特許第5788235号(P5788235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧 ▶ 東京電力株式会社の特許一覧 ▶ 中部電力株式会社の特許一覧 ▶ 関西電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5788235-蒸気発生装置 図000002
  • 特許5788235-蒸気発生装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788235
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/00 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   F22B3/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-133550(P2011-133550)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-2708(P2013-2708A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 晃一朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 倫子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 佳子
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】大木 茂生
(72)【発明者】
【氏名】沼田 誠一郎
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−164223(JP,A)
【文献】 特開平08−200605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体圧縮機、温水で冷却される凝縮器、膨張弁および蒸発器を熱媒体循環流路に介設してなるヒートポンプと、
前記凝縮器から流出する前記温水を減圧して蒸気と温水とに分離するフラッシュタンク、および、前記フラッシュタンクが分離した温水を前記凝縮器に供給するポンプを備える温水循環流路と、
前記フラッシュタンクが分離した蒸気を需要設備へ供給する供給流路と
前記供給流路に設けられ、前記フラッシュタンクが分離した蒸気を吸引し、圧縮して吐出する蒸気圧縮機とを有し、
前記蒸気圧縮機の下流側の前記供給流路の圧力を一定に維持するように、前記熱媒体圧縮機の出力を調整することを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
記フラッシュタンク内の圧力を一定に維持するように、前記蒸気圧縮機の出力を調整することを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記蒸気圧縮機は、容積形圧縮機であり、前記出力の調整は回転数を調節することを特徴とする請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記熱媒体圧縮機は、容積形圧縮機であり、前記出力の調整は回転数を調節することを特徴とする請求項1からのいずれか記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記フラッシュタンクが分離した温水の液面を所定の高さに維持するように、前記温水循環流路に補給水を供給する給水手段を有することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記補給水は、温水であることを特徴とする請求項に記載の蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生装置としては、燃料を燃焼させて水を沸騰させるボイラが広く用いられている他、特許文献1および2に記載されているように、電気加熱によるものも知られている。電気加熱方式の蒸気発生装置は、燃料を用いないので操作が容易で安全であるが、エネルギコストが高いため、小型小容量のものに限られている。
【0003】
また、特許文献3には、ボイラのブローダウン水をフラッシュタンクで減圧し、低圧蒸気と温水とに分離して蒸気を回収する発明が記載されているが、分離された温水は熱エネルギを有するにも拘わらず廃棄される。
