(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788146
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 4/501 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
H03K4/50 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-58067(P2010-58067)
(22)【出願日】2010年3月15日
(65)【公開番号】特開2011-193266(P2011-193266A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2012年6月14日
【審判番号】不服2014-4928(P2014-4928/J1)
【審判請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
【合議体】
【審判長】
大塚 良平
【審判官】
山本 章裕
【審判官】
林 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−202701(JP,A)
【文献】
特開2006−352384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 4/00-4/94, 6/00-6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、
前記第1の基準電位は前記発振回路の電源の低電位側電位、前記第2の基準電位は入力電圧であり、前記入力電圧を第1の電圧電流変換回路により電流変換した電流を前記発振回路の前記電源の高電位側電位に一端が接続された第1の抵抗に流すことにより該第1の抵抗の他端に発生する電位を第2の電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、
前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、
それぞれ同じ入力電圧が入力される、第1の増幅率を有する第1の非反転増幅回路、前記第1の増幅率より小さい第2の増幅率を有する第2の非反転増幅回路、および前記第2の増幅率より小さく1より大きい第3の増幅率を有する第3の非反転増幅回路を有し、
前記第1の基準電位は前記入力電圧、前記第2の基準電位は前記第3の非反転増幅回路の出力であり、前記第1の非反転増幅回路の出力と前記第2の非反転増幅回路の出力との電位差を電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、
前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする発振回路。
【請求項3】
コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、
前記第1の基準電位は入力電圧の第1の分圧、前記第2の基準電位は前記入力電圧の第2の分圧であり、前記入力電圧と前記入力電圧の第3の分圧との電位差を電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、
前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする発振回路。
【請求項4】
コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの放電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの充電を繰り返す発振回路であって、
前記第1の基準電位は入力電圧を第1の電圧電流変換回路により電流変換した電流を前記発振回路の前記電源の高電位側電位に一端が接続された第1の抵抗に流すことにより該第1の抵抗の他端に発生する電位、前記第2の基準電位は前記発振回路の前記電源の高電位側電位であり、前記入力電圧を第2の電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、前記コンデンサの低電位側端子の電位が前記第1の基準電位に達すると、前記コンデンサの低電位側端子と前記第2の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする発振回路。
【請求項5】
