(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検証手段は、前記入力装置からの情報に従って、前記非可逆圧縮方式で圧縮した場合の圧縮結果が既知のリファレンスデータを前記非可逆圧縮方式で圧縮し、前記圧縮データの伝送レート以下の伝送レートで前記伝送経路を介して前記データ処理手段及び前記入力装置の少なくとも一方に伝送するように構成される請求項1記載のX線CT装置。
前記データ収集手段は、前記入力装置からの情報に従って、前記又は他の被検体を透過したX線の検出データを、空間分割された複数の分割データとして収集するように構成され、
前記検証手段は、前記入力装置からの情報に従って、前記複数の分割データを前記検証データとして前記データ処理手段に順次伝送するように構成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るX線CT装置及びX線CT装置におけるデータ伝送方法について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るX線CT装置の構成図である。
【0018】
X線CT装置1は、寝台2、ガントリ3、制御部4、データ処理部5、コンソール6、表示装置7及び画像データベース8を備えている。寝台2は、筒状のガントリ3の内側に設けられ、被検体をセットした状態でガントリ3内に送り込むことができる。ガントリ3は、回転部9及び非回転部10を有し、回転部9には、X線照射部11、X線検出器12、DAS13及び送信器14が内蔵される。一方、ガントリ3の非回転部10には、受信器15が設けられる。そして、送信器14と受信器15及び受信器15とデータ処理部5は、それぞれデータ伝送路16A、16Bによって互いに接続される。
【0019】
X線照射部11は、X線管を備え、高電圧発生装置からX線管への電圧印加によって、寝台2にセットされた被検体に向けてX線を曝射する装置である。
【0020】
X線検出器12は、X線照射部11と寝台2を挟んで対向配置される。X線検出器12は、X線照射部11のX線管から照射され、被検体を透過したX線を検出する装置である。近年のX線検出器12は多列化が進み、2次元的に配置された複数のX線検出素子を備えている。
【0021】
そして、回転部9とともにX線照射部11及びX線検出器12が被検体の周囲を回転することによって、X線照射部11により360度方向から被検体に三次元的な扇形状のXビームを照射する一方、X線検出器12により被検体を透過したX線を検出できるように構成される。
【0022】
図2は、
図1に示すX線検出器12に備えられるX線検出素子の配置を示す図である。
【0023】
図2に示すように、X線検出器12には、被検体を透過したX線を二次元的に検出するための複数のX線検出素子が配置される。
図2において水平方向は、ガントリ3の回転部9の回転面と平行なファン角方向であり、チャネル方向とも呼ばれる。また、鉛直方向は、ガントリ3の回転部9の回転面に垂直なコーン角方向であり、列方向とも呼ばれる。従って、被検体の体軸方向は、X線検出素子の列方向となる。
【0024】
図2は、ファン角方向にX個のX線検出素子を有し、コーン角方向にY個のX線検出素子を有するX線検出器12の例を示している。このような構成を有するX線検出器12により、ある回転角度においてX線が1回検出されると、X線検出素子の配置に対応する配列を有するX線検出データ群が収集される。
【0025】
このX線検出素子の配置に対応するX線検出データ群は、ビューデータと称される。ビューデータは、X線検出素子の配置に対応しているため、Xチャネル及びY列のデータで構成される。X線検出器12は、回転部9とともに回転するため、ビューデータはデータ収集が行われる回転部9の角度の数だけ収集される。このビューデータの数に相当する回転部9の角度は、単位[view]を用いてカウントされる。
【0026】
図3は、
図1に示すDAS13の機能ブロック図である。
【0027】
DAS13は、信号処理部17、情報圧縮部18、データ保存部19、伝送データ制御部20及び検証用データ送信部21Aを備えている。
【0028】
信号処理部17は、X線検出器12の各X線検出素子から電気信号として出力されたX線検出データを収集して増幅、積分処理、A/D(analog to digital)変換処理、対数変換処理等の信号処理を施すことによって各X線検出素子にそれぞれ対応するディジタル化した投影データを生成する機能と、生成した投影データを、送信器14、受信器15及びデータ伝送路16A、16B等の伝送経路を介してデータ処理部5に出力する機能を有する。すなわち、信号処理部17の機能が、通常のDAS13に備わっている本来的な機能である。
【0029】
加えて、DAS13は、コンソール6から入力された指示情報に従って圧縮モード及び非圧縮モードでの動作を切換えて行うように構成されている。圧縮モード及び非圧縮モードのいずれにおいても、DAS13からは送信器14、受信器15及びデータ伝送路16A、16B等の伝送経路で保証される伝送レート以下の伝送レートでデータが伝送されるように構成される。
【0030】
圧縮モードは、データ処理部5への伝送対象となるデータのサイズを1/nに圧縮する情報圧縮処理を行って、圧縮データをデータ処理部5に出力するDAS13の動作モードである。尚、nは1より大きい任意の実数である。このため、圧縮モードは、被検体の通常のイメージングの際に選択される。
【0031】
伝送経路で保証される伝送レート以下の伝送レートとなるように1/nのデータ圧縮率を保証するためには、非可逆的な情報圧縮処理を行うことが必須となる。これは、可逆的な情報圧縮処理では原理的に圧縮率を保証することが不可能であるためである。例えば、可逆的な圧縮処理では、ランダムなデータを圧縮することができない。そこで、情報圧縮部18には、任意の非可逆圧縮方式によるデータ圧縮を行う機能が備えられる。
【0032】
