特許第5788222号(P5788222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788222
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】包装封止装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   B65B51/10 Z
   B65B51/10 M
   B65B51/10 J
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-118307(P2011-118307)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-246001(P2012-246001A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】595013427
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ピー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100088889
【弁理士】
【氏名又は名称】橘谷 英俊
(72)【発明者】
【氏名】五百木 亮
【審査官】 村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−064626(JP,A)
【文献】 実開昭51−027665(JP,U)
【文献】 特開平01−253426(JP,A)
【文献】 特開平06−329108(JP,A)
【文献】 実開昭62−159410(JP,U)
【文献】 特開平03−178608(JP,A)
【文献】 特開平04−115819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1の加熱用平板状ヒータを備えた固定押圧部材と、
前記固定押圧部材の対向する表面に第2の加熱用平板状ヒータを備え、前記固定押圧部材との間に被包装物を封入した包装材の封止部を挟んで押しつけることのできる可動押圧部材と、
前記固定押圧部材および前記可動押圧部材のそれぞれ少なくとも一端に、前記加熱用平板状ヒータの一端を係合させて前記加熱用平板状ヒータを一方向のみに巻回させることにより前記加熱用平板ヒータに所定張力を与えるとともに維持する逆転防止機構を備えたヒータ取り付け機構と、
備え、
前記逆転防止機構がラチェット機構であり、
前記ラチェット機構は、ラチェット歯車および軸支された爪部材により構成され、前記爪部材は前記ラチェット歯車に押し当てられるよう付勢されており、前記平板状ヒータに張力を与える方向にはラチェット歯車の回転を許容し、逆方向の回転は爪部材がラチェット歯車と係合することで阻止するとともに、前記爪部材を前記ラチェット歯車から外すことで前記平板状ヒータが緩む方向にも前記巻取輪の回転を許容するものである、
ことを特徴とする包装封止装置。
【請求項2】
前記可動押圧部材は、前記固定押圧部材の上方、下方の少なくともいずれかに設けられたことを特徴とする請求項1に記載の包装封止装置。
【請求項3】
前記逆転防止機構は前記固定押圧部材および前記可動押圧部材の両端に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の包装封止装置。
【請求項4】
前記逆転防止機構は、前記平板状ヒータの張力変化を吸収すべく前記固定押圧部材に対して弾性的に結合されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の包装封止装置。
【請求項5】
前記逆転防止機構は回動可能な部材上に形成され、この回動可能な部材と各押圧部材との間には圧縮ばねが介挿されて前記平板状ヒータにかかる張力変化を吸収するように設けられたことを特徴とする請求項4に記載の包装封止装置。
【請求項6】
前記爪部材の前記ラチェット歯車への付勢は圧縮ばねにより行われることを特徴とする請求項に記載の包装封止装置。
【請求項7】
前記固定押圧部材および前記可動部材の前記平板状ヒータの載置面には耐熱性樹脂シートが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の包装封止装置。
【請求項8】
前記固定押圧部材および前記可動部材は、密閉時には内部の真空化が可能なチャンバ内に収納されたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の包装封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用ヒータにより包装材を狭圧加熱封止(ヒートシール)する包装封止装置にかかり、特にそのヒートシール用電熱式ヒータの取り付け構造に関するものであり、断熱材や食品等、あらゆる被包装物に対する真空パッキングに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
