特許第5788292号(P5788292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000004
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000005
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000006
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000007
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000008
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000009
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000010
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000011
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000012
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000013
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000014
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000015
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000016
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000017
  • 特許5788292-デルタシグマ変調器および半導体装置 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788292
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】デルタシグマ変調器および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/02 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   H03M3/02
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2011-237381(P2011-237381)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-98630(P2013-98630A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(72)【発明者】
【氏名】田島 英幸
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−346521(JP,A)
【文献】 特開2009−290455(JP,A)
【文献】 特表2006−521766(JP,A)
【文献】 特表2010−536237(JP,A)
【文献】 特開平04−167819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アナログ信号と第2アナログ信号とを入力し、前記第1アナログ信号から前記第2アナログ信号を減算する減算器と、
前記減算器の減算結果を積分する積分器と、
前記積分器の出力を量子化する1個の量子化器と、
それぞれが前記1個の量子化器の出力を共通に受けるように並列接続された複数のDA変換器であって、前記積分器の出力を基に前記1個の量子化器によって量子化されたデジタル信号をアナログ信号にそれぞれ変換し、当該それぞれ変換したアナログ信号を前記第2アナログ信号として、前記減算器に異なるタイミングで出力する前記複数のDA変換器と
を備えるデルタシグマ変調器。
【請求項2】
前記1個の量子化器は、前記積分器の出力をn(≧2)ビットに量子化し、量子化レベルに対応したk(>n)ビットの温度計コードを出力する量子化器であって
前記1個の量子化器に加え、
前記デジタル信号としての前記温度計コードに処理を施す処理回路と、
前記複数のDA変換器としてk個のDA変換器と
を備え、
前記温度計コードは、
1ビット目からkビット目までk個のビットが配列された前記温度計コードであって、
前記処理回路は、
前記温度計コードを構成する前記k個のビットの配列の順番を入れ替え、
前記k個のDA変換器は、
前記処理回路によって前記配列の順番が入れ替えられた前記温度計コードの前記k個のビットにそれぞれ対応した電流に変換する
請求項1に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項3】
前記k個のDA変換器の各々の出力のタイミングを制御する制御部を更に備え、
前記k個のDA変換器は、
第1電流を出力する第1DA変換器と、
第2電流を出力する第2DA変換器と
を含み、
前記制御部は、
前記第1DA変換器に前記第1電流を出力させ、前記第1DA変換器による前記第1電流の出力開始から一定時間遅延させて、前記第2DA変換器に前記第2電流を出力させる
請求項2に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2DA変換器による前記第2電流の出力を前記第1DA変換器による前記第1電流の出力開始から前記一定時間遅延させる遅延回路を備える
請求項3に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載のデルタシグマ変調器を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタシグマ(ΔΣ)変調器および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Analog to Digital)変換器の種類の一つに、デルタシグマ変調器がある。デルタシグマ変調器は、AD変換の精度(S/N比)が高い。その上、デルタシグマ変調器は、その大部分をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路で実現できるため、マイクロコンピュータなどの半導体装置に組み込みやすいという利点を持つ。
【0003】
図1は、一般的なデルタシグマ変調器100の構成例を示すブロック図である。デルタシグマ変調器100は、マルチビットのデルタシグマ変調器であって、アナログ信号Aをn(≧2)ビットのデジタル信号Dに変換する。ここでは、n=2ビットのデルタシグマ変調器100を例に挙げる。この場合、デルタシグマ変調器100は、減算器110と、積分器120と、n=2ビットの量子化器130と、k=3個のDA(Digital to Analog)変換器140と、デコーダ150とを備える。以下、k個目のDA変換器140を「第kDA変換器140」と呼ぶ。
【0004】
減算器110は、アナログ信号Aと、後述のトータルDAC電流IDACとの差分Sを積分器12に出力する。積分器120は、差分Sを時間積分する。量子化器130は、積分器120の出力をn=2ビットに量子化する。その上で、量子化器130は、量子化レベル(量子化の値)に対応した3ビットの温度計コードCを出力する。そのため、DA変換器140の個数は、k=3個である。デコーダ150は、k=3ビットの温度計コードCをn=2ビットのバイナリコードに変換する。このバイナリコードが最終的に得られるn=2ビットのデジタル信号Dである。
【0005】
AD変換の精度を高めるためには、積分器120のスルーレートをできるだけ上げることが望ましい。スルーレートを上げるためには、積分器120のセトリング時間を確保しつつ、積分器120にできるだけ大きな定常電流を供給する必要がある。そのため、積分器120は、第1から第3DA変換器140−140の各出力の総和のピーク値よりも大きな定常電流が供給されるように設計されている。
【0006】
以下、この点について説明する。先ず、第1から第3DA変換器140−140に着目する。第1から第3DA変換器140−140は、それぞれ1ビットのDA変換器であって、同一の構造を持つ。第1から第3DA変換器140−140は、流入ノードNDと合流ノードNDとの間で、それぞれ並列接続されている。第1から第3DA変換器140−140は、第1から第3ビットC−Cを入力し、第1から第3ビットC−Cをそれぞれアナログ信号に変換する。ここで、第1から第3ビットC−Cは、例えば、温度計コードCのLSB(最下位ビット)からMSB(最上位ビット)にそれぞれ対応している。例えば、温度計コードC=“111”の場合、第1から第3ビットC−Cは、それぞれ“1”である。
【0007】
DA変換器の種類の一つに、SCR(Switched Capacitor Resistor)型と呼ばれるDA変換器がある。SCR型の場合、第1から第3DA変換器140−140の各々の出力は、電流である。以下、SCR型を例に挙げる。第kDA変換器140の出力を「第kDAC電流IDACk」と呼ぶ。
【0008】
図2は、あるサンプリング期間Tにおける第kDAC電流IDACkの時間変化を例示する図である。ここでは、単純に、温度計コードC=“111”の場合を例に挙げる。この場合、第1から第3DAC電流IDACは、それぞれ実質的に同一の波形をとる。
【0009】
SCR型の場合、第kDAC電流IDACkは、その出力の開始時間である時間Tで瞬時にピークに達する。このときの電流Iを「ピーク電流」と呼ぶ。その後、第kDAC電流IDACkは、非線形に減衰する。ただし、第kDAC電流IDACkは、サンプリング時間Tよりも早い段階で0となる。これは、第kDA変換器140の出力がその段階で停止したためである。
【0010】
図3は、あるサンプリング時間TにおけるトータルDAC電流IDACの時間変化を例示する図である。「トータルDAC電流IDAC」とは、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の総和である。第1から第3DA変換器140−140は、時間Tで、それぞれ同時に第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3を出力する。そのため、トータルピーク電流ITPは、第kDAC電流IDACkがとるピーク電流Iのおよそ3倍に達する。なお、「トータルピーク電流ITP」とは、トータルDAC電流IDACがピークに達するときの電流を指す。