非可逆圧縮方式のデータ圧縮処理は、主として信号変換処理、量子化処理及び符号化処理を含む処理ステップからなる。例えば、例えば、画像データの非可逆圧縮方式としてJPEG (Joint Photographic Experts Group)方式、JPEG 2000方式、JPEG-LS方式が知られている。JPEG方式は、離散コサイン変換を行ってハフマン符号を用いる非可逆圧縮方式である。また、JPEG 2000方式は、離散ウェーブレット変換を行って算術符号を用いる非可逆圧縮方式であり、JPEG-LS方式は画素間相関予測を行ってゴロム・ライス符号を用いる非可逆圧縮方式である。
【0033】
これらに代表される非可逆圧縮方式の情報圧縮処理では、信号変換処理及び量子化処理において切り捨てられる情報量を制御することにより、所定の圧縮率で非可逆にデータを圧縮することができる。すなわち、伝送経路で保証される伝送レート以下の伝送レートとなるように1/nのデータ圧縮率を保証することができる。
【0034】
図4は、
図2に示すX線検出器12により取得されたX線検出データを1/nに圧縮して得られる圧縮データの模式図である。
【0035】
図4において水平方向は、X線検出素子のチャネル方向を示し、鉛直方向は、X線検出素子の列方向を示す。
図4に示すように、Xチャネル及びY列のX線検出素子の各列におけるデータをそれぞれ圧縮する場合に、非可逆圧縮方式の情報圧縮処理を施せば、1/nの圧縮率を保証することができる。従って、DAS13からデータ処理部5までの伝送経路では、少なくとも1/nに圧縮された圧縮データの伝送レートを保証すればよいことになる。換言すれば、1/nに圧縮された圧縮データの伝送レートを保証するデータ伝送路16A、16Bを用いて伝送経路を形成することができる。
【0036】
尚、圧縮データは、1列当たりX/n個のデータを含むこととなり、平均でX/n個のデータでXチャネル分の情報を保持することとなる。従って、圧縮データの水平方向の位置は、X線検出素子のチャネル方向の位置と一致しない。また、非可逆圧縮方式の情報圧縮処理では、圧縮前における情報量を全て保存することができない。このため、圧縮データ及び圧縮データを解凍処理によってXチャネル分のデータに伸長して得られる伸長データには、非可逆圧縮処理による誤差が重畳される。
【0037】
一方、非圧縮モードは、情報圧縮を行わずに非圧縮データをDAS13の動作検証用のデータとしてデータ処理部5に出力するDAS13の動作モードである。すなわち、非圧縮モードは、データにノイズやエラー等の異常が発生した場合に、発生した異常が情報圧縮部18における情報圧縮処理に起因するのかX線検出器12やDAS13の他の部分に起因するのかを検証するためのモードである。
【0038】
従って、非圧縮モードは、DAS13から出力されるデータにノイズやエラー等の不具合が生じた場合に選択される。非圧縮モードにおいて生成される非圧縮データは、データ伝送路16A、16Bにおいて保証されている圧縮データ用の低い伝送レート以下の伝レートでデータ処理部5に伝送される。
【0039】
データ保存部19及び伝送データ制御部20は、このような非圧縮モードの動作のために、DAS13に備えられたものである。
【0040】
データ保存部19は、DAS13において取得された情報圧縮前におけるデータをDAS13の動作検証用のデータとして保存する機能を有する。このため、データ保存部19には、DAS13の動作検証に必要な量の非圧縮データを検証データとして保存する機能が備えられる。DAS13用の検証データとしては、空気やファントム等の所望の被検体を透過したX線の検出データの一部又は全部を利用することができる
【0041】
従って、例えば、ガントリ3の回転部9を1回転させた場合にX線検出器12により収集されるデータを動作検証に保存することが可能なストレージでデータ保存部19を構成することができる。ガントリ3の回転部9を1回転させた場合には、数百から数千[view]程度のビューデータが収集される。この場合、1回転分のビューデータの保存に必要なストレージの容量は、数百[MB]から数[GB]となる。
【0042】
このようにDAS13の動作検証用のデータのデータサイズは、被検体の検査のためにX線検出器12を複数回転して収集される生体データに比べて遥かに少量となる。従って、DAS13に通常備えられる既存のRAM (Random Access Memory)等のストレージをデータ保存部19として簡易に利用することができる。
【0043】
伝送データ制御部20は、非圧縮モードにおいて、DAS13からデータ処理部5に伝送される検証用の非圧縮データの伝送レートが、データ伝送路16A、16Bにおいて保証されている伝送レート以下となるように、DAS13から出力される非圧縮データを制御する機能を有する。より具体的には、伝送データ制御部20は、非圧縮モードにおいて、検証用の非圧縮データを時分割又は空間分割してDAS13から後段のデータ伝送路16A、16Bに伝送させる機能を有する。
【0044】
データ保存部19に保存された非圧縮データをDAS13の動作検証用のデータとして用いる場合には、伝送データ制御部20がデータ保存部19から取得した非圧縮データを、伝送レートがデータ伝送路16A、16Bにおいて保証されている伝送レート以下となるように、時分割して出力させるように構成される。
【0045】
例えば、1回転分の非圧縮データをビューデータ毎にn個の分割データに時分割すれば、非圧縮データの伝送レートを1/nに圧縮することができる。この場合、回転部9をn回回転させて得られるデータを時分割せずに伝送する場合における伝送時間で全ての非圧縮データをデータ処理部5に伝送することができる。従って、時分割された非圧縮データは非リアルタイムにDAS13からデータ処理部5に動作検証用のデータとして伝送される。
【0046】
X線検出器12の1回転分のデータとしてV個のビューデータが動作検証用にデータ保存部19に保存されている場合には、伝送データ制御部20においてV個のビューデータがV×n個の分割データに分割される。
【0047】
図5は、
図2に示すX線検出器12により取得されたX線検出データをn個に分割して得られる分割データの模式図である。
【0048】
図5において水平方向は、X線検出素子のチャネル方向を示し、鉛直方向は、X線検出素子の列方向を示す。
