えば、水素添加脂環式樹脂、水素添加芳香族樹脂又はこれらの組み合わせである。好適な粘着付与剤は市販されており、例えば、荒川化学工業株式会社(日本、大阪)から商品名ARKONで入手可能なもの(例えば、ARKON P又はARKON M)、Exxon Mobil Corporation(Houston,TX)から商品名ESCOREZで入手可能なもの(例えば、ESCOREZ 1315、1310LC、1304、5300、5320、5340、5380、5400、5415、5600、5615、5637及び5690)、並びに、Eastman Chemical(Kingsport,TN)から商品名REGALREZで入手可能なもの(例えば、REGALREZ 1085、1094、1126、1139、3102及び6108)が挙げられる。
【0037】
粘着付与剤の濃度は、目的の接着剤組成物に依存して変動してよい。幾つかの実施形態では、粘着付与剤の量は、少なくとも5重量%、10重量%、又は15重量%である。粘着付与剤の最大量は、典型的に、45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下の粘着付与樹脂である。
【0038】
また、可塑剤は、濡れ作用及び/又は粘度制御を提供するために接着剤製剤で用いられ得る。これら可塑剤は、当該技術分野において周知であり、炭化水素油、液体炭化水素樹脂、液体ポリテルペン、液体ポリ(イソブチレン)(Glissopal(商標)等)を含む、液体又は軟性粘着付与剤、ワックス、及び油の混合物が挙げられ得る。可塑剤は、1、2、3、4、又は5重量%の量で本発明の感圧性接着剤中に存在してよく、典型的に、接着剤組成物の30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下である。
【0039】
また、当業者は、充填剤、抗酸化剤、安定剤、及び着色剤等の他の添加剤を、有益な特性のために接着剤とブレンドしてもよいことを理解している。
【0040】
ペンダント四級アンモニウム基のフリーラジカル重合性基は、当該技術分野において既知の通り硬化させることができる。幾つかの好ましい実施形態では、フリーラジカル重合性基は、光硬化等によって放射線硬化される。このような実施形態では、光開始剤は、典型的に、接着剤組成物に添加される。
【0041】
光架橋剤は、好ましくは、発色団置換クロロ−メチル−s−トリアジン架橋剤である。1つの実施形態では、架橋剤は、米国特許第4,330,590号(Vesley)に記載されているものであり、下記式:
【0042】
【化8】

(式中、R10、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、アルキル、又はアルコキシであり、R10、R12、R13、及びR14基のうち1〜3個は水素である)を有する。好ましくは、アルキル基及びアルコキシ基は、12個以下の炭素原子を有し、多くの場合4個以下の炭素原子を有する。好ましくは、R12及びR13は両方とも、アルコキシであり、その理由は、反応時間をより短くする傾向があるからである。隣接するアルコキシ置換基は、相互接続して環を形成してもよい。光活性s−トリアジン成分は、HClガス、及びAlCl、AlBr等のルイス酸の存在下で、トリクロロアセトニトリルとのアリールニトリルの共三量化によって調製されてもよい(Bull.Chem.Soc.Japan,Vol.42,page 2924(1969)に記載の通り)。
【0043】
別の実施形態では、架橋剤は、米国特許第4,329,384号(Vesley)に記載されるものであり、下記式:
【0044】
【化9】

(式中、R15及びR16は、独立して、水素、アルキル、又はアルコキシである)を有する。この式では、R15及びR16は、縮合環のどちら側でもよいことを意味する。好ましくは、光活性s−トリアジンの成分の任意のアルキル基又はアルコキシ基は、12個以下の炭素原子を有し、2個以下のアルキル基及びアルコキシ基は、6個を超える炭素原子を有する。特定の実施形態では、これらは、4個以下の炭素原子を有し、アルキルは、多くの場合メチル又はエチルであり、アルコキシは、多くの場合メトキシ又はエトキシである。隣接するアルコキシ置換基は、相互接続して環を形成してもよい。光活性s−トリアジン成分は、HClガス、及びAlCl、AlBr等のルイス酸の存在下で、トリクロロアセトニトリルとの多核性ニトリルの共三量化によって調製されてもよい(Bull.Chem.Soc.Jap.,Vol.42,pages 2924〜2930(1969)に記載の通り)。
【0045】