【0011】
図4は、他の型のDA変換器による第kDAC電流IDACkの時間変化を例示する図である。DA変換器の種類には、SCR型の他、一定電流帰還型と呼ばれる型がある。一定電流帰還型の場合、DA変換器は、複数の電流源と、複数のスイッチとで構成される。このDA変換器は、図4に示すように、一定の電流を出力する。一定電流帰還型の場合であっても、SCR型の場合と同様のことが言える。
【0012】
次に、積分器120に着目する。積分器120は、演算増幅器と、帰還キャパシタとを備える。基本的に、演算増幅器は、差動対などで構成された差動段と、差動段の出力を増幅して出力する出力段とで構成されている。出力段は、複数のトランジスタで構成されている。帰還キャパシタの一端は、演算増幅器の反転入力端子に接続されている。帰還キャパシタの他端は、演算増幅器の出力端子に接続されている。
【0013】
演算増幅器の動作の高速化を図るためには、トータルピーク電流ITPと同程度の電流が演算増幅器の出力段のトランジスタに定常的に流れる必要がある。そのため、通常、積分器120は、トータルピーク電流ITPよりも大きな定常電流が供給されるように、設計されている。なお、この電流は、第1から第3DA変換器140−140の出力側から帰還キャパシタを介して演算増幅器の出力段へと流れる。
【0014】
したがって、トータルピーク電流ITPが高いほど、積分器120の消費電力も高い。取り分け、SCR型の場合、トータルピーク電流ITPが存在する時間は、電流帰還型の場合と比べて遙かに短い。一時的とは言え、トータルピーク電流ITPよりも高い電流が積分器120の演算増幅器に流れる。このことは、無駄な電力の消費につながる。この課題を解決するための方法が特許文献および非特許文献にそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願第7768433B2
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Aldo Pena Perez, Edoardo Bonizzoni, and FrancoMaloberti, “A 84dB SNDR 100kHz Bandwidth Low-PowerSingle Op-Amp Third-Order ΔΣ Modulator Consuming 140uW”, ISSCC, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献および非特許文献の技術は、基本的には、トータルピーク電流ITPよりも大きな電流を必要なときに一時的に積分器120に供給することにある。そのためには、積分器120のスルーレートを制御するためのアナログ制御回路や、可変電流源を制御するアナログ制御回路が別途必要となる。したがって、デルタシグマ変調器100のレイアウト面積がCMOS回路で構成できるデジタル回路と比べて増加する。このことは、デルタシグマ変調器の小型化を妨げる。
【0018】
そこで、デルタシグマ変調器の低消費電力化および小型化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下、[発明を実施するための形態]で使用される符号を括弧内に付記し、[課題を解決するための手段]を説明する。この符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものである。この符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に使用してはならない。
【0020】
本発明のデルタシグマ変調器(1)は、第1アナログ信号(A)と第2アナログ信号(IDAC)とを入力し、前記第1アナログ信号から前記第2アナログ信号を減算する減算器(11)と、前記減算器の減算結果(S)を積分する積分器(12)と、それぞれが並列接続された複数のDA変換器(14−14)であって、前記積分器の出力を基に量子化されたデジタル信号(C)をアナログ信号(IDAC1−IDACk)にそれぞれ変換し、当該それぞれ変換したアナログ信号を前記第2アナログ信号(IDAC=IDAC1+IDAC2+・・・+IDACk)として、前記減算器に異なるタイミングで出力する前記複数のDA変換器とを備える。
【0021】
望ましくは、本発明のデルタシグマ変調器(1)は、前記積分器の出力をn(≧2)ビットに量子化し、量子化レベルに対応したk(>n)ビットの温度計コード(C)を出力する量子化器(13)と、前記デジタル信号としての前記温度計コードに処理を施す処理回路(17)と、前記複数のDA変換器としてk個のDA変換器とを備える。前記温度計コードは、1ビット目からkビット目までk個のビットが配列された前記温度計コードである。前記処理回路は、前記温度計コードを構成する前記k個のビットの配列の順番を入れ替える。前記k個のDA変換器は、前記処理回路によって前記配列の順番が入れ替えられた前記温度計コードの前記k個のビットにそれぞれ対応した電流に変換する。
【0022】
望ましくは、本発明のデルタシグマ変調器(1)は、前記k個のDA変換器の各々の出力のタイミングを制御する制御部(15)を更に備える。前記k個のDA変換器は、第1電流(例えば、IDAC1)を出力する第1DA変換器(例えば、14)と、第2電流(例えば、IDAC2)を出力する第2DA変換器(例えば、14)とを含む。前記制御部は、前記第1DA変換器に前記第1電流を出力させ、前記第1DA変換器による前記第1電流の出力開始から一定時間遅延(例えば、Td1)させて、前記第2DA変換器に前記第2電流を出力させる。
【0023】
望ましくは、前記制御部は、前記第2DA変換器による前記第2電流の出力を前記第1DA変換器による前記第1電流の出力開始から前記一定時間遅延させる遅延回路(例えば、152−152)を備える。
【発明の効果】
【0024】
デルタシグマ変調器の低消費電力化および小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、一般的なデルタシグマ変調器100の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、あるサンプリング期間Tにおける第kDAC電流IDACkの時間変化を例示する図である。
図3図3は、あるサンプリング時間TにおけるトータルDAC電流IDACの時間変化を例示する図である。
図4図4は、他の型のDA変換器による第kDAC電流IDACkの時間変化を例示する図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1の概要を示すブロック図である。
図6図6は、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3をそれぞれ例示する図である。
図7図7は、トータルDAC電流IDACを例示する図である。
図8図8は、第1の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1の詳細な構成例を示す回路図である。
図9図9は、第1DA変換器14の部分拡大図である。
図10図10は、デルタシグマ変調器1の動作例を示すタイミングチャートである。
図11図11は、デルタシグマ変調器1の配置レイアウトの一例を示す図である。
図12図12は、デルタシグマ変調器1を備えたマイクロコンピュータ2の構成例を示すブロック図である。
図13図13は、第2の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Aの構成例を示す回路図である。
図14図14は、第3の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Bの構成例を示す回路図である。
図15図15は、第4の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Cの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に関連づけて説明する。全ての実施の形態において、同一の構成要素には原則として同一の符号が付されている。
【0027】
[第1の実施の形態]
1.デルタシグマ変調器の概要
図5は、第1の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1の概要を示すブロック図である。デルタシグマ変調器1は、減算器11と、積分器12と、nビットの量子化器13と、k(≧1)個のDA変換器14と、制御部15と、デコーダ16とを備える。k個目のDA変換器14を「第kDA変換器14」と呼ぶ。
【0028】
デルタシグマ変調器1は、量子化器13の出力が第1から第kDA変換器14−14をそれぞれ経由して減算器11に帰還する(負)帰還ループを持つ。デルタシグマ変調器1は、この帰還ループを用いて、アナログ信号Aをnビットのデジタル信号Dに変換する。
【0029】
ここで、デルタシグマ変調器1の仕様について述べる。
1)第1から第kDA変換器14−14は、それぞれSCR型である。これは、DA変換器14の一例である。k個のDA変換器14は、一定電流帰還型であっても、この他の型であっても差し支えない。以下、第kDA変換器14の出力電流を「第kDAC電流IDACk」と呼ぶ。
【0030】
2)DA変換器14の個数は、量子化器13の分解能、つまり、ビット数nで決まる。量子化器13は、その分解能がnビットである場合、2−1ビットの温度計コードCを出力する。そのため、DA変換器14の個数は、k=2−1(>n)個である。
【0031】
以下、デルタシグマ変調器1の各々の構成要素について説明する。
【0032】
減算器11は、第1入力端子(+)と、第2入力端子(−)とを備えている。減算器11は、第1入力端子にアナログ信号Aを入力する。これと共に、減算器11は、第2入力端子にトータルDAC電流IDACを入力する。「トータルDAC電流IDAC」は、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkの総和であって、アナログ信号である。減算器11は、アナログ信号AからトータルDAC電流IDACを減算し、その減算結果である差分S(=A−IDAC)を積分器12に出力する。
【0033】
積分器12は、減算器11から入力した差分Sをサンプリング時間T単位で積分し、その積分値を量子化器13に出力する。積分器12は、差分Sを積分することから、量子化器13での量子化ノイズを高周波数帯域に追いやるというノイズシェーピングの作用を持つ。なお、2個以上の積分器12を設けることができる。積分の次数を増やすことにより、より高いノイズシェーピングの特性を得ることができる。
【0034】