図5に示すように、Xチャネル及びY列のX線検出素子に対応する二次元領域をチャネル方向にn個の均等なエリアに分割することができる。
【0049】
すなわち、チャネル方向の幅が0チャネルからX/nチャネルまでであり、列方向の幅が0列からY列までの分割エリアを作成することができる。同様なサイズの分割エリアをチャネル方向に順次作成すると、チャネル方向の位置が、X/n+1チャネルから2X/nチャネルまでの分割エリアから(n-1)X/n+1チャネルからX/nチャネルまでの分割エリアまでの複数の分割エリアが得られる。この結果、広さが均等なn個の分割エリアを作成することができる。
【0050】
単純な例として、n=2、つまりX線検出素子に対応する二次元領域を2つのエリアに分割する場合には、前半のチャネルで構成される分割エリアと後半のチャネルで構成される分割エリアに分割することができる。
【0051】
また、同様に、列方向にn個の分割エリアを作成することもできる。例えば、X線検出素子に対応する二次元領域を2つのエリアに分割する場合には、前半の列で構成される分割エリアと後半の列で構成される分割エリアとに分割することができる。
【0052】
X線検出素子に対応する二次元領域が複数のエリアに分割されると、各エリアに対応するデータを動作検証用の非圧縮の分割データとすることができる。ビューデータはV個存在するため、分割データ及び分割エリアの数はV×n個となる。
【0053】
このようにして得られる分割データの1つ当たりのデータサイズは、分割前におけるビューデータのサイズの1/nとなる。このため、ビューデータを1/nに圧縮して伝送する場合に比べてn倍の伝送時間をかけることによって、全ての分割データで構成されるビューデータを圧縮せずにDAS13からデータ処理部5に伝送することが可能となる。
【0054】
尚、V個の全てのビューデータの収集及びデータ保存部19への保存の完了を待たずに、収集されたビューデータを順次分割してDAS13からデータ処理部5に伝送するようにしてもよい。
【0055】
動作検証用の非圧縮のビューデータの時分割は、上述した方法の他、任意の基準でX線検出素子に対応する二次元領域を複数のエリアに分割することによって行うことができる。時分割の方法の他の例としては、X線検出素子の列を基準に時分割する方法が挙げられる。
【0056】
例えば、非圧縮のビューデータのデータサイズを1/2に圧縮する場合には、奇数列のX線検出素子からのデータと偶数列のX線検出素子からのデータとに分けて列ごとに順次DAS13から後段の伝送経路に伝送させることができる。X線検出素子の列を基準にした分割方法を一般化すると、[Y/n]*n +(i mod n)番目の列のX線検出素子からのデータがi番目に伝送されることとなる。但し、YはX線検出素子の列数であり、[]は最小の自然数を与える演算子である。
【0057】
この他、データに不具合が発生した場合に、不具合が発生したデータに対応するX線検出素子の近傍におけるX線検出素子からのデータや不具合が発生したデータに対応する回転角度のビューデータの割合が高くなるように一部の位置に対応するデータを用いて動作検証用のデータを作成することもできる。すなわち、所定の範囲内の回転角度、チャネル及び列に対応するデータの割合が高くなるように、不均等に選択された一部の位置に対応するデータを動作検証用の非圧縮データとして時分割してDAS13から伝送することができる。
【0058】
このため、1/nの圧縮率で圧縮された圧縮データに対応する伝送レートが保証されたデータ伝送路16A、16Bを用いて、非圧縮データの伝送レートを保証することができる。
【0059】
一方、非圧縮モードにおいて、回転部9を回転させてX線検出器12によりリアルタイムに収集されるデータをDAS13の動作検証用の非圧縮データとして用いることもできる。この場合には、伝送データ制御部20が、非圧縮データの伝送レートがデータ伝送路16A、16Bにおいて保証されている伝送レート以下となるように、DAS13において生成された非圧縮データを空間分割する。
【0060】
具体的には、回転部9を1回転させて得られる1回転分の動作検証用のビューデータをn回転に分けて収集及び伝送することによって動作検証用の非圧縮データを空間分割することができる。従って、伝送データ制御部20おける非圧縮データの空間分割は、回転部9の制御と連動して行われる。
【0061】
データを分割して収集する方法としては、X線検出器12に備えられる複数のX線検出素子の出力先にそれぞれ接続されたスイッチを切換えることによって機械的にDAS13に入力されるデータを選択する方法と、X線検出器12からDAS13に入力されたX線検出データを位置に応じて取捨選択するフィルタ処理を実行することによってDAS13から出力されるデータを選択する方法が挙げられる。
【0062】
スイッチのON/OFFの切換によってビューデータの空間分割を行う場合には、伝送データ制御部20からX線検出器12にスイッチの切換制御信号を出力することによって、ビューデータの空間分割を行うことができる。一方、DAS13から出力されるデータを特定の分割領域に対応するデータとする場合には、伝送データ制御部20に分割領域に応じたフィルタ処理機能を設けることによって、ビューデータの空間分割を行うことができる。
【0063】
また、ビューデータの分け方としては、任意の方法とすることができる。従って、時分割の場合と同様な方法でX線検出素子に対応する二次元領域を複数のエリアに分割し、1回転で1つのエリアからのデータを動作検証用に収集することができる。すなわち、X線検出素子の列ごとにデータを収集する方法やX線検出素子の列又はチャネルを基準に設定されたX線検出器12の複数のエリアごとにデータを収集する方法によって、非圧縮データを1/nのサイズのデータに空間分割することができる。
【0064】
そして、回転部9の回転毎に異なる分割エリアからデータを収集して伝送することにより、動作検証用の非圧縮データを1/nの伝送レートでリアルタイムにDAS13からデータ処理部5に伝送することができる。
【0065】
具体例として、
