特許第5788314号(P5788314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788314一体型落雷防護材料の作成システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788314
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】一体型落雷防護材料の作成システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20150910BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20150910BHJP
   B64D 45/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   B32B15/08 E
   B64C1/00 B
   B64D45/02
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-505054(P2011-505054)
(86)(22)【出願日】2009年3月5日
(65)【公表番号】特表2011-524265(P2011-524265A)
(43)【公表日】2011年9月1日
(86)【国際出願番号】US2009036122
(87)【国際公開番号】WO2009128991
(87)【国際公開日】20091022
【審査請求日】2012年1月10日
(31)【優先権主張番号】12/102,727
(32)【優先日】2008年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ, アメリカ, オー.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, アンソニー, エイチ.
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/015082(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0141927(US,A1)
【文献】 特開2006−219078(JP,A)
【文献】 特表2009−531863(JP,A)
【文献】 特表2006−502046(JP,A)
【文献】 特表平06−508801(JP,A)
【文献】 特開平04−344225(JP,A)
【文献】 特開平04−110149(JP,A)
【文献】 特開昭61−290038(JP,A)
【文献】 特表2009−545468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
B64F 1/00− 5/00
B64G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁的影響防護を満たす独立型システムとして設計された一体型落雷防護システムであって、前記システムは、
全てキャリアペーパー層上に重ねられた、繊維強化材料層を有する表面仕上げ層と、エキスパンデッドメタル箔を備えた伝導層であって、前記表面仕上げ層に隣接する伝導層と、前記伝導層に隣接する粘着層との一体型層を含む一体型落雷防護材料と、
航空機複合部分を落雷から防護するために、前記一体型落雷防護材料を前記複合部分上に直接配置するのに適した、制御された自動配置輪郭テープ設置機械(CTLM)と
を備え、
前記キャリアペーパー層は、記キャリアペーパー層の一面に接着する粘着性を有する紙を含み、
前記一体型層のそれぞれが、可撓性、粘着性、落雷防護性、及び環境性能からなる群から選択される1つ以上のパラメータを有し、各一体型層の前記パラメータは自動化された製造に最適化されており、及び更に前記システムは輪郭テープ設置機械(CTLM)と継ぎ目なく連動する一体型材料を提供し、前記伝導層は、0.086psfから0.100psfの範囲の重量を有する、一体型落雷防護システム。
【請求項2】
前記表面仕上げ層が、有機高分子樹脂を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記一体型落雷防護材料が可撓性であり、x−y平面において湾曲可能且つz平面において湾曲可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
輪郭テープ設置機械(CTLM)による直接の複合構造物又はツール上への制御された自動配置に適合され、且つ電磁的影響防護を満たす独立型システムとして設計された一体型落雷防護システムであって、
繊維強化材料層を有する表面仕上げ層と、