量子化器13は、積分器12から入力した積分値をnビットに量子化する。その上で、量子化器13は、量子化レベルに対応した2−1ビットの温度計コードCを作成する。その作成後、量子化器13は、温度計コードCをデコーダ16に出力する。これと共に、量子化器13は、温度計コードCの第1から第kビットC−Cを第1から第kDA変換器14−14にそれぞれ出力する。
【0035】
ここで、第1ビットCとは、温度計コードCの1ビット目であるLSBを指す。第2ビットCとは、温度計コードCの2ビット目を指す。以後順に、第kビットCとは、温度計コードCのkビット目であるMSBを指す。言うまでもなく、第1から第kビットC−Cは、それぞれデジタル信号であって、“0”または“1”をとる。なお、第1から第kビットC−Cは、それぞれ順に、MSBからLSBに対応していても差し支えない。
【0036】
第1から第kDA変換器14−14は、流入ノードNDと合流ノードNDとの間で並列接続されている。第1から第kDA変換器14−14は、それぞれ1ビットのDA変換器である。第1から第kDA変換器14−14は、第1から第kビット温度計コードC−Cに対応した第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkにそれぞれ変換する。DA変換後、第1から第kDA変換器14−14は、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkを合流ノードNDを経由して減算器11の第2入力端子に出力する。第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkは、合流ノードNDにて合流し、温度計コードCに対応したトータルDAC電流IDACとなる。
【0037】
従来は、複数個のDA変換器がDAC電流をそれぞれ同時に出力していた(図1参照)。ここで言う「同時」とは、実質的な同時である。これに対し、本実施の形態では、第1から第kDA変換器14−14が、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkをそれぞれ異なるタイミングで出力する。
【0038】
制御部15は、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkが異なるタイミングで出力されるように、第1から第kDA変換器14−14をそれぞれ制御する。
【0039】
デコーダ16は、2−1ビットの温度計コードCをnビットのバイナリコードに変換する。
【0040】
上述したように、第1から第kDA変換器14−14が、それぞれ第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkを異なるタイミングで出力する。以下、この点について説明する。ここでは、説明を簡単にするため、量子化器13の分解能がn=2ビットであり、DA変換器14の個数がk=3個の場合を例に挙げる。
【0041】
図6は、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3をそれぞれ例示する図である。図6では、温度計コードC=“111”の場合が例示されている。第1から第3DA変換器14−14は、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3をそれぞれ遅延時間Tdずつずらしながら順番に出力する。遅延時間Tdは、設計段階で予め決められている。
【0042】
具体的には、時間Tにて、制御部15が、第1DA変換器14に第1DAC電流IDAC1の出力を開始させる。時間Tから遅延時間Tdが経過した時間Tにて、制御部15が、第2DA変換器14に第2DAC電流IDAC2の出力を開始させる。最後に、時間Tから遅延時間Tdが経過した時間Tにて、制御部15が、第3DA変換器14に第3DAC電流IDAC3の出力を開始させる。したがって、第3DAC電流IDAC3の出力は、第1DAC電流IDAC1の出力からTd×2だけ遅延している。なお、遅延時間Tdは、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の出力ごとに異なっていてもよい。
【0043】
温度計コードC=“111”の場合、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の各々のピーク電流Iは、実質的に同一である。なお、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3は、IDAC∝exp(−T/τ)で表される。「T」は、時間を表す変数である。「τ(タウ)」は、時定数であって、τ=R×Cで表される。「R」は、第kDA変換器14を構成する抵抗の抵抗値(例えば、第1抵抗Raの抵抗値、図9参照)を表す。「C」は、第kDA変換器14を構成するキャパシタの静電容量(例えば、第1キャパシタCaの静電容量、図9参照)を表す。ピーク電流Iをとる時間は、時定数τで決まる。
【0044】
図7は、トータルDAC電流IDACを例示する図である。時間TからTの期間では、第1DA変換器14のみがDAC電流を出力している。そのため、トータルDAC電流IDACは、IDAC=IDAC1である。トータルDAC電流IDACも、時間Tで瞬時にピークに達する。このときのトータルピーク電流ITPは、ITP=ITP1である。
【0045】
次いで、時間TからTの期間では、第1および第2DA変換器14、14がDAC電流をそれぞれ出力している。そのため、トータルDAC電流IDACは、IDAC=IDAC1+IDAC2である。トータルDAC電流IDACは、時間Tで瞬時にピークに達する。このときのトータルピーク電流ITP=ITP2は、ITP1より大きい。ただし、トータルピーク電流ITP2は、ITP1+ITP2より小さい。
【0046】
次いで、時間TからTの期間では、第1から第3DA変換器14−14がDAC電流をそれぞれ出力している。トータルDAC電流IDACは、時間Tで瞬時にピークに達する。このときのトータルピーク電流ITP=ITP3は、ITP2より大きい。ただし、トータルピーク電流ITP3は、ITP1+ITP2+ITP3より小さい。
【0047】
以上述べたように、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkが出力されるタイミングがそれぞれ異なる。そのため、図7に示すように、それぞれのトータルピーク電流ITPが発生するタイミングが分散される。図6に示すように、第1から第kDAC電流IDAC1−IDACkの各ピーク電流が同じ値をとっていても、トータルピーク電流ITP自体は、従来のものより下がる。したがって、積分器12に供給される電流を削減することができる。このことは、低消費電力化につながる。
【0048】
2.デルタシグマ変調器の詳細な構成例
図8は、第1の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1の詳細な構成例を示す回路図である。デルタシグマ変調器1は、DEM(Dynamic Element Matching)回路17を更に備える。DEM回路17は、温度計コードCに所定の処理を施す処理回路の一例である。制御部15は、信号発生回路151と、複数個の遅延回路152とを備える。
【0049】
この他、デルタシグマ変調器1は、ノイズの低減を図るため、差動インタフェースを持つ。そのため、図8に示すように、1種類の信号の伝送に2本の信号線が使用される。2本の信号線のうち、正側の信号線を「第1信号線L」と呼ぶ。負側の信号線を「第2信号線L」と呼ぶ。例えば、デルタシグマ変調器1に入力されるアナログ信号Aの電圧は、第1信号線Lに供給されるアナログ信号Aと、第2信号線Lに供給されるアナログ信号Aとの電位差で決まる。
【0050】
以下、説明を簡単にするため、n=2ビットのデルタシグマ変調器1を例に挙げる。この場合、以下のことが前提となる。
1)量子化器13は、n=2ビットの分解能を持つ。そのため、温度計コードCは、3ビットである。
2)DA変換器14の個数は、k=2−1=3である。したがって、トータルDAC電流IDACは、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の総和となる。
3)制御部15は、m=6個の遅延回路152を備える。
【0051】
2.1.減算器11
減算器11について説明する。減算器11は、第1減算器ノード111Pと、第2減算器ノード111Nとを有する。第1減算器ノード111Pは、第1信号線L上にあって、第1入力抵抗121Pと演算増幅器123の非反転入力端子(+)との間にある。一方、第2減算器ノード111Nは、第2信号線L上にあって、第2入力抵抗121Nと演算増幅器123の反転入力端子(−)との間にある。
【0052】
2.2.積分器12
積分器12について説明する。積分器12は、第1入力抵抗121Pと、第2入力抵抗121Nと、第1帰還キャパシタ122Pと、第2帰還キャパシタ122Nと、演算増幅器123とを有する。
【0053】
第1入力抵抗121Pは、第1信号線Lに供給されたアナログ信号Aを、その電圧に対応した電流に変換する。この電流は、第1減算器ノード111Pにて、トータルDAC電流IDACと合流する。その合流した電流を「差分電流S」と呼ぶ。差分電流Sは、第1帰還キャパシタ122Pに供給される。
【0054】
第2入力抵抗121Nは、第1入力抵抗121Pと同様に、第2信号線Lに供給されたアナログ信号Aを、その電圧に対応した電流に変換する。この電流は、第2減算器ノード111Nにて、トータルDAC電流IDACと合流する。その合流した電流を「差分電流S」と呼ぶ。差分電流Sは、第2帰還キャパシタ122Nに供給される。
【0055】
第1帰還キャパシタ122Pは、2つの電極板を備える。一方の電極板は、演算増幅器123の非反転入力端子(+)に接続されている。他方の電極板は、演算増幅器123の反転出力端子(−)に接続されている。第1帰還キャパシタ122Pは、差分電流Sに応じた電荷を蓄積する。
【0056】
第2帰還キャパシタ122Nも、2つの電極板を備える。一方の電極板は、演算増幅器123の反転入力端子(−)に接続されている。他方の電極板は、演算増幅器123の非反転出力端子(+)に接続されている。第2帰還キャパシタ122Nは、差分電流Sに応じた電荷を蓄積する。
【0057】
演算増幅器123は、具体的には、差動増幅器である。演算増幅器123は、減算器11による差分S、即ち、2つの入力電圧の電位差をサンプリング時間Ts積分する。2つの入力電圧のうちの一つは、非反転入力端子(+)への入力電圧VINPである。もう一つは、反転入力端子(−)への入力電圧VINNである。演算増幅器123は、第1帰還キャパシタ122Pに蓄積された電荷量に応じた電圧VOUTPを反転出力端子(−)に出力する。これと共に、演算増幅器123は、第2帰還キャパシタ122Nに蓄積された電荷量に応じた電圧VOUTNを非反転出力端子(+)に出力する。電圧VOUTNに対する電圧VOUTPが積分器12の積分値である。