図5に示すように各ビューデータに対してチャネル方向にn個の分割エリアが作成されている場合には、1回転目で0チャネルからX/nチャネルまでのデータが全ての回転位置で収集され、圧縮されずにデータ処理部5に伝送される。次の回転では、X/n+1チャネルから2X/nチャネルまでのデータが全ての回転位置で収集され、圧縮されずにデータ処理部5に伝送される。そして、同様に、(n-1)X/n+1チャネルからX/nチャネルまでのデータが収集及び伝送されるまで、回転部9の回転が繰り返される。
【0066】
この結果、n回に亘る回転部9の回転により、全てのチャネルのデータを非圧縮かつ1回の回転で収集した場合の1/nの伝送レートでデータ処理部5に伝送することができる。このため、全てのチャネルに対応する非圧縮データのサイズの1/nの伝送レートしか保証されていないデータ伝送路16A、16Bを介して、回転部9の1回転分の全てのチャネルに対応する非圧縮のビューデータを伝送することができる。
【0067】
また、別の具体例として、各ビューデータを奇数列に対応するデータと偶数列に対応するデータの2つのデータに空間分割する場合には、1回転目で奇数列からのデータを収集及び伝送し、2回転目で偶数列からのデータを収集及び伝送することによって、1/2に分割したビューデータを非圧縮で1/2の伝送レートでデータ処理部5に伝送することができる。
【0068】
列を基準にした空間分割を一般化すると、i回転目で[Y/n]*n +(i mod n)番目の列からのデータを収集及び伝送すればよいことになる。尚、Yは列の総数であり、[]は最小の自然数を与える演算子である。
【0069】
この他、時分割の場合と同様に、データに不具合が発生した場合に、不具合が発生したデータに対応するX線検出素子の近傍におけるX線検出素子からのデータや不具合が発生したデータに対応する回転角度のビューデータの割合が高くなるように一部の位置に対応するデータを用いて動作検証用のデータを作成することもできる。すなわち、所定の範囲内の回転角度、チャネル及び列に対応するデータの割合が高くなるように、不均等に選択された一部の位置に対応するデータを動作検証用の非圧縮データとして空間分割してDAS13から伝送することができる。
【0070】
上述したように非圧縮モードでは、非圧縮データを時分割して遅延伝送する伝送制御方法と、回転部9の動作と連動して空間分割した非圧縮データをリアルタイム伝送する伝送制御方法のいずれかによって非圧縮データを本来の伝送レートよりも低い伝送レートで伝送することができる。但し、一方の伝送制御方法で伝送データを制御する機能を省略してもよい。
【0071】
特に、非圧縮データを時分割して遅延伝送する機能を省略すれば、データ保存部19を省略することができる。従って、回転部9の1回転分に相当するビューデータを保存することが可能な大容量ストレージをDAS13に設けなくても非圧縮モードでの動作を行うことが可能である。例えば、1回転で2000[view]のビューデータが収集される場合には、1[GB]程度の容量を有するストレージが必要となるが、充分なストレージを備えていない既存のDAS13であっても非圧縮モードで動作させることができる。
【0072】
また、データ再送の制御や停電への対応機能等の他の制御や処理に起因する制約から、タイムシフトさせてデータを後段に伝送する仕組みを設けることができない場合がある。このような場合には、大容量ストレージがDAS13に具備されていてもデータの遅延伝送が困難となるが、空間分割によって非圧縮モードの動作が可能となる。
【0073】
検証用データ送信部21Aは、コンソール6から入力された指示情報に従って、DAS13からデータ処理部5に伝送されるデータにノイズやエラー等の異常が発生した場合に、リファレンスパターンとして非可逆的に圧縮された動作検証用のデータをデータ処理部5に送信する機能と、コンソール6又はデータ処理部5からDAS13にリファレンスパターンが送信された場合に、DAS13から送信したリファレンスパターンとDAS13において受信されたリファレンスパターンとを比較することによって情報圧縮部18の動作を検証する機能を有する。
【0074】
検証用のリファレンスパターンは、データに発生した異常が、情報圧縮部18における情報圧縮処理に起因するのかX線検出器12やDAS13の他の部分に起因するのかを判別するためのデータである。
【0075】
そのために、リファレンスパターンは、圧縮率を1/nとして非可逆的な圧縮処理を行っても情報の欠落が発生しないデータとして予め作成され、検証用データ送信部21Aに保存される。換言すれば、非可逆的な圧縮処理によって圧縮すると、圧縮結果が必ず1/n以下となる圧縮結果が既知のデータをリファレンスパターンとして用いることができる。
【0076】
例えば、DAS13から出力されるデータのサイズが16bitの場合、0bit〜7bitまでの8bitに乱数値が入っており、8bit〜15bitまでの8bitに0等の固定値が入っているデータをリファレンスパターンとして作成することができる。そうすると、この16bitのリファレンスパターンは、情報量としては乱数値が入っている8bit分、つまり1/2の情報しか持っていないことになる。
【0077】
従って、8bit分を乱数値としたリファレンスパターンを情報圧縮部18にて非可逆圧縮方式の情報圧縮処理で圧縮すると、乱数値が入っている8bitは全く圧縮できないが固定値が入っている8bitはほぼ無限大、つまりサイズをゼロに圧縮することができる。このため、非可逆圧縮方式の情報圧縮であっても情報を欠落させることなく可逆的に圧縮率を1/2としてリファレンスパターンを圧縮することができる。
【0078】
もちろん、乱数値を8bit〜15bitまでの8bitに入れたリファレンスパターンやデータ中の任意のビットに乱数値を入れたリファレンスパターンを作成することもできる。また、リファレンスパターンの圧縮率は1/2に限らず任意の圧縮率1/nにすることができる。すなわち、乱数及び固定値を用いることによって可逆な範囲で所望の圧縮率1/nで非可逆圧縮できるリファレンスパターンを作成することができる。
【0079】