好適な塩素化トリアジン架橋剤の例として、米国特許第4,330,590号(Vesley)に記載されている2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシ)フェニル)−s−トリアジン;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−ジメトキシ)フェニル)−s−トリアジン;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4,5−トリメトキシ)フェニル)−s−トリアジン;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(2,4−ジメトキシ)フェニル)−s−トリアジン;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−メトキシ)フェニル)−s−トリアジン、並びに米国特許第4,329,384号(Vesley)に記載されている2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ナフテニル−s−トリアジン及び2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシ)ナフテニル−s−トリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
塩素化トリアジン架橋剤は、好ましくは光架橋剤である。より好ましくは、トリアジン架橋剤は、発色団置換クロロ−メチル−s−トリアジン架橋剤であり、これは、Wakabayashiら、Bull.Chem.Soc.Jap.,Vol.42,pages 2924〜2930(1969)に従って調製することができる。
【0047】
エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を含むペンダント四級アミン基を有するイソブチレンコポリマーを含む接着剤組成物は、組成物で使用するために選択される特定の光活性架橋剤において生じたときフリーラジカルを発生させるために、十分なエネルギー(即ち、波長範囲)の化学線源を用いて硬化させることができる。上で開示される光活性架橋剤に対する好ましい波長範囲は、400〜250nmである。本発明の接着剤フィルムを架橋するために必要とされる、この好ましい範囲の波長の放射エネルギーは、100〜1500ミリジュール/cm、より好ましくは200〜800ミリジュール/cmである。光硬化プロセスの詳細は、米国特許第4,181,752号(Martensら)及び同第4,329,384号(Vesleyら)に開示されている。
【0048】
幾つかの実施形態では、接着剤組成物を、溶媒溶液又は分散液として塗布し、溶媒を蒸発させ、接着剤組成物を紫外線等の化学放射に曝露して架橋する。このような溶媒系組成物の架橋は、コーティング及び溶媒の除去前に行われてもよいが、好ましくはその後に行われる。アルカン、酢酸エチル、トルエン、及びテトラヒドロフラン等の好適な溶媒は、コポリマーの成分のフリーラジカル重合性基と非反応性である。
【0049】
ホットメルト接着剤組成物等の他の実施形態では、接着剤は、溶媒を含まないままの溶解物から塗布される。PSA組成物のホットメルトコーティングにより、溶媒処理の必要がなくなる。接着剤組成物をホットメルトプロセスに供するために、組成物は、典型的に、コーティングプロセス前及びコーティングプロセス中には架橋されない。しかし、剪断接着を得るために、架橋が、典型的に、好ましい。ホットメルトコーティングプロセスにおいて、これは、通常、高エネルギー放射(例えば、Eビーム又は高強度紫外放射)への曝露によって行われる。一般的に、高強度紫外放射が使用される時、ベンゾフェノン等の光活性架橋種が、組成物に添加される。一般的に、ホットメルト接着剤組成物は、溶液コーティングされた組成物よりも狭い範囲の分子量のポリ(イソブチレン)コポリマーを必要とする。低すぎると、架橋されたポリマーは、不十分な粘着性強度を有する。高すぎると、組成物は、押し出しコーティングすることができない。一般的に、非官能化ポリ(イソブチレン)コポリマーの分子量は、50,000〜5,000,000g/モルである。幾つかの実施形態では、非官能化ポリ(イソブチレン)コポリマーの分子量は、1,000,000g/モル以下、又は500,000g/モル以下、又は400,000g/モル以下、又は300,00g/モル以下、又は200,000g/モル以下、又は100,000g/モル以下である。
【0050】
幾つの実施形態では、溶解物から基材に塗布されるホットメルト接着剤組成物が提供される。このようなホットメルト接着剤組成物は、実質的に溶媒を含まない。ホットメルト接着剤は、多目的であり、とりわけ、製本、段ボール箱、プラスチック部品、及び木製物品等の産業用途において広く使用される。ホットメルトは、約150〜約180℃で変動する塗布温度で、概して100%固体の接着剤である。
【0051】