内部に被包装物を入れた包装材の開口部分を狭圧加熱して溶着封止(ヒートシール)する包装封止装置が店頭用を始め、真空雰囲気での真空パック、窒素雰囲気での酸化防止パック等に広く使用されているが、この溶着封止を行う包装封止装置における封止部での加熱方式として、従来種々のものが提案されている。
加熱方式としては、発熱体を封止部の押圧部材に埋め込む熱板方式と、押圧部材の表面にリボン状ヒータを設置するインパルス方式の二つが代表的なものである。
【0003】
これらの方式のうち、インパルス方式の方が正確な温度制御が可能で、かつ加熱が迅速なために作業性が良く、さらにシール強度が高いという長所があることから、インパルス方式の封止部を備えた包装封止装置が店頭用などに広く使用されている。
【0004】
インパルス方式の加熱に用いられるリボン状ヒータは、従来、封止部の押圧部材の長さに正確に合致するように設計され、押圧部材の両端にビス止めされていた。そして、該ヒータへの張力付与方法としては、従来コイルバネを用いて張力を付与することが行われていたが、特許文献1に開示されているように、電極ごとヒータを板バネにビス止めし、該板バネを押圧部材の端部に設置したホルダに取り付け該板バネの弾性力により張力を付与する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−64342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたヒータの取り付け構造は、従来のコイルバネをより取り扱いの容易な板バネに置き換えるとともに、取り付け部分の構造を簡素化するとともにホルダを小型化したに過ぎないものである。
【0007】
このため、ヒータの交換作業を行うには、まずヒータ取り付け部のホルダを開け、ビスをはずして板バネとヒータを分離し、予め所定の長さに調整された交換用のヒータを板バネとともにビス止めして再び組み直す必要がある。このような複雑な組み付け作業を伴うため、従来技術において要したのとほとんど代わらないヒータ交換時間を要している。
【0008】
したがって、店頭に設置された包装封止装置等では、ヒータ交換の必要が生じたときには、複雑な交換作業を確実に行うことのできるスキルを持ったスタッフを確保するという人材的な制約、および交換作業に時間がかかるという時間的な制約が伴い、ヒータ交換が適切に行えないために、装置を使用できない期間が生じたり、封止が不完全になったり、封止の品質が低下する等の問題が発生しやすい。
【0009】
また、特に、平板状ヒータは、その形状から長期の使用で熱膨張による変形を起こしやすく、封止品質を向上させつつ、ヒータの長寿命化を図るためには、組み付け時の平板状ヒータに対する張力付与を仕様どおり正確に行いかつそれを使用期間中維持する必要がある。このためには、ヒータの長さを予め正確に整えておき、かつ最適なバネ定数を持つ板バネを選択しておく必要がある上、使用時間の経過に応じて常に適正張力にするための張力調整を行う必要があるが、現在用いられている包装封止装置では、張力の調整機能がなく、張力の適正化は実際上困難である。
【0010】
よって、本願発明は、ヒータに張力を簡単に付与でき、ヒータ取り付け時に分解組み立てなどが不要で、さらに張力が仕様どおり付与できるととともに使用経過時の張力調整も可能で、かつ取り扱いが容易な簡素な構造の包装封止装置のヒータ取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、表面に第1の加熱用平板状ヒータを備えた固定押圧部材と、前記固定押圧部材の対向する表面に第2の加熱用平板状ヒータを備え、前記固定押圧部材との間に被包装物を封入した包装材の封止部を挟んで押しつけることのできる可動押圧部材と、前記固定押圧部材および前記可動押圧部材のそれぞれ少なくとも一端に、前記加熱用平板状ヒータの一端を係合させて前記加熱用平板状ヒータを一方向のみに巻回させることにより前記加熱用平板ヒータに所定張力を与えるとともに維持する逆転防止機構を備えたヒータ取り付け機構とを備え、前記逆転防止機構がラチェット機構であり、前記ラチェット機構は、ラチェット歯車および軸支された爪部材により構成され、前記爪部材は前記ラチェット歯車に押し当てられるよう付勢されており、前記平板状ヒータに張力を与える方向にはラチェット歯車の回転を許容し、逆方向の回転は爪部材がラチェット歯車と係合することで阻止するとともに、前記爪部材を前記ラチェット歯車から外すことで前記平板状ヒータが緩む方向にも前記巻取輪の回転を許容するものである、包装封止装置が提供される。
【0012】
前記可動押圧部材は、前記固定押圧部材の上方と下方の少なくともいずれかに設けられ、前記逆転防止機構は前記固定押圧部材および前記可動押圧部材の端部の少なくともいずれかに設けられると良い。
