(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記両性界面活性剤(A)と前記カチオン性界面活性剤(B)との配合比率(質量比)が、両性界面活性剤(A):カチオン性界面活性剤(B)=40:60〜80:20であることを特徴とする、請求項1又は2記載の脱墨パルプの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪脱墨パルプの製造方法≫
本発明の脱墨パルプの製造方法は、印刷古紙を離解する離解工程と、異物を除去する除塵工程と、異物を細かく分散させる分散工程と、インキを除去する脱墨工程とを有する。
本発明では、前記の離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で、前記両性界面活性剤(A)を用いる。
また、前記の離解工程、分散工程及び脱墨工程のいずれか1以上の工程で、前記の両性界面活性剤(A)、カチオン性界面活性剤(B)及び非イオン性界面活性剤(C)のいずれか1以上の成分を用いることができる。
【0018】
脱墨パルプの原料となる印刷古紙は、印刷された紙類であればよく、新聞古紙、雑誌古紙、雑紙、チラシ古紙、色上古紙、模造紙等の中質古紙、低質古紙などが挙げられる。本発明の脱墨パルプの製造方法は、未剥離インキが多く残留しやすい新聞古紙に対して特に有用である。
新聞用紙は近年中性化が進んでおり、中性新聞の中には極めて未剥離インキが残留しやすいものがある。中性新聞は紙面pHが5.5以上であるが、抄紙時に炭酸カルシウムを高配合する場合も多い。この場合、JIS P8251で規定される525℃燃焼法での灰分が10%以上であること、又は、当該525℃燃焼法での灰分とJIS P8252で規定される900℃燃焼法での灰分との差が2%以上であることが多い。本発明は、このような中性新聞を含む印刷古紙に対して特に優れた効果を発揮する。
【0019】
<両性界面活性剤(A)>
両性界面活性剤(A)(以下「(A)成分」という。)は、下記の一般式(A−1)及び一般式(A−2)のいずれかで表されるものである。
【0020】
【化4】
[式(A−1)中、R
1は炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基である。式(A−2)中、R
4は炭素数7〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、R
5及びR
6はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基である。]
【0021】
前記式(A−1)中、R
1は、炭素数8〜24のアルキル基、又は炭素数8〜24のアルケニル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R
1のアルキル基、アルケニル基における炭素数は、それぞれ10〜22が好ましく、12〜18がより好ましい。なかでも、R
1は、炭素数8〜24のアルキル基であることが好ましい。
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基であり、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
前記式(A−2)中、R
4は、炭素数7〜23のアルキル基、又は炭素数7〜23のアルケニル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R
4のアルキル基、アルケニル基における炭素数は、それぞれ7〜21が好ましく、7〜17がより好ましい。
なかでも、R
4は、炭素数7〜23のアルキル基であることが好ましく、ヤシ油由来のアルキル基であることがより好ましい。
R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基であり、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
【0022】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分としては、前記一般式(A−1)で表される両性界面活性剤を用いることが好ましく、前記R
1が炭素数12〜18のアルキル基、前記のR
2及びR
3がそれぞれメチル基であるものを用いることが特に好ましい。
(A)成分の使用量は、印刷古紙由来のパルプの絶乾質量(以下「絶乾パルプ質量」という。)に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、0.02〜1.0質量%がより好ましい。(A)成分の使用量が好ましい下限値以上であれば、印刷古紙からのインキ剥離効果が充分に得られる。一方、上限値を超えても、使用量の増加分に応じたインキ剥離効果の向上が見られず、またコストが増加して経済的でない。
【0023】
<カチオン性界面活性剤(B)>
カチオン性界面活性剤(B)(以下「(B)成分」という。)は、下記の一般式(B−1)及び一般式(B−2)のいずれかで表されるものである。
【0024】
【化5】
[式(B−1)中、R
7及びR
8はそれぞれ独立に炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基又はβ−ヒドロキシアルキル基である。R
9及びR
10はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基又は一般式−(AO)n
1−Hで表される基(式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。n
1はオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜20の数である。)である。X
1−は対イオンである。式(B−2)中、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基又は一般式−(AO)n
