【実施例】
【0017】
〔試験例1〕モノクローナル抗体含有腹水の作製方法
1.免疫及びハイブリドーマの作製方法
免疫用抗原(rFluA抗原, Panama/2007/99)25μgを雌(6週齢)のBALB/cマウスに皮内免疫した。この操作(免疫)を2週間毎に2回繰り返した。免疫開始5週間後、試験採血にて高い抗体価が確認されたマウスから脾臓を抽出し、50%-PEG1450(Sigma社製)を用いて常法により細胞融合を行った。ミエローマ細胞はSP2/0を用いた。得られた融合細胞は、脾臓細胞として2.5×10
6個/mLになるようにHAT、15%ウシ胎児血清及び10%のBM-Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplement (Roche社製)を含むRPMI1640倍地に懸濁し、96穴培養プレートに0.2mLずつ分注した。これを5%CO
2インキュベーター中で37℃にて培養した。
【0018】
2.抗A型インフルエンザ抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合7日後に1次スクリーニングとして、培養上清を用いて後記抗原固相化ELISA法を行い、A型インフルエンザに対し高い反応性を示したwellを1次陽性wellとして選別した。該1次陽性well中の細胞は、24穴プレートにおいて継代した。継代2日後、2次スクリーニングとして、培養上清を用いて後記競合ELISA法を行い、A型インフルエンザに対し高い反応性を示すwellを2次陽性wellとして選択した。
【0019】
3−1.抗原固相化ELISA用プレートの作製
150mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.2;以下、PBSという)で1μg/mLの濃度に調製したrFluA抗原(Panama/2007/99)を、50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。0.05%Tween(登録商標) 20を含むPBS溶液(以下、PBSTという) 300μL/wellで3回洗浄後、1%BSAを含むPBST(以下、BSA-PBSTという)を100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作成した。該ELISA用プレートは、PBSTで3回洗浄後、各試薬を添加して試験例記載の各ELISA法に用いた。
【0020】
3−2.抗原固相化ELISA法(一次スクリーニング)
(i)上記3−1.で作製した ELISA用プレートに、BSA-PBSTにより段階希釈した融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii) PBSTで3回洗浄後、HRP−Goat-Anti-Mouse IgG(BIOSOURCE社製)をBSA-PBSTで5000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii) PBSTで3回洗浄後、0.02%過酸化水素水を含む0.2Mクエン酸緩衝液(以下基質溶解液という)にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μl/wellずつ添加して室温で10分間反応させた。
(iv) 1mM EDTAを含む1.5N硫酸(以下反応停止液という)を50μL/wellずつ添加し、マルチスキャンプレートリーダー(タイターテック社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
【0021】
3−3. 競合ELISA用プレートの作製
ELISA用プレートに、PBSで5μg/mLに希釈したヤギ抗マウスIgG、Fcγ(Jackson Immuno Research社製)を50μl/wellずつ分注し、室温で2時間静置した。PBST 300μL/wellで3回洗浄後、1%BSAを含むPBST(以下、BSA-PBSTという)を300μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作成した。該ELISA用プレートは、PBSTで3回洗浄後、各試薬を添加して実施例記載の各ELISA法試験に用いた。
【0022】
3−4. 競合ELISA法 (二次スクリーニング)
(i) ELISA用プレートに、BSA-PBSTにより段階希釈した融合細胞の培養上清を50μl/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii) PBSTで3回洗浄後、100ng/mLのFluA抗原21種(NIBC, National Institute forBiological Standards and Control製)を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii) PBSTで3回洗浄後、2mODのビオチン化ポリクローナルFluA抗体(Caprocorn社製)を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iv) PBSTで3回洗浄後、1μg/mLのHRP-Streptavidin(PIERCE社製)を50μL/wellずつ分注し、室温で10分間静置した。
