(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る発光装置について
図1乃至
図7を参照して説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0013】
図1及び
図5に代表して示すように、発光装置1は、基板2と、この基板2の表面側に実装された複数の発光素子3と、同じく基板2の表面側に設けられた給電端子4と、この給電端子4に電気的に接続される電気的接続手段5と、基板2を固定する機械的固定手段6とを備えている。
【0014】
基板2は、絶縁性を有し、白色系の酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のセラミックス材料から形成されている。基板2は、略四角形状に形成されており、各角部は、R形状をなしている。
【0015】
図2に示すように、基板2の表面上には、配線パターンが形成されており、この配線パターンは、給電端子4及び給電導体41から構成されている。また、給電端子4は、正極側給電端子4a及び負極側給電端子4bから構成されており、給電導体41は、正極側給電導体41a及び負極側給電導体41bから構成されている。
【0016】
正極側給電導体41a及び負極側給電導体41bは、図示上、上下方向に所定の間隔を空けて平行に、対をなして形成されている。正極側給電端子4a及び負極側給電端子4bは、それぞれ正極側給電導体41a及び負極側給電導体41bの中間部から、これらと直交する方向に外側に向かって略T字状に形成されている。また、正極側給電端子4aと負極側給電端子4bとは、180度点対称的位置に配置されている。
【0017】
図6に示すように、給電端子4及び給電導体41は、三層構成であり、基板2上に、第一層Aとして銀(Ag)がスクリーン印刷によって形成されている。この焼成後、第一層Aの上には、第二層Bとしてニッケル(Ni)が無電解めっき処理されており、第三層Cには、金(Au)が無電解めっき処理されている。各厚さ寸法は、銀(Ag)が10μm、ニッケル(Ni)が2μm、金(Au)が0.5μmである。金(Au)は導電性に優れ、耐腐食性であることから、給電端子4の表層に形成されることは有効である。
【0018】
基板2の表面上には、複数の発光素子3が実装されている。発光素子3は、LEDのベアチップからなる。LEDのベアチップには、例えば、白色系の光を発光部で発光させるために、青色の光を発するものが用いられている。
図1及び
図3に示すように、これら複数の発光素子3は、マトリクス状に並べられて複数の列、例えば、6列の発光素子列を形成している。
【0019】
LEDのベアチップは、例えば、InGaN系の素子であり、透光性のサファイア素子基板に発光層が積層されており、発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN発光層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて略直方体形状に形成されている。そして、発光層に電流を流すための電極は、上面側に設けられており、p型窒化物半導体層上にp型電極パッドで形成されたプラス側電極と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス側電極とで構成されている。これら、電極は、ボンディングワイヤ42により電気的に接続されている。ボンディングワイヤ
42は、金(Au)の細線からなっており、実装強度の向上とLEDのベアチップの損傷低減のため金(Au)を主成分とするバンプを介して接続されている。
【0020】
具体的には、個々の発光素子列において、その列が延びる方向に隣接された発光素子3の異極の電極同士、つまり、隣接された発光素子3の内で一方の発光素子3のプラス側電極と、隣接された発光素子3の内で他方の発光素子3のマイナス側電極とがボンディングワイヤ42で順次接続されている。これによって、個々の発光素子列を構成する複数の発光素子3は電気的に直列に接続される。したがって、複数の発光素子3は通電状態で一斉に発光される。
【0021】
さらに、個々の発光素子列において、特定の発光素子、すなわち、列の端に配置された発光素子3aの電極は、正極側給電導体41a又は負極側給電導体41bにボンディングワイヤ42で接続されている。したがって、前記各発光素子列は電気的には並列に設けられていて、給電端子4から正極側給電導体41a及び負極側給電導体41bを通じて給電されるようになっている。そのため、各発光素子列の内のいずれか一列がボンディング不良等に起因して発光できなくなることがあっても発光装置1全体の発光が停止することはない。
【0022】
基板2の表面上には、枠部材21が設けられている。この枠部材21は、略四角形状に塗布され、内周面で囲まれた枠部材21の内側に、各発光素子3が配設されている。つまり、発光素子3の実装領域は、枠部材21によって囲まれた状態となっている。
【0023】
枠部材21の内側には、封止部材22が充填されて基板2上に設けられている。封止部材22は、透光性合成樹脂、例えば、透明シリコーン樹脂製であり、発光素子3の実装領域を封止している。
【0024】