前記電圧電流変換回路、前記第1電圧電流変換回路、および前記第2の電圧電流変換回路はいずれも、変換される電圧が非反転入力端子に入力される演算増幅回路、該演算増幅回路の出力端子と反転入力端子がそれぞれゲート端子とソース端子に接続されるMOSトランジスタ、および該MOSトランジスタのソース端子に接続される抵抗を有し、前記MOSトランジスタのドレイン端子より電圧電流変換された電流が出力されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを定電流で充電もしくは放電することにより発振波形を得る発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置では、正確なスイッチング周波数を得るために、コンデンサを定電流で充電もしくは放電することにより鋸波や三角波を生成する発振回路が用いられる(例えば、特許文献1を参照。)。
図6に、コンデンサを定電流で充電して鋸波を生成する従来の発振回路を示す。
【0003】
図6に示す従来の発振回路は、基準電圧Vrefに応じた発振周波数を得ることができるものであり、オペアンプ(演算増幅回路)OPA10、コンパレータCMP10、PチャネルMOSトランジスタMP10,MP20、NチャネルMOSトランジスタMN10,MN20、タイミングコンデンサCt、およびタイミング抵抗Rtを備えている。
【0004】
基準電圧VrefがオペアンプOPA10の非反転入力端子とコンパレータCMP10の反転入力端子に入力されている。オペアンプOPA10の出力端子はNチャネルMOSトランジスタMN10のゲート端子に接続され、NチャネルMOSトランジスタMN10のソース端子はオペアンプOPA10の反転入力端子とタイミング抵抗Rtの一端に接続されている。タイミング抵抗Rtの他端は接地されている。PチャネルMOSトランジスタMP10,MP20はカレントミラー回路を構成していて、PチャネルMOSトランジスタMP10のドレイン端子およびPチャネルMOSトランジスタMP10,MP20のゲート端子はNチャネルMOSトランジスタMN10のドレイン端子に接続されている。
【0005】
PチャネルMOSトランジスタMP20のドレイン端子はタイミングコンデンサCtの一端と、NチャネルMOSトランジスタMN20のドレイン端子およびコンパレータCMP10の非反転入力端子に接続されている。タイミングコンデンサCtの他端と、NチャネルMOSトランジスタMN20のソース端子は接地されている。また、コンパレータCMP10の出力端子がNチャネルMOSトランジスタMN10のゲート端子に接続されている。
【0006】
この発振回路の動作を説明する。まず、オペアンプOPA10の2つの入力が仮想短絡されていることから、タイミング抵抗Rtに電圧Vrefが印加され、これによりタイミング抵抗にVref/Rtという電流が流れる(タイミング抵抗Rtの抵抗値もRtとする。)。この電流がPチャネルMOSトランジスタMP10,MP20はカレントミラー回路からなるカレントミラーでコピーされ、PチャネルMOSトランジスタMP20のドレイン端子からもVref/Rtという電流が流れる(カレントミラーのミラー比を1とする。)。この電流がタイミングコンデンサCtを充電し、その充電電圧Voscが基準電圧Vrefに達するとコンパレータCMP10の出力がH(High)となってNチャネルMOSトランジスタMN20をオンし、タイミングコンデンサCtを放電してその充電電圧Voscをゼロにリセットする。タイミングコンデンサCtが放電されるとコンパレータCMP10の出力がL(Low)となってNチャネルMOSトランジスタMN20がオフし、タイミングコンデンサCtの充電が再開される。この動作を繰り返すことにより、電圧Voscは鋸波となる。タイミングコンデンサCtが充電されているときの充電電圧VoscはVosc=(Vref/Rt)・T/Ctで与えられるから(T:時間)、タイミングコンデンサCtの放電時間を無視すると、電圧Voscの発振周期はRt・Ctとなり、発振周波数foscはfosc=1/(Rt・Ct)で与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−352384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スイッチング電源装置における制御回路は、上述の発振回路も含めて半導体集積回路、特にCMOSプロセスで製造される半導体集積回路に集積されることが多い。しかしながら、CMOSプロセスで製造されるカレントミラー回路のミラー比は比較的ばらつきが大きく、そのためスイッチング周波数がばらついてしまうという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、CMOSプロセスで製造しても精度のよいスイッチング周波数を得ることができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、前記第1の基準電位は前記発振回路の電源の低電位側電位、前記第2の基準電位は入力電圧であり、前記入力電圧を第1の電圧電流変換回路により電流変換した電流を前記発振回路の前記電源の高電位側電位に一端が接続された第1の抵抗に流すことにより該第1の抵抗の他端に発生する電位を第2の電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を