【0013】
前記逆転防止機構は、前記平板状ヒータの張力変化を吸収すべく前記固定押圧部材に対して弾性的に結合され、すなわち前記逆転防止機構は回動可能な部材上に形成され、この回動可能な部材と各押圧部材との間には圧縮ばねが介挿されて前記平板状ヒータにかかる張力変化を吸収するように設けられると良い。
【0014】
前記爪部材の前記ラチェット歯車への付勢は圧縮ばねにより行われると良い。
【0015】
前記固定押圧部材および前記可動部材の前記平板状ヒータの載置面には耐熱性樹脂シートが設けられていることが好ましい。
【0016】
前記固定押圧部材および前記可動部材は、密閉時には内部の真空化が可能なチャンバ内に収納されたことで、真空包装を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる包装封止装置によれば、押圧部材上に配置される平板状ヒータのヒータ取り付け機構に張力を調整できる逆転防止機構を備えるようにしたので、平板状ヒータの取り付けや交換を熟練を要さずに行い、適切な張力を維持でき、かつヒータ取り付け機構のコンパクト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る包装封止装置の主要部の構成を示す図であって、(a)は正面図で左右対称で右半分のみを示し、(b)は側面図である。
図2図1に示された構成のうち、ヒータ取付部の詳細を示す正面図である。
図3】(a)(b)(c)はそれぞれ図2中の切断線A、B、Cに沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る包装封止装置の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の係る包装封止装置1の主要部である封止部の構造を示す断面構造図であり、図1(a)は正面図、図1(b)はその側面図である。ここでは、真空雰囲気で封止が可能なものを例にとって説明する。
【0021】
封止部全体はチャンバ上ケース2とチャンバ下ケース3とが気密係合して内部に真空室4を形成するが、ここではチャンバ下ケース3は固定され、チャンバ上ケース2は連結部材5によって連結されたシリンダ6が駆動されることにより、上昇および下降し、真空室の形成および開放が行われる。図1(a)において、想像線で描かれたチャンバ上ケース2‘、連結部材5’は開放時の様子を示している。
【0022】
本実施形態では、チャンバ内4内で2枚の包装材を同時に封止できるようになっている。
【0023】
チャンバ下ケース3の底面から支持部材7を介して離隔するように設けられた直方体形状の封止台10の上面及び下面には、シリコンゴム等の耐熱性材料のシート部材10aが埋め込まれており、封止台10の上面および下面に適度な張力を付与された状態で平板状(リボン状)ヒータ11,12がそれぞれ張設されるようになっている。
【0024】
封止台10の上方には下面に平板状ヒータ21が張設された押圧部材20が設けられ、この押圧部材20はチャンバ上ケースに設けられたシリンダ8より上下に駆動され、後述するように、押圧部材20と封止台10のそれぞれの平板状ヒータ21と11との間に被封止対象物を狭持し、押圧部材20を下降させて平板状ヒータ21,11を加熱することにより封止を行うことができる。
【0025】
同様に、封止台10の下方には上面に平板状ヒータ31が設けられた押圧部材30が設けられ、この押圧部材30はチャンバ下ケースに設けられたシリンダ9より上下に駆動され、封止時には押圧部材30と封止台10のそれぞれの平板状ヒータ31と12との間に被封止対象物を狭持し、押圧部材30を上昇させて平板状ヒータ31,12を加熱することにより封止を行うことができる。
【0026】
ここで用いられる各シリンダは空圧式のもの、油圧式のものなど種々の形式のものが使用できる。
【0027】
封止台10,押圧部材20,30の最右端に本願発明において特徴的な部分であるヒータ取り付け部13,14,22,32が設けられている。これらは平板状ヒータを適切な張力で簡単に取り付けることを可能とするものであり、封止台10,押圧部材20,30の最左端にも同様の構成が設けられているが、ここでの説明は省略する。
【0028】
図2は本発明にかかる包装封止装置におけるヒータ取り付け部13、14を主に詳細に示す正面図であり、図3はその3つの位置A、B、Cから見た矢視断面図である。前述したように、ヒータ取り付け部は封止台10の両端に設けられているが、同一構造を有しているため、図2においてはその一端側のみを示す。
【0029】