2−Hで表される基(式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。n
2はオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜20の数である。)である。R
14は炭素数8〜36のアルキル基、アルケニル基又はβ−ヒドロキシアルキル基である。X
2−は対イオンである。]
【0025】
前記式(B−1)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、炭素数8〜24のアルキル基、炭素数8〜24のアルケニル基、又は炭素数8〜24のβ−ヒドロキシアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R
7及びR
8のアルキル基、アルケニル基、β−ヒドロキシアルキル基における炭素数は、それぞれ8〜22が好ましく、8〜18がより好ましく、8〜12がさらに好ましい。なかでも、R
7及びR
8は、それぞれ炭素数8〜24のアルキル基であることが好ましい。
R
9及びR
10は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基、又は一般式−(AO)n
1−Hで表される基である。R
9及びR
10におけるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。R
9及びR
10における一般式−(AO)n
1−Hで表される基について、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、一種単独であっても二種以上が混在していてもよく、二種以上が混在している場合、これらがブロック状又はランダム状に配列していてもよい。n
1はオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜20の数であり、1〜10の数であることが好ましく、1〜5の数であることがより好ましい。なお、AOが二種以上からなる場合、n
1はそれらの合計を示す。なかでも、R
9及びR
10は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
X
1−は対イオンであり、ハロゲンイオン、アルキル硫酸イオン等が挙げられる。X
1−がハロゲンイオンである場合、ハロゲンイオンを構成するX
1としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。X
1−がアルキル硫酸イオンである場合、アルキル硫酸イオンを構成するX
1としては、炭素数1〜3のアルキル基を有するものが好ましい。なかでも、X
1−はハロゲンイオンであることが好ましい。
【0026】
前記式(B−2)中、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基、又は一般式−(AO)n
2−Hで表される基である。R
11、R
12及びR
13におけるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。R
11、R
12及びR
13における一般式−(AO)n
2−Hで表される基について、AO、n
2は、前記一般式−(AO)n
1−H中のAO、n
1とそれぞれ同じ意味である。なかでも、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。
R
14は、炭素数8〜36のアルキル基、炭素数8〜36のアルケニル基、又は炭素数8〜36のβ−ヒドロキシアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R
14のアルキル基、アルケニル基、β−ヒドロキシアルキル基における炭素数は、それぞれ10〜24が好ましく、12〜18がより好ましい。なかでも、R
14は、炭素数8〜36のアルキル基であることが好ましい。
X
2−は対イオンであり、前記X
1−と同じ意味である。
【0027】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(B)成分としては、前記一般式(B−1)で表されるカチオン性界面活性剤を用いることが好ましく、前記のR
7及びR
8がそれぞれ独立に8〜18のアルキル基、前記のR
9及びR
10がそれぞれメチル基であるものを用いることが特に好ましい。
(B)成分として前記一般式(B−2)で表されるカチオン性界面活性剤を用いる場合、前記のR
11、R
12及びR
13がそれぞれメチル基、前記R
14が12〜18のアルキル基であるものを用いることが好ましい。
(B)成分の使用量は、絶乾パルプ質量に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、0.02〜1.0質量%がより好ましい。(B)成分の使用量が好ましい下限値以上であれば、印刷古紙から剥離した遊離インキの除去効果が充分に得られ、また、フローテーション時に発生する泡の破泡性がより良好となる。一方、上限値を超えても、使用量の増加分に応じた遊離インキの除去効果、破泡性の向上が見られず、またコストが増加して経済的でない。
【0028】
<非イオン性界面活性剤(C)>
非イオン性界面活性剤(C)(以下「(C)成分」という。)は、下記一般式(C−1)〜(C−5)のいずれかで表されるものである。
【0029】
【化6】
[式(C−1)中、R
15は水素原子、炭素数8〜24のアルキル基若しくはアルケニル基、又は上記一般式(C−1−0)で表される基(式中、Yは上記の化学式(C−1−01)、(C−1−02)又は(C−1−03)のいずれかで表される基である。aは平均置換度を表し、0〜3の数である。)である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数である。]
【0030】