更に、乱数値に限らず、実際に収集されたデータを用いてリファレンスパターンを作成することもできる。例えば、収集データの一部を固定値でマスクしたビットマスクデータを作成すれば、1/n以下の圧縮率で非可逆圧縮することが可能なリファレンスパターンを作成することができる。具体例として、収集データの半分をゼロ詰めしたデータであれば、圧縮率が1/2以下のリファレンスパターンとして用いることができる。
【0080】
加えて、収集データが16bitの場合、下位8bitだけを取り出し、隣接位置のデータとビットパッキング (ビット列として連結) すれば、2つのX線検出素子のデータを1つ分の16bitデータに詰め込むことも可能である。この場合、下位8bitに限れば、非圧縮で1/2の伝送レートでデータ転送が可能となり、空間分割の場合と同じ要領にて、下位8bitについて検証が可能となる。
【0081】
取り出すビットの位置は下位に限るものではなく、上位8bitでも良いし、16bit中の任意のビットを取り出して検証に利用することができる。
【0082】
このように、一般には、収集データがW bitの場合、検証を行いたい任意のW/nビットを取り出し、n個のX線検出素子のデータを1つのW bitのデータにパッキングすることで、1/nレートで非圧縮データ転送を行い、該当するビットについて検証することができる。
【0083】
この他、市松模様や縞模様等の幾何学パターン或いは自然画像や合成画像に対応するデータなど、任意のデータをリファレンスパターンとして用いることができる。
【0084】
このようなリファレンスパターンは、DAS13内の検証用データ送信部21Aの他、コンソール6及びデータ処理部5の一方又は双方にも予めテストパターンとして保存しておくことができる。
図1は、コンソール6及びデータ処理部5の双方に、同様な機能を有する検証用データ送信部21B、21Cを設けた例を示している。従って、コンソール6又はデータ処理部5内の検証用データ送信部21B、21CとDAS13内の検証用データ送信部21Aとの間において相互に非可逆圧縮したリファレンスパターンを送信することができる。
【0085】
このため、コンソール6、データ処理部5及びDAS13のいずれにおいても、送受信したリファレンスパターンを互いに比較することが可能となる。リファレンスパターンの比較は、圧縮された状態又は伸長した状態のいずれにおいても行うことができる。伸長したリファレンスパターン同士を比較する場合には、リファレンスパターンの伸長処理を行う機能が各検証用データ送信部21A、21B、21Cに設けられる。
【0086】
そして、相互に伝送されたリファレンスパターンの比較によって情報圧縮部18の動作確認および不具合解析を行うことができる。具体的には、送受されたリファレンスパターンが互いに一致するか否か、或いは、送受されたリファレンスパターンの圧縮率が一致するか否かを判定することによって、情報圧縮部18に不具合があるか否かを検証することができる。この場合、リファレンスパターンを圧縮したときの圧縮率を計測する機能を、各検証用データ送信部21A、21B、21Cに設ければよい。
【0087】
情報圧縮部18の不具合は、特定の回転速度や特定の回転位置でしか発生しない場合も考えられる。一方、非圧縮モードでは非圧縮データがDAS13から出力されるため、情報圧縮部18において圧縮処理が実行されず、情報圧縮部18の動作の検証が困難となる恐れがある。従って、回転部9を1回転させて収集される圧縮データを用いて情報圧縮部18の動作検証を行えるようにすることが望ましい。
【0088】
そこで、上述したリファレンスパターンをX線検出素子1列分程度作成しておけば、所望の回転速度及び回転角度においてリファレンスパターンを圧縮及び伝送することによって圧縮データを用いた情報圧縮部18の動作検証を効果的に行うことができる。更に、複数の作成方法で作成された異なる種類の複数のリファレンスパターンを準備しておけば、情報圧縮部18の動作確認を一層効果的に行うことができる。
【0089】
尚、リファレンスパターンを用いた情報圧縮部18の動作検証は、データに異常が発生した場合に限らず、毎日のX線CT装置1の電源投入時など定期的に行うこともできる。その場合においても、X線検出素子1列分程度のリファレンスパターンをDAS13に保存できれば、各回転角度において圧縮データを伝送することができる。このため、DAS13に大容量のストレージを設けることが困難な場合であっても、リファレンスパターンを用いた情報圧縮部18の動作検証が可能である。
【0090】
送信器14は、DAS13から出力された伝送データを回転部9から非回転部10にデータ伝送路16Aを介して送信する機能を有する。また、受信器15は、送信器14から送信された伝送データを受信してデータ伝送路16Bを介してデータ処理部5に送信する機能を有する。
【0091】
制御部4は、コンソール6から入力された指示情報に従って、ガントリ3の回転部9の回転及び寝台2の移動を制御する制御装置である。これらの制御によって、ヘリカルスキャンや任意の寝台位置でのスキャンを実行することができる。また、非圧縮モードにおいて、回転部9の回転と連動した非圧縮データの空間分割が可能となる。すなわち、制御部4による制御下において、特定の寝台位置においてn回回転部9を回転させてデータ収集を行うことができる。
【0092】
データ処理部5は、コンピュータにX線CT装置1のデータ処理プログラムを読み込ませることにより構築することができる。但し、データ処理部5を構成するために回路を用いてもよい。データ処理部5は、情報伸長部22、補正処理部23、画像再構成部24及び検証用データ送信部21Cとして機能する。
【0093】
情報伸長部22は、DAS13から伝送経路を得て伝送された圧縮データに対して情報伸長処理(解凍処理)を施すことによって非圧縮データとして投影データを取得する機能を有する。補正処理部23は、非圧縮の投影データに対して必要な補正処理を施す機能を有する。画像再構成部24は、補正処理後における投影データに画像再構成処理を施すことによって、被検体の断層像データとしてX線CT画像データを再構成する機能を有する。検証用データ送信部21Cの機能は上述した通りである。
【0094】