エキスパンデッドメタル箔を備えた伝導層であって、前記表面仕上げ層に隣接し且つ0.086psfから0.100psfの範囲の重量を有する伝導層と、
前記伝導層に隣接する粘着層と、
前記粘着層に隣接するキャリア層と
を含み、
前記表面仕上げ層、伝導層、粘着層、キャリア層のそれぞれが、可撓性、粘着性、落雷防護性、及び環境性能からなる群から選択される1つ以上のパラメータを有し、各層の前記パラメータは自動化された製造に最適化されており、及び更に前記システムは輪郭テープ設置機械(CTLM)と継ぎ目なく連動する一体型材料を提供する、一体型落雷防護システム。
【請求項5】
前記伝導層の厚みが、0.0015インチから0.006インチの範囲である請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記キャリア層が、記キャリア層の一面に接着する粘着性を有する紙を含む請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記エキスパンデッドメタル箔が、銅、アルミニウム、チタニウム、ニッケル、青銅、金、銀またはこれらの合金を含む請求項1またはに記載のシステム。
【請求項8】
前記粘着層が、エポキシ系樹脂材料、繊維ガラス‐エポキシプリプレグ材料、接着剤材料または有機高分子樹脂を含む請求項1またはに記載のシステム。
【請求項9】
前記繊維強化材料層が、繊維ガラスまたは炭素繊維強化材を含むスクリムキャリア、織物マットまたは編物ポリエステルである請求項1またはに記載のシステム。
【請求項10】
前記複合構造物または航空機複合部分が、航空機の翼領域、翼端領域、胴体領域、尾部領域または機首領域を含む請求項1またはに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一体型落雷防護材料の作成システムおよび方法を提供する。より詳細には、複合構造物上への一体型金属樹脂落雷防護材料の自動配置の作成システムおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
航空機および航空宇宙構造物はますます、以前用いられていたアルミニウム合金や類似の金属材料よりもむしろ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)といった複合材料から作成されるようになっている。その理由は主に、複合材料が、構造的性能を高め、良好な強度および剛性特性を提供し、かつ、航空機重量を低減するからである。しかしながら、複合材料は、金属材料より伝導性が低く、落雷に対する耐性が低い。複合材料は、典型的には約100,000アンペアで50,000ボルトである落雷による電流および熱を金属材料ほどはすばやく分散できない。知られているシステムおよび方法は、航空機および航空宇宙構造物のような複合構造物に対して落雷防護を施すために開発されてきた。いくつかの知られているシステムおよび方法は、金属導体を付加するか、または、翼および胴体上のスキンパネルのような航空機の複合外表面にさまざまな構成の金属箔システムを組み込んで、導電率を向上させ、かつ、飛行に重要な領域およびその下に存在する航空機構成部品から電流を分散および分流させることにより、落雷事象による物理的損傷を最小化する。金属導体の付加には、複合構造物表面を覆って付与され、かつ、該表面に接着剤で固着された誘電体材料と伝導性材料との交互層を用いるアップリケ様のシステムが含まれてもよい。このシステムは、下に存在する航空機構成部品を落雷から絶縁し、かつ、落雷による電流および熱の迅速な分散および放散のための伝導経路を提供する。金属箔システムの組込みには、複合材料に積層され、かつ、これと共硬化される(co-cured)中実のまたはエキスパンデッドメッシュ状の銅またはアルミニウム箔の使用が含まれてもよい。このシステムは、特別な締結具およびその他の特徴と組み合わせて、複合構造物にある程度の落雷防護を施す、落雷による電流の分流および分散のための伝導経路を提供する。しかしながら、このような知られているシステムおよび方法は、落雷防護システムの効率的な一体化に必要な複数の材料構成部品の手作業による冗長で時間のかかる配置を伴うことが多い。
【0003】
これに加えて、落雷防護のための知られているシステムおよび方法は、一般的に、後続の仕上げ塗りシステムの付与のための滑らかな表面を提供する表面仕上げ層と、落雷による電流を伝導する金属箔層と、典型的には樹脂強化繊維ガラス層である、電解腐食を防ぎ、かつ、塗料および交互薄片割れを引き起こす熱膨張の不一致を改善する任意の絶縁層とを個々に積層することにより作成される。例えば、複合構造物用落雷防護材料は、米国特許第5,225,265号明細書に開示されており、ここでは、エポキシ層と金属箔層とが、一体化されずに、互いに個々に積層されている。しかしながら、別個の層におけるこれらの知られている複層システムのレイアップは、時間がかかり、大きな労働力を要する。これに加えて、材料のしわ、汚染および材料の取り扱いを誤ることにより問題が生じる可能性がある。工具や複合基板に対する材料の粘着性もまた、材料が個々に付与される際は課題となりうる。