また、封止部材22は、蛍光体を適量含有している。蛍光体は、発光素子3が発する光で励起されて、発光素子3が発する光の色とは異なる色の光を放射する。発光素子3が青色光を発する本実施形態では、白色光を出射できるようにするために、蛍光体には青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。封止部材22は、未硬化の状態で枠部材21の内側に所定量注入された後に加熱硬化させて設けられている。
【0025】
上記のように構成された基板2は、
図4に示す取付部材7に取付けられる。取付部材7は、熱伝導が良好なアルミニウム材料等から形成されており、四角形状をなして中央部に基板2が載置される凹部71が形成されている。また、取付部材7の角部には、この取付部材7を照明装置の本体等に固定するために用いられるねじ貫通孔が形成されている。なお、この取付部材7は、ヒートシンク、装置の本体、ケースあるいはカバー等と称されるものであってもよい。要は、基板2が取付けられる部材を意味している。
【0026】
図5及び
図6に示すように、基板2は、取付部材7の凹部71をガイドとして位置決めされて配置され、裏面側が凹部71の底面に密着するように取付けられている。すなわち、電気的接続手段5及び機械的固定手段6によって、基板2の表面側から取付部材7側へ向かう方向の弾性
的押圧力が付与されて取付けられている。
【0027】
電気的接続手段5は、
図7の参照を加えて示すように、接圧式の給電コネクタであり、給電端子4に電気的に接続されて、基板2に対し略対角線上に一対配設されている。
この電気的接続手段5は、光の吸収性の少ない白色の合成樹脂製のケース51と、このケース51内に配設された先端側に湾曲状の接触部を有するコンタクト部材52とを備えている。コンタクト部材52は、弾性を有し、りん青銅やコルソン系合金によって形成されており、表面に金(Au)めっきが施されている。このコンタクト部材52と接触する前記給電端子4の表層は、金(Au)がめっき処理されており、これにより、異種金属接触腐食を防止することが可能となる。
【0028】
この
電気的接続手段5は、基板2の表面側からねじ等の固定手段によって取付部材7の凹部71に固定されるようになっている。これによって、コンタクト部材52の基板2の表面側から取付部材7側へ向かう方向の弾性
的押圧力、すなわち、接触圧が給電端子4に加わり、コンタクト部材52が給電端子4に電気的に接続される。
【0029】
機械的固定手段6は、略長方形状の固定部材であり、取付部材7の上面であって、基板2の略対角線上に一対配設されている。この
機械的固定手段6は、先端側に湾曲状の押圧部6aを有し、弾性を有するステンレス鋼からなり、基板2の表面側からねじ等の固定手段によって取付部材7の上面に固定されるようになっている。この
機械的固定手段6の固定状態においては、押圧部6aは、取付部材7の上面よりも下側(基板2側)で基板2の表面に接触している。したがって、
機械的固定手段6のねじ等による固定部分に過度な応力がかかるのを軽減できる。
【0030】
これによって、
機械的固定手段6における押圧部の6aの基板2の表面側から取付部材7側へ向かう方向の弾性
的押圧力が基板2に加わり、基板2が取付部材7に固定され保持される。
【0031】
このような構成の電気的接続手段5及び機械的固定手段6においては、電気的接続手段5は、主として給電端子4に電気的に接続する機能を果たし、機械的固定手段6は、主として基板2を固定する機能を果たすこととなる。したがって、電気的接続手段5の弾性
的押圧力は、基板2を固定する機能に寄与するが、機械的固定手段6が設けられているので、格別に大きくする必要性がない。
【0032】
因みに、電気的接続手段5の弾性
的押圧力(弾性荷重)は、70〜200g、機械的固定手段6の弾性
的押圧力(弾性荷重)は、200〜300gに設定するのが適切である。また、この場合、双方の機能を効果的に実現するためには、電気的接続手段5の弾性
的押圧力は、機械的固定手段6の弾性
的押圧力より小さくなるように設定するのが好ましい。
【0033】
上記構成の発光装置1に点灯回路により電力が供給されると、電気的接続手段5から正極側給電端子4a、正極側給電導体41aからボンディングワイヤ42、発光素子3、負極側給電導体41b、負極側給電端子4bから電気的接続手段5へと通電され、封止部材26で覆われた各発光素子3が一斉に発光されて、発光装置1は白色の光を出射する面状光源として使用される。
【0034】
この点灯中において、各発光素子3が発した熱は、主として基板2の裏面側から取付部材7に伝導されて放熱される。また、発光装置1の点灯中、発光素子3が放射した光のうちで基板2側に向かった光は、白色系の基板2の表面で主として光の利用方向に反射される。
【0035】
また、電気的接続手段5の弾性
的押圧力は、格別に大きくは設定されていないので、高温の環境下で長期間使用されても、その弾性
的押圧力の低下を抑制することができる。さらに、発光装置1が振動を受けやすい照明装置に用いられた場合にも、同様に、弾性的押圧力の低下を抑制することができる。加えて、振動や基板2の熱膨張、収縮の影響によって給電端子4におけるコンタクト部材52との接点部分が摩耗するのを軽減できる。
【0036】