【0004】
また、工場設備等では、ブローダウン水以外にも、スチームトラップのドレン水やその他の温水が、その熱エネルギを有効に利用することなく廃棄されている。
【0005】
このように廃棄されている温水を加熱して蒸気を発生させることができれば、熱エネルギの廃棄量を低減できる。しかしながら、燃料を燃焼させるボイラによってそのような少量の温水を蒸発させると、熱効率が低くなり、不経済である。また、電気加熱によるボイラを適用しても、エネルギコストが高いため、経済的合理性が得られない。
【0006】
このため、ボイラを用いずに蒸気を発生することができるエネルギ効率の高い蒸気発生装置が提案されている。例えば、特許文献4には、熱媒体圧縮機、温水で冷却される凝縮器、膨張弁および蒸発器を熱媒体循環流路に介設してなるヒートポンプと、凝縮器から流出する温水を減圧して蒸気と温水とに分離するフラッシュタンク、および、フラッシュタンクが分離した温水を凝縮器に供給するポンプを備える温水循環流路と、フラッシュタンクが分離した蒸気を吸引し、圧縮して吐出する蒸気圧縮機を有する蒸気発生装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−9506号公報
【特許文献2】特開2002−106801号公報
【特許文献3】特開平11−344203号公報
【特許文献4】特開2010−164223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蒸気の使用量が変動する需要設備に蒸気を供給する蒸気供給設備は、需要設備の蒸気消費量の変動に応じて、蒸気の発生量(供給量)を増減する機能を備えていなければならない。具体的には、需要設備において必要とされる圧力よりも、需要設備に通じる供給流路の圧力が低ければ蒸気の供給量が不足しているため、高負荷運転を行って蒸気発生量を増大させ、逆に、供給流路の圧力が必要とされる圧力より高ければ、低負荷運転を行って蒸気発生量を減少させることにより、供給流路の圧力を需要設備が必要とする圧力に維持することが要求される。
【0009】
しかしながら、特許文献4に記載の蒸気発生装置は、蒸気圧縮機から吐出される蒸気の圧力および流量を調整するような構成を備えていないため、蒸気供給設備としては、補助的にしか使用できない。
【0010】
前記問題点に鑑みて、本発明は、ボイラを用いずに蒸気を発生することができるエネルギ効率の高い蒸気発生装置であり、且つ、蒸気の供給量を適正に調整して供給流路の圧力を一定に保つことができる蒸気発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明による蒸気発生装置は、熱媒体圧縮機、温水で冷却される凝縮器、膨張弁および蒸発器を熱媒体循環流路に介設してなるヒートポンプと、前記凝縮器から流出する前記温水を減圧して蒸気と温水とに分離するフラッシュタンク、および、前記フラッシュタンクが分離した温水を前記凝縮器に供給するポンプを備える温水循環流路と、前記フラッシュタンクが分離した蒸気を需要設備へ供給する供給流路と、前記供給流路に、前記フラッシュタンクが分離した蒸気を吸引し、圧縮して吐出する蒸気圧縮機とを有し、前記蒸気圧縮機の下流側の前記供給流路の圧力を一定に維持するように、前記熱媒体圧縮機の出力を調整するものとする。
【0012】
この構成によれば、ヒートポンプが熱媒体圧縮機の消費する動力エネルギよりも大きなエネルギを温水に供給できるので、効率よく蒸気を発生させられるとともに、供給流路の圧力に応じて、ヒートポンプにおける熱媒体の循環流量を調整することによって、温水に供給する熱量を調整してフラッシュタンクにおけるフラッシュ量を調整し、供給流路に流入する蒸気量を加減して供給流路の圧力を一定に保つことができる。
【0013】
また、本発明の蒸気発生装置は、前記フラッシュタンク内の圧力を一定に維持するように、前記蒸気圧縮機の出力を調整してもよい。
【0014】
この構成によれば、蒸気圧縮機から吐出する蒸気量を調整して、需要設備に通じる供給流路の圧力を任意の圧力に維持することができる。また、ヒートポンプから温水循環流路に供給される熱エネルギに応じて蒸気圧縮機の吐出蒸気量を調節することになるので、エネルギ効率を最大化したり、蒸気発生量を最大化することができる。
【0015】
また、本発明の蒸気発生装置において、前記蒸気圧縮機は、容積形圧縮機であり、前記出力の調整は回転数を調節してもよい。
【0016】