【0058】
2.3.量子化器13
量子化器13について説明する。量子化器13は、量子化器制御信号CLKCMP=“H(ハイレベル)”の期間、以下の処理を行う。先ず、量子化器13は、電圧比較回路(不図示)を用いて、積分器12の出力である積分値を2(=4)個の参照電圧と比較する。量子化器13は、この比較結果に基づいて、積分値を量子化する。積分値は、4通り(4値)ある量子化レベルのうちのいずれかに量子化される。次に、量子化器13は、4値の量子化レベルに対応した3ビットの温度計コードCを作成する。4値の量子化レベルは、表1に示すように、4値の温度計コードCにそれぞれ対応づけられている。量子化器13は、作成した温度計コードCをデコーダ16およびDEM回路17に出力する。
【0059】
【表1】
【0060】
2.4.DEM回路17
DEM回路17について説明する。DEM回路17は、サンプリング時間Tごとに、量子化器13から温度計コードCを入力する。温度計コードCは、表1に示すように、1ビット目から3ビット目までk=3個の第1から第3ビットC−Cが配列されたものである。DEM回路17は、温度計コードCを入力する度に、入力した温度計コードCを構成する第1から第3ビットC−Cの配列の順番を入れ替える。順番の入れ替えは、規則性を持っていても、ランダムであってもよい。また、順番の入れ替えは、第1から第3ビットC−Cの各々が同一の値でない場合に行われれば、十分である。DEM回路17は、その順番の入れ替えを反映させた第1から第3出力ビットOUT−OUTを第1から第3DA変換器14−14にそれぞれ出力する。
【0061】
ここで、第1出力ビットOUTとは、出力OUTの1ビット目であるLSBを指す。第2出力ビットOUTとは、出力OUTの2ビット目を指す。第3ビットOUTとは、出力OUTのkビット目であるMSBを指す。
【0062】
DEM回路17の動作(DEM処理)の一例を挙げる。例えば、温度計コードC=“001”の場合、第1から第3ビットC−Cは、それぞれ、“1”、“0”、“0”である。DEM回路17は、温度計コードC=“001”を連続して複数回入力した場合、以下のように動作する。
【0063】
1回目の入力:
このときの出力OUTは、“001”である。したがって、第1から第3DA変換器14−14は、“1”、“0”、“0”をそれぞれ入力する。
【0064】
2回目の入力:
この入力で、DEM回路17は、“1”を持つ第1ビットCの位置を第2ビットCの位置と入れ替える。したがって、出力OUTは、“010”である。第1から第3DA変換器14−14は、“0”、“1”、“0”をそれぞれ入力する。
【0065】
3回目の入力:
この入力で、DEM回路17は、“1”を持つ第2ビットCの位置を第3ビットCの位置と入れ替える。したがって、出力OUTは、“100”である。したがって、第1から第3DA変換器14−14は、“0”、“0”、“1”をそれぞれ入力する。
【0066】
4回目の入力:
この入力で、DEM回路17は、“1”を持つ第3ビットCの位置を第1ビットCの位置と入れ替える。このときの出力OUTは、”001”である。DEM17は、1回目の入力時と同様の処理を行う。
【0067】
上述の例のように、同一の値を持つ温度計コードCが連続した場合、DEM回路17は、”1”が連続して同一のDA変換器14に入力されることを防止する。そのため、次の2つの顕著な効果を得ることができる。
【0068】
1つ目は、高調波ノイズが低減することにある。トータルDAC電流IDACには、3つのピーク電流ITP1−ITP3が存在する(図7参照)。そのトータルDAC電流IDACが減算器11を経て積分器12に入力される。そのため、積分器12では、3つのピーク電流ITP1−ITP3が高調波ノイズとして捉えられやすい。DEM回路17は、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3がそれぞれ異なるタイミングで出力されるために発生する高調波ノイズを低減させる。
【0069】
2つ目は、第1から第3DA変換器14−14の各々の個体差に起因するノイズが低減することにある。この個体差は、デルタシグマ変調器1の製造過程で起こる。以上2つの効果は、量子化器13の分解能が上がるにつれて顕著となる。
【0070】
2.5.第1DA変換器14
第1DA変換器14について説明する。第1DA変換器14の要点は、以下の通りである。
【0071】
1)第1出力ビットOUT=“1”の場合:
この場合、第1DA変換器14は、正の符号を持つ第1DAC電流IDAC1を第1合流ノードNDOPに出力する。第1合流ノードNDOPは、減算器11の第2減算器ノード111Nに接続されている。
【0072】
2)第1出力ビットOUT=“0”の場合:
この場合、第1DA変換器14は、符号を反転させた第1DAC電流IDAC1、つまり、負の符号を持つ第1DAC電流IDAC1を第2合流ノードNDONに出力する。第2合流ノードNDONは、減算器11の第1減算器ノード111Pに接続されている。
【0073】
図8に示す減算器11は、アナログ信号AからトータルDAC電流IDACを減算する代りに、符号が反転されたトータルDAC電流IDACをアナログ信号Aに加算する構成をとっている。そのため、第1DAC電流IDAC1の出力先が、第1出力ビットOUTの値に応じて異なる。
【0074】
以下、第1DA変換器14について詳細に説明する。図9は、第1DA変換器14の部分拡大図である。第1DA変換器14は、差動型DA変換器である。第1DA変換器14は、6個のスイッチと、2個のキャパシタと、2個の抵抗を備える。
【0075】
6個のスイッチとは、第1スイッチSW1aと、第2スイッチSW1bと、第3スイッチSW1cと、第4スイッチSW1dと、第5スイッチSW1eと、第6スイッチSW1fとを指す。6個のスイッチの各々は、例えば、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。
【0076】
2個のキャパシタとは、第1キャパシタCaと、第2キャパシタCbとを指す。2個のキャパシタは、互いに実質的に同じ静電容量を持つ。2個の抵抗とは、第1抵抗Raと、第2抵抗Rbとを指す。2個の抵抗は、互いに実質的に同じ抵抗値を持つ。
【0077】
第1DA変換器14の接続関係について説明する。第1流入ノードNDIPおよび第1合流ノードNDOP間には、第1スイッチSW1aと、第3スイッチSW1cと、第1抵抗Raとがそれぞれ直列に接続されている。第2流入ノードNDINおよび第2合流ノードNDON間には、第2スイッチSW1bと、第4スイッチSW1dと、第2抵抗Rbとがそれぞれ直列に接続されている。
【0078】
これに加え、第5スイッチSW1eが、2つの接続ノードNDおよびND間に接続されている。第6スイッチSW1fが、2つの接続ノードNDおよびND間に接続されている。
【0079】
第1および第2キャパシタCa、Cbは、第1および第2ノードNDおよびND間で互いに直列接続されている。第3ノードNDには、コモン電圧VCOMが供給される。
【0080】
6個のスイッチの各々の動作は、以下の通りである。6個のスイッチの各々は、ハイレベル(“H”)の制御信号が印加されている期間、オンである。一方、6個のスイッチの各々は、ローレベル(“L”)の制御信号が印加されている期間、オフである。具体的には、以下の通りである。
【0081】
SW1a、SW1b:
第1および第2スイッチSW1a、SW1bは、第1DAC制御信号CLKS1によってオン/オフがそれぞれ制御される。両者のオン/オフは、互いに連動している。両者は、第1および第2キャパシタCa、Cbをそれぞれ充電するときに、オンである。
【0082】
SW1c、SW1d:
第3および第4スイッチSW1c、SW1dは、第1DAC制御信号CLKHP1によってオン/オフがそれぞれ制御される。両者のオン/オフは、互いに連動している。出力OUT=“1”の場合、両者はオンである。一方、出力OUT=“0”の場合、両者はオフである。
【0083】
SW1e、SW1f:
第5および第6スイッチSW1e、SW1fは、第1DAC制御信号CLKHM1によってオン/オフがそれぞれ制御される。両者のオン/オフは、互いに連動している。出力OUT=“1”の場合、両者はオフである。一方、出力OUT=“0”の場合、両者はオンである。
【0084】
次に、図8および図9を参照しながら、サンプリング時間Tsにおける第1DA変換器14の動作を説明する。その動作は、2つのステップに大別される。
【0085】
1)出力OUT=“1”の場合
ステップ1:充電状態
量子化器13の動作が開始したとき、第1および第2スイッチSW1a、SW1bは、第1DAC制御信号CLKS1=“H”をそれぞれ受けて、オンに保持されている。これに対し、第3および第4スイッチSW1c、SW1dは、第1DAC制御信号CLKHP1=“L”をそれぞれ受けて、オフに保持されている。第5および第6スイッチSW1e、SW1fも同様に、第1DAC制御信号CLKHM1=“L”をそれぞれ受けて、オフに保持されている。このときの第1DA変換器14(他のDA変換器についても同様)の状態を「充電状態」と呼ぶ。
【0086】
やがて、量子化器13の動作が停止する。そして、DEM回路17が第1出力ビットOUT=“1”を出力する。このとき、2個のキャパシタは、それぞれ充電を行っている。そのため、第1ノードNDの電圧VDACPは、次第に上昇する。出力OUT=“1”の場合、電圧VDACPは、コモン電圧VCOMよりも大きい。一方、第2ノードNDの電圧VDACNは、次第に低下する。ここでは、電圧VDACNは、電圧VDACPの符号を反転させたものに等しい。
【0087】
ステップ2:出力状態
2個のキャパシタの充電が完了した後、第1および第2スイッチSW1a、SW1bは、第1DAC制御信号CLKS1=“L”を受けて、オンからオフに切り替わる。一方、第3および第4スイッチSW1c、SW1dは、第1DAC制御信号CLKHP1=“H”を受けて、オフからオンに切り替わる。ただし、第5および第6スイッチSW1e、SW1fは、オフに保持されている。このときの第1DA変換器14(他のDA変換器についても同様)の状態を「出力状態」と呼ぶ。
【0088】
第1キャパシタCaは、コモン電圧VCOMと電圧VDACPとの差に応じた電荷を蓄積している。第3スイッチSW1cがオンであるため、第1キャパシタCaは、第1抵抗Raによって放電する。この放電により、第1抵抗Raには、第1キャパシタCaの電荷量に応じた電流が流れる。この電流が第1DAC電流IDAC1である。そして、第1DAC電流IDAC1は、第1合流ノードNDOPへと流れる。