また、データ処理部5において生成されたX線CT画像データは、表示装置7に表示させたり、或いは、画像データベース8に書き込んで保存することができる。
【0095】
コンソール6は、ユーザの操作によって制御部4やデータ処理部5等のX線CT装置1の所望の構成要素に指示情報を入力するための入力装置である。具体的には、ハードキー、マウス、電子キー等の入力装置によってコンソール6を構成することができる。また、情報を表示させるための簡易なパネルをコンソール6に設けることができる。
【0096】
データ伝送路16A、16Bは、上述のようにDAS13から出力された伝送データをデータ処理部5に伝送するための経路である。データ伝送路16A、16Bには、DAS13から1/nに圧縮された投影データを伝送する場合に必要な伝送レートが保証された伝送手段が用いられる。
図1に示す例では、DAS13側の送信器14と非回転部10の受信器15との間は、無線によるデータ伝送路16Aが形成されており、受信器15とデータ処理部5との間は、信号線により有線のデータ伝送路16Bが形成されている。
【0097】
上述のような構成要素の備えたX線CT装置1では、X線照射部11及びX線検出器12を含む回転部9とDAS13の情報圧縮部18が、被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線の検出データを収集して非可逆圧縮方式で圧縮することにより圧縮データを生成するデータ収集手段として機能している。また、データ処理部5は、データ収集手段から伝送経路を介して伝送された圧縮データに基づいて被検体のX線CT画像データを生成するデータ処理手段として機能している。
【0098】
更に、DAS13の伝送データ制御部20が、入力装置からの情報に従って、圧縮されていないX線の検出データを検証データとして圧縮データの伝送レート以下の伝送レートで伝送経路を介してデータ処理手段に伝送させる検証手段として機能している。
【0099】
また、データ保存部19が、被検体を透過したX線の検出データの一部又は全部を検証データとして保存するデータ保存手段として機能するため、伝送データ制御部20が、入力装置からの情報に従って、データ保存手段に保存された検証データを時分割してデータ処理手段に伝送する検証手段として機能する。
【0100】
更に、X線照射部11及びX線検出器12を含む回転部9とDAS13の情報圧縮部18が、入力装置からの情報に従って、被検体を透過したX線の検出データを、空間分割された複数の分割データとして収集するデータ収集手段としても機能するため、伝送データ制御部20が、入力装置からの情報に従って、複数の分割データを検証データとしてデータ処理手段に順次伝送する検証手段として機能する。
【0101】
一方、DAS13の検証用データ送信部21Aは、入力装置からの情報に従って、非可逆圧縮方式で圧縮した場合の圧縮率が既知のリファレンスデータを非可逆圧縮方式で圧縮し、圧縮データの伝送レート以下の伝送レートで伝送経路を介してデータ処理手段及び入力装置の少なくとも一方に伝送する検証手段として機能している。
を更に備え、
【0102】
尚、
図1に例示されるX線CT装置1の構成に限らず、上述した機能をX線CT装置1に備えることができれば、他の構成要素の組合せによってX線CT装置1を構成することができる。
【0103】
次にX線CT装置1の動作および作用について説明する。
【0104】
X線CT装置1により被検体の検査を実行する場合には、コンソール6の操作によってDAS13にモードの選択情報が入力され、圧縮モードが選択される。そして、回転部9とともにX線照射部11及びX線検出器12が被検体の周囲を回転し、X線照射部11から被検体に向けてX線が曝射される。これにより被検体を透過したX線は、X線検出器12により検出され、X線検出データとしてDAS13に出力される。
【0105】
尚、X線照射部11及びX線検出器12は、被検体の周囲を回転するため、異なるX線照射部11及びX線検出器12の複数の回転角度に対応するX線検出データがX線検出器12において検出されることとなる。そして各回転角度に対応する二次元のX線検出データは、ビューデータとして順次DAS13に出力される。
【0106】
次に、DAS13の信号処理部17において、X線検出データの増幅、積分処理、A/D変換処理、対数変換処理等の信号処理が施され、投影データが生成される。生成された投影データは、情報圧縮部18における非可逆圧縮方式によるデータ圧縮処理によって圧縮される。これにより、投影データを低い伝送レートでデータ処理部5に伝送することが可能となる。
【0107】
例えば、ガントリ3の回転部9が1秒間に2回転し、1000チャネル×250列のX線検出素子を備えたX線検出器12を用いて1回転当たり2000回X線の検出が行われる場合には、1つのX線検出素子から出力されるデータが16bitであれば16GbitのデータがDAS13に入力される。このため、1回の検査時間が50秒であれば、1回の検査当たり100回転分のデータが収集されるため、1回の検査で収集されるデータの総サイズは、16Gbit×50/8bit=100GByteとなる。実際には、上述したデータの他に、ガントリ3の回転位置、照射されたX線量、寝台の位置等の情報が付帯情報として付加される。
【0108】
従って、仮に情報圧縮を行なわないとすると、上述したサイズのデータを伝送することが可能な高い伝送レートが保証された非接触式又は光伝送式のデータ伝送路が必要となる。加えて、データ処理部5には、上述したサイズのデータを保存することが可能な大容量のストレージが必要となる。このため、データ伝送及びデータ保存のためのコストが非常に高くなる。
【0109】
逆に、上述したデータのサイズと比較して低い伝送レートが保証されたデータ伝送路を用いると伝送レートが不足する。このため、データのリアルタイム伝送が不可能となる。この結果、100GByteものデータをDAS13に保存するためのストレージが必要となる。従って、DAS13に備えるべきストレージのコストが増大するのみならず、データの伝送のために検査時間の2倍の100秒程度の時間を要することになる。
【0110】
