【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施例を示す枚葉印刷機のコールド箔転写装置の概略構成図、
図2は張力付与装置の拡大側面図、
図3は第1のダンサーローラ部の平断面図、
図4は第2のダンサーローラ部の平断面図である。
【0016】
図1に示すように、枚葉紙Pを外周面で支持するように当該枚葉紙Pの先端側を保持するくわえ爪装置10a,10bを、外周面の点対称位置に形成された二つの切欠部11a,11bにそれぞれ備えた圧胴12の上流側には、給紙装置から接着剤転写装置を介して絵柄に対応した接着剤を予め転写された枚葉紙Pを当該圧胴12に受け渡す渡胴13が対向している。
【0017】
前記圧胴12の枚葉紙Pの搬送方向の前記渡胴13よりも下流側には、ブランケットBを外周面で支持するように当該ブランケットBの端部を保持する巻バー等からなる巻締め装置14を、外周面に形成された切欠部15に備えたゴム胴16が対向している。前記圧胴12の枚葉紙Pの搬送方向の前記ゴム胴16よりも下流側には、当該圧胴12から排紙装置側へ枚葉紙Pを受け渡す渡胴17が対向している。
【0018】
また、樹脂等からなるベース・フィルムに離型層等を介して金属等からなる箔が層状に設けてロール状に巻き取られたコールド箔(フィルム)Cは、一本の巻出軸(支持軸)18上に軸方向へ所定間隔離間して複数列に亘ってそれぞれ巻出しリール(フィルムリール)19を介して回転可能に支持されている。巻出しリール19の下方には、前記複数列のコールド箔Cをそれぞれ巻取りリール20を介して巻き取る巻取軸21が配設されている。
【0019】
そして、前記巻出軸18から巻き出された複数列のコールド箔Cは、ガイドローラ22を経由した後、2本のダンサーローラ(第1のダンサーローラ)23,24で分担して張力を付与する第1のダンサーローラ部(第1の張力付与装置)27aとその下流側に配されて1本のダンサーローラ(第2のダンサーローラ)25で複数列のコールド箔Cに対して一括して張力を付与する第2のダンサーローラ部(第2の張力付与装置)27bとからなる後述するリール張力付与装置27により、各列のコールド箔Cにおける固有の張力変動即ち、張力のばらつきが吸収されるようになっている。
【0020】
固有の変動が吸収された複数列のコールド箔Cは、一対のピンチローラ28で引かれ、後述する転写張力調整機構30の送給側を経た後、前記圧胴12と前記ゴム胴16との間を通過して、今度は転写張力調整機構30の回収側を経た後一対のピンチローラ31で引かれ、ガイドローラ32a,32bを経て前記巻取軸21に巻き取られるようになっている。尚、図中37〜40はガイドローラである。
【0021】
前述した転写張力調整機構30は、送給側において二つのガイドローラ33a,34a間に配された移動ローラ35aが、ダンサーアーム36aによって揺動可能になっていると共に、回収側においても二つのガイドローラ33b,34b間に配されたダンサーローラ35bが、同じくダンサーアーム36bによって揺動可能になっており、二つのダンサーローラ35a,35bが揺動することで、送給側と回収側とでコールド箔Cの転写張力を設定しつつ張力変動を吸収するようになっている。
【0022】
前記圧胴12に支持された枚葉紙Pに前記ゴム胴16のブランケットBがコールド箔Cを押圧して当該コールド箔Cの箔を当該枚葉紙Pに転写した後、当該ゴム胴16の切欠部15と当該圧胴12の切欠部11a,11bとが対向すると、前記ダンサーアーム36a,36bが揺動して、前記ガイドローラ33a,34a間及びガイドローラ33b,34b間のコールド箔Cの走行経路(長)を変化できるようにダンサーローラ35a,35bが移動可能になっている。
【0023】
これにより、切欠部で生じる張力変動を吸収しつつ張力を付与し、転写部のフィルムの張力を安定して設定させることができるようになっている。
【0024】