行い、前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオン
することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、それぞれ同じ入力電圧が入力される、第1の増幅率を有する第1の非反転増幅回路、前記第1の増幅率より小さい第2の増幅率を有する第2の非反転増幅回路、および前記第2の増幅率より小さく1より大きい第3の増幅率を有する第3の非反転増幅回路を有し、前記第1の基準電位は前記入力電圧、前記第2の基準電位は前記第3の非反転増幅回路の出力であり、前記第1の非反転増幅回路の出力と前記第2の非反転増幅回路の出力との電位差を電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの充電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの放電を繰り返す発振回路であって、前記第1の基準電位は入力電圧の第1の分圧、前記第2の基準電位は前記入力電圧の第2の分圧であり、前記入力電圧と前記入力電圧の第3の分圧との電位差を電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、前記コンデンサの高電位側端子の電位が前記第2の基準電位に達すると、前記コンデンサの高電位側端子と前記第1の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、コンデンサに対する第1の基準電位から前記第1の基準電位より高電位の第2の基準電位までの放電および前記第2の基準電位から前記第1の基準電位までの充電を繰り返す発振回路であって、前記第1の基準電位は入力電圧を第1の電圧電流変換回路により電流変換した電流を前記発振回路の前記電源の高電位側電位に一端が接続された第1の抵抗に流すことにより該第1の抵抗の他端に発生する電位、前記第2の基準電位は前記発振回路の前記電源の高電位側電位であり、前記入力電圧を第2の電圧電流変換回路により電流変換した電流により前記コンデンサの充電を行い、前記コンデンサの低電位側端子の電位が前記第1の基準電位に達すると、前記コンデンサの低電位側端子と前記第2の基準電位を結ぶスイッチ素子をオンすることを特徴とする。
【0011】
請求項
5に係る発明は、請求項1
ないし4のいずれか1項に係る発明において、前記電圧電流変換回路、前記第1電圧電流変換回路、および前記第2の電圧電流変換回路はいずれも、変換される電圧が非反転入力端子に入力される演算増幅回路、該演算増幅回路の出力端子と反転入力端子がそれぞれゲート端子とソース端子に接続されるMOSトランジスタ、および該MOSトランジスタのソース端子に接続される抵抗を有し、前記MOSトランジスタのドレイン端子より電圧電流変換された電流が出力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発振回路によれば、カレントミラー回路を用いずに発振回路を構成するので、カレントミラー回路のミラー比のばらつきに影響されることのない、精度のよいスイッチング周波数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る発振回路の第1の実施例を示す図である。
【
図2】本発明に係る発振回路の第2の実施例を示す図である。
【
図3】本発明に係る発振回路の第3の実施例を示す図である。
【
図4】
図3に示す第3の実施例における非反転増幅回路の構成例を示す図である。
【
図5】本発明に係る発振回路の第4の実施例を示す図である。
【
図6】コンデンサを定電流で充電して鋸波を生成する従来の発振回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の発振回路について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に本発明に係る発振回路の第1の実施例を示す。本実施例の発振回路は、基準電圧Vrefに応じた発振周波数を得ることができるものであり、オペアンプ(演算増幅回路)OPA1,OPA2、コンパレータCMP1、PチャネルMOSトランジスタMP1、NチャネルMOSトランジスタMN1,MN2、タイミングコンデンサCt、抵抗R1,R2およびタイミング抵抗Rtを備えている。
