【実施例1】
【0013】
本発明に係るミキサー車に積まれたフレッシュコンクリートの水分量の測定方法においては、前記ミキサー車1の混練用ドラム2の回転方向に沿ってドラム投入口2aから測定用パイプ3を当該混練用ドラム2の中に挿入し、前記測定用パイプ3に水分計4を挿入してフレッシュコンクリート7の単位水量を測定する際に、前記測定用パイプ3を混練用ドラム2のドラム軸2bに対してドラム回転方向に沿うように傾斜させて計測することである。
【0014】
前記測定用パイプ3は、混練用ドラムのフレッシュコンクリート7の中に差し込む水分測定用の有底筒体であり、例えば、直径が43mmで長さが5〜6m程度の金属製若しくはプラスチック製のパイプである。そして、この測定用パイプ3の傾斜は、
図2(A)〜
図2(D)に示すように、混練用ドラム2のドラム軸2bに対して、少なくとも左右方向で傾斜されている。
【0015】
即ち、測定用パイプ3は、
図2(B)に示すように、混練用ドラム2を平面視して該混練用ドラ2のドラム投入口2a端部を基準点として左回りに4゜〜15゜にて傾けてられている。これは、混練中における混練用ドラム2の回転は、左回転しているからである。以下に、測定用パイプ3の挿入角度についての適用範囲を示す実証データを掲載する。
【0016】
また、
図7(B)に示すように、前記ドラム投入口2aの端部は、ドラム投入口2aを形成する円弧部における右側中央位置から右側下位置までの範囲aにおける当接点を基準点とするものである。更に、上下方向では、側面から見てドラム軸2bに対して約12゜程度の差で、下に向けて傾斜している。
【0017】
前記水分計4は、
図3(A)に示すように、RI(ラジオアイソトープ)水分計である。この大きさは、直径約φ34mmで長さ約600mmの筒体に納められている。このRI水分計は、中性子線を利用したものであり、放射線源にはカリホルニウム252の速中性子源を用いる。前記放射線源から放出される速中性子は、物質中の原子核との弾性散乱により、次第にそのエネルギーを失い、熱中性子に変わっていく。水素が熱中性子に変える能力(減速能)が桁外れに大きい。その水素は、コンクリート中では大部分H
2Oの水分子として存在するので、速中性子がコンクリート中に飛び込んだとき、水分量が多くなるほど作り出される熱中性子の数は多くなる。
【0018】
従って、試料中の熱中性子の数を計測することで、間接的にコンクリート中の水分量を測定することができる。係る方法は、間接的な測定方法なので、コンクリート中で散乱して検出器に入射した熱中性子の数と、水分量との関係を予め検定しておく必要がある。なお、このRI水分計について単位水量を測定する方法が、特開平07−052143号公報に開示されている。
【0019】
図3(B)に示すものは、密度計6である。図示のように、この大きさは、直径約φ34mmで長さ約600mmの筒体に納められている。前記RI水分計は、水分子以外に存在する各種元素の影響があり、密度による影響を考慮するのが一般的である。そこで、RI密度計も併用する。このRI密度測定法では、γ(ガンマ)線を利用し、放射線源にはセシウム137を用いる。前記放射線源から放出されたγ線は、物質中の電子との相互作用によるコンプトン散乱と光電効果によって徐々に減衰するが、その減衰する割合は物質の密度と一意的な関係がある。
【0020】
従って、試料中で散乱した検出部に入射したγ線の強さ(数)を計測することにより、間接的にコンクリート中の密度を測定することができる。係る方法は、間接的な測定方法なので、コンクリート中で散乱して検出器に入射したγ線の数と、密度との関係を予め検定しておく必要がある。
図4に、前記RI水分計4とRI密度計6を使用して、フレッシュコンクリート7の単位水量を計測する概略全体構成図を示す。また、RI水分計4と密度計6との基本特性を
図5(A),(B)に示す。なお、RI水分計4では、水分計の応答が厳密には二次曲線であるが、実用領域においては直線と見なすことができるので、一次式を採用している。
【0021】
前記RI水分計4とRI密度計6との計測において、ミキサー車1の混練用ドラム2を回転させながら測定する場合と、回転停止させて測定する場合とを比較した。
図6(A),(B)に示すように、混練用ドラム2を回転した状態で計測した場合、設定した単位水量との相関関係が0.992であり、停止した状態で計測した場合では単位水量との相関関係が0.817であって、混練用ドラム2を回転した状態で計測することの有意性があり、よって測定は混練用ドラム2を回転させながら測定する。
【0022】
前記RI水分計4を測定用パイプ3で斜めに挿入することについて、測定結果に影響が出るか否かについて検証した。前記混練用ドラム2の低速回転状態で、測定用パイプ3の挿入角度を変えてRI水分計3の計数率を比較する。その結果を、
図7(A)に示す。測定結果がほぼ一致しているので、測定用パイプ3の挿入角度による影響、即ち、攪拌翼や場所による測定試料の偏りなどに起因する測定誤差は小さいと判断される(壊変揺動誤差に対して標準偏差が同程度以下であれば影響は小さいとする:壊変揺動誤差とは、壊変する原子核の数の揺らぎに起因する固有の誤差をいう)。
図7(B)は測定概要を示している。
【0023】
また、前記測定用パイプ3を斜めに設置した場合の、深度方向の影響を検証する。測定用パイプ3とミキサー車1の混練用ドラム2内壁面との離間距離をパラメータとして測定し、その結果を
図8(A)に示す。同
図8(B)は、測定概要を示している。その結果、水分計4に関しては、離間距離による影響は無視できるほど小さい。
【0024】
前記作業架台5は、一般のミキサー車1のドラム投入口2aの高さに合わせて、前記測定用パイプ3を挿入できる高さに構築してある。その作業架台5上からRI水分計4をドラム投入口2aから挿入して、フレッシュコンクリート7の全量について、水分量を測定するものである。
【0025】
なお、前記測定用パイプ3の支持方法は、作業架台5と混練用ドラム2のドラム投入口2a端部とで支持、作業架台5の2カ所に設けた支持部で支持、作業架台5の1カ所に設けた支持部、のうちのいずれか一つの方法で支持している。この場合、
図1−Bに示すように、作業架台5の一カ所で自在クランプ5bで掴み、枠の一部に当てて支持する支持部5aによって測定用パイプ3を支持すると、前記ドラム投入口2aでは周囲の端部に触れることなく、該ドラム投入口2aの平面で交わるドラム軸2bの斜め右下あたりを左側へ斜めに通過して、測定用パイプ3の先端部がフレッシュコンクリートの流れに沿って一致の場所に留まっている。
【0026】
以上のようにして、本発明に係るミキサー車におけるフレッシュコンクリートの単位水量測定方法で、フレッシュコンクリート7の単位水量を測定する。
図9に示すように、フレッシュコンクリート7の配合表である。測定の作業フローを
図10に示す。
【0027】
RI水分計4による測定結果において、基準値との差の標準偏差と理論上の壊変揺動誤差を
図11に示す。かかる結果により、低速回転での測定が非常に良い相関が得られている。フレッシュコンクリート7が良く攪拌されて、骨材の粒度やフレッシュコンクリート7内部における空気間隙の影響が平均化された結果である。
【0028】
なお、密度測定結果は、水分量に関わらずほとんど変化しないので、水分計の単体での測定で十分であることが判る。また、測定時間は、RI測定法では測定時間を長くとるほど放射線の壊変揺動に起因する測定誤差が小さくなる。
図12(A)〜(C)に示すように、測定時間は、最低2分以上とすることで、基準値に対する標準偏差が収束し、相関関係は良好となる。