これに対して、情報圧縮部18により投影データの圧縮処理を実行することにより、非圧縮データを伝送する場合に比べて大幅に低い伝送レートでリアルタイムに投影データを伝送することが可能となる。このため、DAS13に備えるべきストレージのコストの増加やデータ伝送の遅延を回避することができる。
【0111】
情報圧縮部18において圧縮された投影データは、圧縮データとして送信器14、無線によるデータ伝送路16A、受信器15及び有線のデータ伝送路16Bを介して保証された伝送レート以下の伝送デートでリアルタイムにデータ処理部5に伝送される。
【0112】
データ処理部5に伝送された圧縮データは、情報伸長部22において順次情報伸長処理される。そうすると、補正処理部23は、情報伸長処理によって得られた非圧縮の投影データに対して必要な補正処理を施す。次に、画像再構成部24は、補正後の投影データに対して画像再構成処理を施すことによって、X線CT画像データを再構成する。再構成されたX線CT画像データは、表示装置7に表示させることができる。また、必要なX線CT画像データは、画像データベース8に保存される。
【0113】
一方、DAS13の動作を検証する場合には、コンソール6の操作によってDAS13にモードの選択情報が入力され、非圧縮モードが選択される。DAS13の動作検証は、患者の撮影前、毎日のX線CT装置1の初回起動時或いはデータに異常が現れた場合など任意のタイミングで行うことができる。例えば患者の撮影前やX線CT装置1の初回起動時には、X線CT装置1の動作確認のためにX線をOFFにした場合にX線検出器12から出力されるデータやAIRキャリブレーションデータが動作検証用のデータとして取得される。
【0114】
また、X線検出器12やDAS13の信号処理部17に備えられるA/D変換器が故障すると、特定の列や特定のチャネルのデータに異常が発生することがある。更に、データの異常は、最大の回転速度など特定の回転速度や特定の回転位置でしか発生しないことがある。
【0115】
このような場合、故障している機器を特定するためにX線をOFFにした場合にX線検出器12から出力されるデータ或いは水や所定のファントムを被検体として得られるX線検出データなど、特定の条件における1回転分程度のデータが動作検証用のデータとして収集される。
【0116】
しかしながら、動作検証用のデータを圧縮してDAS13から伝送すると、動作検証用のデータに異常が生じた場合に、異常がX線検出器12やA/D変換器の故障に起因するのか、或いは非可逆的な情報圧縮による圧縮誤差に起因するのかを判別することができない。
【0117】
そこで、動作検証用のデータの収集及び伝送の際には、非圧縮モードが選択される。そして、動作検証用のデータは圧縮されずに非圧縮データとしてDAS13からデータ処理部5に伝送される。但し、データ伝送経路において伝送レートの不足によってデータの不完全な伝送が発生しないように、動作検証用の非圧縮データが分割されて伝送される。
【0118】
具体的には、動作検証用の非圧縮データが、圧縮データ用に保証されたデータ伝送経路の伝送レート以下の伝送レートで伝送されるように時分割又は空間分割される。以下、動作検証用の非圧縮データを時分割する場合と空間分割する場合とに分けて説明する。
【0119】
まず、動作検証用の非圧縮データを時分割する場合について説明する。
【0120】
図6は、
図1に示すX線CT装置1の非圧縮モードにおいて、予め保存されたビューデータを時分割して非圧縮の検証データとして遅延伝送する場合の流れを示すフローチャートである。
【0121】
まずステップS1において、圧縮モードにおけるビューデータの収集と同様な流れで、X線照射部11及びX線検出器12を含む回転部9を所定の回転角度に回転させて動作検証用のX線検出データがビューデータとして収集される。収集されたビューデータは、X線検出器12からDAS13に出力され、信号処理部17においてA/D変換を含む信号処理が施された後、データ保存部19に保存される。
【0122】
そして、このようなビューデータの収集及び保存は、ステップS2において、DAS13の動作検証ために必要な所定ビュー数V[view]だけビューデータが収集されたと判定されるまで繰り返される。例えば、DAS13の動作検証ために回転部9の1回転分のビューデータが必要であれば、コンソール6から制御部4に回転部9の回転数、回転位置及びビューデータの収集対象となる回転角度が入力される。そして、制御部4の制御下において回転部9が回転し、順次ビューデータがDAS13に収集及び保存される。
【0123】
一方、DAS13の伝送データ制御部20には、制御部4からビューデータの数V[view]が通知され、伝送データ制御部20はステップS2における判定を行う。そして、動作検証ために必要なビュー数V[view]のビューデータが収集及び保存されたと伝送データ制御部20が判定すると、伝送データ制御部20はステップS3において、データ保存部19に保存されたV[view]の全てのビューデータをそれぞれn個に分割する。
【0124】
この結果、DAS13においてV×n個の分割データが生成される。例えば、1つのビューデータを、
図5のようにn個の分割データに分割することができる。このため、生成された各分割データのサイズは、それぞれ1つのビューデータのサイズの1/nとなる。尚、分割方法については、予めコンソール6から指示情報を伝送データ制御部20に制御部4を通じて入力することによって決定しておくことができる。
【0125】
次に、ステップS4において、伝送データ制御部20は、初期データとして予め設定された分割データを非圧縮のまま送信器14、データ伝送路16A、受信器15及びデータ伝送路16Bを介して保証された伝送レート以下の伝送デートでデータ処理部5に伝送させる。
【0126】
そして、分割データの伝送は、ステップS5において伝送データ制御部20によりV×n個の分割データが伝送されたと判定されるまで繰り返される。この結果、V×n個の分割データがシーケンシャルにデータ処理部5に順次伝送される。すなわちステップS5における判定において伝送データ制御部20がYESと判定すると、V[view]の全てのビューデータのデータ処理部5への伝送が完了することとなる。