【0018】
基準電圧VrefがオペアンプOPA1の非反転入力端子とコンパレータCMP1の反転入力端子に入力されている。オペアンプOPA1の出力端子はNチャネルMOSトランジスタMN1のゲート端子に接続され、NチャネルMOSトランジスタMN1のソース端子はオペアンプOPA1の反転入力端子と抵抗R1の一端に接続されている。抵抗R1の他端は接地されている(電源の低電位側電位である接地電位に接続されている)。また、NチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子と電源端子Vdd(電源の高電位側電位を供給する端子であり、その電位もVddで表す。)との間には抵抗R2が接続されている。
【0019】
抵抗R2とNチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子との接続点はオペアンプOPA2の非反転入力端子に接続され、オペアンプOPA2の出力端子はPチャネルMOSトランジスタMP1のゲート端子に接続され、PチャネルMOSトランジスタMP1のソース端子はタイミングコンデンサCtの充電電流を決めるタイミング抵抗Rtの一端とオペアンプOPA1の反転入力端子に接続されている。抵抗Rtの他端は電源端子Vddに接続されている。
【0020】
PチャネルMOSトランジスタMP1のドレイン端子はタイミングコンデンサCtの一端と、NチャネルMOSトランジスタMN2のドレイン端子およびコンパレータCMP1の非反転入力端子に接続されている。タイミングコンデンサCtの他端と、NチャネルMOSトランジスタMN2のソース端子は接地されている。また、コンパレータCMP1の出力端子がNチャネルMOSトランジスタMN2のゲート端子に接続されている。
【0021】
この発振回路の動作を説明する。まず、オペアンプOPA1の2つの入力が仮想短絡されることから、抵抗R1の両端には電圧Vrefが印加され、抵抗R1の抵抗値をRとすると、抵抗R2,NチャネルMOSトランジスタMN1および抵抗R1からなる回路には電流Vref/Rが流れる。ここで、抵抗R2の抵抗値もRとしておくと、抵抗R2の両端電圧はVrefとなり、抵抗R2とNチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子との接続点の電位は(Vdd−Vref)となる。この電位がオペアンプOPA2の非反転入力端子に入力され、オペアンプOPA2の2つの入力端子が仮想短絡されることにより、PチャネルMOSトランジスタMP1のソース端子とタイミング抵抗Rtの接続点の電位は(Vdd−Vref)となる。従い、タイミング抵抗Rtの両端電圧はVrefとなり、これによりPチャネルMOSトランジスタMP1のドレイン端子から電流Vref/Rtが出力されることになる。
【0022】
この電流がタイミングコンデンサCtを充電し、その充電電圧Voscが基準電圧Vrefに達するとコンパレータCMP1の出力がH(High)となってNチャネルMOSトランジスタMN2をオンし、タイミングコンデンサCtを放電してその充電電圧Voscを接地電位にリセットする。タイミングコンデンサCtが放電されるとコンパレータCMP1の出力がL(Low)となってNチャネルMOSトランジスタMN2がオフし、タイミングコンデンサCtの充電が再開される。この接地電位(第1の基準電位)と基準電圧Vref(第2の基準電位)間の充放電動作を繰り返すことにより、電圧Voscは鋸波となる。タイミングコンデンサCtが充電されているときの充電電圧VoscはVosc=(Vref/Rt)・T/Ctで与えられるから(T:時間)、タイミングコンデンサCtの放電時間を無視すると、電圧Voscの発振周期はRt・Ctとなり、発振周波数foscはfosc=1/(Rt・Ct)で与えられる。
【0023】
本実施例の発振回路は、上述のようにカレントミラー回路を使うことなく構成されているので、正確な発振周期Rt・Ct、および発振周波数fosc=1/(Rt・Ct)を得ることができる。また、使用しているトランジスタ(MN1,MN2,MP1)のサイズや特性のばらつきに発振周期や発振周波数影響されることがない。
【実施例2】
【0024】
図2に本発明に係る発振回路の第2の実施例を示す。本実施例の発振回路も、基準電圧Vrefに応じた発振周波数を得ることができるものである。
図2において、
図1と共通する部位については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
図2に示す発振回路のうち、抵抗R1,R2、NチャネルMOSトランジスタMN1およびオペアンプOPA1で構成される部分の構成および動作は