【0089】
一方、第2キャパシタCbは、コモン電圧VCOMと電圧VDACNとの差に応じた電荷を蓄積している。第4スイッチSW1dがオンであるため、第2キャパシタCbは、第2抵抗Rbによって放電する。この放電により、第2抵抗Rbには、第2キャパシタCbの電荷量に応じた電流が流れる。この電流は、第1DAC電流IDAC1の符号を反転させたものに等しい。そして、この電流は、第2合流ノードNDONへと流れる。
【0090】
2)第1出力ビットOUT=“0”の場合
ステップ1:充電状態
ステップ1は、第1出力ビットOUT=“1”の場合と同様である。ただし、電圧VDACPの符号が第1出力ビットOUT=“1”の場合と逆である。電圧VDACNの符号についても、これと同様である。
【0091】
ステップ2:出力状態
第1出力ビットOUT=“0”の場合と同様に、第1および第2スイッチSW1a、SW1bは、第1DAC制御信号CLKS1=“L”を受けて、オンからオフに切り替わる。ただし、第3および第4スイッチSW1c、SW1dは、オフに保持されている。一方、第5および第6スイッチSW1e、SW1fは、第1DAC制御信号CLKHM1=“H”を受けて、オフからオンに切り替わる。
【0092】
第5スイッチSW1eがオンであるため、第1キャパシタCaは、第2抵抗Rbによって放電する。この放電により、第2抵抗Rbには、第1キャパシタCaの電荷量に応じた電流が流れる。第1出力ビットOUT=“0”の場合、この電流が第1DAC電流IDAC1である。ただし、第1DAC電流IDAC1の符号は、第1出力ビットOUT=“0”の場合と逆である。そして、第1DAC電流IDAC1は、第2合流ノードNDONへと流れる。
【0093】
また、第6スイッチSW1fがオンであるため、第2キャパシタCbは、第1抵抗Raによって放電する。この放電により、第1抵抗Raには、第2キャパシタCbの電荷量に応じた電流が流れる。この電流は、第1DAC電流IDAC1の符号を反転させたものに等しい。そして、この電流は、第1合流ノードNDOPへと流れる。
【0094】
2.6.第2DA変換器14
第2DA変換器14は、受ける制御信号が第1DA変換器14と異なる。以下にその相違点を列挙する。
【0095】
SW2a、SW2b:
第1および第2スイッチSW2a、SW2bは、第2DAC制御信号CLKS2によってオン/オフがそれぞれ制御される。
SW2c、SW2d:
第3および第4スイッチSW2c、SW2dは、第2DAC制御信号CLKHP2によってオン/オフがそれぞれ制御される。
SW2e、SW2f:
第5および第6スイッチSW1e、SW1fは、第2DAC制御信号CLKHM2によってオン/オフがそれぞれ制御される。
【0096】
2.7.第3DA変換器14
第3DA変換器14も、受ける制御信号が第1および第2DA変換器14、14と異なる。以下にその相違点を列挙する。
【0097】
SW3a、SW3b:
第1および第2スイッチSW3a、SW3bは、第3DAC制御信号CLKS3によってオン/オフがそれぞれ制御される。
SW3c、SW3d:
第3および第4スイッチSW3c、SW3dは、第3DAC制御信号CLKHP3によってオン/オフがそれぞれ制御される。
SW3e、SW3f:
第5および第6スイッチSW3e、SW3fは、第3DAC制御信号CLKHM3によってオン/オフがそれぞれ制御される。
【0098】
2.8.制御部15
制御部15について説明する。制御部15は、信号発生回路151と、m=6個の遅延回路152とを備える。m個目の遅延回路152を「第m遅延回路152」と呼ぶ。制御部15は、大別して2種類の制御信号を発生させる。一つは、量子化器13を制御するための量子化器制御信号CLKCMPである。制御部15は、不図示の回路を用いて量子化器制御信号CLKCMPを発生させ、これを量子化器13に出力する。もう一つは、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1である。
【0099】
2.8.1.信号発生回路151
信号発生回路151は、クロック発振器、種々の論理回路などで構成されている。信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1を発生させ、発生させた各々を第1DA変換器14に出力する。これと共に、信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1を、6個の遅延回路152−152のうちの対応する遅延回路152にそれぞれ出力する。詳細は、以下の通りである。
【0100】
第1DAC制御信号CLKS1:
信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKS1を第1および第2スイッチSW1a、SW1bにそれぞれ出力する。更に、信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKS1を第1遅延回路152に出力する。
【0101】
第1DAC制御信号CLKHP1:
信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKHP1を第3および第4スイッチSW1c、SW1dにそれぞれ出力する。更に、信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKHP1を第2および第5遅延回路152、152にそれぞれ出力する。
【0102】
第1DAC制御信号CLKHM1:
信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKHM1を第5および第6スイッチSW1e、SW1fにそれぞれ出力する。更に、信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKHM1を第3および第6遅延回路152、152にそれぞれ出力する。
【0103】
2.8.2.第1から第6遅延回路152−152
第1から第6遅延回路152−152は、例えば、それぞれRCローパスフィルタと同様の構成をとっている。RCローパスフィルタは、1個の抵抗(R)と1個のキャパシタ(C)で構成され、入力信号を時定数RCに対応した時間だけ遅延させて出力する。なお、6個の遅延回路152の各々は、シフトレジスタなどで構成されていてもよい。いずれにせよ、6個の遅延回路152の各々は、デジタル回路である。
【0104】
遅延回路152−152
第1から第3遅延回路152−152は、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1をそれぞれ遅延時間Td1遅延させる。第1から第3遅延回路152−152は、遅延した第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1をそれぞれ第2DAC制御信号CLKS2、CLKHP2、CLKHM2として第2DA変換器14に出力する。
【0105】
詳細には、第1遅延回路152は、第2DAC制御信号CLKS2を第1および第2スイッチSW2a、SW2bにそれぞれ出力する。第2遅延回路152は、第2DAC制御信号CLKHP2を第3および第4スイッチSW2c、SW2dにそれぞれ出力する。第3遅延回路152は、第2DAC制御信号CLKHM2を第5および第6スイッチSW2e、SW2fにそれぞれ出力する。
【0106】
遅延回路152−152
第4から第6遅延回路152−152は、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1をそれぞれ遅延時間Td2遅延させる。遅延時間Td2は、遅延時間Td1よりも大きい(Td2>Td1)。第4から第6遅延回路152−152は、遅延した第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1をそれぞれ第3DAC制御信号CLKS3、CLKHP3、CLKHM3として第3DA変換器14に出力する。
【0107】
詳細には、第4遅延回路152は、第3DAC制御信号CLKS3を第1および第2スイッチSW3a、SW3bにそれぞれ出力する。第5遅延回路152は、第3DAC制御信号CLKHP3を第3および第4スイッチSW3c、SW3dにそれぞれ出力する。第6遅延回路152は、第3DAC制御信号CLKHM3を第5および第6スイッチSW3e、SW3fにそれぞれ出力する。
【0108】
2.9.デコーダ16
デコーダ16について説明する。4値の温度計コードCは、表2に示すように、4値のバイナリコードにそれぞれ対応づけられている。デコーダ16は、量子化器13の3ビット出力の温度計コードCをn=2ビットのバイナリコードに変換する。
【0109】
【表2】
【0110】
3.デルタシグマ変調器の動作例
図10は、デルタシグマ変調器1の動作例を示すタイミングチャートである。
【0111】
3.1.タイミングチャート全体の説明
先ず、図10に例示するタイミングチャート全体を説明する。デルタシグマ変調器1は、アナログ信号Aをサンプリング期間Tごとにデジタル信号Dに変換する。サンプリング時間Tsは、図1(A)に示すように、あるクロックCLKの立ち上がりから次のクロックCLKの立ち上がりまでの時間である。クロックCLKは、デルタシグマ変調器1の外部から供給される。ここでは、多数あるサンプリング時間Tsのうち、第1から第3のサンプリング時間TS1−TS3を例に挙げる。
【0112】
量子化器13は、図10(B)に示すように、量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がりに同期してアナログ信号Aの量子化を開始する。その開始前には、減算器11が、アナログ信号AとトータルDAC電流IDACとの差分Sを積分器12にすでに出力している。そして、積分器12が、差分Sをサンプリング時間T単位で積分している。なお、量子化は、量子化器制御信号CLKCMP=“H”の期間に終了している必要がある。
【0113】
図10(C)に示すように、第1から第3のサンプリング時間TS1−TS3の全てにおいて、量子化器13の出力である温度計コードCがC=“001”であったと仮定する。図10(D)に示すように、DEM回路17は、量子化器13から温度計コードCを入力する度に、入力した温度計コードCに対して、第1から第3ビットC−Cの配列の順番を入れ替える。その結果は、以下の通りである。
【0114】
第1のサンプリング時間TS1:出力OUT=“001”
第2のサンプリング時間TS2:出力OUT=“010”
第3のサンプリング時間TS3:出力OUT=“100”
【0115】