そして、本実施例では、前記巻出軸18として、外周面から出没自在な拡縮片やチャッキング爪を有したフリクションユニットを介してエアー圧等に比例したフリクショントルクが得られるフリクションシャフトが用いられ、前記フリクションユニットを1本の巻出軸18上に複数(例えば6個)配することで、1本の巻出軸18上に軸方向へ所定間隔離間して複数列(例えば6列)に亘って巻出しリール19が搭載されている。
【0025】
また、前述したリール張力付与装置27は、
図2乃至
図4に示すように、個別のレバー(支持部材)41,42を介して移動(揺動)可能に支持されて複数列毎(例えば3列毎)にコールド箔Cが分散して券回される2本のダンサーローラ23,24と、これらのダンサーローラ23,24をコールド箔Cの張力に抗してそれぞれ付勢する2対の圧縮コイルばね(第1の付勢手段)43a,43b及び44a,44bとを含む第1のダンサーローラ部27aと、該第1のダンサーローラ部27aのコールド箔C走行方向下流側に移動(揺動)自在に支持されて第1のダンサーローラ部27aに案内されたコールド箔Cが例えば6列が一括して券回される1本のダンサーローラ25と、該ダンサーローラ25をコールド箔Cの張力に抗して付勢するエアーシリンダ(第2の付勢手段)60とを含む第2のダンサーローラ部27bとからなる。
【0026】
一層詳細には、第1のダンサーローラ部27aにおいては、
図2及び
図3に示すように、二つのレバー41,42の基端側は機械フレーム45にボルト締めされた1本の共通の支点ピン(揺動支点)46に回動自在に支持される。また、2対の圧縮コイルばね43a,43b及び44a,44bは、各レバー41,42の前記支点ピン46の両側にピン47a,47b及び 48a,48bで枢支された下スプリング受け49a,49b及び50a,50bと左右の機械フレーム45間に架設されたステー51にボルト締めされた上スプリング受け52a,52b及び53a,53bとの間にそれぞれ介装される。支点ピン46を挟んで2対の圧縮コイルばね43a,43b及び44a,44bを設けたのは、
図2中右方(コールド箔Cに張力を付与し得る側)の圧縮コイルばね43a及び44aの最大伸び量を
図2中左方の圧縮コイルばね43b及び44bで規制することで、2本のダンサーローラ23,24が如何なる揺動位置においてもコールド箔Cに一定の張力を付与することができるようにしたためである。
【0027】
第2のダンサーローラ部27bにおいては、
図4に示すように、ダンサーローラ25の端部を回動自在に支持するレバー55の基端部が連結シャフト54の端部に固定され、このレバー55を挟んで連結シャフト54の端部が機械フレーム45に回動自在に貫通支持された駆動シャフト56の内端部とボルト57でフランジ結合されている。そして、駆動シャフト56の外端部にはレバー58の基端部が固定され、このレバー58の先端部に、そのヘッド部が機械フレーム45にピン59で枢支された前述したエアーシリンダ60のピストンロッド先端がピン61で枢支されている。従って、エアーシリンダ60を伸長させてレバー55を
図2中時計方向に揺動させることでコールド箔Cに対して所定の張力を付与することができると共に、エアーシリンダ60のエアー圧を変更することで張力を調整することができる。
【0028】
尚、
図3及び
図4においては、機械フレーム45の一方におけるリール張力付与装置27の構造を示しているが、機械フレーム45の他方においても、リール張力付与装置27は、第2のダンサーローラ部27bにおけるエアーシリンダ60が機械フレーム45の一方にのみ設けられる以外は、同様に構成される。
【0029】
このように構成されるため、フリクションシャフトからなる巻出軸18から巻き出された複数列のコールド箔Cは、ガイドローラ22を経由した後、第1のダンサーローラ部27aとその下流側に配された第2のダンサーローラ部27bとからなるリール張力付与装置27により、各列のコールド箔Cにおける固有の張力変動が吸収される。