(v) PBSTで3回洗浄後、OPD発色液を50μL/wellずつ分注し、室温で10分間静置した。
(vi)反応停止液を50μL/wellずつ添加し、マルチスキャンプレートリーダー(タイターテック社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
【0023】
4.クローニング及びモノクローナル抗体含有腹水・モノクローナル抗体の採取
上記のスクリーニングで選択したハイブリドーマを限界希釈法にてクローニングした。次いで各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取するため、2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた8週齢の雄BALB/cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.4〜1.3×10
6個の量で腹腔内に投与した。投与後1週間目から1日おきに腹水を採取し、遠心処理して上清を得た(ここで得られるモノクローナル抗体含有マウス腹水の上清を以下、単に腹水ロットということがある)。各腹水ロットの溶液を50%硫酸アンモニウムで塩析し、TBSで溶解後、同液で透析した。これを等量の吸着用緩衝液(3M NaCl、1.5M Glycine-NaOH 緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させた。各溶出液を、1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0)で中和後、20mM TBSで透析を行ったもの(ここで得られる腹水ロットの溶出液を以下、単に精製ロットということがある)を精製抗A型インフルエンザ抗体とした。
【0024】
〔試験例2〕イムノクロマトグラフィー用テストデバイスの作製
1.金コロイド標識抗A型インフルエンザ抗体(コンジュゲート)の作製
2mM ホウ酸 pH8.0で71.4μg/mLに希釈調整したF(ab')
2化抗A型インフルエンザ抗体(#622212A)1mLを1OD/mLの金コロイド(粒径50nm)溶液20mLに添加し、室温で10分間攪拌した。該金コロイド-F(ab')2化抗A型インフルエンザ抗体混合液に対し、10%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を1.5mL添加し、さらに5分間攪拌後、10℃にて、10,000rpmで45分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た。得られたコンジュゲートに対し、Conjugate Dilution Buffer (Scripps社製)を0.3mL添加しコンジュゲートを懸濁させ50℃で24時間静置した。懸濁液をろ過後、各コンジュゲートの極大吸収波長における吸光度を測定した。
【0025】
2.コンジュゲートパッドの作製
上記1.で調製したコンジュゲートを吸光度が12.6ODになるようConjugate dilution bufferで調整してコンジュゲート溶液とし、コンジュゲート溶液:casein buffer (1.33%カゼイン、4%スクロース溶液(pH7.5)):10%マリアリム溶液(日油社)=600:992:8 (容量比) になるようコンジュゲート塗布液を調整した。調整したコンジュゲート塗布液(f)をイムノクロマト用ディスペンサー Bio Dot Inc. XYZ 3000を用いて、13.0mm×254mm (幅×長さ)のグラスファイバー製パッド(日本ポール社、No.8964)の端から15mm の位置に塗布した。ドライオーブン内で70℃、30min乾燥し、コンジュゲートパッドとした。
【0026】
3.抗A型インフルエンザ抗体固相化メンブレンの作製
25.0mm×254mm (幅×長さ)のニトロセルロースメンブレン(Sartorius社、No.CN 140)の短辺の一端の内側11mmの位置に、Sucroseを2.5%含むように20mMTBSで1mg/mLに調整した上記抗A型インフルエンザ抗体を1.0μL/cm幅でライン状に塗布した。ドライオーブン内で70℃、45min乾燥し、抗A型インフルエンザ抗体固相化メンブレンとした。
【0027】
4.テストストリップの作製
プラスチック製粘着シート(a)に上記抗A型インフルエンザ抗体固相化メンブレン(b)を貼り、該メンブレンの抗A型インフルエンザ抗体(c)を塗布部の展開上流部側に上記2)で作製したコンジュゲートパッド(d)を配置装着し、反対側の端には吸収パッド(e)(Whatman社、CF6)を配置装着した。このように各構成要素を重ね合わせた構造物を7.11mm幅に切断してテストストリップを作製した。該ストリップの外寸は7.11mm×42.0mm(幅×長さ)である。該テストストリップは、アッセイの際、プラスチック性の専用のハウジングに格納・搭載され、イムノクロマトグラフィー用テストデバイスを構成する。
図1にイムノクロマトグラフィー用テストストリップの構造模式図を示した。このようにして作製されたイムノクロマトテストデバイスは各試験例のイムノアッセイに用いられた。
【0028】
〔試験例3〕イムノクロマトグラフィーにおけるモノクローナル抗体含有腹水のロット間差の検討
1.試験方法