この構成によれば、蒸気圧縮機の出力がその回転数に比例するので、制御が容易である。
【0017】
また、本発明の蒸気発生装置は、前記フラッシュタンクが分離した温水の液面を所定の高さに維持するように、前記温水循環流路に補給水を供給する給水手段を有してもよい。
【0018】
この構成によれば、蒸気として吐出した分だけ補給水を供給するので、温水循環流路内の温水量が一定に保たれる。また、蒸気の吐出量に合わせて補給水を連続して供給することで、補給水の供給量の変動によって運転が不安定になることを防止できる。
【0019】
また、本発明の蒸気発生装置において、前記熱媒体圧縮機は、容積形圧縮機であり、前記出力の調整は回転数を調節してもよい。
【0020】
この構成によれば、熱媒体圧縮機の出力がその回転数に比例するので、制御が容易である。
【0021】
また、本発明の蒸気発生装置において、前記補給水は、温水であることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、補給水の昇温のために熱エネルギを消費することによる蒸気発生量の減少をなくして蒸気を安定供給できる。また、補給水として、ボイラのブローダウン水、スチームドレン、その他の温排水を利用することで、温排水の熱エネルギを蒸気として回収できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヒートポンプを用いて消費電力を上回る熱エネルギを温水に供給して、蒸気を得るので、効率よく蒸気を発生させられ、且つ、供給流路の圧力を一定に維持するように、ヒートポンプの熱媒体循環流量を調整することによって、蒸気の消費量に合わせて蒸気発生量を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の参考例の蒸気発生装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態の蒸気発生装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に本発明の参考例の蒸気発生装置1を示す。
【0026】
蒸気発生装置1は、容積形圧縮機の一種であるスクリュ圧縮機からなる熱媒体圧縮機2、温水で冷却される凝縮器3、膨張弁4、および、蒸発器5を介設してなり、熱媒体(例えばフロン)を封入した熱媒体循環流路を構成するヒートポンプ6と、凝縮器3から流出する温水を減圧して蒸気と温水とに分離するフラッシュタンク7、および、フラッシュタンク7で分離されて貯留されている温水を凝縮器3に再供給するポンプ8を備える温水循環流路9と、蒸気を消費する需要設備10にフラッシュタンク7で分離された蒸気を供給する供給流路11と、補給水タンク12から温水循環流路9に補給水を供給する給水調節弁13とを有する。
【0027】
熱媒体圧縮機2は、回転数制御可能なモータ14によって駆動され、供給流路11の圧力を検出する供給圧力検出器15の検出圧力に基づいて、供給流路11の圧力が所定の設定圧力になるように、例えばPIDコントローラによって制御される。
【0028】
給水調節弁13は、フラッシュタンク7内の温水の液面の高さを検出するレベルセンサ16の検出値に基づいて開度調整され、フラッシュタンク7内の液面を一定の高さに保つ。つまり、給水調節弁13は、温水循環流路9内の温水の量を一定に保つように補給水を供給する給水手段である。
【0029】
ヒートポンプ9において、熱媒体は、蒸発器5で水と熱交換して加熱気化され、熱媒体圧縮機2で圧縮されて昇温し、凝縮器3において温水に熱を放出して凝縮する。このとき、フラッシタンク7からポンプ8によって凝縮器3に供給された温水が加熱される。凝縮器3において加熱された温水は、フラッシュタンク7において一部を蒸発させることで、フラッシュタンク7の内圧によって決定される飽和温度の温水に戻る。
【0030】
フラッシュタンク7で温水から分離された蒸気は、供給流路に供給されるが、需要設備10の蒸気消費量がフラッシュタンク7における蒸気発生量に勝ると、供給流路11の圧力が低下して、供給圧力検出器15の検出値が低下する。その場合、熱媒体圧縮機2の回転数が上昇し、凝縮器3により多くの熱媒体を供給するので、凝縮器3において温水が受け取る熱量が増大し、フラッシュタンク7における蒸気発生量を増加させて供給流路11の圧力を設定圧力に維持する。需要設備10の蒸気消費量減少に伴う供給流路11の圧力上昇に対しては、熱媒体圧縮機2の回転数が低下して温水への供給熱量が減少し、フラッシュタンク7における蒸気発生量を低減して供給流路11の圧力を低下させる。