好ましい実施形態では、(例えば、硬化)接着剤は、感圧性接着剤である。感圧テープ協議会によると、感圧接着剤(PSA)は以下の特性を有することが知られている。即ち、(1)強力且つ永久的な粘着性、(2)指圧以下での接着性、(3)被着体に対する充分な保持力、及び(4)被着体からきれいに剥離されるだけの充分な凝集強さである。PSAとして良好に機能することが判明している材料としては、必須の粘弾性特性を示し、粘着、剥離接着、及び剪断保持力の所望のバランスをもたらすように設計及び処方されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常は、室温(例えば、20℃)で粘着性であることを特徴とする。PSAは、単に面に対して粘着性又は接着性であるという理由で組成物を抱持するわけではない。
【0052】
これら要件は、一般的に、粘着性、接着性(剥離強度)、及び凝集(剪断保持力)を個々に測定するために設計された試験を用いて評価される(A.V.Pocius in Adhesion and Adhesives Technology:An Introduction,2nd Ed.,Hanser Gardner Publication,Cincinnati,OH,2002に記載の通り)。これらの測定値は共に作用し、PSAを特性評価する際にしばしば用いられる特性のバランスをとって構成する。
【0053】
例えば、エラストマーのガラス転移温度(T)又は弾性率が高すぎ且つ粘着性に関するダルキスト基準を上回る(室温で且つ1Hzの振動周波数にて、3×10ダイン/cm(0.3MPa)の貯蔵弾性率)場合、材料は粘着性ではなくなり、単独でPSA材料として有用ではなくなる。このような事例では、多くの場合、低分子量でTの高い樹脂ポリマー(粘着付与剤)又は低分子量でTの低いポリマー(可塑剤)を使用して、T及び弾性率をPSAに最適な範囲に調整する。
【0054】
本発明の接着剤を、従来のコーティング技術を用いて各種の可撓性及び非可撓性裏材にコーティングすることで、接着剤コーティングされた材料を製造することができる。可撓性基材は、本明細書では、テープ裏材として従来利用されている任意の材料として定義され、又は任意の他の可撓性材料であってよい。例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。発泡体裏材を使用することもできる。非可撓性基材の例としては、金属、金属化ポリマーフィルム、インジウムスズ酸化物でコーティングされたガラス及びポリエステル、PMMAプレート、ポリカーボネートプレート、ガラス、又はセラミックシート材料が挙げられるが、これらに限定されない。接着剤でコーティングされたシート材料は、ラベル、テープ、サイン、カバー、標識インデックス、ディスプレイコンポーネント、タッチパネル等のような接着剤組成物を利用することが従来知られている任意の物品の形態をとることができる。微細複製された表面を有する可撓性の裏材も想到される。
【0055】
上記組成物は、特定の基材に適するように調節された従来のコーティング技術を使用して基材にコーティングされる。例えば、これら組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティング等の方法によって各種の固体基材に塗布することができる。これら種々のコーティング法は、組成物を様々な厚さで基材上に定置することを可能にし、それにより組成物をより広い範囲で使用することを可能にする。コーティング厚さは変動してもよいが、2〜500マイクロメートル(乾燥厚さ)、好ましくは約25〜250マイクロメートルのコーティング厚さが考えられる。
【0056】
本開示の接着剤は、低表面エネルギー(LSE)基材に対して強力な接合を形成するために特に有用である。本明細書で使用するとき、低表面エネルギー基材は、約45ダイン/センチメートル(0.00045N/cm)未満、より典型的には約40ダイン/センチメートル(0.0004N/cm)未満、最も典型的には約35ダイン/センチメートル(0.00035N/cm)未満の表面エネルギーを有するものである。このような材料の中でも、オレフィン系熱可塑性プラスチック(ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン又はHDPE、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM))、並びにポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)が含まれる。このような材料は、自動車、塗料、電気製品、及びエレクトロニクス市場で一般的に用いられている。基材の表面上に存在する石油残留物等の残留物又は塗装等の被膜に起因して、他の基材も低表面エネルギー特性を有し得る。しかし、本接着剤が低表面エネルギー表面に良好に接合するとしても、本発明は、低表面エネルギー基材への接合に限定されるものではない。その理由は、本発明の接着剤は、例えば、他のプラスチック、セラミック、ガラス、及び金属等のより高表面エネルギー基材にも良好に接合できることが見出されているためである。また、本明細書に記載する接着剤組成物は、臭いが少なく且つ生理学的に不活性であるので、医療用接着剤分野に好適である。