【0127】
次に、動作検証用の非圧縮データを空間分割する場合について説明する。
【0128】
図7は、
図1に示すX線CT装置1の非圧縮モードにおいて、空間分割して収集されたビューデータの複数の分割データを非圧縮の検証データとして順次伝送する場合の流れを示すフローチャートである。
【0129】
まずステップS11において、伝送データ制御部20により、X線検出器12のX線検出素子に対応する二次元領域がn個の分割エリアに分割される。具体例としては、
図5に示すような分割方法が挙げられる。分割方法については、コンソール6から指示情報を伝送データ制御部20に制御部4を通じて入力することによって決定することができる。
【0130】
次に、ステップS12において、最初にデータの収集対象となる分割エリアが設定される。この分割エリアの設定方法も、コンソール6から指示情報を伝送データ制御部20に制御部4を通じて入力することによって決定することができる。
【0131】
次に、ステップS13において、制御部4による制御下におけるX線照射部11及びX線検出器12を含む回転部9の駆動により、設定された分割エリアからデータが収集される。収集されたデータはX線検出器12からDAS13に出力される。更に、信号処理部17においてA/D変換を含む信号処理が実行される。
【0132】
次に、ステップS14において、伝送データ制御部20は、信号処理後のデータを非圧縮のままDAS13から送信器14、データ伝送路16A、受信器15及びデータ伝送路16Bを介して保証された伝送レート以下の伝送デートでデータ処理部5に伝送させる。このため、分割エリアから収集されたデータは、リアルタイムにデータ処理部5に伝送されることとなる。
【0133】
そして、ステップS12において設定された分割エリアからのデータ収集及び収集データのデータ処理部5への伝送が、ステップS15において伝送データ制御部20により回転部9の1回転分について完了したと判定されるまで、回転部9の異なる回転角度において実行される。
【0134】
このため、ステップS15において伝送データ制御部20によりYESと判定されると、データ処理部5にはステップS12において設定された分割エリアからの回転部9の1回転分に相当するデータが伝送されることとなる。
【0135】
更に、回転部9の1回転分のデータの収集及び収集データのデータ処理部5への伝送は、ステップS16において、伝送データ制御部20によりn個の全ての分割エリアからのデータ収集が完了したと判定されるまで、データ収集の対象となる分割エリアを変えて繰り返される。
【0136】
このため、ステップS16において伝送データ制御部20によりYESと判定されると、データ処理部5にはn個の全ての分割エリアからの回転部9の1回転分に相当するデータ、つまり回転部9の1回転分に相当するビュー数V[view]のビューデータが伝送されることとなる。
【0137】
尚、上述の時分割又は空間分割された動作検証用の非圧縮のビューデータのDAS13からの伝送先をデータ処理部5の代わりに、或いはデータ処理部5に加えてコンソール6としてもよい。
【0138】
動作検証用のビューデータの伝送が完了すると、ユーザは伝送された動作検証用のビューデータを参照することによってDAS13及びX線検出器12の動作検証を行うことができる。すなわち、非圧縮データとして伝送された動作検証用のビューデータに異常が発生していれば、A/D変換器やX線検出器12に故障の疑いがあることになる。
【0139】
そこで、次に動作検証用のビューデータを非可逆圧縮してDAS13からデータ処理部5及びコンソール6の一方又は双方に伝送し、伝送されたビューデータの圧縮率や圧縮によるビューデータの歪量を測定することにより、DAS13やX線検出器12の動作を確認することができる。そのための、圧縮率や圧縮による歪量の計算機能は、通常のDAS13に備えられている。具体的には、動作検証用のビューデータの圧縮率や圧縮による歪量に対する閾値処理によって、DAS13やX線検出器12の他、X線管の管球の経年変化や故障等の不具合を検出又は予測することができる。
【0140】
一方、非圧縮データとして伝送された動作検証用のビューデータに異常が発生していなければ、A/D変換器やX線検出器12に故障の疑いがないことになる。この場合、必要に応じて、コンソール6、データ処理部5及びDAS13の各検証用データ送信部21A、21B、21Cから相互に圧縮率が既知のリファレンスデータを非可逆圧縮して伝送することができる。そして、送受されたリファレンスパターン或いはリファレンスパターンの圧縮率が一致するか否かを、コンソール6、データ処理部5及びDAS13のいずれかにおいて比較判定することによって、DAS13の情報圧縮部18に不具合があるか否かを検証することができる。
【0141】
つまり以上のようなX線CT装置1は、被検体の検査の際にはDAS13からX線CT画像データを生成するためのデータ処理部5までビューデータを非可逆圧縮して伝送する一方、DAS13などの動作検証のためにDAS13からデータ処理部5まで非圧縮でビューデータを伝送できるようにしたものである。そして、非圧縮のビューデータを伝送する際に、伝送レート不足とならないように、ビューデータを時分割又は空間分割することによって保証されている伝送レート以下で伝送できるようにしたものである。
【0142】
加えて、X線CT装置1は、DAS13内の情報圧縮部18に不具合があるか否かを検証するために、圧縮率が既知のリファレンスデータを、コンソール6、データ処理部5及びDAS13の間において相互に伝送できるようにしたものである。
【0143】
このため、X線CT装置1によれば、情報圧縮によるデータ伝送のコストの増加を抑制しつつ、データに異常が発生した場合には、異常が情報圧縮に起因するのかその他の要因に起因するのかを速やかに検証することができる。すなわち、DAS13において、非可逆方式でデータを圧縮して伝送しても、X線検出器12やDAS13の動作検証を行うことができる。
【0144】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。