第1から第3DA変換器14−14は、サンプリング期間Tごとに、出力OUTを構成する第1から第3出力ビットOUT−OUTを第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3にそれぞれ変換する。その際に、第1から第3DA変換器14−14は、それぞれ以下のように動作する。
【0116】
第1のサンプリング時間TS1
時間T11にて、第1DA変換器14は、第1DAC電流IDAC1の出力を開始する。第1出力ビットOUT=“1”であるので、第1DA変換器14は、図10(N)に示す第1DAC電流IDAC1を第1合流ノードNDOPに出力する。
【0117】
時間T11から遅延時間Td1経過した時間T12にて、第2DA変換器14は、第2DAC電流IDAC2の出力を開始する。第2出力ビットOUT=“0”であるので、第2DA変換器14は、図10(O)に示す第2DAC電流IDAC2を第2合流ノードNDONに出力する。
【0118】
時間T11から遅延時間Td2経過した時間T13にて、第3DA変換器14は、第3DAC電流IDAC3の出力を開始する。第3出力ビットOUT=“0”であるので、第3DA変換器14は、図10(P)に示す第3DAC電流IDAC3を第2合流ノードNDONに出力する。
【0119】
第2のサンプリング時間TS2
第1から第3DA変換器14−14は、第1のサンプリング時間TS1の場合と同様に動作する。ただし、以下の点が第1のサンプリング時間TS1の場合と異なる。
【0120】
第1に、第1DA変換器14は、時間T21にて、図10(N)に示す第1DAC電流IDAC1を第2合流ノードNDONに出力する。それは、第1出力ビットOUTが“0”のためである。第2に、第2DA変換器14は、時間T22にて、図10(O)に示す第2DAC電流IDAC2を第1合流ノードNDOPに出力する。それは、第2出力ビットOUTが“1”のためである。
【0121】
第3のサンプリング時間TS3
第1から第3DA変換器14−14は、第1のサンプリング時間TS1の場合と同様に動作する。ただし、以下の点が第1のサンプリング時間TS1の場合と異なる。
【0122】
第1に、第1DA変換器14は、時間T31にて、図10(N)に示す第1DAC電流IDAC1を第2合流ノードNDONに出力する。これは、第2のサンプリング時間TS2の場合と同様の理由による。第2に、第3DA変換器14は、時間T33にて、図10(P)に示す第3DAC電流IDAC3を第1合流ノードNDOPに出力する。それは、第3出力ビットOUTが“1”のためである。
【0123】
3.2.第1から第3DA変換器14−14の動作例
次に、第1から第3DA変換器14−14の動作例を制御部15に関連づけて説明する。
【0124】
3.2.1.第1のサンプリング時間TS1
量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がり時:
このとき、第1から第3DA変換器14−14は、それぞれ充電状態である。このときの制御部15は、以下のように動作する。
【0125】
制御部15は、図10(E)、(H)、(K)にそれぞれ示す第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1を第1DA変換器14にそれぞれ出力している。第1DAC制御信号のレベルを以下に示す。
【0126】
第1DAC制御信号CLKS1=“H”
第1DAC制御信号CLKHP1=“L”
第1DAC制御信号CLKHM1=“L”
【0127】
同様に、制御部15は、図10(F)、(I)、(L)にそれぞれ示す第2DAC制御信号CLKS2、CLKHP2、CLKHM2を第2DA変換器14にそれぞれ出力している。第2DAC制御信号の各々のレベルを以下に示す。
【0128】
第2DAC制御信号CLKS2=“H”
第2DAC制御信号CLKHP2=“L”
第2DAC制御信号CLKHM2=“L”
【0129】
同様に、制御部15は、図10(G)、(J)、(M)にそれぞれ示す第3DAC制御信号CLKS3、CLKHP3、CLKHM3を第3DA変換器14にそれぞれ出力している。第3DAC制御信号のレベルを以下に示す。
【0130】
第3DAC制御信号CLKS3=“H”
第3DAC制御信号CLKHP3=“L”
第3DAC制御信号CLKHM3=“L”
【0131】
したがって、第1DA変換器14の6個のスイッチは、以下の状態をとる。
第1および第2スイッチSW1a、SW1b=“オン”
第3および第4スイッチSW1c、SW1d=“オフ”
第5および第6スイッチSW1e、SW1f=“オフ”
【0132】
第2DA変換器14の6個のスイッチは、以下の状態をとる。
第1および第2スイッチSW2a、SW2b=“オン”
第3および第4スイッチSW2c、SW2d=“オフ”
第5および第6スイッチSW2e、SW2f=“オフ”
【0133】
第3DA変換器14の6個のスイッチは、以下の状態をとる。
第1および第2スイッチSW3a、SW3b=“オン”
第3および第4スイッチSW3c、SW3d=“オフ”
第5および第6スイッチSW3e、SW3f=“オフ”
【0134】
量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がり時、第1から第3DA変換器14−14は、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の出力を停止している。
【0135】
時間T11
時間T11にて、第1DA変換器14は、充電状態から出力状態に切り替わる。これに対し、第2および第3DA変換器14、14は、それぞれ充電状態に保持されている。
【0136】
このとき、制御部15は、以下のように動作する。なお、第1DAC制御信号の各々のレベルは、時間T11から時間ΔTの間、保持される。
【0137】
制御部15は、第1DAC制御信号CLKS1を“H”から“L”に切り替える。
制御部15は、第1DAC制御信号CLKHP1を“L”から“H”に切り替える。
制御部15は、第1DAC制御信号CLKHM1を“L”に保持する。
【0138】
したがって、第1DA変換器14の6個のスイッチは、時間T11から時間ΔTの間、それぞれ以下の状態をとる。
【0139】
第1および第2スイッチSW1a、SW1b=“オフ”
第3および第4スイッチSW1c、SW1d=“オン”
第5および第6スイッチSW1e、SW1f=“オフ”
【0140】
その結果、図10(N)に示すように、時間T11にて、第1DA変換器14が第1DAC電流IDACの出力を開始する。
【0141】
時間T12
時間T12にて、第2DA変換器14は、充電状態から出力状態に切り替わる。第3DA変換器14は、充電状態である。
【0142】
このとき、制御部15は、以下のように動作する。なお、第2DAC制御信号の各々のレベルは、時間T12から時間ΔTの間、保持される。第2DAC制御信号の各々は、第1から第3遅延回路152−152によって、第1DAC制御信号の各々に対して遅延時間Td1だけ遅延している。
【0143】
制御部15は、第2DAC制御信号CLKS2を“H”から“L”に切り替える。
制御部15は、第2DAC制御信号CLKHP2を“L”に保持する。
制御部15は、第2DAC制御信号CLKHM2を“L”から“H”に切り替える。
【0144】
したがって、第2DA変換器14の6個のスイッチは、時間T12から時間ΔTの間、それぞれ以下の状態をとる。
【0145】
第1および第2スイッチSW2a、SW2b=“オフ”
第3および第4スイッチSW2c、SW2d=“オフ”
第5および第6スイッチSW2e、SW2f=“オン”
【0146】
その結果、図10(O)に示すように、時間T12にて、第2DA変換器14が、第2DAC電流IDACの出力を開始する。
【0147】
時間T13
時間T13にて、第3DA変換器14は、充電状態から出力状態に切り替わる。
【0148】
このとき、制御部15は、以下のように動作する。なお、第3DAC制御信号の各々のレベルは、時間T13から時間ΔTの間、保持される。第3DAC制御信号の各々は、第4から第6遅延回路152−152によって、第1DAC制御信号の各々に対して遅延時間Td2だけ遅延している。
【0149】
制御部15は、第3DAC制御信号CLKS3を“H”から“L”に切り替える。
制御部15は、第3DAC制御信号CLKHP3を“L”に保持する。
制御部15は、第3DAC制御信号CLKHM3を“L”から“H”に切り替える。
【0150】
したがって、第3DA変換器14の6個のスイッチは、時間T13から時間ΔTの間、それぞれ以下の状態をとる。
【0151】
第1および第2スイッチSW3a、SW3b=“オフ”
第3および第4スイッチSW3c、SW3d=“オフ”
第5および第6スイッチSW3e、SW3f=“オン”
【0152】
その結果、図10(P)に示すように、時間T13にて、第3DA変換器14が第3DAC電流IDACの出力を開始する。
【0153】
時間T14
時間T11から時間ΔT経過した時間T14にて、第1DA変換器14は、出力状態から充電状態に切り替わる。これに対し、第2および第3DA変換器14、14は、それぞれ出力状態に保持されている。このとき、制御部15は、量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がり時と同様の第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1を第1DA変換器14にそれぞれ出力する。したがって、第1DA変換器14は、第1DAC電流IDAC1の出力を停止する。
【0154】
時間T15
時間T12から時間ΔT経過した時間T15にて、第2DA変換器14は、出力状態から充電状態に切り替わる。第3DA変換器14は、出力状態に保持されている。このとき、制御部15は、時量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がり時と同様の第2DAC制御信号CLKS2、CLKHP2、CLKHM2を第2DA変換器14にそれぞれ出力する。したがって、第2DA変換器14は、第2DAC電流IDAC2の出力を停止する。
【0155】
時間T16
時間T13から時間ΔT経過した時間T16にて、第3DA変換器14は、出力状態から充電状態に切り替わる。このとき、制御部15は、量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がり時と同様の第3DAC制御信号CLKS3、CLKHP3、CLKHM3を第3DA変換器14にそれぞれ出力する。したがって、第3DA変換器14は、第3DAC電流IDAC3の出力を停止する。
【0156】
3.2.3.第2のサンプリング時間TS2