【0057】
感圧性接着剤は、目的の最終用途に依存して、様々な剥離及び剪断特性を呈することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、ガラス、ステンレス鋼、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)又はEPDM熱可塑性エラストマーに対する90度剥離は、一時的に取り外し可能なPSA又は低温PSAについて、少なくとも5オンス/インチ(5N/dm)である。マスキングテープについては、ガラス、ステンレス鋼、HDPE、PP又はTPEに対する90度剥離は、典型的に、15〜20オンス/インチ(16〜22N/dm)である。幾つかの好ましい実施形態では、接着剤は、高表面エネルギー基材及び低表面エネルギー基材の両方に対して良好な接着を呈する。幾つかの実施形態では、ガラス、ステンレス鋼、EPDM又はPPに対する90度剥離は、独立して、少なくとも25、30、35、40、45又は50オンス/インチ(27.4、32.8、38.3、43.8、49.2又は54.7N/dm)である。少なくとも幾つかの実施形態では、室温(23℃)における剪断力は、少なくとも300分、500分、又は800分である。幾つかの好ましい実施形態では、室温(23℃)又は70℃における剪断力は、少なくとも2,000分、4,000分、8,000分、又は10,000分である。
【0059】
(PSAが結合する)基材は、用いられる具体的な用途に応じて選択される。例えば、接着剤は、シート製品(例えば、装飾用のグラフィック及び反射製品)、ラベルストック、及びテープ裏材に塗布することができる。加えて、接着剤は、他の基材又は物体をパネル又は窓に接着することができるよう、自動車用パネル、又はガラス窓等の基材上に直接塗布することもできる。
【0060】
接着剤は、感圧性接着剤転写テープの形態で提供することもでき、このようなテープでは、後に永久基材に貼り付けるために、接着剤の層が剥離ライナー上に少なくとも1層配置される。接着剤は、接着剤が恒久的に裏材上に配置されている片面コーティング又は両面コーティングされたテープとして提供することもできる。裏材は、プラスチック(例えば、二軸延伸ポリプロピレン等のポリプロピレン、ビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル)、不織布(例えば、紙、布、不織布スクリム)、金属箔、発泡体(例えば、ポリアクリル、ポリエチレン、ポリウレタン、ネオプレン)等から製造することができる。発泡体は、3M Co.、Voltek、Sekisui、及びその他の様々な供給元から市販されている。発泡体は、発泡体の片面又は両面に接着剤を備える共押出シートとして形成することができ、即ち接着剤を積層することができる。接着剤が発泡体に積層される場合、発泡体又はあらゆる他の種類の裏材に対する接着剤の接着性を改善させるために、表面を処理することが望ましい場合もある。このような処理法は、典型的には、接着剤、及び発泡体又は裏材の材料の性質に基づいて選択され、プライマー及び表面改質剤(例えば、コロナ処理、表面磨耗)が包含される。更なるテープ構成としては、参照により本案件に組み込まれる米国特許第5,602,221号(Bennettら)に記載のものが挙げられる。
【0061】
片面テープの場合、典型的には、接着剤が配置された面とは反対側の裏材表面側の面が、好適な剥離材により被覆される。剥離材は既知であり、例えば、シリコーン、ポリエチレン、ポリカルバマート、ポリアクリル及び同様物のような材料が挙げられる。二重コートテープに関しては、本発明の接着剤が配置された面とは反対側の裏材表面上に、他の接着剤層が配置される。他の接着剤層は、本発明の接着剤とは異なっていてもよく(例えば、従来のアクリル系PSA等)、あるいは、同一の処方又は異なる処方を有する、本発明の接着剤と同様の接着剤であってもよい。典型的には、2重コートテープは、剥離ライナー上に適用される。
【0062】
以下の非限定例は、本発明の代表的な接着剤及び接着剤物品、並びに、このような接着剤及び接着剤物品の代表的な製造方法を更に説明する。
【実施例】
【0063】
実施例で用いるとき、pphは、ポリマー100部あたりの部を指す。100部のポリマーは、四級アミン変性ポリイソブチレンポリマー及び任意の非官能化ポリイソブチレン、例えば、MWPIBの合計量を含む。
【0064】
試験方法:
90°角度剥離接着強度試験