【0004】
いくつかの材料供給者は、製造フロー時間および取り扱いを最低限改善する一体型エキスパンデッドメタル箔およびエポキシ系フィルムを提供している。例えば、落雷複合材料を作成する知られているプロセスが、米国特許第5,470,413号明細書に開示されており、ここでは、エキスパンデッドメタル箔の層と、エポキシ系樹脂フィルムの単一層と、キャリア層とを含む複層複合材料が提供されている。別の知られているシステムは、米国特許第7,277,266号明細書に開示されており、落雷防護アップリケに向けられた複合構造物用の落雷防護システムのためのものである。しかしながら、この知られているシステムは、共硬化されていないアップリケを用いており、かつ、感圧性接着剤を用いている。そのうえ、これら知られているシステムは、大量加工を支援する自動化された製造プロセス、とりわけ、自動化された取り扱い、切断および配置が可能でない。これに加えて、知られている一体型システムはまた、航空宇宙用途に対する環境要件を満たす十分な表面仕上げ、封止および平滑さを提供するのにエポキシ表面仕上げ層のような追加の表面仕上げ層を必要とする場合がある。いくつかの知られているシステムは、環境要件を満たすよう設計されている一方で、自動化可能性および最低重量の制約内では最適化されていない。落雷防護および/または環境耐久性のために設計された一体型システムは、可撓性および粘着性要件を有するようには作られていない。これらは、両面に粘着性を有していないので、簡単には起伏の付いた表面に沿わせることができない。また、自動化された配置システムにおいて材料を安定して巻くためには、両面の粘着性が必要である。何らかのよりわずかに一体化されたシステムが存在するとすると、これらは一方の面にしか粘着性がない。
【0005】
よって、知られているシステムおよび方法に付随する問題を有さない一体型落雷防護材料の作成システムおよび方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
知られているシステムおよび方法に付随する問題を有さない一体型落雷防護材料の作成システムおよび方法、ならびに、独特で非自明かつ有利なシステムおよび方法に対するこのような必要性が満たされる。知られているシステムおよび方法のいずれも、ここで挙げられている数多くの利点をすべては提供していない。知られているシステムおよび方法とは異なり、本発明は、以下の利点の1つ以上を提供可能である。該システムおよび方法は、紙をベースとするキャリアペーパー上のエキスパンデッドメタル箔および粘着層と典型的にはエポキシ系の樹脂フィルムを一体化することを提供し、これにより、取り扱い、切断および配置のような大量加工を支援し、かつ、落雷防護複合スキンシステムの大量レイアップを支援するさまざまな自動配置機械において加工可能となる。該システムおよび方法は、エキスパンデッドメタル構成部品および典型的にはエポキシ系の樹脂フィルム材料構成部品を1つの単一一体型製品に一体化することを提供し、この製品は、落雷のような電磁的影響に対する保護を提供する平坦な複合スキン構造物および起伏の付いた複合スキン構造物の上に迅速かつ効率的に材料を配置するための既存の複合テープおよび布自動化配置機械とともに用いることができる。該システムおよび方法は、材料を安定して巻くのに必要な両面の粘着性を材料に与える。該システムおよび方法は、環境的に耐久性があるとともに、輪郭(contour)テープ設置機械、バキュームアシステッドバルク配置システムおよびその他の自動配置機械により連続的に機能することができる一体型材料を提供する。該システムおよび方法により、製造フロー時間が改善され、材料均一性が向上し、労働時間および資源が削減され、取り扱いおよび汚染の懸念が最小化される。該システムおよび方法は、余分な表面、余分な絶縁体または余分な金属を追加することなく、電磁的影響、保護および環境性能を満たすことができる独立型システムとしての自動化をもたらす。該システムおよび方法は、x−y平面においてより容易に湾曲しz平面において湾曲可能な可撓性の向上した材料を提供する。該システムおよび方法は、取り扱いの誤り、汚染、しわやその他の製造欠陥から生じ得る不合格部品または材料の量を低減できる。該システムおよび方法は、複合構造体上に材料を配置するための追加の機械開発が必要ないか、または最低限で済む。該システムおよび方法は、落雷および電磁的影響からの防護ならびに使用期間中の環境的耐久性を向上させつつ、起こりうる欠陥およびふぞろいの出現およびその量に関して全体として改善された複合部品を提供できる。