上記試験例1の4.において製造した腹水ロット3種を由来とする精製ロット5種を用いてイムノクロマトテストデバイスを作製した。サンプルは抗原を含まない下記2種類の検体希釈液115μLを当該デバイスのサンプル滴下窓部に添加し、15分後のテストデバイスの検出窓部におけるラインの発色強度を検出した(いわゆるBlank測定に相当する)。
(i)精製抗体
以下の5種類を用いた。( )内は由来とする腹水ロットの番号である。また抗体の番号は同番号の精製ロットから得られた抗体であることを意味する。
#100218(MM44131)、#100731(MM46123)、#101113(MM44131)、#101115(MM46123)、#101119(MM46081)
(ii)検体希釈液
現行処方:積水メディカル株式会社製ラピッドテスタFLUII付属品
改良処方:積水メディカル株式会社製ラピッドテスタFLUII付属品に増感効果の認められ
るポリビニルピロリドンを添加したもの
【0029】
2.試験結果
結果を表1に示す。本結果によれば、現行処方の抗体希釈液を用いた場合は全てのマウス腹水ロットでラインは検出されなかったのに対し、改良処方の抗体希釈液を用いた場合には、抗原を含まないにもかかわらず、腹水ロットMM46123由来の精製ロットである100731および101115を用いたアッセイで偽陽性反応が検出された。このことから偽陽性反応原因成分は、同一の腹水ロット(MM46123)に含まれている可能性が示唆された。
【0030】
【表1】
【0031】
〔試験例4〕モノクローナル抗体含有腹水のプロテインAカラムによる精製条件の検討
1.試験方法
上記の偽陽性反応が認められなかったマウス腹水ロットMM46081の上清を50%硫酸アンモニウムで塩析し、TBSで溶解後、同液で透析した。これを等量の吸着用緩衝液(3M NaCl、1.5M Glycine-NaOH 緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0、pH4.0、pH4.5、pH5.0)の4条件で溶出させ(初回溶出)、該溶出液を、1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0)で中和後、20mM TBSで透析を行った。尚、pH4.0以上の0.1Mクエン酸緩衝液を用いた条件では、各pHの0.1Mクエン酸緩衝液で溶出後のカラム残存物をpH3.0の0.1Mクエン酸緩衝液で溶出を試みた(再溶出)。各溶出物についてフラクションごとに吸光度を測定し、また、各溶出物についてSDS-PAGE(還元、非還元条件)及び等電点電気泳動で精製度を確認した。
【0032】
2.試験結果
初回溶出物のフラクションの吸光度は、
図2の (i)、(ii)、(iii)、(iv)に示され、再溶出フラクションの吸光度は
図2の (v)、(vi)、(vii)に示されるとおりである。
また、SDS-PAGEおよび等電点電気泳動の結果を
図3に示す。非還元条件下でのSDS-PAGEにおいて、初回溶出物のレーン((i)−(iv))では分子量 約170kDaの位置に目的抗体となるIgGのバンドが検出されたのに対し、再溶出物のレーン((v)−(vii))では目的抗体のバンド以外にそれよりも高分子量の位置でバンドが検出された(
図3Aの横長丸で囲んだ部分)。
また、還元状態のSDS-PAGEにおいても、再溶出物のレーン((v)−(vii))では80kDa付近に目的物以外のバンドが確認された(
図3Bの横長丸で囲んだ部分)。また、(i)−(iv)と(v)−(vii)では、低分子量のバンドの位置も少しずれている(矢印位置)。このことから、プロテインAカラムによる精製において、必要としているIgG抗体は初回溶出でほぼ回収出来ており、カラム内に残存しているIgGはマウス由来の別抗体(IgG2b)であると考えられる。
さらに、等電点電気泳動の結果においては、目的抗体のバンドと同位置にはバンドは検出されず、pI9.5付近でスメア状にバンドが検出された(
図3C)。
【0033】
〔試験例5〕
1.試験方法
上記試験例4の溶出物(i)−(vii)の7種の精製抗体液を用いてイムノクロマトテストデバイスを作製した。検体希釈液には試験例3の改良処方を用いた。Blank測定に加え、A型インフルエンザウイルス株(A/Kitakyushyu/159/93、H3N2)を検体希釈液で6.7×10
4TCID
50/mL、3.3×10
4TCID
50/mLに希釈した後、115μLをサンプル滴下窓に添加し、15分後のテストデバイスの検出窓部におけるラインの発色強度を確認した。
【0034】
2.試験結果
初回溶出物(i)−(iv)を精製抗体としたアッセイでは、Blank測定における偽陽性反応は検出されず、感度も全条件で同等の結果が得られた。一方、再溶出物(v)−(vii)を精製抗体としたアッセイでは強い偽陽性反応が確認され、抗原に対する活性も認められなかった(表2)。また偽陽性反応は還元状態のSDS-PAGEで確認された80kDa付近のバンドの濃淡に比例して高いことを確認した。
【0035】
【表2】
【0036】
〔試験例6〕ウェスタンブロットによる偽陽性誘発物質の同定
1.試験方法
試験例4で得られた再溶出物(v)(pH4.0の0.1Mクエン酸緩衝液を用いて溶出後、pH3.0の0.1Mクエン酸緩衝液で溶出)について、ウェスタンブロットによって、SDS-PAGE (還元状態)で80kDa付近に存在したバンド(