ヒータ取り付け部13,14は封止台10に対し、それぞれ図2における上側の平板状ヒータ11および下側の平板状ヒータ12を取り付けるためのものであり、狭いスペースに収納するために、図3(a)に示される両者は封止台10およびこれと同じ断面形状を持つ基台51の中心軸に対し、点対称となるように設置されている。ヒータ取り付け部13および14の構造は全く同じであるので、以下においては、図2において前面側に見えているヒータ取り付け部13を主に説明する。
【0030】
図2及び図3(a)〜(c)を参照すると、ヒータ取り付け部13は、封止台10の端部に基台51と、この基台51に回動軸52の回りを回動可能に設けられたヒータ取り付け部材53を有しており、封止台10には基台51をねじ止めするためのねじ穴10b、10c、10d、10eが設けられ、基台51の対応位置にはねじ止めを行うための段付き穴51d、51e、51f、51gが設けられ、封止台10と基台51とは4本のビス55a〜55d(図3(b)にのみ表されている)によりねじ止めされる。
【0031】
封止台10および基台51の上下面には、それぞれ平板状ヒータの幅よりも広い幅を有し、耐熱性材料、例えばシリコンゴムでなるシート部材10aおよび51aが埋め込まれている。また、基台51はフェノール樹脂のような絶縁性の材質でできており、電気的絶縁体として機能する。
【0032】
ヒータ取り付け部材53は、図3(a)に示されるように、上部が平板状ヒータの幅よりも広い幅で対向する垂直板とこれらの上部を連結する断面コ字形状をなす部材となっており、対向する垂直板間には円柱状のヒータ巻き取り軸62が貫通し、回動自在にとなっており、一端側にはヒータ巻き取り軸62と一体化あるいは連結されたラチェット歯車61が設けられている。ヒータ巻き取り軸62の軸面には平板状ヒータ11の端部を挿入することにより平板状ヒータの巻き取りを可能とする、スリット62aが形成されている。
【0033】
ヒータ取り付け部材53は、基台51の切り欠き部51b内で可動であるので、その回動範囲は切り欠き部51bの内面と、回動軸52の周囲部のヒータ取り付け部材の外面間のクリアランス51cの量だけである。
【0034】
また、基台51とヒータ取り付け部材53には圧縮ばね54を挿入するための盲穴51h、53aがそれぞれ対向する位置に設けられており、これにより、図2に示されるように、これらの盲穴51h、53aに圧縮ばね54を挿入することにより、ヒータ取り付け部材53を半時計方向に回動するときには、圧縮ばね54によりヒータ取り付け部材53が柔軟に可動することで、平板状ヒータ11に掛かる急激な張力変化を緩和し、熱膨張による伸びも吸収する。このため、盲穴51h、53aの深さ、および圧縮ばね54の長さおよびばね強度などは適切に選択される。
平板状ヒータ11への電源供給は、ヒータ巻き取り軸62のラチェットとは反対側に設けられた電極62bから行われる。
【0035】
ヒータ取り付け部材53について更に詳述する。
ラチェット歯車61の全周囲部には歯61aが形成されており、ヒータ取り付け部材53にはこれらのラチェット歯車61の歯61aと係合する爪部63aを有する爪部材63が回動軸64の回りに回動自在に取り付けられるとともに、爪部材63の上方に設けられた爪部63aがラチェット歯車61の歯61aに当接するように圧縮ばね65により付勢されている。
【0036】
ラチェット歯車61の歯61aは、よく知られているように一方向(本願の場合にはヒータ巻き取り方向)に傾斜しており、ラチェット歯車の回動軸62と同軸に設けられた六角状のレンチ穴61bにトルクレンチの先端を挿入してヒータ巻き取り軸62が平板状ヒータ11を巻き取る方向に回転することにより、爪部材63の爪部63aがラチェット歯車61上を滑ることから係合せずに巻き取り軸62の回転を許容する一方、平板状ヒータ11が緩む方向には爪部63aが歯61aの間の溝に食い込むために逆回転が阻止される。これにより、平板状ヒータ11の巻き取りを確実に行い、かつ必要な張力をかけることができる構成となっている。
なお、爪部材63には爪解除レバー63bが設けられており、平板状ヒータの交換時など、平板ヒータを緩める必要があるときは、爪解除レバー63bを持ち上げて爪部63aを圧縮バネ65に抗して下降させることで、爪部63aを歯の間の溝との係合を解除することで、巻き取り軸62を逆転させて平板状ヒータ11を緩めることができる。
【0037】
次にこのような構成の包装封止装置を用いて封止を行う過程について述べるが、図2および図3(a)〜(b)を参照して、平板状ヒータ11をヒータ取り付け部13に取り付ける部分について説明する。他の部分も全く同様の手順で行われる。
【0038】