【0007】
本発明の一実施形態において、複合構造物上への自動化された配置に適合された一体型落雷防護システムであって、有機高分子樹脂からなる表面仕上げ層と、エキスパンデッドメタル箔の伝導層と、絶縁層と、キャリアペーパー層とを含む一体型落雷防護システムを提供する。
【0008】
本発明の別の実施形態において、キャリアペーパー上に設置された有機高分子樹脂に封入されたエキスパンデッドメタル箔からなる一体型落雷防護材料と、該材料を航空機複合部品上に配置して、該複合部品を落雷から保護するのに適した自動配置機械とを含む一体型落雷防護システムを提供する。
【0009】
本発明の別の実施形態において、落雷防護を施した複合構造物の作成方法であって、キャリアペーパー上に設置された有機高分子樹脂に封入されたエキスパンデッドメタル箔を含む一体型落雷防護材料を自動積層機械内に装填し、該材料を複合スキンの露出表面上に積層して落雷防護を施した複合構造物を形成することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上記ならびにその他の利点および特徴とこれらが達成される手法とは、添付の図面とともに考慮される以下の詳細な説明を鑑みると容易に明らかとなるだろう。該添付の図面は、好適かつ例示的な実施形態を示しているが、一律の縮尺に必ずしも従わずに描かれている。
図1図1は、航空機上のさまざまな落雷領域を示す航空機の平面図である。
図2図2は、本発明の複層落雷防護材料システムを示す略図である。
図3図3は、本発明の複層落雷防護材料システムの一体型製品に変換された前駆材料を示す略図である。
図4図4は、本発明の一体型落雷防護材料システムを複合構造物上にレイダウンする輪郭テープ設置機械の斜視背面図である。
図5図5は、本発明の一体型落雷防護材料システムを複合構造物上にレイダウンする図4の輪郭テープ設置機械の斜視側面図である。
図6図6は、本発明の一体型落雷防護材料システムを複合構造物上にレイダウンする図4の輪郭テープ設置機械の斜視前面図である。
図7図7は、本発明の一体型落雷防護材料システムの複合構造物上への仕上げ配置の斜視前面図である。
図8図8は、本発明の二種類の一体型落雷防護材料システムの複合構造物上への仕上げ配置の斜視前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、添付の図面を参照して、以下に本発明の実施形態をより完全に説明する。該添付図面には、本発明の実施形態のすべてではないいくつかが示されている。実際、いくつかの種々の実施形態が提供されているかもしれないが、ここに記載されている実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これら実施形態は、本開示が十分かつ完全となり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるよう提供されている。
【0012】
本発明は、航空機ならびに航空宇宙複合構造物および部品といった複合構造物または部品上への自動化された配置または積層に適した落雷防護システムおよび方法を記載している。ここで図面を参照すると、図1は、航空機のさまざまな落雷領域を示す航空機10の平面図である。直接落雷が起こる可能性が高いこういった航空機10の領域には、翼領域12、翼端領域14、機首領域16、胴体領域18および尾部領域20が含まれていてもよい。
【0013】
図2は、航空機の翼領域、翼端領域、胴体領域、尾部領域または機首領域といった複合構造物上への自動化された配置に適合された本発明の一体型複層落雷防護システムを示す略図である。本発明は、各構成部品が理想的な落雷防護、環境性能および自動化された製造専用に最適化されているいくつかの構成部品を含む一体型金属樹脂落雷防護材料システムを含む。該システムは、有機高分子樹脂からなる表面仕上げ層22を含む。好ましくは、有機高分子樹脂は、メリーランド州ハーバーデグレースのCytec Engineered Materials社製のCytec Metlbond1515−3またはCytec SurfaceMaster905といった部分的に硬化したフェノールエポキシ樹脂を含む。しかしながら、他の適切な有機高分子樹脂を用いることもできる。好ましくは、表面仕上げ層は、エポキシ系のものであり、下に取り上げる伝導層24を封入かつ環境的に保護するよう設計されており、かつ、表面前処理および塗料システム用途の犠牲層として働き、これを提供するよう設計されていてもよい。好ましくは、表面仕上げ層の厚みは、0.002インチから0.075インチの範囲である。好ましくは、表面仕上げ層の重量は、0.015psf(ポンド・平方フィート)から0.070psfの範囲である。