このときの第1から第3DA変換器14−14および制御部15の動作は、第1のサンプリング時間TS1の場合と同様である。ただし、これらの各動作を第1のサンプリング時間TS1の場合と対比すると、2つの点で差異がある。1つ目は、時間T21における第1DAC制御信号CLKHP1、CLKHM1のレベルである。2つ目は、時間T22における第2DAC制御信号CLKHP2、CLKHM2のレベルである。具体的には以下の通りである。
【0157】
第1DAC制御信号CLKHP1=“L”(時間T21
第1DAC制御信号CLKHM1=“L”から“H”(時間T21
第2DAC制御信号CLKHP2=“L”から“H”(時間T22
第2DAC制御信号CLKHM2=“L”(時間T22
【0158】
3.2.4.第3のサンプリング時間TS3
このときの第1から第3DA変換器14−14および制御部15の動作も、第1のサンプリング時間TS1の場合と同様である。ただし、これらの各動作を第1のサンプリング時間TS1における各動作と対比すると、2つの点で差異がある。1つ目は、時間T31における第1DAC制御信号CLKHP1、CLKHM1のレベルである。2つ目は、時間T33における第3DAC制御信号CLKHP3、CLKHM3のレベルである。具体的には以下の通りである。
【0159】
第1DAC制御信号CLKHP1=“L”(時間T31
第1DAC制御信号CLKHM1=“L”から“H”(時間T31
第3DAC制御信号CLKHP3=“L”から“H”(時間T32
第3DAC制御信号CLKHM3=“L”(時間T32
【0160】
以上述べたように、第1から第3DA変換器14−14の各々の出力のタイミングが異なる。そのため、第1から第3DAC電流IDAC1−IDAC3の各々のピーク電流Iが分散される。この分散の度合いは、2つの遅延時間Td1およびTd2に依存する。2つの遅延時間Td1およびTd2がそれぞれ大きいほど、ピーク電流Iが大きく分散される。SCR型のDA変換器が用いられる場合、2つの遅延時間Td1およびTd2の大きさは、量子化器制御信号CLKCMPの立ち上がりから第3DAC制御信号CLKHM3の立ち下がりまでの時間間隔がゼロ以上となる範囲内にあることが望ましい。
【0161】
3つのピーク電流Iの分散により、トータルピーク電流が従来よりも下がるので、積分器12に供給される電流を削減することができる。このことは、低消費電力化につながる。
【0162】
4.デルタシグマ変調器の配置レイアウト
図11は、デルタシグマ変調器1の配置レイアウトの一例を示す図である。制御部15およびデコーダ16の図示は省略されている。第1から第6遅延回路152−152は、それぞれ対応する第2および第3DA変換器14、14に隣接して配置されている。これは、第2および第3DAC制御信号の各々の伝搬遅延などを最小限に留めるためである。
【0163】
図11に示すように、第1から第6遅延回路152−152に加え、第7から第9遅延回路152−152が、第1DA変換器14に隣接して配置されている。これは、以下の場合を想定したものである。
【0164】
本実施の形態では、第1DA変換器14の出力開始を基準として、第2DA変換器14の出力開始が遅延している。そして、第2DA変換器14の出力開始に対して第3DA変換器14の出力開始が遅延している。そのため、第1DA変換器14に対応する遅延回路は設けられていない。
【0165】
それぞれのピーク電流Iの分散を図るためには、第1から第3DA変換器14−14の各々の出力のタイミングが異なればよい。例えば、第2DA変換器14が第2DAC電流IDAC3の出力を開始した後、第3DA変換器14が第3DAC電流IDAC2の出力を開始し、その後、第1DA変換器14が第1DAC電流IDAC1の出力を開始してもよい。その場合には、第7から第9遅延回路152−152を用いて、第1DAC制御信号CLKS1、CLKHP1、CLKHM1の遅延が図られる。
【0166】
第1から第9遅延回路152の各々は、アナログ回路よりもレイアウト面積を要しないデジタル回路で構成される。そのため、デルタシグマ変調器1の低消費電力化に加え、小型化も図ることができる。
【0167】
5.デルタシグマ変調器を備えたマイクロコンピュータ
図12は、デルタシグマ変調器1を備えたマイクロコンピュータ2の構成例を示すブロック図である。上述の特徴を持つデルタシグマ変調器1は、半導体装置に好適である。本実施の形態では、マイクロコンピュータ2を半導体装置の一例に挙げる。
【0168】
マイクロコンピュータ2は、以下のように構成されている。マイクロコンピュータ2は、デルタシグマ変調器1に加え、CPU(中央演算処理装置)21と、RAM(Random Accesss Memory)22と、ROM(Read Only Memory)23と、逓倍器24と、DA変換器25とを備える。
【0169】
CPU21は、プログラムに従って、種々の演算を実行する。RAM22は、CPU21の処理に必要なデータを一時的に格納する。ROM23は、例えば、マイクロコンピュータ2のハードウェアを制御するファームウェアを格納している。逓倍器24は、マイクロコンピュータ2の内部で用いられるクロックなどを発生させる。DA変換器25は、CPU24で処理されたデジタルデータをアナログデータに変換する。
【0170】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態について説明する。図8に示すデルタシグマ変調器1には、6個の遅延回路152が用いられている。6個の遅延回路152には、製造上のバラツキにより個体差がある。そのため、6個の遅延回路152の各々の出力タイミングにバラツキが発生する場合がある。その場合、第1から第3DA変換器14−14の各々が、サンプリング時間Tsの間に充電状態から出力状態へと遷移できない場合がある。この事態を回避すべく、本実施の形態では、6個の遅延回路152の時定数の補正がそれぞれ個別に行われる。
【0171】
図13は、第2の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Aの構成例を示す回路図である。図13には、信号発生回路151の図示が省略されている。
【0172】
本実施の形態と第1の実施の形態との主な相違点は、2つある。1つ目は、デルタシグマ変調器1Aが時定数補正回路17を更に備えることである。2つ目は、時定数補正回路17を用いて、6個の遅延回路152の時定数をそれぞれ個別に補正することである。
【0173】
第1から第6遅延回路152−152は、RCローパスフィルタと同様の接続構成をとっている。第1から第3遅延回路152−152の各々の時定数は、同じである。第4から第6遅延回路152−152の各々の時定数も、同じである。ただし、前者の時定数は、後者の時定数と異なる。その詳細は、以下の通りである。
【0174】
第1から第3遅延回路152−152の各々は、抵抗値|R1|を持つ抵抗R1と、静電容量|C1|を持つキャパシタC1とを備える。これらの時定数τは、τ=R1×C1である。一方、第4から第6遅延回路152−152の各々は、抵抗値|R2|を持つ抵抗R2と、静電容量|C2|を持つキャパシタC2とを備える。この時定数τは、τ=R2×C2である。本実施の形態では、3個のキャパシタC1の静電容量|C1|と、3個のキャパシタC2の静電容量|C2|とを独立して可変することができる。電子制御でこれら静電容量の可変を可能にするため、各々のキャパシタには、例えば、バリキャップダイオードが用いられる。
【0175】
第1から第3遅延回路152−152が制御信号CNT1−CNT3をそれぞれ受けると、それぞれのキャパシタC1の静電容量|C1|は、理想的な値に可変される。同様に、第4から第6遅延回路152−152が制御信号CNT4−CNT6を受けると、それぞれのキャパシタC2の静電容量|C2|が理想的な値に可変される。ここで言う「理想的」とは、本来とるべき理論上の値である。
【0176】
時定数補正回路17は、第1参照時定数τと、第2参照時定数τとを記憶している。第1参照時定数τは、遅延時間Td1を満たす理論上の値である。第2参照時定数τは、遅延時間Td2を満たす理論上の値である。時定数補正回路17は、第1から第3遅延回路152−152の各々についての実際の時定数τを計測する。これに加え、時定数補正回路17は、第4から第6遅延回路152−152の各々についての実際の時定数τを計測する。計測後、時定数補正回路17は、以下の処理を行う。
【0177】
第1に、時定数補正回路17は、第1から第3遅延回路152−152の各々の実際の時定数τを第1参照時定数τと比較する。この比較を「第1の比較」と呼ぶ。第1の比較により、時定数補正回路17は、両者の差Δτをそれぞれ得る。これは、第1参照時定数τからのずれを表す。そして、時定数補正回路17は、制御信号CNT1−CNT3を第1から第3遅延回路152−152にそれぞれ出力する。制御信号CNT1−CNT3は、差Δτをゼロにするように、即ち、実際の時定数τが第1参照時定数τに一致するように、静電容量|C1|を可変するための信号である。制御信号CNT1−CNT3の各々は、差Δτの度合いに応じて複数段階の値を持つ。
【0178】
第2に、時定数補正回路17は、第4から第6遅延回路152−152の各々について、実際の時定数τを第2参照時定数τと比較する。この比較を「第2の比較」と呼ぶ。以後の動作は、第1の比較の場合と同様である。時定数補正回路17は、両者の差Δτをそれぞれ得る。そして、時定数補正回路17は、制御信号CNT4−CNT6を第4から第6遅延回路152−152にそれぞれ出力する。制御信号CNT4−CNT6は、差Δτをゼロにするように、即ち、実際の時定数τが第1参照時定数τに一致するように、静電容量|C2|を可変するための信号である。制御信号CNT4−CNT6の各々も、差Δτの度合いに応じて複数段階の値を持つ。
【0179】
時定数補正回路17を備えるデルタシグマ変調器1Aの動作について説明する。時定数補正回路17は、例えば、サンプリング時間Tsごとに、第1および第2の比較を行う。サンプリング時間Tsではなく、一定時間(例えば、分単位)ごとに第1および第2の比較を行うこともできる。そして、時定数補正回路17は、制御信号CNT1−CNT3を第1から第3遅延回路152−152にそれぞれ出力する。これに加え、時定数補正回路17は、制御信号CNT4−CNT6を第4から第6遅延回路152−152にそれぞれ出力する。
【0180】
第1から第3遅延回路152−152が制御信号CNT1−CNT3をそれぞれ受けると、各々のキャパシタC1の静電容量|C1|が理想的な値に補正される。同様に、第4から第6遅延回路152−152が制御信号CNT4−CNT6をそれぞれ受けると、各々のキャパシタC2の静電容量|C2|も理想的な値に補正される。
【0181】