図1のものと同じである。
図2に示す発振回路は、これ以外に、オペアンプOPA3、コンパレータCMP2、PチャネルMOSトランジスタMP2、NチャネルMOSトランジスタMN3、タイミングコンデンサCt、およびタイミング抵抗Rtを備えている。
【0025】
基準電圧VrefがオペアンプOPA3の非反転入力端子に入力されている。オペアンプOPA3の出力端子はNチャネルMOSトランジスタMN3のゲート端子に接続され、NチャネルMOSトランジスタMN3のソース端子はオペアンプOPA3の反転入力端子とタイミング抵抗Rtの一端に接続されている。タイミング抵抗Rtの他端は接地されている。また、NチャネルMOSトランジスタMN3のドレイン端子と電源端子Vddとの間にタイミングコンデンサCtが接続されている。
【0026】
NチャネルMOSトランジスタMN3のドレイン端子はタイミングコンデンサCtの一端と、PチャネルMOSトランジスタMP2のドレイン端子およびコンパレータCMP2の反転入力端子に接続されている。タイミングコンデンサCtの他端と、NチャネルMOSトランジスタMN2のソース端子は電源端子Vddに接続されている。また、抵抗R2とNチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子との接続点の電位(Vdd−Vref)がコンパレータCMP2の非反転入力端子に入力され、コンパレータCMP2の出力端子がPチャネルMOSトランジスタMP2のゲート端子に接続されている。
【0027】
この発振回路の動作を説明する。オペアンプOPA3,NチャネルMOSトランジスタMN3およびタイミング抵抗Rtは、オペアンプOPA1,NチャネルMOSトランジスタMN1および抵抗R1と同じ機能・構成の回路を構成し、これによりNチャネルMOSトランジスタMN3にはVref/Rtのドレイン電流が流れる。
【0028】
このドレイン電流がタイミングコンデンサCtを充電し、その低電位側の端子電圧Voscが(Vdd−Vref)に達すると、すなわちタイミングコンデンサCtの充電電圧がVrefに達すると、コンパレータCMP2の出力がLとなってPチャネルMOSトランジスタMP2をオンし、タイミングコンデンサCtを放電してその充電電圧をゼロにし、端子電位VoscをVddにリセットする。タイミングコンデンサCtが放電されるとコンパレータCMP2の出力がHとなってPチャネルMOSトランジスタMP2がオフし、タイミングコンデンサCtの充電が再開される。この抵抗R2とNチャネルMOSトランジスタMN1のドレイン端子との接続点の電位(Vdd−Vref)(第1の基準電位)と電源電位Vdd(第2の基準電位)間の充放電動作を繰り返すことにより、電位Voscは鋸波となる。タイミングコンデンサCtが充電されているときの充電電圧(両端電圧)は(Vref/Rt)・T/Ctで与えられるから(T:時間)、タイミングコンデンサCtの放電時間を無視すると、電圧Voscの発振周期はRt・Ctとなり、発振周波数foscはfosc=1/(Rt・Ct)で与えられる。
【0029】
本実施例の発振回路は、上述のようにカレントミラー回路を使うことなく構成されているので、正確な発振周期Rt・Ct、および発振周波数fosc=1/(Rt・Ct)を得ることができる。また、使用しているトランジスタ(MN1,MN3,MP2)のサイズや特性のばらつきに発振周期や発振周波数影響されることがない。
【実施例3】
【0030】
図3に本発明に係る発振回路の第3の実施例を示す。本実施例の発振回路も、基準電圧Vrefに応じた発振周波数を得ることができるものである。
図3に示す発振回路は、オペアンプOPA4,OPA5、非反転増幅回路10,20,30、コンパレータCMP3、PチャネルMOSトランジスタMP3、NチャネルMOSトランジスタMN4,タイミングコンデンサCt、およびタイミング抵抗Rtを備えている。非反転増幅回路10,20,30はそれぞれ増幅率K1,K2,K3を有し、入力信号をそれぞれK1,K2,K3倍した信号を出力するものである。なお。K1>K2>K3>1とする。
【0031】
図4に10,20,30に適用される非反転増幅回路の構成を示す。この非反転増幅回路はオペアンプOPAと抵抗R10,R20を備えている。基準電圧Vrefがオペアンプの非反転入力端子に接続されている。抵抗R10がオペアンプOPAの反転入力端子と接地電位の間に接続され、抵抗R20がオペアンプの反転入力端子と出力端子の間に接続されている。オペアンプOPA20の2つの入力端子が仮想短絡されることから抵抗R10の両端には電圧Vrefが印加され、抵抗R10に電流Vref/R10が流れる(抵抗R10の抵抗値もR10で表す。)。この電流がR20に流れることから、オペアンプOPAの出力端子の電圧はVref+R20・(Vref/R10)=((R10+R20)/R10)・Vrefとなる(抵抗R20の抵抗値もR20で表す。)。従い、この非反転増幅回路は、入力電圧Vrefに対する増幅率K=((R10+R20)/R10)を有することになる。