【0014】
図2に示されているように、一体型複層落雷防護システムは、表面仕上げ層22に隣接して伝導層24をさらに含んでいる。伝導層は、エキスパンデッド箔を含む。伝導層24は、落雷による電流を取り付け点から離れた方向に伝導し、かつ/または、干渉信号から電子/電気システムを遮蔽する。好ましくは、伝導層のエキスパンデッドメタル箔は、銅、アルミニウム、チタニウム、ニッケル、青銅、金、銀およびこれらの合金、または、その他の伝導性金属を含む。好ましくは、伝導層の厚みは、0.0015インチから0.006インチの範囲である。好ましくは、伝導層の重量は、0.086psfから0.100psfの範囲である。エキスパンデッドメタル箔は、中実の金属箔より好適である。なぜなら、軽量であり、かつ、x−y平面およびz平面内で屈曲可能なために自動化可能性の見込みがあるからである。
【0015】
図2に示されているように、一体型複層落雷防護システムは、必要に応じて(すなわち、アルミニウム合金の場合)下に存在する炭素繊維強化プラスチック積層体から伝導層を電気的に絶縁する絶縁または粘着層26をさらに含む。好ましくは、絶縁または粘着層は、エポキシ系樹脂材料、繊維ガラス‐エポキシプリプレグ材料、薄型接着剤材料またはその他の有機高分子樹脂を含む。絶縁または粘着層上の接着剤は、絶縁または粘着層がキャリアペーパー層28の一面に接着可能であり、かつ、隣接する炭素繊維強化プラスチック層の付与を向上可能なように粘着性をもたらす。ある実施形態において、絶縁または粘着層は、表面仕上げ層と同じ組成を有していてもよい。好ましくは、絶縁または粘着層の厚みは、0.0015インチから0.005インチの範囲である。好ましくは、絶縁または粘着層の重量は、0.015psfから0.060psfの範囲である。
【0016】
図2に示されているように、一体型複層落雷防護システムは、絶縁または粘着層に隣接したキャリアペーパー層28をさらに含んでいる。好ましくは、キャリアペーパー層は、調節可能な粘着性を有する適切な紙を含む。より好ましくは、キャリアペーパー層は、低または中程度の粘着性を有する。好ましくは、キャリアペーパー層は、シリコーン離型剤を有する。シリコーンは、落雷材料をペーパーから除去するための滑らかな表面をもたらす。好ましくは、キャリア層の厚みは、0.004インチから0.008インチの範囲である。キャリアペーパー層は、材料を複合構造物上に配置する際、除去されて廃棄されることが好ましい。こうして、キャリアペーパー層が絶縁または粘着層から除去されると、材料を複合構造物上に配置またはレイダウンする際、絶縁または粘着層の露出した粘着面が複合構造物の表面に取り付けられる。
【0017】
可撓性は、自動化可能性の実現を推進する特徴ではあるが、システム全体の厚み、材料粘着性ならびにキャリアペーパーの粘着性および厚みもまた重要である。いくつかの組み合わせには、非常に特殊な紙特性が必要となる。例えば、箔‐樹脂フィルムシステムをより薄くするには、より厚いキャリアペーパーが必要である。絶縁または粘着層は、金属システムおよび該システムが専用に設計されている自動配置機械に対する適切性および適合性に基づいて選択される。好ましくは、エキスパンデッドメタル箔は、樹脂に封入され、キャリアペーパー上に設置され、自動配置機械の要件に特有の幅でコアに巻きつけられている。使用される箔および樹脂の種類は、落雷および耐久性の要件に依存している。粘着性および可撓性といったパラメータは、システムが自動化できるように最適化される。一体型材料は、樹脂がフィルムで覆われている状態でそれに合わせて高分子樹脂にエキスパンデッドメタル箔を埋め込むことにより、または、部分的に硬化した樹脂がすでにフィルムで覆われており、樹脂フィルム層と絶縁または粘着層との間または樹脂フィルム層間にエキスパンデッドメタル箔を挟むといったように後処理的に作成されることが好ましい。
【0018】
図3は、典型的には繊維ガラスまたは炭素繊維強化織物マットまたは編物ポリエステルを含むスクリムキャリアのような繊維強化材料層30を有する表面仕上げ層22を含む前駆材料「A」を示す略図である。前駆材料「A」は、伝導層24と、絶縁または粘着層26と、キャリアペーパー層28とをさらに含む。前駆材料は、組み合わせて一体化され、キャリアペーパー層28上に積層された繊維強化材料層30と、伝導層24と、絶縁または粘着層26とを有する表面仕上げ層22の一体化された層を含む一体型製品「B」を形成する。
【0019】