前記式(C−1)中、R
15は、水素原子、炭素数8〜24のアルキル基若しくは炭素数8〜24のアルケニル基、又は上記一般式(C−1−0)で表される基(式中、Yは上記の化学式(C−1−01)、(C−1−02)又は(C−1−03)のいずれかで表される基である。aは平均置換度を表し、0〜3の数である。)である。
R
15におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、8〜22が好ましく、10〜18がより好ましい。
R
15における一般式(C−1−0)で表される基(フェノール誘導体残基)について、Yは、上記化学式(C−1−01)で表される基であることが好ましい。aは、0〜3の数であることが好ましい。
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、一種単独であっても二種以上が混在していてもよく、二種以上が混在している場合、これらがブロック状又はランダム状に配列していてもよい。mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数であり、1〜35の数であることが好ましく、5〜25の数であることがより好ましい。なお、AOが二種以上からなる場合、mはそれらの合計を示す。AOは、オキシエチレン基のみ、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在したものが好ましい。
前記式(C−1)で表される非イオン性界面活性剤としては、高級アルコール若しくはフェノール誘導体と、アルキレンオキシドとの付加反応により得られた反応生成物などを用いることができる。
【0031】
【化7】
[式(C−2)中、Gはグリセリン残基である。Z
1〜Z
3はグリセリンの水酸基に由来する酸素原子と直接結合し、それぞれ独立に水素原子、一般式−(AO)s−C(=O)−R
16で表される基、一般式−(AO)t−Hで表される基又は一般式−C(=O)−R
17で表される基(式中、R
16及びR
17はそれぞれ水素原子、又は炭素数7〜23のアルキル基若しくはアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。s及びtはそれぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数である。)である。式(C−3)中、R
18は炭素数7〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、R
19は水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくはアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。oはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数である。式(C−4)中、R
20は水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくはアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数である。]
【0032】
前記式(C−2)中、Gはグリセリン残基である。
Z
1〜Z
3は、グリセリンの水酸基に由来する酸素原子と直接結合し、それぞれ独立に、水素原子、一般式−(AO)s−C(=O)−R
16で表される基、一般式−(AO)t−Hで表される基、又は一般式−C(=O)−R
17で表される基である。すなわち、Z
1〜Z
3の構造は、相互に同一であっても相異なっていてもよい。
一般式−(AO)s−C(=O)−R
16で表される基について、R
16は、水素原子、又は炭素数7〜23のアルキル基若しくは炭素数7〜23のアルケニル基である。R
16におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、それぞれ11〜17が好ましい。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、一種単独であっても二種以上が混在していてもよく、二種以上が混在している場合、これらがブロック状又はランダム状に配列していてもよい。sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数であり、1〜50の数であることが好ましく、10〜40の数であることがより好ましい。なお、AOが二種以上からなる場合、sはそれらの合計を示す。
一般式−(AO)t−Hで表される基について、AO、tは、前記のAO、sとそれぞれ同じ意味である。
一般式−C(=O)−R
17で表される基について、R
17は、水素原子、又は炭素数7〜23のアルキル基若しくは炭素数7〜23のアルケニル基である。R
17におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、それぞれ11〜17が好ましい。
【0033】
前記式(C−3)中、R
18は、炭素数7〜23のアルキル基、又は炭素数7〜23のアルケニル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R
18のアルキル基、アルケニル基における炭素数は、それぞれ11〜17が好ましい。なかでも、R
18は、炭素数7〜23のアルキル基であることが好ましい。
R
19は、水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくは炭素数8〜24のアルケニル基である。R
19におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、それぞれ12〜18が好ましい。AO、oは、前記式(C−2)におけるAO、sとそれぞれ同じ意味である。
【0034】
前記式(C−4)中、R