図3Bの(v)のレーン)の同定を行った。該精製物をSDS電気泳動後、PVDF膜に転写した。この転写膜に1% BSA-PBST(1%BSA, 0.05% Tween-20 in PBS, pH8.0)を添加してブロッキングした後、1μg/mLのビオチン標識抗マウスIgM抗体(Biolegend社製)を反応させ、1% BSA-PBSTで洗浄後、1μg/mLのImmuno pure strept avidin HRP(PIERCE社製)を反応させた。1% BSA-PBSTで洗浄後、DAB溶液で発光させた。対照染色として抗マウスIgG抗体を用いて染色した。
【0037】
2.試験結果
結果を
図4に示す。還元状態で80kDa付近に検出されたバンドは抗マウスIgM抗体のみに反応していることからマウスIgMであることがわかった。また、非還元状態の場合、泳動開始点付近のバンドが抗IgG抗体および抗IgM抗体のいずれとも反応していることから、当該バンド(偽陽性誘発物質)は、IgGとIgMとの複合体である可能性が示唆された。
【0038】
〔実施例1〕腹水ロットのスクリーニング方法
IgGに活性を有するIgM型抗体量を測定することにより、腹水ロットのスクリーニングを行った。
1.試験方法
ELISAプレートに固相化したIgG2b抗体(#A239(抗A型インフルエンザ抗体, DEAE精製品))に、0、10、100μg/mLに希釈した腹水ロット3種(MM44131, MM46031, MM46123)を反応させ、20%Blocking One(nacalai tesque社製)にてブロッキングした後、ビオチン標識した抗マウスIgM抗体(Biolegend社製)を反応させた。発光にはImmuno pure strept avidin HRP(PIERCE社製)を用い、TMB(3, 3', 5, 5'-tetramethylbenzidine)により発光させ450nmの吸光度を測定することで、反応性を確認した。
【0039】
2.試験結果
結果を
図5に示す。本結果より、試験例3の改良処方の検体希釈液を用いた場合にA型偽陽性反応が検出された腹水ロットMM46123に強い活性がみられ、当該ロットに高濃度のIgMが含まれていることがわかった。また、試験例3の改良処方の検体希釈液を用いた場合にA型偽陽性反応が検出されなかった腹水ロットMM46131、MM46081については腹水ロットMM46123より弱い活性しかみられず、これらのロット間にはIgM量に差があることが明らかとなった。
以上の結果から、腹水ロットによって、IgG2bに活性のあるIgM量に違いがあり、当該IgM量が多いと当該腹水を精製した得られた抗体にもIgMが含まれ、この精製抗体をイムノアッセイに用いた場合に、A型偽陽性反応が発生することがわかった。
したがって、IgG2bに活性のあるIgM量の腹水ロット中での基準値を設定し、当該基準値以下の腹水を選択することにより、偽陽性反応を発生しない精製抗体の由来となる腹水を選択することができる。また、当該基準値以下となるような精製条件を採用することにより、偽陽性反応を生じない精製抗体を取得することができる。
スクリーニング基準の設定としては、例えば偽陽性反応が検出されていない精製ロットの由来である腹水ロットのうち、IgM含量が最も高かったロット(本実施例ではMM46081)を基準ロットとする方法等が挙げられる。当該方法によれば、スクリーニング対象の腹水ロットのIgM量を測定し、基準ロットよりもIgM量が低いロットをスクリーニングできる。その後、該IgM量が低いロットを精製することで偽陽性反応成分の少ない精製抗体を提供することができる。
【0040】
〔実施例2〕モノクローナル抗体含有腹水のプロテインAカラムによる精製条件の検討
1.試験方法
上記の偽陽性反応が認められたマウス腹水ロットMM46123の上清を50%硫酸アンモニウムで塩析し、TBSで溶解後、同液で透析した。これを等量の吸着用緩衝液(3M NaCl、1.5M Glycine-NaOH 緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0、pH4.0、pH5.0、pH6.0)の4条件で溶出させた。該溶出液を、1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0)で中和後、20mM TBSで透析を行い精製抗体液を得た。この4種の精製抗体液を用いてイムノクロマトテストデバイスを作製した。検体希釈液には試験例3の改良処方を用いた。Blank測定に加え、A型インフルエンザウイルス株(A/Kitakyushyu/159/93、H3N2)を検体希釈液で6.7×10
4TCID
50/mL、3.3×10
4TCID
50/mLに希釈した後、115μLをサンプル滴下窓に添加し、15分後のテストデバイスの検出窓部におけるラインの発色強度を確認した。
2.試験結果
結果を表3に示す。pH3.0の0.1Mクエン酸緩衝液で溶出した精製抗体液を用いたアッセイでは偽陽性反応が検出されたのに対し、pH4以上の0.1Mクエン酸緩衝液で溶出した精製抗体を用いたアッセイでは偽陽性反応が検出されなかった(表3)。本試験により、モノクローナル抗体含有腹水をプロテインAセファロースカラムで精製する場合、溶出液のpHを4以上にコントロールすることで偽陽性反応原因成分であるIgGに活性のあるIgMのカラムからの溶出を抑え、偽陽性反応原因成分の少ない精製ロットを得ることが可能であることがわかった。
【0041】
【表3】