剥離接着強度は、ASTM国際規格、D3330、方法Fに記載されている手順を使用して、12インチ/分(305mm/分)の剥離速度において、IMASS SP−200滑り/剥離試験器(IMASS,Inc.,Accord MAから入手可能)を使用して、90°の角度で測定した。試験パネルは、パネルを8〜10回拭くように、強い手圧を使用して、表1に示される対応する溶媒で濡らしたティッシュでパネルを拭くことによって準備した。この手順を、溶媒で濡らした清潔なティッシュであと2回繰り返した。洗浄したパネルを乾燥させた。接着剤テープを1.27cm×20cm(1/2インチ×8インチ)を測定して細片に切断し、細片を、2パスで、2.0kg(4.5ポンド)のゴムローラーを用いて洗浄したパネル上へ圧延した。準備された試料を、23℃/50% RHで試験まで24時間保存した。2つのサンプルを、各実施例に対して試験し、平均値をN/dmで表した。破壊モードを書きとめ、COH(凝集、即ち、接着剤が割れてテープと試験表面の両方に残渣が残った)、ADH(接着、即ち、接着剤が試験表面からきれいに剥がれた)、及び混合(接着剤が一部の領域からはきれいに剥がれ、他の領域では表面に接着している)として記録した。
【0065】
【表1】
【0066】
静的剪断強度
静的剪断強度を、23℃/50% RH(相対湿度)で9.81N(1000g)の荷重を用い、ASTM国際規格D3654の手順Aに記載の通り評価した。1.27cm×15.24cm(1/2インチ×6インチ)のテープ試験サンプルを、パネルを洗浄し、剥離接着試験で記載されるテープを接着させるための方法を使用して、3.8cm×5.1cm(1.5インチ×2インチ)ステンレス鋼(SS)パネルに接着させた。テープをパネルに1.27cm×2.5cm重なり合わせ、細片を接着剤側でそれ自体の上に折り畳み、次いで、再度折り畳んだ。フックを第2の折り畳みに掛け、フックの上にテープをホチキスで留めることによって固定した。重しをフックに取り付け、パネルを23℃/50%RHの室内に掛けた。破壊までの時間を、分で記録した。10,000分後に破壊が観察されなかった場合、試験を停止し、10,000分の値を記録した。剥離接着試験において記載した破壊モードも記録した。
【0067】
実施例に使用される材料
・BPIB−イソブチレン及び臭素化イソプレンのコポリマー(Lanxess Bromobutyl 2030,Lanxess Corporation;Akron,OH)
・LPIB−低分子量(1K g/モル)液体ポリイソブチレン(Glissopal 1000、可塑剤、BASF;Florham Park,NJ)
・粘着付与剤−脂環式炭化水素系粘着付与剤(ESCOREZ 5340粘着付与剤、ExxonMobil Corporation;Baytown,TX)MWPIB−非官能化中分子量(80K g/モル)ポリイソブチレン(OPPANOL B15ポリマー、BASF;Florham Park,NJ)Hostaphan(登録商標)3SAB−下塗りされたポリエステルフィルム(Mitsubishi,Greer,SC)
・架橋剤(2,4−ビス−トリクロロメチル−6(3,4−ジメトキシ−フェニル)−S−トリアジン)(これは、Wakabayashiら、Bull.Chem.Soc.Jap.,Vol.42,pages 2924〜2930(1969)に従って調製することができる)
・イソプロピルアルコール、ヘプタン、及びアセトンを含む溶媒(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)
・トルエン−99.5%、(EMD,Gibbstown,NJ)
【0068】
三級アミン
・2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(TCI America,Portland,OR)
・N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(TCI America,Portland,OR)
・3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(TCI America,Portland,OR)
・3−ジメチルアミノネオペンチルアクリレート(Polysciences,Warrington,PA)
3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートグラフトPIB(ポリマー1)の調製
【0069】
還流冷却器、温度計、及び窒素導入口を備える3つ口丸底フラスコ内に、Lanxess Bromobutyl 2030コポリマー(20.0g)、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(1.0g)、及びトルエン(80.0g)を入れた。フラスコの内容物を、窒素雰囲気下、室温にて電磁攪拌棒で攪拌した。全ての成分が完全に溶解した時点で、フラスコを105℃まで加熱した。5時間後、反応液を室温まで冷却した。溶液をアセトンに注入して、修飾ポリマーを凝固させた。単離したポリマーを新しいアセトンで3回洗い、反応溶媒及び未反応の反応物質を除去した。次いで、ポリマーを濾過し、真空オーブンで12時間、50℃で乾燥させ、次いで、室温まで冷却した。