基板2の取付部材7への固定は、ねじ止め等による固定ではなく、機械的固定手段6によって弾性的押圧力で固定されるので、例えば、締め付け力が基板2に直接作用して、基板2に割れが発生するのを抑制できる。また、使用中に、基板2の熱膨張、収縮による応力を緩和でき、熱膨張、収縮によって基板2に割れが発生するのを抑制することができる。
【0037】
以上のように本実施形態によれば、電気的接続手段5及び機械的固定手段6の双方を設けたので、電気的接続手段5の接点機能の信頼性を保つことができる発光装置を提供することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態に係る発光装置について
図8及び
図9を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0039】
本実施形態では、正極側給電端子4a及び負極側給電端子4bの両者が枠部材21の一辺側(図示上、右側)から延出するように形成されているものであり、また、電気的接続手段5及び機械的固定手段6が組合わされて構成されているものである。
【0040】
電気的接続手段5は、接圧式の給電コネクタであり、正極側給電端子4aと、負極側給電端子4bとに接続される一対のコンタクト部材52を備えている。機械的固定手段6は、略コ字状に形成された固定部材であり、弾性を有するステンレス鋼によって形成されている。この
機械的固定手段6と
電気的接続手段5とは、取付部材7の凹部71にねじ止め等によって共締めされて固定されるようになっている。
【0041】
これによって、コンタクト部材52の弾性
的押圧力が給電端子4に加わり、コンタクト部材52が給電端子4に電気的に接続される。また、
機械的固定手段6の弾性
的押圧力が基板2の上面から三辺に加わり、基板2が取付部材7に固定され保持される。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、電気的接続手段5及び機械的固定手段6が組合わされて構成されているので、第1の実施形態の効果に加え、構成及び組立工程が簡素化される効果を有する。
【0043】
ところで、上記各実施形態に係る発光装置1の製作にあたり、本発明者は、
図10(a)、(b)、(c)、(d)に示すような4種類の発光装置を用意し実験を行った。なお、
図10中、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0044】
各発光装置の点灯状態において、振動を与えた場合の給電コネクタの接点機能の信頼性を調べた。具体的には、コンタクト部材52の給電端子4へのくいこみ量(変形量)を測定した。
【0045】
図10(a)に示す発光装置(a)は、電気的接続手段5として接圧式の給電コネクタを基板2の両側に設けたものである。したがって、電気的接続手段5によって、電気的な接続と基板2の機械的な固定との双方を行うものである。
【0046】
図10(b)に示す発光装置(b)は、基板2の周囲に金属製の枠状のホルダHが設けられており、接圧式の給電コネクタは、正負一対のコンタクト部材52を有するものである。したがって、前記(a)と同様に、電気的接続手段5によって、電気的な接続と基板2の機械的な固定との双方を行うものである。
【0047】
図10(c)に示す発光装置(c)は、上記第1の実施形態と略同様な構成であり、電気的接続手段5を基板2に対して略対角線上に配置し、機械的固定手段6を基板2に対して略対角線上に配置したものである。
【0048】
図10(d)に示す発光装置(d)は、電気的接続手段5と機械的固定手段6とを一体化したものであり、ケース51に正負一対のコンタクト部材52が設けられており、これらコンタクト部材52の中間部に、機械的固定手段6としての固定部材を配置したものである。
【0049】
これら4種の発光装置(a)〜(d)のくいこみ量(変形量)(μm)を測定した結果、
図11に示すとおりとなった。発光装置(a)及び(b)は、変形量が2μmであるのに対し、発光装置(c)及び(d)は、0.2μmである。発光装置(c)及び(d)は、電気的接続手段5と機械的固定手段6との双方を設けている例であり、このような構成を採ることにより、給電端子4の変形量を少なくすることができ、接点機能の低下が抑制できることが確認できた。
【0050】
なお、
図11中、発光効率(%)は、発光装置(a)を100%とした場合の相対的な値であり、発光装置(b)が97%に低下しているのは、ホルダHが障害物となり、発光素子3からの出射光が妨げられることに起因すると考えられる。
【0051】
次に、本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。図示は省略するが、上記各実施形態の発光装置1は、道路灯や車両用の照明装置、LEDランプとしての光源や屋内又は屋外で使用される各種照明器具、ディスプレイ装置等の装置本体に組込んで照明装置として構成できる。
この照明装置によれば、上記発光装置1が奏する効果を有する照明装置を提供することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、基板としては、アルミニウム製等の金属基板を適用してもよい。この場合には、好ましくは、給電端子は、第一層として銅(Cu)、第二層としてニッケル(Ni)めっき処理、第三層として金(Au)めっき処理が施される。
また、発光素子は、LED等の固体発光素子を適用できる。さらに、発光素子の実装個数には特段制限はない。