好ましくは、複合構造物上への一体型複層落雷防護システムの自動配置は、輪郭テープ設置機械またはバキュームアシステッドバルク配置システムといった自動配置または積層機械を用いて行われる。好ましくは、本発明とともに用いられる輪郭テープ設置機械は、オハイオ州シンシナティのMAG Cincinnati、フランス国トゥールーズのForest−Lineまたはスペイン国パンプローナのM.Torresから入手される。好ましくは、輪郭テープ設置機械は、大型で起伏の付いた部品上の高速複合テープレイアップが可能であり、かつ、典型的には、6インチまたは12インチの幅の落雷防護材料に対応する。バキュームアシステッドバルク配置システムは、表面積がより大きく、かつ、48インチ以下の幅の落雷防護材料に対応可能である。落雷防護システムは、自動配置機械上に装填され、自動配置機械は、複合構造物または工具上に落雷防護システムを配置または積層する。一体型落雷防護材料を有する積層された複合構造物または部品は、後に組み立てて航空機とすることができる。
【0020】
図4は、従来の輪郭テープ設置機械36により複合スキン34の露出表面上に配置またはレイアップされている、本発明のシステムおよび方法に係る一体型落雷防護材料32を示している。図4は、方向40に材料32を設置している輪郭テープ設置機械36の後端38の斜視背面図である。図5は、複合スキン34上で方向40に本発明の一体型落雷防護材料32をレイダウンする図4の輪郭テープ設置機械36の一面42の斜視側面図である。図6は、複合スキン34上で方向40に本発明の一体型落雷防護材料32をレイダウンする図4の輪郭テープ設置機械36の前端44の斜視前面図である。図7は、輪郭テープ設置機械による複合スキン34上への本発明の2片の一体型落雷防護材料32の仕上げ配置または積層の斜視前面図である。仕上げ配置または積層された材料32は、始端48を有し、ここで、材料32の一片の始端48は、材料32の他片の始端とわずかに重複している。仕上げ配置された材料32の各片は、わずかな角度でレイダウンされた離間した側端50を有する。仕上げ配置された材料32の各片は、仕上げ端52を有し、ここで、材料32の一片の仕上げ端52は、材料32の他片の仕上げ端52に対して小さな間隙46を形成している。本発明では、材料を複合スキンまたはレイアップ工具上のどこにいかにしてレイダウンまたは配置するかということを正確に制御可能である。
【0021】
図8は、輪郭テープ設置機械(図示せず)により複合スキン34上へ本発明の二種類の一体型落雷防護材料32、54を複数片仕上げ配置した斜視前面図である。仕上げ配置または積層された材料32、54は、始端56を有し、ここで、材料32の始端56は、材料54の始端56と重複している。仕上げ配置された材料32、54の各片は、仕上げ端58を有し、ここで、材料32の仕上げ端58は、材料54の仕上げ端58から離間している。材料32、54の仕上げ端58は、カーブ60を成し、かつ、各片が最初から最後まで連続してレイダウンされるにしたがって、曲率半径が、レイダウンされる後続の各片ごとに小さくなる。本発明では、材料を複合スキンまたはレイアップ工具上のどこにいかにしてレイダウンまたは配置するかということを正確に制御可能である。本発明の落雷防護材料およびシステムの利点は、樹脂フィルム内のエキスパンデッドメタル箔形状により、輪郭に沿うことができることならびにx−y平面およびz平面において湾曲できることを含む。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、キャリアペーパー上に設置された有機高分子樹脂に封入されたエキスパンデッドメタル箔からなる一体型落雷防護材料と、該材料を航空機複合部品上に配置して、該複合部品を落雷から保護するのに適した自動配置機械とを含む一体型落雷防護システムに関する。好ましくは、自動配置機械は、輪郭テープ設置機械を含む。ただし、図と関連して上に説明した本発明の実施形態についての詳細は、本発明のこの実施形態の詳細に同じ効力で該当するものとする。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、落雷防護を施した複合構造物の作成方法に関する。該方法は、一体型落雷防護材料を自動積層機械内に装填する工程を含む。好ましくは、落雷防護材料は、キャリアペーパー上に設置された有機高分子樹脂に封入されたエキスパンデッドメタル箔を含む。該方法は、落雷防護材料を複合スキンの露出表面上に積層して落雷防護を施した複合構造物を形成する工程をさらに含む。好ましくは、自動積層機械は、輪郭テープ設置機械を含む。好ましくは、複合構造物は、航空機の翼領域、胴体領域、尾部領域または機首領域を含む。好ましくは、該方法は、周囲温度において行われ、かつ、好ましくは、該方法は、積層される複合材料の大きさによってほんの何時間かで実行可能である。ただし、図と関連して上に説明した本発明の実施形態についての詳細は、本発明のこの実施形態の詳細に同じ効力で該当するものとする。