【0031】
本実施形態において、補給水タンク12に貯留される補給水として、ボイラのブローダウン水、スチームトラップのドレン水、その他の温排水を用いることで、それらの温水の熱エネルギを蒸気として回収できる。また、補給水の温度をフラッシュタンク7における温水温度と略同じにすれば、給水調節弁13の開度変化による蒸気発生量の変動がなくなるので好ましい。仮に補給水の温度が温水温度と異なっても、蒸気発生装置1が安定して運転している間は給水調節弁13の開度が大きく変化しないように制御パラメータを設定することで、安定した定常運転が可能になる。
【0032】
蒸気発生装置1では、熱媒体の蒸発温度が低いので、蒸発器5における熱媒体の加熱は、常温以上の温度を有する水を用いればよく、工業用水や冷却水の環流水を使用できる。つまり、ヒートポンプ6は、殆どコストのかからない水を温熱源として用いることができる。蒸気発生装置1において、エネルギ消費が最も大きいのは、蒸気の潜熱を供給するヒートポンプ6である。このため、蒸気発生装置1のエネルギ効率は、ヒートポンプ6のエネルギ効率に略近い値となる。つまり、ヒートポンプ6が3を超える成績係数(COP)を達成できることから、蒸気発生装置1は、消費電力の3倍以上の熱エネルギを有する蒸気を発生させられる。
【0033】
尚、以上の参考例では、熱媒体圧縮機2に、回転数と出力とがリニアなスクリュ圧縮機を用いたことで、フラッシュタンク7の圧力制御を容易にしている。しかしながら、本参考例及び以下に説明する本発明の実施形態においてターボ型の圧縮機を使用することも可能である。
【0034】
続いて、図2に、本発明の実施形態の蒸気発生装置1aの構成を示す。尚、これ以降の実施形態の説明において、先に説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0035】
実施形態の蒸気発生装置1aは、供給流路11に、フラッシュタンク7から供給された蒸気を吸い込んで、圧縮して吐出する蒸気圧縮機17が設けられている。蒸気圧縮機17は、モータ18によって駆動される。供給圧力検出器15は、蒸気圧縮機17の下流側に配設され、蒸気圧縮機17が吐出した蒸気の圧力を検出するようになっている。
【0036】
また、この蒸気発生装置1aは、フラッシュタンク7の内圧を検出するフラッシュ温度検出器19を有し、フラッシュ温度検出器19に基づいて、フラッシュタンク7の内圧を所定の設定圧力に維持するように、蒸気圧縮機17の回転数を、例えばPIDコントローラによって調節する。
【0037】
本実施形態の蒸気発生装置1aでは、フラッシュタンク7の内圧を一定に保つように蒸気圧縮機17の出力が調整されるので、フラッシュタンク7で発生した蒸気は、全て、蒸気圧縮機17で加圧して、供給流路11から需要設備10供給される。そして、この蒸気の供給量が需要設備10における蒸気消費量と異なることにより、供給流路11の圧力が変化しようとする場合には、熱媒体圧縮機2の出力を調整して、ヒートポンプ6が温水に供給する熱量を増減し、フラッシュタンク7における蒸気発生量を調節することによって、供給流路11への蒸気供給量を需要設備10の蒸気消費量に合致させ、供給流路11の圧力変動を防止する。
【0038】
本実施形態の蒸気発生装置1aは、フラッシュタンク7で発生した蒸気を蒸気圧縮機17で圧縮して需要設備10に供給するので、フラッシュタンク7において、需要設備10が必要とする圧力よりも低い圧力で温水をフラッシュさせることができる。これにより、フラッシュタンク7における蒸気の発生量を大きくすることができ、且つ、温水循環流路9における温水の温度を低く保って凝縮器3における熱交換効率を高めることができる。このため、本実施形態では、前述した参考例に比べても、蒸気発生量を大きくできる。
【0039】
以上の説明から明らかなように、本発明の蒸気発生装置1aは、需要設備10の蒸気使用量に合わせて蒸気発生量を調整できるので、需要設備に対して単独で蒸気を供給することができる。
【符号の説明】
【0040】
1a…蒸気発生装置
2…熱媒体圧縮機
3…凝縮器
4…膨張弁
5…蒸発器
6…ヒートポンプ
7…フラッシュタンク
8…ポンプ
9…温水循環流路
10…需要設備
11…供給流路
12…補給水タンク
13…給水調節弁
14…モータ
15…供給圧力検出器
16…レベルセンサ
17…蒸気圧縮機
18…モータ
19…フラッシュ圧力検出器
図1
図2