本実施の形態では、6個の遅延回路152の時定数がそれぞれ補正される。このことにより、6個の遅延回路152の各々の出力タイミングのバラツキが抑制される。そのため、第1から第3DA変換器14−14の各々が、サンプリング時間Tsの間に充電状態から出力状態へと遷移できないという事態を回避することができる。これに加え、第1の実施の効果を得ることができる。
【0182】
本実施の形態は、好適に変形可能である。例えば、静電容量の代りに、抵抗値を可変することで、時定数を補正することができる。この場合、時定数補正回路17は、抵抗値を計測する。静電容量と抵抗値の両方を可変することで、時定数を補正することもできる。
【0183】
図13に示す積分器12の場合、2つの時定数を時定数補正回路17を用いて補正することができる。ここで言う、2つの時定数とは、以下の2つを指す。1つは、第1入力抵抗121Pの抵抗値と第1帰還キャパシタ122Pの静電容量との積である。もう1つは、第2入力抵抗121Nの抵抗値と第2帰還キャパシタ122Nの静電容量との積である。
【0184】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態について説明する。図12に示すように、デルタシグマ変調器1をマイクロコンピュータ2に搭載することができる。マイクロコンピュータ2は、通常、逓倍器24を備えている。本実施の形態は、逓倍器24を用いることにより、6個の遅延回路152が不要なデルタシグマ変調器を開示する。
【0185】
図14は、第3の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Bの構成例を示す回路図である。図14には、デルタシグマ変調器1Bに加え、逓倍器24も示されている。
【0186】
本実施の形態と第1および第2の実施の形態との主な相違点は、2つある。1つ目は、逓倍器24が用いられることである。逓倍器24は、制御部15の一部として機能し、信号発生回路151の役割を果たす。本実施の形態では、マイクロコンピュータ2が備える逓倍器24が用いられるため、新たに逓倍器を設ける必要がない。しかしながら、デルタシグマ変調器1B自体が逓倍器24を備えていても、差し支えはない。2つ目は、制御部15が出力回路153を備えることである。
【0187】
逓倍器24について説明する。逓倍器24は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)である。逓倍器24は、クロック信号CLKの位相に同期した新たな信号を発生させる。逓倍器24の構成は、以下の通りである。
【0188】
逓倍器24は、位相比較器241と、ローパスフィルタ242と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)243と、分周期244とを備える。位相比較器241は、クロック信号CLKと分周期244の出力との位相差を検出し、これをローパスフィルタ242に出力する。ローパスフィルタ242は、位相比較器241の出力である直流信号を平滑化する。VCO243は、リングオシレータを備える。リングオシレータは、p個のインバータで構成されている。ここで、「p」は、3より大きい奇数である(本実施の形態では、pは7以上の奇数)。p個のインバータの各々は、出力が次段のインバータに入力されるように、リング状に多段接続されている。VCO243は、ローパスフィルタ242から入力した直流信号の電圧に応じて発振する。分周期244は、VCO243の発振周波数を分周する。
【0189】
本実施の形態では、奇数個のインバータのうち、以下に述べる3つのインバータの各々の出力が用いられる。
【0190】
1つ目のインバータは、例えば、初段のインバータ2431である。制御部15は、その出力を第1DAC制御信号CLKS1として用いる。
【0191】
2つ目は、インバータ2431から複数個のインバータを隔てた後段のインバータ2432である。制御部15は、その出力を第2DAC制御信号CLKS2として用いる。第2DAC制御信号CLKS2は、インバータ2431からインバータ2432の間にある複数個のインバータにより、遅延時間Td1だけ遅延している。
【0192】
3つ目は、インバータ2432から複数個のインバータを隔てた後段のインバータ2433である。制御部15は、その出力を第3DAC制御信号CLKS3として用いる。第3DAC制御信号CLKS3は、インバータ2431からインバータ2433の間にある複数個のインバータにより、遅延時間Td2だけ遅延している。
【0193】
出力回路153について説明する。出力回路153は、第1から第6ANDゲート1531−1536を備える。第1から第6ANDゲート1531−1536の各々は、第1入力端子と、第2入力端子とを備える。以下、第1から第6ANDゲート1531−1536について説明する。
【0194】
第1ANDゲート1531:
第1ANDゲート1531は、第1DAC制御信号CLKHP1を発生させる。詳細には、第1ANDゲート1531は、第1入力端子に第1DAC制御信号/CLKS1を入力し、第2入力端子に第1出力ビットOUTを入力する。第1DAC制御信号/CLKS1は、レベルが反転された第1DAC制御信号CLKS1である。このレベルの反転には、例えば、インバータ(不図示)が用いられる。このことは、第2DAC制御信号/CLKS2および第3DAC制御信号/CLKS3と同様である。
【0195】
第1DAC制御信号/CLKS1=“H”(即ちCLKS1=“L”)かつ第1出力ビットOUT=“1”の場合、第1ANDゲート1531は、第1DAC制御信号CLKHP1=“H”を出力する。これ以外の場合、第1ANDゲート1531は、第1DAC制御信号CLKHP1=“L”を出力する。
【0196】
第2ANDゲート1532:
第2ANDゲート1532は、第1DAC制御信号CLKHM1を発生させる。詳細には、第2ANDゲート1532は、第1入力端子に第1DAC制御信号/CLKS1を入力し、第2入力端子に第1出力ビットOUTBを入力する。第1出力ビットOUTBは、負側の第2信号線Lに出力されたDEM回路17の出力であって、第1出力ビットOUTと相補の関係にある。例えば、第1出力ビットOUT=“1”の場合、第1出力ビットOUTBは、“0”である。
【0197】
第1DAC制御信号/CLKS1=“H”かつ第1出力ビットOUTB=“1”の場合、第2ANDゲート1532は、第1DAC制御信号CLKHM1=“H”を出力する。これ以外の場合、第2ANDゲート1532は、第1DAC制御信号CLKHM1=“L”を出力する。
【0198】
第3ANDゲート1533:
第3ANDゲート1533は、第2DAC制御信号CLKHP2を発生させる。詳細には、第3ANDゲート1533は、第1入力端子に第2DAC制御信号/CLKS2を入力し、第2入力端子に第2出力ビットOUTを入力する。
【0199】
第2DAC制御信号/CLKS2=“H”(即ちCLKS2=“L”)かつ第2出力ビットOUT=“1”の場合、第3ANDゲート1533は、第2DAC制御信号CLKHP2=“H”を出力する。これ以外の場合、第3ANDゲート1533は、第2DAC制御信号CLKHP2=“L”を出力する。
【0200】
第4ANDゲート1534:
第4ANDゲート1534は、第2DAC制御信号CLKHM2を発生させる。詳細には、第4ANDゲート1534は、第1入力端子に第2DAC制御信号/CLKS2を入力し、第2入力端子に第2出力ビットOUTBを入力する。
【0201】
第2DAC制御信号/CLKS2=“H”かつ第2出力ビットOUTB=“1”の場合、第4ANDゲート1534は、第2DAC制御信号CLKHM2=“H”を出力する。これ以外の場合、第4ANDゲート1534は、第2DAC制御信号CLKHM2=“L”を出力する。
【0202】
第5ANDゲート1535:
第5ANDゲート1535は、第3DAC制御信号CLKHP3を発生させる。詳細には、第5ANDゲート1535は、第1入力端子に第3DAC制御信号/CLKS3を入力し、第2入力端子に第3出力ビットOUTを入力する。
【0203】
第3DAC制御信号/CLKS3=“H”(即ちCLKS3=“L”)かつ第3出力ビットOUT=“1”の場合、第5ANDゲート1535は、第3DAC制御信号CLKHP3=“H”を出力する。これ以外の場合、第5ANDゲート1535は、第3DAC制御信号CLKHP3=“L”を出力する。
【0204】
第6ANDゲート1536:
第6ANDゲート1536は、第3DAC制御信号CLKHM3を発生させる。詳細には、第6ANDゲート1536は、第1入力端子に第3DAC制御信号/CLKS3を入力し、第2入力端子に第2出力ビットOUTBを入力する。
【0205】
第3DAC制御信号/CLKS3=“H”かつ第3出力ビットOUTB=“1”の場合、第6ANDゲート1536は、第3DAC制御信号CLKHM3=“H”を出力する。これ以外の場合、第6ANDゲート1536は、第3DAC制御信号CLKHM3=“L”を出力する。
【0206】
第1および第2の実施の形態では、信号発生回路151は、第1DAC制御信号CLKS1を発生させるのみであった。そのため、遅延時間Td1遅延させた第2DAC制御信号CLKS2などを発生させるために、遅延回路が必要であった。これに対し、本実施の形態では、精度が高いリングオシレータと、複数の論理回路で構成された出力回路153が用いられる。そのため、遅延回路が不要である上、精度の高い第1から第3DAC制御信号の各々を生成することができる。
【0207】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、逓倍器24として、DLL(Delay
Locked Loop)が用いられている。
【0208】
図15は、第4の実施の形態に係るデルタシグマ変調器1Cの構成例を示す回路図である。逓倍器24は、エッジ合成器245を更に備える。逓倍器24は、クロック信号CLKの位相を遅延させることにより、第1から第3DAC制御信号CLKS1、CLKS2、CLKS3を発生させる。具体的には、位相比較器241は、クロック信号CLKとVCO243の出力との位相差を検出し、これをローパスフィルタ242に出力する。ローパスフィルタ242は、位相比較器241の出力である直流信号を平滑化する。VCO243は、クロック信号CLKを入力として発振している。ローパスフィルタ242の直流信号に基づいて、VCO243のインバータの段数が増減される。
【0209】
本実施の形態においても、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0210】
1:デルタシグマ変調器
11:減算器
12:積分器
13:量子化器
14:DA変換器
15:制御部
151:信号発生器
152:遅延回路
16:デコーダ
17:DEM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15