20は、水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくは炭素数8〜24のアルケニル基である。R
20におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、それぞれ12〜18が好ましい。AO、pは、前記式(C−2)におけるAO、sとそれぞれ同じ意味である。
【0035】
前記式(C−2)〜(C−4)のいずれかで表される非イオン性界面活性剤としては、油脂とアルコールとの混合物と、アルキレンオキシドとの付加反応により得られる反応生成物などを用いることができる。
【0036】
【化8】
[式(C−5)中、Dは多価カルボン酸又はその酸無水物の残基である。AAは多価カルボン酸又はその酸無水物のカルボキシ基中の−OHに由来する酸素原子と直接結合し、水素原子又は−(AO)q−R
21で表される基(式中、R
21は水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくはアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。qはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数である。)である。Dに結合するAAの個数は分子中のカルボキシ基の数に依存し、AAが複数存在する場合、AAの構造は相互に同一であっても相異なっていてもよい。]
【0037】
前記式(C−5)中、Dは、多価カルボン酸又はその酸無水物の残基である。
AAは、多価カルボン酸又はその酸無水物のカルボキシ基中の−OHに由来する酸素原子と直接結合し、水素原子又は−(AO)q−R
21で表される基である。
Dに結合するAAの個数は分子中のカルボキシ基の数に依存し、AAが複数存在する場合、AAの構造は相互に同一であっても相異なっていてもよい。
AAにおける−(AO)q−R
21で表される基について、R
21は、水素原子、又は炭素数8〜24のアルキル基若しくは炭素数8〜24のアルケニル基である。R
21におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は、それぞれ12〜18が好ましい。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、一種単独であっても二種以上が混在していてもよく、二種以上が混在している場合、これらがブロック状又はランダム状に配列していてもよい。qはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1以上の数であり、1〜200の数であることが好ましく、50〜150の数であることがより好ましい。なお、AOが二種以上からなる場合、qはそれらの合計を示す。
前記式(C−5)で表される非イオン性界面活性剤としては、多価カルボン酸若しくはその酸無水物と、アルキレンオキシドとの付加反応により得られた反応生成物、又は、多価カルボン酸若しくはその酸無水物とアルコールとの混合物と、アルキレンオキシドとの付加反応により得られた反応生成物などを用いることができる。
【0038】
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(C)成分としては、前記一般式(C−1)で表される非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、そのなかでもポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルが特に好ましい。
これらの非イオン性界面活性剤は、前記(A)成分、又は、前記(A)成分及び前記(B)成分と共に使用することにより、(A)成分のインキ剥離効果がより向上し、又はフローテーターにおける遊離インキの除去効果と破泡性とが向上する効果が高まるため、本発明では好適に用いられる。
(C)成分の使用量は、絶乾パルプ質量に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、0.02〜1.0質量%がより好ましい。(C)成分の使用量が好ましい下限値以上であれば、インキ剥離効果、遊離インキの除去効果、破泡性がさらに向上する。一方、上限値を超えても、使用量の増加分に応じた効果が見られず、またコストが増加して経済的でない。
【0039】
<その他の成分>
本発明の脱墨パルプの製造方法においては、前記(A)〜(C)成分以外に公知の脱墨剤を用いてもよい。
この脱墨剤としては、非イオン性脱墨剤、アニオン性脱墨剤などが挙げられる。
非イオン性脱墨剤は、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、芳香族アルコールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、油脂アルキレンオキシド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加物、リン酸エステル系アルキレンオキシド付加物、多価カルボン酸アルキレンオキシド付加物などを用いることができる。ここでいうアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等がある。
アニオン性脱墨剤は、各種の脂肪酸、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル等を用いることができる。
かかる脱墨剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)〜(C)成分以外の脱墨剤の使用量は、絶乾パルプ質量に対して0.01〜3.0質量%であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の脱墨パルプの製造方法では、溶剤、ハイドロトロープ剤、苛性ソーダ、ケイ酸ソーダ、漂白薬剤(過酸化水素、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、ハイポ等)、キレート剤なども用いることができる。
溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、ジアルキルエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
ハイドロトロープ剤としては、炭素数1〜4の低級アルコール類;分子中に4〜10個の炭素原子を含み、かつ、芳香環を有するスルホン酸又はその塩;尿素、アルカノールアミン類などが挙げられる。
炭素数1〜4の低級アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
分子中に4〜10個の炭素原子を含み、かつ、芳香環を有するスルホン酸又はその塩の具体例としては、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホフタル酸、ナフタレンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩若しくはカリウム塩若しくはジエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0041】
<離解工程>
離解工程では、印刷古紙と水とを離解機に入れて離解させ、スラリー状物(懸濁液)を調製する。
離解工程で(A)〜(C)成分のいずれか1以上の成分を用いる場合は、印刷古紙と水と共に離解機に入れる。このとき、苛性ソーダを添加してもよい。苛性ソーダの添加量は、絶乾パルプ質量に対して0.1〜2.5質量%であることが好ましい。
離解工程では、離解工程後の離解液の固形分(パルプとその他成分を含む。以下同じ。)濃度が1〜30質量%、好ましくは2〜18質量%となるように、印刷古紙と水とこれ以外の成分とを加えて処理することが好ましい。
離解機には、低濃度パルパー、高濃度パルパー、ファイバーフローパルパー等を利用できる。
【0042】
<除塵工程>
除塵工程では、除塵装置を用いて、前記離解工程で調製されたスラリー状物中に含まれる粘着剤、雑誌の背糊、ビニールテープ、ポリヒモ、フィルム等の異物を除去する。
除塵装置には、スクリーン、クリーナー又はこれらを組み合わせたもの等のパルプ処理設備を利用できる。
【0043】
<分散工程>
分散工程では、主に、分散機を用いて、印刷古紙中のインキや粘着物などの異物を機械的に細かく砕いて分散させる。加えて、印刷古紙から未剥離インキを剥離させる。
分散工程で(A)〜(C)成分のいずれか1以上の成分を用いる場合は、離解液と共に分散機に入れる。
分散工程では、離解液を固形分濃度15〜40質量%程度、温度10〜130℃程度に調整したものを、分散機を用いて処理することが好ましい。かかる処理の前に、離解液を所望とする固形分濃度に容易に調整するため、離解液に対し、ワイヤーによる脱水等の濃縮処理を行うことが好ましい。
分散機には、軸タイプのニーダー型ディスパーザー、ディスクタイプのディスク型ディスパーザー、コニカル型ディスパーザー等を利用できる。分散機による分散処理は、1段処理でもよいが、分散効果がより高いことから、2段処理、3段処理を行うことが好ましい。複数段処理を行う場合、軸タイプのディスパーザーとディスクタイプのディスパーザーとを適宜組み合わせて用いればよい。
【0044】
<脱墨工程>
脱墨工程では、主に、脱墨装置を用いて、印刷古紙から剥離したインキを分散液から除去する。
脱墨工程で(A)〜(C)成分のいずれか1以上の成分を用いる場合は、分散液と共に脱墨装置に入れる。
脱墨工程では、分散液を固形分濃度0.5〜1.5質量%程度、温度20〜50℃程度に調整し、脱墨装置としてフローテーターを用いたフローテーション法、洗浄機を用いた洗浄法、又はこれらの組合せ等により処理することが好ましい。
フローテーション法で用いられるフローテーターには、外部設置されたブロワーによりフローテーター本体に空気を強制的に送り込む強制給気式のものや、インジェクター部にパルプスラリーを圧送することにより空気が吸い込まれる空気自給式のものなどがあり、これらのいずれも利用できる。
洗浄法で用いられる洗浄機には、エキストラクターやシックナーなどがあり、これらのいずれも利用できる。
【0045】
<(A)成分、(B)成分、(C)成分の用い方>
本発明の脱墨パルプの製造方法において、前記(A)成分は、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で用いる。なかでも、印刷古紙からのインキ剥離効果がより良好であることから、(A)成分を少なくとも離解工程で用いることが好ましい。なお、(A)成分は、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程に加えて、脱墨工程で用いても差し支えない。
前記の(B)成分又は(C)成分は、それぞれ離解工程、分散工程及び脱墨工程のいずれの工程でも用いることができ、複数の工程で用いてもよい。(A)〜(C)成分の2種以上を同一の工程で用いる場合、各成分をそれぞれ別個に配合してもよく、予め混合したものを配合してもよい。
【0046】
(B)成分は、脱墨工程での遊離インキ除去性や破泡性の向上に寄与する成分であり、脱墨工程よりも前段側の工程で用いることが好ましく、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で用いることがより好ましく、(A)成分と共に同一の工程で用いることがさらに好ましい。なお、(B)成分は、離解工程と分散工程の他に、脱墨工程で用いても差し支えない。
(B)成分を(A)成分と共に同一の工程で用いる場合、(A)成分と(B)成分との配合比率(質量比)が、(A)成分:(B)成分=10:90〜90:10であることが好ましく、40:60〜80:20であることがより好ましい。