【0070】
3−ジメチルアミノネオペンチルアクリレートグラフトPIB(ポリマー2)の調製
2,3−ジメチルアミノネオペンチルアクリレートを3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートの代わりに用いたことを除いて、ポリマー1の手順に従ってポリマー2を合成した。
【0071】
2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートグラフトPIB(ポリマー3)の調製
3,2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートの代わりに用いたことを除いて、ポリマー1の手順に従ってポリマー3を合成した。
【0072】
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドグラフトPIB(ポリマー4)の調製
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドを3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートの代わりに用いたことを除いて、ポリマー1の手順に従ってポリマー4を合成した。
【0073】
実施例1〜2及び対照組成物C1〜C2
修飾ポリマー(ポリマー1)又はC1用の臭素化イソブチレン(BPIB)とC1とのコポリマー、並びに任意の非官能化中分子量ポリイソブチレン(MWPIB)、粘着付与剤(ESCOREZ 5340)及び架橋剤(2,4−ビス−トリクロロメチル−6(3,4−ジメトキシ−フェニル)−S−トリアジン)を、400部のトルエンを含有する100mLのジャー内で、表2に示す量で混合することによって接着剤組成物を調製した。ジャーを、ローラーミル上で一晩混合した。
【0074】
【表2】
【0075】
得られた組成物を、ポリエステルフィルム裏材(Hostaphan(登録商標)3SAB)の6インチ×25インチ(15.2cm×63.5cm)の細片の下塗りされた側面に、約15ミル(381μm)の湿潤厚さになるようにナイフコーティングした。コーティングされたフィルムを、70℃に設定されたオーブンで20分間乾燥させて、2ミル(50.8μm)の接着剤コーティング厚さを有するテープを得た。コーティングされたテープを、UVプロセッサ(Fusion UV System,Inc.,Gaithersburg,MD)を使用して、UV光(400mJ/cm2、UVB)で照射することによって硬化させた。
【0076】
テープを23℃、50% RHで24時間コンディショニングした後、90°剥離接着性及び室温における剪断強度(RT剪断)について試験した。試験結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
(実施例3〜8)
修飾PIBがポリマー2、3、及び4であったことを除いて、実施例1〜2に記載の通りに接着剤組成物及びテープを調製した。接着組成物を表5に示す。室温及び90°剥離接着性についての試験結果を表6に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
実施例9〜10に記載の通り、ホットメルト(無溶媒)接着剤組成物及びテープを調製した。表7に示す量で臭素化イソブチレンのコポリマー(BPIB)、非官能化中分子量ポリイソブチレン(MWPIB)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、架橋剤(2,4−ビス−トリクロロメチル−6(3,4−ジメトキシ−フェニル)−S−トリアジン)、低分子量液体ポリイソブチレン(LPIB)、及び粘着付与剤(ESCOREZ 5340)を混合することによって組成物を作製した。
【0082】
混合は、Brabenderミキサー(C.W.Brabender(登録商標)Instruments,Inc South Hackensack,NJ)内で100℃にて実施した。典型的な混合時間は、5〜10分間であった。
【0083】
【表6】
【0084】
次いで、調製した接着剤組成物を、ポリエステルフィルム裏材(Hostaphan(登録商標)3SAB)の6インチ×25インチ(15.2cm×63.5cm)の細片の下塗りされた側面に、170℃で約5ミル(127μm)の厚さになるようにホットプレスした。コーティングされたテープを、UVプロセッサ(Fusion UV System,Inc.,Gaithersburg,MD)を使用して、UV光(400mJ/cm2、UVB)を照射することによって硬化させた。試験結果を表8に示す。
【0085】
【表7】