【0030】
即ち、フリクションシャフトからなる巻出軸18では吸収できない各巻出しリール19の片伸び、部分的なしわ等、単位長さ当たりのフィルムの不具合が、先ず第1のダンサーローラ部27aにおける2本のダンサーローラ23,24で分担して吸収される。そして、2本のダンサーローラ23,24で吸収できなかった列の前記不具合は、第2のダンサーローラ部27bにおける1本のダンサーローラ25で纏めて吸収される。
【0031】
また、この際、1本のダンサーローラで張力変動を吸収できるのは、通常、2列の巻出しリール19からの巻き出しまでであるので、第1のダンサーローラ部27aの2本のダンサーローラ23,24と第2のダンサーローラ部27bの1本のダンサーローラ25で2段階に亘って(直列的に)吸収する場合は、第1のダンサーローラ部27aにおける各ダンサーローラ23,24が分担する列数は各々3列までとするのが好適である。
【0032】
因みに、前記の事象は、フィルムの場合は顕著であるが、コールド箔のようなウェブは弾性的性質を持っているので、2列の巻出しリールからのコールド箔が個別に固有の変動を呈すると、その平均量だけダンサーローラによって吸収される。平均値を中心に変動する巻き出し量はウェブの弾性的性質の中で張力変動として吸収される。1本のダンサーローラに巻出しリールが3列搭載されるとなると、最も多く変動する巻出しリールのウェブがダンサーローラで吸収しきれなくなる場合が発生する。すると、ダンサーローラ上でリール1回転に1回の周期で一瞬弛み、弛んだ瞬間、左右に蛇行し始める不具合が発生してしまう。第1のダンサーローラと第2のダンサーローラを2段階に亘って(直列的に)構成すると、第2のダンサーローラで前述した巻き出し変動量が吸収される。従って、前述した実施例の構成では、6列の巻出しリールに対応することができる。
【0033】
前記リール張力付与装置27で張力のばらつきが吸収されて一定の張力が付与された複数列のコールド箔Cは、一対のピンチローラ28で引かれ、転写張力調整機構30の送給側を経た後、圧胴12とゴム胴16との間を通過して枚葉紙Pの予め接着剤が塗布された領域にコールド箔の箔(アルミ蒸着層)を転写し、転写し終わったコールド箔Cはベース・フィルムと一緒に今度は転写張力調整機構30の回収側を経た後一対のピンチローラ31で引かれ、ガイドローラ32を経て巻取軸21に巻き取られるのは前述したとおりである。
【0034】
そして、本実施例では、先ず、コールド箔Cの巻出軸18にフリクションシャフトを用いたので、1本の巻出軸18に複数列のコールド箔Cを搭載できて設置スペース上有効である。そして、複数列のコールド箔Cにおける固有の張力変動はリール張力付与装置27で効果的に吸収される。図示例では、第1のダンサーローラ部27aの2本のダンサーローラ23,24と第2のダンサーローラ部27bの1本のダンサーローラ25で2段階に亘って(直列的に)吸収するので、3本のダンサーローラ23,24,25で6列の巻出しリール19に対応することができ、1列の巻出しリールに対して1本のダンサーローラを配置する場合に比べてその設置スペースは半減させられる。
【0035】
このようにして、巻出軸18にフリクションシャフトを用いたことによる設置スペースの削減を保持しつつコールド箔Cのより安定した張力状態が得られて機械の高速稼働が可能となる。依って、枚葉印刷機の生産性の向上が図れると共に、巻出軸及びダンサーローラの本数削減により安価な装置を実現することができる。
【0036】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、巻出軸及びダンサーローラの本数変更やダンサーローラを付勢する付勢手段の構造変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。