当該質量比において、(A)成分の占める比率が好ましい下限値以上であれば、印刷古紙からのインキ剥離効果が充分に得られ、一方、(A)成分の占める比率が好ましい上限値以下であれば、印刷古紙から剥離した遊離インキの除去効果が充分に得られ、また、フローテーション時に発生する泡の破泡性がより良好となる。
【0047】
(C)成分は、脱墨工程での遊離インキ除去性や破泡性の向上に寄与する成分であり、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で用いることが好ましく、(A)成分と共に同一の工程で用いることがより好ましい。また、(C)成分は、脱墨工程で用いることも好ましい。
(C)成分を(A)成分と共に同一の工程で用いる場合、(A)成分と(C)成分との配合比率(質量比)が、(A)成分:(C)成分=10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜80:20であることがより好ましい。
当該質量比において、(A)成分の占める比率が好ましい下限値以上であれば、印刷古紙からのインキ剥離効果が充分に得られ、一方、(A)成分の占める比率が好ましい上限値以下であれば、印刷古紙から剥離した遊離インキの除去効果、又はフローテーション時に発生する泡の破泡性がバランスよく得られやすくなる。
【0048】
(A)〜(C)成分を同一の工程で用いる場合、(A)成分と(B)成分と(C)成分との配合比率(質量比)が、[(A)成分と(B)成分との合計]:(C)成分=10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜90:10であることがより好ましく、50:50〜80:20であることがさらに好ましい。
当該質量比において、[(A)成分と(B)成分との合計]の占める比率が好ましい下限値以上であれば、印刷古紙からのインキ剥離効果がより向上し、一方、[(A)成分と(B)成分との合計]の占める比率が好ましい上限値以下であれば、印刷古紙から剥離した遊離インキの除去効果がより向上し、また、フローテーション時に発生する泡の破泡性がより良好となる。
【0049】
本発明の脱墨パルプの製造方法においては、離解工程、除塵工程、分散工程及び脱墨工程に加えて、その他の工程を有していてもよい。たとえば、漂白工程をさらに有していてもよい。
漂白工程では、前記漂白薬剤(過酸化水素、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、ハイポ等)の存在下でパルプを漂白処理することにより、脱墨パルプにおける未剥離インキを少なくする。加えて、パルプ繊維を白くする。漂白処理は、温度を20〜120℃程度に調整し、処理時間を0.1〜8時間として行うことが好ましい。
漂白工程は、前述の本実施形態における除塵工程と分散工程との間、又は、分散工程と脱墨工程との間に設けることが好ましい。分散工程に引き続いて漂白工程を設ける場合、漂白薬剤を分散工程にて加え、分散処理を行うと共にパルプと漂白薬剤との混合を促進させることが好ましい。
【0050】
また、本発明の脱墨パルプの製造方法は、離解工程、除塵工程、分散工程及び脱墨工程と同様の工程を有する既存の製造方法に適用できる。なお、これらの工程の順序、処理回数は限定されないが、離解工程と分散工程は脱墨工程の前段側に設ける必要がある。さらに、必要に応じて、前記その他の成分を各工程に添加することができる。
【0051】
(作用効果)
本発明の脱墨パルプの製造方法によれば、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で(A)成分を用いることにより、印刷古紙からのインキ剥離効果に優れ、残留している未剥離インキの少ない脱墨パルプを製造できる。このように、残留している未剥離インキの少ない脱墨パルプを製造できる理由は定かではないが、以下のように推測される。
印刷古紙上の未剥離インキは、これに含まれる成分の一つであるビヒクルが苛性ソーダ等の作用を受け、部分的に負電荷を有することが知られている。
特定構造の両性界面活性剤である(A)成分は、その分子内に正と負の電荷の偏りを有することで、非イオン性界面活性剤に比べて、インキとの相互作用が強い、と考えられる。加えて、離解工程又は分散工程では、特に機械的な作用がパルプに加わるのに伴い、インキと(A)成分との接触頻度が高まるため、両者の相互作用がより強まる、と考えられる。
これらの作用によって、印刷古紙から未剥離インキが効率的に剥離しやすくなることで、脱墨パルプに残留する未剥離インキが少なくなり、良質な脱墨パルプが得られる、と考えられる。
【0052】
また、本発明の脱墨パルプの製造方法においては、(A)成分に加えて(B)成分を用いることにより、印刷古紙から一旦剥離した遊離インキの除去効果が向上して、脱墨パルプの白色度がより高まる。加えて、フローテーション時に発生する泡の破泡性も高まり、操業性が向上する。
さらに、本発明の脱墨パルプの製造方法においては、(A)成分に加えて、又は、(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分を用いることにより、印刷古紙からのインキ剥離効果、印刷古紙から剥離した遊離インキの除去効果、フローテーション時に発生する泡の破泡性がさらに向上する。加えて、(A)成分又は(B)成分の使用量の低減化が図れ、コスト抑制も図ることができる。
【0053】
≪脱墨パルプ≫
本発明の脱墨パルプの製造方法においては、前述のように、残留している未剥離インキの少ない脱墨パルプが製造される。
具体的には、0.004〜5.0mm
2のダート個数が10000個/m
2以下、好ましくは5000〜10000、より好ましくは5000〜9200であり、かつ、白色度が65〜80%、好ましくは65〜75%、より好ましくは65〜70%である脱墨パルプが容易に得られる。
ここで「0.004〜5.0mm
2のダート個数」とは、脱墨工程後に得られた脱墨パルプを用い、JIS P 8222に準じて作製した手抄き紙の中央部分10cm×10cmの範囲に存在する0.004〜5.0mm