平板状ヒータ11は、シリコンゴム等の耐熱性材料のシート部材10aおよび51aが埋め込まれた封止台11および基台51上に載置され、その端部はヒータ巻き取り軸62に設けられたスリット62aに挿入することで係合させ、ラチェット歯車の回動軸62と同軸に設けられた六角状のレンチ穴61bにトルクレンチの先端を挿入して係合させ、トルクレンチのトルクを所定値に設定し、あるいはトルク付与中の表示トルクを観察しながら、ヒータ巻き取り軸62を平板状ヒータ11を巻き取る方向に回転させると、ラチェット歯車61と爪部63aとが逆転を防止しながら平板状ヒータ11に加わる張力を上げて行くので、平板状ヒータ11はシート部材10aおよび51aに接するように、かつ最適な張力で張設される。このとき、ヒータ取り付け部材53も圧縮ばね54に抗してクリアランス51cの範囲内で半時計方向に回動するが、これにより、平板状ヒータ11に掛かる急激な張力変化を緩和するとともに、熱膨張による伸びによる張力低下を圧縮ばね54の作用により、ヒータ取り付け部材53を時計方向に回動させることにより平板状ヒータ11の張力を一定に維持することができる。
【0039】
平板状ヒータに対する取り付けおよび張力付加は封止台10の下側、左端側、押圧部材20および30の両端側で同様に行われるが、一端側のみにヒータ取り付け部を設け、他端側は平板状ヒータを固定するようにしても良い。
【0040】
以上説明した包装封止装置1を使用して封止を行う様子は、図1(a)(b)を参照して以下に説明される。
【0041】
被包装物101が袋状の外被材102に包装されたものを包装材100と称するが、この実施形態では真空状態で2つの包装材100の同時封止が可能となっている。
【0042】
まず、シリンダ6を駆動してチャンバ上ケース2を上昇させ、ガイド40を利用し、予め準備された、内部に被包装物101を入れた包装材102の封止対象の開口部分102aを封止台10の上面と上側の押圧部材20との間、および封止台10の下面と下側の押圧部材30との間にそれぞれ挿入する。
【0043】
次に、シリンダ6を駆動してチャンバ上ケース2を下降させ、チャンバ下ケース3と係合させて密閉空間を形成し、真空ポンプ(図示せず)により、密閉空間内の排気を行い減圧あるいは真空室4を形成する。
【0044】
次に、適切に張設された各平板ヒータ11、12、21、31に電極62b等を介して図示しない電源から通電することにより加熱を行う。
【0045】
各平板ヒータが所望の温度に達した段階でシリンダ8を駆動して押圧部材20を降下させ、同様にシリンダ9を駆動して押圧部材30を上昇させ、平板状ヒータ11と21,および12と31との間で包装材の開口部分102aを溶着させて、狭圧加熱封止(ヒートシール)が行われる。
【0046】
封止完了後は、各平板ヒータの通電を停止した後、シリンダ8により押圧部材20を上昇させるとともに、シリンダ9により押圧部材30を下降させ、チャンバ内の減圧状態を解除した後に、シリンダ6によりチャンバ上ケース2を上昇させ、内部が真空に封止された封止物100が得られる。
【0047】
なお、この封止装置では、使用期間が経過することにより、平板状ヒータの張力が材料の伸び等で低下することがある。このときには、トルクレンチを用いて取り付け時と同様に張力設定を容易に行うことができる。この結果、平板状ヒータを適切に管理できるとともに、シール部の強度などの仕上がり状態を良好に維持し、平板状ヒータの長寿命化を図ることができる。
【0048】
以上説明した実施例では固定押圧部材の上方と下方の双方に可動押圧部材を設けて、2枚の包装材の封止を同時に行うようにしているが、これらのいずれか一方のみとして包装材を1枚だけ封止するようにすることもできる。
【0049】
また、以上の実施例では、ヒータの張力付与のためにラチェット機構を採用したが、他の逆転防止機構を採用することができる。
【0050】
また、ヒータ間に包装材を挟むのにシリンダによる駆動を行ったが、リニアサーボモータ、通常のサーボモータとラックピニオン機構等の直線運動を行う機構は適切な圧力を付与できるものであれば、どのようなものでも使用できる。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、ヒータ取り付け部が逆転防止機構を有しているため、非常にコンパクトな構成でありながら、熟練を必要とせず、適切なトルク管理のみで容易にヒータ張力を管理でき、人材的、時間的な制約がなく、かつ封止品質を維持できる包装封止装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 包装封止装置
2 チャンバ上ケース
3 チャンバ下ケース
4 真空室
6、8、9 シリンダ
7 支持部材
10 封止台
10a、51a シート部材
10b、10c、10d、10e ねじ穴
11、12、21、31 平板状ヒータ
13、14、22、32 ヒータ取り付け機構
20、30 押圧部材
51 基台
51b 切り欠き部
51c クリアランス
51d〜51g 段付き穴
51h、53h 盲穴
52 回動軸
53 ヒータ取り付け部材
54、65 圧縮ばね
55a〜55d ビス
61 ラチェット歯車
61a 歯
61b レンチ穴
62 ヒータ巻き取り軸
62a スリット
62b 電極
63 爪部材
63a 爪部
63b 爪解除レバー
64 回動軸
図1
図2
図3