図3における非反転増幅回路10,20,30の増幅率K1,K2,K3は
図4に示す抵抗R10,R20の抵抗値を調整して得ることができる。
【0032】
図3に戻ると、基準電圧VrefはオペアンプOPA4からなるボルテージフォロワに入力され、当該ボルテージフォロワの出力は、非反転増幅回路10,20,30の入力端子、タイミングコンデンサCtの低電位側端子、およびNチャネルMOSトランジスタMN4のソース端子に接続されている。非反転増幅回路20の出力端子はオペアンプOPA5の非反転入力端子に接続されている。オペアンプOPA5の出力端子はPチャネルMOSトランジスタMP3のゲート端子に接続され、PチャネルMOSトランジスタMP3のソース端子はオペアンプOPA5の反転入力端子とタイミング抵抗Rtの一端に接続されている。タイミング抵抗Rtの他端は非反転増幅回路10の出力端子に接続されている。また、PチャネルMOSトランジスタMP3のドレイン端子はタイミングコンデンサCtの高電位側端子,NチャネルMOSトランジスタMN4のドレイン端子およびコンパレータCMP3の非反転入力端子に接続されている。また、非反転増幅回路30の出力端子がコンパレータCMP3の反転入力端子に接続され、コンパレータCMP3の出力端子がNチャネルMOSトランジスタMN4のゲート端子に接続されている。
【0033】
この発振回路の動作を説明する。オペアンプOPA4からなるボルテージフォロワから電圧Vrefが出力され、非反転増幅回路10,20,30からそれぞれK1・Vref,K2・Vref,K3・Vrefが出力される。オペアンプOPA5の2つの入力端子が仮想短絡されることにより、PチャネルMOSトランジスタMP3のソース端子とタイミング抵抗Rtの接続点の電位はK2・Vrefとなる。従い、タイミング抵抗Rtの両端電圧は(K1・Vref−K2・Vref)=(K1−K2)・Vrefとなり、これによりPチャネルMOSトランジスタMP1のドレイン端子から電流(K1−K2)・Vref/Rtが出力されることになる。
【0034】
この電流がタイミングコンデンサCtを充電し、その高電位側の端子電圧VoscがコンパレータCMP3の反転入力端子に入力されている電圧K3・Vrefに達すると、コンパレータCMP3の出力がHとなってNチャネルMOSトランジスタMN4をオンし、タイミングコンデンサCtを放電してその充電電圧をゼロにし、その高電位側の端子電圧VoscをVrefにリセットする。タイミングコンデンサCtが放電されるとコンパレータCMP3の出力がLとなってNチャネルMOSトランジスタMN4がオフし、タイミングコンデンサCtの充電が再開される。この基準電圧Vref(第1の基準電位)と電圧K3・Vref(第2の基準電位)間の充放電動作を繰り返すことにより、電圧Voscは鋸波となる。タイミングコンデンサCtが充電されているときの充電電圧VoscはVosc=((K1−K2)・Vref/Rt)・T/Ct+Vrefで与えられるから(T:時間)、タイミングコンデンサCtの放電時間を無視すると、電圧Voscの発振周期は(K3−1)・Rt・Ct/(K1−K2)となり、発振周波数foscはfosc=(K1−K2)/((K3−1)・Rt・Ct)で与えられる。
【0035】
本実施例の発振回路は、上述のようにカレントミラー回路を使うことなく構成されているので、正確な発振周期(K3−1)・Rt・Ct/(K1−K2)、および発振周波数fosc=(K1−K2)/((K3−1)・Rt・Ct)を得ることができる。また、使用しているトランジスタ(MP3)のサイズや特性のばらつきに発振周期や発振周波数影響されることがない。
【実施例4】
【0036】
図5に本発明に係る発振回路の第4の実施例を示す。本実施例の発振回路も、基準電圧Vrefに応じた発振周波数を得ることができるものである。
図4に示す発振回路は、オペアンプOPA6,OPA7,OPA8、コンパレータCMP4、抵抗R3〜R6、PチャネルMOSトランジスタMP4、タイミングコンデンサCt、およびタイミング抵抗Rtを備えている。オペアンプOPA6はボルテージフォロワを構成していて、基準電圧Vrefが入力され、その出力端子は抵抗R3〜R6からなる直列抵抗の一端およびタイミング抵抗の一端に接続されている。抵抗R3〜R6はオペアンプOPA6からなるボルテージフォロワの出力を分圧するものであり、抵抗R3とR4の接続点,抵抗R4とR5の接続点および抵抗R5とR6の接続点の分圧比をそれぞれB1,B2,B3とする。なお、抵抗R3〜R6の抵抗値もR3〜R6で表すと、B1=(R4+R5+R6)/(R3+R4+R5+R6)、B2=(R5+R6)/(R3+R4+R5+R6)、B3=R6/(R3+R4+R5+R6)となる。