2サイズのダート個数を、王子計測機器(株)製のダートアナライザー(DIP−200)を用いて測定した結果を、手抄き紙1m
2当たりの個数に換算した値を示す。
また、「白色度」は、脱墨工程後に得られた脱墨パルプに、絶乾パルプ質量に対して15質量%の硫酸アルミニウムを加えたものを用い、JIS P 8222に準じて作製した手抄き紙について、JIS P8148に準拠した方法により測定される値を示す。
本発明の脱墨パルプは、白色度が高いことから紙への配合量を高くできる。具体的には、当該脱墨パルプを、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50〜100%配合した紙を容易に製造できる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に示す本実施例中の「%」は、白色度を除き、全て「質量%」を意味する。
また、界面活性剤と市販脱墨剤の使用量を「絶乾パルプ質量に対する割合(質量%)」で示した。
「絶乾パルプ質量」は、各工程においてその都度、一定量の試料を採取し、濾紙を用いた濾過により固形分と水分とを分離し、当該固形分を、その質量が一定になるまで105℃の乾燥機中で乾燥することによって求めた。
【0055】
本実施例において使用した界面活性剤と市販脱墨剤は下記のとおりである。
(両性界面活性剤(A))
A−1−1:ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(一般式(A−1)におけるR
1=炭素数18のアルキル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)。
A−1−2:パルミチルジメチルアミノ酢酸ベタイン(一般式(A−1)におけるR
1=炭素数16のアルキル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)。
A−1−3:ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン(一般式(A−1)におけるR
1=炭素数14のアルキル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)。
A−1−4:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(一般式(A−1)におけるR
1=炭素数12のアルキル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)。
A−2−1:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(一般式(A−2)におけるR
4=炭素数7〜17のアルキル基(ヤシ油由来)、R
5=メチル基、R
6=メチル基)。
【0056】
(カチオン性界面活性剤(B))
B−1−1:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(一般式(B−1)におけるR
7=炭素数10のアルキル基、R
8=炭素数10のアルキル基、R
9=メチル基、R
10=メチル基、X
−=Cl
−)。
B−2−1:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(一般式(B−2)におけるR
11=メチル基、R
12=メチル基、R
13=メチル基、R
14=炭素数18のアルキル基、X
−=Cl
−)。
【0057】
(非イオン性界面活性剤(C))
C−1−1:ポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテル(一般式(C−1)におけるR
15=オレイルセチル基、AO=オキシエチレン基とオキシプロピレン基とがランダム状に混在、m=26、オキシエチレン基の繰返し数22、オキシプロピレン基の繰返し数4)。
C−1−2:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(一般式(C−1)におけるR
15=炭素数10のアルキル基、AO=炭素数1〜2のオキシアルキレン基、m=10)第一工業製薬株式会社製、商品名ノイゲンXL−80。
C−1−3:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(一般式(C−1)におけるR
15=化学式(C−1−01)で表される基、AO=オキシエチレン基、m=13)第一工業製薬株式会社製、商品名ノイゲンEA−137。
【0058】
(アニオン性界面活性剤)
D−1:ステアリン酸。
D−2:オレイン酸。
【0059】
(市販脱墨剤)
市販脱墨剤I:脂肪酸誘導体系非イオン性脱墨剤、第一工業製薬株式会社製、商品名ダイホープ1000。
市販脱墨剤II:高級アルコール系非イオン性脱墨剤、第一工業製薬株式会社製、商品名ダイホープ960。
【0060】
<脱墨パルプの製造例>
(
参考例1)
JIS P8251で規定される525℃燃焼法での灰分が11.0%、かつ、JIS
P8252で規定される900℃燃焼法での灰分が7.7%である印刷新聞60%と、チラシ40%とからなる印刷古紙を原料古紙として用いた。当該原料古紙1kgに占める絶乾パルプ質量は925gであった。
[離解工程]
当該原料古紙を熊谷理機工業(株)製の標準パルプ離解機に入れ、30℃の水を加えて固形分濃度を3%とし、絶乾パルプ質量に対して0.4%の苛性ソーダと、絶乾パルプ質量に対して0.10%の両性界面活性剤A−1−1とを加え、JIS P8220に準じて、離解処理を20分間実施した。
[除塵工程]
次いで、離解処理後の離解液に対し、0.15mmのスリット幅を持つ6カットスクリーンプレートを備えたフラットスクリーン(熊谷理機工業製)を用いて除塵処理を行った。
[分散工程]