【0024】
本発明は、環境的に耐久性があるとともに、輪郭テープ設置機械およびその他の自動配置機械により連続的に機能することができる一体型材料を提供する。本発明に包含される材料システムは、明確に自動化を目的として、かつ、落雷からの保護といった電磁的影響防護と環境性能とを満たすことができる独立型システムとして設計されている。本発明により、製造フロー時間が改善され、労働時間および資源が削減され、取り扱いおよび汚染の懸念が最小化され、落雷および電磁的影響からの防護ならびに使用期間中の環境的耐久性を向上させつつ、起こりうる欠陥およびふぞろいの出現およびその量に関して改善された複合部品を提供できる。
【0025】
前述の説明および関連する図面において提示された教示の恩恵を受けて、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の数多くの変更およびその他の実施形態に想到するだろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、かつ、変更およびその他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるよう意図されていることは理解されるべきである。ここでは特定の用語が使用されているが、これらは、包括的かつ記述的な意味にしか用いられておらず、限定を目的とはしていない。
また、本発明は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
複合構造物上への自動化された配置に適合された一体型落雷防護システムであって、
有機高分子樹脂からなる表面仕上げ層と、
エキスパンデッドメタル箔の伝導層と、
絶縁層と、
キャリアペーパー層と
を含む一体型落雷防護システム。
(態様2)
前記有機高分子樹脂が、フェノールエポキシ樹脂を含む態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記表面仕上げ層の厚みが、0.002インチから0.075インチの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様4)
前記表面仕上げ層の重量が、0.015psfから0.070psfの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様5)
前記エキスパンデッドメタル箔が、銅、アルミニウム、チタニウム、ニッケル、青銅、金、銀およびこれらの合金を含む群から選択される金属を含む態様1に記載のシステム。
(態様6)
前記伝導層の厚みが、0.0015インチから0.006インチの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様7)
前記伝導層の重量が、0.086psfから0.100psfの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様8)
前記絶縁層が、エポキシ系樹脂材料、繊維ガラス‐エポキシプリプレグ材料、薄型接着剤材料および有機高分子樹脂を含む群から選択される材料を含む態様1に記載のシステム。
(態様9)
前記絶縁層の厚みが、0.0015インチから0.005インチの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様10)
前記絶縁層の重量が、0.015psfから0.060psfの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様11)
前記キャリア層が、調節可能な粘着性を有する紙を含む態様1に記載のシステム。
(態様12)
前記キャリア層の厚みが、0.004インチから0.008インチの範囲である態様1に記載のシステム。
(態様13)
落雷防護を施した複合構造物の作成方法であって、
キャリアペーパー上に設置された有機高分子樹脂に封入されたエキスパンデッドメタル箔を含む一体型落雷防護材料を自動積層機械内に装填し、
前記材料を複合スキンの露出表面上に積層して落雷防護を施した複合構造物を形成する
ことを含む方法。
(態様14)
前記自動積層機械が、輪郭テープ設置機械を含む態様13に記載の方法。
(態様15)
前記複合構造物が、航空機の翼領域、翼端領域、胴体領域、尾部領域または機首領域を含む態様13に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8