【0037】
オペアンプOPA7の非反転入力端子には基準電圧Vrefの分圧B1・Vrefが入力されている。オペアンプOPA7の出力端子はPチャネルMOSトランジスタMP4のゲート端子に接続され、PチャネルMOSトランジスタMP4のソース端子はオペアンプOPA7の反転入力端子とタイミング抵抗Rtの他端に接続されている。また、PチャネルMOSトランジスタMP4のドレイン端子はタイミングコンデンサCtの高電位側端子,NチャネルMOSトランジスタMN5のドレイン端子およびコンパレータCMP4の非反転入力端子に接続されている。また、基準電圧Vrefの分圧B2・VrefがコンパレータCMP4の反転入力端子に接続され、コンパレータCMP4の出力端子がNチャネルMOSトランジスタMN5のゲート端子に接続されている。
【0038】
また、基準電圧Vrefの分圧B3・VrefがオペアンプOPA8からなるボルテージフォロワでインピーダンス変換されて、タイミングコンデンサCtの低電位側端子およびNチャネルMOSトランジスタMN5のソース端子に接続されている。
【0039】
この発振回路の動作を説明する。オペアンプOPA7の2つの入力が仮想短絡されることからタイミング抵抗の他端には電圧B1・Vrefが印加される。一方、オペアンプOPA6からなるボルテージフォロワ回路によりタイミング抵抗の一端には電圧Vrefが印加されるから、タイミング抵抗RtにはVref−B1・Vrefの電圧が印加され、タイミング抵抗Rtに電流(1−B1)・Vref/Rtが流れる。
【0040】
この電流がタイミングコンデンサCtを充電し、その高電位側の端子電圧VoscがコンパレータCMP4の反転入力端子に入力されている電圧B2・Vrefに達すると、コンパレータCMP4の出力がHとなってNチャネルMOSトランジスタMN5をオンし、タイミングコンデンサCtを放電してその充電電圧をゼロにし、その高電位側の端子電圧Voscを電圧B3・Vrefにリセットする。タイミングコンデンサCtが放電されるとコンパレータCMP4の出力がLとなってNチャネルMOSトランジスタMN5がオフし、タイミングコンデンサCtの充電が再開される。この電圧B3・Vref(第1の基準電位)と電圧B2・Vref(第2の基準電位)間の充放電動作を繰り返すことにより、動作を繰り返すことにより、電圧Voscは鋸波となる。タイミングコンデンサCtが充電されているときの充電電圧VoscはVosc=((1−B1)・Vref/Rt)・T/Ct+B3・Vrefで与えられるから(T:時間)、タイミングコンデンサCtの放電時間を無視すると、電圧Voscの発振周期は(B2−B3)・Rt・Ct/(1−B1)となり、発振周波数foscはfosc=(1−B1)/((B2−B3)・Rt・Ct)で与えられる。
【0041】
なお、抵抗R6,オペアンプOPA8を省略して、タイミングコンデンサCtの低電位側端子およびNチャネルMOSトランジスタMN5のソース端子を接地するようにしてもよい(B3=0に相当)。その場合、発振周期はB2・Rt・Ct/(1−B1)となり、発振周波数foscはfosc=(1−B1)/(B2・Rt・Ct)で与えられる。
【0042】
本実施例の発振回路は、上述のようにカレントミラー回路を使うことなく構成されているので、正確な発振周期(B2−B3)・Rt・Ct/(1−B1)、および発振周波数fosc=((1−B1)/((B2−B3)・Rt・Ct)を得ることができる。また、使用しているトランジスタ(MP4,MN5)のサイズや特性のばらつきに発振周期や発振周波数影響されることがない。
【0043】
また、本発明の実施に関し、実施例1〜4のいずれかの第1の基準電位と、実施例1〜4のいずれかの第2の基準電位を適宜組み合わせて発振回路を構成してもよい。但し、第2の基準電位が第1の基準電位より高電位であることが必要である。こうすることにより、第2の基準電位と第1の基準電位との差を、発振回路に入力される基準電圧により一意に決めることができる。
【符号の説明】
【0044】
10,20,30 非反転増幅回路
Ct タイミングコンデンサ
CMP1〜4,CMP10 コンパレータ
OPA,OPA1〜OPA8,OPA10 オペアンプ(演算増幅回路)
MN1〜MN5,MN10,MN20 NチャネルMOSトランジスタ
MP1〜MP5,MP10,MP20 PチャネルMOSトランジスタ
R1〜R6,R10,R20 抵抗
Rt タイミング抵抗
Vdd 電源端子またはその電位
Vref 基準電圧