次いで、除塵処理後の離解液を、150メッシュワイヤーにて固形分濃度が30%になるまで濃縮脱水した。脱水の後、絶乾パルプ質量に対して1.5%の苛性ソーダと、絶乾パルプ質量に対して1.5%のケイ酸ソーダと、絶乾パルプ質量に対して1.5%の過酸化水素と、30℃の水とを加え、固形分濃度を25%に調製した。その後、熊谷理機工業(株)製のPFIミルを用いて、1000回転の分散処理をJIS P8221−2に準じて実施した。
[漂白工程]
次いで、分散処理後の分散液をビニール袋に入れ、これを70℃の恒温水槽に入れて2時間保持することにより漂白処理を行った。
[脱墨工程]
次いで、漂白処理後の分散液を熊谷理機工業(株)製の標準パルプ離解機に入れ、40℃の温水を加え、さらに、絶乾パルプ質量に対して0.20%の市販脱墨剤Iを加えた。
そして、1分間の解繊処理を行ってパルプを水中によく分散させると共に、市販脱墨剤Iとパルプとをよく混合し、固形分濃度1%、40℃のパルプスラリーを調製した。その後、このパルプスラリーを、(株)IHIフォイトペーパーテクノロジー製のMTフローテーターに入れ、5分間のフローテーションによる脱墨処理を実施して脱墨パルプを得た。
【0061】
(
参考例2〜
5、実施例6〜15、参考例16〜17、実施例18〜35、比較例1〜11)
前記の離解工程、分散工程又は脱墨工程において、それぞれ表1〜4に記載のとおりの界面活性剤と市販脱墨剤とを加えた以外は、
参考例1と同様にして脱墨パルプを得た。
【0062】
<評価>
[インキ剥離性の評価/ダート個数の測定]
脱墨工程後に得られた脱墨パルプを、150メッシュワイヤー上に分取し、脱墨パルプ1g当たり約20リットルのイオン交換水により、繊維から剥離している遊離インキを洗浄除去した。その後、JIS P 8222に準じて、熊谷理機工業(株)製の手抄き機を用いて手抄き紙を作製した。
手抄き紙の作製後、手抄き紙の中央部分10cm×10cmの範囲に存在する0.004〜5.0mm
2サイズのダート個数を、王子計測機器(株)製のダートアナライザー(DIP−200)を用いて測定した。測定結果は、手抄き紙1m
2当たりの個数に換算し、この換算値をダート個数(個/m
2)とした。
そして、下記の評価基準により、インキ剥離性の評価を行った。その結果を表1〜4に示した。
評価基準
◎:ダート個数が8000個/m
2未満であった。
○:ダート個数が8000個/m
2以上10000個/m
2未満であった。
△:ダート個数が10000個/m
2以上14000個/m
2未満であった。
×:ダート個数が14000個/m
2以上であった。
ここでいう「ダート個数」は、主に離解工程や分散工程で繊維から剥離せずに残留した未剥離インキ量の指標となり、ダート個数の値が小さいほど、残留している未剥離インキが少ないことを意味する。
【0063】
[遊離インキ除去性の評価/白色度の測定]
脱墨工程後に得られた脱墨パルプに、絶乾パルプ質量に対して15%の硫酸アルミニウムを加えてよく攪拌し、繊維から剥離している遊離インキを繊維に定着させた。
その後、JIS P 8222に準じて、熊谷理機工業(株)の手抄き機を用いて手抄き紙を作製した。手抄き紙の作製後、JIS P8148に準じて白色度を測定した。
そして、下記の評価基準により、遊離インキ除去性の評価を行った。その結果を表1〜4に示した。
評価基準
◎:白色度が67%以上であった。
○:白色度が66%以上67%未満であった。
△:白色度が65%以上66%未満であった。
×:白色度が65%未満であった。
ここでいう「白色度」は、主にフローテーションによる脱墨処理で除去できなかった遊離インキがどの程度残留しているかを示す指標となり、白色度が高いほど、残留している遊離インキが少ないことを意味する。
【0064】
[破泡性の評価/泡層の容量の測定]
脱墨工程において、MTフローテーター((株)IHIフォイトペーパーテクノロジー製)に入れる直前の固形分濃度1%、40℃のパルプスラリー500mLを採取し、1Lのメスシリンダーに入れた。メスシリンダーの開口部を手で塞いで、左右に10回振とうして泡立てた後に静置し、1分後に消えずに残る泡層の容量を測定した。
そして、下記の評価基準により、破泡性の評価を行った。その結果を表1〜4に示した。
評価基準
◎:泡層の容量が25mL未満であった。
○:泡層の容量が25mL以上35mL未満であった。
△:泡層の容量が35mL以上45mL未満であった。
×:泡層の容量が45mL以上であった。
ここでいう「泡層の容量」は、フローテーション時に発生する泡の破泡性の指標となり、泡層の容量が小さいほど、主にフローテーターでの操業性が良好であることを意味する。フローテーション時に発生する泡が破泡しにくいと、泡を集めて処理する工程が機能不全に陥るため好ましくない。
【0065】
[総合評価]
上記のインキ剥離性、遊離インキ除去性及び破泡性についての評価結果を基にして、下記の評価基準により総合評価を行った。
評価基準
◎:上記の3つの評価のうち、ひとつ以上が◎で、かつ、残りが○であった。
○:上記の3つの評価の全てが○であった。
△:上記の3つの評価のうち、ひとつ以上が△で、かつ、残りが○又は◎であった。
×:上記の3つの評価のうち、ひとつ以上が×であった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
表1〜4に示す結果から、離解工程及び分散工程のいずれか1以上の工程で(A)成分を用いた
参考例1〜
5、実施例6〜15、参考例16〜17、実施例18〜35では、印刷古紙からのインキ剥離性が良好であることが分かる。
【0071】
また、
参考例1〜4と実施例6〜13との対比より、(A)成分に加えて(B)成分を用いることにより、印刷古紙からのインキ剥離性、遊離インキ除去性、及びフローテーション時に発生する泡の破泡性のいずれもより良好となることが分かる。
さらに、実施例27〜29、32〜35と実施例6との対比、及び、実施例21と実施例30との対比から、(C)成分をさらに用いることにより、印刷古紙からのインキ剥離性、遊離インキ除去性及び破泡性を良好に維持しつつ、(A)成分及び(B)成分の使用量の低減化が図れることが分かる。